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【発明の名称】 ソーブレード
【発明者】 【氏名】野元 伸敏

【氏名】大島 晋

【要約】 【課題】コンクリートや石材等の硬脆材からなる被削材に対する切削加工に際し、優れた快削性と寿命性能の向上とを、同時に達成し得るセグメントタイプのソーブレードを提供する。

【構成】円形の鋼製基板11の外周縁部にダイヤモンド砥粒若しくはcBN砥粒からなる超砥粒層を、間歇的に形成せしめてなるセグメントタイプのソーブレードにおいて、前記鋼製基板11の外周縁部にキー溝13によって等配される前記超砥粒層の左右両側面に、径方向内側から外側に延び且つ回転方向前方から後方に傾斜する少なくとも二つの切り欠き溝14が、周方向に所定の間隔を隔てて形成されるソーブレード1。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の鋼製基板の外周縁部にダイヤモンド砥粒若しくはcBN砥粒からなる超砥粒層を、間歇的に形成せしめてなるセグメントタイプのソーブレードにおいて、前記鋼製基板の外周縁部にキー溝によって等配される前記超砥粒層の左右両側面に、径方向内側から外側に延び且つ回転方向前方から後方に傾斜する少なくとも二つの切り欠き溝が、周方向に所定の間隔を隔てて形成されることを特徴とするソーブレード。
【請求項2】
前記切り欠き溝は、該超砥粒層の外周端から軸心方向に向かって、該超砥粒層高さの50%以上、95%未満の長さで形成されることを特徴とする請求項1に記載のソーブレード。
【請求項3】
前記切り欠き溝が、超砥粒層の左右両側面において左右対称に形成され、周方向の各切り欠き溝で区画される切り欠き溝が形成されていない各超砥粒層部分の中、回転方向前方の超砥粒層部分の面積が、それ以外の各超砥粒層部分のそれぞれの面積より大となるように形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のソーブレード。
【請求項4】
前記切り欠き溝は、個々の超砥粒層の左右両側面において異なる間隔で、且つ対応する両側面間の側面視において、それぞれ対向する位置になく、位相を変えて形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のソーブレード。
【請求項5】
前記切り欠き溝の側面面積は、該超砥粒層の左右両側面の表面積に対し、それぞれ20〜40%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のソーブレード。
【請求項6】
前記切り欠き溝の深さは、鋼製基板と超砥粒層との厚さの差の1/2と、略同一であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のソーブレード。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、石材、コンクリート、タイル等の各種建材や鋳物などの硬脆材からなる被削材に対する切断などの研削加工に際し、好適に用いられる研削工具に係り、詳しくは御影石や大理石に代表される天然石、或いは人工大理石、タイル、瓦、煉瓦、サイディングボード等の人工石材、さらには繊維強化プラスチックス(FRP)や炭素繊維強化プラスチックス(CFRP)に代表される硬質合成樹脂製のスラブ板(平板)等を、高い精度を以って切断加工するための、ダイヤモンド砥粒若しくはcBN(立方晶窒素ホウ素焼結体)砥粒からなる砥粒層を形成せしめてなるセグメントタイプのソーブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、建築用資材として各種天然石や人工大理石等(以下、単に「石材」ということがある。)に加えて、上記のような各種硬質材料が広く用いられ、これらの硬質材料からなる被削材を所望の寸法・形状に切断加工する研削工具としては、円盤状の鋼製基板の外周縁部に、ダイヤモンド砥粒やcBN砥粒からなる超砥粒(以下、単に「超砥粒」ということがある。)と各種結合材を主成分とする超砥粒層を、連続的にかつ一体的に結合したリムタイプのソーブレードと、該超砥粒と各種結合材からなる超砥粒チップを、鋼製基板の外周縁部に設けたキー溝若しくはU溝を介して、所定の間隔を隔てて間歇的に結合したセグメントタイプのソーブレードとに大別され、それぞれの用途に応じて広汎に用いられている。これらのソーブレードは通常グラインダー、サンダー等の手持ち式回転電動工具のスピンドルに、軸心に対して直交状態で嵌挿して締結され、切断加工等の手作業に供されているが、高速で回転する電動工具を手にして被削材に対する切断加工を行う際に、ソーブレードとしての優れた快削性と、その寿命性能が併せて要求されている。
【0003】
電動工具によって高速で回転するソーブレードの砥粒層が被削材と接触すると、該被削材と砥粒層間において摩擦熱が生じ、その摩擦熱が超砥粒層に蓄熱されると同時に磨耗が生じるが、その磨耗に起因してソーブレードとしての快削性が損なわれ、さらには砥粒層が早期に破損するなどソーブレードとしての寿命性能が短縮する要因を招くこととなる。そこで砥粒層に対する蓄熱を抑制して磨耗を防止し、ソーブレードとしての快削性を安定的に持続させつつ、その寿命性能を向上させるために様々な試みがなされている。例えば前記セグメントタイプのソーブレードにおいて、超砥粒層(セグメントチップ)を形成する金属結合相(ボンド)中に分散固着され、超砥粒層全体としては均一な集中度(コンセントレーション)とされる超砥粒の割合、即ちセグメントチップに対する超砥粒の集中度が、中央層部分に対して両外側層部分を1.5倍〜2.5倍の範囲とした三層構造とすると共に、セグメントチップ全体の超砥粒の集中度は0.88〜1.54ct/cmの範囲とした超砥粒層を装着したソーブレード(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
【0004】
また、ダイヤモンド砥粒を主成分としてなるセグメントチップ外周の切断作用表面に、該ダイヤモンド砥粒の粒径と略同径で、セグメントチップの焼成温度より高い融点を有し、ヌープ硬さが常温で2500Kg/mmの粒子を、該セグメントチップの切断作用表面から、該粒子の粒径に対して1〜3倍の深さに埋め込んだセグメントチップを形成し、該セグメントチップを装着したソーブレード(例えば、特許文献2参照)が開示されている。
【0005】
上記従来技術における特許文献1に開示されているソーブレードによれば、3層構造のセグメントチップのうち、中央層における超砥粒の集中度を低く抑えることによってその切れ味を確保し、その両サイドの超砥粒の集中度を高くすることによって、セグメントチップ先端における外周エッジの損耗を防ぎ、良好な切れ味を確保しながら寿命性能を向上させることができた旨報告され、特許文献2で提案されているソーブレードは、セグメントチップの切断作用面から所定の深さに、超砥粒と異なるが高い融点とヌープ硬さを有するダミーの粒子を埋め込んだセグメントチップを構成することにより、寿命性能を高度に維持しながら安定的な快削性が備えられた旨報告され、共にソーブレードとしての快削性の安定および寿命性能の向上においては、それぞれ一定の成果が確認されている。
【特許文献1】特開2002−18729号公報
【特許文献2】特開2002−46071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ソーブレードによって被削材を切断する際には、研削された被削材によって多量の切り粉が発生するが、該切り粉の排出がスムースに捗らずにソーブレードと被削材の隙間にと留まると、切断抵抗の増加を来たす上に被削材切断面の精度が著しく低下し、摩擦熱を発生してセグメントチップの蓄熱が増すと同時に切断速度の低下を招き、さらにはセグメントチップと基板との界面に所謂首下磨耗が発生して、ソーブレードとしての寿命性能が著しく低下する。従ってソーブレードには発生する切り粉を効率良く排出することが強く求められるが、上記従来技術においては斯かる問題についての対策は十分に施されておらず、未解決な問題点として残されていた。また、鋼製基板とセグメントチップとの接合強度が不充分な場合、被削材に対する切断時の衝撃によってセグメントチップが破損することも懸念され、解決を求められる大きな課題の一つであった。なお、特許文献1のソーブレードにおけるセグメントチップの両外側層の左右両側面には、切粉の排出とセグメントチップの冷却効率を高めるために基板の径方向内側から外側に連通開口する溝部が形成されているが、該溝部は該セグメントチップの側面を径方向に分断する溝であって、且つ両側面にそれぞれ1つ形成されるものであるため、切粉の排出が不十分でしかも快削性と接合強度が共に十分ではないという問題があった。
【0007】
このようにセグメントタイプのソーブレードに要求される鋭い切れ味と寿命性能の向上、即ち快削性と寿命性能とは常に二律背反的な関係にあり、例えば切れ味を優先して超砥粒層中の超砥粒の集中度を低く抑えた場合は、結合材金属相が早期に摩滅して超砥粒層そのものの寿命性能が著しく低下する。
【0008】
従って、本発明の目的は、鋼製基板とセグメントチップの接合強度を十分に維持しつつ、切り粉の排出を円滑にし、更に優れた快削性と寿命性能の向上とを、同時に達成し得るセグメントタイプのソーブレードを提供することにある。
【0009】
本発明者らは、上記ソーブレードに残された課題を解決することを所期の目的として鋭意検討を重ねた結果、鋼製基板の外周面に形成されたキー溝によって砥粒層が等配されるセグメントタイプのソーブレードにおいて、該超砥粒層の左右両側面に所定の形態で切り欠き溝を形成することにより、該切り欠き溝のエッジ効果による快削性の向上に加えて、被削材切削時に発生する切り粉が効率的に排出されることに着目して、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、円形の鋼製基板の外周縁部にダイヤモンド砥粒若しくはcBN砥粒からなる超砥粒層を、間歇的に形成せしめてなるセグメントタイプのソーブレードにおいて、前記鋼製基板の外周縁部にキー溝によって等配される前記超砥粒層の左右両側面に、径方向内側から外側に延び且つ回転方向前方から後方に傾斜する少なくとも二つの切り欠き溝が、周方向に所定の間隔を隔てて形成されることを特徴とするソーブレードを提供するものである。
【0011】
また、本発明は、前記切り欠き溝は、該超砥粒層の外周端から軸心方向に向かって、該超砥粒層高さの50%以上、95%未満の長さで形成されることを特徴とする前記ソーブレードを提供するものである。
【0012】
また、本発明は、前記切り欠き溝が、超砥粒層の左右両側面において左右対称に形成され、周方向の各切り欠き溝で区画される切り欠き溝が形成されていない各超砥粒層部分の中、回転方向前方の超砥粒層部分の面積が、それ以外の各超砥粒層部分のそれぞれの面積より大となるように形成されることを特徴とする前記ソーブレードを提供するものである。
【0013】
また、本発明は、前記切り欠き溝は、個々の超砥粒層の左右両側面において異なる間隔で、且つ対応する両側面間の側面視において、それぞれ対向する位置になく、位相を変えて形成されることを特徴とする前記ソーブレードを提供するものである。
【0014】
また、本発明は、前記切り欠き溝の側面面積は、該超砥粒層の左右両側面の表面積に対し、それぞれ20〜40%であることを特徴とする前記ソーブレードを提供するものである。
【0015】
また、本発明は、前記切り欠き溝の深さは、鋼製基板と超砥粒層との厚さの差の1/2と、略同一であることを特徴とする前記ソーブレードを提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によるソーブレードによれば、円形の鋼製基板の外周縁部にキー溝によって等配される前記超砥粒層の左右両側面に、径方向内側から外側に延び且つ回転方向前方から後方に向かって傾斜する少なくとも二つの切り欠き溝の作用によって、被削材を切断する際に発生する切り粉が、効率よく系外に排出され、基板と被削材の隙間に残留する切り粉によってもたらされる摩擦熱や、該摩擦熱の砥粒層への蓄熱を大幅に抑制することができ、超砥粒層の蓄熱が原因となる超砥粒層の磨耗や、切断性能の低下を未然に防止して優れた快削性能が長期に亘って維持される。また、基板と被削材間に残留する切り粉が原因となって、基板と超砥粒層の界面に生ずる所謂首下磨耗が防止され、ソーブレードとしての健全な状態が併せて維持される。本発明によるソーブレードはさらに、超砥粒チップの左右両側面に設けた少なくとも二つの切り欠き溝によって、切断時における被削材と超砥粒層との接触面積を減少させ、ソーブレード自体への抵抗を小さくすることにより切断速度を向上させることを可能とし、該切り欠き溝を超砥粒層の高さ方向全体を横断するように設けず、外周の端から軸心方向に超砥粒層高さの50%以上、95%未満の長さで形成することによって、超砥粒層と基板との間で十分な接合面積が確保され、併せて切断作業中に基板と超砥粒層との界面に発生する首下磨耗を効果的に抑制することができる。さらには、超砥粒層の左右両側面に形成される切り欠き溝が、個々の超砥粒層の左右両側面において異なる間隔で、且つ対応する両側面間において、それぞれ位相を変えて形成されることや、超砥粒層の左右両側面に形成される切り欠き溝の形成面積を、該超砥粒層の両側面の表面積に対してそれぞれ20〜40%の範囲としていること、切り欠き溝の深さを片側における砥粒層と鋼製基板との厚さのクリアランスと略同一としていることなどによって、超砥粒層の強度が十分に確保されて、ソーブレード自体の寿命性能が大幅に向上する。本発明の効果についてさらに付言すると、上記従来技術における超砥粒層の形成手段においては、コンセントレーションの異なる超砥粒層を3層に設けてセグメントチップとしたり、研削作用面から所定の深さにダミーの粒子を埋設してセグメントチップを形成するなど、砥粒層の形成に複雑な工程を要することにより、ソーブレードそのもののコストが大幅に上昇するが、本発明による超砥粒層の形成は、ほぼ1工程での形成が可能であるところから、その製造工程が大幅に省略され、結果として低価格でのソーブレードの提供を可能としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明を実施するための最良の形態について添付した図1〜5と、実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれによって拘束されるものではなく、本発明の主旨の範囲内において自由に設計変更が可能である。
【0018】
図1は本発明に係る実施の形態におけるソーブレードの正面図、図2は図1のA−B−C−D線に沿って見た断面図、図3は図1のE−E線に沿って見た拡大断面図、図4は図1のF−F線に沿って見た拡大断面図、図5はセグメントチップにおける切り込み溝の形態を説明する要部拡大側面図である。なお、本明細書中、方向を明確にする基準の説明がない場合、「前方」方向はソーブレードの周方向における回転方向側を言い、「後方」方向はその逆方向を言う。
【0019】
本発明に係るソーブレードは、円盤状の鋼製基板(以下、単に「基板」ということがある。)の外周縁部にダイヤモンド砥粒やcBN砥粒を主成分とする超砥粒層(以下、単に「超砥粒層」を「砥粒層」ということがある。)が、前記基板の外周縁部に所定の間隔を隔てて形成されるキー溝を介し、間歇的に形成される外径が100〜250mmのセグメントタイプのソーブレードとして、例えばディスクグラインダー、サンダー等の回転電動工具のスピンドルに、その軸心に対して直交状態で嵌挿し、コンクリート、石材、タイル等の被削材に対する切断加工等に広範囲に使用されるものである。
【0020】
ここで、本発明の実施の形態におけるソーブレード1は、図1に示すように円形の鋼製基板11の外周縁部に、径方向内側Iから外側Uに沿って、回転方向前方Xから後方Yに向かって略放射状に傾斜するキー溝13が、基板11の外周縁部を12等分に分割するようにして形成され、該分割されたそれぞれの外周縁部に砥粒層12が等配されると共に、一体として接合固着されて本発明のソーブレードが構成される。この際、砥粒層12の左右両側面には、図1に示すように径方向内側Iから外側Uに延び、且つ回転方向前方Xから後方Yに向かって、略放射状に傾斜する2本の切り欠き溝14、14されるが、切り欠き溝14の溝の長さは、前記砥粒層12の高さ、即ち該砥粒層12の外周端17から、軸心方向に向って基板11との接合界面18までの寸法に対して、50%以上、95%未満、好ましくは60〜85%に形成されることが望ましく、斯かる構造を選択することにより基板11と砥粒層12間における十分な接合面積が確保されて、基板11に対する砥粒層12の強固な接合が確保され、同時に被削材に対する切断作業中の所謂首下磨耗を未然に防止することができる。本例の切り欠き溝14の側面視形状は、基板の中心から外側に延びる回転方向前方に凸状となる放射形状である(図5の切り欠き溝14a参照)が、本発明の切り欠き溝14の側面視形状は、これに限定されず、例えば直線状であってもよい。
【0021】
また、切り欠き溝14が砥粒層12の左右両側面にそれぞれ2本、回転方向前方から後方に略放射状に傾斜して設けられると共に、個々の砥粒層12の左右両側面に異なる間隔を以って、且つ対応する両側面間において位相を変えて形成されることによって、切断作業中に発生する被削材の切り粉が効率良く排出され、該切り粉が原因となる首下磨耗をも未然に防止すると共に、被削材研削面における優れた仕上がり精度が保障され、併せて切り欠き溝14の形成によってもたらされる砥粒層12の強度低下を効果的に補うことができる。
【0022】
本例の切り欠き溝14において、個々の砥粒層12の左右両側面において周方向に異なる間隔を以って形成されるとは、前記砥粒層12の前方端121から各切り欠き溝14の中心までの寸法が左右両側面において異なることを意味し、具体的には、図3に示すように、砥粒層12の右側面(図3中、上側面)に第1切り欠き溝14a、第2切り欠き溝14bが形成され、砥粒層12の左側面(図3中、下側面)に第3切り欠き溝14c、第4切り欠き溝14dが形成される場合、右側面における砥粒層12の前方端121からの第1切り欠き溝14aの中心及び第2切り欠き溝14bの中心まで寸法l、lが、左側面における砥粒層12の前方端121からの第3切り欠き溝14cの中心及び第4切り欠き溝14dの中心までの距離l、lとそれぞれ異なる寸法であることを意味する。また、対応する両側面間において位相を変えて形成されるとは、右側面の切り欠き溝と左側面の切り欠き溝は、側面視においてそれぞれ互いに対向する位置にないこと、すなわち、図3に示すように、側面視において全ての切り欠き溝14a〜14dがわずかな重複部分もないことを言う。これにより、砥粒層12の厚みが部分的に薄くなることを防止し、砥粒層12の強度が低下することを防止している。
【0023】
なお、本発明のソーブレードにおける、切り欠き溝の配置形態は、上記左右両側面において非対称の形態に限定されず、例えば、個々の砥粒層の左右両側面の切り欠き溝の配置は対称の形態であってもよい。この場合、図5に示すように、例えば、砥粒層12の側面の周方向の切り欠き溝14a、14bで区画される切り欠き溝が形成されていない超砥粒層部分、すなわち、セグメントチップにおける砥粒層12の前方端121と切り欠き溝14aの中心線91で形成される第1超砥粒層部分(側面積)141、切り欠き溝14aの中心線91と切り欠き溝14bの中心線92で形成される第2超砥粒層部分142及び切り欠き溝14bの中心線92と砥粒層12の後方端122で形成される第3超砥粒層部分143の中、前方の第1超砥粒層部分141が、第2超砥粒層部分142や第3超砥粒層部分143のぞれぞれの面積より大であることが望ましい。これにより、セグメントチップにおいて、最初に衝撃を受ける前方部分の砥粒層面積が大きいため、強度に優れたものとなる。
【0024】
本実施の形態における砥粒層12の左右両側面に形成される前記2本の切り欠き溝14は、図1に示すようにその溝部側面の面積の和が、該砥粒層12側面の表面積に対して、それぞれ20〜40%、好ましくは20〜30%の範囲内で形成されることが望ましく、該切り欠き溝14を上記のような構成とすることによって、切断作業中の被削材に対するするエッジ効果を確保しつつその接触面積を減少させ、切断速度を高いレベルで維持することを可能とし、併せて該砥粒層12の強度低下をバランスよく補うことができる。
【0025】
本実施の形態において、砥粒層12の左右両側面に形成される前記2本の切り欠き溝14の溝の深さ42は、基板11の厚さと砥粒層12の厚さとの差の1/2即ち、片側における基板11と砥粒層12とのクリアランスと略同一に形成されることが望ましいが、切り欠き溝14の深さをこのように特定することによって特有のエッジ効果がもたらされると共に、切り粉の排出が効率的に促進されつつも、該切り欠き溝14を形成することによって生ずる砥粒層12の強度低下を、最小限に抑えることを可能としている。このように本発明に基づく上記実施の形態におけるソーブレード1によれば、通常二律背反の関係にある鋭い切れ味と切断速度に代表される快削性と、寿命性能の向上という二つの課題が併せて達成し得るセグメントタイプのソーブレードを、比較的低コストで市場に提供することが可能となる。なお、本発明に係る切り欠き溝の形状、すなわち、径方向の長さ、溝面積及び溝深さは、全ての切り欠き溝で同じであることが望ましい。
【0026】
本発明において、切り欠き溝の断面形状としては、特に制限されず、切り欠き溝を構成する壁面が溝底面から上方に垂直に延びる矩形断面溝、切り欠き溝を構成する壁面が溝底面から上方且つ溝内側に延びる台形断面溝、切り欠き溝を構成する壁面が溝底面から上方且つ溝外側に延びる逆台形断面溝が挙げられ、この中、矩形断面溝及び逆台形断面溝が加工が容易である点で好ましい。
【実施例1】
【0027】
板厚が1.2mmの市販の炭素工具鋼を素材として打ち抜き加工を施し、中心部に内径20mmの取付孔15が設けられた、外径92mmの円形の板状体を形成し、該板状体の外周を12等分にして、回転方向前方から後方に向かって略放射状に傾斜する幅2.0mmのキー溝13を設け、該キー溝13によって12等分に等配された前記板状体の外周端縁部には、予め当該部分の板厚がやや薄くなるように加工を施して砥粒層接合部16を形成し、本実施例による鋼製基板11を得た。一方、本実施例による砥粒層12は、ニッケル+ブロンズ系混合金属粉からなるボンドマトリックスと、該ボンドマトリックスに対する混合比、即ちコンセントレーションが18%のダイヤモンド砥粒とを、バインダーの存在下で混合することによって得られた混合粉体を、前記基板11の外周縁部における砥粒層接合部16に型押しし、炉中において900℃に加熱した後除冷することによって、砥粒層12の焼成と該砥粒層12の基板11への接合とを同時に実施する所謂同時焼結法によって、図1に示すような外径が105mmの本実施例によるソーブレード1を得た。
【0028】
この際、前記型押しに用いられる本実施例による金型は、砥粒層12焼結後の仕上がり寸法でその高さ43、即ち該砥粒層12の外周端から軸心方向基板11との界面までの距離が、図4に示すように8.5mmとなるように形成されると共に、該金型の外周端から金型の中心に向かって回転方向後方から前方に略放射状に傾斜する2本の凸部が設けられ、該凸部によって成形される砥粒層12の左右両側面には、所定の寸法並びに形状の切り欠き溝14が、図1及び図5に示すように周方向に所定の間隔を隔ててそれぞれ2本形成されるが、形成される2本の切り欠き溝14は、図3に示すように砥粒層12の左右両側面にそれぞれ異なる間隔で形成されると共に、対応する両側面間の側面視において対向する位置には存在せず、それぞれ位相を変えて形成される構造となっている。
【0029】
上記金型によって型押しされて成形される本実施例による砥粒層12の厚さ44は1.6mmであり、図4に示すように基板11と砥粒層12とのクリアランス41は0.2mmとなり、該砥粒層12の左右両側面のそれぞれに形成される2本の切り欠き溝14の具体的寸法は、該切り欠き溝14あたりの幅が3.7mmで外周の端縁部から軸心方向への長さが6.8mmであり、砥粒層12の片側側面面積に対する2本の切り欠き溝14の側面面積の和が、概ね24%となるように形成され、該切り欠き溝14の長さは砥粒層14の前記高さ43に対して概ね80%になるように形成されている。また、前記切り欠き溝14の深さ42は0.2mmの仕上がり寸法に形成され、図4に示すように砥粒層12の厚さと基板11の厚さとのクリアランス41と、切り欠き溝の14の深さとは略同一となるように形成される。
【0030】
(直線切りの切削試験)
実施例1で作製されたセグメントタイプのダイヤモンドソーブレード1を、グラインダーのスピンドルに締結固定して、板厚が60mmのコンクリート製平板に対して、下記試験条件下、直線切りの切削試験を行った。なお、直線切りの切削試験は、同一仕様のソーブレードを3枚(表1中、ソーブレード1、2及び3と記載)用いてそれぞれ行った。ソーブレードの評価は、1カット当たりの平均切断時間及び15mカット後のソーブレードの最外周面の磨耗量を測定することで行った。ソーブレードの最外周面の磨耗量は、径方向における磨耗量減である。
【0031】
(切削試験条件)
切削試験は、被削材を切断(分断)するものではなく、被削材に所定深さの切り込みを入れ、1カット切断長さ分を1カットとして切削し、これを50カット繰り返し行うものである。
・ 使用電動工具;12,000回転/分
・ 切り込み量;24mm
・ 1カット切断長さ;30cm
・ 全切断長さ;カット数50カットで15m
【0032】
比較例1、2
市販のセグメントタイプのダイヤモンドソーブレードであること、超砥粒層の左右両側面に切り込み溝が形成されていないこと以外は、実施例1と概ね同様の仕様のダイヤモンドソーブレードを用いた。なお、この市販品は同一仕様のものを2枚(表1中、市販品1、2と記載)用いてそれぞれにつき試験を行った。
【表1】


【0033】
表1の結果から、実施例のソーブレードは砥粒層の左右両側面に形成した切り欠き溝のエッジが、被削材に対して鋭く食い込む所謂エッジ効果を生み、高速切削に耐えうる鋭い切れ味を示し、切削時に発生する切り粉が効率よく排出され、砥粒層の蓄熱は効果的に抑制されて首下磨耗に起因する砥粒層の破損もなく、1カット当たりの切断時間が短く、磨耗量も少ないものであった。また、研削面を目視観察したところ、実施例のソーブレードは比較品に対して、加工精度に優れる研削面が繰返して得られたことが確認された。このため、実施例のソーブレードは比較例に対して寿命を著しく向上させることは明白である。
【0034】
本発明による前記円形基板を形成する素材としては、通常市販の炭素工具鋼が好ましく用いられるが、一定の剛性と機械的強度を有するものであれば、特に制限するものではなく、例えば通常の炭素鋼の中から適宜に選択して用いることができる。また、本発明によって形成されるソーブレードは、通常外径が100mm以上で、355mm未満のセグメントタイプのソーブレードであれば特に制限するものではなく、幅広いソーブレードに応用することができる。さらに、前記鋼製基板に対する砥粒層の接合手段は、上記実施例においては砥粒層の焼結と該砥粒層の基板への接合とを同時に実施する同時焼結法を採用したが、両者が強固に接合される方法であれば特に制限されるものではなく、溶接やろう付等従来公知の方法を適宜に採用することを妨げるものではない。本発明に基づく上記実施例においては、ダイヤモンド砥粒と共に砥粒層を形成する結合材金属素材、即ちボンドマトリックスとしてニッケル+ブロンズ系混合金属粉を採用したが、本発明においてはそれ以外のボンドマトリックス、例えば鉄、コバルト、炭化タングステン若しくはこれらの混合物からなる各種ボンドマトリックスを、各種バインダーの存在下、所定の混合比で混合して用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上詳述したように上記構成の本発明によるソーブレードは、グラインダー、サンダー等の回転電動工具のスピンドルに直交状態で締結してコンクリート、石材、タイル等に代表される各種硬脆材料に対して切断加工などを施す際、鋭い切れ味によって高速切断等を容易とし、加えて被削材の切り粉が効率的に排出されて砥粒層の蓄熱が抑制され、被削材と砥粒層の接触面積の減少によってソーブレードへの抵抗が小さくなり、切断速度と同時に研削面の精度を安定的に維持することができる。また、砥粒層に形成される切り欠き溝の形成面積や形態に対して種々の改善を施すことによって、切断工具としての上記特性を確保しながらその剛性を高度に保ち、ソーブレードとしての快削性と併せて寿命性能に著しい向上を図り、併せて低価格での市場への提供が可能であるところから、当該産業分野において幅広く採用されることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る実施の形態におけるソーブレードの正面図。
【図2】図1のA−B−C−D線に沿って見た断面図。
【図3】図1のE−E線に沿って見た拡大断面図。
【図4】図1のF−F線に沿って見た拡大断面図。
【図5】セグメントチップにおける切り欠き溝の形態を説明するための要部拡大側面図。
【符号の説明】
【0037】
1 ソーブレード
11 鋼製基板
12 砥粒層
13 キー溝
14、14a〜14d 切り欠き溝
15 取付孔
16 砥粒層接合部
17 外周端
41 クリアランス
42 切り欠き溝の深さ
43 砥粒層の高さ
44 砥粒層の厚さ
121 セグメントチップの砥粒層の前方端
122 セグメントチップの砥粒層の後方端
【出願人】 【識別番号】390010685
【氏名又は名称】三京ダイヤモンド工業株式会社
【出願日】 平成18年7月6日(2006.7.6)
【代理人】 【識別番号】100098682
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 賢次

【識別番号】100071663
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 保夫

【識別番号】100131255
【弁理士】
【氏名又は名称】阪田 泰之


【公開番号】 特開2008−12625(P2008−12625A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−186455(P2006−186455)