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【発明の名称】 伝熱部材の処理方法
【発明者】 【氏名】肥塚 洋輔

【氏名】中山 達臣

【氏名】保田 芳輝

【氏名】福田 大蔵

【氏名】遠藤 睦也

【要約】 【課題】本発明は、複雑な形状の伝熱部材であっても表面に微小な凹凸状部を形成することのできる処理方法を提供する。

【解決手段】加圧ガスを用いて伝熱部材の表面に粒子を吹きつける工程を行うことにより、伝熱部材の表面に凹凸状部を形成すること、および前記伝熱部材の表面は軟金属からなること、を特徴とする伝熱部材の処理方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧ガスを用いて伝熱部材の表面に粒子を吹きつける工程を行うことにより、前記伝熱部材の表面に凹凸状部を形成すること、および
前記伝熱部材の表面は軟金属からなること、
を特徴とする伝熱部材の処理方法。
【請求項2】
前記軟金属のビッカース硬さは、200以下であることを特徴とする請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記軟金属は、銅、銅合金、アルミニウム、またはアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1または2に記載の処理方法。
【請求項4】
前記凹凸状部の平均高さは、5μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の処理方法。
【請求項5】
前記粒子は、CBN、ダイヤモンド、またはアルミナであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の処理方法。
【請求項6】
前記粒子の平均粒子径は、30μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の処理方法。
【請求項7】
前記加圧ガスの圧力は0.1〜0.7MPaであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の処理方法。
【請求項8】
前記工程を2回以上繰り返すことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の処理方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の処理方法により処理された伝熱部材が用いられてなる熱交換器。
【請求項10】
フィンの形状を有し、前記処理方法によりフィン表面が処理された伝熱部材、または
チューブの形状を有し、前記処理方法によりチューブ内面が処理された伝熱部材が用いられてなる請求項9に記載の熱交換器。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の処理により得られた伝熱部材、または
請求項9または10に記載の熱交換器を含むことを特徴とする車両用部材。
【請求項12】
請求項11に記載の車両用部材を含むことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は伝熱部材の処理方法に係り、より詳細には伝熱効率を向上させる処理方法に係る。
【背景技術】
【0002】
伝熱部材の性能を左右する因子の一つとして伝熱効率が挙げられる。伝熱効率を向上させる手段として、伝熱部材の表面に凹凸状部を設けることにより、比表面積を増加させたり、伝熱部材と接触する熱媒体の流れを攪拌してより多くの流体分子が伝熱部材と接触できるようにしたりする方法が採られてきた。
【0003】
また、凹凸状部の大きさによっては、攪拌された熱媒体自身が熱媒体の流れを阻止し、熱媒体を流す際に大きな圧力を要することがあったが、凹凸状部を非常に微小なものとすることで、圧力損失を抑制しつつ熱媒体を流動させられることが判明している。特許文献1には、この様な微小な凹凸状部を有する熱交換器が開示されている。
【特許文献1】特開2005−98694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
伝熱部材は用途によっては複雑な形状をとる。そこで、本発明は、複雑な形状の伝熱部材であっても表面に微小な凹凸状部を形成することのできる処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来、SUSなどの硬い物質の表面を研磨する方法として、ブラスト処理と呼ばれる、加圧ガスを用いて物質表面に粒子を吹きつける処理方法が知られている。発明者等は、一般的に硬い物質に適用されるブラスト処理を軟金属に適用することにより、軟金属の表面に微小な凹凸状部を形成できることを見いだした。さらにブラスト処理には、複雑な形状の伝熱部材であっても表面に微小な凹凸状部を形成できるという利点があるということを見いだした。
【0006】
すなわち本発明は、加圧ガスを用いて伝熱部材の表面に粒子を吹きつける工程を行うことにより、伝熱部材の表面に凹凸状部を形成すること、および前記伝熱部材の表面は軟金属からなること、を特徴とする伝熱部材の処理方法により上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、複雑な形状の伝熱部材であっても微小な凹凸状部を形成することのできる処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の第一は加圧ガスを用いて伝熱部材の表面に粒子を吹きつける工程を行うことにより、伝熱部材の表面に凹凸状部を形成すること、および前記伝熱部材の表面は軟金属からなること、を特徴とする伝熱部材の処理方法である。
【0009】
本発明は従来では硬い物質の表面研磨に用いられてきたブラスト処理を、伝熱部材に適用すること、および少なくとも伝熱部材の表面には軟金属が配置されることに特徴がある。軟金属のような柔らかい物質にブラスト処理を施すと、加圧ガスにより吹きつけられた粒子が衝突する際に生じる熱で瞬間的に物質表面を部分的に軟化しつつ、物質内部に突入する。そして、その衝撃で物質表面に凹凸状部が形成される。
【0010】
このため、伝熱部材の少なくとも表面には軟金属が配置されている必要がある。伝熱部材は、表面に軟金属が配置され深部には軟金属以外の物質が配置されていてもよいし、全て軟金属で構成されていてもよい。表面に軟金属が配置され深部には軟金属以外の物質が配置される場合、軟金属の層の厚みは2.5μm以上が好ましく、より好ましくは5μm以上である。厚みが2.5μm以上であると、ブラスト処理による軟金属の層の剥離が起こり難いため好ましい。軟金属以外の物質としては、セラミックスまたは樹脂などが挙げられる。
【0011】
本発明で用いられる軟金属のビッカース硬さは、200以下であることが好ましく、より好ましくは160以下であり、更に好ましくは100以下である。ビッカース硬さが200以下であると、軟金属の表面に微小な凹凸状部が形成され易くなるため好ましい。
【0012】
本発明で用いられる軟金属としては特に限定されないが、銅、銅合金、アルミニウム、またはアルミニウム合金が好ましい。銅および銅合金は熱伝導率に優れるという利点を有し、加えてアルミニウムおよびアルミニウム合金はリサイクル性に優れるという利点を有する。
【0013】
前記銅合金としては特に限定されないが、Cu−Zn系合金、Cu−Sn−Zn系合金、Cu−Sn−P系合金、Cu−Fe−Zn−Al−Mn系合金、またはCu−Sn−ZN−Pb系合金などが挙げられる。前記アルミニウム合金としては特に限定されないが、Al−Cu系合金、Al−Mg系合金、Al−Mg−Si系合金、またはAl−Zn−Mg−Cu系合金などが挙げられる。銅合金またはアルミニウム合金を用いる場合、合金に含まれる各成分の割合は特に限定されず、ビッカース硬さ、伝熱部材の用途などに応じて適宜決定される。
【0014】
本発明の処理を行う前に、伝熱部材に対して焼きなましなどの処理を加えてもよい。焼きなましを加えることにより、ビッカース硬さを下げることができる。
【0015】
ブラスト処理に用いられる粒子としては、従来公知のブラスト処理用の粒子を用いることができ、例えば、ダイヤモンドもしくはガーネットなどの鉱石系粒子;アルミナ、ジルコニア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、もしくは窒化ホウ素などのセラミック系粒子;または鋼などの金属系粒子などが挙げられる。これらの中では特に窒化ホウ素、ダイヤモンドまたはアルミナが好ましく、前記窒化ホウ素はCBNであることが好ましい。窒化ホウ素粒子およびダイヤモンド粒子は熱伝導に優れるため、伝熱部材の表面近傍に残留しても熱抵抗の増加を起こしにくいため好ましい。アルミナ粒子は安価であり、さらに、衝突時に自身が砕けることで微細な凹凸状部を形成しやすいため好ましい。
【0016】
粒子の平均粒子径は30μm以下であることが好ましい。平均粒子径が30μm以下であると、微細な凹凸状部を形成し易いため好ましい。
【0017】
加圧ガスとしては特に限定されず、空気、窒素、酸素、または希ガスなど目的に応じて適宜選択することができる。
【0018】
加圧ガスの圧力は1.0MPa以下であることが好ましく、より好ましくは0.7MPa以下である。加圧ガスの圧力が1.0MPa以下であると、圧力に見合った効果が得られるため好ましい。また、加圧ガスの圧力は0.1MPa以上であることが好ましい。加圧ガスの圧力が0.1MPa以上であると粒子が伝熱部材表面を溶融させやすくなるため好ましい。
【0019】
上述の工程、つまりブラスト処理は2回以上繰り返すことが好ましい。ブラスト処理を繰り返すことにより微細な凹凸状部を形成することができる。
【0020】
本発明により形成される凹凸状部は、圧力損失を引き起こさずに、伝熱効率を向上させられる形状であれば特に限定されず、均一な大きさの凹凸が規則的に形成された形状であってもよいし、凹凸が不定形に形成された形状であってもよい。凹凸状部の凹部は、伝熱部材表面に対して垂直、水平、または斜め方向に粒子が衝突することにより形成される。凹凸状部の形状は、軟金属のビッカース硬さ、粒子の大きさ、または加圧ガスの圧力などにより適宜調節することができる。
【0021】
本発明の処理により形成される凹凸状部の平均高さは5μm以下であることが好ましい。平均高さが5μm以下であると、圧力損失が抑制され易いため好ましい。本発明における凹凸状部の平均高さの測定方法は、JIS B0601(2001)のRa値の測定方法に準拠する。凹凸状部の高さは軟金属のビッカース硬さ、粒子の大きさ、または加圧ガスの圧力などにより適宜調節することができる。
【0022】
本発明の処理は、予め、表面に従来公知の大きさの凹凸状部が形成された伝熱部材に施すこともできる。
【0023】
ブラスト処理により伝熱部材の表面に凹凸状部を形成する方法として、例えば図1に例示される回転テーブル140と移動式の噴射ノズル130とを用いる方法が挙げられる。図1では回転テーブル140上に伝熱部材110を載せて、二点鎖線で示す方向に回転テーブル140を回転させ、噴射ノズル130を一点鎖線で示す方向に移動させながら、噴射ノズル130から粒子120を噴射することによって伝熱部材110の片面に凹凸状部を形成する。本発明の処理方法は、図1に限定されず、固定式のノズルと移動式のテーブルを用いる方法や、固定式のテーブルと移動式のノズルを用いる方法などを用いることもできる。
【0024】
本発明の第二は、上述の伝熱部材の用途である。
【0025】
上述の伝熱部材は、従来公知の様々な用途に用いることができるが、好ましくは熱交換器に用いられる。熱交換器に用いられる伝熱部材は用途に合わせて様々な形状を有しているが、フィンの形状で用いる場合には、上述の処理は少なくともフィン表面に施されていることが好ましい。フィンに施すことで、フィン一基の伝熱効率を向上させることができる。その結果、フィンの使用数を減らすことができ、フィンの間隔を広げることができる。さらにその結果、熱交換器を小型化することができたり、フィン同士の間の熱媒体の流量を増加させて熱交換量をさらに向上させることができたりする。またチューブの形状で用いる場合には、上述の処理は少なくともチューブ内面に施されていることが好ましい。チューブ内部に施すことで、チューブの口径を小さくまたは長さを短くすることができ、熱交換器を小型化することができる。
【0026】
熱交換器としては特に限定されず従来公知のものに適用することができるが、ラジエーター、ヒーター、コンデンサ、コンデンサの伝熱フィン、エバポレータ、ウォータージャケット、オイルクーラー、インタークーラー、またはヒートパイプなどが挙げられる。
【0027】
上述の処理を施した伝熱部材または熱交換器は車両用部材として用いられることが好ましい。本発明の処理を施した伝熱部材または熱交換器は熱伝達率に優れるため、小型化することも可能である。一方で、車両には人間や荷物を載せるスペースを確保しつつ様々な車両用部材を詰め込まなくてはならないことから、本発明の処理を施した伝熱部材または熱交換器を従来の部材の代わりに用いることは好ましい。
【0028】
本発明の第三は上述の車両用部材を含む車両である。
【0029】
上述の車両用部材は伝熱効率に優れ、上述したように小型化が可能であることから、軽量化が可能となったり、車両に含まれる他の部材、例えばエンジンなどの設計の自由度を上げられたりできる。
【0030】
車両としては特に限定されないが、例えば、自動車、鉄道車両、航空機、または特殊車両などが挙げられる。
【実施例】
【0031】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0032】
(比較例1)
伝熱部材として、銅からなる円盤状の板(以下銅板と記載、厚み1.5mm、直径100.5mm、ビッカース硬さ80)を用意した。銅板の表面のSEM写真を図2に示す。
【0033】
特開2000−98694号公報の明細書段落「0008」〜「0011」に記載の装置および測定方法を用いて伝熱部材の熱伝達率を測定した。ただし、蓋板の温度は50℃となるように調節した。
【0034】
(実施例1)
比較例1の銅板に対し、図1に示す要領で本願発明の処理を施した。回転テーブル140に伝熱部材110を載せて、二点鎖線で示す方向に回転速度20rpmで回転テーブル140を回転させながら、噴射ノズル130から粒子120を噴射して、伝熱部材110の表面に凹凸状部を形成した。ノズル先端直径7.5mmの噴射ノズル130を一点鎖線で示す方向に速度1.3mm/secで移動させることで、伝熱部材110の表面にまんべんなく凹凸状部を形成した。粒子として平均粒子径15μmのホワイトアルミナを用いた。加圧ガスとしては0.3MPaの加圧空気を用いた。
【0035】
処理後の、銅板の表面のSEM写真を図3に示す。
【0036】
次に、比較例1と同様にして伝熱部材の熱伝達率を比較した。比較例1の伝熱部材の熱伝達率を1とした際の相対値を表1に示す。
【0037】
【表1】


【0038】
表1から、本願発明の処理を加えることで、熱伝達を1.56倍まで向上させられることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の処理方法の一例を示す斜視図である。
【図2】比較例1の銅板の表面を写したSEM写真である。
【図3】実施例1の銅板の表面を写したSEM写真である。
【符号の説明】
【0040】
110 伝熱部材、
120 粒子、
130 ノズル、
140 回転テーブル。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成18年12月25日(2006.12.25)
【代理人】 【識別番号】100072349
【弁理士】
【氏名又は名称】八田 幹雄

【識別番号】100110995
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 泰男

【識別番号】100114649
【弁理士】
【氏名又は名称】宇谷 勝幸

【識別番号】100129126
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 健

【識別番号】100130971
【弁理士】
【氏名又は名称】都祭 正則

【識別番号】100134348
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 俊弘


【公開番号】 特開2008−155330(P2008−155330A)
【公開日】 平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願番号】 特願2006−347878(P2006−347878)