トップ :: B 処理操作 運輸 :: B24 研削;研磨

【発明の名称】 表面改質方法及び装置
【発明者】 【氏名】小畑 稔

【氏名】川岸 礼佳

【氏名】川野 昌平

【氏名】奥田 健

【氏名】亀山 育子

【要約】 【課題】被施工部材における施工対象部位の表層部に形成される加工硬化を抑制し、所望深さの圧縮応力層を形成して、応力腐食割れの発生を防止できること。

【解決手段】高速に加速したショットを被施工部材における施工対象部位の表面に衝突させて、当該被施工対象部位の表層部の残留応力を改質する、ショットピーニングを用いた表面改質方法において、前記ショットの直径が1.5mm以上であり、且つ、当該ショットが前記施工対象部位の表面に衝突するときのショット速度を25m/秒以下にするものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速に加速したショットを被施工部材における施工対象部位の表面に衝突させて、当該被施工対象部位の表層部の残留応力を改質する、ショットピーニングを用いた表面改質方法において、
前記ショットの直径が1.5mm以上であり、且つ、当該ショットが前記施工対象部位の表面に衝突するときのショット速度を25m/秒以下にすることを特徴とする表面改質方法。
【請求項2】
前記ショットの硬さが、被施工部材の硬度と同等かまたはそれ以上の硬度であることを特徴とする請求項1に記載の表面改質方法。
【請求項3】
前記ショットの材質が、ステンレス鋼あるいはニッケル基合金であることを特徴とする請求項1または2に記載の表面改質方法。
【請求項4】
前記ショットを超音波による振動エネルギーにより加速し、この超音波の振幅、周波数、充填するショット量の少なくとも一つを調整することにより、ショット速度を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の表面改質方法。
【請求項5】
前記ショットを、高速で回転する回転体の遠心力により加速し、この回転体の速度、ショット供給量の少なくとも一つを調整することにより、ショット速度を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の表面改質方法。
【請求項6】
前記ショットを圧縮気体により加速し、この圧縮気体の投射圧力、ショット供給量の少なくとも一つを調整することにより、ショット速度を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の表面改質方法。
【請求項7】
前記被施工部材が配管などの円筒構造物であり、上記被施工部材の施工対象部位が上記円筒構造物の内面または外面の溶接部及びその近傍であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の表面改質方法。
【請求項8】
前記被施工部材が沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器の炉底部に存在するシュラウドサポート、制御棒駆動機構スタブチューブ、インコアモニタハウジングであり、上記被施工部材の施工対象部位が、上記シュラウドサポート、上記制御棒駆動機構スタブチューブ、上記インコアモニタハウジングのそれぞれの溶接部及びその近傍であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の表面改質方法。
【請求項9】
前記被施工部材の施工対象部位が、取替シュラウドの構成要素間の溶接部及びその近傍、上記取替シュラウドと既設シュラウドサポートとの据付溶接部及びその近傍であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の表面改質方法。
【請求項10】
前記被施工部材が、加圧水型原子炉の上蓋とこの上蓋に付属する機器であり、上記被施工部材の施工対象部位が上記上蓋と上記上蓋付属機器との溶接部及びその近傍であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の表面改質方法。
【請求項11】
ショットを加速する加速手段と、被施工部材の施工対象部位を囲繞する囲繞手段とを有し、
この囲繞手段の内側で、上記加速手段により加速された前記ショットを前記被施工部材における前記施工対象部位の表面に衝突させて、当該施工対象部位の表層部の残留応力を改質する、ショットピーニングを用いた表面改質装置であって、
前記ショットの直径が1.5mm以上であり、
前記加速手段は、上記ショットが前記施工対象部位の表面に衝突するときのショット速度を25m/秒以下にするように当該ショットを加速するよう構成されたことを特徴とする表面改質装置。
【請求項12】
前記加速手段が、超音波による振動エネルギー発生手段、高速で回転する回転体の遠心力発生手段、または圧縮気体発生手段であることを特徴とする請求項11に記載の表面改質装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ショットピーニングを用いた表面改質方法及び表面改質装置に係り、特に、被施工部材としての原子炉内構造物等の溶接部及びその近傍の残留応力を改質する表面改質方法及び表面改質装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉内構造物は高温高圧水中という腐食環境に長時間曝され、引張応力が残留する溶接部では応力腐食割れと呼ばれるき裂の発生が懸念されている。そのようなき裂の発生を防止する手段として引張応力を圧縮応力に変換する応力改善技術が実機に適用されている。ショットピーニングは簡便で確実な応力改善技術の一つであり、原子炉内構造物への適用に向けた技術が開示されている(特許文献1〜5参照)。
【0003】
これらの技術におけるショットピーニングは、鋼球等のショットを被施工部材の施工対象部位(例えば溶接部等)に衝突させて、この施工対象部位に塑性変形を生じさせ、この施工対象部位の表層部の残留引張応力を残留圧縮応力に変換して、応力腐食割れの発生を防止するものである。
【0004】
溶接部に発生する引張残留応力に起因した応力腐食割れの発生を防止するための予防保全技術としての前記ショットピーニングは、施工装置が比較的単純で施工コストが安く、しかも確実に溶接部等に圧縮応力層を形成できる。このため、このショットピーニングは、応力腐食割れが問題になるような腐食環境で用いられる機器に広く適用されている。
【0005】
原子力産業においても、プラントの高経年化対策として高温高圧水という厳しい腐食環境に長時間曝される機器の溶接部等に適用されてきている。特に、沸騰水型原子炉の炉内構造物であるシュラウドを交換する際の同調工事として、炉底部の機器である制御棒駆動機構(CRD)スタブチュ−ブ、インコアモニタ(ICM)ハウジング、シュラウドサポートのそれぞれと原子炉圧力容器との溶接部や、新規シュラウドと既設部との溶接部等へのショットピーニングの適用が検討されているほか、新規プラント建設時に溶接部の残留引張応力を残留圧縮応力に変換するためにもショットピーニングの適用が検討されている。
【特許文献1】特開平6−39718号公報
【特許文献2】特開2004−169100号公報
【特許文献3】特開平10−71566号公報
【特許文献4】特開2002−120153号公報
【特許文献5】特開2000−298189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ショットピーニングは、前述のごとく、ショットと呼ばれる高速に加速されたショット(例えば鋼球)の運動エネルギーにより被施工部材の施工対象部位における表層部のみを塑性変形させ、その変形を部材内部の弾性部分で拘束することにより表層部に圧縮応力を形成する技術である。塑性加工を受けた表層部は加工硬化により強度が上昇し、圧縮応力層に相当する加工硬化層が表層部に形成される。
【0007】
このような圧縮応力場に存在する加工硬化層は応力腐食割れの発生に対しては、その裕度を増加させる方向に作用し、耐応力腐食割れ性の観点からは好ましい特性である。しかしながら、万が一そのような部材に耐力を十分越えるような予期せぬ過大な応力が負荷され、圧縮応力が引張応力に変わった場合には、加工硬化層が応力腐食割れの進展を加速するのではないかとの懸念がある。
【0008】
そこで、このような長期にわたる応力改善施工部分の信頼性を確保する観点から、なるべく表層部の加工硬化を低く抑えて、板厚内部にまで及ぶ圧縮応力層を形成できるショットピーニング技術が求められている。
【0009】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、被施工部材における施工対象部位の表層部に形成される加工硬化を抑制し、所望深さの圧縮応力層を形成して、応力腐食割れの発生を防止できる表面改質方法及び表面改質装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、高速に加速したショットを被施工部材における施工対象部位の表面に衝突させて、当該被施工対象部位の表層部の残留応力を改質する、ショットピーニングを用いた表面改質方法において、前記ショットの直径が1.5mm以上であり、且つ、当該ショットが前記施工対象部位の表面に衝突するときのショット速度を25m/秒以下にすることを特徴とするものである。
【0011】
さらに、本発明は、ショットを加速する加速手段と、被施工部材の施工対象部位を囲繞する囲繞手段とを有し、この囲繞手段の内側で、上記加速手段により加速された前記ショットを前記被施工部材における前記施工対象部位の表面に衝突させて、当該施工対象部位の表層部の残留応力を改質する、ショットピーニングを用いた表面改質装置であって、前記ショットの直径が1.5mm以上であり、前記加速手段は、上記ショットが前記施工対象部位の表面に衝突するときのショット速度を25m/秒以下にするように当該ショットを加速するよう構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る表面改質方法及び装置によれば、ショットピーニングによるショットの直径が1.5mm以上であり、且つ、当該ショットが被施工部材における施工対象部位の表面に衝突するときの速度を25m/秒以下にすることから、被加工部材における施工対象部位の表層部に形成される加工硬化を抑制できると共に、応力腐食割れの発生を長期間に亘って防止するために必要な所望深さの圧縮応力層を上記表層部に形成できる。この結果、応力腐食割れの発生を確実に防止でき、施工の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づき説明する。
【0014】
〔A〕第1の実施の形態(図1、図2)
図1は、本発明に係る表面改質装置の第1の実施の形態である超音波ショットピーニング施工装置を示す概略構成図である。図6は、本発明に係る表面改質装置が適用される沸騰水型原子炉の被施工部材及び施工対象部位を説明するための上記原子炉の部分断面図である。
【0015】
本発明に係る表面改質装置が適用される施工対象部位は、例えば図6に示す沸騰水型原子炉100において、被施工部材である原子炉圧力容器101と制御棒駆動機構(CRD)スタブチュ−ブ103と制御棒駆動機構ハウジング106との各溶接部及びその近傍、被施工部材である原子炉圧力容器101とインコアモニタ(ICM)ハウジング104との溶接部及びその近傍、被施工部材である原子炉圧力容器101とシュラウドサポート102とシュラウド105との各溶接部及びその近傍、被施工部材であるシュラウドサポート構成要素間の溶接部及びその近傍である。更に、上記施工対象部位は、被施工部材である取り替えられた新規のシュラウド105と既設のシュラウドサポート102との据付溶接部及びその近傍、被施工部材である取り替えられる新規のシュラウド構成要素間の溶接部及びその近傍等である。
【0016】
また、本発明に係る表面改質装置が適用される施工対象部位は、図示しない加圧水型原子炉にあっては、例えば、原子炉容器の施工対象部位である上蓋と上蓋付属機器(例えば管台)との溶接部及びその近傍等である。
【0017】
尚、上述のシュラウドサポート102、制御棒駆動機構スタブチュ−ブ103、制御棒駆動機構ハウジング106、インコアモニタハウジング104は、図6に示すように、原子炉圧力容器101の炉底部に溶接により取り付けられ、シュラウドサポート102にシュラウド105が溶接されて支持される。また、制御棒駆動機構スタブチュ−ブ103内に制御棒駆動機構ハウジング106が挿入され、これらが溶接されて取り付けられる。
【0018】
取り替えられた新規のシュラウド105は、耐応力腐食割れ性の高い材料で製造されたものであり、経年プラントにおいて、応力腐食割れの発生を抑制するために予防保全として、応力腐食割れ感受性の高い材料で製作されたシュラウド105と交換して取り付けられるものである。この新規のシュラウド105は、既設のシュラウドサポート102に溶接されて据え付けられる。
【0019】
さて、表面改質装置としての図1に示す超音波型ショットピーニング施工装置10は、前記被施工部材が配管等の円筒構造物11であり、この円筒構造物11の内面12の溶接部13及びその近傍を施工対象部位として、この溶接部13及びその近傍にショット1を衝突させ、ショットピーニングにより施工対象部位の残留応力を改質するものである。この超音波型ショットピーニング施工装置10は、加速手段としての超音波振動子14、超音波トランスデューサ(不図示)及び超音波発生装置15、並びに囲繞手段としての一対の施工チャンバ部材16、17を有して構成される。
【0020】
一対の施工チャンバ部材16、17は円板形状であり、円筒構造物11の内面12における溶接部13を、円筒構造物11の軸方向両側から挟むように囲繞して設置される。これらの施工チャンバ部材16、17の外周縁には、円筒構造物11の内面12に接触してショット1の漏洩を防止するためのシール材18が設けられている。ショット1は、これらの施工チャンバ部材16、17の内側に囲まれるチャンバ21内で、超音波振動子14から超音波による振動エネルギーを受けて加速され、溶接部13及びその近傍の表面に衝突する。
【0021】
上記施工チャンバ部材16、17の一方、例えば施工チャンバ部材17にはショット投入ノズル19が設置され、このショット投入ノズル19にショット投入バルブ20が取り付けられている。このショット投入バルブ20の開操作により、図示しないショット供給手段からショット投入ノズル19を経て、施工チャンバ部材16、17で形成されたチャンバ21内へショット1が投入される。
【0022】
ここで、このショット1は、直径が約1.5mm以下であり、ステンレス鋼またはニッケル基合金の材質から構成されている。ショット1の硬さは、円筒構造物11の硬度と同等か、それ以上の硬度に設定されている。
【0023】
前記超音波振動子14、超音波トランスデューサ及び超音波発生装置15は、超音波による振動エネルギーを発生する手段である。このうち、超音波振動子14及び超音波トランスデューサは、施工チャンバ部材16、17のうち、例えば施工チャンバ部材16の内側に設置される。超音波トランスデューサは、超音波発生装置15にて発生した超音波を超音波振動子14へ伝達する。
【0024】
超音波発生装置15の起動により発生した超音波が超音波トランスデューサを介して超音波振動子14へ伝達されると、この超音波振動子14が振動して、チャンバ21内に投入されたショット1を高速に加速する。この加速されたショット1は、円筒構造物11の内面12の溶接部13及びその近傍に衝突するが、この衝突するショット1のショット速度は、約25m/秒以下に設定される。このショット速度は、超音波振動子14の振幅、超音波振動子14の周波数、チャンバ21内に投入されるショット1の投入量の少なくとも一つを調整することによって制御される。
【0025】
加速されたショット1が円筒構造物11の内面12の溶接部13及びその近傍に衝突すると、このショット1の運動エネルギーによって上記溶接部13及びその近傍の表面が塑性変形し、この溶接部13及びその近傍の表層部の残留引張応力が残留圧縮応力に変換されて応力が改質される。
【0026】
一般的なショットピーニングでは、ショットの直径は0.3〜0.6mm程度であり、ショットが施工対象部位の表面に衝突するときのショット速度は60〜100m/秒程度である。従って、このような条件で施工した場合には、施工対象部位の極表層部にして 塑性変形が集中して、表層部の加工硬化が著しく増大し、この加工硬化が応力腐食割れ発生の一因となっていた。
【0027】
これに対し、本実施の形態では、ショット1の直径が1.5mm程度以上であり、ショット1が施工対象部位(つまり、円筒構造物11の内面12における溶接部13及びその近傍)の表面に衝突するとき、ショット速度が25m/秒程度以下に設定されているので、上記溶接部13及びその近傍の表層部に生ずる加工硬化が抑制される。しかも、当該表層部に形成される残留圧縮応力は、応力腐食割れを長期間にわたって防止するために必要な深さ(例えば表面から200μm程度)の範囲に形成される。
【0028】
次に、上述の超音波ショットピーニング施工装置10と同様な超音波ショットピーニング施工装置を用いて、板状試験片にショットピーニングを施工したときの一例を示す。
【0029】
上記試験片の材質はステンレス鋼SUS316Lであり、この試験片をチャンバ内に収容し、この試験片に直径の異なるショット1を衝突させてショットピーニングを施した。施工時間は試験片表面のカベレージがほぼ100%になる時間とした。ここで、カベレージ100%とは、試験片の全表面に対してショット1が少なくとも一回衝突した状態を意味する。ショット速度は、試験片を収容するチャンバ内に投入されるショット投入量、振動子14の振幅、周波数の少なくとも一つを調整することにより、約25m/秒に保持した。施工に用いたショットはSUS304の組成を有するステンレス鋼であり、その平均硬さは285Hvであり、試験片(SUS316L製)の硬さである160Hvを十分に越える硬度を有している。
【0030】
このショットピーニングの施工後、試験片断面の硬度を測定し、表面から20μmの位置のビッカース硬さとショットの直径との関連を図2に示す。ショットの直径が1.5mm以上の場合に、試験片の表層部のビッカース硬度が300Hv以下の値になり、この表層部の加工硬化の上昇が抑えられていることがわかる。
【0031】
従って、本実施の形態によれば、次の効果を奏する。
【0032】
超音波ショットピーニング施工装置10を用いたショットピーニングによるショット1の直径が1.5mm程度以上であり、かつ当該ショットが円筒構造物11における内面12の溶接部13及びその近傍の表面に衝突するときの速度を25m/秒程度以下にすることから、上記溶接部13及びその近傍の表層部に形成される加工硬化を抑制できると共に、応力腐食割れの発生を長期間にわたって防止するために必要な所望深さ(表面から200μm程度)の圧縮応力層を上記表層部に形成できる。この結果、円筒構造物11の内面12における溶接部13及びその近傍に応力腐食割れの発生を確実に防止でき、施工の信頼性を向上させることができる。
【0033】
[B]第2の実施の形態(図3)
図3は、本発明に係る表面改質装置の第2の実施の形態である超音波ショットピーニング施工装置を示す概略構成図である。この第2の実施の形態において、前記第1の実施の形態と同様な部分は、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0034】
本実施の形態の超音波ショットピーニング施工装置30が前記第1の実施の形態の超音波ショットピーニング施工装置10と異なる点は、施工チャンバ部材の構造である。
【0035】
つまり、超音波ショットピーニング施工装置30は、被施工部材としての円筒構造物11の外面32における溶接部33及びその近傍を施工対象部位とするものであり、一対の施工チャンバ部材34及び35は、それぞれが断面コ字形状で半リング状に形成される。これらの施工チャンバ部材34、35は、円筒構造物11の外側から、当該円筒構造物11の外面32における溶接部33及びその近傍を覆うように囲繞して、内側にチャンバ36を形成し、端面同士を突き合せて、全体としてリング形状となるように配置する。
【0036】
各施工チャンバ部材34、35の内周縁には、円筒構造物11の外面32に接触してショット1の漏洩を防止するシール材18が設けられている。また、施工チャンバ部材34、35のそれぞれにショット投入ノズル19及びショット投入バルブ20が取り付けられ、施工チャンバ部材34、35のそれぞれの内面に超音波振動子14及び超音波トランスデューサ(不図示)が設置されている。ショット投入バルブ20の開操作によりショット投入ノズル19を介してショット1が、施工チャンバ34及び35の前記チャンバ36内に所定量を投入される。この状態で、超音波発生装置15の起動により、超音波トランスデューサを介して超音波振動子14が超音波により振動し、チャンバ36内に投入されたショット1を高速に加速する。
【0037】
本実施の形態においても、超音波振動子14の振幅、超音波振動子14の周波数、ショット1のチャンバ36内への投入量の少なくとも一つが調整されることによって、ショット1が円筒構造物11の外面32における溶接部33及びその近傍の表面に衝突するときのショット速度が25m/秒程度以下に制御される。また、ショット1は、直径が1.5mm程度以上のものが用いられる。
【0038】
従って、本実施の形態においても、チャンバ36内に投入されたショット1が、超音波振動子14からの超音波による振動エネルギーを受けて、円筒構造物11の外面32における溶接部33及びその近傍に衝突し、このショットピーニングにより上記溶接部33及びその近傍の表面を塑性変形して、この溶接部33及びその近傍の表層部の加工硬化を抑制しつつ、その表層部の残留引張応力を残留圧縮応力に変換する。この結果、円筒構造物11の外面32における溶接部33及びその近傍に応力腐食割れの発生を確実に防止できる。
【0039】
[C]第3の実施の形態(図4)
図4は、本発明に係る表面改質装置の第3の実施の形態であるインペラ型ショットピーニング施工装置を、板状試験片に適用したときの試験片の表層部の硬度とショット速度との関係を示すグラフである。この第3の実施の形態において、前記第1及び第2の実施の形態と同様な部分は、同一の符号を用いることにより説明を省略する。
【0040】
この第3の実施の形態の表面改質装置は、高速で回転する回転体としてのインペラ(不図示)を用いてショット1を高速で回転させるインペラ型ショットピーニング施工装置である。
【0041】
このインペラ型ショットピーニング施工装置は、ショット1を加速するときの加速手段(不図示)と、被施工部材の施工対象部位、例えば円筒構造物11の内面12における溶接部13及びその近傍を囲繞する囲繞手段(不図示)とを有する。
【0042】
上記加速手段は、インペラを高速で回転させて遠心力を発生させる手段であり、例えばモーターなどの回転駆動源である。また、囲繞手段は、施工対象部位を囲繞して、内側にチャンバを形成する、例えば第1の実施の形態の施工チャンバ部材16、17または第2の実施の形態の施工チャンバ部材34、35等と同様な施工チャンバ部材である。
【0043】
このインペラ型ショットピーニング施工装置においては、施工チャンバ部材によって被施工部材の施工対象部位(例えば円筒構造物11の内面12における溶接部13及びその近傍)を覆い、この施工チャンバ部材の内側のチャンバ内へ、高速回転するインペラの遠心力により加速されたショット1を供給することによって、施工対象部位の表面に上記ショット1を衝突させて、この施工対象部位の表層部の残留引張応力を残留圧縮応力に変換する。
【0044】
このインペラ型ショットピーニング装置においても、ショット1は直径が1.5mm程度以上であり、ショット1が施工対象部位の表面に衝突するときのショット速度が25m/秒程度以下に制御されているので、施工対象部位の表層部に生ずる加工硬化が抑制される。更に、当該表層部に形成される残留圧縮応力は、応力腐食割れを長期間に亘って防止するために必要な深さ(例えば表面から200μm程度)の範囲に形成される。上記ショット速度は、インペラの回転速度(回転数)とチャンバ内へのショット1の供給量の少なくとも一つを調整することにより、25m/秒程度以下に制御される。
【0045】
次に、上述のインペラ型ショットピーニング施工装置を用いて、板状の試験片にショットピーニングを施したときの一例を示す。
【0046】
上記試験片の材質はステンレス鋼SUS316Lであり、この試験片に直径1.5mmで、SUS304の組成を有するショットを衝突させて、ショットピーニングを施した。このショットは平均硬さが285Hvであり、試験片(SUS316L製)の硬さである160Hvを十分に超える硬度を有している。また、ショット速度は、インペラの回転数、ショット供給量の少なくとも一つを調整することにより変化させた。施工時間は表面のカベレージがほぼ100%になる時間とした。
【0047】
このショットピーニング施工後の試験片断面の硬度を測定し、試験片の表面から20μmの位置のビッカース硬さとショット速度との関連を調べた。その結果を図4に示す。ショット速度が25m/秒以下の速度の条件でショットを投射した場合に、試験片の表層部のビッカース硬度が300Hv以下の値になり、この表層部の加工硬化の上昇が抑えられていることがわかる。
【0048】
従って、本実施の形態においても、ショット1の直径が1.5mm程度以上であり、このショット1が施工対象部位の表面に衝突するときのショット速度が25m/秒程度以下に制御されているので、前記第1の実施の形態の効果(1)と同様な効果を奏する。
【0049】
[D]第4の実施の形態(図5)
図5は、本発明に係る表面改質装置の第4の実施の形態である圧縮空気型ショットピーニング施工装置を、板状試験片に適応したときの試験片の表層部の硬度とショット速度との関係を示すグラフである。この第4の実施の形態において、前記第1及び第2の実施の形態と同様な部分は、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0050】
この第4の実施の形態の表面改質装置は、圧縮気体としての圧縮空気によりショット1を高速で加速させる圧縮空気型ショットピーニング施工装置である。
【0051】
この圧縮空気型ショットピーニング施工装置は、ショット1を加速するときの加速手段(不図示)と、被施工部材の施工対象部位、例えば円筒構造物11の内面12における溶接部13及びその近傍を囲繞する囲繞手段(不図示)とを有する。
【0052】
上記加速手段は、圧縮空気を発生させる手段であり、例えばコンプレッサ等である。尚、圧縮気体としては、圧縮ヘリウム等であってもよい。また、囲繞手段は、施工対象部位を囲繞して、内側にチャンバを形成する、例えば第1の実施の形態の施工チャンバ部材16及び17、第2の実施の形態の施工チャンバ部材34及び35等と同様な施工チャンバ部材である。
【0053】
この圧縮空気型ショットピーニング施工装置においては、施工チャンバ部材によって被施工部材の施工対象部位(例えば円筒構造物11の内面12における溶接部13及びその近傍)を覆い、この施工チャンバ部材の内側のチャンバ内へ、圧縮空気の投射圧力により加速されたショット1を供給することによって、施工対象部位の表面に上記ショット1を衝突させて、この施工対象部位の表層部の残留引張応力を残留圧縮応力に変換する。
【0054】
この圧縮空気型ショットピーニング装置においても、ショット1は直径が1.5mm程度以上であり、ショット1が施工対象部位の表面に衝突するときのショット速度が25m/秒程度以下に制御されているので、施工対象部位の表層部に生ずる加工硬化が抑制される。更に、当該表層部に形成される残留圧縮応力は、応力腐食割れを長期間に亘って防止するために必要な深さ(例えば表面から200μm程度)の範囲に形成される。上記ショット速度は、圧縮空気による投射圧力とチャンバ内へのショット1の供給量の少なくとも一つを調整することにより、25m/秒程度以下に制御される。
【0055】
次に、上述の圧縮空気型ショットピーニング施工装置を用いて、板状の試験片にショットピーニングを施したときの一例を示す。
【0056】
上記試験片の材質はステンレス鋼SUS316Lであり、この試験片に直径1.5mmで、SUS304の組成を有するショットを衝突させて、ショットピーニングを施した。このショットは平均硬さが285Hvであり、試験片(SUS316L製)の硬さである160Hvを十分に超える硬度を有している。また、ショット速度は、圧縮空気による投射圧力、ショット供給量の少なくとも一つを調整することにより変化させた。施工時間は表面のカベレージがほぼ100%になる時間とした。
【0057】
このショットピーニング施工後の試験片断面の硬度を測定し、試験片の表面から20μmの位置のビッカース硬さとショット速度との関連を調べた。その結果を図5に示す。ショット速度が25m/秒以下の速度の条件でショットを投射した場合に、試験片の表層部のビッカース硬度が300Hv以下の値になり、この表層部の加工硬化の上昇が抑えられていることがわかる。
【0058】
従って、本実施の形態においても、ショット1の直径が1.5mm程度以上であり、このショット1が施工対象部位の表面に衝突するときのショット速度が25m/秒程度以下に制御されているので、前記第1の実施の形態の効果(1)と同様な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る表面改質装置の第1の実施の形態である超音波ショットピーニング施工装置を示す概略構成図。
【図2】図1と同様な超音波ショットピーニング施工装置を板状試験片に適応したときの試験片表層部の硬度とショット径との関係を示すグラフ。
【図3】本発明に係る表面改質装置の第2の実施の形態である超音波ショットピーニング施工装置を示す概略構成図。
【図4】本発明に係る表面改質装置の第3の実施の形態であるインペラ型ショットピーニング施工装置を、板状試験片に適用したときの試験片の表層部の硬度とショット速度との関係を示すグラフ。
【図5】本発明に係る表面改質装置の第4の実施の形態である圧縮空気型ショットピーニング施工装置を、板状試験片に適応したときの試験片の表層部の硬度とショット速度との関係を示すグラフ。
【図6】本発明に係る表面改質装置が適用される沸騰水型原子炉の被施工部材及び施工対象部位を説明するための上記原子炉の部分断面図。
【符号の説明】
【0060】
10 超音波ショットピーニング施工装置(表面改質装置)
11 円筒構造物(被施工部材)
13 溶接部(施工対象部位)
14 超音波振動子(加速手段)
15 超音波発生装置(加速手段)
16、17 施工チャンバ部材(囲繞手段)
21 チャンバ
30 超音波ショットピーニング施工装置(表面改質装置)
33 溶接部(施工対象部位)
34、35 施工チャンバ部材(囲繞手段)
36 チャンバ
【出願人】 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【出願日】 平成18年12月5日(2006.12.5)
【代理人】 【識別番号】100078765
【弁理士】
【氏名又は名称】波多野 久

【識別番号】100078802
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 俊三

【識別番号】100077757
【弁理士】
【氏名又は名称】猿渡 章雄

【識別番号】100122253
【弁理士】
【氏名又は名称】古川 潤一

【識別番号】100130731
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 修

【識別番号】100136504
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 毅彦


【公開番号】 特開2008−137141(P2008−137141A)
【公開日】 平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願番号】 特願2006−328222(P2006−328222)