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【発明の名称】 ショットブラスト装置用コンベヤベルト
【発明者】 【氏名】玉田 義典

【氏名】梁取 和人

【氏名】天野 成彦

【要約】 【課題】帆布層の積層数が多くても優れた耐座屈性を有するショットブラスト装置用コンベヤベルトを提供する。

【解決手段】コンベヤベルトが稼動してプーリ等のまわりを通過して繰り返し屈曲する際に中立面の内周側となって圧縮応力が生じる帆布層3aおよびその他の帆布層について、横糸5の配列ピッチPと、横糸5の配列ピッチP間における縦糸4の長さLとの比に基づいて算出した縦糸クリンプ率Cを3.6%以上にして、縦糸4の湾曲具合を大きくするとともに、この帆布層3a等の縦糸4と横糸5のカバーファクタの合計値Kを4300以上5500以下に設定して、コンベヤベルトの製造時の加熱による帆布層3a等の収縮を抑制して、縦糸4の大きな湾曲具合を維持する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材を平織構造の帆布層を複数積層して構成し、搬送面上で被加工物を回転攪拌するショットブラスト装置用コンベヤベルトであって、前記複数の帆布層のうち、少なくともコンベヤベルトの最も内周側に積層される帆布層について、コンベヤベルトの成型、加硫後の該帆布層のゲージ厚Hと、縦糸のゲージ厚hと、横糸の配列ピッチPとで下記(1)式により算出される縦糸クリンプ率Cを3.6%以上、かつ該帆布層の縦糸と横糸のカバーファクタの合計値Kを4300以上5500以下としたショットブラスト装置用コンベヤベルト。
C=(((H−h)+P1/2/P−1)×100(%) ・・・(1)
【請求項2】
前記複数の帆布層のうち、少なくともコンベヤベルトの最も内周側に積層される帆布層の縦糸の材質をポリエステルとする請求項1に記載のショットブラスト装置用コンベヤベルト。
【請求項3】
前記複数の帆布層のうち、少なくともコンベヤベルトの最も内周側に積層される帆布層の縦方向破断強度を1000N/cm以上1500N/cm以下とする請求項1または2に記載のショットブラスト装置用コンベヤベルト。
【請求項4】
前記積層する帆布層の数を6以上10以下とする請求項1〜3のいずれかに記載のショットブラスト装置用コンベヤベルト。







【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ショットブラスト装置用コンベヤベルトに関し、さらに詳しくは、帆布層の積層数が多くても優れた耐座屈性を有するショットブラスト装置用コンベヤベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンベヤベルトの搬送面上で、金属部品等の被加工物を回転攪拌しながら投射材を投射して被加工物の表面処理を行なう、いわゆるエプロン式ショットブラスト装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなショットブラスト装置は、コンパクト化のため、コンベヤベルトを張架するプーリの径が小さく、コンベヤベルトのエンドレス部(帆布層の長手方向両端部の接合部)の引張り強度を確保するために芯材となる帆布層の積層数が、例えば6層以上になり一般的なコンベヤベルトよりも多くなる。
【0003】
そのため、コンベヤベルトが稼動してプーリまわりを通過して屈曲する際に、中立面よりも内周側になる帆布層には屈曲する度に非常に大きな圧縮応力が発生し、この帆布層を構成する縦糸が圧縮応力により座屈して破断に至ることがある。縦糸が座屈したままコンベヤベルトを稼動し続けると帆布層の大きな損傷に発展してコンベヤベルトが稼動できなくなるとういう問題が発生するために、優れた耐座屈性を有する芯材を用いてコンベヤベルトを構成する必要があった。
【特許文献1】特開平6−000769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、帆布層の積層数が多くても優れた耐座屈性を有するショットブラスト装置用コンベヤベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本発明のショットブラスト装置用コンベヤベルトは、芯材を平織構造の帆布層を複数積層して構成し、搬送面上で被研磨物を回転攪拌するショットブラスト装置用コンベヤベルトであって、前記複数の帆布層のうち、少なくともコンベヤベルトの最も内周側に積層される帆布層について、コンベヤベルトの成型、加硫後の該帆布層のゲージ厚Hと、縦糸のゲージ厚hと、横糸の配列ピッチPとで下記(1)式により算出される縦糸クリンプ率Cを3.6%以上、かつ該帆布層の縦糸と横糸のカバーファクタの合計値Kを4300以上5500以下としたことを特徴とするものである。
C=(((H−h)+P1/2/P−1)×100(%) ・・・(1)
【発明の効果】
【0006】
本発明のショットブラスト装置用コンベヤベルトによれば、コンベヤベルトが稼動してプーリ等のまわりを通過して繰り返し屈曲する際に中立面の内周側となって最も大きな圧縮応力が生じる最内周側に積層される帆布層について、コンベヤベルトの成型、加硫後の上記(1)式により算出した縦糸クリンプ率Cを3.6%以上にすることにより、横糸の配列ピッチP間における縦糸の織構造の湾曲具合を大きくしている。これにより、屈曲による縦糸に生じる圧縮応力を分散させて座屈の発生を防止することができる。
【0007】
更に、最内周側に積層される帆布層の縦糸と横糸のカバーファクタの合計値Kを4300以上5500以下として、縦糸と横糸の目の詰まり具合を設定している。これにより、コンベヤベルトの製造時の加熱による帆布層の収縮を抑制して、縦糸の大きな湾曲具合を維持することができるので、コンベヤベルトの耐座屈性を向上することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のショットブラスト装置用コンベヤベルトを図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0009】
図1に例示するように本発明のショットブラスト装置用コンベヤベルト1(以下、コンベヤベルト1という)は、いわゆるエプロン式のショットブラスト装置6に装着されている。このショットブラスト装置6は、前方位置のプーリ7dと上方位置のプーリ7cとの間のコンベヤベルト1の搬送面上に幅方向に対向する回転板8、8を備えている。この回転板8、8とコンベヤベルト1の搬送面とにより囲まれて形成される空間が、被加工物12の収容部11となる。収容部11の上方には、投射材10を投射する投射装置9が配置されている。
【0010】
ショットブラスト装置6は、コンパクトに構成されるため、コンベヤベルト1を架け渡す多数のプーリ7a〜7eの径は小さく構成されるとともに、限られたスペースに配置され、コンベヤベルト1は、これら多数のプーリ7a〜7eに縫うように張架されている。コンベヤベルト1は、下方位置のプーリ7aが上下移動することにより着脱され、このプーリ7aの移動量を調節することにより必要なテンションで張架される。
【0011】
図2に例示するように、このコンベヤベルト1はゴム層2、2の間に芯材3を介挿し、芯材3は、平織構造の同仕様の帆布層3a〜3hを8層積層して構成されている。帆布層3a〜3hの積層数はコンベヤベルト1に対する要求性能(剛性、伸び等)により決定され、8層に限定されるものではないが、曲げ剛性を高くしすぎないために、例えば、6層〜10層程度、さらに好ましくは7層〜8層程度にする。
【0012】
また、コンベヤベルト1の十分な引張り強度を得るために各帆布層3a〜3hの縦方向破断強度を1000N/cm以上1500N/cm以下にすることが特に好ましいが、少なくとも最も内周側に積層される帆布層3a、3hの縦方向破断強度を1000N/cm以上1500N/cm以下にするとよい。縦方向破断強度が1500N/cm超になると曲げ剛性が高くなり、コンベヤベルト1の耐屈曲性に悪影響が生じ易くなる。尚、縦方向破断強度とは、JIS K 6322に基づいて測定した値である。
【0013】
被加工物12の表面処理をするには、駆動プーリ7bを回転駆動させてコンベヤベルト1を稼動し、これと共に回転板8、8も回転させる。このようにして、収容されている被加工物12を回転攪拌させ、同時に投射装置9から投射材10を投射して所定時間この加工操作を続けることにより、被加工物12の表面がむら無く研磨される。
【0014】
この加工操作中にコンベヤベルト1は、それぞれのプーリ7a〜7eまわりを通過し、その度に繰り返し屈曲される。図3に例示するように、プーリ7aやその他のプーリ7b〜7eまわりを回転移動するコンベヤベルト1には、二点鎖線で示す中立面Nを境にして中立面Nの外周側には引張応力が発生し、内周側には圧縮応力が発生する。尚、図3は、説明を容易にするため簡素化し、帆布層3b、3c、3f、3gを省略して示している。
【0015】
中立面Nの位置は、コンベヤベルト1の厚さ、帆布層3a〜3hの数や位置等により変化するが、例えば、内周側の帆布層3a〜3dに圧縮応力が発生し、すべての帆布層3a〜3hが同じ仕様であれば、最も内周側となる帆布層3aに最も大きな圧縮応力が発生する。帆布層3a〜3hを構成する縦糸4や横糸5は引張応力に対してはある程度剛性を有しているが、圧縮応力に対しては剛性が極めて低い。
【0016】
平織構造の帆布層3aは、図4に例示するように縦糸4と横糸5とが1本ごとに浮き沈みして交錯する織構造になっており、横糸5の配列ピッチP間で縦糸4が上下に湾曲し、横糸5も縦糸4の配列ピッチ間で上下に湾曲している。尚、8層の帆布層3a〜3hはすべて同じ仕様なので、図4では代表して帆布層3aを図示している。
【0017】
縦糸4は、コンベヤベルト1の長手方向に延設され、横糸5はコンベヤベルト1の幅方向に延設されているため、コンベヤベルト1がプーリ7a〜7eまわりで屈曲しても横糸5にはほとんど圧縮応力が発生しないが、縦糸4には大きな圧縮応力が発生する。
【0018】
そのため、コンベヤベルト1が稼動してプーリ7a〜7eまわりを通過する度に繰り返し屈曲して圧縮応力が発生する帆布層3a〜3dについては、屈曲により縦糸4が座屈しないようにして、帆布層3a〜3dの大きな損傷に発展する縦糸4の破断を防止する必要がある。特に最も大きな圧縮応力が発生する最内周側に積層された帆布層3aについて、縦糸4の座屈を防止する必要がある。
【0019】
縦糸4の織構造の湾曲具合は、屈曲による座屈の発生に大きく影響し、湾曲具合が小さくて横糸5と直線的に交錯していると、容易に変形することができず、ある点に圧縮応力が集中して折れ曲がって座屈が発生する。一方、縦糸4が上下に大きく湾曲している織構造であれば、広範囲にわたり容易に変形することができるので圧縮応力が分散して座屈する危険性が小さくなる。
【0020】
そこで、本発明では、図4に示すように、コンベヤベルト1の成型、加硫後の帆布層3a〜3hの横糸5の配列ピッチPと、横糸5の配列ピッチP間における縦糸4の長さLとの比に基づいて、縦糸4の織構造の湾曲具合を規定している。即ち、L/P値が大きい程、縦糸4が大きく湾曲していて座屈しにくい構造といえる。
【0021】
横糸5の配列ピッチP間における縦糸4の長さLは、厳密には図4に二点鎖線で示したような直線ではなく、縦糸4の湾曲形状に沿った曲線となるが、図示した二点鎖線の直線として近似することにより、容易に縦糸4の長さLを算出することができる。例えば、図4に示したように、横糸5の配列ピッチPと帆布層3a〜3hのゲージ厚さHと縦糸4のゲージ厚さhとを用いて直角三角形の斜辺の長さを求めるようにして式L=((H−h)+P1/2 により長さLを算出することができる。
【0022】
例えば、この長さLの算出式を用いた下記の(1)式により算出する縦糸クリンプ率Cを、縦糸4の織構造の湾曲具合を示す指標として用いることができる。
C=(((H−h)+P1/2/P−1)×100(%) ・・・(1)
【0023】
この縦糸クリンプ率Cにより帆布層3a〜3dの座屈し易さ、即ち、コンベヤベルト1の耐座屈性を評価することができ、縦糸クリンプ率Cの値が大きい程、繰り返し圧縮応力が生じる帆布層3a〜3dの縦糸4が座屈しにくくなる。プーリ径7a〜7eが小さく、帆布層3a〜3hの積層数が多いショットブラスト装置6に使用されるコンベヤベルト1では、十分な耐座屈性を有するために、縦糸クリンプ率Cが3.6%以上であることが好ましい。縦糸クリンプ率Cが3.6%未満であると、縦糸4の織構造の湾曲具合が小さく直線的となり、座屈し易くなって十分な耐座屈性を得ることができない。
【0024】
尚、縦糸ゲージ厚hは実測する他に、例えば、式h=(縦糸総繊度a1(dtex)÷10000÷縦糸比重b1(g/cm)÷π)1/2×2×αにより算出することができる。ここで、α値は縦糸4の扁平係数であり経験値として約0.74程度となる。また、横糸5の配列ピッチPは実測する他に、例えば、式P=50÷横糸密度(本/50mm)により算出することができる。
【0025】
帆布層3a〜3hの縦糸4および横糸5はポリエステル、アラミド、ビニロン、ナイロンなど種々の材質を使用することができるが、ショットブラスト装置6は、コンパクト化のためコンベヤベルト1を着脱する際のプーリ7aの移動量が極めて小さく設定されているので、コンベヤベルト1の長手方向の伸びを小さく抑える必要がある。そのため、すべての帆布層3a〜3hの縦糸4には伸びが小さく剛性の高い材質、例えば、ポリエステル等を用いることが特に好ましいが、少なくとも、コンベヤベルト1の最も内周側に積層される帆布層3a、3hの縦糸4の材質をポリエステルにするとよい。縦糸4の材質をポリエステル等にする場合は、座屈し易くなるので、縦糸クリンプ率Cを3.6%以上にすることで耐座屈性の大幅な向上が期待できる。
【0026】
コンベヤベルト1の製造では、帆布層3a〜3hにRFL接着剤を塗布して、それを乾燥・熱延伸する工程があり、その際に帆布層3a〜3hの幅が多少収縮する。この収縮率は、帆布層3a〜3hの縦糸4と横糸5の目の詰まり具合に大きく影響を受け、縦糸4の湾曲具合に変化をもたらす。そこで、本発明では、この目の詰まり具合を示す縦糸4と横糸5のカバーファクタの合計値Kについても適切な範囲を規定している。
【0027】
縦糸4、横糸5のそれぞれのカバーファクタK1、K2は、下記(2)、(3)式により算出される。
K1=d1×(A1/b1)1/2・・・(2)
K2=d2×(A2/b2)1/2・・・(3)
【0028】
ここで、d1、d2はそれぞれ縦糸4、横糸5の糸密度(本/50mm)、A1、A2はそれぞれ縦糸4、横糸5の繊度(dtex)、b1、b2はそれぞれ縦糸4、横糸5の糸比重(g/cm)である。
【0029】
このカバーファクタの合計値K(K1+K2)は、4300以上5500以下とすることが好ましい。この合計値Kが4300未満であると、コンベヤベルト1の製造工程での加熱により横糸5の収縮が大きくなり、この影響で縦糸4の湾曲具合が小さくなって座屈を防止するための十分な湾曲具合を確保することが困難になる。一方、カバーファクタの合計値Kが5500超であると帆布層3a〜3hの柔軟性が低下するとともに、製造が困難になる。
【0030】
実施形態では、すべての帆布層3a〜3hを同一仕様にしているが、コンベヤベルト1の稼動による屈曲により圧縮応力が生じる帆布層3a〜3dについてのみ、或いは最内周側に積層される帆布層3aについてのみ、上述した縦糸クリンプ率Cを3.6%以上とし、かつ縦糸4と横糸5のカバーファクタの合計値Kを4300以上5500以下に設定するようにしてもよい。
【実施例】
【0031】
図2に例示したように、上ゴム層6.5mm、下ゴム層3.0間に所定の厚みのゴムをコートした平織構造の同仕様の帆布層(それぞれの帆布層の縦方向破断強度が約1200N/cm)を8層積層した芯材を介挿した厚さ約17.5mmの所定長さの試験サンプルを作製し、帆布層の縦糸の材質をポリエステル、横糸の材質をナイロンとして共通にして、上記した(1)式により算出される縦糸クリンプ率Cおよび縦糸と横糸のカバーファクタの合計値Kのみを変化させた5種類の試験サンプル(実施例1、2、比較例1〜3)を用いて耐座屈性を評価した。
【0032】
耐座屈性の評価は、各試験サンプルを直径200mmのプーリに180°巻き付けた際の最も内周側に積層した帆布層の状態を確認したもので、その結果を表1に示す。表1では、最内周側の帆布層がプーリの周面に沿って追従した場合を○、追従せずに波打って縦糸が座屈し易い状態になった場合を×として耐座屈性を示している。
【0033】
【表1】


【0034】
表1の結果より、本発明で指標とした縦糸クリンプ率Cの範囲(3.6%以上)およびカバーファクタの合計値Kの範囲(4300以上5500以下)を満たす帆布層を用いることにより、最も内周側に積層された帆布層においても、波打つことなく剛性の高いポリエステル製の縦糸の座屈を防止できることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】ショットブラスト装置を例示する断面図である。
【図2】本発明のショットブラスト装置用コンベヤベルトの内部構造を例示する断面図である。
【図3】図2のショットブラスト装置用コンベヤベルトの屈曲状態を示す説明図である。
【図4】図2の最内周側に積層された帆布層の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 (ショットブラスト装置用)コンベヤベルト
2 ゴム層
3 芯材 3a〜3h 帆布層
4 縦糸
5 横糸
6 ショットブラスト装置
7a〜7h プーリ
8 回転板
9 投射材投射装置
10 投射材
11 収容部
12 被加工物
【出願人】 【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
【出願日】 平成18年10月12日(2006.10.12)
【代理人】 【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一

【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照

【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦


【公開番号】 特開2008−93790(P2008−93790A)
【公開日】 平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願番号】 特願2006−278852(P2006−278852)