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【発明の名称】 ガラス板の洗浄方法
【発明者】 【氏名】栗山 延也

【要約】 【課題】プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ等に用いられるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の用途にも使用できるように、金属錫由来のガラス板表面の異物を除去可能はガラス板表面の洗浄方法を提供することを課題とする。

【構成】溶融金属錫上でガラスリボンを板状に成形して得られるガラス板表面の洗浄方法であり、モース硬度3以下で、平均粒径が5〜50μmの粒子を噴射してガラス板表面に前記粒子を衝突させることで、前記溶融金属錫起因のガラス板表面の異物を除去する工程を有すること。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属錫上でガラスリボンを板状に成形して得られるガラス板表面の洗浄方法であり、モース硬度3以下で、平均粒径が5〜50μmの粒子を噴射してガラス板表面に前記粒子を衝突させることで、前記溶融金属錫起因のガラス板表面の異物を除去する工程を有することを特徴とするガラス板表面の洗浄方法。
【請求項2】
粒子を衝突させる前又は粒子を衝突させた後に、ガラス板表面を酸化還元滴定で0.1〜30規定の酸性水溶液に接触させる工程を有することを特徴とする請求項1に記載のガラス板表面の洗浄方法。
【請求項3】
粒子が、氷、及びドライアイスから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガラス板表面の洗浄方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の方法でガラス板表面を洗浄する工程を有することを特徴とするガラス基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、フロート法で得られるガラス板表面の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のガラス板製造方法の主流は“フロート法”である。本方法は、錫浴と呼ばれる溶融金属錫で満たされた槽に溶融ガラスを連続的に供給してガラスリボンを成型し、この錫浴面上でガラスリボンを浮かせた状態で前進させ、連続的に板状のガラスを成型する方法であり、平坦性に優れるガラス板を大量にかつ安定的に生産できる方法である。
【0003】
しかしながら、このフロート法では、前記溶融金属錫を起因とする錫系の異物がガラス板表面に形成され、欠陥として認識されることがある。特にフロート法で製造されるガラス種の徐冷点が高いものの場合、製造過程中での溶融金属の揮発が生じやすくなり、結果、ガラス板表面に溶融金属起因の錫系異物の発生が起こりやすい。
【0004】
ガラス板の用途には、自動車用、建築用の窓分野、電子材料、ディスプレイ分野等があり、これら用途では光学的透過性や表面の平坦性が要求される。従って、前記したような錫系異物欠陥を極力少なくすることが求められている。中でも、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ等に用いられるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の場合、微細な欠点であっても、問題となる場合があるので、前記したようなガラス表面の欠陥が排除されることが特に望まれる。
【0005】
フロート法で製造されたガラス表面から錫系異物を除去する方法として、酸性水溶液にガラス基板を浸漬し、異物を溶解および除去する方法が提案されており、例えば、特許文献1においては硝酸と塩酸の混酸への浸漬、特許文献2および3においては2価のクロムイオンを含む無機酸溶液への浸漬が開示されている。その他に、特許文献4では、ガラス板表面の錫系微小異物を、その付近、または接触した状態でハロゲン化アンモニウムを高温で昇華させることにより分解、揮散させて除去する方法が検討されている。
【0006】
他方、被処理物の表面に存在する有機物や酸化物等の汚染物を除去してクリーニングするために、該表面をブラスト処理することが知られている。例えば、特許文献5では、フィルムが剥離されたガラス質液晶ディスプレイパネルの表面にドライアイス等の粒子を衝突させ、次いで、プラズマを供給することで有機物を表面から除去する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平2−88445号公報
【特許文献2】特開平9−295832号公報
【特許文献3】特開平9−295833号公報
【特許文献4】特開平10−85684号公報
【特許文献5】特開2002−144231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、溶融金属錫上でガラスリボンを板状に成形して得られるガラス板表面の洗浄方法に関し、ガラス板を光学的透過性や表面の平坦性が要求される用途に提供できるよう、特には、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ等に用いられるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の用途にも使用できるように、金属錫由来のガラス板表面の異物を除去可能なガラス板表面の洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、溶融金属錫上でガラスリボンを板状に成形して得られるガラス板表面の洗浄方法を検討し、洗浄のために表面をブラスト処理する方法を検討してみたところ、意外にも、ガラス等の酸化物表面に形成された金属性異物の除去に効果があるとの知見を得、本発明をなすに至った。
【0009】
本発明のガラス板表面の洗浄方法は、溶融金属錫上でガラスリボンを板状に成形して得られるガラス板表面の洗浄方法であり、モース硬度3以下で、平均粒径が5〜50μmの粒子を噴射してガラス板表面に前記粒子を衝突させるブラスト処理を行うことで、前記溶融金属錫起因のガラス板表面の異物を除去することを特徴とする。
【0010】
ガラス板のモース硬度は、5〜6である。ブラスト処理にて溶融金属錫起因のガラス板表面の異物を除去しつつ、ガラス板表面の傷発生を防止するためには、ガラス板表面に噴射される粒子硬度及び粒子の大きさの選定が重要である。この観点から、ガラス板表面に噴射される粒子の硬度は3以下とされ、好ましくは、2以下、さらに好ましくは1以上とされる。
【0011】
また、ガラス板表面に噴射される粒子は、その粒径が大きくなりすぎると、ガラス板表面への衝突時の衝撃でガラス板が破損する場合がある。他方、その粒径が小さい場合、溶融金属錫起因の異物の除去が難しくなる。本発明では、これを考慮して、平均粒径を5〜50μmとした。そして、前述の点を考慮すると、該平均粒径は、さらには、10〜40μm、さらには、15〜35μmとすることが好ましい。
【0012】
尚、本発明での平均粒径は、JIS H0554(1995年)に準拠した方法で得られる平均粒径の値として定義される。そして、該方法に準拠した方法で測定し、前記した粒子径を有する粒子が本発明に適用される。
【0013】
さらに本発明では、ガラス板表面に粒子を衝突させる前又は粒子を衝突させた後に、ガラス板表面を酸化還元滴定で0.1〜30規定の酸性水溶液に接触させる酸処理を行うことが好ましい。本発明で、ブラスト処理と酸処理との併用を検討したところ、ブラスト処理を行う前に、酸処理を行うと、溶融金属錫起因のガラス板表面の異物の除去に著しく効果を奏した。そして、該酸性水溶液として、硝酸、硫酸、塩酸等の酸性度の強い無機酸を使用することが好ましい。
【0014】
そして本発明のブラスト処理で噴射に使用される粒子には、氷、及びドライアイスから選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。該粒子が氷であれば、基板表面への粒子の残留が無く、その後の洗浄が軽微なもので済むため好ましい。また、該粒子が昇華性を有するドライアイスであれば、噴射後のガラス表面に固形粒子が残留することがなく、その後の洗浄などが不必要となる。これを考慮すると、噴射に使用される粒子はドライアイスであることがより好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のガラス板表面の洗浄方法は、効率的に溶融金属錫起因のガラス板表面の異物を除去する。従って、本発明の方法で表面が洗浄されたガラス板は、光学的透過性や表面の平坦性が要求される用途に好適に提供でき、特には、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ等に用いられるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板として好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のガラス板表面の洗浄方法は、溶融金属錫上でガラスリボンを板状に成形して得られるガラス板表面の洗浄方法であり、モース硬度3以下で、平均粒径が5〜50μmの粒子を噴射してガラス板表面に前記粒子を衝突させるブラスト処理を行うことで、前記溶融金属錫起因のガラス板表面の異物を除去することを特徴とする。
【0017】
本発明でのモース硬度3以下の粒子の例は、氷、ドライアイス、炭酸カルシウム、石膏、滑石であり、中でも、前記で述べたように氷、ドライアイスを使用することが好ましい。
【0018】
ブラスト処理を行うための装置は、前記したような粒子の粒子群が分散されたキャリアガスを噴射する機構を有する。そして、噴射される粒子がドライアイスの場合、ブラスト処理を行うための装置は、液体又は超臨界状態の超臨界状態の二酸化炭素を気化させるための機構を有していても良い。二酸化炭素を気化さようとすると、20〜40重量%がドライアイスとなる。従って、液体又は超臨界状態の二酸化炭素を気化させるための機構を有すると、キャリアガス源と粒子源とを同一とすることができる。
【0019】
ブラスト処理する際のキャリアガスは、0.1〜1MPa、好ましくは、0.3〜0.8MPa、より好ましくは、0.4〜0.6MPaに圧縮された気体とすることが好ましく、二酸化炭素の他に、空気、窒素等の気体を使用することが好ましく、該気体は乾燥されたものとすることが好ましい。
【0020】
そして、粒子は、ガラス板表面に3〜30秒間、好ましくは、5〜20秒間吹き付けられ、粒子はガラス板表面に対して垂直から45度の角度で吹き付けられることが好ましく、略垂直に吹き付けられることがより好ましい。
【0021】
本発明のガラス板表面の洗浄方法は、フロート法で製造されるガラス種中、特に徐冷点が600℃以上で、特には600〜800℃の徐冷点を有するガラス種、特にはアルカリイオン、アルカリ土類イオンを有する珪酸塩ガラス種、所謂高歪点ガラスの表面の洗浄に対して特に効果的である。これら高歪点ガラスは、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ等のディスプレイ用途に好適に使用されるもので、ガラスの徐冷点が高いことから、その製造過程で、錫浴から錫が揮発しやすくなり、溶融金属錫起因のガラス板表面の異物欠陥が発生しやすくなるからである。尚、前記の徐冷点は、JIS R3103−2(2001年)「ガラスの粘性及び粘性定点−第2部:繊維引き伸ばし法による徐冷点及びひずみ点の測定方法」に準拠した方法で得られるものである。
【0022】
次に溶融金属錫起因のガラス板表面の異物種について説明する。該異物は、ガラス板表面のトップ面側(溶融錫と接して形成された面とは反対側面)に形成されうるトップスペック、及び錫落下物、そして、ガラス板表面のボトム面側(溶融錫と接して形成された面)に形成されうる搬送ロール付着物からの転写に起因するドロスに分類することができる。
【0023】
トップスペックは、錫浴上部からの落下付着物であり、ガラス板の厚み方向に、1〜5μm、特には2〜4μm、ガラス板の面方向に1〜200μmの長さを有して形成されうるもの、錫落下物は、ガラス板の厚み方向に0.1〜1μm、特には0.2〜0.5μm、ガラス板の面方向に1〜100μmの長さを有して形成されうるもの、そして、ドロスは、ガラス板の厚み方向に0.1〜1μm、特には0.2〜0.5μm、ガラス板の面方向に100〜400μmの長さを有して形成されうるものとして説明できる。
【0024】
そして、ガラス板から異物の除去の困難性は、「トップスペック>ドロス>錫落下物」の順である。これは、異物が発生する時の温度が「トップスペック>ドロス>錫落下物」の順で高いからである。そして、本発明の洗浄方法は、トップスペックの除去に対しても効果を奏す。
【実施例】
【0025】
実施例1
フロート法で製造された表1の組成及び631℃の徐冷点を有するガラス板(1000mm×1000mm×2.8mmt)の両表面を目視観察し、錫系異物として、
トップスペック 3個
ドロス 3個
錫落下物 4個
有するものを洗浄されるガラス板として選択した。該ガラス板に対して、ブラスト洗浄装置(大陽日酸社製 ドライアイス ブラスト洗浄装置 パウダーショット)を用いて、錫系異物が存在する部分に対して、キャリアガスを用いて粒子を10秒間噴射するブラスト処理を行った。この噴射において、ガラス板面に対する噴射角度を90°、粒子の噴射部からガラス板面までの距離を10mmとした。
【0026】
該ブラスト洗浄装置では、液体又は超臨界状態の二酸化炭素を気化させるための機構から、気体状の二酸化炭素を0.25kg/分で噴射する。その内の30重量%がドライアイスとなる。本実施例では、モース硬度が2であるドライアイスの平均粒径を30μmとし、30重量%のドライアイス粒子を含んだ気体状の二酸化炭素(該二酸化炭素がキャリアガスとなっている)の流量を、300l/分としてブラスト処理を行っている。ブラスト処理後にガラス板表面に傷の発生は観察されなかった。洗浄後、ガラス板表面に存在する錫系異物の数を観察したところ、次のとおりとなった。
【0027】
トップスペック 2個
ドロス 1個
錫落下物 0個
【0028】
【表1】


【0029】
実施例2
錫系異物として、
トップスペック 3個
ドロス 3個
錫落下物 5個
有するものを洗浄されるガラス板として選択し、ブラスト処理を行う前に、40℃−18%の硝酸水溶液(3規定)で60秒間シャワーリングする酸洗浄を実施した以外は実施例1と同様の手順とした。
【0030】
洗浄後にガラス板表面に傷の発生は観察されなかった。そして、ガラス板表面に存在する錫系異物の数を観察したところ、次のとおりとなった。
【0031】
トップスペック 1個
ドロス 0個
錫落下物 0個
実施例3
錫系異物として、
トップスペック 4個
ドロス 3個
錫落下物 4個
有するものを洗浄されるガラス板として選択し、ブラスト処理と酸処理の順番 を逆とした意外は、実施例2と同様の手順とした。
【0032】
洗浄後にガラス板表面に傷の発生は観察されなかった。そして、ガラス板表面に存在する錫系異物の数を観察したところ、次のとおりとなった。
【0033】
トップスペック 2個
ドロス 1個
錫落下物 0個
比較例1
錫系異物として、
トップスペック 4個
ドロス 3個
錫落下物 5個
有するものを洗浄されるガラス板として選択し、ブラスト処理を行わなかった意外は、実施例2と同様の手順とした。
【0034】
洗浄後にガラス板表面に傷の発生は観察されなかった。そして、ガラス板表面に存在する錫系異物の数を観察したところ、次のとおりとなった。
【0035】
トップスペック 4個
ドロス 3個
錫落下物 1個
[各実施例及び比較例の洗浄方法の比較]
前記各実施例、及び前記比較例で行ったガラス板の洗浄の各錫系異物に対する除去率を表3に示す。これよりブラスト処理が錫系異物除去に効果があること、特にドロス、トップペックの除去に効果があることがわかる。また、ブラスト処理前又はブラスト処理した後に酸処理を行うことで、各錫系異物をさらに効率的に除去できることが本発明により明らかになった。
【0036】
【表2】


【0037】
本発明で実施されたブラスト処理によるトップスペック除去の効果を図面を用いて説明する。図1は、ガラス板表面にトップスペックが存在していた部分を本実施例の条件でブラスト処理した後の表面状態を示す図である。そして、図22は、ブラスト処理前のガラス板ののトップスペックが存在している部分の表面状態を示している。ブラスト処理によるガラス板表面の傷の発生はなく、ブラスト処理によるトップスペックが除去されていることが確認される。
【0038】
本実施例では、ブラスト処理は、異物が存在する部分に対してスポット的になされた。しかしながら、これ以外にも、ガラス板表面全体に対して一度にブラスト処理してもよいし、ガラス長さ方向に線状にブラスト処理を実施し、このブラスト処理を実施中にガラス板を動かすか、ブラスト処理する部材をスキャンニングさせることでガラス板表面全体をブラスト処理してもよい。
【0039】
本発明で示されたガラス板の洗浄方法が実施された後、研磨工程等を経てプラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ等のディスプレイ用途に好適に使用されるガラス基板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】ガラス板表面にトップスペックが存在していた部分を本実施例の条件でブラスト処理した後の表面状態を示す図(写真)である。図中のバーの長さは100μmを表している。
【図2】ブラスト処理前のガラス板のトップスペックが存在している部分の表面状態を示している図(写真)である。図中のバーの長さは100μmを表している。
【出願人】 【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
【出願日】 平成18年9月8日(2006.9.8)
【代理人】 【識別番号】100123401
【弁理士】
【氏名又は名称】花田 吉秋


【公開番号】 特開2008−62349(P2008−62349A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2006−243532(P2006−243532)