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【発明の名称】 ウォータジェット加工とワイヤ放電加工を行うことができる複合加工装置
【発明者】 【氏名】吉田 伸一

【要約】 【課題】砥粒水ジェットによる荒加工中に砥粒がワークの切断面に付着し、仕上げ加工中にワイヤ電極とワーク間に発生する放電が不安定になってしまう。

【構成】ウォータジェット加工とワイヤ放電加工を行うことができる複合加工装置は、ワーク20が配置される加工槽26と、ワーク20に向けて砥粒水ジェットを発生するジェットノズル16と、噴流ノズル86、88が取り付けられた一対のガイド組立体32、34を備え、さらに、ジェットノズル16よりも大きな径を有する洗浄ノズル18を備えた。砥粒を含まない水が、清液槽54から洗浄ノズル18へ供給される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが配置される加工槽と、前記ワークに向けて砥粒水ジェットを発生するジェットノズルと、ワイヤ電極を支持するワイヤガイドを収容すると共に噴流ノズルが取り付けられた一対のガイド組立体を備えたウォータジェット加工とワイヤ放電加工を行うことができる複合加工装置において、前記ジェットノズルよりも大きな径を有する洗浄ノズルを備えたことを特徴とする複合加工装置。
【請求項2】
超高圧水と砥粒が供給される傾斜可能な混入管を備え、前記ジェットノズルは前記混入管に接続され前記洗浄ノズルは前記ジェットノズルに平行に前記混入管に取り付けられる請求項1に記載の複合加工装置。
【請求項3】
清浄な水を貯留する清液槽と、前記清液槽中の水を前記ジェットノズル、前記噴流ノズル及び前記洗浄ノズルに選択的に供給するための弁が設けられる請求項1に記載の複合加工装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェットノズルから高圧で噴射される砥粒水によってワークを切断するウォータジェット加工装置に関する。本発明は、特に、ジェットノズルに加えて、導電性ワークの切断面を放電によって仕上げるワイヤ電極を有する複合加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
砥粒を超高圧水に混入する混入管を備えたウォータジェット加工装置が知られている。このような装置は、アブレイシブ・ウォータジェット加工装置とも呼ばれる。ワークを切断する能力を高める砥粒として、通常、ガーネットが使用されるが、アルミナも知られている。砥粒水のジェットは、混入管に接続されたジェットノズルによって形成される。近年のウォータジェット加工装置は、グラファイト材を10000mm/minの除去速度で、金型用のSKD11(日本工業規格)鋼を1400mm/minの除去速度で切断できる。
【0003】
ワイヤ放電加工装置は、超硬合金のような難切削材を含む導電性ワークを極めて高い精度で切断できる。例えば、数μm以下の形状精度と数μmRz以下の面粗さが実現される。ワイヤ放電加工装置の除去速度は、φ0.3mmの亜鉛鍍金された黄銅ワイヤ電極を使用した場合、250mm/min〜550mm/min程度である。
【0004】
特許文献1は、高速なウォータジェット加工と高精度なワイヤ放電加工を実現できる複合加工装置を開示している。複合加工装置はウォータジェット加工によってワークを荒く切断しワイヤ放電加工によって切断面を要求精度に仕上げることを意図している。精度は、例えば、寸法精度、形状精度及び面粗さである。複合加工装置は、ジェットノズルに加えて、ワイヤ電極を垂直に案内する一対のガイド組立体を含んでいる。各ガイド組立体はワイヤ電極を支持するワイヤガイドを収容している。各ワイヤガイドはワイヤ電極が通る案内孔を有する。ワイヤ電極とワイヤガイド間のクリアランスは小さいもので3μm〜5μm、大きいものでせいぜい20μmである。ワイヤ電極は、数μm〜数十μmの加工間隙をおいてワークの近くに位置決めされる。仕上げ加工中、走行するワイヤ電極とワーク間に電圧が印加され、加工間隙に発生する放電が微少量の材料をワークから除去する。
【0005】
【特許文献1】特開2006−110697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ウォータジェット加工に使用された砥粒がワークの切断面に付着しているままだと、ワイヤ放電加工時に放電が不安定となってしまう。その結果、ワイヤ放電加工の高精度が損なわれてしまう。本発明は、ウォータジェット加工中に切断面に付着した砥粒をワイヤ放電加工の前に除去することができる複合加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ワークが配置される加工槽と、ワークに向けて砥粒水ジェットを発生するジェットノズルと、ワイヤ電極を支持するワイヤガイドを収容すると共に噴流ノズルが取り付けられた一対のガイド組立体を備えたウォータジェット加工とワイヤ放電加工を行うことができる複合加工装置は、ジェットノズルよりも大きな径を有する洗浄ノズルを備えたことを特徴とする。
【0008】
好ましくは、複合加工装置は超高圧水と砥粒が供給される傾斜可能な混入管を備え、ジェットノズルは混入管に接続され洗浄ノズルはジェットノズルに平行に混入管に取り付けられる。さらに、好ましくは、清液槽中の加工液を、ジェットノズル、噴流ノズル及び洗浄ノズルに選択的に供給するための弁が設けられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の複合加工装置は、ジェットノズルよりも径の大きな洗浄ノズルを設けたので、切断面に付着した砥粒が効果的に除去され、ワイヤ電極とワーク間に発生する放電が安定する。洗浄ノズルは一対のガイド組立体に取り付けられた噴流ノズルとは別に設けたので、切断面に付着した砥粒が、ガイド組立体中に収容されたワイヤガイドの案内孔に入り込むことがない。その結果、高精度な仕上げ加工が損なわれない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、図1、図2及び図3を参照して本発明の複合加工装置を詳細に説明する。図1に示す複合加工装置は、直交するX軸とY軸の方向に移動可能な2つのヘッド10、30を備えている。ジェットノズル16が切断ヘッド10に設けられている。上側ガイド組立体32がガイドヘッド30に設けられている。上側ガイド組立体32は、ワイヤ電極(図示しない)を支持するワイヤガイドと、ワイヤ電極に電流パルスを供給する接触子を収容している。
【0011】
一対のワークスタンド24が加工槽26中に直立している。金属又はグラファイトのワーク20がワークスタンド24の上面に固定されている。加工槽26はキャッチャータンクとして機能するのに十分な深さを有する。ワーク20を貫通した砥粒水ジェットのエネルギーは、水で満たされた加工槽26によって吸収される。加工槽26を保護するため、砥粒水ジェットのエネルギーを偏向させる多数のセラミック球が、加工槽26の底に配置されている。参照符号28は、複合加工装置を制御する数値制御装置を示している。
【0012】
図2中に示されるように、混入管14が切断ヘッド10に垂直に設けられている。混入管14はXY平面に垂直なZ軸の方向に移動できる。混入管14は、B軸アクチュエータ11及びA軸アクチュエータ12によって、傾斜可能である。B軸アクチュエータ11は切断ヘッド10に固定され、A軸アクチュエータ12はB軸アクチュエータ11に固定されている。B軸アクチュエータ11とA軸アクチュエータ12はモータを有する。B軸アクチュエータ11のモータを回転させることによって、A軸アクチュエータ12は+−10°傾斜することができる。混入管14はノズルマウント13によってA軸アクチュエータ12に取り付けられている。A軸アクチュエータ12のモータを回転させることによって、混入管14は+−10°傾斜することができる。混入管14は、砥粒用の導入管15を備えている。1mmの径を有するジェットノズル16が混入管14の下端に接続されている。ジェットノズル16は混入管14と一体に形成されていても良い。洗浄ノズル18が、クランプ17によって、混入管14に取り付けられている。洗浄ノズル18は、ジェットノズル16に平行に配置され、2mm以上の径を有する。フレキシブル管19が洗浄ノズルに接続されている。
【0013】
図3中に示すように、上側ガイド組立体32と同様な下側ガイド組立体34が、適当なアームの先端に設けられている。下側ガイド組立体34もまたXY平面上を移動可能である。上側噴流ノズル86が上側ガイド組立体32の下端に、下側噴流ノズル88が下側ガイド組立体34の上端に取り付けられている。噴流ノズル86、88は、加工間隙に向けて加工液を噴射する。適当なボビンに巻かれたワイヤ電極は多数のローラを経由して上側ガイド組立体32へ搬送されている。
【0014】
図3に示す液供給システムは、図1中の数値制御装置28によって制御される。ウォータジェット加工に用いられる加工液は、同じ粒径の砥粒が一定の割合で混合された水である。ワイヤ放電加工に用いられる加工液は、水を主成分とする脱イオン水である。貯留槽50は、使用済の加工液を貯留する汚液槽52と浄化された加工液を貯留する清液槽54を有する。加工槽26から排出された加工液は汚液槽52に回収される。比重が大きい加工屑は、汚液槽52の底に沈殿する。汚液槽52中の加工液は、ポンプ56によって、フィルタ58を通って清液槽54に送られる。フィルタ58は加工屑及び砥粒を取り除き加工液を浄化する。清液槽54は、小さいサイズの加工屑や砥粒も通さないフィルタ60によって仕切られている。ポンプ62、フィルタ64及びイオン交換樹脂槽66を有する循環管路が清液槽54に設けられる。加工液の電気伝導度は、イオン交換樹脂槽66によって、ワイヤ放電加工に必要な値、数〜数十μS/cmに維持される。清液槽54中の水は、電磁弁78、高圧ポンプ68及び増圧器70を通って混入管14へ供給される。高圧ポンプ68及び増圧器70は、200MPa〜450MPaの高圧水を発生できる。適量の砥粒がホッパ72から混入管14へ供給される。加工槽26を水で満たすため、清液槽54中の脱イオン水はポンプ80によって電磁弁76を経由して加工槽26へ供給される。また、清液槽54中の脱イオン水はポンプ80によって電磁弁77を経由して洗浄ノズル18へ供給される。噴流ノズル86及び88の一方からの噴流を止めるため、電磁弁82及び84が設けられている。
【0015】
次に、数値制御装置28の制御下で行われる、本発明の複合加工装置の動作を詳細に説明する。加工前に、導電性のワーク20は、ワークスタンド24の上面に適当な締付治具によって固定される。加工槽26は清液槽54から電磁弁76を経由して供給される水によって満たされる。この時、加工槽26中の液面はワーク20の下面より低い。ガイドヘッド32はワーク20から離隔した退避位置に移動させられる。切断ヘッド10をXY平面内で移動させることによって、ジェットノズル16がワーク20中の切断開始点の上に位置させられる。ジェットノズル16は、その先端がワーク20の上面から数十mm上方へ位置するようZ軸方向に移動させられる。下側ガイド組立体34は砥粒水ジェットを受けない位置に移動させられる。
【0016】
最初に、ワーク20は砥粒水ジェットによって荒加工される。380MPaの超高圧水が、清液槽54から電磁弁78、高圧ポンプ68及び増圧器70を経由して混入管14へ供給される。荒加工中、電磁弁74、76及び77は閉じられている。砥粒、例えばガーネット粒がホッパ72から混入管14へ供給される。ジェットノズル16はワーク20へ向けた砥粒水のジェットを形成する。ジェットノズル16はプログラム経路の上を設定速度でXY平面内で移動させられる。プログラム経路の上に形成される切断溝の幅はおよそ1.5mmである。ジェットノズル16が加工開始点に戻ると、図2中に示されるように、要求寸法よりもわずかに小さい貫通孔22がワーク20中に形作られる。切断面の粗さは、ワーク20の材質や加工条件によるが、25〜35μRzである。切り抜かれた不要な部分はワーク20から落下する。
【0017】
次に、洗浄ノズル18が切断開始点に移動させられる。切断面を洗浄する際に加工槽26中の汚れた水が跳ね返らないように、加工槽26中の水が排出される。清浄な脱イオン水が清液槽54から電磁弁77とフレキシブル管19を通って洗浄ノズル18へ供給される。この時、電磁弁74、76及び78は閉じられている。洗浄ノズル18から噴射される液の圧力は、砥粒水ジェットよりかなり小さく、3kg/cm程度であれば良い。洗浄ノズル18はジェットノズル16と同じ輪郭をもつプログラム経路の上を、移動させられる。洗浄ノズル18はジェットノズル16よりも大きい2mm以上の径を有するので、貫通孔22の切断面に付着した砥粒を十分に取り除くことができる。荒加工時にジェットノズル16を傾けて使用した場合、洗浄ノズル18も同じ角度で傾けて使用すれば良い。荒加工時にジェットノズル16を垂直にして使用した場合でも、貫通孔22の形状次第で、水流が切断面に交差するよう洗浄ノズル18を傾けて使用しても良い。
【0018】
最後に、貫通孔22の切断面がワイヤ放電加工によって仕上げられる。脱イオン水が清液槽54から電磁弁76を通って加工槽26へ供給される。加工槽26は脱イオン水で満たされ、ワーク20は水没する。切断ヘッド10はワーク20から離隔した退避位置に移動させられる。ガイドヘッド30をXY平面内で移動させることによって、上側ガイド組立体32がワーク20中の切断開始点の上に位置させられる。上側ガイド組立体32は、噴流ノズル86とワーク20上面の隙間が0.4mm程度になるように、Z軸方向に移動させられる。下側ガイド組立体34は、XY平面内で移動させられ、ワーク20に関して上側ガイド組立体32と対向するように位置決めされる。ワイヤ電極は上側ガイド組立体32と下側ガイド組立体34間に張架され、適当な回収箱まで搬送される。加工液が清液槽54から電磁弁76を通って噴流ノズル86、88へ供給される。噴流ノズル86、88からワーク20へ供給される脱イオン水の圧力は、1kgf/cm程度である。仕上げ加工中、電磁弁76、77及び78は閉じられている。加工間隙に放電を発生させるため、電源装置から電力パルスが走行するワイヤ電極とワーク20間に供給される。ワイヤ電極は数μm〜数十μmの加工間隙を維持しながらプログラム経路の上をXY平面内で移動させられる。多くの場合、仕上げ加工はいくつかのステップに分けて行われる。後のステップほど、より小さな電力パルスが供給されワイヤ電極はより大きなプログラム経路の上を移動する。最後のステップで、切断面は要求される粗さへ仕上げられる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、ウォータジェット加工およびワイヤ放電加工を行うことができる複合加工装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の複合加工装置を示す斜視図である。
【図2】図1の切断ヘッドを示す斜視図である。
【図3】図1の複合加工装置の液供給システムを示す回路図である。
【符号の説明】
【0021】
10 切断ヘッド
11 A軸アクチュエータ
12 B軸アクチュエータ
13 ノズルマウント
14 混入管
15 導入管
16 ジェットノズル
17 クランプ
18 洗浄ノズル
19 フレキシブル管
20 ワーク
22 貫通穴
24 ワークスタンド
26 加工槽
28 数値制御装置
30 ガイドヘッド
32 上側ガイド組立体
34 下側ガイド組立体
50 貯留槽
52 汚液槽
54 清液槽
56、62、80 ポンプ
58、60、64 フィルタ
66 イオン交換樹脂槽
68 増圧器
70 高圧ポンプ
72 ホッパ
74、76、77、78、82、84 電磁弁
86 上側噴流ノズル
88 下側噴流ノズル
【出願人】 【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
【出願日】 平成18年9月6日(2006.9.6)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−62328(P2008−62328A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2006−241603(P2006−241603)