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【発明の名称】 ドレスギア並びにその製造方法及び製造装置
【発明者】 【氏名】藤井 優

【氏名】中筋 智明

【氏名】竹野 祥瑞

【氏名】そうけ谷 興一

【要約】 【課題】ツルーイングしたドレスギアを、長寿命で作業性がよいものとすることを目的とする。

【構成】歯車とほぼ同形状で、ダイヤモンド砥粒3が電着され、ツルーイングされたドレスギアであって、ドレスギアの歯1に複数の溝2が形成されているものとする。また、歯車とほぼ同形状で、ダイヤモンド砥粒3が電着され、ツルーイングされたドレスギアの歯1面に対して、加工用レーザ光と加工用レーザ光より大きいビーム径で、可視光のパイロットレーザ光を加工用レーザ光と同軸に照射して溝加工を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車とほぼ同形状で超砥粒が電着され、ツルーイングされたドレスギアであって、上記ドレスギアの歯面に複数の溝が形成されていることを特徴とするドレスギア。
【請求項2】
上記溝が、ドレスギアの歯先から歯底に向かう歯形の方向に形成されていることを特徴とする請求項1記載のドレスギア。
【請求項3】
上記溝がドレスギアの一端から他端に向かう歯筋の方向に形成されていることを特徴とする請求項1記載のドレスギア。
【請求項4】
上記溝が、ドレスギアの歯先から歯底に向かう歯形の方向及びドレスギアの一端から他端に向かう歯筋の方向から傾く斜め方向に形成されていることを特徴とする請求項1記載のドレスギア。
【請求項5】
上記溝のピッチが、上記超砥粒の径よりも大きいことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のドレスギア。
【請求項6】
歯車とほぼ同形状で、超砥粒が電着され、ツルーイングされたドレスギアの歯面に対して、加工用レーザ光及び上記加工用レーザ光より大きいビーム径で、可視光のパイロットレーザ光を同軸に照射して溝加工を行うことを特徴とするドレスギアの製造方法。
【請求項7】
歯車とほぼ同形状で超砥粒が電着され、ツルーイングされたドレスギアの歯面に、加工用レーザ光を照射して溝を形成するための加工用レーザ発振器と、
上記加工用レーザ光より大きいビーム径で、可視光のパイロットレーザ光を上記加工用レーザ光と同軸に上記ドレスギアの歯面に照射するパイロットレーザ発振器と、
上記ドレスギアを回転させる回転軸を有する回転駆動部と、
上記ドレスギアを上記回転軸と平行なX軸方向、上記X軸と垂直なY軸方向及び上記X軸方向と上記Y軸方向と垂直なZ軸方向に移動させるステージと、
上記回転駆動部の回転、及び上記ステージのX軸方向、Y軸方向、Z軸方向移動を制御する制御ユニットと、
を備えたことを特徴とするドレスギアの製造装置。
【請求項8】
上記加工用レーザ光をX軸方向に走査する手段を備え、上記制御ユニットは、上記回転駆動部の回転、及び上記ステージのX軸方向、Y軸方向、Z軸方向移動を制御するとともに、上記走査する手段の走査を制御することを特徴とする請求項7記載のドレスギアの製造装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車の高精度仕上げに使用する歯車型砥石の目立て、整形を行うためのドレスギア並びにその製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯車は、ブランクと呼ばれる素材に対して旋削して歯きりを行い、歯形を整えるためのシェービング加工を行った後、熱処理によって表面を硬化することにより製作される。特に、低騒音や低振動化の要求が高く、歯車として高精度が求められる自動車用動力伝達歯車においては、熱処理による変形を取り除くために、熱処理後にさらに仕上げ加工としてギアホーニング加工が実施される。
【0003】
ギアホーニング加工には次のような工程がある。まず、製品となる歯車と同形状のドレスギアを用いてホーニング砥石を研削してホーニング砥石の形状精度を良くする。次に、ドレスギアの形状が転写されたホーニング砥石により製品となる歯車に対して仕上げ加工する。その結果、ドレスギアの形状が歯車に転写され、形状精度が良くなった歯車を提供することができる。従って、このホーニング加工においては、ドレスギアの形状精度を高めることが非常に重要である。
【0004】
ドレスギアの形状精度を高める方法のひとつとして、円盤状砥石によりドレスギアを研削する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
上記特許文献1では、ホーニング砥石の加工用としてcBN(立方晶窒化ホウ素)の微粒子を備えたドレスギアに対して、より硬度が高いダイヤモンドの微粒子を備えた円盤状のツルーイング工具によりツルーイングを行い、cBN超微粒子の高さを揃え、ドレスギアの形状精度を上げている。
【0006】
【特許文献1】特開平9−201721号公報(第4−5頁、図1−11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ギアホーニング加工では、ワークを加工するホーニング砥石の歯形の成形を、ドレスギアを用いて行っている。ドレスギアは、ホーニング砥石の歯面とかみ合い接触し、ホーニング砥石の歯形のドレッシングを実施する。ホーニング砥石は、内歯形状の歯車であり、ドレスギアとかみ合い回転することで、歯面に歯形方向のすべりが生じる。また、より研削を有効に行うために、ホーニング砥石の軸方向に往復運動(オシレーション)を加えることで、ホーニング砥石の表面粗さを小さくすることができる。
【0008】
つまり、ドレスギアは、ホーニング砥石の回転に従動もしくは同期して回転するとともに、軸方向に往復(オシレーション)運動し、歯形方向および歯筋方向のすべりによりホーニング砥石の歯面を削ることができる。
【0009】
ドレスギアの形状精度を高めるために円盤状砥石でツルーイングを行うと、ドレスギアと円盤状砥石の接触は面接触となるため、削られたcBN砥粒の先端は平坦な面が形成され、また、砥粒の高さがそろうことで、切り粉などの排出のためのチップポケットが小さくなり、切り粉の排出性や研磨液の流れが悪くなる。
【0010】
この結果、ツルーイングしたドレスギアは、接触面積が増大し研削抵抗が増加したり、切り粉排出の隙間が小さくなることにより目詰まりしやすくなって切れ味が悪くなり、寿命が短く、また、作業性が低下するという問題があった。
【0011】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、ツルーイングしたドレスギアを、長寿命で作業性がよいものとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るドレスギアは、歯車とほぼ同形状で、超砥粒が電着され、ツルーイングされたドレスギアであって、上記ドレスギアの歯面に複数の溝が形成されているものである。
【0013】
本発明に係るドレスギアの製造方法は、歯車とほぼ同形状で、超砥粒が電着され、ツルーイングされたドレスギアの歯面に対して、加工用レーザ光及び上記加工用レーザ光より大きいビーム径で、可視光のパイロットレーザ光を同軸に照射して溝加工を行うものである。
【0014】
本発明に係るドレスギアの製造装置は、歯車とほぼ同形状で超砥粒が電着され、ツルーイングされたドレスギアの歯面に、加工用レーザ光を照射して溝を形成するための加工用レーザ発振器と、
上記加工用レーザ光より大きいビーム径で、可視光のパイロットレーザ光を上記加工用レーザ光と同軸に上記ドレスギアの歯面に照射するパイロットレーザ発振器と、
上記ドレスギアを回転させる回転軸を有する回転駆動部と、
上記ドレスギアを上記回転軸と平行なX軸方向、上記X軸と垂直なY軸方向及び上記X軸方向と上記Y軸方向と垂直なZ軸方向に移動させるステージと、
上記回転駆動部の回転、及び上記ステージのX軸方向、Y軸方向、Z軸方向移動を制御する制御ユニットと、
を備えたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るドレスギアによれば、ツルーイングしたドレスギアに対して、ギアホーニング加工における砥粒接触面積を小さくし、歯面のすべりがよくなるとともに、切り粉排出性や研削液の流れが改善され、切れ味の低下を少なくすることができ、ドレスギアの長寿命化が可能となる。
【0016】
本発明に係るドレスギアの製造方法によれば、ドレスギアのような複雑で細かい対象に対しても容易に溝加工を行うことができる。
【0017】
本発明に係るドレスギアの製造装置によれば、隣り合うドレスギアの歯面に干渉しない照射位置を容易に検出することが可能であり、また、加工用レーザ光を常に歯面に対して一定の照射角で照射することができ、均一な巾や深さの溝を加工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
実施の形態1.
図1は、本発明に係るドレスギアの製造装置の実施の形態1を示す構成図である。本発明に係るドレスギアの製造装置ではレーザ光を使用して、ドレスギアの歯面に溝を形成するものである。
まず、図1に基づき、加工用レーザ光の光路について説明する。レーザ発振器21から射出された加工用レーザ光は、ビームエキスパンダー22により拡大されて平行光線となった後に、ベンディングミラー23により溝入れ加工を行う加工室へ導かれ、加工室内に設置された集光レンズ24により集光される。また、加工部分を観察するために、図示していないが、CCDカメラを設置し、加工状況をモニターすることができる。
【0019】
次に、可視光パイロットレーザ発振器25について説明する。パイロットレーザ光としては、630nmの赤色半導体レーザを用いている。ベンディングミラー23は、パイロットレーザ光の波長に対して、透過特性を持つものを選ぶ。ベンディングミラー23の上部から照射されたパイロットレーザ光は、ベンディングミラー23を透過して、加工用レーザ発振器21から照射される加工用レーザ光と同じ光軸26を通る。可視光パイロットレーザ発振器25には、パイロットレーザ光のビーム径を変更するレンズユニットが備えられ、ビーム径を加工用レーザよりも大きく設定することができる。また、パイロットレーザ光の出力は、ドレスギアのダイヤモンドなどの超砥粒を加工するエネルギーを持たず、ドレスギアの歯面に接触したとしても砥粒にダメージを与えることがない。
【0020】
次に、加工ワークとなるドレスギア20を動作させる駆動部について説明する。ドレスギア20は、X軸28、Y軸29、Z軸30方向に可動なステージの上に設置される。さらに、ドレスギア20は、X軸28方向と平行な回転軸31(以下、A軸31という)を持つモータに接続されている。以上の構成により、ドレスギアは、X軸28、Y軸29、Z軸30方向の移動及びA軸31の回転動作を行うことができる。
【0021】
また、駆動部とレーザ発振器の両方を制御する制御ユニット27を備え、制御ユニット27は、ステージの動作及びドレスギア20の回転とレーザ発振器21,25のON−OFF制御を行うことができる。
【0022】
図2は、加工ワークであるドレスギア20を示す斜視図であり、はすば形状のドレスギアを示している。はすば形状のドレスギア20は、ドレスギア20の軸方向をX軸28、ドレスギア20の回転軸をA軸31となるようにモータに取り付けられる。X軸28方向の進行に対応して、はすばのねじれ角分だけA軸31を回転させることにより、はすばのねじれに対応してドレスギア20を動作させることができる。
【0023】
図3は、はすば形状のドレスギア20の歯面に加工用レーザ光42を照射している状態を示す模式図である。加工用レーザ光42は、ドレスギア20の歯面に照射され、レーザ光の焦点位置43に、ドレスギア20の歯面の歯形曲線(インボリュート曲線)41が位置している。加工用レーザ光42の焦点位置43が、常に歯面の歯形曲線41上にあるように、A軸31の回転とY軸29方向の移動の同時2軸動作をインボリュート曲線の特性に基づき行うことにより、レーザ光の焦点位置43にドレスギア20の歯面を常にあわせることができる。
【0024】
図4は、円盤状砥石60によるドレスギア20のツルーイングを示す正面図である。ドレスギア20のダイヤモンド砥粒20aは、比較的形状の整った80番の砥粒(平均粒径約190μm)を、Niめっきにより歯車台金表面に固定している。被削物となるホーニング砥石の表面精度を良くするために、駆動用モータ61で円盤状砥石60を回転させ、矢印で示す砥石のツルーイング方向62に、ツルーイングする。ツルーイングを実施したドレスギア20を上記図1に示したドレスギアの製造装置の加工用ワークとして用いる。ただし、ツルーイングの方式は円盤状砥石60によるツルーイングに限定されるものではなく、レーザ光などによるツルーイングの方式でもよい。
【0025】
溝加工用のレーザ発振器21としては、YAGレーザを用いることができる。発振波長は1064nm、平均出力20W、ピークパワー40kW、繰返し周波数2kHz、パルス幅100nm、ビーム径は約60μmとする。
【0026】
図5は、溝加工を行う加工歯45に対して加工基準位置出しの様子を表す正面図である。歯面の砥粒に対して効率よく溝入れ加工を行うためには、歯面に対してレーザ光をできるだけ垂直に近い角度で照射し、加工のエネルギーを効率よくすることが必要である。
まず、図5(a)に示したように、調整の基準となる歯として基準歯44を選び、その基準歯44の頂点47を加工レーザ光42の焦点位置43に合わせる。
【0027】
次に、図5(b)に示したように、基準歯44と隣接する加工歯45の歯面と基礎円の交点(歯元)に加工用レーザ光42の焦点位置43を合わせるように、回転角46(α1)とZ軸30方向の移動を行う。この点を加工基準位置48とする。
【0028】
次に、図5(c)に示したように、加工用レーザ光42の照射角49(α2)を得る。照射角49(α2)を得るためには、加工基準位置48に加工用レーザ光42の焦点を固定(Z軸を固定)し、加工用レーザ光42と同軸に照射されるパイロットレーザ光51が、基準歯44の歯面と接触するまで、ドレスギアの基礎円40の中心であるA軸31の回転と、その回転量と基礎円半径から求められるY軸29方向の移動(Y軸方向移動量Y2)を同時に行う(A軸31とY軸29の同時2軸動作)。
【0029】
パイロットレーザ光51が基準歯44の歯面に接触する位置は、CCDカメラで観察し、そのときの加工歯45の歯面に対する加工用レーザ光42の方向と、基礎円40の中心(A軸31)と加工用レーザ光42の焦点位置43とを結ぶ線との間の角度を照射角49(α2)とする。パイロットレーザ光51のビーム径は加工用レーザ光42のビーム径よりも大きいので、加工時には基準歯44の歯面に加工用レーザ光42が接触せずに、加工歯45の歯面に対してのみ必要な溝加工を実施することができる。
【0030】
図6は、溝入れ加工工程を示すフローチャートである。加工工程は、大きく分けると、加工用レーザ光の照射角の割り出しと、歯面に対する溝加工である。レーザの照射角の決定は先に述べたように、図6のS1〜S4の工程を実施する。
【0031】
次に、加工歯45の歯面と基礎円の交点を加工基準点48として、その点からインボリュート曲線をY軸28とA軸31の同期により描く(S5)ことで、歯面に対して焦点位置やレーザ照射角が変わることなく、加工を行うことができるので、形状の安定した溝加工を行うことができる。
【0032】
次に、加工用レーザ光を停止し、歯筋方向へドレスギアをピッチ送りし(S6)、加工用レーザ光を照射しながら、歯先から歯元へインボリュート曲線を描く(S7)。
【0033】
次に、加工用レーザ光を停止し、歯筋方向へドレスギアをピッチ送りし(S8)、1歯面の加工が完了しているか否かを判断し(S9)、完了していなければS5〜S8を繰り返し、完了していれば、次の歯の溝入れ加工へ進み(S10)、全歯の加工が終了しているか否かを判断し(S22)、全歯の加工が終了するまで、S5〜S11を繰り返す。
【0034】
歯筋方向の溝のピッチとしては、砥粒径よりもピッチが小さいと砥粒平坦部が狭くなりすぎ、単位面積あたりの負荷が上昇し、砥粒の摩耗や脱落が進みやすくなり、ドレスギアの寿命が短くなる問題が発生する。従って、砥粒径よりも大きいピッチとし、この実施の形態1では500μmとした。
【0035】
上記のように、一つの歯面が完了すれば、順次、隣の歯面へ回転移動し、ドレスギアの片面の全ての歯面が完了する。片面が完了すれば、同様の工程に従い、反対面の加工を行う。また、上記図6のフローチャートでは、加工用レーザ光を歯元と歯先との間を往復で照射しているが、歯先からまたは歯元からの片道の照射としてもよい。
【0036】
図7は、本実施の形態1の製造方法により歯面に溝2を形成したドレスギアの歯1を示す斜視図である。図7に示したように、溝2はダイヤモンド砥粒3よりも大きなピッチで歯形方向に形成されている。
【0037】
本実施の形態1によれば、溝2が形成されたことにより、ツルーイングにより砥粒高さがそろえられて被削面の面精度が良くなったドレスギアは、ホーニング砥石を加工する時の歯面の歯形方向のすべりに対して接触面積を低減し、すべり方向の摩擦を減らすと同時に、切り粉の排出性や研削液の流れがよくなり、切れ味を向上させることができる。
【0038】
また、ドレスギアの歯面にたいして、加工用レーザ光の角度を一定に保って照射することができるので、安定した歯形方向の溝2の形状を得ることができる。
【0039】
実施の形態2.
図8は、歯筋方向の溝4を形成した本実施の形態2のドレスギアの歯面を示す斜視図であり、図9は、本実施の形態2のドレスギアの製造装置を示す構成図である。
【0040】
本実施の形態2では、図9に示したように、ドレスギア20の歯筋方向(X軸30方向)に走査を行う手段として、ベンディングミラーに駆動装置34を取り付けて、スキャン機能を付与したスキャンミラー33を使用した。スキャンミラー33は、駆動装置34により入射されるレーザ光をX軸に平行な方向に走査することができる。スキャンミラー33を用いたことにともない、パイロットレーザ発振器32は、ビームエキスパンダー22とスキャンミラー33との間に設置している。パイロットレーザ発振器32は、可動ステージ上に設置され、使用時のみ加工用レーザ光の光軸上に位置し、使用していない時は光軸の外側にはずすことができる。
【0041】
加工用レーザ発振器21から出射された加工用レーザ光は、ビームエキスパンダー22で拡大されて平行光となり、スキャンミラー33により加工室内に導かれる。
【0042】
図10は、歯筋方向の溝加工の工程を示すフローチャートであり、このフローチャートに基づき、加工工程を説明する。
まず、加工基準位置出しについては実施の形態1と同様で、S1〜S4工程による。
【0043】
次に、加工基準位置出し後、歯筋方向のはすばのねじれに対応するために、X軸28方向の走査となるスキャンミラー33の回転角に対応して、A軸31を同時に回転させることにより、加工用レーザ光を照射しながら歯筋方向の走査を行う(S51)。
【0044】
次に、加工用レーザ光を停止し、歯形方向にピッチ送りをする(S52)。歯形方向のピッチ送りは、歯形方向の曲線がインボリュート曲線で形成されているので、その特性を利用して、Y軸29とA軸31を同時2軸動作させることにより行う。
【0045】
次に、S51と同様に、歯筋方向のはすばのねじれに対応するために、X軸28方向の走査となるスキャンミラー33の回転角に対応して、A軸31を同時に回転させることにより、加工用レーザ光を照射しながら歯筋方向の走査を行う(S53)。
【0046】
次に、S52と同様に、加工用レーザ光を停止し、歯形方向にピッチ送りをする(S52)。
【0047】
次に、1歯面の加工が完了したか否かを判断し、完了していなければS51〜S55の工程を繰り返し、完了していれば、次の歯の溝入れ加工へ進み(S56)、全歯の加工が終了しているか否かを判断し(S57)、全歯の加工が終了するまで、S51〜S57を繰り返す。
【0048】
以上のように歯筋方向走査についてスキャンミラーの回転による走査とA軸31を同期させ、また歯形方向のピッチ送りについてはY軸29とA軸31を同期させることで、ドレスギアの歯面に対して一定の照射角で加工用レーザ光を照射することができる。
【0049】
上記のように、一つの歯面が完了すれば、順次、隣の歯面へ回転移動し、ドレスギアの片面の全ての歯面が完了する。片面が完了すれば、同様の工程に従い、反対面の加工を行う。
【0050】
本実施の形態2によれば、溝2が形成されたことにより、ツルーイングにより砥粒高さがそろえられて被削面の面精度が良くなったドレスギアは、ホーニング砥石を加工する時の歯面の歯筋方向のすべりに対して接触面積を低減し、すべり方向の摩擦を減らすと同時に、切り粉の排出性や研削液の流れがよくなり、切れ味を向上させることができる。
【0051】
また、ドレスギアの歯面にたいして、加工用レーザ光の角度を一定に保って照射することができるので、安定した歯筋方向の溝4の形状を得ることができる。また、加工用レーザ光を用いることで、複雑で細かい形状のドレスギアに対しても、容易に溝加工を行うことができる。
【0052】
実施の形態3.
図11は、ドレスギアの歯面に対して斜め方向の溝5を形成したドレスギア1歯面の斜視図である。本実施の形態3で用いたドレスギアの製造装置は、実施の形態1と同様の構成である。
【0053】
インボリュート曲線で構成されるドレスギアの歯面に歯形方向及び歯筋方向と傾いた斜め方向に溝加工を行う場合、加工基準位置は、実施の形態1及び2と同様に、加工歯の歯面と基礎円の交点とする。歯形方向の走査は、インボリュート曲線の特性から、Y軸29とA軸31の同期により描くことができる。歯筋方向の走査は、はすばのねじれに対応するようにX軸28とA軸31を同期させればよい。したがって、Y軸、X軸、A軸の3軸を同時制御することによりドレスギア20の歯面に対して任意の角度をもった溝を均等に加工することができる。
【0054】
図12は、ドレスギアの1歯面に斜めに溝加工を行う場合の工程を示すフローチャートであり、このフローチャートに基づき、加工工程を説明する。
【0055】
本実施の形態3では、加工の初期においては、図12のS61〜S68の歯形方向のピッチ送りと歯先円での歯筋方向のピッチ送りが行われる。基礎円高さまで歯形方向のピッチ送りが終了すれば、基礎円および歯先円高さで歯筋方向のピッチ送りとなる。歯先円高さで、歯幅分の送りが完了すれば、基礎円高さの歯筋方向の送りと、歯形方向の送りとなる。しかしながら、斜め方向の溝加工の流れは、このフローに限定されるものではない。
【0056】
まず、Y軸方向にドレスギア20を移動させ、パイロットレーザ光が接触した位置を加工基準位置とする(S61)。
【0057】
次に、Y軸29とA軸31の駆動により、加工用レーザ光の焦点位置が加工歯の歯先に位置するように移動させる(S62)。
【0058】
次に、Y軸29とA軸31の駆動により、軸直角方向(歯形方向)にピッチ送りして加工開始点まで移動させる(S63)。
【0059】
次に、加工用レーザ光を照射しながら、Y軸29、X軸30及びA軸31を同時制御し、歯先まで加工する(S64)。
【0060】
次に、加工用レーザ光を停止し、X軸30とA軸31とを制御して歯先部分で歯筋方向にピッチ送りする(S65)。
【0061】
次に、歯幅分の歯筋方向送りが完了しているか否かを判断し(S66)、完了していなければ加工用レーザ光を照射しながら、Y軸29、X軸28及びA軸31を同時制御し、歯元方向に加工し(S67)、加工用レーザ光を停止し、Y軸29とA軸31とを制御して歯形方向にピッチ送りし(S68)、基礎円までの送りが完了しているか否かを判断し(S69)、完了していなければS64〜S69を繰り返す。
【0062】
また、S69において、基礎円までの送りが完了している場合には、X軸28とA軸31を制御して歯筋方向にピッチ送りし(S70)、S64〜S70を繰り返す。
【0063】
S66において、歯幅分の歯筋送りが完了している場合には、S71へ進んで歯形方向にピッチ送りし、加工用レーザ光を照射しながら、Y軸29、X軸28及びA軸31を同時制御し、歯元まで加工する(S72)。
【0064】
次に、加工用レーザ光を停止し、X軸28とA軸31とを制御して歯元部分で歯筋方向にピッチ送りし(S73)、加工用レーザ光を照射しながらY軸29、X軸28及びA軸31を同時制御して歯元まで加工する(S74)。
【0065】
次に、基礎円までの送りが完了しているか否かを判断し(S75)、完了していなければS71〜S75を繰り返し、完了していれば1歯面の加工完了となる。
【0066】
以上の歯面の加工を全歯面に実施することにより、歯形方向と歯筋方向に対して任意の角度を持った溝加工を行ったドレスギアを提供することができる。
【0067】
本実施の形態3によれば、溝2が形成されたことにより、ツルーイングにより砥粒高さがそろえられて被削面の面精度が良くなったドレスギアは、ホーニング砥石を加工する時の歯面の歯形方向及び歯筋方向両方のすべりに対して接触面積を低減し、すべり方向の摩擦を減らすと同時に、切り粉の排出性や研削液の流れがよくなり、切れ味を向上させることができる。
【0068】
また、ドレスギアの歯面にたいして、加工用レーザ光の角度を一定に保って照射することができるので、安定した歯形方向の溝2の形状を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、歯車の高精度仕上げに使用する歯車型砥石のギアホーニング加工に使用するドレスギアの切れ味の低下を少なくし、長寿命化するのに有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係るドレスギアの製造装置の実施の形態1を示す構成図である。
【図2】加工ワークであるドレスギア20を示す斜視図である。
【図3】はすば形状のドレスギア20の歯面に加工用レーザ光42を照射している状態を示す模式図である。
【図4】円盤状砥石60によるドレスギア20のツルーイングを示す正面図である。
【図5】溝加工を行う加工歯45に対して加工原点出しの様子を表す正面図である。
【図6】溝入れ加工工程を示すフローチャートである。
【図7】本実施の形態1の製造方法により歯面に溝2を形成したドレスギアの歯1を示す斜視図である。
【図8】歯筋方向の溝4を形成した本実施の形態2のドレスギアの歯面を示す斜視図である。
【図9】実施の形態2のドレスギアの製造装置を示す構成図である。
【図10】歯筋方向の溝加工の工程を示すフローチャートである。
【図11】ドレスギアの歯面に対して斜め方向の溝5を形成したドレスギア1歯面の斜視図である。
【図12】ドレスギアの歯面に斜めに溝加工を行う場合の工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0071】
1 ドレスギアの歯、2 歯形方向の溝、3 ダイヤモンド砥粒、4 歯筋方向の溝、
5 斜め方向の溝、20 加工ワーク(ドレスギア)、21 加工用レーザ発振器、
22 ビームエキスパンダー、23 ベンディングミラー(ハーフミラー)、
24 集光レンズ、25 パイロットレーザ発振器、26 レーザ光軸、
27 制御ユニット、28 X軸、29 Y軸、30 Z軸、31 A軸(回転軸)、
32 パイロットレーザ(可動)、33 スキャンミラー、34 駆動装置、
40 ドレスギアの基礎円、41 歯形インボリュート曲線、42 加工用レーザ光、
43 レーザ焦点位置、44 基準歯、45 加工歯、46 回転角α1、
47 基準歯の頂点、48 加工基準位置、49 照射α2、50 Y軸移動量Y2、
51 パイロットレーザ光、60 円盤状砥石、61 駆動用モータ、
62 砥石のツルーイング方向。
【出願人】 【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
【識別番号】598143745
【氏名又は名称】メルコメカトロシステム株式会社
【出願日】 平成18年7月19日(2006.7.19)
【代理人】 【識別番号】100094916
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 啓吾

【識別番号】100073759
【弁理士】
【氏名又は名称】大岩 増雄

【識別番号】100093562
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 俊英

【識別番号】100088199
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 岑生


【公開番号】 特開2008−23620(P2008−23620A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−196296(P2006−196296)