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【発明の名称】 研磨方法及び研磨装置
【発明者】 【氏名】清水 正樹

【氏名】満岡 慎一

【氏名】佐藤 伸治

【要約】 【課題】点当たりポリシャーによることなく、微小レンズや金型等の被研磨物を研磨することができる研磨方法及び研磨装置を提供する。

【構成】被研磨物Wの被研磨面形状と凹凸が逆の転写面を有する転写型Tを製造するステップ、樹脂粒子と、該樹脂粒子より小径で研磨能力が高い研磨微粒子とが分散しているスラリー10中で、この転写型の転写面と被研磨物の被研磨面とを対向させるステップ、及び対向させた転写型の転写面と被研磨物の被研磨面とに、相対回転を与えることなく、相対的な微振動を与えるステップ、を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被研磨物の被研磨面形状と凹凸が逆の転写面を有する転写型を製造するステップ、
樹脂粒子と、該樹脂粒子より小径で研磨能力が高い研磨微粒子とが分散しているスラリー中で、この転写型の転写面と被研磨物の被研磨面とを対向させるステップ、及び
対向させた上記転写型の転写面と被研磨物の被研磨面とに、相対回転を与えることなく、相対的な微振動を与えるステップ、
を有することを特徴とする研磨方法。
【請求項2】
請求項1記載の研磨方法において、上記微振動の方向は、被研磨面と転写面がその間隔を大小に変化させる方向である研磨方法。
【請求項3】
請求項1記載の研磨方法において、上記微振動の方向は、被研磨面と転写面を摺り合わせる方向である研磨方法。
【請求項4】
請求項1記載の研磨方法において、上記微振動の方向は、被研磨面と転写面がその間隔を大小に変化させる方向と、被研磨面と転写面を摺り合わせる方向とを合成した方向である研磨方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項記載の研磨方法において、微振動の振幅は、サブμmから数百μmである研磨方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項記載の研磨方法において、上記被研磨物は、金属、ニューセラミックスまたはガラスからなり、転写型は、金属、ガラス、樹脂材料またはピッチからなる研磨方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項記載の研磨方法において、上記転写型の転写面には、上記樹脂粒子の半径以下の深さの多数の樹脂粒子保持凹部が形成されている研磨方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項記載の研磨方法において、樹脂粒子の平均粒径は1μm〜100μmであり、研磨微粒子の平均粒径は、0.01μm〜10μmである研磨方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項記載の研磨方法において、樹脂粒子は、ポリウレタン、塩化ビニル、シリコーンゴムの1種以上からなり、研磨微粒子は、コロイダルシリカ、ダイヤモンド、アルミナ、酸化セリウム、炭化珪素、立方晶窒化硼素の1種以上からなる研磨方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項記載の研磨方法において、被研磨面は非球面または自由曲面である研磨方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項記載の研磨方法を実行するための研磨装置であって、上記被研磨物を支持するワーク支持部材と、上記転写型を支持する転写型支持部材と、上記ワーク支持部材と転写型支持部材との間に相対回転を与えることなく相対的な微振動を与えるアクチュエータとを備える研磨装置。
【請求項12】
請求項11記載の研磨装置において、上記アクチュエータは直交三軸方向単独にあるいは合成した微振動を与えるアクチュエータである研磨装置。
【請求項13】
請求項11記載の研磨装置において、上記アクチュエータはピエゾ素子からなっている研磨装置。
【請求項14】
請求項11ないし13のいずれか1項記載の研磨装置において、上記ワーク支持部材には、上記樹脂粒子と研磨微粒子とを含むスラリーを保持するスラリー保持筒が備えられ、このスラリー保持筒内に、該ワーク支持部材に支持した被研磨物が位置する研磨装置。
【請求項15】
請求項14記載の研磨装置において、上記スラリー保持筒には、攪拌機が設置されている研磨装置。
【請求項16】
請求項11ないし15のいずれか1項記載の研磨装置において、上記ワーク支持部材は、転写型支持部材との回転位相を変化させるロータリテーブルを含んでいる研磨装置。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨方法及び研磨装置に関し、特に回転軸を持たない面あるいは微小、マイクロな非球面の研磨に適した研磨方法及び研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、微小非球面ガラスレンズやそのモールド用金型の非球面は従来、総形研磨によることなく、合成樹脂製の点当たりポリシャーで行っている。
【特許文献1】特開2001-300843号公報
【0003】
しかし、レンズや金型の小型化が極限に達し、小型で十分な研磨能力のあるポリシャー自体の製作が困難になりつつある。また、ポリシャーによる研磨は、軌跡の重なり部分が原因でうねり成分が生じることがあり、粗さはよくなるが、全体としての面精度が下がるという問題もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上の問題意識に基づき、点当たりポリシャーによることなく、微小レンズや金型等の被研磨物を研磨することができる研磨方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、被研磨物の被研磨面形状と凹凸が逆の転写面を有する転写型を用い、研磨剤の存在下で、この被研磨物と転写型とに相対回転を与えることなく相対的な微振動を与えることで、研磨前の加工形状を崩さず均一に点でなく面で研磨を遂行するものである。
【0006】
すなわち、本発明方法は、被研磨物の被研磨面形状と凹凸が逆の転写面を有する転写型を製造するステップ、樹脂粒子と、該樹脂粒子より小径で研磨能力が高い研磨微粒子とが分散しているスラリー中で、この転写型の転写面と被研磨物の被研磨面とを対向させるステップ、及び対向させた転写型の転写面と被研磨物の被研磨面とに、相対回転を与えることなく、相対的な微振動を与えるステップ、を有することを特徴としている。
【0007】
本発明方法は、被研磨物と転写型とに相対回転を与えない点が重要な点の一つである。相対回転は、相対回転速度がゼロの部分(回転中心軸上)が存在するので、本発明研磨方法では与えない。その付近では研磨がなされず、外周に行くに従って研磨量が増大し、均一な研磨にならないからである。具体的な振動の方向は、研磨面と転写面がその間隔を大小に変化させる方向、被研磨面と転写面を摺り合わせる方向、あるいは両者の合成方向である。
【0008】
また、微振動の大きさ(振幅)は、被研磨面の大きさ、精度に応じて、サブμmから数百μmとすることができる。
【0009】
被研磨物の材質の例は、金属、ニューセラミックスまたはガラスであり、転写型の材質の例は、金属、ガラス、樹脂材料またはピッチである。
【0010】
転写型の転写面には、樹脂粒子の半径以下の深さの多数の樹脂粒子保持凹部を形成することができる。
【0011】
また、樹脂粒子は平均粒径が1μm〜100μmのものを用いることができ、研磨微粒子は、同0.01μm〜10μmのものを用いることができる。
【0012】
樹脂粒子は、研磨に適した材質、つまり研磨材を保持できある程度弾性をもったものが適し、具体的には、ポリウレタン(ゴム)、塩化ビニル、シリコ−ンゴムの1種以上を用いることができ、研磨微粒子は、コロイダルシリカ、アルミナ、ダイヤモンド、酸化セリウム、炭化珪素、立方晶窒化硼素の1種以上を用いることができる。
【0013】
本発明方法は、回転軸を持つ球面にも適用できるが、回転軸を持たない非球面または自由曲面の研磨に特に有用である。
【0014】
本発明方法を実行するための研磨装置は、被研磨物を支持するワーク支持部材と、転写型を支持する転写型支持部材と、ワーク支持部材と転写型支持部材との間に相対回転を与えることなく相対的な微振動を与えるアクチュエータとを備えている。
【0015】
このアクチュエータは、直交三軸方向単独にあるいは合成した微振動を与えるアクチュエータから構成することができる。このアクチュエータは、具体的にはピエゾ素子から構成することができる。
【0016】
ワーク支持部材には、樹脂粒子と研磨微粒子とを含むスラリーを保持するスラリー保持筒を設け、このスラリー保持筒内に、該ワーク支持部材に支持した被研磨物を位置させる(スラリー内に被研磨物を浸漬する)ことができる。このスラリー保持筒には、スラリーを攪拌する攪拌機を設置するのが好ましい。
【0017】
また、ワーク支持部材は、転写型支持部材との回転位相を変化させるロータリテーブルを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、点当たりポリシャーを用いることなく、被研磨面形状を問わずに研磨を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1、図2は、本発明による研磨方法の一実施形態の概念図である。ワーク(被研磨金型またはガラス)Wの被研磨面W1は、例えば自由曲面または軸対称非球面からなっている。この被研磨面W1に対して研磨を施すための転写型Tには、被研磨面W1と凹凸が逆の転写面T1が形成されている。被研磨面W1と転写面T1はそれぞれ、十分な面精度に機械加工されている。また、被研磨面W1と転写面T1は回転軸を持たない非回転対称形状であり、Z軸を中心とする特定の回転位相でその凹凸が逆になる。転写型Tは、金属、ガラス、樹脂材料またはピッチから構成することができる。
【0020】
本実施形態では、被研磨面W1と転写面T1との間に、樹脂粒子11と研磨微粒子12とを含む(分散させた)スラリー10を介在させた状態で、ワークWと転写型Tに両者が接離する方向Zまたは(および)摺り合わせる方向X(またはY)の相対的な微振動を与えることで、研磨を行う。被研磨面W1(ワークW)と転写面T1(転写型T)との間に、軸Zを中心とする相対的な回転運動は与えない。
【0021】
スラリー10は、例えば1〜5重量%の樹脂粒子11と、1〜5重量%の研磨微粒子12と、残部(90〜98重量%)の潤滑液とを混合して構成されている。樹脂粒子11としては、平均粒径が1μm〜100μmのポリウレタン、塩化ビニル、シリコーンゴムの1種以上を用いることができ、研磨微粒子12としては、平均粒径が0.01μm〜10μm(使用する樹脂粒子11の平均粒径の1/10000〜1/2)のコロイダルシリカ、アルミナ、ダイヤモンド、酸化セリウムの1種以上を用いることができる。樹脂粒子11も研磨能力を持つが、研磨微粒子12の研磨能力は樹脂粒子11よりも高い。
【0022】
樹脂粒子11と研磨微粒子12の具体例は、例えば特開2001-300843号公報が開示している。樹脂粒子11は、例えば日本触媒株式会社製のベンゾクアナミン樹脂(商品名「エポスターL15」または「エポスターMS」)を用いることができ、研磨微粒子12は、例えば日産化学株式会社製のコロイダルシリカ(商品名「スノーテックス30」を使用することができる。
【0023】
被研磨面W1(ワークW)と転写面T1(転写型T)に与える相対的な微振動の振幅は、被研磨面W1(転写面T1)の形状、樹脂粒子11と研磨微粒子12の材質及び平均粒径を考慮して、サブμm(1μm未満)から数百μmの範囲で定める。被研磨面W1と転写面T1との間にスラリー10を介在させた状態において、このような微振動をワークWと転写型Tとに与えると、特に被研磨面W1と転写面T1の間隔が縮まる方向の動きにより、樹脂粒子11と研磨微粒子12を強く被研磨面W1に押し付けて研磨を実行し、逆に被研磨面W1と転写面T1の間隔が広がる方向の動きによっては、樹脂粒子11と研磨微粒子12に与えていた力を開放し、新たなスラリー10を研磨面W1と転写面T1の間に供給(吸収)することができる。
【0024】
図3は、本発明による研磨方法を実施するための装置の一例を示す概念図である。この研磨装置は、その下方に、ワークWを支持するXYテーブル(ワーク支持部材)20を備え、上方に転写型Tを支持するXYZアクチュエータ(転写型支持部材)30を備えている。XYテーブル20は、水平面内のX方向に移動自在なXステージ21Xと、このXステージ21X上にX方向と直交するY方向に移動自在に支持したYステージ21Yを有しており、Yステージ21Y上には、鉛直軸Zを中心とする回転位相を変化させることができるロータリテーブル22が支持されている。ワークWは、このロータリテーブル22上のワークチャック(ワーク支持部材)23に固定される。
【0025】
Xステージ21Xは、X方向アクチュエータ24Xによって同方向に移動可能であり、Yステージ21Yは、Y方向アクチュエータ24Yによって同方向に移動可能であり、ロータリテーブル22の回転位相は、エンコーダにより検出制御される。
【0026】
XYZアクチュエータ30は、転写型Tを支持するツールチャック(転写型支持部材)31を有し、3軸アクチュエータ(アクチュエータ)32により、XYZの3軸方向単独にあるいは合成して微振動を与えることができる。XYZアクチュエータ30は具体的には例えばピエゾ素子から構成することができる。
【0027】
ワークチャック23上には、半断面として示すスラリー保持筒25が備えられ、このスラリー保持筒25内には、撹拌機26が位置している。スラリー保持筒25内には、少なくともその液面25XがワークWの被研磨面W1より上方になるレベルまで樹脂粒子11と研磨微粒子12とのスラリー10が入れられている。撹拌機26は必要に応じ樹脂粒子11と研磨微粒子12を十分に分散させるべく、スラリー保持筒25内のスラリー10を撹拌する。
【0028】
この研磨装置によれば、ワークチャック23に支持されたワークWを、XYテーブル20によって、ツールチャック31に支持された転写型Tの軸線上に位置させ、ロータリテーブル22により、ワークWの回転位相と転写型Tの回転位相を合致させることができる。スラリー保持筒25内の液面25Xのレベルを被研磨面W1より十分上にした状態において、XYZアクチュエータ30及び3軸アクチュエータ32により、ワークWの被研磨面W1と転写型Tの転写面T1の間隔を調整し、その調整後の間隔でXYZアクチュエータ30及び3軸アクチュエータ32により、Z方向あるいはX方向(またはY方向)に転写型Tを微振動させることにより、本発明方法を実行することができる。
【0029】
図4、図5は、転写型Tの転写面に、多数の樹脂粒子保持凹部T1’を形成した実施形態を示している。保持凹部T1’の深さは、転写型TとワークWが直接機械的に接触することがないように、樹脂粒子11の半径以下の深さとするのがよい。図では保持凹部T1’及び樹脂粒子11の大きさは誇張して描いている。多数の保持凹部T1’は、転写型Tに図1、図2のような正確な転写面T1を形成した後、該転写面T1の巨視的な形状を崩すことなく形成するものであり、その凹凸をならすと、転写面T1と平行な平均転写面T1”となるように形成されている。図4と図5の違いは、樹脂粒子保持凹部T1’の形状の違いである。また、保持凹部T1’は平面的に見たときには線状に形成するのがよく、その線形状は、螺旋状、同心状、ランダム形状等を選択できる。
【0030】
本発明方法は、特に回転軸を持たない自由曲面や非球面の研磨加工に有用であるが、回転軸を持つ球面の研磨加工にも用いることが可能であり、微小・マイクロ非球面ではポリシャーを製作するのが困難なので有効となる。また面で研磨するのでポリシャー研磨(点あたり)による形状うねりも乗らず前加工形状を維持した均一な研磨が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による研磨方法の一例を示す、被研磨物と転写型の模式断面図である。
【図2】被研磨物と転写型に接近離隔方向の微振動を与えた際の研磨の様子を示す模式断面図である。
【図3】本発明方法を実施するための研磨装置の具体例を示す斜視図である。
【図4】転写型の転写面に、多数の樹脂粒子保持凹部を形成した実施形態を示す模式断面図である。
【図5】転写型の転写面に、多数の樹脂粒子保持凹部を形成した他の実施形態を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0032】
W ワーク
W1 被研磨面
T 転写型
T1 転写面
T1’ 樹脂ボール保持凹部
10 スラリー
11 樹脂粒子
12 研磨微粒子
20 XYテーブル(ワーク支持部材)
22 ロータリテーブル
23 ワークチャック(ワーク支持部材)
25 スラリー保持筒
26 撹拌機
30 XYZアクチュエータ(転写型保持部材)
31 ツールチャック(転写型保持部材)
32 3軸アクチュエータ(アクチュエータ)


【出願人】 【識別番号】000000527
【氏名又は名称】ペンタックス株式会社
【出願日】 平成18年7月12日(2006.7.12)
【代理人】 【識別番号】100083286
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦夫

【識別番号】100135493
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 大介


【公開番号】 特開2008−18487(P2008−18487A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−191332(P2006−191332)