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【発明の名称】 棒状材の切断方法およびそれを用いた切断装置
【発明者】 【氏名】山脇 健治

【氏名】永易 芳弘

【要約】 【課題】内部応力を有する被加工材の切断に際し、クラックの発生を抑制でき、切断能率の向上が図れ、さらに歩留まりや金属汚染も改善できる切断方法を提供する。

【構成】機械的な切断手段を用いて内部応力を有する棒状の被加工材を切断する方法であって、前記被加工材の長手方向に垂直な軸断面中心を回動中心として、前記被加工材を100°以上、360°未満の範囲内で回動させながら切断することを特徴とする棒状材の切断方法およびこの方法を用いた切断装置である。この切断方法では、切断手段として固定砥粒式ワイヤーソーを用い、被加工材としてシーメンス法により製造された棒状多結晶シリコンとし、固定砥粒式ワイヤーソーに対し、ワイヤー1本当たり3〜10kgfの荷重を加えるのが望ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的な切断手段を用いて内部応力を有する棒状の被加工材を切断する方法であって、前記被加工材の長手方向に垂直な軸断面中心を回動中心として、前記被加工材を100°以上、360°未満の範囲内で回動させながら切断することを特徴とする棒状材の切断方法。
【請求項2】
前記切断手段として固定砥粒式ワイヤーソーを用いることを特徴とする請求項1に記載の棒状材の切断方法。
【請求項3】
前記被加工材がシーメンス法により製造された棒状多結晶シリコンであることを特徴とする請求項1または2に記載の棒状材の切断方法。
【請求項4】
前記固定砥粒式ワイヤーソーのワイヤーに対し、1本当たり3〜10kgfの荷重を加えることを特徴とする請求項2または3に記載の切断方法。
【請求項5】
シーメンス法により製造された棒状多結晶シリコンを固定砥粒式ワイヤーソーを用いてその長手方向に略垂直に切断する切断装置であって、
前記棒状多結晶シリコンを回動可能な状態で保持する手段と、
前記棒状多結晶シリコンを長手方向に垂直な軸断面中心を回動中心として、100°以上、360°未満の範囲で正逆方向に回転させる回動手段と、
前記固定砥粒式ワイヤーソーに用いられる固定砥粒式ワイヤーを送給して前記棒状多結晶シリコンを切断する手段と、
送給される前記固定砥粒式ワイヤーに荷重を負荷する手段とを備え、前記棒状多結晶シリコンの切断面に発生するクラックを抑制することを特徴とする切断装置。
【請求項6】
前記負荷手段で加える荷重が、前記固定砥粒式ワイヤー1本当たり3〜10kgfであることを特徴とする請求項5に記載の切断装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、内部応力を有する棒状材の切断方法およびそれを用いた切断装置に関し、さらに詳しくは、半導体用単結晶シリコンの製造に用いられるチョクラルスキー法(以下、「CZ法」と表記する。)において、その製造原料として使用することができる多結晶シリコンをその切断面にクラックを生じさせることなく、棒状の被加工材から効率的に切断できる切断方法および切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体用単結晶シリコンの製造には、CZ法による回転引上げ法が多用されている。このCZ法は、るつぼ内で多結晶シリコンを溶融し、その融液にシリコンの種結晶を浸漬し、種結晶を回転させながら引上げることによって、半導体デバイスの素材として使用される単結晶を育成する方法である。
【0003】
上記CZ法の溶融原料となる多結晶シリコンは、主にシーメンス法により製造された棒状の多結晶シリコンが用いられ、切断機を用いて適当な大きさに切断すること、または塊状に破砕することによって製造原料とされる。
【0004】
シーメンス法とは、高純度のシリコンシードに通電加熱し、そのシード表面にシラン系ガスと水素を反応させ、気相成長によって、多結晶シリコンを成長させる方法である。このシーメンス法によって製造した多結晶シリコンは、CZ法の製造原料として機械的に切断する際に、多結晶シリコン内に残存している内部応力が問題になる。
【0005】
シーメンス法で多結晶シリコンを成長させる過程では、気相成長する多結晶シリコンの表面から熱が放出されるため、成長中の多結晶は内部ほど高温となる。このため、得られた多結晶シリコンは、表面が先に冷却されて収縮し、その後に中心部が収縮していくという冷却形態をとり、棒状材の内部に引張り応力が生じ、棒状材の表面側に圧縮応力が残留する内部応力が生じる。
【0006】
特に、シーメンス法ではシラン系ガスと水素を反応させるために高い反応温度、例えば、1000℃以上の高温を要するため、成長反応後の冷却過程において結晶の内部温度と表面温度との差が大きくなり、これにともなって結晶内に生じる内部応力も大きくなる。
【0007】
前述の通り、シーメンス法で得られた棒状の多結晶シリコンはCZ法の製造原料として用いられるが、多結晶シリコンを切断機で切断する際に、シリコンが高硬度の脆性材料であるのに加え、結晶内に内部応力が残存している場合に、その切断面にクラックが発生し易くなる。
【0008】
多結晶シリコンの切断面にクラックが発生すると、クラック内部の汚れが切断加工後の酸洗浄によっても除去されず、その後の多結晶シリコンの品質を悪化させることになる。また、クラック内部に酸自体が残留する場合には、内部に汚染(不純物)を抱き込みながら、厚いシリコン酸化膜を生成することから、多結晶シリコンの品質をさらに悪化させることになる。
【0009】
また、シーメンス法においては、生産効率を向上させるために、大型化した反応炉を用いて大量の多結晶シリコンを製造している。ところが、シーメンス法におけるシラン系ガスと水素の反応速度は雰囲気温度に依存するため、反応炉の大型化にともない炉内の温度分布条件およびガス供給条件に変動が生じると、多結晶シリコンの成長速度(析出)もそれらの条件によって変化する。
【0010】
例えば、反応炉内に温度が低い部分が生じた場合は、その低温部分におけるシリコン結晶の成長が阻害されることから、棒状の多結晶シリコンに細りが生じ、成長後の多結晶シリコンの形状に楕円や湾曲を生じることがある。また、反応炉内にガス供給量が少ない部分が生じた場合にも、多結晶シリコン結晶の成長が不十分となり、楕円や湾曲を生じることがある。
【0011】
したがって、反応炉が大型化されることによって、反応炉内の温度分布が不均一になり、またガス供給を均一かつ安定して行い難くなると、シーメンス法による成長後の多結晶シリコンの形状に楕円や湾曲を生じたり、さらにはポップコーンと称される結晶表面に凹凸が生じ易くなる。
【0012】
このように多結晶シリコンに楕円や湾曲、さらにポップコーンが生じるようになると、得られた多結晶シリコンを切断する際に問題が生じる。通常、棒状の多結晶シリコンは、内部応力を緩和させるため回転させながら切断しているが、多結晶シリコンの形状が正円筒ではなく、楕円、湾曲、さらに表面に凹凸形状が生じるようになると、被加工材に偏芯や回転にともなう切断刃の位置ずれが発生し、安定した切断が困難になる。
【0013】
このため、従来から、切断面にクラックを発生させることなく、安定して多結晶シリコンを切断することができる切断方法に関して種々検討されている。例えば、特許文献1には、回転駆動装置を用いて棒状多結晶シリコンを回転させ、かつ、切断部近傍を流体圧シリンダー機構およびローラを用いて支持することにより、振動を抑制しながら切断する装置が開示されている。この切断装置によれば、多結晶シリコンに割れ等が生じることなく、高効率で切断することができるとしている。
【0014】
しかし、開示された切断装置は、その構造が非常に複雑であり多額の設備費を要し、棒状の多結晶シリコンの切断に要するコストが大幅に増加する。また、上記装置における切断には、外周刃が用いられるため、多結晶シリコンを切断する際に、金属刃が棒状の多結晶シリコンに直接接触するおそれがあることから、切断面における金属汚染の問題もある。
【0015】
また、特許文献2には、揺動自在なアームに固定砥粒付きのエンドレスワイヤーを取り付け、さらに被切断材が揺動可能であることを特徴とする固定砥粒付きエンドレスワイヤーソーが開示されている。
【0016】
しかし、特許文献2で開示されるワイヤーソーは、装置のコンパクト化を図るため、被切断材の位置を変えずワイヤーアームの一端を動かして、ワイヤーを切り込み、切り込み角度に合わせて被切断材の切断部両端の切断量が一致するように、被切断材を一方向に回転させて切断する方式である。このため、揺動角度が90°以下と制限されることから、被切断材に内部応力が残存する場合には、内部応力を十分に緩和することができず、切断面にクラックが発生するという問題がある。
【0017】
【特許文献1】特開2003−320520号公報
【特許文献2】特開平11−188602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
前述の通り、多結晶シリコンを棒状結晶から切り出してCZ法における製造原料として使用する場合には、製造される単結晶シリコンの品質を確保するため、切断面に発生するクラックを防止する必要がある。さらに、切断条件を適切に管理することによって切断速度を向上させるとともに、切断の際の切断ロスを低減し、生産効率を向上させるのが望ましい。
【0019】
本発明は、上述した状況に鑑みてなされたものであり、多結晶シリコンの切断に際し、その結晶内に残存する内部応力を緩和させることによって、その切断面におけるクラックの発生を抑制し、さらに切断時に負荷される荷重を管理することによって切断能率を向上させ、しかも切断歩留まりや金属汚染も改善できる、生産効率に優れた棒状材の切断方法、およびそれを用いた切断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記課題を解決するため、多結晶シリコンの切断方法に関し種々の検討を行った。その結果、内部応力を有する棒状の被加工材を切断する場合であっても、その被加工材を適正な範囲で回転または反転を繰り返し、正逆方向に回転させる回動運動を行いながら切断することによって、内部応力の切断面への集中を緩和でき、クラックの発生を抑制できるとともに、楕円や湾曲、さらに表面に凹凸形状が生じた被加工材を対象にしても、切断刃に位置ずれが生ずることなく、安定した切断が可能であることを明らかにした。
【0021】
また、上記棒状の被加工材を切断する際に、固定砥粒式ワイヤーソーを用いることによって、ワイヤーに負荷される荷重の調整が容易になり、負荷荷重を適切な範囲に管理することによって切断能率を向上できること、さらに、外周刃切断機に比べ切断代を少なく切断ロスを削減できること、また、金属刃が直接被加工材に接触することが回避でき、金属汚染を防止できることから、生産効率に優れる切断方法を実現できることを知見した。
【0022】
本発明は上記知見に基づいて完成されたものであり、本発明の棒状材の切断方法は、機械的な切断手段を用いて内部応力を有する棒状の被加工材を切断する方法であって、前記被加工材の長手方向に垂直な軸断面中心を回動中心として、前記被加工材を100°以上、360°未満の範囲内で回動させながら切断することを特徴としている。
【0023】
本発明の棒状材の切断方法では、切断手段として固定砥粒式ワイヤーソーを用いるのが望ましい。切断能率の向上や切断ロスの削減が容易であり、金属汚染の防止も可能になり、切断効率を改善することができる。
【0024】
本発明の棒状材の切断方法では、被加工材としてシーメンス法により製造された棒状多結晶シリコンを用いることができる。内部応力が残存しやすい棒状多結晶シリコンであっても、内部応力を緩和でき、クラックの発生を抑制できることによる。
【0025】
さらに、本発明の棒状材の切断方法は、前記固定砥粒式ワイヤーソーのワイヤーに対し、1本当たり3〜10kgfの荷重を加えるのが望ましい。これにより、ワイヤー切れを生ずることなく、切断速度を向上させることができる。
【0026】
本発明の切断装置は、シーメンス法により製造された棒状多結晶シリコンを固定砥粒式ワイヤーを用いてその長手方向に略垂直に切断する切断装置であって、前記棒状多結晶シリコンを回動可能な状態で保持する手段と、前記棒状多結晶シリコンを長手方向に垂直な軸断面中心を回動中心として、100°以上、360°未満の範囲で正逆方向に回転させる回動手段と、前記固定砥粒式ワイヤーソーに用いられる固定砥粒式ワイヤーを送給して前記棒状多結晶シリコンを切断する手段と、送給される前記固定砥粒式ワイヤーに荷重を負荷する手段とを備えることを特徴としている。
【0027】
本発明の切断装置は、上記の構成を備えることにより、本発明の切断方法を適用することが可能となり、内部応力を残存させる棒状多結晶シリコンを切断する場合であっても、その切断面に発生するクラックを抑制することができる。この場合に、切断速度を向上させるために、前記固定砥粒式ワイヤー1本当たり3〜10kgfの荷重を加えるのが望ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の棒状材の切断方法および切断装置によれば、内部応力を有する被加工材を切断する際に、切断面へ集中する内部応力を緩和しクラックの発生を抑制できるとともに、荷重条件を適切に管理することによって切断能率の向上が図れ、さらに切断ロスを低減し歩留まりの向上、切断面への金属汚染も抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の棒状材の切断方法は、内部応力を有する棒状の被加工材を切断対象とし、その切断に際し、被加工材の長手方向に垂直な軸断面中心を回動中心として、被加工材を100°以上、360°未満の範囲内で回動させながら切断することを特徴としている。
【0030】
前述の通り、内部応力を有する被切断材の切断に際し、被切断材を回転または反転を繰り返す回動運動を行いながら切断することによって、内部応力の切断面への集中を緩和でき、クラックの発生を抑制できる。しかも、回動運動を行うことにより、楕円や湾曲、さらに表面に凹凸形状が生じた被加工材を対象にしても、切断刃に位置ずれが生ずることがなく、円滑で安定した切断を継続できる。
【0031】
内部応力を有する被切断材の切断に際し、被加工材の回動範囲が100°未満である場合には、被切断物の内部応力を十分に緩和することができず、切断面にクラックが発生することがある。一方、被加工材の回動範囲が360°以上である場合には、被加工材を回転させる場合と同様の問題が予測でき、被切断物の偏芯または湾曲等に起因して切断刃の位置ずれが生じ、安定した切断が困難になる。具体的には、切断ロスが増大したり、切断刃に損傷等が生じる場合がある。
【0032】
したがって、本発明の切断方法では、被加工材の回動範囲を100°以上、360°未満の範囲に限定した。より望ましい回動範囲は、被切断物が棒状の多結晶シリコンである場合にクラック発生を充分に防止できることから、180°以上、360°未満である。ここで、回動範囲が360°に近づくと(例えば、359°)、ワイヤーが切断部と異なる位置で切断溝に接触し、ワイヤー切れが生じることがある。したがって、ワイヤーが切断部と異なる位置において切断溝に接触することが考えられる場合は、ワイヤーの両端における真直度を厳しくする等、ワイヤーが切断溝に接触しないように配慮するのが望ましい。
【0033】
本発明の切断方法では、切断手段として固定砥粒式ワイヤーソーを用いるのが望ましい。通常、ワイヤーソーを用いた切断方法は、遊離砥粒式ワイヤーソーと固定砥粒式ワイヤーソーとに区分されるが、本発明の切断方法では、固定砥粒式ワイヤーソーを用いた切断方法を採用することにより、切断ロスの削減が図れ、金属汚染の防止も可能になり、切断効率とともに品質向上に優れる。
【0034】
図1は、切断手段に応じた切断刃と被加工材との接触状況を説明する図であり、(a)は切断手段としてワイヤーソーを用いた場合、(b)は外周刃を用いた場合を示している。図1では、ワイヤーソーを用いた切断では、外周刃を用いた場合と比較すると、ワイヤー2による被加工材1との接触長さLが長くなることから、安定した切断が可能になることを示している。
【0035】
図1(b)に示す外周刃3を用いた切断では、切断刃の半径を被加工材1の直径以上にすると被加工材との接触長さLを長くできるが、切断刃が大きくなると切断装置自体が大型になり、しかも切断刃の強度を確保するために、切断刃の厚みを厚くする必要がある。このため、外周刃3を用いた切断では、切断ロスが増えることから、切断歩留まりが低下する。
【0036】
また、金属汚染に関し、例えば、外周刃3を用いた切断では、切断の際に金属製の切断刃が被加工材に直接接触することが予測され、このような場合には金属不純物が被加工材の切断面に取り込まれ、金属汚染を生じることになる。
【0037】
さらに、ワイヤーソーを用いた切断であっても、固定砥粒式ワイヤーソーを用いることにより、金属汚染の防止に有効である。すなわち、2区分されるワイヤーソーのうち、遊離砥粒式ワイヤーソーは、溶剤などの冷却液にダイアモンド砥粒を混入した溶液を研削液として用い、研削材を切断部位に滴下しながら切断するワイヤーソーであり、固定砥粒式ワイヤーソーは、ワイヤーにダイアモンド砥粒を電着させることによって、ダイアモンドを全面に被覆した固定砥粒式ワイヤーを用いるワイヤーソーである。
【0038】
したがって、固定砥粒式ワイヤーソーを用いることによって、遊離砥粒式ワイヤーソーを用いた切断とは異なり、固定砥粒式ワイヤー表面がダイアモンド砥粒で被覆されているため、切断の際に多結晶シリコンにワイヤー素地が直接接触しないことから、固定砥粒式ワイヤーに含有される金属成分に起因する金属汚染を抑制できる。
【0039】
しかも、前記図1(a)に示すように、ワイヤー2を用いた切断では、被加工材1との接触長さLが長くなるため、切断時のワイヤー2に負荷される単位長さ当たりの荷重を軽減できることから、固定砥粒式ワイヤー2を用いることによって、一層の金属汚染防止を図ることができる。
【0040】
ワイヤーソーを用い被加工材を回動させながら切断することにより、内部応力を有する被加工物を対象としても、内部応力の影響を緩和させクラック発生を抑制できるが、切断面には切断加工にともなう模様、いわゆるソーマークを生じる。このソーマークは切断方法や切断条件によって、特有の形態を示す。
【0041】
図2は、被切断物の切断面に発生するソーマークを示す図であり、(a)はワイヤーソーを用いた切断方法で回動範囲を350°の正逆回転とした場合の切断面を、(b)はワイヤーソーを用いた切断方法で回動範囲を160°の正逆回転とした場合の切断面を、(c)は外周刃を用いた切断方法による切断面を、(d)はバンドソーを用いた切断方法による切断面をそれぞれ示している。
【0042】
図2(a)および(b)に示すように、ワイヤーソーを用いた切断方法によるソーマークは、回動範囲によって異なるものの曲率を有する円弧の形態を示し、最後に切断されるまで切断されない表面部分が一部ある。この部分は、ワイヤーの切断等の損傷を防止するための部位ともいえる。一方、図2(c)および(d)に示すソーマークでは、ほぼ直線状または湾曲した形態を示している。
【0043】
本発明の切断方法では、被加工材としてシーメンス法により製造された棒状多結晶シリコンを用いることができる。シーメンス法により製造された棒状多結晶シリコンでは、気相成長後の冷却過程において内部応力を残存し易い被加工材であるが、結晶内に内部応力が残存しやすい被加工材であっても、内部応力を緩和でき、クラックの発生を抑制できることによる。
【0044】
本発明の切断方法は、前記固定砥粒式ワイヤーソーのワイヤーに対し、1本当たり3〜10kgfの荷重を加えるのが望ましい。荷重が3kgf未満であれば、切断時間が長くなり、切断能率が低下し、荷重が10kgfを超えると切断時間を短縮する効果が飽和し、固定砥粒式ワイヤーが切断する可能性が高くなることによる。
【0045】
本発明の切断装置は、シーメンス法により製造された棒状多結晶シリコンを固定砥粒式ワイヤーソーを用いてその長手方向に略垂直に切断する切断装置であって、前記棒状多結晶シリコンを回動可能な状態で保持する手段と、前記棒状多結晶シリコンを長手方向に垂直な軸断面中心を回動中心として、100°以上、360°未満の範囲で正逆方向に回転させる回動手段と、前記固定砥粒式ワイヤーソーに用いられる固定砥粒式ワイヤーを送給して前記棒状多結晶シリコンを切断する手段と、送給される前記固定砥粒式ワイヤーに荷重を負荷する手段とを備えることを特徴としている。
【0046】
図3は、本発明の切断装置における棒状多結晶シリコンの保持手段と回動手段の構成例を示す図である。保持手段として保持具4が用いられ、多結晶シリコン1は保持具4に支持された複数のチャック5で回動可能に固定される。また、回動手段として保持具4には回転軸が設けられ、カップリング6によって回動用モーター7の回転軸に連結されており、多結晶シリコン1を規定範囲内で回動させることができる。
【0047】
図4は、本発明の切断装置を用いて棒状多結晶シリコンを切断する方法を説明する主要部の概略構成図である。前記図3に示す保持手段および回動手段で固定された多結晶シリコン1は、長手方向に垂直な軸断面中心を回動中心として100°以上、360°未満の範囲で回動可能に構成される。このとき、切断手段であるワイヤー2は、ガイドロール9を介して支持され、図示しない駆動手段によって送給され、棒状多結晶シリコン1を切断する構造である。また、切断の際は、負荷手段であるテンショナー8を用いて、棒状多結晶シリコン1に荷重を与えることが可能である。
【0048】
本発明の切断装置では、保持手段および回動手段は、前記図3に示す構造に限定するものではなく、被加工材が多結晶シリコン等であり、金属との直接接触による金属汚染が問題となる場合には、直接接触する部分にはナイロンまたはフッ素樹脂等の合成樹脂でコーティングするのが望ましい。また、回動手段は、被加工材の材質および切断手段等に応じて、プーリー、ギア、インバーター等によって回動速度が調節可能であり、切断抵抗がモニターできるのがよい。
【0049】
本発明の切断装置は、固定砥粒式ワイヤーをエンドレスワイヤーではなく、ワイヤーが終端までいくと、巻き取りドラムの回転方向を反対にして、固定砥粒式ワイヤーを反転させる方式を採用することができる。この場合に、固定砥粒式ワイヤーの反転時に、棒状多結晶シリコンの回動速度に対する固定砥粒式ワイヤーの切断速度が変化するため、固定砥粒式ワイヤーが過負荷になり、断線または絡まり等が生じるおそれがある。このため、固定砥粒式ワイヤーの反転時には、棒状多結晶シリコンの回動を停止し、固定砥粒式ワイヤーを反転させた後、再度、棒状多結晶シリコンを回動させるようにする。
【0050】
また、本発明の切断装置では、固定砥粒式ワイヤーを用いて切断する際には、被切断物を切断した後に、ドレス材を配合した接着剤からなるブロックを固定砥粒式ワイヤーで切断させることによって、ダイアモンド砥粒の目立てドレスを実施するのが望ましい。このような目立てドレスを行うことにより、切削抵抗の低減を図り、切断中の割れを防止することができ、多結晶シリコンの歩留まりや生産効率を向上させることができる。
【実施例】
【0051】
前記図3および図4に示す切断装置を用い、シーメンス法により製造された棒状多結晶シリコンを供試加工材として、クラック発生状況確認試験(実施例1)および切断速度確認試験(実施例2)を実施した。
(実施例1)
供試加工材を直径130mmの多結晶シリコンとし、表1に示す切断条件および表2に示す回動範囲で切断した。供試加工材を切断した後、切断面におけるクラック発生状況を確認し、全切断本数のうちクラックが発生した本数の割合を百分率で表したクラック発生率(%)を求めた。なお、繰り返し数は20回とした。その結果を表2に示す。
【0052】
【表1】


【0053】
【表2】


【0054】
表2より、供試加工材の回動範囲が本発明の規定範囲を外れる供試No.1〜3ではクラックの発生を抑制することは困難である。これに対し、供試加工材の回動範囲が本発明の規定範囲を満足する供試No.4〜10は、クラックの発生を抑制できることを確認した。また、本発明例であっても、供試No.7〜10においては、供試加工材の回動範囲を180°〜350°にすることにより、切断時にクラックの発生を完全に防止することを確認した。
(実施例2)
次に、実施例1の切断条件で、供試加工材を直径130mmの多結晶シリコンを切断する際に、固定砥粒式ワイヤー1本当たりに加える加重を1〜15kgfの範囲で変化させ、切断速度およびワイヤー切れにおよぼす荷重条件の影響について確認した。その結果を表3に示す。
【0055】
【表3】


【0056】
表3より、負荷荷重が少ない供試No.1および2は切断時間が長く、負荷荷重が大きい供試No.8ではワイヤー切れが生じた。切断時間に関しては多結晶シリコンの切断能率を考慮し、切断時間が30分以内であることが望ましいことから、供試No.3〜7の結果が示すように、好適な負荷荷重は固定砥粒式ワイヤー1本当たり3〜10kgfであることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の切断方法および切断装置によれば、内部応力を有する被加工材を切断する際に、切断面へ集中する内部応力を緩和しクラックの発生を抑制できるとともに、荷重条件を適切に管理することによって切断能率の向上が図れ、さらに切断ロスを低減し歩留まりの向上、切断面への金属汚染も抑制できる。これにより、半導体用単結晶シリコンの製造原料として使用される多結晶シリコンの切断手段として広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】切断手段に応じた切断刃と被加工材との接触状況を説明する図であり、(a)は切断手段としてワイヤーソーを用いた場合、(b)は外周刃を用いた場合を示している。
【図2】被切断物の切断面に発生するソーマークを示す図であり、(a)はワイヤーソーを用いた切断方法で回動範囲を350°の正逆回転とした場合の切断面を、(b)はワイヤーソーを用いた切断方法で回動範囲を160°の正逆回転とした場合の切断面を、(c)は外周刃を用いた切断方法による切断面を、(d)はバンドソーを用いた切断方法による切断面をそれぞれ示している。
【図3】本発明の切断装置における棒状多結晶シリコンの保持手段と回動手段の構成例を示す図である。
【図4】本発明の切断装置を用いて棒状多結晶シリコンを切断する方法を説明する主要部の概略構成図である。
【符号の説明】
【0059】
1:被切断材、2:ワイヤー、固定砥粒式ワイヤー
3:外周刃、4:保持具
5:チャック、6:カップリング
7:モーター、8:テンショナー
9:ガイドロール
【出願人】 【識別番号】397064944
【氏名又は名称】株式会社大阪チタニウムテクノロジーズ
【識別番号】000153672
【氏名又は名称】株式会社住友金属ファインテック
【出願日】 平成18年7月11日(2006.7.11)
【代理人】 【識別番号】100103481
【弁理士】
【氏名又は名称】森 道雄


【公開番号】 特開2008−18478(P2008−18478A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−190339(P2006−190339)