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【発明の名称】 研磨加工方法
【発明者】 【氏名】不破 徳人

【要約】 【課題】研磨液を効率よく、かつ十分に研磨部分に供給可能とし、これによって冷却等の研磨液の機能を確実かつ安定して発揮させることができるとともに、研磨液の使用量が抑えられ、低コストで環境への負担を軽減させることができる研磨加工方法を提供する。

【構成】管状のスピンドルシャフト22の下端にフランジ24を介して研磨工具50を取り付け、研磨工具50のフレーム51および研磨パッド52と、フランジ24の中心に、スピンドルシャフト22内に連通する貫通孔53を形成する。スピンドルシャフト22の上端に接続した冷却水の給水管28から水を供給し、その水を研磨パッド52の中心の貫通孔53(52a)から遠心力を利用して周囲の研磨部分に常に行き渡らせる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に砥粒が混合されて円盤状に成形され、中心を回転軸として回転しながら片面の研磨面が被加工物に押し当てられることによって該被加工物を研磨する形式の研磨部材を用いた研磨方法であって、
前記研磨部材の中心に貫通孔を形成し、該貫通孔に通した研磨液を被加工物に供給しながら該被加工物を研磨することを特徴とする研磨加工方法。
【請求項2】
前記研磨部材の前記研磨面に、前記貫通孔から外周面に連通する放射状の研磨液通路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の研磨加工方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に砥粒が混合されて円盤状に成形された研磨部材によって被加工物を研磨加工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガラス基板等のガラス材料を極めて平坦かつ鏡面に研磨する方法として、固定砥粒研磨パッドを、高速回転させながら、かつ研磨液を研磨加工部分に供給しながら、被加工物に押し当てるといった方法がある(例えば特許文献1,2)。これら文献に記載の研磨パッドは、例えばウレタンやフェノール樹脂といった合成樹脂からなる結合材で砥粒を結合したものであり、研磨液としては、結合材を化学的にエッチングして常にフレッシュな砥粒を研磨面に露出させる自生発刃作用を得るために、KOH等の薬液が用いられている。
【0003】
一方、本出願人は、結合材としてゴム粉末を用い、このゴム粉末中に砥粒を混合させて圧縮成形したものを焼成してなる研磨砥石を開発した(特願2005−351523号)。この研磨砥石の場合には、結合材と砥粒との結合力が低く、かつ結合材が比較的柔らかいため、研磨液に溶剤機能は必要なく、冷却効果が得られればよいため、単なる水を適用することができるといった利点がある。
【0004】
このように研磨液は研磨パッドの材質によって選択されるものであるが、いずれにしろ研磨液を被加工物に対して供給するには、研磨液供給用のノズルから、相対的に回転する被加工物と研磨パッドとの間や被加工面に向けて外側から供給するといった方法が一般的であった(例えば特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−260037号公報
【特許文献2】特開2004−261942号公報
【特許文献3】特開2003−251555号公報(図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、回転するテーブル上に保持した被加工物に対して回転する研磨パッドを押し付け、上記のようなノズルによって研磨液を外側から供給しながら研磨した場合、両者の遠心力によって研磨液が回転外周方向に飛散または流動し、研磨部分全体に十分に行き渡らない(特に中心側に)といった不具合が生じる。したがって研磨部分への研磨液の供給量に不足が生じ、研磨液の機能が十分に発揮されないといった不具合が生じる。すなわち、研磨液がエッチング用の上記薬液である場合には、研磨パッドの自生発刃作用が得にくくなって研磨効率が低減する。また、研磨液が水の場合には冷却効果が不十分となり、面焼け等の不良品の発生を招く。そして、これらの不具合を防ぐためには研磨液をより多く使用することになるため、研磨液の使用量にロスが生じ、高コスト、かつ環境に対する負担増といった問題も起こる。
【0007】
よって本発明は、研磨液を効率よく、かつ十分に研磨部分に供給することができることにより、研磨液の機能を確実かつ安定して発揮させることができるとともに、研磨液の使用量が抑えられ、低コストで環境への負担を軽減させることができる研磨加工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材に砥粒が混合されて円盤状に成形され、中心を回転軸として回転しながら片面の研磨面が被加工物に押し当てられることによって該被加工物を研磨する形式の研磨部材を用いた研磨方法であって、研磨部材の中心に貫通孔を形成し、該貫通孔に通した研磨液を被加工物に供給しながら該被加工物を研磨することを特徴としている。本発明の研磨液は研磨パッドの材質に応じて選択されるものであり、例えばエッチング用の薬液等が挙げられ、水の場合もある。
【0009】
本発明によれば、研磨部材の中心に形成した貫通孔を通して研磨液が被加工物に供給され、その研磨液は、回転する研磨部材の遠心力によって中心から外周方向に流動する。このため、遠心力によって研磨液が中心側に行き渡らないといった不具合は生じず、研磨部材の研磨面と被加工物の被加工面との間に隙間なく十分に行き渡らせることができる。その結果、冷却やエッチングといった研磨液に求められる機能が十分かつ効率的に発揮され、研磨液不足によって生じる不具合(例えば面焼け等の不良品の発生)が防止されるとともに、研磨液の使用量をできるだけ少なくすることができる。
【0010】
研磨部材の研磨面に貫通孔から外周面に連通する放射状の研磨液通路を形成した形態は、研磨部材の中心から外周方向に研磨液が流動する作用を促進させることになり、本発明の好ましい形態である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、研磨部材の中心に形成した貫通孔から被加工物に研磨液を供給するので、回転する研磨材の遠心力によって研磨液を研磨部分に対して過不足なく十分かつ効率的に行き渡らせることができ、その結果、研磨液の機能を確実かつ安定して発揮させることができるとともに、研磨液の使用量が抑えられ、低コストで環境への負担を軽減させることができるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明に係る研磨加工方法の一実施形態を説明する。
[1]研磨加工装置
図1は、一実施形態の方法を実施し得るに好適な研磨加工装置を示している。この研磨加工装置10は、直方体状の基台11を備えている。この基台11の長手方向一端部には、基台11の水平な上面に対して垂直に立設された壁部12が一体に形成されている。図1では、基台11の長手方向、幅方向および鉛直方向を、それぞれY方向、X方向およびZ方向で示している。基台11上は、長手方向のほぼ中間部分から壁部12側がワーク(被加工物)1を加工する加工エリア11Aとされ、この反対側が、加工エリア11Aに加工前のワーク1を供給し、かつ、加工後のワーク1を回収する着脱エリア11Bとされている。
以下、加工エリア11Aと着脱エリア11Bについて説明する。
【0013】
(a)加工エリアの機構
図1に示すように、加工エリア11Aには矩形状のピット13が形成されている。このピット13内には、テーブルベース14を介して真空チャック式の円盤状のチャックテーブル15がY方向に移動自在に設けられている。テーブルベース14は、ピット13内に配されたY方向に延びるガイドレールに摺動自在に設けられており、適宜な駆動機構(いずれも図示略)によって同方向を往復動させられる。
【0014】
テーブルベース14の移動方向両端部には蛇腹状のカバー16,17の一端がそれぞれ取り付けられており、これらカバー16,17の他端は、壁部12の内面と、壁部12に対向するピット13の内壁面に、それぞれ取り付けられている。これら、カバー16,17は、テーブルベース14の移動路を覆い、その移動路に研磨屑等が落下することを防ぐもので、テーブルベース14の移動に伴って伸縮する。チャックテーブル15は、テーブルベース14上に、ワーク1の保持面である上面が水平な状態とされ、かつ、Z方向(鉛直方向)に沿った図示せぬ回転軸を中心にして回転自在に支持されている。チャックテーブル15は、図示せぬ回転駆動機構によって時計方向または反時計方向に回転可能となっている。
【0015】
チャックテーブル15は、図1に示すようにテーブルベース14ごと壁部12側に移動して所定の研磨加工位置に位置付けられる。その研磨加工位置の上方には、研磨ユニット20が配されている。この研磨ユニット20は、基台11の壁部12に、移動板32およびガイドレール31を介して昇降自在に取り付けられ、モータ30によって駆動する送り機構33によって昇降させられる。
【0016】
研磨ユニット20は、図2に示すように、軸方向がZ方向に延びる円筒状のスピンドルハウジング21と、このスピンドルハウジング21内に、図示せぬエアーベアリング機構によって同軸的、かつ回転自在に支持された管状のスピンドルシャフト(回転軸)22と、スピンドルハウジング21の上端部に固定されてスピンドルシャフト22を回転駆動するモータ23と、スピンドルシャフト22の下端に同軸的に固定された円盤状のフランジ24と、フランジ24の下面に固定された研磨工具50とを具備している。図1に示すように、研磨ユニット20は、スピンドルハウジング21がブロック34を介して移動板32に固定されている。
【0017】
モータ23は、スピンドルハウジング21の上端に固定された円筒状のモータケーシング23Aを有しており、スピンドルシャフト22の上端部はモータケーシング23Aを貫通している。モータ23は周知の永久磁石式であって、スピンドルシャフト22の上端外周面に固着された永久磁石製の円筒状ロータ23aと、このロータ23aを包囲する状態にモータケーシング23Aの内周面に固定されたステータコイル23bとの組み合わせで、スピンドルシャフト22を高速回転させるように構成されている。モータケーシング23Aのスピンドルシャフト22が貫通した上面部分にはカバー26が着脱自在に固定されている。そしてこのカバー26には、スピンドルシャフト22内に挿入される継手管27を介して給水管28が接続されている。継手管27は、回転するスピンドルシャフト22の内周面に接触しない程度の寸法に設定されている。
【0018】
研磨工具50は、図3にも示すように、外径がフランジ24とほぼ同径の円盤状のフレーム51の下面に、円盤状の研磨パッド(研磨部材)52が固着されたものである。研磨パッド52は、不織布等からなる研磨用布(基材)中にアルミナや酸化セリウム等の研磨砥粒を含浸させて円盤状に成形したもので、接着手段等によってフレーム51に固着されている。研磨工具50は、フレーム51がフランジ24にねじ止め等によって取り付けられることにより、研磨ユニット20に着脱自在にセットされる。
【0019】
フレーム51および研磨パッド52はフランジ24に対して同心状に配されるが、これらフランジ24、フレーム51および研磨パッド52の中心には、互いに連続する貫通孔24a,51a,52aが形成されている。連続したこれら貫通孔(以降、1つの貫通孔53と称する)は、スピンドルシャフト22の内部に連通している。上記給水管28からは、研磨液として水が継手管27を経てスピンドルシャフト22内に供給され、その水は貫通孔53を通って研磨パッド52の下方に導かれるようになっている。
【0020】
(b)着脱エリアの機構
図1に示すように、着脱エリア11Bの中央には矩形状のピット18が形成されており、このピット18の底部には、上下移動する2節リンク式の移送ロボット60が設置されている。そしてこの移送ロボット60の周囲には、上から見た状態で反時計回りに、供給カセット61、位置合わせ台62、旋回アーム式の供給アーム63、供給アーム63と同じ構造の回収アーム64、スピンナ式の洗浄装置65、回収カセット66が、それぞれ配置されている。
【0021】
供給カセット61、位置合わせ台62および供給アーム63はワーク1をチャックテーブル15に供給する手段であり、回収アーム64、洗浄装置65および回収カセット66は、研磨が終了したワーク1をチャックテーブル15から回収する手段である。各カセット61,66は複数のワーク1を積層状態で収容するもので、基台11上の所定位置にセットされる。
【0022】
移送ロボット60によって供給カセット61内から1枚のワーク1が取り出されると、そのワーク1は被加工面を上に向けて位置合わせ台62上に載置され、ここで一定の位置に決められる。次いでワーク1は、供給アーム63によって位置合わせ台62から吸着されて取り上げられ、着脱位置で待機しているチャックテーブル15上に被加工面を上に向けた状態に載置される。一方、研磨ユニット20によって被加工面が研磨され、着脱位置に位置付けられたチャックテーブル15上のワーク1は回収アーム64によって吸着されて取り上げられ、洗浄装置65に移されて水洗、乾燥される。そして、洗浄装置65で洗浄処理されたワーク1は、移送ロボット60によって回収カセット66内に移送、収容される。
【0023】
供給アーム63と回収アーム64の間には、チャックテーブル15に洗浄水および高圧エアーを噴射してチャックテーブル15を洗浄するノズル67が配されている。研磨ユニット20によるワーク1の加工位置は、着脱位置よりも壁部12側に所定距離移動した範囲とされ、チャックテーブル15は、テーブルベース14の移動によって、これら加工位置と着脱位置との間を行き来させられる。ノズル67によるチャックテーブル15の洗浄、および水の供給は、着脱位置において行われる。
【0024】
[2]研磨動作
次に、上記研磨加工装置10を用いて薄板状のワーク1を研磨する方法を説明する。まず、供給カセット61内に、多数のワーク1を収容する。そのうちの1枚のワーク1が、移送ロボット60によって位置合わせ台62に移され、位置決めされる。続いて供給アーム63によって、着脱位置で待機し、かつ真空運転されているチャックテーブル15上に、研磨を施すべき被加工面を上に向けて露出させられたワーク1が載置される。ワーク1は、チャックテーブル15の上面に吸着して保持される。チャックテーブル15の吸着エリアは、ワーク1の形状に応じた形状に設定されることが望ましい。なお、この実施形態のチャックテーブル15は真空チャック式であるが、被加工面を露出した状態でワーク1を保持できる形式であれば、チャック方式はいかなる形式であってもよい。
【0025】
次に、テーブルベース14が壁部12方向に移動し、ワーク1が研磨ユニット20の下方の研磨加工位置に送り込まれる。そして、チャックテーブル15が回転してワーク1が回転させられ、このワーク1に、送り機構33によって下降させた研磨ユニット20を近付けるとともに、給水管28からスピンドルシャフト22内に水を供給しながら、スピンドルシャフト22を高速回転させて研磨工具50の研磨パッド52をワーク1の被加工面に押圧させ、研磨パッド52によってワーク1の被加工面を研磨する。
【0026】
ワーク1すなわちチャックテーブル15の回転数や回転方向、研磨工具50の回転数や回転方向、ならびにワーク1に対する研磨パッド52の荷重等の運転条件は、ワーク1の材質等によって任意に設定されるが、例えば、ワーク1と研磨パッド52は互いに反対方向に回転し、双方の回転数は50〜500rpm、研磨パッド52のワーク1に対する押圧力は5kPa〜50kPaといった条件で研磨加工される。なお、押圧力の制御は、例えばチャックテーブル15の下方に配した力センサ(例えば日本キスラー社製:薄型力センサ9135B等)によって逐一計測しながら行うことが可能である。
【0027】
研磨の際に給水管28から供給される水は、スピンドルシャフト22内を落下して貫通孔53を通り、その貫通孔53に表出するワーク1の上面に落下する。そしてその水は回転するワーク1や研磨パッド52の遠心力によって研磨パッド52とワーク1の被加工面との間に入り込み、研磨パッド52の摩擦熱を冷却する。なお、図2では、研磨パッド52はワーク1よりも大きく、ワーク1の全面を覆って研磨しているが、研磨パッド52の大きさはワーク1より小さくてもよい。しかしながら、加工効率の観点からはできるだけ研磨パッド52は大きいものの方が好ましい。
【0028】
ワーク1の被加工面が所望の度合いに研磨加工されたら、研磨ユニット20を上昇させて研磨パッド52をワーク1から離すとともに、チャックテーブル15の回転を停止させる。また、給水管28からの水の供給を中断する。そして、テーブルベース14を着脱位置に移動させるとともに、チャックテーブル15の真空運転を停止させる。この後、ワーク1は、回収アーム64によって洗浄装置65内に移送されて水洗されてから水分が除去され、次いで、移送ロボット60によって回収カセット66内に移送、収容される。また、ノズル67から、供給・回収位置で停止しているチャックテーブル15に向けて洗浄水と高圧エアーが噴射され、チャックテーブル15が洗浄される。
【0029】
[3]一実施形態の作用効果
上記のようにして、研磨液である冷却用の水を、貫通孔53を通してワーク1に供給すると、その水は、回転する研磨パッド52やワーク1の遠心力によって、それらの回転中心から外周方向に流動しながら研磨部分を通過していく。このため、冷却用の水を、その研磨部分、すなわち研磨パッド52の研磨面52bとワーク1の被加工面との間に隙間なく十分に行き渡らせることができる。その結果、冷却が十分かつ効率的になされて面焼け等の不良品の発生が防止されるとともに、水の使用量をできるだけ少なくすることができる。
【0030】
図4は、研磨パッド52の下面の研磨面52bに、貫通孔53から外周面に連通する放射状の水通路(研磨液通路)54が複数形成されている例を示している。水通路54は研磨パッド52がフレーム51に固着されていない部分であって、フレーム51の下面を露出させて形成されており、この場合は十字状に形成されている。このように水通路54を放射状に形成すると、研磨パッド52の遠心力によって研磨液が水通路54を通って外周方向に多く、かつ円滑に供給されるとともに、水通路54から研磨面52bに水が流動してより多くの水が供給されるので、冷却効果をより向上させることができる。
【0031】
なお、上記実施形態は、本発明の研磨部材として研磨用布中にアルミナや酸化セリウム等の研磨砥粒を含浸させた研磨パッド52が採用されているが、研磨部材はこの例に限られない。例えば、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、ポリウレタン−ポリウレアゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴム系の結合材中に、同様の砥粒を分散させたいわゆる研磨砥石を研磨部材として用いることができる。その場合の研磨液は同様に水が用いられる。また、本発明では、研磨液は上記実施例のように水に限られることはなく、使用する研磨パッドに応じたものが用いられる。例えばウレタンやフェノール樹脂といった合成樹脂からなる結合材で砥粒を結合したものであって、研磨液で結合材をエッチングする必要がある研磨パッドの場合には、KOH等の薬液が用いられる。
【実施例】
【0032】
続いて、実施例を提示して本発明の効果を実証する。
まず、研磨部材として、次の方法で研磨砥石を作製した。
結合材として直径10〜300μmのゴム粉末(NBR粉末)と、砥粒として直径0.1〜10μmの酸化セリウム粉末とを混合し、この混合物を50〜300kg/cmの圧力で圧縮してリング形状に成形した。次いで、この圧縮成形体を100℃〜200℃の温度範囲で焼成し、外径:300mm、内径:100mmのリング形状の研磨砥石を必要数得た。また、ワークとして、直径150mmのホウケイ酸ガラスからなるガラス基板を必要数用意した。
【0033】
作製した研磨砥石およびガラス基板を図1に示した研磨加工装置にセットし、研磨砥石でガラス基板の表面を研磨加工する下記試験1,2を行った。試験1,2に共通する条件を以下の通りとした。
・ワーク:ホウケイ酸ガラス基板(直径150mm)
・ワークの研磨前の表面粗さ:0.2μmRy程度
・研磨砥石の形状:外径300mm、内径100mmのリング形状
・研磨加工位置:研磨砥石の外縁部とガラス基板の外縁部とが重なる位置
【0034】
(i)研磨加工試験1
給水管を経て研磨砥石の中心から水をワークに供給しながら行った本発明の方法を採用した場合(内部給水)と、チャックテーブルの近傍に新たに設けた外部ノズルからワークの上面に向けて水を供給した本発明外の場合(外部給水)とを、水の供給量を適宜に変えて研磨加工した。上記に加えて、研磨圧(ガラス基板に対する研磨砥石の押し付け圧力):150g/cm、研磨砥石とワークとの外縁部における相対速度:30m/sec、研磨時間:150secを研磨加工条件に追加した。そして、これらの場合のスピンドルのモータにかかる電流値を測定するとともに、ワークに生じる面焼けについて観察した。
【0035】
図5(a),(b)は、それぞれ内部給水と外部給水の結果を示しており、これによると、(b)に示す外部給水では、給水量が0.7L/minまではモータにかかる電流値は許容範囲(概ね10A)内を示したが、0.7L/min以下になると異常に上昇し、ワークの被加工面に面焼けが発生した。
【0036】
一方、図5(a)に示す本発明の内部給水を行った場合には、0.2L/minの給水量でもワークに面焼けは発生せず、研磨加工が可能な状態が維持された。これは、遠心力によって研磨パッドの中心から外周方向に水が流動することにより、研磨部分に水が十分に行き渡り冷却効果が大幅に向上したためである。
【0037】
(ii)研磨加工試験2
ワークの目的加工量(研磨によって除去される厚さ)を0.7μmに定め、内部給水および外部給水の場合における必要給水量とモータにかかる電流値とをそれぞれ測定した。なお、ワークの加工量wは下記のプレストン式に基づくもので、ワークに対する研磨パッドの押圧力や研磨時間を一定にした場合の加工量であり、これらの条件を適宜に変動させて加工量を一定の0.7μmに定めた。
w=η・V・P・T
(η:定数、V:被加工物と研磨パッド間の相対速度、P:圧力、T:加工時間)
なお、相対速度や圧力が大きくなるに伴い加工量が飽和することがあるので、上記式の比例関係を保つことができない場合が多い。そこで加工量の式は次式に修正される。
w=f(P,V)・T
f(P,V)はP,Vの関数で、単位時間での加工量、あるいは圧力と相対速度で決められる除去率Eとここで定義する。この補間関数を用いることにより、測定した範囲内の任意のP,V値に対応する加工量を算出することができる。
【0038】
図6はその結果を示しており、これによると、研磨加工量を同じにした場合、給水量に関しては内部給水の場合が外部給水の場合と比べて約66%の削減が図られることが認められた。また、モータにかかる電流値は、内部給水の場合が外部給水の場合と比べて約17%低く抑えられた。これらの結果、外部給水に比べて本発明の内部給水は、水の使用量や電力を大幅に削減することができ、低コストで環境への負担を軽減させることができることが実証された。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態を好適に実施し得る研磨加工装置の斜視図である。
【図2】研磨加工装置が具備する研磨ユニットの一部省略かつ一部断面側面図である。
【図3】研磨パッドを具備した研磨工具の斜視図である。
【図4】研磨工具の他の例を示す斜視図である。
【図5】実施例で行った研磨加工試験1の結果であって給水量とワークの除去量との関係を示し、(a)は本発明の内部給水、(b)は外部給水の場合を示すグラフである。
【図6】実施例で行った研磨加工試験2の結果であって加工量を一定とした場合の内部給水と外部給水の(a)給水量の違い、(b)モータにかかる電流値の違いを示すグラフである。
【符号の説明】
【0040】
1…ワーク(被加工物)
10…研磨加工装置
22…スピンドルシャフト(回転軸)
50…研磨工具
52…研磨パッド(研磨部材)
52b…研磨パッドの研磨面
53(52a)…研磨パッドの貫通孔
54…水通路(研磨液通路)
【出願人】 【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
【出願日】 平成18年6月29日(2006.6.29)
【代理人】 【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生


【公開番号】 特開2008−6540(P2008−6540A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−179701(P2006−179701)