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【発明の名称】 磁気研磨方法およびその装置
【発明者】 【氏名】中村 輝久

【氏名】花村 玲

【氏名】山本 慶太

【氏名】松尾 良夫

【氏名】橋本 敏隆

【要約】 【課題】磁気研磨液の供給系統として配管路やポンプ等の循環のための配管設備が必要なく、磁気研磨液の供給を適正に行うことができ、磁気研磨液の取り替えが容易であり、コストを低減することに有利となる磁気研磨方法およびその装置を提供する。

【構成】研磨バイト2には先端に永久磁石20を設けて磁場発生源とし、少なくともx軸,y軸,z軸について多軸制御の機能を有する駆動手段と連係する。磁気研磨液4を蓄える貯蔵タンク5を備えて当該磁気研磨液には非磁性の砥粒を混合しておき、研磨対象1は支持台3に固定し、研磨対象に対して研磨バイトが非接触に対面する配置とする。駆動手段を起動することで研磨バイトには所定の運動動作を行わせ、周辺に存在する磁気研磨液に生成した磁気クラスタにより流体研磨を行うが、所定の時期に研磨バイトを3次元的に移動させて貯蔵タンク内へ浸して引き出し、再び流体研磨の動作に戻す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨対象に対して研磨バイトを非接触に対面させ、周辺に存在させた磁気研磨液を連動することにより流体研磨を行う磁気研磨方法であって、
前記研磨バイトには磁場を発生する磁場発生源を設けて駆動手段と連係させ、当該駆動手段は少なくともx軸,y軸,z軸について多軸制御の機能を有するものとし、
前記磁気研磨液を蓄える貯蔵タンクを備えて当該磁気研磨液には砥粒を混合しておき、前記駆動手段を起動することにより前記研磨バイトには所定の運動動作を行わせ、前記磁場発生源の磁場により前記磁気研磨液に時間的に定常的あるいは変動的な磁場を加えて流体研磨を行い、所定の時期に、前記駆動手段の駆動により前記研磨バイトを3次元的に移動させて前記貯蔵タンク内へ浸して引き出し、この後再び流体研磨のための動作に戻すことを特徴とする磁気研磨方法。
【請求項2】
前記貯蔵タンクに蓄えた前記磁気研磨液を攪拌する攪拌手段を備えて、当該攪拌手段を適時に起動することを特徴とする請求項1に記載の磁気研磨方法。
【請求項3】
前記貯蔵タンクに蓄えた前記磁気研磨液の粘度を計測する粘度計を備え、
計測した粘度の値が許容範囲から外れた際は溶媒を充填するなど、粘度を適正に保つ制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の磁気研磨方法。
【請求項4】
前記貯蔵タンクは搬送手段と連係し、前記所定の時期には当該搬送手段の起動により前記貯蔵タンクを移動させて前記研磨バイトが移動し得る領域内で待ち受けし、前記研磨バイトが引き出された後は前記領域外のホームポジションへ戻す移動動作を行うことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の磁気研磨方法。
【請求項5】
研磨対象との対面に磁場発生源を有する研磨バイトと、少なくともx軸,y軸,z軸について多軸制御の機能を有する駆動手段と、磁気研磨液を蓄える貯蔵タンクとを備えて、
前記駆動手段は前記研磨バイトに連係し、前記磁気研磨液には非磁性の砥粒を混合しておき、前記駆動手段を起動することにより前記研磨バイトには所定の運動動作を行わせ、前記磁場発生源の磁場により前記磁気研磨液に時間的に定常的あるいは変動的な磁場を加えて流体研磨を行い、所定の時期に、前記駆動手段の駆動により研磨バイトを3次元的に移動させて前記貯蔵タンク内へ浸して引き出し、この後再び流体研磨のための動作に戻す構成にすることを特徴とする磁気研磨装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨対象との間に磁気研磨液を存在させて流体研磨を行う磁気研磨方法およびその装置に関するもので、より具体的には、研磨対象とは非接触に対面させる研磨バイトに対して磁気研磨液を供給することの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
研磨対象の表面を鏡面に仕上げる技術として、例えば特許文献1,2などに見られるように、磁界を作用させることで研磨を行う磁気研磨の技術が知られている。特許文献1には、磁気研磨液における分散粒子を調整することにより磁気研磨液の性能を改善し、精密な研磨、仕上げ加工に適用し得るような技術の提案がある。特許文献2には、磁性砥粒からなる粒子ブラシと研磨対象との間で適正に相対運動を行わせること、および磁性砥粒に非磁性層を被覆することにより研磨の挙動を改善し、精密な研磨、仕上げ加工に適用し得るような技術の提案がある。そうした磁気研磨は、いわゆる非接触の研磨が行えるため強度が弱い研磨対象でも応力なく研磨が行えるメリットがあり、精密仕上げの用途に好まれている。
【0003】
磁気研磨にあっては、磁性砥粒(粒子ブラシ)つまり研削工具は磁界により活性化するため、研磨は磁場発生源の磁極が研磨対象に対して向き合う対面部位については良好に進む研磨特性を持つ。そこで、磁場発生源は例えば永久磁石とし、これを研磨バイトに組み付けて駆動手段により回転させる構成を採り、対面させた研磨対象との間には磁気研磨液を存在させて流体研磨を行う鏡面研磨の技術がある。
【0004】
磁気研磨液は揮発性の有機溶剤や水などを溶媒として含み、研磨時にはそれら溶媒が揮発するため補充が必要になり、例えば特許文献3〜5などに見られるように、配管路を設けてポンプにより循環させる供給系統を備えるようにしている。
【特許文献1】特開2002−170791号公報
【特許文献2】特開2002−283216号公報
【特許文献3】特開2004−202616号公報
【特許文献4】特開2000−233359号公報
【特許文献5】特開2002−210657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、そうした従来の磁気研磨技術では以下に示すような問題がある。磁気研磨液の供給系統として配管路やポンプ等の循環のための配管設備を設ける構成では設備コストが高くなる問題がある。そして、そうした配管設備により磁気研磨液の循環を行うものでは、その循環を維持するため磁気研磨液の供給量が過剰に多くなってしまい、不経済になる。
【0006】
また、磁気研磨液には砥粒を含ませることから、その砥粒が配管設備を巡るため配管路やポンプなどの各部を傷める問題があり、配管設備は定期的な交換が必要となる。
【0007】
磁気研磨液は配合を変更して研磨特性を調整した複数を用意し、これらを適宜に取り替えて研磨を行いたいという要求がある。しかし、配管設備を設ける構成では、磁気研磨液の取り替え時には、配管路およびポンプなど配管設備の各部の洗浄が必要となり、多大な手間と時間がかかる問題がある。
【0008】
この発明は上記した課題を解決するもので、その目的は、磁気研磨液の供給系統として配管路やポンプ等の循環のための配管設備が必要なく、磁気研磨液の供給を適正に行うことができ、磁気研磨液の取り替えが容易であり、コストを低減することに有利となる磁気研磨方法およびその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明に係る磁気研磨方法は、研磨対象に対して研磨バイトを非接触に対面させ、周辺に存在させた磁気研磨液を連動することにより流体研磨を行う磁気研磨方法であって、研磨バイトには磁場を発生する磁場発生源を設けて駆動手段と連係させ、当該駆動手段は少なくともx軸,y軸,z軸について多軸制御の機能を有するものとし、磁気研磨液を蓄える貯蔵タンクを備えて当該磁気研磨液には砥粒を混合しておき、駆動手段を起動することにより研磨バイトには所定の運動動作を行わせ、磁場発生源の磁場により磁気研磨液に時間的に定常的あるいは変動的な磁場を加えて流体研磨を行い、所定の時期に、駆動手段の駆動により研磨バイトを3次元的に移動させて貯蔵タンク内へ浸して引き出し、この後再び流体研磨のための動作に戻すことを行うようにした。
【0010】
また、貯蔵タンクに蓄えた磁気研磨液を攪拌する攪拌手段を備えて、当該攪拌手段を適時に起動することを行うとよい。また、貯蔵タンクに蓄えた磁気研磨液の粘度を計測する粘度計を備えて、計測した粘度の値が許容範囲から外れた際は溶媒を充填するなど、粘度を適正に保つ制御を行うようにしてもよい。さらに、貯蔵タンクは搬送手段と連係し、所定の時期には当該搬送手段の起動により貯蔵タンクを移動させて研磨バイトが移動し得る領域内で待ち受けし、研磨バイトが引き出された後は領域外のホームポジションへ戻す移動動作を行うとよい。
【0011】
また、本発明に係る磁気研磨装置は、研磨対象との対面に磁場発生源を有する研磨バイトと、少なくともx軸,y軸,z軸について多軸制御の機能を有する駆動手段と、磁気研磨液を蓄える貯蔵タンクとを備えて、駆動手段は研磨バイトに連係し、磁気研磨液には非磁性の砥粒を混合しておき、駆動手段を起動することにより研磨バイトには所定の運動動作を行わせ、磁場発生源の磁場により磁気研磨液に時間的に定常的あるいは変動的な磁場を加えて流体研磨を行い、所定の時期に、駆動手段の駆動により研磨バイトを3次元的に移動させて貯蔵タンク内へ浸して引き出し、この後再び流体研磨のための動作に戻す構成とした。
【0012】
したがって本発明では、所定の時期に研磨バイトを貯蔵タンク内へ浸すので、磁気研磨液を付着させることができる。この磁気研磨液は、磁界を加えなければ粘度の低いスラリ状であるが、磁界を加えることで磁性粉が磁化して磁化の前に比べて粘度が高くなり、さらに増粘剤(主にポリビニルアルコール等)の効果により、研磨バイトに付着した磁気研磨液は磁化により粘度が高くなり付着した状態を保ち、磁気研磨液が研磨バイトから流れ落ちることなく、磁気研磨液の供給が行える。
【0013】
磁気研磨にあっては、磁気研磨液は研磨バイトと研磨対象との間に存在していればよく、従来のようにノズルから多量に供給することは必ずしも必要ない。研磨バイトを貯蔵タンク内へ浸すことでは磁気研磨液はさほど多量には付着しないが、1回の供給量としては十分であり磁気研磨は適正に行える。この場合、磁気研磨液は研磨バイトに対して供給が過剰になることはなく、必要十分な適正量が供給できる。
【0014】
磁気研磨液については配合を変更して研磨特性を調整した複数を用意しておき、研磨対象に対する研磨状況に応じて適宜に取り替えて研磨を進めたいという要求がある。そこで本発明では、研磨特性を調整した複数の磁気研磨液をそれぞれ複数の貯蔵タンクに予め蓄えておき、取り替え要求に応じて適宜に貯蔵タンクを交換するだけでよく、磁気研磨液の取り替えが容易であり作業性がよい。
【0015】
貯蔵タンクには攪拌手段を備えて、当該攪拌手段を適時に起動する動作を行うようにした場合には、磁気研磨液が分離,沈殿することを防止できる。また、貯蔵タンクには粘度計を備えて、計測した粘度の値が許容範囲から外れた際は溶媒を充填するなど、粘度を適正に保つ制御を行うようにした場合には、粘度を所定に保つことができる。
【0016】
また、貯蔵タンクは搬送手段と連係し、通常時は研磨バイトが移動し得る範囲外のホームポジションに位置させるので、研磨バイトの移動領域を確保でき、研磨バイトによる流体研磨の動作を妨害することはない。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る磁気研磨方法では、磁気研磨液の供給には、磁気研磨液を蓄える貯蔵タンクを備えて研磨バイトの動作設定を変更するだけであり、研磨バイトについて貯蔵タンク内へ浸して引き出す動作を適時に行うだけでよいので、容易に実施できる。これにより、磁気研磨液の供給を適正に行うことができ、従来に比べて大がかりな配管設備を必要としなく、構成がシンプルで設備スペースが少なくて済み、コストを低減することに有利となる。
【0018】
また、磁気研磨液の取り替え要求に応じて適宜に貯蔵タンクを交換することができ、磁気研磨液の取り替えが容易であり作業性がよく、従来のように配管路,ポンプなど配管設備の各部の洗浄は必要ない。
【0019】
貯蔵タンクには攪拌手段を備えて、当該攪拌手段を適時に起動する動作を行うので、磁気研磨液が分離,沈殿することを防止できる。また、貯蔵タンクには粘度計を備えて、計測した粘度の値が許容範囲から外れた際は溶媒を充填するなど、粘度を適正に保つ制御を行うので、粘度を所定に保つことができる。その結果、磁気研磨を良好に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の好適な一実施の形態を示している。本形態において、磁気研磨装置は、磁場発生源(20)を有する研磨バイト2を備え、研磨対象1を支持台3に固定し、その研磨対象1に対して研磨バイト2が非接触に対面する配置とし、研磨対象1との間に磁気研磨液4を存在させて当該磁気研磨液4には砥粒を混合しておき、駆動手段を起動することにより研磨バイト2には所定の運動動作を行わせ、磁気研磨液4に生成した磁気クラスタにより流体研磨を行う構成になっている。そして、磁気研磨液4を蓄える貯蔵タンク5を備えており、所定の時期に、駆動手段の駆動により研磨バイト2を3次元的に移動させて貯蔵タンク5内へ浸して引き出し、この後再び流体研磨のための動作に戻すようになっている。
【0021】
磁気研磨液4は非磁性の砥粒を含有し、具体的には、動粘度0.01〜100mm2/s程度の水やケロシン等の分散媒中に、粒子径1〜800μmの強磁性粒子を10〜95wt%分散させた流体に対して、粒子径10〜50nmの球形マグネタイト粒子が、電気絶縁性を有する水やケロシン等の分散媒に一様に分散した流体を5〜90wt%混合した複合流体に、粒子径0.01〜100μmの非磁性の砥粒を混合し、さらに増粘剤としてポリビニルアルコール等の樹脂を5〜90wt%混合している。この磁気研磨液4は、貯蔵タンク5へ研磨バイト2を適時に浸すことにより供給するようになっている。尚、砥粒は非磁性でなくてもよい。
【0022】
研磨バイト2には、先端に永久磁石20を設けて磁場の発生源としている。磁場発生源としては永久磁石20に限らず、例えば電磁石なども好ましく適用でき、磁気研磨液4に対して磁界を作用し得るものであればよい。磁場の発生は時間的に定常的である必要はなく、時間的に変動的な磁場を発生させることもよい。
【0023】
駆動手段は、少なくともx軸,y軸,z軸について多軸制御の機能を有するものとし、当該駆動手段を起動することにより研磨バイト2には3次元的に移動する運動動作を行わせる。このため、研磨バイト2は所定の領域範囲内で自由に動くことができ、x軸,z軸については図1に一点鎖線で示す領域範囲内を移動し、x軸,y軸については図2に一点鎖線で示す領域範囲内を移動する。駆動手段としては例えばNC工作機を用いればよく、ボール盤,旋盤,NC旋盤,フライス盤などの回転軸(チャック部)に研磨バイト2の軸部を取り付けし、着脱を行うようにする。
【0024】
貯蔵タンク5には搬送手段を連係させ、研磨バイト2が移動し得る領域の範囲内への移動が行える構成になっている。つまり、貯蔵タンク5は搬送手段の搬送台6に固定し、研磨バイト2が移動し得る領域の範囲外にホームポジションがあり、所定の時期には当該搬送手段の起動により貯蔵タンク5を移動させて研磨バイト2が移動し得る領域内で待ち受けし、研磨バイト2が引き出された後は領域外のホームポジションへ戻す移動動作を行うようになっている。
【0025】
貯蔵タンク5には図3に示すように、攪拌機7および粘度計8を設けている。攪拌機7は適時に起動し、貯蔵タンク5に蓄えた磁気研磨液4に対して攪拌を行い、比重が異なる各成分の分離,沈殿を防止するようになっている。また、貯蔵タンク5に蓄えた磁気研磨液4の粘度を粘度計8により計測し、計測した粘度の値が許容範囲から外れた際は溶媒を充填するなど、粘度を適正に保つ制御を行うようになっている。
【0026】
(流体研磨の動作)
研磨対象1の研磨においては、まず支持台3に研磨対象1を固定し、研磨バイト2について研磨対象1との位置関係を初期設定する。そして、駆動手段を起動して研磨バイト2を3次元的に移動させて貯蔵タンク5内へ浸して引き出し、流体研磨のための動作に戻す。この貯蔵タンク5内へ浸して引き出す動作は、所定の時期に繰り返して行い、流体研磨のための動作を継続する。
【0027】
この流体研磨の動作は、例えばNCプログラムにより制御,実行すればよく、貯蔵タンク5内へ浸す動作をサブルーチンとしてプログラムし、これは所定の時期に繰り返して実行させる。つまり、研磨プログラムの実行中は、所定の時期には一時的に流体研磨の動作を中断し、研磨バイト2は回転動作を止めて貯蔵タンク5の位置へ移動させ、そして研磨バイト2を磁気研磨液4に浸す。このとき、研磨バイト2は緩やかに回転させて磁気研磨液4を馴染ませ、この後、研磨を中断した元の場所へ移動させて流体研磨を再開する。繰り返しの間隔は、研磨バイト2へ付着させた磁気研磨液4の研磨特性が劣化するよりも以前の時期とし、研磨特性を良好に維持し得る範囲内とする。また、研磨バイト2を貯蔵タンク5内へ浸す動作のサブルーチンプログラムは、当該磁気研磨装置の制御部へ基本機能のマシンコードとして組み込むこともよい。
【0028】
磁気研磨液4は、上記したように磁性粉,砥粒,樹脂粉,水,保湿剤などを混合したものであり、一般的に磁界が作用していないときは粘度の低いスラリ状であるが、磁界が作用した状況では磁性粉が磁化して磁化の前に比べて粘度が高くなる。したがって、研磨バイト2を貯蔵タンク5内へ浸して引き出すことでは、研磨バイト2の表面に磁気研磨液4が付着し、磁化した磁性粉によって当該磁気研磨液中の砥粒が抱え込まれる状態となる。そして、磁化により粘度が高いため、研磨バイト2が高速に回転するなど激しい動きをしない限り磁気研磨液4は付着した状態を保ち、研磨バイト2の表面から流れ出して分離することはない。
【0029】
ここに、研磨バイト2と研磨対象1との間には磁気研磨液4が存在し、当該磁気研磨液4は非磁性の砥粒を含み、永久磁石20により磁気研磨液4に時間的に定常的あるいは変動的な磁場が加わると磁気クラスタが生成する。つまり、磁気研磨液中の強磁性粒子(例えば鉄粒子),マグネタイト粒子が、磁気吸引力により多数凝集して磁気クラス夕となる。磁気クラス夕は、磁束に沿うので研磨対象1に対立して針状に多数が立ち並び、これにより磁気研磨液中に存在する砥粒が研磨対象1の表面に抑えつけられる。このとき、研磨バイト2は研磨対象1に対して運動動作することから、砥粒は研磨対象1の表面上を接触しつつ運動して切削(研削)を行う。もちろん、磁気クラスタによる流体研磨なので研磨対象1に大きな応力をかけることなく研磨が行える。
【0030】
磁気研磨にあっては、磁気研磨液4は研磨バイト2と研磨対象1との間に存在していればよく、従来のようにノズルから多量に供給することは必ずしも必要ない。研磨バイト2を貯蔵タンク5内へ浸すことでは磁気研磨液4はさほど多量には付着しないが、1回の供給量としては十分であり磁気研磨は適正に行える。すなわちこの場合、磁気研磨液4は研磨バイト2に対して供給が過剰になることはなく、必要十分な適正量が供給でき、このためコストを低減することに有利になる。
【0031】
磁気研磨液4については、配合を変更して研磨特性を調整したものを複数を用意しておき、研磨対象1に対する研磨状況に応じて適宜に取り替えて研磨を進めたいという要求がある。そうした場合、配管路やポンプ等の循環のための配管設備を設ける従来の構成では、磁気研磨液4を取り替えるその度に配管設備は洗浄しなければならず、大がかりな作業となり手間がかかる問題がある。本発明では、研磨特性を調整した複数の磁気研磨液4をそれぞれ複数の貯蔵タンク5に予め蓄えておき、取り替え要求に応じて適宜に貯蔵タンク5を交換するだけでよく、磁気研磨液4の取り替えが容易であり作業性がよい。また、配管路やポンプなど大がかりな配管設備は必要なく、構成がシンプルで設備スペースが少なくて済み、コストも安くできる。
【0032】
磁気研磨液4には、比重が異なる組成(磁性体,非磁性体)を混合させてあるため、それらが分離して沈殿が起きやすく、研磨特性が低下する要因となっている。そして、揮発性の有機溶剤や水などを溶媒に用いているため、溶媒の揮発や蒸発により粘度が変化し、これも研磨特性が劣化してしまう要因になっている。
【0033】
しかし本発明にあっては、貯蔵タンク5には攪拌手段を備えて、当該攪拌手段を適時に起動する動作を行うので、磁気研磨液4が分離,沈殿することを防止できる。また、貯蔵タンク5には粘度計8を備えて、計測した粘度の値が許容範囲から外れた際は溶媒を充填するなど、粘度を適正に保つ制御を行うので、粘度を所定に保つことができる。その結果、磁気研磨を良好に行うことができる。
【0034】
貯蔵タンク5は搬送手段の搬送台6に固定し、通常時は研磨バイト2が移動し得る範囲外のホームポジションに位置させるので、研磨バイト2の移動領域を確保でき、研磨バイト2による流体研磨の動作を妨害することはない。このため、研磨対象1に対して十分な研磨加工が行える。
【0035】
なお、本形態では研磨バイト2だけを運動動作させているが、これに限定されるものではない。つまり、研磨対象1を載せる支持台3は所定軸について運動動作を行う多軸の運動ステージとし、研磨バイト2および研磨対象1(支持台3)の両者を互いに逆相に運動動作させる構成にすることもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る磁気研磨装置の好適な一実施の形態を示す構成図である。
【図2】図1に示す磁気研磨装置の平面図である。
【図3】貯蔵タンクの構成を説明する側面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 研磨対象
2 研磨バイト
20 永久磁石(磁場発生源)
3 支持台
4 磁気研磨液
5 貯蔵タンク
6 搬送台
7 攪拌機
8 粘度計
【出願人】 【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
【出願日】 平成18年6月28日(2006.6.28)
【代理人】 【識別番号】100092598
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 伸一


【公開番号】 特開2008−6521(P2008−6521A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−177794(P2006−177794)