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【発明の名称】 研磨液、その製造方法、および研磨方法
【発明者】 【氏名】久保 直人

【要約】 【課題】比較的硬度が高い研磨対象物を適切に研磨することが可能な研磨液、その製造方法、および研磨方法を提供すること。

【構成】研磨対象物Wを研磨するための研磨粒子2と、研磨粒子2が混入された分散媒1と、を含む研磨液Aであって、研磨粒子2よりもその平均粒径が小さく、研磨粒子2に凝集することにより研磨粒子2を分散媒1中において懸濁させる懸濁粒子3、をさらに備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨対象物を研磨するための研磨粒子と、
上記研磨粒子が混入された分散媒と、を含む研磨液であって、
上記研磨粒子よりもその平均粒径が小さく、上記研磨粒子に凝集することにより上記研磨粒子を上記分散媒中において懸濁させる懸濁粒子、をさらに備えることを特徴とする、研磨液。
【請求項2】
上記研磨粒子は、その平均粒子径が300nm以上であり、
上記懸濁粒子は、その平均粒子径が120nm以下である、請求項1に記載の研磨液。
【請求項3】
上記研磨粒子は、ダイヤモンドからなり、
上記懸濁粒子は、SiO2またはAl23からなる、請求項1または2に記載の研磨液。
【請求項4】
請求項3に記載の研磨液を製造する研磨液の製造方法であって、
上記分散媒とSiO2とを混合し、pH8以上の状態とする工程と、
酸およびダイヤモンドからなる上記研磨粒子を上記分散媒に加えることにより、上記分散媒をpH5〜pH8の状態とする工程と、
さらに上記酸およびダイヤモンドからなる上記研磨粒子を上記分散媒に加えることにより、上記分散媒をpH2〜pH5の範囲にする工程と、を有することを特徴とする、研磨液の製造方法。
【請求項5】
研磨対象物に対して定盤を相対動させるとともに、
上記研磨対象物と上記定盤との間に研磨液を供給する研磨方法であって、
上記研磨液として、請求項1ないし3のいずれかに記載の研磨液を用いることを特徴とする、研磨方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、特に硬度が高い硬質材料の鏡面研磨に適した研磨液、その製造方法、および研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の材料となるシリコンウエハは、その表面が平滑状態となるように研磨することが必要とされている。シリコンウエハの研磨には、たとえばSiO2からなる研磨粒子が混入された研磨液が使用されている(たとえば、特許文献1参照)。シリコンウエハの表面を平滑とするには、できるだけ微細な研磨粒子を用いることが好ましい。一方、研磨作業の効率化の観点からは、上記研磨粒子が大きいほど研磨速度を向上させることができる。このように、シリコンウエハの平滑度と研磨作業の効率とのバランスから、上記研磨粒子の平均粒径などが決定されている。
【0003】
しかしながら、近年、シリコンウエハのほかに、たとえばサファイア、SiCなどからなる物体を研磨することが必要とされ始めている。しかも、研磨された表面は、いわゆる鏡面状態に研磨されることが好ましいとされる。サファイアやSiCは、モース硬度7以上(ヌープ硬度1000〜6225)と、シリコンと比べて格段に硬度が高い。このため、SiO2からなる上記研磨粒子は、かかる高硬度の材料の研磨には適さない。
【0004】
また、上記研磨粒子として硬度が高いものを用いるほど、一般的に上記研磨液において上記研磨粒子の沈降速度が速くなる傾向がある。研磨作業中に上記研磨粒子が沈降してしまうと、上記研磨を行うための研磨装置に備えられた定盤あるいは研磨布に上記研磨粒子が固定されてしまう。すると、上記研磨粒子が研磨対象物に対して過度に相対運動させられることとなる。このようなことでは、上記研磨対象物の研磨面に研磨キズが生じ、鏡面状態とすることが困難であった。
【0005】
【特許文献1】特開2001−35819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、比較的硬度が高い研磨対象物を適切に研磨することが可能な研磨液、その製造方法、および研磨方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明の第1の側面によって提供される研磨液は、研磨対象物を研磨するための研磨粒子と、上記研磨粒子が混入された分散媒と、を含む研磨液であって、上記研磨粒子よりもその平均粒径が小さく、上記研磨粒子に凝集することにより上記研磨粒子を上記分散媒中において懸濁させる懸濁粒子、をさらに備えることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、上記研磨粒子を上記分散媒中において比較的長時間浮遊させておくことが可能である。このため、研磨作業中に上記研磨粒子が研磨装置の定盤や研磨布に固定されてしまうおそれが無い。したがって、研磨対象物の表面を鏡面状態に仕上げるのに適している。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記研磨粒子は、その平均粒子径が300nm以上であり、上記懸濁粒子は、その平均粒子径が120nm以下である。このような構成によれば、上記懸濁粒子を上記研磨粒子の表面に適切に凝集させることができる。また、このようなサイズの上記研磨粒子を用いれば、研磨対象物の表面を鏡面状態とするのに好適である。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記研磨粒子は、ダイヤモンドからなり、上記懸濁粒子は、SiO2またはAl23からなる。このような構成によれば、上記研磨粒子は、非常に高硬度であるため、たとえばサファイアやSiCなどからなる研磨対象物を適切に研磨することができる。また、SiO2またはAl23からなる上記懸濁粒子は、上記研磨粒子の表面に凝集しやすく、上記研磨粒子を浮遊させるのに好適である。
【0012】
本発明の第2の側面によって提供される研磨液の製造方法は、本発明の第1の側面に係る研磨液を製造する研磨液の製造方法であって、上記分散媒とSiO2とを混合し、pH8以上の状態とする工程と、酸およびダイヤモンドからなる上記研磨粒子を上記分散媒に加えることにより、上記分散媒をpH5〜pH8の状態とする工程と、さらに上記酸およびダイヤモンドからなる上記研磨粒子を上記分散媒に加えることにより、上記分散媒をpH2〜pH5の範囲にする工程と、を有することを特徴としている。
【0013】
このような構成によれば、上記分散媒のpH5〜pH8の範囲で酸性側へと移行させることにより、SiO2を徐々に凝集しやすい状態としつつ、このSiO2を上記研磨粒子に即座に凝集させることが可能である。そして、pH2〜pH5の範囲に到達したときには、それまでに加えられたすべての上記研磨粒子に対してSiO2を適切に凝集させることが可能である。したがって、上記分散媒中において上記研磨粒子が好適に浮遊した上記研磨液を製造することができる。
【0014】
本発明の第3の側面によって提供される研磨方法は、研磨対象物に対して定盤を相対動させるとともに、上記研磨対象物と上記定盤との間に研磨液を供給する研磨方法であって、上記研磨液として、本発明の第1の側面に係る研磨液を用いることを特徴としている。
【0015】
このような構成によれば、比較的高硬度である上記研磨対象物の表面が鏡面状態となるように適切に研磨することができる。
【0016】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る研磨液の一例を示している。図示された研磨液Aは、分散媒1、研磨粒子2、および懸濁粒子3を備えている。
【0019】
分散媒1は、研磨液Aにおいて研磨粒子2および懸濁粒子3を分散させるための媒質である。本実施形態においては、分散媒1は、水を主成分としている。
【0020】
研磨粒子2は、研磨対象物を研磨するための粒子であり、比較的高強度の材質からなる。本実施形態においては、研磨粒子2は、ダイヤモンドからなる。また、研磨粒子2の平均粒径は、300nm以上とされている。
【0021】
懸濁粒子3は、研磨粒子2の表面に凝集することにより、研磨粒子2を分散媒1中において懸濁させるためのものである。本実施形態においては、懸濁粒子3は、SiO2からなり、球状のコロイダルシリカと呼ばれるものが用いられている。また、懸濁粒子3の平均粒径は、120nm以下とされている。
【0022】
研磨液Aを用いて研磨を行うには、図1に示すように、研磨対象物Wと定盤Dを対向は位置する。研磨対象物Wは、比較的高硬度の基板などであり、たとえばサファイア、SiCなどからなる。定盤Dは、研磨対象物Wに対して相対回転自在とされている。また、実施しようとする研磨の種類に応じて、定盤Dの表面に研磨布(図示略)を設けてもよい。
【0023】
研磨対象物Wと定盤Dとの間に、研磨液Aを介在させる。これは、たとえば、研磨対象物Wに対して定盤Dを回転させた状態で、定盤Dに設けた研磨液供給孔(図示略)を通して研磨液Aを滴下すればよい。定盤Dと研磨対象物Wとの間においては、懸濁粒子3が凝集した研磨粒子2が浮遊状態となる。この浮遊状態となった研磨粒子2によって研磨対象物Wの表面を研磨することができる。
【0024】
次に、研磨液Aの製造方法について説明する。
【0025】
まず、分散媒1に、懸濁粒子3を混入する。SiO2からなる懸濁粒子3を混入することにより、分散媒1をpH8以上の状態としておく。なお、以降の工程においては、pHセンサを用いることにより、分散媒1のpHを常時監視する。この状態においては、図2に示すように、SiO2のゲル化時間が比較的長い。このため、分散媒1中においては、SiO2が凝集およびゲル化すること無く、均一に分散した状態となっている。
【0026】
次に、分散媒1に酸と研磨粒子2とを徐々に混入していく。この混入には、たとえば自動滴定装置を用いる。この工程においては、上述したpHセンサにより、分散媒1のpHを監視しながら、そのpH値に応じて上記酸および研磨粒子2を滴下する。上記酸としては、塩酸、硫酸、硝酸などを用いればよい。また、研磨粒子2の滴下量は、分散媒1のpH変化量に応じて決定する。
【0027】
この滴下を継続することにより、分散媒1をpH8の状態からpH5の状態まで移行させる。この工程においては、図2に示すように、SiO2のゲル化時間が短く、懸濁粒子3が凝集しゲル化しやすい状態にある。しかしながら、分散媒1のpH変化に応じて適正量の研磨粒子2を混入させることにより、凝集しようとする懸濁粒子3を研磨粒子2に適切に凝集させることが可能である。したがって、懸濁粒子3どうしが不当に凝集してしまうことを防止することができる。
【0028】
上記酸および研磨粒子2の滴下をさらに継続することにより、分散媒1をpH2〜pH5の状態とする。この状態に至るまで、分散媒1のpH変化に応じて研磨粒子2を適切に滴下しているため、滴下された研磨粒子2には懸濁粒子3が適切に凝集させられている。このpH範囲においては、図2に示すように、SiO2のゲル化速度が比較的長く、ゲル化が抑制されている。以上の工程の結果、懸濁粒子3が凝集した研磨粒子2が分散媒1中に均一に分散した研磨液Aが得られる。
【0029】
次に、研磨液Aおよびこれを用いた研磨方法の作用について説明する。
【0030】
本実施形態によれば、分散媒1中において研磨粒子2を適切に浮遊させることが可能である。図3は、本実施形態の研磨粒子2として用いたダイヤモンド粒子と懸濁粒子3として用いたSiO2粒子の沈降テストを行った結果を示している。このテストにおいては、10mm角のシリンジと、3種類の試験液とを用意した。これらの試験液は、10ccの水に対して、20重量%の粒子を混入したものである。それぞれの粒子としては、ダイヤモンド粒子のみ、ダイヤモンド粒子とSiO2粒子との混合粒子、およびSiO2粒子のみを用いた。
【0031】
図3に示すように、ダイヤモンド粒子のみの場合、テスト開始直後から上記シリンジ底部に上記ダイヤモンド粒子が顕著に堆積している。これは、上述した定盤や研磨布にこていされてしまうことを意味する。SiO2粒子のみの場合は、ほとんど沈降しないことが分かる。これらに対し、ダイヤモンド粒子とSiO2粒子とを混合した場合、テスト開始直後には、ほとんど沈降が起こらず、約72時間経過後においても、ダイヤモンド粒子のみの場合の沈降量の約1/5程度である。工業上の使用を考慮した場合、研磨装置による研磨作業は、たとえば8時間ごとに作業者の入れ替わりがあり、このタイミングで研磨液の入れ替えが行われる。テスト結果によれば、テスト開始後8時間程度では、ダイヤモンド粒子とSiO2粒子とを混合した場合、ほとんど沈降は起こっておらず、十分に浮遊している状態であるといえる。これは、ダイヤモンド粒子にSiO2粒子が凝集することによりいわゆる懸濁状態が実現されていることによる。
【0032】
上記テストの結果から明らかなように、研磨液Aを用いれば、研磨作業中において研磨粒子2はほとんど沈降せず、分散媒1中に浮遊している。これにより、研磨粒子2を研磨対象物Wと定盤Dとの間に介在させることが可能であり、研磨粒子2を研磨対象物Wに過度に押し付けるおそれが無い。したがって、研磨対象物Wに不要な研磨キズをつけることなく、その表面を鏡面状態に仕上げることができる。
【0033】
研磨粒子2はダイヤモンドからなるため、サファイアやSiCなどと比べてその硬度が顕著に高い。したがって、サファイアやSiCからなる研磨対象物Wを適切に研磨可能である。また、研磨粒子2の平均粒径が300nm以上であることにより、研磨速度が極端に低下することを防止しつつ、研磨対象物Wの表面を鏡面状態とすることができる。一方、SiO2からなる懸濁粒子3は、ダイヤモンドからなる研磨粒子2に凝集させやすい。しかも、懸濁粒子3の平均粒径を120nm以下とすることにより、上述したサイズとされた研磨粒子2に凝集させるのに好適である。
【0034】
本発明に係る研磨液、その製造方法、および研磨方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る研磨液、その製造方法、および研磨方法の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0035】
懸濁粒子としては、SiO2からなるものの他に、Al23からなるものも用いてもよい。この場合、いわゆるコロイダルAl23を用いれば、比較的小サイズであり、かつ粒径のバラツキがすくない懸濁粒子とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る研磨液および研磨方法の一例を示す要部断面図である。
【図2】SiO2のゲル化速度とpHとの関係を示すグラフである。
【図3】研磨粒子および懸濁粒子の沈降テストの結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0037】
A 研磨液
1 分散媒
2 研磨粒子
3 懸濁粒子
【出願人】 【識別番号】000153672
【氏名又は名称】株式会社住友金属ファインテック
【出願日】 平成18年6月26日(2006.6.26)
【代理人】 【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔

【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也

【識別番号】100115369
【弁理士】
【氏名又は名称】仙波 司

【識別番号】100117178
【弁理士】
【氏名又は名称】古澤 寛

【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光

【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚


【公開番号】 特開2008−867(P2008−867A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−175264(P2006−175264)