Warning: copy(htaccessbak): failed to open stream: No such file or directory in /home/jtokkyo/public_html/header.php on line 10
半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルム及びそれを用いた半導体ウエハの裏面研削方法 - 特開2008−858 | j-tokkyo
トップ :: B 処理操作 運輸 :: B24 研削;研磨

【発明の名称】 半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルム及びそれを用いた半導体ウエハの裏面研削方法
【発明者】 【氏名】五十嵐 康二

【氏名】宮川 誠史

【氏名】浦川 俊也

【氏名】小笠原 裕

【氏名】早川 慎一

【要約】 【課題】半導体ウエハの裏面を研削する際に、ウエハ表面と粘着剤層との間への水及び研削屑の浸入によるウエハの破損及び汚染の防止を図ることができ、且つ剥離時にウエハを破損せず、しかもウエハ表面の汚染を生じることのない半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルム、及び、それを用いた半導体ウエハの裏面研削方法を提供する。

【構成】基材フィルムの片表面に、(イ)架橋剤と反応し得る官能基を有するアクリル酸アルキルエステル系粘着剤ポリマー、(ロ)アルキレン基の炭素数が2〜4のアルキレングリコール重合体を主骨格とし、末端に少なくとも2個のグリシジル基を有し、且つ重量平均分子量が1000〜5000の範囲である特定架橋剤、(ハ)他の架橋剤、を必須成分として特定量含有する粘着剤層用塗布液を用いて形成された粘着剤層を有することを特徴とうする半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルム、及びそれを用いた半導体ウエハの裏面研削方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハの裏面を研削する際にその回路形成表面に貼着される半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルムであって、基材フィルムの片表面に、下記(イ)成分及び下記(ハ)成分の総和100質量部に対して下記(ロ)成分0.5〜20質量部と、下記(イ)成分100質量部に対して下記(ハ)成分0.5〜10質量部と、を含む粘着剤層用塗布液を用いて形成された粘着剤層を有することを特徴とする半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルム。
(イ):架橋剤と反応し得る官能基を有するアクリル酸アルキルエステル系粘着剤ポリマー
(ロ):アルキレン基の炭素数が2〜4のアルキレングリコール重合体を主骨格とし、末端に少なくとも2個のグリシジル基を有し、且つ、重量平均分子量が1000〜5000の範囲である架橋剤
(ハ):前記(ロ)成分とは分子構造が異なる他の架橋剤
【請求項2】
半導体ウエハの回路形成表面に請求項1に記載の粘着フィルムを貼着して、半導体ウエハの裏面を研削し、研削終了後に該粘着フィルムを剥離することを特徴とする半導体ウエハの裏面研削方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルム及びそれを用いた半導体ウエハの裏面研削方法に関する。詳しくは、半導体集積回路の製造工程において、半導体ウエハの裏面を研削加工する際に半導体ウエハの破損、汚染を防止するために、半導体ウエハの集積回路が組み込まれた側の面(以下、適宜、ウエハの「表面」という。)に粘着剤層を介して直接貼着される半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルム、及び、該粘着フィルムを用いた半導体ウエハの裏面研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、半導体集積回路は高純度シリコン単結晶等をスライスしてウエハとした後、ウェハの一方の面に、イオン注入、エッチング等により集積回路を組み込み、さらにウエハの他方の面(以下、適宜、ウエハの「裏面」という。)をグラインディング、ポリッシング、ラッピング等により研削し、ウエハの厚みを100〜600μm程度まで薄くしてから、ダイシングしてチップ化する方法で製造されている。これらの工程の中で、ウエハの裏面を研削加工する際に半導体ウエハの破損、汚染を防止するために、半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルムが用いられている。具体的には、ウエハ表面に半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルムをその粘着剤層を介して直接貼着してウエハ表面を保護した後、該ウエハの裏面を研削する。研削が完了した後、該粘着フィルムはウエハ表面より剥離される。
【0003】
従来の半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルムを、ウエハの周辺部まで集積回路が組み込まれている半導体ウェハ、即ち、ウエハの最外周までスクライブラインが達しているような半導体ウエハの裏面を研削する際に用いた場合には、スクライブラインに起因する凹部を通してウエハ表面と粘着剤層との間に水が浸入し、それに起因してウエハが破損したり、水と共に研削屑が浸入してウエハ表面を汚染することがあった。
この問題を防止するために、粘着フィルムの粘着剤層の厚みを厚くし、ウエハ表面の凹部と粘着剤層の密着性を向上させる手段が採られている。しかしながら、この手段を用いた場合には、粘着フィルムのウエハ表面に対する粘着力がウエハの強度以上に大きくなり、ウエハの厚み、表面形状等の諸条件によっては、裏面研削後に該粘着フィルムをウエハ表面から剥離する際に、自動剥がし機で剥離トラブルが発生したり、時にはウエハを完全に破損してしまうことがあった。
【0004】
このような問題を解決する手段として、例えば、下記特許文献1には、半導体ウエハの裏面を研磨するにあたり、該ウエハの表面に感圧性接着フィルムを貼り付け、研磨後この接着フィルムを剥離する半導体ウエハの保護方法において、感圧性接着フィルムが光透過性の支持体とこの支持体上に設けられた光照射により硬化し三次元網状化する性質を有する感圧性接着剤層とからなり、研磨後この接着フィルムを剥離する前にこの接着フィルムに光照射することを特徴とする半導体ウエハの保護方法が開示されている。
【0005】
特許文献1に開示される半導体ウエハの保護方法は、剥離前に光照射することによって粘着フィルムのウエハ表面に対する粘着力を低下させることができるため、剥離時の作業性・ウエハ破損の問題を考慮せずに裏面研削時のウエハ表面に対する密着性を充分に大きくすることができ、前述のウエハ表面と粘着剤層との間への水及び研削屑の浸入の問題は解決される。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される粘着フィルムを用いた場合には、裏面研削後にウエハ表面から粘着フィルムを剥離するまでの間に光照射することが必要であるため、光照射設備を工程中に導入する必要があり、装置が大型化・複雑化したり、工程が複雑化して作業性が低下したりするという問題があった。また、光照射により発生するオゾンによって作業環境が悪化するという問題もあった。さらに、ウエハの表面形状や光照射強度・時間等の諸条件によっては、粘着剤層の硬化不良により剥離後のウエハ表面に糊残りの問題が発生することがあった。その問題を防止するためには光照射装置内を窒素等の不活性ガスで充填する必要があり、製造コストが上昇すると共に、工程のさらなる大型化・複雑化を招くという問題があった。
【0007】
また、下記特許文献2には、支持シートに感圧接着層を設けてなり、その感圧接着層がゲル分率40%以上であり、かつ水溶性ポリマーを含有することを特徴とする半導体ウエハの保護部材が開示されており、その場合、感圧接着層が水溶性ポリマーとして分子量5000以下のポリプロピレングリコールを含有するのが好ましい旨が記載されている。
【0008】
特許文献2に開示される半導体ウエハの保護部材(粘着フィルム)は、その感圧接着層(粘着剤層)に水溶性ポリマーを含有することによって、該保護部材を回路パターン形成面等から剥離した後に、有機溶剤による前洗浄をすることなく直接水洗しても充分に清澄に洗浄処理でき、従って有機溶剤による前洗浄を省略できると記載されている。さらに、裏面研磨時等における接着界面への水の浸入防止、研磨屑による回路パターン形成面等への汚染防止、剥がれによるウエハ損傷の防止等の保護機能、及び剥離時における研磨ウエハ等の割れ防止の剥離容易性も満足し、且つ、ブリードで半導体ウエハに付着した水溶性ポリマーも水洗で容易に洗浄することができるとも記載されている。
【0009】
しかしながら、特許文献2に開示される半導体ウエハの保護部材を半導体ウエハの裏面研削用に用いた場合、ウエハの表面形状、裏面研削条件、剥離条件等の諸条件によっては、該保護部材をウエハから剥離する際に粘着剤層の一部が凝集破壊によりウエハ表面に残り(以下、糊残りと称する)、ウエハ表面を汚染することがあった。この凝集破壊による糊残りは、水洗によっても完全には除去できないことがあり、回路の電極部に生じた場合にはボンディング時にボンディング不良が発生したり、その他の部分に生じた場合にはパッケージング不良が発生したりすることがあった。
【0010】
近年、半導体業界の技術革新、低コスト化への要求に伴い、半導体ウエハは、年々大口径化・薄層化する傾向にある。特に、パッケージングの薄層化や、スマートカード用途の様に薄肉であることが求められる半導体チップの需要が増加していることに伴い、裏面研削後の半導体ウエハの厚みはますます薄くなりつつある。裏面の研削に要する時間はウエハの面積と共に増大するため、前述した研削中の水及び研削屑の浸入によるウエハの破損・汚染の問題はウエハが大口径化するほど発生しやすいと考えられる。さらに、ウエハの厚みが薄くなるにつれてウエハ自体の強度が低下することを考慮すれば、前述した剥離時にウエハが破損する問題も、ウエハの薄層化に伴ってますます深刻化していくものと予想される。
【0011】
加えて、近年の半導体ウエハ表面の多様化により、粘着剤の一部が残り易い表面形状を有するウエハが多くなってきている。例えば、スマートカード用途に適したチップを有するウエハとして、高さ5〜100μmの突起状のハイバンプ電極を有するウエハが生産されるようになってきている。このような突起状のハイバンプ電極を表面に有する半導体ウエハの裏面を研削する場合には、研削後のウエハから粘着フィルムを剥離する際に、ウエハの表面に粘着剤の一部が残り(以下、適宜「糊残り」と称する。)ウエハ表面を汚染することがあった。この糊残りによる汚染は、特にハイバンプ電極の周辺に発生することが多く、その場合には洗浄等の後処理によっても汚染の除去が困難であり、特に大きな問題となることがあった。このようなハイバンプ電極周辺に発生する糊残りによる汚染は、特許文献2に開示される半導体ウエハの保護部材を用いた場合でも、水洗による汚染の除去が不十分となることがあった。
【0012】
また、半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルムにおいては、ウェハへの粘着力の制御、水洗による汚染除去の容易性等を考慮して、比較的低分子量のアルキレングリコール系重合体を粘着剤層中に添加する技術がある(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、粘着剤層に上記のごときアルキレングリコール系重合体を含有させると、該アルキレングリコール系重合体が粘着剤層からブリードアウトすることにより、ウエハ表面の汚染が生じることがあり、更なる改善が求められていた。
【特許文献1】特開昭60−189938号公報
【特許文献2】特開平5−335288号公報
【特許文献3】特開平11−31525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、半導体ウエハの裏面を研削する際に、ウエハ表面と粘着剤層との間への水及び研削屑の浸入によるウエハの破損及び汚染の防止を図ることができ、且つ、剥離時にウエハを破損せず、しかもウエハ表面の汚染を生じることのない半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルム、及び、それを用いた半導体ウエハの裏面研削方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記問題点に鑑み鋭意検討した結果、1分子中に少なくとも2個のグリシジル基を有する特定のアルキレングリコール系重合体を必須成分として含有した、特定の組成の粘着剤層を有する半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルムにより、前記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> 半導体ウエハの裏面を研削する際にその回路形成表面に貼着される半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルムであって、基材フィルムの片表面に、半導体ウエハの裏面を研削する際にその回路形成表面に貼着される半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルムであって、基材フィルムの片表面に、下記(イ)成分及び下記(ハ)成分の総和100質量部に対して下記(ロ)成分0.5〜20質量部と、下記(イ)成分100質量部に対して下記(ハ)成分0.5〜10質量部と、を含む粘着剤層用塗布液を用いて形成された粘着剤層を有することを特徴とする半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルム。
(イ):架橋剤と反応し得る官能基を有するアクリル酸アルキルエステル系粘着剤ポリマー
(ロ):アルキレン基の炭素数が2〜4のアルキレングリコール重合体を主骨格とし、末端に少なくとも2個のグリシジル基を有し、且つ、重量平均分子量が1000〜5000の範囲である架橋剤
(ハ):前記(ロ)成分とは分子構造が異なる他の架橋剤
【0016】
<2> 半導体ウエハの回路形成表面に請求項1に記載の粘着フィルムを貼着して、半導体ウエハの裏面を研削し、研削終了後に該粘着フィルムを剥離することを特徴とする半導体ウエハの裏面研削方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、半導体ウエハの裏面を研削する際に、ウエハ表面と粘着剤層との間への水及び研削屑の浸入によるウエハの破損及び汚染の防止を図ることができ、且つ、剥離時にウエハを破損せず、しかもウエハ表面の汚染を生じることのない半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルム、及び、それを用いた半導体ウエハの裏面研削方法を提供することができる。
具体的には、本発明によれば、半導体ウエハの裏面を研削するに際し、ウエハ表面と粘着剤層との間に水及び研削屑が浸入することに起因するウエハの破損及びウエハ表面の汚染が起こらない。粘着力が適正な範囲にあるため、粘着フィルムをウエハから剥離する際のウエハの破損が起こらず、光照射装置等の設備を新たに工程に導入する必要もない。さらに、粘着フィルムをウエハから剥離した後に糊残りや粘着剤層からの低分子成分のブリードアウトが生じないので、半導体ウエハの表面を汚染することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルム、及び、それを用いた半導体ウエハの裏面研削方法について詳細に説明する。
【0019】
[半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルム]
本発明の半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルム(以下、単に「粘着フィルム」と称する場合がある。)は、半導体ウエハの裏面を研削する際にその回路形成表面に貼着される半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルムであって、基材フィルムの片表面に、下記(イ)成分及び下記(ハ)成分の総和100質量部に対して下記(ロ)成分0.5〜20質量部と、下記(イ)成分100質量部に対して下記(ハ)成分0.5〜10質量部と、を含む粘着剤層用塗布液を用いて形成された粘着剤層を有することを特徴とする。
(イ):架橋剤と反応し得る官能基を有するアクリル酸アルキルエステル系粘着剤ポリマー
(ロ):アルキレン基の炭素数が2〜4のアルキレングリコール重合体を主骨格とし、末端に少なくとも2個のグリシジル基を有し、且つ、重量平均分子量が1000〜5000の範囲である架橋剤
(ハ):前記(ロ)成分とは分子構造が異なる他の架橋剤
【0020】
本発明の粘着フィルムは、基材フィルムの片表面に粘着剤層を有し、通常、該粘着剤層上に剥離フィルムを貼着して構成される。
以下、本発明の粘着フィルムの各構成要素について詳細に説明する。
【0021】
本発明に係る粘着剤層は、基材フィルムの片表面に、前記(イ)成分及び前記(ハ)成分の総和100質量部に対して前記(ロ)成分0.5〜20質量部と、前記(イ)成分100質量部に対して前記(ハ)成分0.5〜10質量部と、を含む粘着剤層用塗布液を用いて形成された層である。粘着剤層用塗布液には、所望により、これら以外の任意成分を含有してもよい。粘着剤層用塗布液は、上記の必須成分及び任意成分を含む溶液またはエマルジョン液として調製される。
【0022】
<(イ)成分>
本発明に係る粘着剤層用塗布液は、(イ)架橋剤と反応し得る官能基を有するアクリル酸アルキルエステル系粘着剤ポリマー(以下、適宜「粘着剤ポリマー」と称する。)を必須成分として含有する。
【0023】
本発明に係る粘着剤ポリマーとしては、アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルを主モノマーとして、架橋剤と反応し得る官能基を有するコモノマーを含むモノマー混合物を共重合して得られるポリマーであることが好ましい。
【0024】
粘着剤ポリマーの共重合に用いられる主モノマーとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらは単独で使用しても、また、2種以上を混合して使用してもよい。
主モノマーの使用量は、粘着剤ポリマーの原料となる全モノマーの総量中に、通常、60〜99質量%の範囲で含まれていることが好ましい。
【0025】
上記主モノマーと共重合させる、架橋剤と反応し得る官能基を有するコモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、メサコン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ターシャル−ブチルアミノエチルアクリレート、ターシャル−ブチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。
これらのコモノマーは、1種を上記主モノマーと共重合させてもよいし、また2種以上を共重合させてもよい。
架橋剤と反応しうる官能基を有するコモノマーの使用量は、粘着剤ポリマーの原料となる全モノマーの総量中に、通常、1〜40質量%の範囲で含まれていることが好ましい。
【0026】
本発明に係る粘着剤ポリマーは、上記した主モノマー及び架橋剤と反応し得る官能基を有するコモノマーの他に、界面活性剤としての性質を有する特定のコモノマー(以下、適宜「重合性界面活性剤」と称する。)を共重合したものであってもよい。重合性界面活性剤は、主モノマー及びコモノマーと共重合する性質を有すると共に、乳化重合する場合には乳化剤としての作用を有する。重合性界面活性剤を用いて乳化重合した粘着剤ポリマーを用いた場合には、通常、界面活性剤によるウエハ表面に対する汚染が生じない。また、粘着剤層に起因する僅かな汚染が生じた場合においても、ウエハ表面を水洗することにより容易に除去することが可能となる。
【0027】
本発明に用いうる重合性界面活性剤の例としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルのベンゼン環に重合性の1−プロペニル基を導入したもの〔例えば、第一工業製薬(株)製;アクアロンRN−10、同RN−20、同RN−30、同RN−50等〕、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの硫酸エステルのアンモニウム塩のベンゼン環に重合性の1−プロペニル基を導入したもの〔例えば、第一工業製薬(株)製;アクアロンHS−10、同HS−20等〕、及び、分子内に重合性二重結合を持つ、スルホコハク酸ジエステル系のもの〔例えば、花王(株)製;ラテムルS−120A、同S−180A等〕等が挙げられる。
【0028】
さらに必要に応じて、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イソシアネートエチルアクリレート、イソシアネートエチルメタクリレート、2−(1−アジリジニル)エチルアクリレート、2−(1−アジリジニル)エチルメタクリレート等の自己架橋性の官能基を持ったモノマー、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の重合性二重結合を持ったモノマー、ジビニルベンゼン、アクリル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル等の多官能性のモノマー等を共重合してもよい。
【0029】
粘着剤ポリマーを重合する方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、等既知の様々な方法が採用できるが、得られる粘着剤ポリマーの分子量及びそれにともなう粘着剤の凝集力への影響を考慮する必要がある。これらの重合方法の内、高分子量のポリマーが得られること、塗布、乾燥工程における環境汚染、塗布性等を勘案すると、乳化重合法が好ましい。
【0030】
粘着剤ポリマーの重合反応機構としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等が挙げられるが、粘着剤の製造コスト、モノマーの官能基の影響及び半導体ウエハ表面へのイオンの影響、等を等慮すれば、ラジカル重合によって重合することが好ましい。
【0031】
ラジカル重合反応によって重合する際に用いうるラジカル重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−ターシャル−ブチルパーオキサイド、ジ−ターシャル−アミルパーオキサイド等の有機過酸化物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等のアゾ化合物、等が挙げられる。
【0032】
乳化重合法により重合する場合には、これらのラジカル重合開始剤の中でも、水溶性の過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、同じく水溶性の4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を持ったアゾ化合物が好ましい。半導体ウエハ表面へのイオンの影響を考慮すれば、過硫酸アンモニウム、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を持ったアゾ化合物がさらに好ましい。4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を持ったアゾ化合物が特に好ましい。
【0033】
<(ロ)成分>
本発明に係る粘着剤層用塗布液は、(ロ)アルキレン基の炭素数が2〜4のアルキレングリコール重合体を主骨格とし、末端に少なくとも2個のグリシジル基を有し、且つ、重量平均分子量が1000〜5000の範囲である架橋剤(以下、適宜「特定架橋剤」と称する。)を必須成分として含有する。
【0034】
特定架橋剤を含有する粘着剤層用塗布液により形成された粘着剤層は、該粘着剤層とウエハ表面との密着性が向上し、ウエハ裏面を研削する際のウエハ表面と粘着剤層の間への水浸入を防止する(以下、耐水性)効果があり、しかも、粘着フィルムをウエハ表面から剥離する際のウエハの破損も起こらず、粘着剤層に起因するウエハ表面(特にハイバンプ電極を有するウエハの場合には該ハイバンプ電極の周辺)への汚染も生じない。
【0035】
特定架橋剤の特徴の一つは、該特定架橋剤が分子構造の末端に少なくとも2個のグリシジル基を有することであり、該グリシジル基と前記粘着剤ポリマーが有する架橋剤と反応し得る官能基とが架橋反応することにより、特定架橋剤が粘着剤層中に固定されることから、粘着剤層から特定架橋剤がブリードアウトすることがない。このため、本発明の粘着フィルムは、糊残りによるウエハ表面の汚染のみならず、ブリードアウトによるウエハ表面の汚染についても効果的に抑制することができる。
【0036】
特定架橋剤におけるグリシジル基は、該特定架橋剤の分子構造の末端に少なくとも2個導入されていればよいが、架橋反応の効率化及び架橋後の得られた粘着剤の柔軟特性維持の観点からは、主鎖の両末端のそれぞれに、少なくとも1個のグリシジル基を有することが好ましい。
なお、特定架橋剤におけるグリシジル基の個数は、過塩素酸法によりエポキシ当量として確認することができる。
【0037】
特定架橋剤におけるグリシジル基の導入方法としては、ポリアルキレングリコールとエピクロルヒドリンを用いて、公知の技術により合成する方法が挙げられる。
【0038】
また、特定架橋剤は、その重量平均分子量を後述する特定の範囲に限定している。詳細な理由は明確ではないが、特定架橋剤の分子量をこの範囲内とすることによって、ウエハ裏面研削中における耐水性が向上すると共に、ウエハ表面(特にハイバンプ電極を有するウエハの場合には該ハイバンプ電極の周辺)の粘着剤層に起因する汚染が減少する効果がある。
【0039】
ここで、本発明において、アルキレングリコール重合体とは、ポリ(オキシアルキレン)グリコール、ポリオキシアルキレンエーテル、ポリアルキレンオキサイドと称されるものを含み、ポリマーの主鎖がポリエーテルの構造を持つものをいう。アルキレングリコール系重合体は、水、アルコール類、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類等を開始剤として、金属アルコキシド、有機金属化合物、無機金属塩、アルカリ金属水酸化物、第3アミン化合物、酸等の触媒存在下で、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の環状エーテルを開環付加させて重合する方法等により合成される。さらに、ポリマーの末端にある水酸基の水素原子が、アルキル基によって置換された構造のポリエーテルも含む[この場合、得られたポリマーの分子量は、アルキル基置換前のポリマーの分子量(水酸基及び官能基数より換算)より推定]。
【0040】
特定架橋剤の主骨格を構成するアルキレングリコール重合体として具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。さらに、これらの中でも、原料入手、製造コスト等を考慮すれば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、が好ましい。
【0041】
本発明において粘着剤層が含有する特定架橋剤の重量平均分子量は、1000〜5000であり、1000〜3000であることがより好ましい。分子量が高くなるほどウエハ表面に対する汚染が減少する傾向があることを考慮すれば分子量が高い方が好ましいが、分子量がこの範囲よりも高くなればアルキレングリコール系重合体の製造自体が困難となる傾向がある。分子量がこの範囲よりも低くなると、ウエハ表面(特にハイバンプ電極を有するウエハの場合には該ハイバンプ電極の周辺)に粘着剤層に起因する汚染が生じる傾向がある。
【0042】
なお、本発明における重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定した値である。
【0043】
粘着剤層用塗布液における特定架橋剤の含有量としては、前記(イ)粘着剤ポリマー及び後述する(ハ)架橋剤100質量部に対して、0.5〜20質量部であることが好ましく、1.0〜15質量部であることがより好ましく、2.0〜15質量部であることが特に好ましい。
特定架橋剤の含有量が少ないと、耐水性が低下し、裏面研削中にウエハ表面と粘着剤層との間に水が浸入してウエハを破損したり、裏面の研削屑が浸入することによる汚染を生じやすくなる傾向にある。また、含有量が多いとウエハ表面に粘着剤層に起因する汚染を生じることがある。
【0044】
<(ハ)他の架橋剤>
本発明においては、上記した、粘着剤ポリマー及び特定架橋剤と共に、特定架橋剤とは分子構造が異なる他の架橋剤(以下、適宜「他の架橋剤」と称する。)を含有する。
本発明に用いうる他の架橋剤としては、1分子中に2個以上の架橋反応性官能基を有する架橋剤であることが好ましく、粘着剤ポリマーが有する官能基と反応させ、粘着力及び凝集力を調整することができる。他の架橋剤としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、レソルシンジグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトルエンジイソシアネート3付加物、ポリイソシアネート等のイソシアネート系化合物、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネート等のアジリジン系化合物、及びヘキサメトキシメチロールメラミン等のメラミン系化合物等が挙げられる。
【0045】
これらの他の架橋剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
他の架橋剤の中でも、エポキシ系架橋剤は架橋反応の速度が遅く、反応が十分に進行しない場合には粘着剤層の凝集力が低くなり、半導体ウエハ表面の形状によっては粘着剤層に起因する汚染が生じることがある。したがって、適宜、アミン等の触媒を含有するか、もしくは触媒作用のあるアミン系官能基をもつモノマーを粘着剤ポリマーに共重合するか、架橋剤を使用する際にアミンとしての性質を有するアジリジン系架橋剤を併用することが好ましい。
【0046】
他の架橋剤の含有量は、通常、架橋剤中の官能基数が粘着剤ポリマー中の官能基数よりも多くならない程度の範囲で含有することが好ましい。しかし、架橋反応で新たに官能基が生じる場合や、架橋反応が遅い場合など、必要に応じて過剰に含有してもよい。
【0047】
本発明における他の架橋剤の好ましい含有量は、前記(イ)粘着剤ポリマー100質量部に対し、0.5〜10質量部であり、0.5〜7質量部であることが好ましい。他の架橋剤の含有量が0.5質量部より少ないと、粘着剤層の凝集力が不充分となり、ウエハ表面(特にハイバンプ電極を有するウエハの場合には該ハイバンプ電極の周辺)に粘着剤層に起因する糊残りを生じやすくなったり、粘着力が本発明の範囲を外れて、高くなり、粘着フィルムをウエハ表面から剥離する際に自動剥がし機で剥離トラブルが発生したり、ウエハを完全に破損したりする場合がある。多過ぎると、粘着剤層とウエハ表面との密着力が弱くなり、研削中に水や研削屑が浸入し、ウエハを破損したり、研削屑によるウエハ表面の汚染が生じたりすることがある。
【0048】
粘着剤層用塗布液は、前記した、(イ)粘着剤ポリマー、(ロ)特定架橋剤、(ハ)他の架橋剤の他に、粘着特性を調整するために、ロジン系、テルペン樹脂系等のタッキファイヤー、各種界面活性剤等の任意成分を、本発明の効果に影響しない程度に適宜含有してもよい。
【0049】
また、粘着剤ポリマーがエマルジョン液である場合は、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル等の造膜助剤を本発明の目的に影響しない程度に適宜添加してもよい。造膜助剤として使用されるジエチレングリコールモノアルキルエーテル及びその誘導体は、粘着剤層中に多量に含有した場合、洗浄が不可能となる程度の多量のウエハ表面の汚染を招くことがあることを考慮すれば、粘着剤塗工後の乾燥時の温度で揮発するものを使用し、粘着剤層中への残存量を低くすることが好ましい。
【0050】
尚、粘着剤層用塗布液を調製する際に、粘着剤ポリマーがエマルジョン液である場合には、粘着剤層用塗布液中への特定架橋剤の分散を容易にするために、上記ジエチレングリコールモノアルキルエーテル等の造膜助剤中に該アルキレングリコール系重合体を予め溶解した後に、粘着剤ポリマーエマルジョン液に添加したり、本発明の目的に影響しない程度に適宜界面活性剤を併用したりすることが好ましい。
【0051】
本発明に係る粘着剤層は、必須成分である、(イ)粘着剤ポリマー、(ロ)特定架橋剤、(ハ)他の架橋剤、及び、必要に応じて添加される任意成分を含む溶液またはエマルジョン液からなる粘着剤層用塗布液を調製し、この粘着剤層用塗布液を用いて、下記i)又はii)の方法により形成することができる。
i) 基材フィルムの片表面に、粘着剤層用塗布液を布・乾燥して粘着剤剤層を形成する方法
ii) 粘着剤層上に貼着する剥離フィルムの片表面に、粘着剤層用塗布液を塗布・乾燥して粘着剤層を形成した後、該粘着剤層を基材フィルム上に転写する方法
【0052】
上記i)の方法により粘着剤層を形成する場合には、環境に起因する汚染等から保護するために、形成された粘着剤層の表面に剥離フィルムを貼着することが好ましい。
【0053】
上記i)及びii)の何れの方法により粘着剤層を形成するかは、基材フィルム及び剥離フィルムの耐熱性、半導体ウエハ表面の汚染性を考慮して決める。
例えば、剥離フィルムの耐熱性が基材フィルムのそれより優れている場合は、剥離フィルムの表面に粘着剤層を設けた後、基材フィルムへ転写することが好ましい。剥離フィルムの耐熱性が基材フィルムと同等または基材フィルムの方が優れている場合は、基材フィルムの表面に粘着剤層を設け、その表面に剥離フィルムを貼着することが好ましい。
【0054】
半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルムは、剥離フィルムを剥離した時に露出する粘着剤層の表面を介して半導体ウエハ表面に貼着されることを考慮し、粘着剤層による半導体ウエハ表面の汚染防止を図るためには、耐熱性の良好な剥離フィルムを使用し、その表面に粘着剤塗布液を塗布、乾燥して粘着剤層を形成し、これを基材フィルムへ転写する方法(上記ii)の方法)の方が好ましい。
【0055】
本発明における基材フィルムとしては、合成樹脂をフィルム状に成型加工したフィルムを用いる。基材フィルムは単層体であっても、また、積層体であってもよい。基材フィルムの厚みは10μm〜500μmが好ましい。より好ましくは70〜500μmである。基材フィルムの原料樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂が挙げられる。これらの中で、裏面研削中のウエハの保護性能を考慮すれば、ASTM−D−2240−86、またはJIS Kー7215−1986に規定されるショアーD型硬度が40以下である原料樹脂が特に好ましい。これらの樹脂をフィルム状に成型加工する際には、必要に応じて、安定剤、滑剤、酸化防止剤、顔料、ブロッキング防止剤、可塑剤、等を添加してもよい。基材フィルムを成型加工する際に安定剤等の各種添加剤を添加した場合、添加剤が粘着剤層に移行して、粘着剤の特性を変化させたり、ウエハ表面を汚染することがある。このような場合には、基材フィルムと粘着剤層の間にバリヤー層を設けることが好ましい。
【0056】
また、半導体ウエハの裏面を研削した後に施されるエッチング液によるエッチング処理の際にも引き続き半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルムを用いて半導体ウエハの表面を保護する場合には、耐薬品性に優れた基材フィルムを使用することが好ましい。例えば、基材フィルムの粘着剤層を設ける側とは反対側の面にポリプロピレン等の耐薬品性フィルムを積層する等である。
【0057】
基材フィルムと粘着剤層との接着力を向上させるため、基材フィルムの粘着剤層を設ける面には、コロナ処理または化学処理を予め施すことが好ましい。また、基材フィルムと粘着剤層の間に下塗剤を塗布してもよい。
【0058】
本発明に使用する基材フィルムは、カレンダー法、Tダイ押出法、インフレーション法等、公知の技術により製造されるものの中から、生産性、得られるフィルムの厚み精度等を考慮して選択することができる。
【0059】
本発明に使用しうる剥離フィルムとしては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムが挙げられる。必要に応じてその表面にシリコーン処理等が施されたものが好ましい。剥離フィルムの厚みは、通常10〜200μmであり、好ましくは30〜100μmである。
【0060】
基材フィルム又は剥離フィルムの片表面に粘着剤塗布液を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法、例えばロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法、ダイコーター法等が採用できる。
塗布された粘着剤層の乾燥条件には特に制限はないが、一般的には、80〜200℃の温度範囲において10秒〜10分間乾燥することが好ましく、80〜170℃において15秒〜5分間乾燥することがさらに好ましい。
【0061】
特定架橋剤及び他の架橋剤と粘着剤ポリマーとの架橋反応を充分に促進させるためには、粘着剤層用塗布液の乾燥が終了した後に、半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルムを40〜80℃において5〜300時間程度加熱してもよい。
【0062】
本発明における粘着剤層の厚さは、5〜100μmの範囲であることが好ましく、10〜70μmの範囲であることがより好ましい。粘着剤層の厚みが薄くなると、耐水性が劣り裏面研削中にウエハ表面と粘着剤層との間に水が浸入して、ウエハを破損したり、ウエハ表面に研削屑による汚染が生じたりする傾向にある。厚みが厚くなると、粘着フィルムの作成が困難となったり、生産性に影響を与え製造コストの増加につながることがある。
【0063】
本発明の半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルムの粘着力は、ウエハ表面の研削条件、ウエハの口径、研削後のウエハの厚み等を勘案して適宜調整できるが、粘着力が低すぎるとウエハ表面へのフィルムの貼付が困難となったり、裏面研削中にウエハ表面と粘着剤層との間に水が浸入し、ウエハが破損したり、ウエハ表面に研削屑等による汚染が生じたりする傾向にある。また、粘着力が高すぎると、裏面研削後に粘着フィルムをウエハ表面から剥離する際に、自動剥がし機で剥離トラブルが発生する等、剥離作業性が低下したり、ウエハを破損したりすることがある。通常、SUS304−BA板に対する粘着力に換算して0.4〜400N/25mmが好ましく、より好ましくは0.5〜3.5N/25mmである。
【0064】
なお、本発明の半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルムの製造に際しては、半導体ウエハ表面の汚染防止の観点から、基材フィルム、剥離フィルム、粘着剤主剤等全ての原料資材の製造環境、粘着剤塗布液の調製、保存、塗布及び乾燥環境は、米国連邦規格209bに規定されるクラス1,000以下のクリーン度に維持されていることが好ましい。
【0065】
[半導体ウエハの裏面研削方法]
次に、本発明の半導体ウエハの裏面研削方法について説明する。
本発明の半導体ウエハの裏面研削方法は、半導体ウエハの裏面を研削する際に、上述した本発明の半導体ウエハの裏面研削用粘着フィルムを用いることを特徴とする。
【0066】
その詳細としては、先ず、本発明の粘着フィルムの粘着剤層から剥離フィルムを剥離し、粘着剤層表面を露出させ、その粘着剤層を介して、半導体ウエハの集積回路が組み込まれた側の面に貼着する。次いで、研削機のチャックテーブル等に粘着フィルムの基材フィルム層を介して半導体ウエハを固定し、半導体ウエハの裏面を研削する。研削が終了した後、粘着フィルムは剥離される。裏面の研削が完了した後、粘着フィルムを剥離する前にケミカルエッチング工程を経ることもある。また、必要に応じて、粘着フィルム剥離後に、半導体ウエハ表面に対して、水洗、プラズマ洗浄等の処理が施される。
【0067】
この様な裏面研削操作において、半導体ウエハは、研削前の厚みが、通常、500μm〜1000μmであるのに対して、半導体チップの種類等に応じ、通常、100μm〜600μm程度まで研削される。研削する前の半導体ウエハの厚みは、半導体ウエハの口径、種類等により適宜決められ、研削後の厚みは、得られるチップのサイズ、回路の種類、等により適宜決められる。
【0068】
粘着フィルムを半導体ウエハに貼着する操作は、人手により行われる場合もあるが、一般に、ロール状の粘着フィルムを取り付けた自動貼り機と称される装置によって行われる。この様な自動貼り機として、例えば、タカトリ(株)製ATM−1000B、同ATM−1100、帝国精機(株)製STLシリーズ等がある。
【0069】
裏面研削方式としては、スルーフィード方式、インフィード方式等の公知の研削方式が採用される。それぞれ、研削は水を半導体ウエハと砥石にかけて冷却しながら行われる。裏面研削終了後、必要に応じてケミカルエッチングが行われる。ケミカルエッチングは、弗化水素酸や硝酸、硫酸、酢酸等の単独もしくは混合液からなる酸性水溶液や、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液、からなる群から選ばれたエッチング液に、粘着フィルムを貼着した状態で半導体ウエハを浸漬する等の方法により行われる。該エッチングは、半導体ウエハ裏面に生じた歪の除去、ウエハのさらなる薄層化、酸化膜等の除去、電極を裏面に形成する際の前処理、等を目的として行われる。エッチング液は、上記の目的に応じて適宜選択される。
【0070】
裏面研削、ケミカルエッチング終了後、粘着フィルムはウエハ表面から剥離される。この一連の操作は、人手により行われる場合もあるが、一般には、自動剥がし機と称される装置により行われる。この様な、自動剥がし機としては、タカトリ(株)製ATRM−2000B、同ATRM−2100、帝国精機(株)製STPシリーズ等がある。
【0071】
粘着フィルムを剥離した後のウエハ表面は、必要に応じて洗浄される。洗浄方法としては、水洗浄、溶剤洗浄等の湿式洗浄や、プラズマ洗浄等の乾式洗浄等が挙げられる。湿式洗浄の場合、超音波洗浄を併用してもよい。これらの洗浄方法は、ウエハ表面の汚染状況により適宜選択される。
【0072】
本発明によれば、半導体ウエハの裏面を研削するに際し、研削中にウエハ表面と粘着剤層との間に水が浸入することに起因するウエハの破損も、研削屑が浸入することによるウエハ表面の汚染も発生することがない。粘着力が適正な範囲にあるため、半導体ウエハの表面から粘着フィルムを剥離する際にウエハを破損することもなく、光照射装置等の設備を新たに工程に導入する必要もない。さらに、粘着フィルムをウエハから剥離した後に糊残りがないので、半導体ウエハの表面を汚染することがない。
【0073】
本発明の半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルム及びそれを用いる半導体ウエハの裏面研削方法が適用できる半導体ウエハとして、シリコンウエハのみならず、ゲルマニウム、ガリウム−ヒ素、ガリウム−リン、ガリウム−ヒ素−アルミニウム等のウエハが挙げられる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例を示して本発明についてさらに詳細に説明する。以下に示す全ての実施例及び比較例においては、米国連邦規格209bに規定されるクラス1,000以下のクリーン度に維持された環境において粘着剤塗布液の調製及び塗布、並びに、半導体シリコンウエハの裏面研削等を実施した。
本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、実施例に示した各種特性値は下記の方法で測定した。
【0075】
(1)粘着力(N/25mm)
下記に規定した条件以外は、全てJIS Z−0237−1991(2000年度版)に準じて測定した。23℃の雰囲気下において、実施例または比較例で得られた粘着フィルムをその粘着剤層を介して、5×20cmのSUS304−BA板(JIS G−4305−1991規定)の表面に貼着し、1時間放置した。試料の一端を挟持し、剥離角度180度、剥離速度300mm/min.でSUS304−BA板の表面から試料を剥離する際の応力を測定し、N/25mmの粘着力に換算した。
【0076】
(2)実用評価
高さ8μmのハイバンプ電極を有する100mmの集積回路が周辺まで組み込まれた半導体シリコンウエハ(直径:200mm、厚み:600μm、スクライブラインの幅:100μm、スクライブラインの深さ:5μm)の表面に、実施例または比較例で得られた粘着フィルムを貼着し、研削機を用いて、水をかけて冷却しながら半導体シリコンウエハの裏面を研削して、厚みを約200μmとした。
各粘着フィルム毎に10枚の半導体シリコンウエハについて裏面研削を行い、下記<1>〜<3>の各評価を行った。
また、ウエハ汚染性については、下記<4>の評価を行った。
【0077】
<1>裏面研削時のウエハの破損状況
半導体シリコンウエハ裏面の研削終了後、半導体シリコンウエハの破損状況を破損した枚数で評価した。
【0078】
<2>裏面研削時の水侵入
研削により破損しなかった半導体シリコンウエハについて、表面と粘着フィルムとの間に周辺から水が浸入したか否かを目視で観察し、水侵入が生じた枚数で評価した。
【0079】
<3>粘着フィルム剥離時のウエハの破損状況
水浸入の観察終了後、表面保護テープ剥がし機{タカトリ(株)製、MODEL:ATRM−2000B;使用剥がしテープ:ハイランド印フィラメントテープNo.897〔住友スリーエム(株)製〕}で該粘着フィルムを剥離し、粘着フィルム剥離時の破損状況を破損した枚数で評価した。
【0080】
<4>ウエハ汚染性評価(ESCA測定)
ESCA(島津製 ESCA−3200)により、シリコンミラーウェハチップ表面の汚染性を評価した。
試料用の粘着フィルムをその粘着剤層を介して異物が付着していないシリコンミラーウェハ(直径:4インチ、厚み:600μm)の全表面に貼着した状態で、温度23±2℃、相対湿度50±5%に調整された雰囲気中に60分放置した後、粘着フィルムをシリコンミラーウェハから研削機〔(株)ディスコ製、形式:DFG−82IF/8〕を用いて剥離し、次いでダイヤモンドグラスカッター〔(株)井内盛栄堂〕を用いて、シリコンミラーウェハを1cm角に切断した。切断した1cm角のシリコンミラーウェハから無作為に5個を採取し、それらの表面に対してESCAによる分析を下記条件にて実施し、C/Si比(5個の平均値)を求め、有機物による該チップ表面の汚染状況を測定した。
<ESCA測定条件>
X線源;Mg−Kα線(1252.0eV)、X線出力;300W、測定真空度;2×10−7Pa以下、C/Si比;(炭素のピーク面積)/(珪素のピーク面積)。
<C/Si比の評価方法>
粘着フィルムを貼着する前のシリコンミラーウェハ表面のC/Si比は、0.10(ブランク値)である。
評価基準としては、粘着フィルムを貼着した後のシリコンミラーウェハチップ表面のC/Si比が0.10〜0.20程度のチップ表面に対しては汚染無しとして「良好」と評価し、それを超えるチップ表面に対しては汚染有りとして「不良」と評価した。
【0081】
[実施例1]
(基材フィルムの作製)
ショアーD型硬度が35のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂をT−ダイ押出機を用いて、厚さ200μmのフィルムに形成した。この際、粘着剤層を形成する側にコロナ処理を施した。得られたフィルムの厚みバラツキは±1.5%以内であった。
【0082】
(粘着剤主剤の合成)
脱イオン水中、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(界面活性剤)存在下、アクリル酸ブチル82重量部%とメタクリル酸メチル12重量部%、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル3重量%、アクリル酸2重量%、アクリル酸アミド1重量で常法により共重合させ、粘着剤ポリマーAを固形分として40質量%含む粘着剤ポリマーエマルジョン(粘着剤主剤)を得た。
【0083】
(特定架橋剤(1)の合成)
重量平均分子量3000のポリプロピレングリコール(三井化学ポリウレタン(株)製、商品名“MN−3050”)とエピクロルヒドリンとの縮合反応により、特定架橋剤(1)(両末端にエポキシ系の末端官能基を有し、重量平均分子量が3000のポリプロピレングリコール)を得た。
【0084】
(粘着剤層用塗布液の調製)
得られた粘着剤主剤100質量部(粘着剤ポリマー濃度40質量%)に、アジリジン系架橋剤〔日本触媒化学工業(株)製、ケミタイトPZ−33〕1.0質量部、特定架橋剤(1)10質量部を加え、粘着剤塗布液を得た。
【0085】
(粘着フィルムの作製)
得られた粘着剤層用塗布液を、ロールコーターを用いてポリプロピレンフィルム(剥離フィルム、厚み:50μm)に塗布し、120℃で5分間乾燥し厚さ40μmの粘着剤層を設けた。これに前述のエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム(基材フィルム)のコロナ処理面を貼り合わせ押圧して、粘着剤層を転写させた。転写後、60℃において48時間加熱した後、室温まで冷却することにより半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムを製造した。
【0086】
(粘着フィルムの評価)
得られた粘着フィルムについて、前記の方法により、粘着力(N/25mm)を測定し、更に、実用評価を行った。
得られた粘着フィルムの粘着力は1.0N/25mmであった。
研削中に破損したウエハは皆無であり、研削終了後、ウエハと粘着フィルムの間に、水侵入は観察されなかった。粘着フィルム剥離中に破損したウエハも皆無であった。
ウエハ表面の汚染性の指標であるESCAのC/Si値は0.17であり、汚染性が「良好」であることが観察された。
得られた結果を表1に示す。
【0087】
[実施例2]
実施例1の粘着剤層用塗布液の調製において、特定架橋剤(1)10質量部の代わりに特定架橋剤(2)(エピオール E−1000、日本油脂(株)製、両末端にエポキシ系の末端官能基を有する重量平均分子量1500のポリエチレングリコール)15質量部を使用した以外は、全て実施例1と同様の方法で半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムを製造した。
得られた粘着フィルムについて、前記の方法により、粘着力(N/25mm)を測定し、更に、実用評価を行った。
得られた粘着フィルムの粘着力は0.8N/25mmであった。
研削中に破損したウエハは皆無であり、研削終了後、ウエハと粘着フィルムの間に、水侵入は観察されなかった。粘着フィルム剥離中に破損したウエハも皆無であった。
ウエハ表面の汚染性の指標であるESCAのC/Si値は0.18であり、汚染性が「良好」であることが観察された。
得られた結果を表1に示す。
【0088】
[実施例3]
実施例1の粘着剤層用塗布液の調製において、アジリジン系架橋剤1.0質量部の代わりに、エポキシ系架橋剤(デナコールEX−614、ナガセ化成工業(株)製)7質量部を使用した以外は、全て実施例1と同様の方法で半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムを製造した。
得られた粘着フィルムについて、前記の方法により、粘着力(N/25mm)を測定し、更に、実用評価を行った。
得られた粘着フィルムの粘着力は1.8N/25mmであった。
研削中に破損したウエハは皆無であり、研削終了後、ウエハと粘着フィルムの間に、水侵入は観察されなかった。粘着フィルム剥離中に破損したウエハも皆無であった。
ウエハ表面の汚染性の指標であるESCAのC/Si値は0.17であり、汚染性が「良好」であることが観察された。
得られた結果を表1に示す。
【0089】
[実施例4]
実施例1の粘着剤層用塗布液の調製において、アジリジン系架橋剤の使用量を1.0質量部から0.5質量部に変更した以外は、全て実施例1と同様の方法で半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムを製造した。
得られた粘着フィルムについて、前記の方法により、粘着力(N/25mm)を測定し、更に、実用評価を行った。
得られた粘着フィルムの粘着力は2.5N/25mmであった。
研削中に破損したウエハは皆無であり、研削終了後、ウエハと粘着フィルムの間に、水侵入は観察されなかった。粘着フィルム剥離中に破損したウエハも皆無であった。
ウエハ表面の汚染性の指標であるESCAのC/Si値は0.18であり、汚染性が「良好」であることが観察された。
得られた結果を表1に示す。
【0090】
【表1】


【0091】
[比較例1]
実施例1の粘着剤層用塗布液の調製において、特定架橋剤(1)を用いなかった以外は、全て実施例1と同様の方法で半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムを製造した。
得られた粘着フィルムについて、前記の方法により、粘着力(N/25mm)を測定し、更に、実用評価を行った。
得られた粘着フィルムの粘着力は3.5N/25mmであった。
研削中に破損したウエハは皆無であり、研削終了後、ウエハと粘着フィルムの間に、水侵入は観察されなかった。粘着フィルム剥離中に5枚のウエハが破損した。
ウエハ表面の汚染性の指標であるESCAのC/Si値は0.15であり、汚染性が「良好」であることが観察された。
得られた結果を表2に示す。
【0092】
[比較例2]
実施例1の粘着剤層用塗布液の調製において、特定架橋剤(1)1.0質量部を比較用架橋剤(1)(両末端にヒドロキシ基を有する、重量平均分子量が3000のポリプロピレングリコール)10質量部に変更した以外は、全て実施例1と同様の方法で半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムを製造した。
得られた粘着フィルムについて、前記の方法により、粘着力(N/25mm)を測定し、更に、実用評価を行った。
得られた粘着フィルムの粘着力は1.2N/25mmであった。
研削中に破損したウエハは皆無であり、研削終了後、ウエハと粘着フィルムの間に、水侵入は観察されなかった。粘着フィルム剥離中に破損したウエハも皆無であった。
ウエハ表面の汚染性の指標であるESCAのC/Si値は0.4であり、汚染性が「不良」であることが観察された。
得られた結果を表2に示す。
【0093】
[比較例3]
実施例1の粘着剤層用塗布液の調製において、特定架橋剤(1)10質量部の代わりに比較用定架橋剤(2)(エポキシ系の末端官能基(グリシジル基)を有する、重量平均分子量300のポリプロピレングリコール)10質量部を使用した以外は、全て実施例1と同様の方法で半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムを製造した。
得られた粘着フィルムについて、前記の方法により、粘着力(N/25mm)を測定し、更に、実用評価を行った。
得られた粘着フィルムの粘着力は3.2N/25mmであった。
研削中に破損したウエハは皆無であり、研削終了後、ウエハと粘着フィルムの間に、水侵入は観察されなかった。粘着フィルム剥離中に3枚のウエハが破損した。
ウエハ表面の汚染性の指標であるESCAのC/Si値は0.35であり、汚染性が「不良」であることが観察された。
得られた結果を表2に示す。
【0094】
[比較例4]
実施例1の粘着剤層用塗布液の調製において、アジリジン系架橋剤の使用量を1.0質量部から0.1質量部に変更した以外は、全て実施例1と同様の方法で半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムを製造した。
得られた粘着フィルムについて、前記の方法により、粘着力(N/25mm)を測定し、更に、実用評価を行った。
得られた粘着フィルムの粘着力は4.5N/25mmであった。
研削中に破損したウエハは皆無であり、研削終了後、ウエハと粘着フィルムの間に、水侵入は観察されなかった。粘着フィルム剥離中に5枚のウエハが破損した。
ウエハ表面の汚染性の指標であるESCAのC/Si値は0.61であり、汚染性が「不良」であることが観察された。
得られた結果を表2に示す。
【0095】
[比較例5]
実施例1の粘着剤層用塗布液の調製において、アジリジン系架橋剤1.0質量部の代わりに前記エポキシ系架橋剤18質量部を使用した以外は、全て実施例1と同様の方法で半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムを製造した。
得られた粘着フィルムについて、前記の方法により、粘着力(N/25mm)を測定し、更に、実用評価を行った。
得られた粘着フィルムの粘着力は0.5N/25mmであった。
研削中に水侵入が原因で2枚のウエハが破損した。研削終了後、破損しなかった8枚のウエハの全てについて、水侵入が観察された。
ウエハ表面の汚染性の指標であるESCAのC/Si値は0.15であり、汚染性は「良好」であることが観察された。
得られた結果を表2に示す。
【0096】
[比較例6]
実施例1の粘着剤層用塗布液の調製において、特定架橋剤(1)の使用量を10質量部から25質量部に変更した以外は、全て実施例1と同様の方法で半導体ウエハ裏面研削用粘着フィルムを製造した。
得られた粘着フィルムについて、前記の方法により、粘着力(N/25mm)を測定し、更に、実用評価を行った。
得られた粘着フィルムの粘着力は0.3N/25mmであった。
研削中に水侵入が原因で3枚のウエハが破損した。研削終了後、破損しなかった9枚のウエハの全てについて、水侵入が観察された。
ウエハ表面の汚染性の指標であるESCAのC/Si値は0.13であり、汚染性は「不良」であることが観察された。
得られた結果を表2に示す。
【0097】
[比較例7]
実施例1の粘着剤層用塗布液の調製において、特定架橋剤(1)10質量部の代わりに比較用架橋剤(2)(エポキシ系の末端官能基(グリシジル基)を有する、重量平均分子量10000のポリプロピレングリコール)10質量部を使用した以外は、全て実施例1と同様の方法で粘着剤層用塗布液を調製したた。
しかし、比較例7については、調製後び粘着剤層用塗布液の粘度が1000m・Pas以上と高くなり、実施例1と同様のEVAフィルムのコロナ処理面にロールコーターにて塗布できなかったため、目的とする半導体ウエハ加工用フィルムを得ることができなかった。
得られた結果を表2に示す。
【0098】
【表2】


以上のように、実施例の粘着フィルムは、半導体ウエハの裏面を研削するに際し、裏面の研削応力に起因する研削中のウエハ破損が起こらないばかりでなく、ウエハ表面と粘着剤層との間に水及び研削屑が浸入することに起因するウエハの破損及びウエハ表面の汚染も起こらない。また、粘着力が適正な範囲にあるため、粘着フィルムをウエハから剥離する際のウエハの破損が起こらず、光照射装置等の設備を新たに導入する必要もない。さらに、粘着フィルムをウエハから剥離した後における糊残りや、粘着剤層からのブリードアウトもないので、半導体ウエハの表面を汚染することがない。
【出願人】 【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
【出願日】 平成18年6月23日(2006.6.23)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳

【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳

【識別番号】100085279
【弁理士】
【氏名又は名称】西元 勝一

【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志


【公開番号】 特開2008−858(P2008−858A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−174303(P2006−174303)