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【発明の名称】 管内面研磨装置
【発明者】 【氏名】池田 哲哉

【要約】 【課題】複雑な制御機構を用いることなく、管内面の段差や凹凸部分を自動的に研磨できる管内面研磨装置とする。

【構成】台座1に設けた傾斜部2の勾配方向に沿って移動体3をスライド自在とし、その自重により下向きに付勢する。その移動体3に前記付勢方向に対する仰角を鋭角とする支持軸4を設けてその支持軸4に研磨材5を設ける。研磨材5を支持軸4の軸周りに回転可能とし、前記研磨材5を介して前記支持軸4に作用する前記移動体3側への押圧力又は前記研磨材5側への引張り力を前記付勢力で対抗させた。研磨作業中に研磨材5が受ける反力の変化は、移動体3に付与された付勢力により吸収されるので、研磨材5の管体内面の被研磨面への押圧力を一定に維持し得るようになる。このため、複雑な制御機構を用いることなく、管内面の段差や凹凸部分を自動的に研磨できる管内面研磨装置とすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座1に移動体3をスライド自在に設け、前記移動体3を前記スライド方向の一方へ付勢し、前記移動体3に前記付勢方向に対する仰角を鋭角とする支持軸4を設けてその支持軸4に研磨材5を設け、前記研磨材5を前記支持軸4の軸周りに回転可能とし、前記研磨材5を介して前記支持軸4に作用する前記移動体3側への押圧力又は前記研磨材5側への引張り力を前記移動体3への前記付勢力で対抗させたことを特徴とする管内面研磨装置。
【請求項2】
鋳鉄管Pをその受口6の管軸方向が前記支持軸4の軸方向と同方向となるように配置し、前記移動体3のスライド方向を、前記受口6内面における前記研磨材5との接触面の向きに交差する方向としたことを特徴とする請求項1に記載の管内面研磨装置。
【請求項3】
前記移動体3は、前記台座1に設けた傾斜部2の勾配方向に沿ってスライド自在であり、前記移動体3はその自重により前記勾配方向下向きに付勢されることを特徴とする請求項1又は2に記載の管内面研磨装置。
【請求項4】
前記台座1に、前記移動体3の前記勾配方向下向きへのスライドを阻止する係止装置20を設けたことを特徴とする請求項3に記載の管内面研磨装置。
【請求項5】
前記移動体3に係止索10の一端を取付け、その係止索10を前記傾斜部2の上方側に設けた滑車11に掛け回し、その掛け回した係止索10を下方に導いて、その係止索10の他端におもり22を取付けたことを特徴とする請求項3又は4に記載の管内面研磨装置。
【請求項6】
前記移動体3に係止索10の一端を取付け、その係止索10を前記傾斜部2の上方側に設けた滑車11に掛け回し、その掛け回した係止索10を下方に導いて、その係止索10の他端におもり22を取付け、前記台座1に、前記移動体3の前記勾配方向下向きへのスライドを阻止する係止装置20を設け、前記係止装置20は、進退可能なロッド21aを備えたシリンダ21であり、前記移動体3の下向きスライドの阻止は、前記係止索10の他端に設けたストッパ部材12の上面に、前記シリンダ21のロッド21aを当接させることを特徴とする請求項3に記載の管内面研磨装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、鋳鉄管の内面を研磨する管内面研磨装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主として遠心鋳造法により製造される鋳鉄管は、その腐食を防止するために、外面に耐食性塗装を施すとともに、内面には粉体塗装などの内面塗装が施される場合が多い。この内面塗装を行う際には、予め研磨処理を行うことにより塗装面の凹凸を除去するのが一般的である。
【0003】
このように研磨を行うのは、粉体塗装を行う塗装面に微小な凹凸があると、塗膜が滑らかに仕上がらず塗りむらが生じやすくなるからである。また、その塗装面の凹凸部分に水分等が介在しやすくなり、その上に粉体塗装を行うと、水分等がガスとなって粉体塗装の塗膜を損傷したり、あるいは、塗膜の浮きや空隙等を生じさせたりするからである。
さらに、鋳鉄管の受口内面には、その構造上大きな段差や凹凸があるので、管体の肉厚が部位毎に異なり、その肉厚の差異が、金属が硬化する際の局部的な収縮の差異を生じやすくさせる。このため、受口の内面には、粉体塗装に悪影響を及ぼすような微小な凹凸が生じやすいという事情もある。
【0004】
管内面の研磨装置として、例えば、図9に示すように、支持軸4の先端に取付けた砥石(研磨材)5を回転させながら、その砥石5を管体Pの内面に沿って管径方向及び管軸方向へ移動させ、管内面の微小な凹凸を削り取る装置がある。
【0005】
また、特許文献1に示すように、回転軸の先端に砥石を取付け、その回転軸の後端を上下方向に揺動させることにより、砥石の傾斜角度を調整可能としたものもある。砥石を回転させながら研磨作業を行い、その砥石が受口内面の傾斜面に達すると、回転軸後端を下方へ揺動させることにより、砥石を管内面の傾斜面に沿わせることができるものである。
【特許文献1】特開平7−100744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、図9に示す管内面研磨装置において、作業者が、砥石を目視で確認しながら移動させるようにすると、受口内面には段差や凹凸があるため、その研磨作業には手間と時間を要し、そのうえ、削り具合にムラが生じたり、あるいはその削り具合に個体差が生じやすいという問題がある。
また、例えば、受口内面の被研磨面の形状を数値によって所定の制御装置に入力し、その入力したデータに基づいて、前記砥石の昇降及び進退を自動的に行うようにすると、装置が複雑化するという問題がある。
【0007】
また、特許文献1に示す管内面研磨装置は、砥石が受口内面の傾斜面に沿うように、回転軸の揺動角を制御しなければならない。この制御には複雑な機構を必要とするので、このような複雑な制御機構を用いることなく、管内面の段差や凹凸部分を自動的に研磨できる管内面研磨装置であることが望ましい。
【0008】
そこで、この発明は、複雑な制御機構を用いることなく、管内面の段差や凹凸部分を自動的に研磨できる管内面研磨装置とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、この発明は、台座に移動体をスライド自在に設け、前記移動体を前記スライド方向の一方へ付勢し、前記移動体に前記付勢方向に対する仰角を鋭角とする支持軸を設けてその支持軸に研磨材を設け、前記研磨材を前記支持軸の軸周りに回転可能とし、前記研磨材を介して前記支持軸に作用する前記移動体側への押圧力又は前記研磨材側への引張り力を前記移動体への前記付勢力で対抗させた構成を採用した。
【0010】
このようにすれば、前記研磨材を介して前記支持軸に作用する前記移動体側への押圧力又は前記研磨材側への引張り力、すなわち研磨作業中に研磨材が受ける反力は、管体内面の段差や凹凸を通過する毎に変化する。その反力の変化は、移動体に付与された付勢力により吸収されるので、研磨材の管体内面の被研磨面への押圧力を概ね一定に維持し得るようになる。このため、複雑な制御機構を用いることなく、管内面の段差や凹凸部分を自動的に研磨できる管内面研磨装置とすることができる。
【0011】
上記の構成において、鋳鉄管をその受口の管軸方向が前記支持軸の軸方向と同方向となるように配置し、前記移動体のスライド方向を、前記受口内面における前記研磨材との接触面の向きに交差する方向とした構成を採用し得る。
このようにすれば、研磨材が受ける反力の変化が、移動体に付与された付勢力により吸収されやすくなり、研磨材の管体内面の被研磨面への押圧力をより一定に近い状態に維持し得る。
【0012】
また、前記移動体は、前記台座に設けた傾斜部の勾配方向に沿ってスライド自在であり、前記移動体はその自重により前記勾配方向下向きに付勢される構成を採用し得る。
このようにすれば、移動体に付勢力を与える装置を設ける必要がなく、装置を簡素化し得る。
【0013】
また、前記傾斜部を設けた構成において、前記台座に、前記移動体の前記勾配方向下向きへのスライドを阻止する係止装置を設ければ、移動体の落下を適宜の位置で止めて、研磨材の被研磨面へ当接する際の衝撃を和らげることができる。
【0014】
また、前記移動体に係止索の一端を取付け、その係止索を前記傾斜部の上方側に設けた滑車に掛け回し、その掛け回した係止索を下方に導いて、その係止索の他端におもりを取付けた構成を採用することができる。
このようにすれば、おもりの重量を加減することにより、移動体に作用する下向きの付勢力を調整することができる。
【0015】
さらに、前記移動体に係止索の一端を取付けてその係止索を滑車に掛け回し、その掛け回した係止索を下方に導いて、その係止索の他端におもりを取付け、前記台座に、前記移動体の前記勾配方向下向きへのスライドを阻止する係止装置を設けた構成において、前記係止装置を、進退可能なロッドを備えたシリンダで構成し、前記移動体の下向きスライドの阻止は、前記係止索の他端に設けたストッパ部材の上面に、前記シリンダのロッドを当接させる構成を採用することができる。
このようにすれば、シリンダのロッドの突出長を加減することにより、移動体のスライド距離を調整することができ、また、おもりの交換作業も容易となる。
【発明の効果】
【0016】
この発明は、台座にスライド自在で且つそのスライド方向の一方へ付勢された移動体に、その付勢方向に対する仰角を鋭角とする支持軸を設けてその支持軸に研磨材を設け、その研磨材を介して支持軸に作用する前記移動体側への押圧力又は前記研磨材側への引張り力をその移動体への付勢力で対抗させたので、研磨材が受ける反力の変化は、移動体に作用する付勢力により吸収され、研磨材の管体内面の被研磨面への押圧力を一定に維持し得る。このため、複雑な制御機構を用いることなく、管内面の段差や凹凸部分を自動的に研磨できる管内面研磨装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
一実施形態を図1乃至図6に基づいて説明する。この実施形態は、鋳鉄管の内面に粉体塗装を行う際に、予めその内面の研磨処理を行う管内面研磨装置であり、特に、段差や凹凸のある受口6の内周面をその研磨の対象とするものである。
【0018】
その鋳鉄管Pは、地中等への敷設状態において、その一端の挿し口(図示せず)が隣り合う鋳鉄管Pの受口6に嵌め込まれるようになっている。その挿し口の先端部外周面には、全周に亘る挿し口突起が一体に形成されており、また、受口6の内周面には、受口6の端縁から管軸方向内側に向かって、挿し口の外周面に摺接するシール用ゴム輪を収納するゴム輪溝や、あるいは芯出し用ゴム付きのロックリングを収納するロックリング溝8、継手の伸縮に伴って前記挿し口突起が移動可能な空隙を確保する凹部9などが、それぞれその全周に亘って管軸方向所定長さ形成されている。
【0019】
鋳鉄管Pは、支持台によって受口6の管軸周り回転可能に支持されて、その支持台の駆動力により高速で回転する。受口6の内面の被研磨面(研磨範囲)は、挿し口との重複部分Cよりも管軸方向内側で、図中Aに示される範囲の全周となっている。研磨範囲Aのさらに管軸方向内側部分Bは、他の工程において周知の研磨装置によって研磨される。
なお、図中Aに示す範囲は、図1乃至図5に示す装置で研磨を行い、図中Aに示す範囲は、図6に示す装置で研磨を行う。
【0020】
この実施形態における装置の構成は、昇降装置30により昇降自在の台座1に傾斜部2が形成されており、その傾斜部2の勾配方向に沿って上下にスライド自在の移動体3が設けられている。傾斜部2は、前記支持台上に載置された鋳鉄管Pの受口6に近づく方向に向かって、一定の下り勾配で形成されており、移動体3は、その下部に設けた係合子3bが、傾斜部2に設けたガイド2aに嵌ってスライド可能である。
なお、前記載置された鋳鉄管Pの受口6の管軸方向と、前記スライド方向とは、平面視、同一直線上に配置されている。図中に示す符号13は、移動体3の落下を止めるストッパである。
【0021】
また、前記台座1は、横移動装置40により前記載置された鋳鉄管Pの管軸方向と同方向に移動可能である。
横移動装置40の構成は、前記台座1の下部に設けたブッシュ1aが水平方向のねじ軸42に噛み合っており、そのねじ軸42は、モータ41の動作によって軸周り回転するようになっている。また、台座1は、その下部に設けた係合子1bが、前記昇降装置30の上面に設けたガイド31に嵌っており、ねじ軸42が回転すれば台座1が前記管軸方向に沿って進退するようになっている。
【0022】
前記台座1に設けた移動体3には、前記受口6に向かってその管軸方向と同方向に伸びる支持軸4が取付けられている。支持軸4は、通常は水平状態で固定されて、前記移動体3のスライド方向に対する仰角が鋭角となっている。また、支持軸4は、移動体3に軸周り回転自在に支持されて、モータの駆動によって回転する。その支持軸4の先端には、円盤状の研磨材5が取付けられている。
また、その支持軸4は、ピン3a介して移動体3に対し上下方向に所定角度の範囲で回動自在となっており、任意の仰角の位置で固定できるようになっているので、必要であれば支持軸4をピン3a周りに回動させ、その仰角を調整することもできる。
【0023】
移動体3の上面には、係止索10の一端が取付けられている。係止索10は、移動体3や、その移動体3に取付けた前記支持軸4、研磨材5等を支えるに充分な強度を有するワイヤ等で構成される。その係止索10を、前記傾斜部2の上方側に設けた滑車11に掛け回し、その掛け回した係止索10の他端が鉛直下方に導かれている。
また、その係止索10の他端には、板状のおもり22が複数枚取付けられている。そのおもり22の枚数は増減可能である。また、その板状のおもり22と同形状を成すおもり32が、移動体3に取付けできるようになっている。おもり32の枚数も増減可能である。
【0024】
また、前記台座1には、前記移動体3が前記傾斜部2を下向きにスライドすることを阻止する係止装置20が設けられている。
【0025】
係止装置20は、進退可能なロッド21aを備えたエアシリンダ21で構成され、そのエアシリンダ21のロッド21aが下向きに突出するように前記台座1の支柱部に固定されている。また、前記係止索10の他端には、水平方向に固定された板状のストッパ部材12が設けられている。前記移動体3は、そのストッパ部材12の上面に前記エアシリンダ21のロッド21aを当接させることによりその下向きスライドが阻止される。
ロッド21aを後退させれば、移動体3は、その移動体3及び支持軸4、研磨材5等の自重により傾斜部2を下向きにスライドし、ストッパ部材12の上面に前記シリンダ21のロッド21aが当接すれば、その位置で移動体3の下向きスライドが阻止される。
【0026】
また、ストッパ部材12から上方に立ち上がるように設けられた係合子12aが、台座1の支柱部に設けた鉛直方向のガイド1cに嵌っているので、前記おもり22及びストッパ部材12の昇降がガイドされる。
【0027】
以下、この管内面研磨装置の作用について説明する。
まず、作業前には、図1に実線で示す位置に台座1が位置し、支持軸4の先端に取付けた研磨材5は、鋳鉄管Pの受口6から離れた状態にある。昇降装置30により台座1の高さ調整を行った後、横移動装置40を動作させ、図中に鎖線で示す位置まで台座1を前進させて、研磨材5を研磨範囲Aの始点近くの待機位置に待機させる。
なお、前記昇降装置30は、研磨作業開始前及び研磨作業終了後における台座1の高さ調整に使用し、研磨作業中は原則としてその昇降機能は使用されない。
つぎに、支持台を駆動させて鋳鉄管Pを受口6の管軸周りに回転させるとともに、モータの駆動により支持軸4を研磨材5とともに軸周り回転させる。
【0028】
そして、図3に矢印a’に示すように、エアシリンダ21のロッド21aを後退させると、移動体3等の自重により、その移動体3が矢印aの方向へスライドする。移動体3は、Lだけスライドしたところで静止し、研磨材5が受口6の被研磨面(研磨範囲Aの始点)に当てがわれる。図中Lは、おもり22及びストッパ部材12の上昇距離を示し、図中Lは、管軸方向(矢印b)への前進距離、図中Lは、管径方向(矢印c)への下降距離を示す。
【0029】
つぎに、横移動装置40を動作させ、台座1を前進させる。このとき、図4に示すように、移動体3には、その自重により付勢されて、矢印aに示すように下向きにスライドしようとする力が作用している。一方、研磨材5には、前記台座1の前進に伴う矢印bの方向へ前進しようとする力と、その研磨材5や支持軸4、移動体3等の自重による矢印cの方向への押圧力、及び被研磨面との間の摩擦力(図示せず)が作用していると考えられる。
なお、その移動体3に作用する前記下向きの力は、前記おもり22,32の枚数を増減することにより調整することができる。例えば、研磨材5の押し付け力を増やす場合には、おもり22を必要枚数取り外し、その取り外したおもり22を、移動体3におもり32として取付けてもよい。また、研磨材5の押し付け力を減ずる場合には、その逆に、おもり32を取り外して、その取り外したおもり32を、係止索10の他端におもり22として取付けても良い。
使用できるおもり22,32は、この実施形態に示す板状のものに限られない。このため、おもり22,32を取り外した後、重量の異なる他のおもり22,32に交換する構成としてもよい。
【0030】
さらに、横移動装置40を動作させて、台座1を図5に矢印dに示す方向へと前進させる。研磨材5は徐々に受口6内を管軸方向に前進し、被研磨面である受口6内面の微小な凹凸を研磨するとともに、その前進とともに、受口6内面の構造的な凹凸(前記凹部9や、その内側に形成されたあご部9a等)を通過していく。
【0031】
研磨材5が受口6内面から受ける反力は、図5に矢印fに示す鉛直方向と矢印eに示す横方向の分力に分けられ、各分力は、受口内面の微小な凹凸、及び前記構造的な凹凸を通過する際に変化する。
このとき、研磨材5を介して支持軸4に作用する前記移動体3側への押圧力に対し、移動体3に作用する付勢力が対抗する。したがって、その研磨材5が受ける反力の変化は、移動体3が傾斜部2の勾配に沿って図中矢印gの方向又はその反対方向に適宜微動しつつ、その付勢力により吸収される。このため、前記凹部9の底に形成されたフラットな部分から前記あご部9aに至る立上がり部、特にあご部9aに近いほぼ垂直に立上がる部分においても、研磨材5の被研磨面への押圧力を概ね一定に維持し得る。
【0032】
また、図5に示す鋳鉄管Pの受口6内面における凹部9からあご部9aに至る立上がり部の勾配方向h(受口6内面における研磨材5との接触面の向き)に対し、前記移動体3のスライド方向gが交差する方向にあるので、前記反力の変化がより円滑に吸収されるよう機能する。
【0033】
このようにして、研磨材5は、一定の押圧力で受口6内面の被研磨面との接触を保ちながら、凹部9をその全長全周に亘って研磨した後、その凹部9の内側端のあご部9aに乗り上げて研磨終了位置に至り研磨を終了する。
【0034】
つぎに、図6に示す装置を用いて研磨範囲Aを研磨する。図6に示す装置は、図1乃至図5に示す装置の傾斜部2の方向を逆向きにし、受口6から遠ざかる方向に下り勾配を配置したものである。その作用は、前記研磨範囲Aの場合と同様であり、その研磨材5を介して支持軸4には、前記研磨材5側への引張り力が作用し、その引張り力に対して移動体3への付勢力が対抗する。
【0035】
図6(b)に矢印iで示す方向へ研磨位置を進めるに際し、前記鋳鉄管Pの受口6内面における凹部9からあご部9bに至る立上がり部の勾配方向i(受口6内面における研磨材5との接触面の向き)に対し、前記移動体3のスライド方向jが交差する方向にあるので、前述の場合と同様、研磨材5の被研磨面への押圧力を一定に維持し得るように機能する。
【0036】
なお、前記鋳鉄管Pの受口6内面における研磨材5との接触面の向きと、前記移動体3のスライド方向とは、例えば、図7(a)に示すように、受口6内面における接触面の勾配方向hに対して、移動体3のスライド方向g’が直交する状態であれば、研磨材5が受口6内面から受ける前記接触面直交方向の反力h’と前記スライド方向g’とが同一方向となるので、前記付勢力による反力の変化の吸収が非常に円滑となる。
【0037】
しかし、受口6内面の凹部9、及びあご部9aに至る立上がり部の勾配は、多くの場合は一定ではなく、例えば、図7(b)に示すように断面弧状を描く場合が多い。
このため、前記移動体3のスライド方向の向きを、常に、研磨材5が接する位置における勾配に対して直交する方向に設定するためには、図7(b)の右側に示すように傾斜部2を断面弧状に形成する手法が考えられる。
このとき、移動体3は、傾斜部2に沿ってスライドするのに伴って、その水平方向に対する仰角が変化する(図中のp点とq点参照)。このため、支持軸4を受口6に向かって常に一定方向に支持するための機能を移動体3に設ける必要がある。
また、傾斜部2の勾配を一定とする際には、図7(b)に鎖線で示すように、その傾斜部2の勾配を、前記断面弧状のラインに対し、平均的な勾配とすることが有効である。平均的な勾配とは、例えば、最小二乗法等による勾配設定が考えられる。
【0038】
上記実施形態では、係止索10の他端におもり22を取付けたが、必要に応じて他端に設けるおもり22は省略することも可能である。また、係止索10の他端を下向きに導く必要がなければ滑車11を省略した態様も採用可能である。
【0039】
また、上記実施形態では、係止装置20を進退可能なロッド21aを備えたエアシリンダ21で構成し、そのロッド21aを、前記係止索10の他端のストッパ部材12に当接させたが、ロッド21aは、移動体3の下向き方向へのスライドを阻止する方向に係止索10の動きを拘束するものであればよく、エアシリンダ21の位置、向きは自由に設定できる。また、係止索10を使用せず、移動体3にロッド21aを直接当接させて、そのスライドを阻止する態様も考えられる。
さらに、エアシリンダ21以外の構成からなる係止装置20を採用してもよい。例えば、流体圧シリンダや、あるいは係止索10を係止することによりその動きを拘束できる周知の係脱機構を台座1に設けてもよい。
【0040】
図8に、さらに他の実施形態を示す。この実施形態は、受口6が上方を向くように、鋳鉄管Pの受口6の管軸方向を鉛直方向に設定したものである。支持軸4は鉛直下向きに配置され、その下端に研磨材5が取付けられている。
移動体3は、台座1に設けた下向きの傾斜部2に吊して固定されており、支持軸4は、その移動体3に取付けられている。また、移動体3は、前記傾斜部2に沿ってスライド可能であり、移動体3にはその自重により下向きの付勢力が作用しているほか、台座1に取付けたエアシリンダ23により、同じく下向きの付勢力を付与できるようになっている。
【0041】
この図8に示す構成において、研磨材5が受口6内面から反力を受けると、その研磨材5を介して支持軸4に作用する前記移動体3側への押圧力に対し、移動体3に作用する重力、及び前記エアシリンダ23の付勢力が対抗する。したがって、その研磨材5が受ける反力の変化は、移動体3が傾斜部2の勾配に沿って図中矢印kの方向又はその反対方向に適宜微動しつつ、その付勢力により吸収される。このため、研磨材5の被研磨面への押圧力を一定に維持し得る。
なお、図8は、図中Aの範囲を研磨するものであるが、Aの領域を研磨する装置として、図6に示すように、勾配方向を逆向きに設定した装置も採用可能である。
【0042】
また、移動体3のスライド方向は、必ずしも傾斜部2に沿って上下方向に設定されたものに限られず、例えば、水平方向にスライドする構成も考えられる。この場合、移動体3にはその自重による付勢力は作用しないので、前述のエアシリンダ23等による付勢手段を別途設けることが必要となる。
また、鋳鉄管Pは、その管体が直線状である直管に限られず、例えば、管体の途中に分岐部のあるT字管や、管体が途中で曲がった曲管といった異形管とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】一実施形態を示し、研磨材を待機位置まで前進させる際の位置関係を示す正面図
【図2】同実施形態の平面図
【図3】図1の研磨材を待機位置から研磨開始位置まで移動させる際の位置関係を示す正面図
【図4】図3の研磨材を被研磨面にセットした状態を示す正面図
【図5】図4の研磨材を研磨開始位置から研磨終了位置まで移動させる際の位置関係を示す正面図
【図6】図1の傾斜部を逆向きにした装置を示し、研磨材を研磨開始位置から研磨終了位置まで移動させる際の位置関係を示す正面図
【図7】被研磨面の向きと、移動体のスライド方向との位置関係を示す説明図
【図8】他の実施形態を示し、研磨材を研磨開始位置から研磨終了位置まで移動させる際の位置関係を示す正面図
【図9】従来例を示し、(a)は正面図、(b)は側面図
【符号の説明】
【0044】
1 台座
2 傾斜部
3 移動体
4 支持軸
5 研磨材(砥石)
6 受口
10 係止索
11 滑車
12 ストッパ部材
20 係止装置
21 シリンダ
21a ロッド
22,32 おもり
30 昇降装置
40 横移動装置
P 鋳鉄管(管体)
R 支持台
【出願人】 【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
【出願日】 平成18年6月21日(2006.6.21)
【代理人】 【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二

【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久

【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由

【識別番号】100084858
【弁理士】
【氏名又は名称】東尾 正博


【公開番号】 特開2008−838(P2008−838A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−171390(P2006−171390)