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【発明の名称】 板状体の製造方法
【発明者】 【氏名】杉本 章

【氏名】中辻 幸敏

【氏名】鈴木 淑成

【氏名】澤田 浩明

【氏名】佐々木 賢一

【要約】 【課題】板状体の破損を防止して安定的な研削加工を行うことができる板状体の製造方法を提供する。

【構成】研削加工面の高低差が0.2mm以下であるように管理された研削加工定盤を用いて板状体を研削加工する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削加工面の高低差が0.2mm以下であるように管理された研削加工定盤を用いて板状体を研削加工することを特徴とする、板状体の製造方法。
【請求項2】
前記板状体が情報記録媒体用ガラス基板であることを特徴とする、請求項1記載の板状体の製造方法。
【請求項3】
前記研削加工面が金属平坦面によって構成されていて、遊離砥粒で研削加工することを特徴とする、請求項1記載の板状体の製造方法。
【請求項4】
前記研削加工面が研削砥粒が固定化されたペレットによって構成されていて、固定砥粒で研削加工することを特徴とする、請求項1記載の板状体の製造方法。
【請求項5】
前記板状体の厚みが、0.3乃至3mmであることを特徴とする、請求項1記載の板状体の製造方法。
【請求項6】
前記研削加工面の円環状の幅と、板状体の直径との比が2.5乃至50であることを特徴とする、請求項1記載の板状体の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、板状体の製造方法に関し、詳細には、最適化された研削加工定盤を用いて板状体を研削加工する方法に関し、特に、情報記録媒体用ガラス基板である板状体を研削加工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報記録媒体用ディスクの小型・高密度化に伴い、表面平滑性及び機械的強度が優れたガラス基板を磁気記録用ディスクとして利用することが多くなっている。情報記録媒体用ガラス基板は、ガラス基板の表裏の記録面を研削加工したあと、さらに研磨加工することによって作製されている。
【0003】
研削加工は、ガラス基板用の素板を所定の厚みに揃えるとともに、所定の平面度を得るために行われている。情報記録媒体用ディスクの小型・高密度化に従って、ガラス基板に関する厚みや平面度といった寸法スペックも厳しいものが要求されてきている。
【0004】
ところで、研削加工には、一般に、炭化ケイ素やアルミナ等の遊離砥粒を用いた遊離砥粒方法と、メタルやレジンでダイヤモンド砥粒を固着したダイヤモンドペレットを用いた固定砥粒方法(例えば、特許文献1を参照のこと)と、がある。
【0005】
いずれの研磨方法においても、同じ研削加工面で長時間にわたって研削加工をし続けると、定盤の研削加工面も削り取られるために、研削加工面に「うねり」すなわち大きな凹凸ができて偏摩耗が発生する。このような偏摩耗は、様々なパターンで研削加工面上に形成されるが、定盤の研削加工面に偏摩耗を持った状態で研削加工を行うと、不均一な負荷がガラス基板に加えられるために、ガラス基板の破損が発生してしまう。
【0006】
このような不具合が発生しないように、研削加工面をツルーイング(形直し)することが一般的に行われているが、ツルーイング(形直し)作業がカンと経験で適宜にあるいは定期的に行われているのが現状である。その結果、不必要なくらい短い間隔で、あるいは、ガラス基板の破損が起こるかもしれないギリギリの長い間隔でツルーイング(形直し)が行われていたので、安定的な研削加工を行うことができなかった。
【特許文献1】特開平11−90813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、板状体の破損を防止して安定的な研削加工を行うことができる板状体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段および作用・効果】
【0008】
上記技術的課題を解決するために、本発明によれば、以下の板状体の製造方法が提供される。
【0009】
すなわち、本発明に係る板状体の製造方法は、
研削加工面の高低差が0.2mm以下であるように管理された研削加工定盤を用いて板状体を研削加工することを特徴とする。
【0010】
情報記録媒体用基板の研削加工において板状体の破損原因を鋭意検討した結果、研削加工面の高低差が板状体の破損に関して多大な影響を及ぼしていることを見出した。そして、さらに詳細な検討を行ったところ、研削加工面の高低差を0.2mm以下に管理することによって、板状体の破損が激減して、安定的な研削加工を行うことができるようになった。研削加工面の高低差が小さければ小さいほど、研削加工がより安定することは当然であるが、研削加工面の高低差を常時小さく保つことは、至難の業であり、生産性も悪くなってしまう。そこで、研削加工の安定性及び生産性が上手くバランスするものとして、研削加工面の高低差を0.2mm以下にするということを見出したのである。
【0011】
望遠鏡のガラスフィルタや液晶ガラスパネルやシリコンウエハ等の大型部品も研削加工対象の板状体であるが、著しい市場拡大を遂げつつある情報記録媒体用ガラス基板が好適である。
【0012】
上記方法は、研削加工面が金属平坦面によって構成されていて、遊離砥粒で研削加工するものや、研削加工面が研削砥粒が固定化されたペレットによって構成されていて、固定砥粒で研削加工するものに適用することができる。
【0013】
本願発明は様々な厚みの板状体に対して適用可能であるが、板状体の厚みが、0.3乃至3mmである場合に、上記効果をより顕著に発揮することができる。
【0014】
同様に、本願発明は様々な外径サイズの板状体に対して適用可能であるが、研削加工面の円環状の幅と、板状体の直径との比が2.5乃至50である場合に、上記効果をより顕著に発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明に係る板状体の製造方法の一実施形態を詳細に説明する。
【0016】
本発明に係る板状体の製造方法が具現化される両面研削加工機は、従来の平面ラップ盤と同様に、上定盤と下定盤との間に、太陽歯車と内歯歯車とに噛合する遊星歯車を備えたキャリア板を運動させるものである。
【0017】
両面研削加工機は、鉛直方向に延在する主軸を中心に回転可能な略円板状の上定盤と、鉛直方向に延在する主軸を中心に回転可能な略円板状の下定盤と、上定盤及び下定盤を回転駆動するモータと、研削液を供給するための研削液供給部と、上定盤を所定の位置に位置決めして上定盤と下定盤との間隔を一定に保持する保持機構と、を備えている。
【0018】
上定盤及び下定盤は、円環形状をしていて、外径部分が約2mで内径部分が約0.4mである大型タイプのものや、外径部分が約1mで内径部分が約0.3mである中型タイプのものや、外径部分が約0.5mで内径部分が約0.1mである小型タイプのもの等があり、研削対象物の大きさに応じて適宜選択される。定盤には、研削加工面が金属平坦面によって構成されていて、遊離砥粒で研削加工するものと、研削加工面が研削砥粒が固定化されたペレットによって構成されていて、固定砥粒で研削加工するものとがある。まず、遊離砥粒タイプのものについて説明する。
【0019】
遊離砥粒タイプのものは、球状黒鉛鋳鉄製の定盤に形成された平坦な研削加工面(中心から放射状に延在する溝を持ったものも含む)に対して、炭化ケイ素やアルミナ等の砥粒を水またはオイルと混合したスラリー状の遊離砥粒液を研削液供給部から供給して研削加工を行うものである。遊離砥粒タイプのものは、遊離砥粒を多く消費して、使用済みの遊離砥粒と切り粉とが混ざったスラリー、すなわちスラッジが大量に発生するために、作業環境の悪化と公害の発生という問題を内在している。したがって、固定砥粒タイプのものに移行しつつある。
【0020】
固定砥粒タイプのものは、鋳鉄製定盤の研削加工面(例えば、直径が1メートルの中型タイプ)に、所定間隔で多数のダイアモンドペレット(例えば、直径16mm、高さ7mmのものが一面に2500個程度)を接着材によって固着したものである。ダイアモンドペレット上の微小なダイヤモンド粒が情報記録媒体用ガラス円板の表面を削るので、遊離砥粒タイプのものと比較して、固定砥粒タイプのものは、高能率で高精度の研削加工が可能である。そして、水溶性の研削液を研削液供給部から供給して研削加工を行うものであるから、スラッジの発生が極めて少なく、クリーンな環境で作業が可能なだけでなく、公害の発生することも少ないという特長を有している。
【0021】
このような上定盤及び下定盤の間には、複数(例えば、5枚)のキャリア板が配置される。キャリア板は、硬質鋼やステンレス鋼等の金属板やガラスエポキシ等の硬質樹脂板などの硬質材料からできている。キャリア板の外周に設けられた遊星歯車部は、太陽歯車及び内歯歯車の双方に噛合している。
【0022】
キャリア板の内側には少なくとも一つの開口部(例えば、2.5インチの情報記録媒体用ガラス基板に対しては、一つのキャリア当たり20個の開口部)が形成され、この開口部に対して、板状体である情報記録媒体用ガラス円板が嵌合する。開口部は、情報記録媒体用ガラス円板に対して僅かな遊びを持って嵌合するように寸法構成されている。開口部の内壁面を、塩化ビニール、アクリル樹脂等のような柔らかい材料で覆うこともできる。キャリア板は、開口部において情報記録媒体用ガラス円板を保持しながら上定盤と下定盤との間で遊星運動を行うことにより、情報記録媒体用ガラス円板の表面及び裏面が研磨される。このとき、板状体の表面及び裏面は、それぞれ、上定盤及び下定盤の対向する研削加工面にそれぞれ接触している。
【0023】
上方位置にある上定盤を下降させてキャリア板の上面に接触させて、主軸をモータ等によって回転駆動させると、上定盤及び下定盤が独立して又は連動して回転する。また、外周に配置された内歯歯車は、主軸とは独立して、正方向又は逆方向に回転するようにモータ等によって駆動される。
【0024】
上定盤と下定盤との間に所定の研削液を供給しながら、主軸と内歯歯車(太陽歯車)とを回転駆動させると、相互に逆回転する太陽歯車と内歯歯車との間で、遊星歯車を持ったキャリア板は、自転しながら公転する遊星運動を行う。そして、キャリア板の開口部内で保持された情報記録媒体用ガラス円板の表面及び裏面の両方が、上方から圧接された上定盤及び下定盤の両方の研削加工面によって研削される。
【0025】
長時間にわたって研削加工を行うと、様々なパターンを持った偏摩耗が研削加工面に発生する。偏摩耗の発生した研削加工面は、修正キャリアを用いてツルーイング(形直し)される。ツルーイング(形直し)に先だって、研削加工面にどのような偏摩耗が発生しているかは、例えば、ストレートエッジと隙間ゲージとを用いて測定される。すなわち、測定対象の研削加工面に対して、研削加工面の直径よりも長尺のストレートエッジを当接させ、研削加工面とストレートエッジのエッジ部との間にできた隙間に、隙間ゲージを挿入することによって、ストレートエッジに当接した部分の隙間すなわち研削加工面の凹凸が測定される。さらに、ストレートエッジの位置をわずかに移動させて研削加工面の他の部分の凹凸を測定することができる。このような操作を繰り返すことによって、研削加工面の全面の偏摩耗状態を測定することができる。また、ダイヤルゲージでも研削加工面の偏摩耗を測定することができる。
【0026】
このようにして偏摩耗状態が測定された研削加工面に対して、ツルーイング(形直し)が行われる。ツルーイング(形直し)には、修正キャリアが使用される。上定盤及び下定盤の間には、複数の修正用キャリヤが配置される。修正用キャリヤは、太陽歯車及び内歯歯車に噛合している円板形状をした遊星ギヤである。修正用キャリヤは、研削加工用キャリヤと同じ材料のものとすることもできるが、硬度のより高い材料を用いる方が修正能力がアップするので、修正用キャリヤを硬質材料から構成することが望ましい。
【0027】
上記測定によって、定盤の研削加工面の外周部分が凸状に偏摩耗していることが判明した場合、例えば、修正用キャリヤの回転方向を時計回りにするとともに、当該定盤の回転方向を反時計回りにする。外周部分においては、修正用キャリヤの相対的な周速が大きくなるので、研削スピードが速くなる。逆に、内周部分においては、修正用キャリヤの相対的な周速が小さくなるので、研削スピードが遅くなる。したがって、外周部分の方が内周部分よりもより多く削られることになって、外周部分の凸状部分が修正される。
【0028】
逆に、上記測定によって、定盤の研削加工面の内周部分が凸状に偏摩耗していることが判明した場合、例えば、修正用キャリヤの回転方向を時計回りにするとともに、当該定盤の回転方向も時計回りにする。内周部分においては、修正用キャリヤの相対的な周速が大きくなるので、研削スピードが速くなる。逆に、外周部分においては、修正用キャリヤの相対的な周速が小さくなるので、研削スピードが遅くなる。したがって、内周部分の方が外周部分よりもより多く削られることになって、内周部分の凸状部分が修正される。
【0029】
上記板状体の製造方法は、様々な厚みの板状体に対して適用可能であるが、板状体の厚みが、0.3乃至3mmである場合に、上記効果をより顕著に確認することができる。同様に、上記板状体の製造方法は、様々な外径サイズの板状体に対して適用可能であるが、研削加工面の円環状の幅と、板状体の直径との比が2.5乃至50である場合に、上記効果をより顕著に確認することができる。
【実施例】
【0030】
本発明に係る板状体の製造方法の効果を確認するために、定盤面の直径が1メートルでダイアモンドペレットが貼付された中型の固定砥粒タイプの研削加工機を用いて、以下の試験を行った。
【0031】
2.5インチのハードディスク用ガラス基板(厚みが1mm)に対する研削加工を長時間にわたって行った結果、定盤の主軸を対称軸にして高低差が約0.8mmの凸状パターンの偏摩耗が研削加工面に発生していることがストレートエッジによって測定された。このような状態で研削加工をさらに行うと、ハードディスク用ガラス基板の破損が多発した。そこで、偏摩耗の発生した研削加工面に対して修正用キャリヤを時計回り及び反時計回りに回転させるツルーイング(形直し)を行い、凸状部分を削ることによって、研削加工面の高低差が0.2mmに修正されていることがストレートエッジによって測定された。修正した定盤を使ってハードディスク用ガラス基板を研削加工を行った結果、研削加工中にハードディスク用ガラス基板が破損することが激減した。
【0032】
研削加工面の高低差と研削加工中のハードディスク用ガラス基板の破損発生との関係を調べたところ、研削加工面の高低差が0.3mmであれば、研削加工中にハードディスク用ガラス基板の破損が発生した。しかしながら、研削加工面の高低差が0.2mm、0.15mm、0.1mm、0.7mmあるいは0.05mmであれば、研削加工中にハードディスク用ガラス基板の破損が発生しなかった。すなわち、研削加工面の高低差を0.2mm以下に管理することによって、研削加工中のハードディスク用ガラス基板の破損が激減して、安定的な研削加工を行うことができるようになった。ツルーイング(形直し)の時間、効果及びコストの点から、研削加工面の高低差を0.1mm乃至0.2mmにすることが、より好適である。
【出願人】 【識別番号】303000408
【氏名又は名称】コニカミノルタオプト株式会社
【出願日】 平成18年6月20日(2006.6.20)
【代理人】 【識別番号】100103115
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 康廣


【公開番号】 特開2008−824(P2008−824A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−169730(P2006−169730)