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【発明の名称】 研磨キャリア
【発明者】 【氏名】河合 秀樹

【氏名】佐々木 賢一

【要約】 【課題】被研磨体の側端面を傷付けることがなく、長期間安定的に使用することのできる研磨キャリアを提供する。

【構成】繊維質のシート体3と、該シート体に含浸される樹脂製含浸体5と、を含む複合材料からなる研磨キャリア1であって、前記研磨キャリアは、被研磨体の装填される保持穴9を有して、該保持穴の内壁面には、該内壁面から突出した繊維質よりも厚く形成された樹脂製の当接部10が設けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維質のシート体と、該シート体に含浸される樹脂製含浸体と、を含む複合材料からなる研磨キャリアであって、
前記研磨キャリアは、被研磨体の装填される保持穴を有して、該保持穴の内壁面には、該内壁面から突出した繊維質よりも厚く形成された樹脂製の当接部が設けられていることを特徴とする研磨キャリア。
【請求項2】
前記当接部は、前記樹脂製含浸体と同じ構造を有する高分子材料からなることを特徴とする、請求項1記載の研磨キャリア。
【請求項3】
前記当接部は、内壁面の全面に設けられていることを特徴とする、請求項1記載の研磨キャリア。
【請求項4】
前記当接部は、内壁面に対して分散して局所的に設けられていることを特徴とする、請求項1記載の研磨キャリア。
【請求項5】
前記当接部は、内壁面に対して少なくとも10%以上設けられていることを特徴とする、請求項4記載の研磨キャリア。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、被研磨体を保持するための研磨キャリアに関し、詳細には、側端面も研磨された情報記録媒体用ガラス基板を研磨加工するための研磨キャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報記録媒体用ディスクの小型・高密度化に伴い、表面平滑性及び機械的強度が優れたガラス基板を磁気記録用ディスクとして利用することが多くなっている。情報記録媒体用ガラス基板は、ガラス素板の表裏の記録面をラッピング加工したあとさらに研磨加工することが行われている。
【0003】
微小な粉塵が情報記録媒体用ディスクの側端面に付着して、側端面に付着した粉塵が離脱して記録面に付着することを防止するために、情報記録媒体用ガラス基板の記録面を研磨加工する前には、情報記録媒体用ガラス基板の側端面が研磨加工されている。
【0004】
側端面を研磨加工した情報記録媒体用ガラス基板の記録面を研磨加工する場合、研磨キャリアの保持穴の壁面と、情報記録媒体用ガラス基板の研磨側端面とが擦れ合う。
【0005】
研磨キャリアとして、炭素繊維やガラス繊維やアラミド繊維等の繊維質のシート材に樹脂を含浸させた繊維強化樹脂が使用されている。繊維強化樹脂からなる研磨キャリアに穴を開けて保持穴を形成すると、保持穴の内壁面においては、繊維質のものがヒゲのように突出する。保持穴の内壁面において突出した繊維質は、研磨対象の情報記録媒体用ガラス基板よりも硬質であるために、研磨加工時の擦れ合いにより、情報記録媒体用ガラス基板の研磨側端面を傷付けてしまう。
【0006】
特許文献1には、研磨キャリアの被研磨体保持穴の内周面に軟質のリング体を設けることが開示されている。しかしながら、特許文献1の研磨キャリアでは、キャリア本体とは異質で軟質の材料(ウレタンやゴム等の硬度100以下のもの)を用いているために、耐久性や固定強度に問題がある。すなわち、研磨加工時の擦れ合いによる摩擦や衝撃によって軟質材料が摩耗したり脱離したりするので、研磨キャリアの寿命が短いという問題がある。
【特許文献1】特開2000−288922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、被研磨体の側端面を傷付けることがなく、長期間安定的に使用することのできる研磨キャリアを提供することである。
【課題を解決するための手段および作用・効果】
【0008】
上記技術的課題を解決するために、本発明によれば、以下の研磨キャリアが提供される。
【0009】
すなわち、本発明に係る研磨キャリアは、
繊維質のシート体と、該シート体に含浸される樹脂製含浸体と、を含む複合材料からなる研磨キャリアであって、
前記研磨キャリアは、被研磨体の装填される保持穴を有して、該保持穴の内壁面には、該内壁面から突出した繊維質よりも厚く形成された樹脂製の当接部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
繊維質のシート体と、シート体に含浸される樹脂製含浸体と、を含む複合材料からなる研磨キャリアに穴を開けて保持穴を形成すると、保持穴の内壁面では、繊維質のものがヒゲのように突出している。しかしながら、本願発明では、保持穴の内壁面には、樹脂製の当接部が、突出した繊維質よりも厚く形成されているので、繊維質が保持穴の内壁面の最前面になることがない。したがって、研磨加工時の擦れ合いにより、被研磨体の側端面が傷付くことや当接部が簡単に摩耗することがないので、研磨キャリアを長期間安定的に使用することができる。
【0011】
好ましくは、当接部を樹脂製含浸体と同じ構造を有する高分子材料から構成することによって、強固な固着強度を得ることができる。なお、「同じ構造を有する」とは、基本のモノマーが同じで、重合状態が異なるものを意味する。
【0012】
保持穴の内壁面に当接部を容易に形成することができるように、当接部は、内壁面の全面に設けられていてもよく、また、保持穴の内壁面に使用される樹脂材料を節約するために、当接部は、内壁面に対して分散して局所的に設けられていても良い。
【0013】
当接部の形成作業を注意深く行えば、わずかな領域の当接部で上述した効果を得ることができるが、形成ムラの起こる可能性がある。また、当接部を極端に小さくした場合、局所的に負荷が加わり長期の使用に耐えられなくなる。そこで、当接部は、内壁面に対して少なくとも10%以上設けられていることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明に係る研磨キャリア1の一実施形態を、図1及び2を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
研磨工程に使用される研磨キャリア1は、円板形状をしており、その外周部には、不図示の研磨装置の太陽歯車や内歯歯車に嵌合するギア部7を有している。その板状面には、複数の保持穴9が形成されている。保持穴9は、研磨対象の被研磨体20を装填することができる大きさに寸法構成されている。また、被研磨体20の厚みに応じて、研磨キャリア1の厚みが決定される。
【0016】
研磨キャリア1は、繊維質のシート体3と、シート体に含浸される樹脂製含浸体5と、を含んでなる複合材料から構成されている。繊維質のシート体3は、炭素繊維やガラス繊維やアラミド繊維等の繊維質シートを複数枚積層したものである。このようなシート体3に含浸された樹脂製含浸体5は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂又はビスマレイミド樹脂が使用可能であるが、これらのなかでも特にエポキシ樹脂が好ましい。
【0017】
繊維質のシート体3は、繊維質のランダムな分散によって構成されているため、方向性を持たず、全方向にぼぼ等しい強度や剛性を備えた特性を有している。シート体3を構成する繊維質の長さは、通常、0.1mm乃至10mmであり、好ましくは0.1mm乃至5mmである。
【0018】
このような複合体から構成された研磨キャリア1に穴を開けて保持穴9を形成すると、保持穴9の内壁面では、シート体3の繊維質のものがヒゲのように突出している。すなわち、繊維質のバリが出来てしまう。そこで、保持穴9の内壁面には、樹脂製の当接部10が、突出した繊維質よりも厚く形成されている。当接部10は、保持穴9の内壁面の全面に形成されている。シート体3を構成する繊維質の長さに応じて当接部10の最適な厚みが選択されるが、通常、0.05mm乃至2mmであり、好ましくは0.1mm乃至1mmである。
【0019】
このような当接部10は、一枚一枚に樹脂を塗布することによって形成することもできるが、複数枚(2枚乃至200枚程度)を積層して樹脂を塗布することが好適である。当接部10のための樹脂として、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリサルホン、ポリカーボネートなどの高融点熱可塑性樹脂等の様々な樹脂が使用可能であるが、取扱の観点から、熱硬化性樹脂例えばエポキシ樹脂が好適である。研磨キャリア1の樹脂製含浸体5をエポキシ樹脂とした場合、当接部10を同じ樹脂すなわちエポキシ樹脂とすることが固着強度の点から好ましい。研磨キャリア1に塗布された熱硬化性樹脂は、所定温度で加熱すると、樹脂が硬化して当接部10となる。保持穴9の内壁面以外の不要部分に形成された樹脂は、ラップ加工やカッターナイフによって除去される。したがって、このような樹脂製の当接部10が形成された保持穴9の内壁面においては、繊維質が保持穴9の内壁面の最前面になることがない。また、塗布厚みを考慮して、予め塗布層の厚みを差し引いた厚さに設定したキャリアに穴を開け、樹脂を全面均一に塗布して利用してもよい。
【0020】
次に、本発明に係る研磨キャリア1の他の実施形態を、図3及び4を参照しながら説明するが、上述した実施形態との相違点を中心に説明する。
【0021】
すなわち、保持穴9の内壁面に形成される当接部10の形態が異なっており、図3及び4に示した実施形態においては、当接部10が、保持穴9の内壁面に対して分散して局所的に形成されている。その他の構成は、上記実施形態と同じである。
【0022】
図3及び4に示すように、7個の当接部10が保持穴9の内壁面に離間して形成されている。それらは、均等にあるいは不均等に離間配置されている。あるいは、2個の当接部10を180度の角度で対向するように配置したり、3個の当接部10を120度の角度で等配したり、2個の当接部10を90度の角度をなすように配置するとともに他の1個の当接部10をそれらに対して135度の角度をなすように配置したりすることができる。
【0023】
また、通常は、これらの当接部10が研磨キャリア1のおもて面から裏面まで延在する、すなわち保持穴9の内壁面の幅方向の全長にわたって延在するように構成されるが、当接部10が保持穴9の内壁面の幅方向に部分的に延在するように構成することもできる。保持穴9内での被研磨体20の保持機能を発揮するために、当接部10は、保持穴9の内壁面の周方向及び/又は幅方向に対して少なくとも10%以上設けられている。
【0024】
なお、いずれの場合も、上記実施形態と同じように、樹脂製の当接部10が、突出した繊維質よりも厚く形成されているが、各当接部10の形成厚みが等しいように構成されている。当接部10の形成厚みが個々に異なっていることは、保持穴9内での被研磨体20の動きが不均一になるので、好ましくない。同じく、当接部10の周方向長さが個々に異なっているものも好ましくない。
【0025】
次に、図1及び2に示した研磨キャリア1を用いて、被研磨体としての磁気記録用ガラス基板20を研磨加工する方法について説明する。
【0026】
研磨加工に供されるガラス素板は、例えば、ハードディスクドライブに内蔵される磁気記録用ガラス基板に使用されるものであって、1.8インチサイズのものや2.5インチサイズのものである。一例として、2.5インチサイズものについて説明する。ガラス基板の材質としては、ソーダライムガラス、ソーダカリガラス、ソーダアルミノケイ酸塩ガラス、アルミノボレートガラス、アルミノボロシリケートガラス(例えば、特開2004−277230号公報を参照すること。)である。このような磁気記録用ガラス基板20の素板は、熔融ガラスを上下の金型でプレス成形することによって作成される。
【0027】
アルミノボロシリケートガラスからなる磁気記録用ガラス基板20の素板は、両面ラッピング装置を用いて、平均粒径11.5μmのGC砥粒で約60分間ラッピングすることにより、例えば、表面粗さRmaxが約6μm、厚さが約0.65mmであるラップ板に加工される。
【0028】
円筒状の砥石を用いて、上記ラップ加工板の中心部に円孔を形成したあと、円孔の内周面とラップ加工板の外周面とをそれぞれ約3μmの酸化セリウムで側端面研磨を行う。例えば、Rmaxで約1.5μm、平均表面粗度(Ra)で約0.4μmになるまで、側端面研磨板の側端面が研磨加工される。
【0029】
両面研磨用装置の定盤上に不織布製硬質研磨布を装着した後、側端面研磨板を研磨キャリア1の保持穴9にセットし、定盤を20乃至60rpmで回転させて、平均粒径約1乃至3μmの酸化セリウムを約10重量%の濃度に水で懸濁させたスラリーを供給しながら、約150g/cm2の研磨荷重で60分間粗研磨することによって、厚さが0.64mmである粗研磨板に加工する。粗研磨時の研磨速度は、おおよそ0.5乃至1.5μm/分である。
【0030】
次に、粗研磨時の研磨キャリア1あるいは別の仕上げ研磨用の研磨キャリア1の保持穴9に上記粗研磨板をセットする。平均粒径約0.5μmの酸化セリウムを含有した研磨液を供給しながら約60g/cm2の研磨荷重でおおよそ15分間仕上げ研磨することによって、厚さが0.635mmである磁気記録用ガラス基板20を作成する。なお、仕上げ研磨時の研磨速度は、おおよそ0.1乃至0.3μm/分である。仕上げ研磨した磁気記録用ガラス基板20の平均表面粗度(Ra)を触針式表面粗さ計で測定すると、平均表面粗度(Ra)が約5nmである。
【0031】
仕上げ研磨済みの各ガラス基板20は、研磨キャリア1から取り出されて、洗浄工程において中性洗剤やイソプロピルアルコールや純水による洗浄処理を行ったあと、後続の磁気記録膜の形成工程等に供される。
【0032】
上述した方法によって多くの磁気記録用ガラス基板20を研磨加工したが、その側端面に傷が付いているものは無かった。そして、研磨加工を繰り返し行った後の研磨キャリア1の当接部10を観察した結果、当接部10の摩耗や剥離が発生していなかった。したがって、研磨加工時の擦れ合いにより、磁気記録用ガラス基板20の側端面が傷付くことや当接部10が簡単に摩耗することがないので、研磨キャリア1を長期間安定的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る研磨キャリアの要部を示した部分説明図である。
【図2】図1におけるII−II線で研磨キャリアを切断したときの断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る研磨キャリアの要部を示した部分説明図である。
【図4】図3におけるIV−IV線で研磨キャリアを切断したときの断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 研磨キャリア
3 繊維質のシート体
5 樹脂製含浸体
7 ギア部
9 保持穴
10 当接部
20 磁気記録用ガラス基板(被研磨体)
【出願人】 【識別番号】303000408
【氏名又は名称】コニカミノルタオプト株式会社
【出願日】 平成18年6月20日(2006.6.20)
【代理人】 【識別番号】100103115
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 康廣


【公開番号】 特開2008−823(P2008−823A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−169729(P2006−169729)