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【発明の名称】 数値制御装置
【発明者】 【氏名】鈴木 啓一郎

【要約】 【課題】高精度な傾斜加工が可能な数値制御装置を得ること。

【構成】工具を傾斜させて取り付けた状態で加工可能な加工装置の制御を行う数値制御装置であって、外部に接続されたセンサの信号が入力された時点の機械座標を記憶する通信処理手段と、前記通信処理手段に記憶された複数の機械座標を基に前記工具の傾斜角度を算出する工具傾斜角度算出手段と、前記工具の傾斜角度を表示する表示手段と、を備える。これにより、工具角度を手動調整する機構の工作機械においても工具の取り付け傾斜角度を自動で算出し、その角度を機械使用者に通知することが可能になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を傾斜させて取り付けた状態で加工可能な加工装置の制御を行う数値制御装置であって、
外部に接続されたセンサの信号が入力された時点の機械座標を記憶する通信処理手段と、
前記通信処理手段に記憶された複数の機械座標を基に前記工具の傾斜角度を算出する工具傾斜角度算出手段と、
前記工具の傾斜角度を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする数値制御装置。
【請求項2】
前記通信処理手段が、前記工具の単位時間あたりの移動量を基に前記工具の移動制御指令を出力するとともに、前記センサが前記工具に接触した旨の信号が入力された時点で、前記工具の移動制御指令の出力を停止し、前記工具の制御を停止すること
を特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項3】
装着中の工具の角度情報を記憶する工具情報記憶手段を備え、該工具情報記憶手段は前記工具傾斜角度算出手段において算出した傾斜角度を基に、記憶している工具の角度情報を更新すること
を特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、数値と符号・記号で構成される数値情報を基に機械の運転を自動制御する数値制御(Numerical Control)装置(以下 NC装置と呼ぶ)に関するものであり、さらに詳しくは、機械に取り付けられた工具の傾斜角度を容易に測定する機能を備えた数値制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
研削機械における加工においては傾斜加工は重要な加工の一つであり、このような傾斜加工は、工具を傾斜させて取り付けたり、傾斜形工具を用いることにより行われている。また、工具の取り付け精度は傾斜加工の精度に影響するため、高精度の傾斜加工を行うために工具の取り付け精度が重要となる。
【0003】
傾斜形工具の取り付け精度に関する技術としては、たとえば、アンギュラータイプの研削盤等の傾斜形工具を有する数値制御工作機械の傾斜形工具の補正方法において、工具径を測定して、数値制御装置に入力し、数値制御装置は工具径を傾斜座標の分解し、これを移動距離に加算してパルス分配する技術がある(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
また、工具を傾斜させて取り付ける方法では、工具を自由な角度に傾斜させて取り付けることのできるツールホルダが広く用いられている。これらのツールホルダの工具角度調整は、ツールホルダに刻印された目盛りを頼りに手動により行っている。なお、以下においては、これらのツールホルダを傾斜ホルダと呼ぶ。
【0005】
【特許文献1】特開昭64−21610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術によれば、前記傾斜ホルダに取り付けられた工具の角度調整は傾斜ホルダに刻まれた1度単位の目盛りを目視によって合わせてから固定するため、工具の取り付け角度の精度が良くない、という問題点がある。したがって、このように工具が取り付けられた数値制御装置では、高精度の傾斜加工が行えない、という問題を有する。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高精度な傾斜加工が可能な数値制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる数値制御装置は、工具を傾斜させて取り付けた状態で加工可能な加工装置の制御を行う数値制御装置であって、外部に接続されたセンサの信号が入力された時点の機械座標を記憶する通信処理手段と、前記通信処理手段に記憶された複数の機械座標を基に前記工具の傾斜角度を算出する工具傾斜角度算出手段と、前記工具の傾斜角度を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、工具を傾斜させて取り付けた状態で加工可能な加工装置の制御を行う数値制御装置において、外部に接続されたセンサの信号が入力された時点の機械座標を記憶し、該通信処理手段に記憶された複数の機械座標を基に工具の傾斜角度を算出し、工具の傾斜角度を表示するように構成したことにより、工具角度を手動調整する機構の工作機械においても工具の取り付け傾斜角度を自動で算出し、その角度を機械使用者に通知することが可能になる。これにより、この発明によれば、工具を所望の角度に精度良く取り付けることが可能となり、このようにして工具の角度を精度良く調整した旋盤を用いることにより、高精度の傾斜加工を行うことが可能となる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる数値制御装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0011】
実施の形態1.
本実施の形態においては、工具形状計測用のセンサ14を装備した2軸制御の単純旋盤において、図1に示すように傾斜ホルダ11を用いて穴あけ加工ドリル12を刃物台13に取り付けた場合を例に説明する。図1は、本発明の実施の形態1における数値制御装置での工具角度計測の概念を説明するための模式図であり、傾斜ホルダ11を用いて刃物台13に取り付けた穴あけ加工ドリル12とセンサ14との位置関係を示す図である。
【0012】
図1においてA点(Xa、Za)は、穴あけ加工ドリル12の工具傾斜角度測定のための、該穴あけ加工ドリル12におけるセンサ14との第1の接触点である。詳しくは、傾斜ホルダ11を用いて所定の工具角度θで刃物台13に取り付けられ所定の位置に位置決めされた穴あけ加工ドリル12を、その工具角度θを変化させずに移動させて、固定位置にあるセンサ14に接触させた際の、該穴あけ加工ドリル12の工具基準線上(工具基準線については図3を用いて後述する)におけるセンサ14との第1の接触点である。
【0013】
また、図1においてB点(Xb、Zb)は、穴あけ加工ドリル12の工具傾斜角度測定のための、該穴あけ加工ドリル12におけるセンサ14との第2の接触点である。詳しくは、A点(Xa、Za)での接触の後、穴あけ加工ドリル12をその工具角度θを変化させずに移動させてセンサ14から離間させて所定の位置に戻し、その後、その工具角度θを変化させずに該穴あけ加工ドリル12を移動させてセンサ14に再度接触させた際の、該穴あけ加工ドリル12の工具基準線上におけるセンサ14との第2の接触点である。第2の接触点は、上記第1の接触点とは別の箇所である。なお、A点(Xa、Za)の測定の後、穴あけ加工ドリル12は必ずしも所定の位置に戻す必要はない。
【0014】
すなわち、本実施の形態において穴あけ加工ドリル12の工具傾斜角度測定を行うには、工具角度θを変化させずに穴あけ加工ドリル12をセンサ14の方向に移動させて、固定位置にあるセンサ14に接触させた後、工具角度θを変化させずに該穴あけ加工ドリル12を移動させてセンサ14から離間させ、その後、工具角度θを変化させずに該穴あけ加工ドリル12をセンサ14移動させて穴あけ加工ドリル12の別箇所をセンサ14に再度接触させる動作が行われる。
【0015】
図2は、傾斜ホルダ11に穴あけ加工ドリル12を装着した状態を示す図である。本実施の形態にかかる傾斜ホルダ11は、図2における矢印αおよびβの方向に穴あけ加工ドリル12を自由な角度に傾斜させて取り付けることのできるツールホルダである。
【0016】
なお、本実施の形態において刃物台13に取り付けられた工具(穴あけ加工ドリル12)は次のような特徴を有する。すなわち、本実施の形態において刃物台13に取り付けられた工具(穴あけ加工ドリル12)は、傾斜ホルダ11を使用せずに刃物台13に取り付けた場合に、図3に示すように機械の基本軸に対して水平または垂直な辺もしくは面を有するものとする。本明細書においては、前記の辺や面を工具基準線と呼ぶこととする。図3においては、工具基準線の例として、穴あけ加工ドリル12および他の工具であるフェイスミル15について工具基準線を示している。
【0017】
また、この単純旋盤は、数値制御(Numerical Control)装置(以下 NC装置と呼ぶ)により加工動作が制御される。図4は、本実施の形態にかかるNC装置の主要な概略構成を示す構成図である。図4に示すように、本実施の形態にかかるNC装置は、サーボ通信処理部101と、補間処理部106と、工具情報更新処理部110と、表示部117と、記憶部115と、制御部116と、を備えて構成される。
【0018】
サーボ通信処理部101は、ある一定周期(たとえば、5msec周期)で起動され、たとえば図5に示すように補間処理部106が出力した各軸の「単位時間あたりの移動量102」を読み出し、この「単位時間あたりの移動量102」を基に、各サーボ103に対して出力するための移動指令を該「単位時間あたりの移動量102」に応じて生成し、各サーボ103に対して移動指令を出力する。ここで、図5は、本実施の形態にかかるNC装置のデータの流れを説明するための図であり、サーボ通信処理部101、サーボ103、補間処理部106、工具情報更新処理部110に関連するデータの流れを説明するための図である。また、後述する本実施の形態における工具傾斜角度の測定手順において説明する(操作3)により測定モードとなっている間に、後述する本実施の形態における工具傾斜角度の測定手順において説明する(操作5)によってサーボ通信処理部101がセンサ14からの入力信号を検出した場合には、各サーボ103に対しての移動指令を出力を停止し、以下の処理を行う。
【0019】
すなわち、サーボ通信処理部101は、センサ14からの入力信号(センサ入力)があった時点の機械座標(センサの接触した位置における機械座標)を、センサ入力データ部105の「センサ入力座標105b」として記憶し、センサへのアプローチ方向をセンサ入力データ部105の「アプローチ方向bit105c」に記憶し、センサ入力データ部105の「センサ入力ありフラグ105a」をオンにする。
【0020】
補間処理部106は、ある一定周期(たとえば、10msec周期)で起動され、機械I/O処理部(図示せず)が出力した「手動移動速度107」を読出し、前記「手動移動速度107」を基に各軸の「単位時間あたりの移動量102」を算出し、前記サーボ通信処理部101に対して出力する。ここで、機械I/O処理部は、たとえば操作スイッチなどの情報入力手段が該当する。
【0021】
また、補間処理部106は、後述する本実施の形態における工具傾斜角度の測定手順において説明する(操作3)により測定モードとなっている間に、センサ入力データ部105の「センサ入力ありフラグ105a」のオンを検出した場合には、センサ入力データ部105の「センサ入力座標105b」のデータを工具情報更新用データ部108の「読取り座標108b」にコピーし、工具情報更新用データ部108の「データセット完了フラグ108a」をオンにする。
【0022】
また、センサ入力データ部105の「センサ入力ありフラグ105a」がオンの間は、センサ入力データ部105の「アプローチ方向bit105b」の情報を基に、センサ方向への「単位時間あたりの移動量105」は出力しない。
【0023】
また、センサ入力データ部105の「センサ入力ありフラグ105a」がオンの間は、センサ入力データ部105の「アプローチ方向bit105b」の情報を基に、センサ14から逃げる方向への「単位時間あたりの移動量102」を軸毎のセンサからの逃げ量であるデータ「逃げ量109」に累積する。
【0024】
また、いずれかの軸の「逃げ量109」が一定量以上で、かつ工具情報更新用データ部108の「データセット完了フラグ108a」がオフされていることを確認した場合、センサ入力データ部105の「センサ入力ありフラグ105a」をオフする。
【0025】
工具情報更新処理部110は、ある一定周期(たとえば、20msec周期)で起動され、後述する本実施の形態における工具傾斜角度の測定手順において説明する(操作3)により測定モードとなっている間に、工具情報更新用データ部108の「データセット完了フラグ108a」がオンになっていた場合には、工具情報更新用データ部108の「読取り座標108b」を座標データ111の「座標データ[0]」にコピーして、工具情報更新用データ部108の「データセット完了フラグ108a」をオフにする。
【0026】
工具情報更新処理部110は、次回以降の起動時に、工具情報更新用データ部108の「データセット完了フラグ108a」が再びオンになっていた場合には、工具情報更新用データ部108の「読取り座標108b」を座標データ111の「座標データ[1]」にコピーして、工具情報更新用データ部108の「データセット完了フラグ108a」をオフにしてから、座標データ111の「座標データ[0]」と「座標データ[1]」とから工具の傾斜角度を算出し、機械I/O処理部(図示せず)が出力した「選択中工具番号112」を基に、工具情報テーブル113内の選択工具の「工具角度」を更新する。ここで、たとえば工具角度は「水平方向のベクトル」と「2点から決まるベクトル」とのなす角であるので、余弦定理を使って算出する。
【0027】
表示部117は、工具情報更新処理部110において算出した工具の傾斜角度およびその他工具に関する情報を表示してユーザに示す表示手段である。すなわち、表示部117は、例えば図5の工具情報テーブル113の情報を表示する。
【0028】
記憶部115は、上記のサーボ通信処理部101、補間処理部106、および工具情報更新処理部110が使用または算出する各種のデータを記憶する記憶手段である。また、記憶部には、NC装置の制御に使用される各種データやプログラムなども記憶される。
【0029】
記憶部115には、例えばセンサ信号関係のデータを記憶する記憶領域であるセンサ入力データ部105、工具に関する情報の更新に使用するデータを記憶する記憶領域である工具情報更新用データ部108、工具の逃げ方向の軸のみ単位時間あたりの移動量を示す逃げ量109、工具の傾斜角度の算出に用いる工具角度算出用データである座標データ111、選択中の工具の番号を示す選択中工具番号112、工具の傾斜角度を含む工具に関する情報を記憶する領域である工具情報テーブル113、などが記憶される。なお、上述したデータは本発明に関係の深いデータを列挙したものであり、NC装置の制御に関する他のデータも記憶される。制御部116は、NC装置全体の制御を行う制御手段である。
【0030】
次に、本実施の形態にかかる数値制御装置において工具傾斜角度を計測する方法について説明する。まず、本実施の形態における工具傾斜角度の測定手順について説明する。単純旋盤のユーザは、本実施の形態にかかるNC装置により、以下の手順に従って工具傾斜角度の測定を行う。
【0031】
(操作1)ホルダに刻まれた目盛りを見ながら工具角度を手動調整し、固定する。
(操作2)工具形状計測用センサを信号入力準備状態にする。
(操作3)傾斜ホルダ11に取り付けた工具の傾斜角度を測定する「工具角度測定モード」の選択指示をNC装置に入力する。
(操作4)計測したい工具の選択指示を入力する(たとえば、刃物台旋回操作による)。
(操作5)計測したい工具の工具基準線のA点(Xa、Za)を手動操作によりセンサに接触させる。
(操作6)計測したい工具における同工具基準線上の別の箇所のB点(Xb、Zb)を手動操作によりセンサに接触させる。
【0032】
なお、上記の(操作5)および(操作6)はNC装置の制御により自動で行っても構わない。
【0033】
続いて、上記のユーザの操作に基づいて行われる本実施の形態にかかるNC装置の各処理部における工具角度測定処理のフローについて説明する。まず、図5および図6を用いてサーボ通信処理部101の処理フローを説明する。上述したように図5は、本実施の形態にかかるNC装置のデータの流れを説明するための図である。また、図6は、サーボ通信処理部101の処理フローを説明するためのフローチャートである。
【0034】
サーボ通信処理部101は起動されると、補間処理部106から移動指令があるか否かをチェックする(ステップS100)。具体的には、サーボ通信処理部101は補間処理部106から単位時間あたりの移動量102が入力されているかどうかをチェックする。サーボ通信処理部101の起動は周期的に行われ、たとえば、5msec周期で起動される。
【0035】
ここで、移動指令が無い場合、すなわち移動指令が入力されていない場合は(ステップS100否定)、サーボ通信処理部101は、そのまま処理を終了する。一方、移動指令がある場合(ステップS100肯定)、すなわち補間処理部106から単位時間あたりの移動量102が入力されている場合は次ステップへ進み、サーボ通信処理部101は現在のモードが工具角度測定モードであるか否かをチェックする(ステップS101)。
【0036】
現在のモードが工具角度測定モードでない場合は(ステップS101否定)、通常のサーボ通信処理なので、サーボ通信処理部101は単位時間あたりの移動量102に応じた移動指令をサーボへ出力し(ステップS107)、処理を終了する。
【0037】
また、現在のモードが工具角度測定モードである場合は(ステップS101肯定)次ステップへ進み、サーボ通信処理部101は、「センサ信号の入力有り」且つ「センサ入力データ部105のセンサ入力ありフラグ105aがオフ」、の2つの条件を同時に満たすか否かをチェックする(ステップS102)。センサ入力データ部105は、記憶部115内においてセンサ信号関係のデータを記憶する記憶領域である。
【0038】
ここで、センサ信号は、工具がセンサに接触したことを示す信号である。また、2つ目の「センサ入力データ部105のセンサ入力ありフラグ105aがオフ」の条件がある理由は、センサから工具を逃がす際のセンサ信号の入力を無効にするためである。前記の2つの条件を満たさない場合は通常のサーボ通信処理なので、サーボ通信処理部101は、単位時間あたりの移動量102に応じた移動指令をサーボへ出力し(ステップS107)、処理を終了する。
【0039】
また、前記の2つの条件を満たす場合は、センサ信号入力時の情報(機械座標やアプローチ方向)を記憶する。すなわち、サーボ通信処理部101は、センサ入力データ部105を一旦クリアしてから(ステップS103)、サーボ通信の遅れなどを加味してセンサ接触時の機械座標を算出し、その結果をセンサ入力データ部105の「センサ入力座標105b」にセットする(ステップS104)。
【0040】
また、センサ接触時の最終アプローチ方向を、図7に示すようなセンサ入力データ部105の「アプローチ方向bit105b」に軸毎にセットする(ステップS105)。最後に、サーボ通信処理部101は、センサ入力データ部105の「センサ入力ありフラグ105a」をオンにして(ステップS106)、処理を終了する。
【0041】
次に、図8−1および図8−2を用いて補間処理部106の処理フローを説明する。図8−1および図8−2は、補間処理部106の処理フローを説明するためのフローチャートである。補間処理部106は起動されると、工具を手動で移動させた際の移動速度である手動の移動速度107が機械I/O処理部により入力されているか否かをチェックする(ステップS200)。補間処理部106の起動は周期的に行われ、たとえば、10msec周期で起動される。
【0042】
手動の移動速度107がない場合は(ステップS200否定)、補間処理部106は処理を終了し、次に起動されるまで待機する。一方、手動の移動速度107がある場合には(ステップS200肯定)、補間処理部106は、現在のモードが工具角度測定モードであるか否かをチェックする(ステップS201)。
【0043】
現在のモードが工具角度測定モードでない場合は(ステップS201否定)、補間処理部106は、通常の手動移動処理として手動の移動速度107を元に、各軸の単位時間あたりの移動量102を算出する(ステップS212)。そして、補間処理部106は、算出した単位時間あたりの移動量102をサーボ通信処理部101に対して出力して(ステップS213)処理を終了し、次に起動されるまで待機する。
【0044】
また、現在のモードが工具角度測定モードである場合は(ステップS201肯定)次ステップへ進み、補間処理部106は、センサ入力データ部105の「センサ入力ありフラグ105a」の立ち上がりがあるか(オンであるか)否かをチェックする(ステップS202)。
【0045】
ここで、「センサ入力ありフラグ105a」の立ち上がり(オン)を検出した場合には(ステップS202肯定)サーボ通信処理部101がセンサ信号を検出してセンサ入力データ部105を更新したことを意味するので、補間処理部106は工具情報更新用データ部108を更新する準備に進む。そして、補間処理部106は、工具情報更新用データ部108の「データセット完フラグ」がオフであるか否かをチェックする(ステップS203)。
【0046】
このフラグがオフである場合には(ステップS203肯定)、工具情報更新処理部110が以前にセットされた工具情報更新用データ部108を使用済みということを意味しているので、補間処理部106は、センサ入力データ部105を一旦クリアしてから(ステップS204)、新しいセンサ入力データ部105の「センサ入力座標105b」のデータを工具情報更新用データ部108の「読み取り座標」にコピーする(ステップS205)。
【0047】
その後、補間処理部106は、工具情報更新処理部110とのハンドシェーク用に工具情報更新データ部108の「データセット完フラグ」をオンにして(ステップS206)、次ステップであるステップS207に進む。
【0048】
なお、ステップS202において「センサ入力ありフラグ105a」の立ち上がりを検出しなかった場合も(ステップS202否定)、同様にステップS207に進む。また、ステップS203において工具情報更新用データ部108の「データセット完フラグ」がオフしていない場合も(ステップS203否定)、同様にステップS207に進む。
【0049】
続けて、補間処理部106は、センサ入力データ部105の「センサ入力ありフラグ105a」がオンされている否かをチェックする(ステップS207)。ここで、センサ入力データ部105の「センサ入力ありフラグ105a」がオンされていない場合には(ステップS207否定)、補間処理部106は通常の手動移動処理として、手動の移動速度107を元に各軸の単位時間あたりの移動量を算出する(ステップS212)。そして、補間処理部106は、算出した単位時間あたりの移動量102をサーボ通信処理部101に対して出力して(ステップS213)処理を終了し、次に起動されるまで待機する。
【0050】
一方、センサ入力データ部105の「センサ入力ありフラグ105a」がオンされている場合には(ステップS207肯定)、これ以上センサに食い込まないように逃げ方向の軸のみ移動とするために、補間処理部106は、センサ入力データ部105の「アプローチ方向bit105b」を参照して、手動の移動速度107を元に逃げ方向の軸のみ単位時間あたりの移動量を算出する(ステップS208)。また、補間処理部106は、この時の移動量を逃げ量109として累積し、記憶部115に記憶する(ステップS209)。
【0051】
次に、補間処理部106は、逃げ量109の累積値が一定量を超えていて、且つ、工具情報更新用データ部108の「データセット完フラグ」がオフしているかどうかをチェックする(ステップS210)。ここで、ステップS210の条件を満たしている場合には(ステップS210肯定)、工具情報更新処理部110が以前にセットした工具情報更新用データ部108は使用済みなので、補間処理部106は、次のセンサ入力データをサーボ通信処理部101から受け入れるために、センサ入力データ部105の「センサ入力ありフラグ105a」をオフにする(ステップS211)。そして、補間処理部106は、このフロー中に算出した単位時間あたりの移動量102をサーボ通信処理部101に対して出力して(ステップS213)処理を終了し、次に起動されるまで待機する。
【0052】
また、ステップS210の条件を満たしていない場合には(ステップS210否定)、補間処理部106は、このフロー中に算出した単位時間あたりの移動量102をサーボ通信処理部101に対して出力して(ステップS213)処理を終了し、次に起動されるまで待機する。
【0053】
次に、図9−1および図9−2を用いて工具情報更新処理部110の処理フローを説明する。図9−1および図9−2は、工具情報更新処理部110の処理フローを説明する為のフローチャートである。工具情報更新処理部110は起動されると、現在のモードが工具角度測定モードであるか否かをチェックする(ステップS300)。工具情報更新処理部110の起動は周期的に行われ、たとえば、20msec周期で起動される。
【0054】
現在のモードが工具角度測定モードでない場合は(ステップS300否定)、工具情報更新処理部110は、現在の工具番号を記憶部115の工具番号メモ114にセットして(ステップS314)処理を終了し、次に起動されるまで待機する。
【0055】
また、現在のモードが工具角度測定モードである場合は(ステップS300肯定)、工具情報更新処理部110は工具交換がされているか否かを判定する(ステップS301)。この判定は、機械I/O処理部からの選択指示に基づいて現在選択されるとともに、記憶部115に記憶されている工具の番号である「選択中工具番号112」と、前の工具情報更新処理部110の起動周期において記憶部115に記憶した「工具番号メモ114」と、を比較して、相違がある場合に「工具交換がされた」と判定する。
【0056】
そして、工具交換がされたと判定された場合には(ステップS301肯定)、工具情報更新処理部110は記憶部115に記憶済みの「座標データ111」の個数およびこれに対応するデータをクリアして(ステップS302)、ステップS303に進む。また、工具交換されていないと判定された場合には(ステップS301否定)、ステップS302を飛ばしてステップS303に進む。
【0057】
次に、工具情報更新処理部110は、工具情報更新用データ部108の「データセット完フラグ」がオンされているか否かをチェックする(ステップS303)。工具情報更新用データ部108の「データセット完フラグ」がオンされていない場合、すなわちオフの場合には(ステップS303否定)、現在の工具番号を記憶部115の「工具番号メモ114」にセットして(ステップS314)処理を終了し、次に起動されるまで待機する。
【0058】
一方、工具情報更新用データ部108の「データセット完フラグ」がオンされている場合には(ステップS303肯定)、補間処理部106により新しい工具情報更新用データ部108がセットされたことを意味する。
【0059】
次に、新しく測定された座標データ、すなわち補間処理部106により新しく工具情報更新用データ部108の読み取り座標108bにセットされたデータが、工具の角度算出に使用できるか否かのチェックを行う。工具の角度算出には異なる2点の測定箇所が必要なので、ここで行うチェックとは前回測定したデータと新しい測定データとが異なる位置のデータであるか否かを判定することである。前回記憶した座標データは座標データ111のうちのどちらかであるが、これは記憶済みの座標データの個数から判定できる。記憶済みの座標データの個数が偶数である場合には、前回記憶された座標データは座標データ111の座標データ[1]となり、記憶済みの座標データの個数が奇数である場合には、前回記憶された座標データは座標データ111の座標データ[0]となる。
【0060】
そこで、工具情報更新処理部110は、記憶済みの座標データの個数をチェックし、その個数が偶数であるか否かを判定する(ステップS304)。その個数が偶数である場合には、工具情報更新処理部110は、内部変数を「current=0、previous=1」にセットする(ステップS305)。また、その個数が奇数である場合には、内部変数を「current=1、previous=0」にセットする(ステップS306)。
【0061】
次に、工具情報更新処理部110は、工具情報更新用データ部108の「読み取り座標108b」と「座標データ111」の座標データ[previous]とを比較し、差があるか否かを判定する(ステップS307)。ここで、これらに差がない場合には(ステップS307肯定)、補間処理部106によりセットされた工具情報更新データ部108の「読み取り座標108b」は既に記憶済みの位置であり角度算出に使用できないので、工具角度を求める処理を飛ばしてステップS313へ進む。
【0062】
そして、工具情報更新処理部110は、工具情報更新用データ部108の「データセット完フラグ」をオフにする(ステップS313)。最後に、工具情報更新処理部110は、現在の工具番号を工具番号メモ114にセットして(ステップS314)処理を終了し、次に起動されるまで待機する。
【0063】
また、ステップS307に戻って、「読み取り座標108b」と座標データ[previous]とに差がある場合には(ステップS307否定)、工具情報更新用データ部108の「読み取り座標108b」は新しい位置情報なので、工具情報更新処理部110はこれを座標データ[current]にコピーして(ステップS308)、後工程で工具角度計算に使用する。
【0064】
次に、工具情報更新処理部110は、記憶済みの「座標データ111」の個数をインクリメントし(ステップS309)、その記憶個数が2点以上であるか否かをチェックする(ステップS310)。ここで、記憶済みの「座標データ111」の個数が2点未満である場合には、工具角度を求めることができないので、工具角度を求める処理を飛ばしてステップS313へ進む。
【0065】
そして、工具情報更新処理部110は、工具情報更新用データ部108の「データセット完フラグ」をオフにする(ステップS313)。最後に、工具情報更新処理部110は、現在の工具番号を記憶部115の「工具番号メモ114」にセットして(ステップS314)処理を終了し、次に起動されるまで待機する。
【0066】
また、記憶済みの「座標データ111」の個数が2点以上である場合には、記憶している「座標データ111」のデータを元に、取り付けられた工具の傾斜角度を算出し(ステップS311)、記憶部115の「工具情報テーブル113」の対象工具番号(Tn)の工具角度(θn)を更新する(ステップS312)。ここで、たとえば工具角度は「水平方向のベクトル」と「2点から決まるベクトル」とのなす角であるので、余弦定理を使って算出する。次に、工具情報更新用データ部108の「データセット完フラグ」をオフにする(ステップS313)。これにより、次の工具情報更新用データ部108を受け入れ可能となったことを補間処理部106に対して伝えることができる。最後に、現在の工具番号を記憶部115の「工具番号メモ114」にセットし(ステップS314)、先に算出した工具の傾斜角度等を表示部117に表示し(ステップS315)、すなわち、たとえば図5の工具情報テーブル113の情報(工具番号(Tn)、工具角度(θn))を表示部117に表示し、処理を終了する。
【0067】
ユーザは、表示部117に表示された工具の傾斜角度の情報を得ることにより、工具が所望の角度に取り付けられていない場合には、傾斜ホルダに取り付けられた工具の角度調整を再度やり直す。そして、上記と同様にしてNC装置により工具の傾斜角度の情報を得ることにより工具の角度調整を所望の角度に精度良く取り付けることが可能となる。そして、このようにして工具の角度を精度良く調整した旋盤を用いることにより、高精度の傾斜加工を行うことが可能となる。
【0068】
上述したように、本実施の形態にかかるNC装置によれば、傾斜ホルダに取り付けられた工具の傾斜角度の情報を算出して通知するため、工具を所望の角度に精度良く「傾斜ホルダ」に取り付けることが可能となる。そして、このようにして工具の角度を精度良く調整した旋盤を用いることにより、高精度の傾斜加工を行うことが可能となる。これにより、単純旋盤においてでも傾斜面の加工を高精度で行うことができる。そして、特に「プログラム座標回転」機能と組み合わせることにより、傾斜面加工が容易になる。
【0069】
実施の形態2.
上述した実施の形態1においては、接触式のセンサを用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明は上述したような接触式のセンサを用いた実施の形態の他に、非接触式のセンサを使用した形態に適用することも可能である。
【0070】
そして、本発明を非接触式のセンサを使用した形態に適用した場合においても、実施の形態1の場合と同様にセンサ信号入力時の情報(機械座標やアプローチ方向)を用いることにより傾斜ホルダに取り付けられた工具の傾斜角度の情報を算出して通知し、工具を所望の角度に精度良く「傾斜ホルダ」に取り付けることが可能となる。そして、このようにして工具の角度を精度良く調整した旋盤を用いることにより、高精度の傾斜加工を行うことが可能となる。これにより、単純旋盤においてでも傾斜面の加工を高精度で行うことができる。そして、特に「プログラム座標回転」機能と組み合わせることにより、傾斜面加工が容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上のように、本発明にかかる数値制御装置は、取り付ける工具の傾斜角度を手動で調整するタイプの加工機械を制御する数値制御装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる数値制御装置における工具角度計測の概念を説明するための模式図であり、傾斜ホルダを用いて刃物台に取り付けた穴あけ加工ドリルとセンサとの位置関係を示す図である。
【図2】傾斜ホルダに穴あけ加工ドリルを装着した状態を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1における工具基準線を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態1にかかるNC装置の主要な概略構成を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態1にかかるNC装置のデータの流れを説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態1にかかるサーボ通信処理の処理フローを説明するためのフローチャートである。
【図7】センサ入力データ部の「アプローチ方向bit」を説明するための図である。
【図8−1】本発明の実施の形態1にかかる補間処理部の処理フローを説明するためのフローチャートである。
【図8−2】本発明の実施の形態1にかかる補間処理部の処理フローを説明するためのフローチャートである。
【図9−1】本発明の実施の形態1にかかる工具情報更新処理部の処理フローを説明する為のフローチャートである。
【図9−2】本発明の実施の形態1にかかる工具情報更新処理部の処理フローを説明する為のフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
11 傾斜ホルダ
12 加工ドリル
13 刃物台
14 工具形状計測用センサ
101 サーボ通信処理部
102 単位時間あたりの移動量
103 サーボ
104 センサ
105 センサ入力データ部
105a センサ入力ありフラグ
105b センサ入力座標
105c アプローチ方向bit
106 補間処理部
107 手動の移動速度
108 工具情報更新用データ部
108a データセット完了フラグ
108b 読み取り座標
109 逃げ量
110 工具情報更新処理部
111 座標データ部
112 選択中工具番号
113 工具情報テーブル
114 工具番号メモ
115 記憶部
116 制御部
117 表示部
【出願人】 【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【出願日】 平成18年7月25日(2006.7.25)
【代理人】 【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明


【公開番号】 特開2008−23692(P2008−23692A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−202157(P2006−202157)