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【発明の名称】 工作機械
【発明者】 【氏名】石神 隆之

【要約】 【課題】かつぎを小さくし、これにより、加工精度を向上させた工作機械を提供する。

【構成】磁気軸受スピンドルの制御装置は、研削終了時に反砥石側のラジアル磁気軸受14の剛性を低下させてワークから工具に作用する復元力に応じて回転軸の反砥石側部分をラジアル方向に移動しやすくする復元力低減手段を有している。この結果、研削終了時において生じているかつぎは、回転軸が傾くことによって吸収される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング、ケーシング内に配置された回転軸、および回転軸を支持する複数の軸受を有するスピンドル装置を備えている工作機械において、
スピンドル装置は、回転軸を工具に近い側の位置においてラジアル方向に非接触支持しかつ剛性が制御可能な工具側ラジアル軸受と、回転軸を工具から遠い側の位置においてラジアル方向に非接触支持しかつ剛性が制御可能な反工具側ラジアル軸受と、各ラジアル軸受を制御する制御装置とを備えており、制御装置は、ワークと工具との間に作用する力を減少させる方向に回転軸の反工具側部分を移動しやすくするための復元力低減手段を有していることを特徴とする工作機械。
【請求項2】
各ラジアル軸受は、制御型磁気軸受である請求項1の工作機械。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、内面研削盤などの工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
内面研削盤は、図3に示すように、回転軸(41)の先端にクイル(42)を介して取り付けられた円筒状研削砥石(43)を有しており、この砥石(43)の外周面がワーク(W)の内周面に当てられて研削が行われる。すなわち、砥石(43)は、回転軸(41)に片持ち支持された状態でワーク(W)に当てられ、この結果、ワーク(W)から軸方向に対して直交する方向の力を受ける。内面研削盤では、その片持ち支持という特性上、研削精度が悪化するかつぎ(研削抵抗により研削中にクイル(42)が回転中心軸に対して曲がり、研削後に砥石(43)をワーク(W)から離そうとした際、クイル(42)の曲げが復元力で元に戻ることによりワーク(W)を削る現象)の問題が発生する。
【0003】
研削抵抗によるクイルの曲がりに対処する研削盤として、特許文献1には、砥石の前進端と後進端とにおける研削力の差からワークの円筒度を測定する円筒度測定手段と、円筒度測定結果に基づいて砥石が取り付けられた回転軸をワークに対して傾斜させる傾斜手段とを備えたものが提案されている。
【特許文献1】特開平5−16068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のものは、かつぎの大きさ自体を小さくするものではなく、また、円筒度を実用的に精度よく求めることが困難であるため、かつぎに伴う精度の悪化を十分に解消することができないという問題があった。
【0005】
この発明の目的は、かつぎを小さくし、これにより、加工精度を向上させた工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による工作機械は、ケーシング、ケーシング内に配置された回転軸、および回転軸を支持する複数の軸受を有するスピンドル装置を備えている工作機械において、スピンドル装置は、回転軸を工具に近い側の位置においてラジアル方向に非接触支持しかつ剛性が制御可能な工具側ラジアル軸受と、回転軸を工具から遠い側の位置においてラジアル方向に非接触支持しかつ剛性が制御可能な反工具側ラジアル軸受と、各ラジアル軸受を制御する制御装置とを備えており、制御装置は、ワークと工具との間に作用する力を減少させる方向に回転軸の反工具側部分を移動しやすくするための復元力低減手段を有していることを特徴とするものである。
【0007】
工作機械は、たとえば内面研削盤などのように、回転駆動される回転軸の先端に砥石(またはその他の工具)が取り付けられたスピンドル装置を備えたものとされる。工作機械は、内面研削盤以外の研削装置や切削装置とすることもできる。
【0008】
スピンドル装置は、例えば、ケーシング、ケーシング内に水平または垂直に配置された回転軸、回転軸を非接触支持する1つの制御型アキシアル磁気軸受および前後または上下の2つの制御型ラジアル磁気軸受、ならびに、回転軸のアキシアル方向の位置を検出するための1つのアキシアル変位センサおよび回転軸のラジアル方向の位置を検出するための前後または上下の2つのラジアル変位センサを備えているものとされる。ここで、各磁気軸受および各変位センサは、公知のものであり、通常、各ラジアル磁気軸受は、X軸方向磁気軸受およびY軸方向磁気軸受からなるものとされ、各ラジアル変位センサは、X軸方向変位センサおよびY軸方向変位センサからなるものとされる。
【0009】
砥石は、例えば、クイルに設けられためねじ部に止めネジをねじ込むことでクイルに着脱自在に取り付けられる。クイルは、例えば、おねじ部やテーパ部を有しているものとされ、回転軸の先端に設けられためねじ部またはテーパ孔部にねじ込みまたは嵌め合わせられることによって、回転軸に着脱自在に取り付けられる。
【0010】
復元力低減のための制御は、加工終了時に行われ、加工量または加工残量がインプロセスゲージなどの検出装置によって検出される。加工量または加工残量は、ワーク保持台をスピンドル装置に対して相対的に移動させて工具にワークに対する切込み動作を行わせるワーク保持台移動手段の移動量すなわち切込み量から求めることもでき、加工量または加工残量検出装置は、種々の構成とすることができる。
【0011】
スピンドル装置の軸受装置を構成するラジアル軸受は、その剛性が制御可能なものであれば、磁気軸受に限られるものではなく、磁気軸受に代えて、静圧軸受を使用することもできる。
【0012】
加工(例えば研削)中は、工具側ラジアル軸受および反工具側ラジアル軸受が制御装置によって制御されることで、回転軸は、工具側ラジアル軸受および反工具側ラジアル軸受によって、所定位置に非接触支持される。そして、加工終了時には、制御装置は、例えば、反工具側のラジアル軸受の剛性を低下させることにより、砥石がワークから受ける力に応じて回転軸を傾斜させる制御を行い、これにより、ワークと工具との間に作用する力が減少させられる。この結果、砥石のクイルの曲がりによる復元力は小さくなり、かつぎに伴う加工精度低下が抑えられる。反工具側のラジアル軸受の剛性を低下させる制御に代えて、ワークと工具との間に作用する力が減少するように、反工具側のラジアル軸受によって回転軸を位置制御するようにしてもよい。
【0013】
磁気軸受を使用する場合の磁気軸受制御装置は、各制御軸(X軸およびY軸)の電磁石制御信号出力手段、電磁石駆動手段などを有しており、電磁石制御信号出力手段は、各制御軸の1対の電磁石に対する励磁電流信号を出力し、電磁石駆動手段は、該1対の電磁石に対して、励磁電流信号に比例する励磁電流を供給する。各電磁石に対する励磁電流信号は、定常電流信号と制御電流信号を合わせたものであり、各電磁石に供給する励磁電流は、定常電流と制御電流を合わせたものである。定常電流(および定常電流信号)は、回転軸の該制御軸方向の位置にかかわらず、一定の値である。制御電流(および制御電流信号)は、回転軸の該制御軸方向の位置によって変化する。各制御軸の1対の電磁石について、制御電流(および制御電流信号)の絶対値は互いに等しく、その符号は互いに逆である。
【発明の効果】
【0014】
この発明の工作機械によると、復元力低減手段により、ワークと工具との間に作用する力を減少させる方向に回転軸の反工具側部分を移動しやすくすることにより、回転軸が復元力を小さくする方向に傾斜し、これにより、かつぎが小さくなって、加工精度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、この発明による工作機械を示している。
【0017】
この工作機械は、内面研削用であり、ワーク(W)の内面を研削する砥石(工具)(2)が取り付けられた磁気軸受スピンドル(1)と、内面が被研削面であるワーク(W)を保持して回転させるワーク保持台(3)と、磁気軸受スピンドル(1)を軸方向に移動させるスピンドル移動手段(図示略)と、ワーク保持台(3)を磁気軸受スピンドル(1)に対して相対的に移動させて砥石(2)にワーク(W)に対する切込み動作を行わせるワーク保持台移動手段(図示略)と、ワーク(W)の研削残量を検出するインプロセスゲージなどの加工残量検出装置(4)とを備えている。
【0018】
磁気軸受スピンドル(2)は、鉛直円筒状のケーシング(10)の内側で鉛直軸状の回転軸(11)が回転する縦型のものである。以下の説明において、回転軸(11)の鉛直な軸方向(アキシアル方向)の制御軸(アキシアル制御軸)をZ軸、Z軸と直交するとともに互いに直交する2つの水平な径方向(ラジアル方向)の制御軸(ラジアル制御軸)をX軸およびY軸とする。
【0019】
砥石(2)は、クイル(12)を介して回転軸(11)に支持されている。
【0020】
磁気軸受スピンドル(2)の機械本体部分には、回転軸(11)を軸方向に非接触支持する1組の制御型アキシアル磁気軸受(13)、回転軸(11)を径方向に非接触支持する上下2組の制御型ラジアル磁気軸受(14)(15)、回転軸(11)のアキシアル方向の変位を検出するための1個のアキシアル変位センサ(16)と、回転軸(11)のラジアル方向の変位を検出するための前後2組のラジアル変位センサ(17)(18)と、回転軸(11)を高速回転させるためのビルトイン型電動モータ(19)、ならびに回転軸(11)の軸方向および径方向の可動範囲を規制して回転軸(11)を磁気軸受(13)(14)(15)で支持していないときに回転軸(11)を機械的に支持する上下2組のタッチダウン用の保護軸受(20)(21)が設けられている。
【0021】
磁気軸受スピンドル(2)のコントローラ部分には、センサ回路(22)、AD変換器(23)、DSP(ディジタル信号処理プロセッサ)(24)、DA変換器(25)、電磁石駆動回路(26)およびインバータ(27)が設けられている。
【0022】
アキシアル磁気軸受(13)は、回転軸(11)の下部に一体に形成されたフランジ部(12a)をZ軸方向の両側から挟むように配置された1対のアキシアル電磁石(13a)(13b)を備えている。
【0023】
アキシアル変位センサ(16)は、回転軸(11)の下端面にZ軸方向の下側から対向するように配置され、回転軸(11)の下端面との距離(空隙)に比例する距離信号を出力する。
【0024】
2組のラジアル磁気軸受(14)(15)は、回転軸(11)の上下端部近傍に配置されており、上側のラジアル磁気軸受(14)とアキシアル磁気軸受(13)との間にモータ(19)が配置されている。各ラジアル磁気軸受(14)は、回転軸(11)をX軸方向の両側からおよびY軸方向の両側から挟むように配置された2対のラジアル電磁石(14a)(15a)を備えている。
【0025】
上側のラジアル変位センサ(17)は、上側のラジアル磁気軸受(14)の近傍上方に配置されており、下側のラジアル変位センサ(18)は、下側のラジアル磁気軸受(7)の近傍下方に配置されており、各ラジアル変位センサ(17)(18)は、回転軸(11)の外周面との距離に比例する距離信号を出力する。
【0026】
保護軸受(20)(21)はアンギュラ玉軸受などの転がり軸受よりなり、各保護軸受(20)(21)の外輪がケーシング(10)に固定され、内輪が回転軸(11)の周囲に所定の隙間をあけて配置されている。2組の保護軸受(20)(21)はいずれも径方向の支持が可能なものであり、少なくとも1組は軸方向の支持も可能なものである。運転停止あるいは停電などによって磁気軸受(13)(14)(15)が作動していない状態では、回転軸(11)は保護軸受(20)(21)に支持される。
【0027】
センサ回路(22)は、各変位センサ(16)(17)(18)を駆動し、各変位センサ(16)(17)(18)の出力に基づいて、回転軸(11)の軸方向の変位、ならびに上下のラジアル変位センサ(17)(18)の部分におけるX軸方向およびY軸方向の変位を演算し、その演算結果である変位信号をAD変換器(23)を介してDSP(24)に出力する。
【0028】
DSP(24)は、AD変換器(20)から入力する変位信号に基づいて、各磁気軸受(13)(14)(15)の各電磁石(13a)(13b)(14a)(15a)に対する制御電流値を求め、一定の定常電流値に制御電流値を加えた励磁電流信号をDA変換器(25)を介して電磁石駆動回路(26)に出力する。そして、駆動回路(26)は、DSP(24)からの励磁電流信号に基づく励磁電流を対応する各磁気軸受(13)(14)(15)の各電磁石(13a)(13b)(14a)(15a)に供給し、これにより、回転軸(11)が所定の目標位置に非接触される。DSP(24)は、また、モータ(19)に対する回転数指令信号をインバータ(27)に出力し、インバータ(27)は、この信号に基づいて、モータ(19)の回転数を制御する。そして、その結果、回転軸(11)が、磁気軸受(13)(14)(15)により目標位置に非接触支持された状態で、モータ(19)により高速回転させられる。
【0029】
DSP(24)には、加工残量検出装置(5)から研削残量が入力されており、DSP(24)は、加工残量検出装置(5)によって得られた研削残量が0でない場合に、上記のように回転軸(11)を目標位置に浮上させる通常制御を行い、加工残量検出装置(5)によって得られた研削残量が0になった場合すなわち研削終了時には、復元力低減制御を行う。
【0030】
復元力低減制御は、研削終了時に上側(反砥石側)のラジアル磁気軸受(14)の剛性を低下させてワーク(W)と砥石(2)との間に作用する力を減少させる方向に回転軸(11)の上側(反工具側)部分を移動しやすくするもので、上下ラジアル磁気軸受(14)(15)の電磁石(14a)(15a)のばね定数が通常制御時において、いずれもkであるとして、研削終了時には、上側すなわち反砥石側のラジアル磁気軸受(14)の電磁石(14a)のばね定数がk’(k>k’)に低下させられる。下側すなわち砥石側のラジアル磁気軸受(15)については、回転軸(11)の中心位置を変化させないように制御される。
【0031】
この結果、通常制御では、回転軸(11)は、上下のラジアル磁気軸受(14)(15)によって、所定位置に非接触支持される。砥石(2)は、クイル(12)を介して回転軸(11)に片持ち支持された状態でワーク(W)に当てられ、この結果、ワーク(W)から軸方向に対して直交する方向の力を受け、研削中のクイル(12)は、図2(a)に示すように、回転中心軸に対して曲げられた状態となっている。したがって、このままの状態で研削を終了すると、クイル(12)の曲げが復元力で元に戻ることにより、ワーク(W)を削ることになる。
【0032】
復元力低減制御を行った場合、図2(b)に示すように、回転軸(11)は、下側(砥石側)のラジアル磁気軸受(15)に支持されるとともに、上側(反砥石側)のラジアル磁気軸受(14)の剛性が低下させられることで、同図に矢印で示すように、下側(砥石側)のラジアル磁気軸受(15)に支持されている位置を中心として、その中心軸をわずかに傾斜させる。すなわち、クイル(12)に作用していた研削抵抗による曲げモーメントは、クイル(12)および回転軸(11)を含めた回転体全体に働き、クイル(12)の曲がりによる復元力が小さくなる。こうして、かつぎ(クイル(12)の曲げが復元力で元に戻ることによりワーク(W)を削る現象)が小さくなり、かつぎに伴う加工精度低下が抑えられる。
【0033】
なお、上記において、復元力低減手段は、研削終了時に上側(反砥石)側のラジアル磁気軸受(14)の剛性を低下させるものとしたが、これに限られるものではなく、上側(反砥石)側のラジアル磁気軸受(14)によって、回転軸(11)の反砥石側部分が図2(b)に示すように移動するような位置制御を行うようにしてもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、回転軸(1)を垂直軸として示しているが、回転軸は水平軸であってもよい。
【0035】
また、スピンドル装置は、磁気軸受スピンドルとしたが、上記の説明から分かるように、ラジアル方向の剛性を制御できるものであれば、磁気軸受に限られるものではなく、スピンドル装置の軸受は、磁気軸受(14)(15)(16)に代えて静圧軸受を使用し、回転軸(11)を非接触支持する1組のアキシアル静圧軸受と、回転軸(11)を砥石(3)に近い側の位置においてラジアル方向に非接触支持する砥石側ラジアル静圧軸受と、回転軸(11)を砥石(3)から遠い側の位置においてラジアル方向に非接触支持する反砥石側ラジアル静圧軸受と、各静圧軸受を制御する制御装置とからなるものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、この発明による工作機械の実施形態を示す主要部の概略構成図である。
【図2】図2は、この発明による工作機械の剛性の制御の様子を模式的に示す図である。
【図3】図3は、この発明による工作機械の剛性の制御の様子を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0037】
(2) スピンドル装置
(3) 砥石(工具)
(10) ケーシング
(11) 回転軸
(13) 軸受装置
(14) 反砥石(反工具)側ラジアル軸受
(15) 砥石側(工具側)ラジアル軸受
【出願人】 【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
【出願日】 平成18年7月25日(2006.7.25)
【代理人】 【識別番号】100083149
【弁理士】
【氏名又は名称】日比 紀彦

【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助

【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 彰

【識別番号】100069338
【弁理士】
【氏名又は名称】清末 康子


【公開番号】 特開2008−23682(P2008−23682A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−201518(P2006−201518)