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【発明の名称】 工作機械
【発明者】 【氏名】新家一朗

【氏名】川田秀一

【氏名】長谷川太郎

【要約】 【課題】熱媒体の制御目標温度に対する温度変動を緩衝させることにより構造体の熱変位を低減し加工精度の向上を図る。

【構成】構造体として、基部をなすベース2と、ベース2に立設されたコラム3と、コラム3に設けられ、ワークWを加工する工具電極Eを装着する加工ヘッド4と、ワークWを配置するワーク保持ユニット5と、を有する放電加工装置1において、冷却媒体を流通させる流路21cを含み、ベースおよびコラムの外周面に装着された熱交換プレート20と、冷却媒体の温度を制御目標温度に制御する冷却媒体温度制御装置50と、を備え、熱交換プレート20は、冷却媒体を流通させる流路21cとベースおよびコラムの外周面との間に熱伝導緩衝板22を介在させた構成を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体として、基部をなすベースと、前記ベースに立設されたコラムと、前記コラムに設けられ、ワークを加工する工具を装着する加工ヘッドと、前記ワークを配置するワーク保持ユニットと、を有する工作機械において、
熱媒体を流通させる流路を含み、前記ベースおよび前記コラムの少なくともいずれか一方の外周面に装着された熱交換プレートと、
前記熱媒体の温度を制御目標温度に制御する熱媒体温度制御手段と、を備え、
前記熱交換プレートは、前記熱媒体を流通させる流路と前記ベースおよび前記コラムの少なくともいずれか一方の外周面との間に熱伝導緩衝体を介在させた構成を含むことを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記熱媒体の温度を、前記熱媒体温度制御手段により前記制御目標温度に対して一定の温度変動幅以内に、かつ、一定の温度変動周期以内に制御するとともに、前記温度変動幅を、前記熱伝導緩衝体により目標規制幅以内に緩衝させて前記ベースおよび前記コラムの少なくともいずれか一方に伝達する場合において、
前記熱媒体の温度変動パターンを、前記制御目標温度と、前記温度変動幅の最大幅と、前記温度変動周期の最長周期と、前記熱媒体温度制御手段による熱媒体の温度制御時間と、をパラメータとした演算式として特定し、
前記熱伝導緩衝体の厚みを、前記制御目標温度と、前記温度変動幅の最大幅と、前記温度変動周期の最長周期と、前記温度制御時間と、前記目標規制幅と、前記熱伝導緩衝体の熱伝導率と、前記熱伝導緩衝体の比熱と、前記熱伝導緩衝体の密度と、に基づいて前記特定された熱媒体の温度変動パターンの演算式およびフーリエの法則を用いた解析により設定することを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記熱伝導緩衝体は塩化ビニル系の材料で構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の制御目標温度に制御された熱媒体により構造体に生ずる熱変位を低減することができる構成を備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工作機械による加工においては数十ナノメートルオーダーの超精密加工を要求される場合も多く、工作機械を設置する加工室内の温度変化や構造体への作業者の接触等による予期せぬ温度変位(熱変位)を低減して、工具とワークとの間の相対的な位置関係を一定に保持することが必要とされており、例えば、特許文献1には、熱変位を低減する構成を備えた工作機械が開示されている。
【0003】
すなわち、同文献1の工作機械によれば、ベッド(ベース)とコラムの外周面に断熱材(熱伝導緩衝体)を貼付しており、この断熱材により周囲の空調環境等による温度変化がベッドやコラムに伝わることを規制する構成を採用していた。しかしながら、同文献1の断熱構造においては加熱手段や冷却手段等の自らが温度を制御する手段は備えておらず、周囲環境の変化による僅かな温度変化は規制できても、例えば、温度変化が短時間でもその変化幅が許容限度を超えた大きいものである場合には、結局変化後の温度がベッドやコラムに伝わり熱変位を生じさせる恐れがあった。
【0004】
そこで、このような問題を解決すべく、特許文献2に示す工作機械が開示されている。すなわち、同文献2の工作機械によれば、工具を備えたコラム部とワークを保持する保持部に熱交換オイル(熱媒体)を流通させた冷却プレートを設けて自らが温度を制御する手段を備え、周囲の温度環境に変化が生じてもコラム部や保持部の温度を一定に保持することを可能にしている。この冷却プレートとコラム部および保持部との間には伝熱性の充填剤(伝熱セメント)が介装されており、この充填剤を介して熱の伝達が積極的に促進されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−300122号公報
【特許文献2】特開2005−262379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した特許文献2の工作機械においては、熱媒体自体に温度変動があると、この変動が構造体に伝達されて該構造体に予期せぬ温度変位(熱変位)を生じさせることがある。すなわち、熱媒体は、一般に一定の制御目標温度に設定されて供給されるものの、通常は制御目標温度に対して一定の温度変動幅を許容して制御されており0.1K程度の変動が許容される場合も少なくない。
【0007】
特に上述した工作機械にあっては、冷却プレートとコラム部および保持部との間には積極的に熱の伝達を促進すべく伝熱性の充填剤が介装されており、熱媒体自体の温度変動が構造体に速やかに伝わり構造体に熱変位が生じて工具とワークとの間の相対的な位置関係が変動し、その結果、加工精度に甚大な影響を与える恐れがある。
【0008】
このような問題に対し、例えば熱媒体の温度変動に寄与する各種因子を予め想定して制御回路を構築し熱媒体の温度制御を厳密に行うことも考えられるが、偶発的な温度変動やコラム部等への温度変動の伝達遅れ等想定されるあらゆる因子を考慮して制御回路を構築することは極めて困難であるばかりか、制御回路が複雑になって製作期間が長期化する等、工作機械の製作コストの増大も招く恐れがある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、熱媒体の制御目標温度に対する温度変動を緩衝させることにより構造体の熱変位を低減し加工精度を向上させることができる工作機械の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、構造体として、基部をなすベースと、ベースに立設されたコラムと、コラムに設けられ、ワークを加工する工具を装着する加工ヘッドと、ワークを配置するワーク保持ユニットと、を有する工作機械において、熱媒体を流通させる流路を含み、ベースおよびコラムの少なくともいずれか一方の外周面に装着された熱交換プレートと、熱媒体の温度を制御目標温度に制御する熱媒体温度制御手段と、を備え、熱交換プレートは、熱媒体を流通させる流路とベースおよびコラムの少なくともいずれか一方の外周面との間に熱伝導緩衝体を介在させた構成を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、熱媒体の温度を制御目標温度に制御する熱媒体温度制御手段を備えることとしたので、周囲環境の温度変化幅が大きい場合にあっても、工作機械のベースおよびコラムの少なくともいずれか一方の温度を一定に保持することができ、更に、熱交換プレートは、熱媒体を流通させる流路とベースおよびコラムの少なくともいずれか一方の外周面との間に熱伝導緩衝体を介在させた構成を含むこととしたので、熱媒体の温度が制御目標温度に対して変動する場合にあっても、熱伝導緩衝体の作用により熱媒体の温度変動を緩衝させてベースおよびコラムの少なくともいずれか一方に伝達することができる。
【0012】
熱媒体の温度を、熱媒体温度制御手段により制御目標温度に対して一定の温度変動幅以内に、かつ、一定の温度変動周期以内に制御するとともに、温度変動幅を、熱伝導緩衝体により目標規制幅以内に緩衝させてベースおよびコラムの少なくともいずれか一方に伝達する場合において、熱媒体の温度変動パターンを、制御目標温度と、温度変動幅の最大幅と、温度変動周期の最長周期と、熱媒体温度制御手段による熱媒体の温度制御時間と、をパラメータとした演算式として特定し、熱伝導緩衝体の厚みを、制御目標温度と、温度変動幅の最大幅と、温度変動周期の最長周期と、温度制御時間と、目標規制幅と、熱伝導緩衝体の熱伝導率と、熱伝導緩衝体の比熱と、熱伝導緩衝体の密度と、に基づいて特定された熱媒体の温度変動パターンの演算式およびフーリエの法則を用いた解析により設定することとすれば、熱媒体温度制御手段の性能や熱伝導緩衝体の材質に応じて、熱媒体の温度変動に対する所期の目標規制幅以内となるように容易に熱伝導緩衝体の厚みを設定することができる。なお、温度変動パターンは温度変動幅の最大幅および温度変動周期の最長周期に基づいて設定されるため、熱伝導緩衝体の厚みを安全側で設定することができる。(請求項2)。
【0013】
また、熱伝導緩衝体は塩化ビニル系の材料で構成されることとすれば、塩化ビニル系材料の相対的に低い熱伝導率が作用して熱伝導緩衝体の厚みを小さく設定しつつ熱媒体の温度変動を所望の範囲に緩衝させることができるので、工作機械の軽量化・コンパクト化に寄与することができる(請求項3)。
【0014】
なお、工作機械の構造体は内部に発熱体を有し、発熱体と対向する構造体の内面に更に熱交換プレートを装着することとすれば、構造体の内部にモータ等の発熱体を有する場合にあっても、構造体の内面に装着した熱交換プレートが作用して、発熱体の発熱が構造体に伝達することを防止し、かつ、熱媒体の温度変動をも緩衝させることができる。
【0015】
また、ベース、コラム、および加工ヘッドの外周面と一定の間隔を置いて、該外周面を覆うカバーを設けるとともに、工作機械をチャンバー内に収納し、外周面とカバーとの間およびチャンバー内に一定の温度に設定された空気を供給することとすれば、工作機械の温度の一定性が更に担保される。
【0016】
更にまた、ワークと工具との相対位置関係を変更する送り手段を有し、該送り手段の送り静圧軸受部に一定の温度に設定された空気を供給することとすればより好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、熱媒体の制御目標温度に対する温度変動を緩衝させることにより構造体の熱変位を低減し工作機械の加工精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の第1実施形態を示す放電加工装置(工作機械)の概略を示す構成図である。同図を参照して放電加工装置の概要を説明すると、放電加工装置1は、該装置1の基部をなすベース2、ベース2の上面後部に立設され、その上部で傾斜面を含みつつ略90°屈曲して前方に僅かに延出するコラム3、コラム3の延出部3aの前面に装着されるとともに、下方に延出し、放電加工装置1の略中間位置で工具電極E(工具)を装着する加工ヘッド4、ベース2の上面前部に備えられ、工具電極Eと対向するようにワークWを配置するワーク保持ユニット5、ワークWを加工液に浸漬する加工槽6、ワーク保持ユニット5および加工槽6を載置するワークテーブル7等の各構造体を有している。
【0019】
ベース2、コラム3、および加工ヘッド4の周囲にはこれらベース2等の外周面と一定の間隔を置いてカバー8が設けられている。そして、ベース2およびコラム3の外周面とカバー8との間に形成される空間内であって、ベース2およびコラム3の外周面(以下、単にコラム3等とする)には後に詳述する熱交換プレート20が装着されている。なお、放電加工装置1全体はチャンバー9内に収納されている。
【0020】
加工ヘッド4の内部にはZ軸モータ10zが、ワークテーブル7の内部にはX軸モータ10xおよびY軸モータ10yが収納されており、これら各軸モータ10x〜10z(送り手段)を制御することにより工具電極EとワークWとの相対位置関係を適宜に設定することができる。
【0021】
チャンバー9の外部には空気温度制御装置30を併設した空気供給ユニット40と冷却媒体温度制御装置(熱媒体温度制御手段)50を併設した冷却媒体供給ユニット60とが備えられている。すなわち、空気温度制御装置30および空気供給ユニット40により一定の温度に設定された空気がカバー8とベース2、コラム3、および加工ヘッド4の外周面との間に形成される空間、チャンバー9内、更には図示せぬX軸、Y軸、Z軸の各送り静圧軸受部に連続的に供給されており、放電加工装置1が外部の温度環境の影響を受けず一定の温度に保持されるように構成されている。
【0022】
そして、冷却媒体温度制御装置50および冷却媒体供給ユニット60により一定の制御目標温度に制御された冷却媒体(熱媒体)が熱交換プレート20に連続的に供給されることにより、チャンバー9内に外気が流入したり、メンテナンス作業等において作業者がカバー8に接触等した場合にあっても、放電加工装置1の温度の一定性が更に担保されるように構成されている。なお、各軸モータ10x、10y、10zには図示せぬ冷却管が巻き付けられており、この冷却管にも冷却媒体温度制御装置50および冷却媒体供給ユニット60により一定の制御目標温度に制御された冷却媒体が供給されるので各軸モータ10x、10y、10zの温度が一定に保持される。
【0023】
熱交換プレート20は、図2および図3にその詳細構造を示すように、管部材21と熱伝導緩衝板(熱伝導緩衝体)22とから構成されている。
管部材21は、複数の直管部21aと隣接する直管部21aの一端部間を結ぶ曲管部21bとからなる蛇行形状をなしており、この管部材21は、その内部に断面円状の中空部を有している。この中空部は冷却媒体を流通させる流路21cとして機能する。なお、冷却媒体には、例えば油、水、空気等を採用することができる。
【0024】
熱伝導緩衝板22は平板状に形成されている。この熱伝導緩衝板22の表面側22aは管部材21の取り付け面として機能するとともに、裏面側22bはコラム3等の冷却面として機能し、熱伝導緩衝板22は冷却媒体の流路21cとコラム3等との間に介在するようにコラム3等に装着されている。
【0025】
すなわち、熱伝導緩衝板22の表面側22aには配管取付具22cが設けられており、この配管取付具22cにより管部材21をその表面側22aに取り付け可能となっている。熱伝導緩衝板22の裏面側22bはコラム3等と接触しており、この裏面側22bを介して管部材21の流路21cを流通する冷却媒体とコラム3等との間で熱交換が行われる構成となっている。
【0026】
したがって、周囲の温度環境に変化が生じても熱交換プレート20が作用してこの温度変化を緩衝させ、コラム3等の温度を一定に保持することができ、更に、熱交換プレート20は、冷却媒体を流通させる流路21cとコラム3等との間に熱伝導緩衝板22を介在した構成を含むこととしたので、冷却媒体の温度が制御目標温度に対して変動する場合にあっても、この温度変動を緩衝してコラム3等に伝達することができる。なお、熱伝導緩衝板22は接着剤やボルト等の締結具によりコラム3等に装着されている。
【0027】
この熱伝導緩衝板22の構成材料としては、相対的に熱伝導率の小さいプラスチック系の材料、より詳しくは、ポリ塩化ビニルやポリエチレン等の汎用プラスチック類、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド等のエンジニアリング・プラスチック類が好ましく、特に、ポリ塩化ビニル(塩化ビニル樹脂)に代表される塩化ビニル系の材料については安価かつ容易に調達できるのでより好ましい。なお、セラミックス系や鉄系材料等のように相対的に熱伝導率の高い材料であっても、熱伝導緩衝板22の厚みを適宜に設定することにより冷却媒体の温度変動を所望の範囲に緩衝させることできる様々な材料を採用することができる。
【0028】
冷却媒体温度制御装置50は、図4に示すように、制御目標温度入力部51と、冷却媒体温度比較部52と、冷却媒体温度指令出力部53と、を有している。すなわち、図5に示すように、これら各部が相互に機能して、冷却媒体の温度を制御目標温度に対して一定の温度変動幅以内に、かつ、一定の温度変動周期以内に制御しており、本実施形態においては、冷却媒体温度制御装置50は、制御目標温度を296.15K(23℃)に設定した場合、温度変動幅を0.1K以内、かつ、温度変動周期を1s以内として冷却媒体の温度を制御する能力を有している。
【0029】
制御目標温度入力部51には、キーボード操作、ボリューム操作またはタッチパネル操作等により冷却媒体の制御目標温度が入力されるとともに、この入力された制御目標温度を冷却媒体温度比較部52に出力する機能を有している。
冷却媒体温度比較部52には、制御目標温度入力部51から制御目標温度が入力されるとともに、冷却媒体の供給経路上に設けられた温度検出器52aから冷却媒体の温度が入力され、冷却媒体温度比較部52はこれら温度の差を演算するとともに、この温度差を制御目標温度とともに冷却媒体温度指令出力部53に出力する機能を有している。
【0030】
冷却媒体温度指令出力部53には、冷却媒体温度比較部52から制御目標温度および制御目標温度と検出された冷却媒体の温度との差が入力されるとともに、これら制御目標温度および温度差に基づいて冷却媒体供給ユニット60に制御信号を出力する機能を有している。
【0031】
次に、冷却媒体の温度変動を所期の目標規制幅以内に緩衝してコラム3等に伝達すべく、熱伝導緩衝板22の厚み設定方法について説明する。
すなわち、熱伝導緩衝板22の厚みは、制御目標温度と、温度変動幅の最大幅と、温度変動周期の最長周期と、冷却媒体温度制御装置50による冷却媒体の温度制御時間と、熱伝導緩衝板22の作用による冷却媒体の温度変動に対する目標規制幅と、熱伝導緩衝板22の熱伝導率と、熱伝導緩衝板22の比熱と、熱伝導緩衝板22の密度と、に基づいて冷却媒体の温度変動パターンの演算式およびフーリエの法則を用いた解析により設定することができる。
【0032】
より具体的には、熱伝導緩衝板22の厚みは、冷却媒体の温度が制御目標温度に対して変動していることより非定常熱伝導として計算され、フーリエの法則から以下の数式のような前進差分形差分式により計算し設定することができる。
【0033】
図6(a)乃至図6(d)に示すように、管部材21とコラム3等との間に介在した熱伝導緩衝板22を熱伝達方向にN分割した直方体形の要素として考える(管部材21に最も近い要素番号を0、以下要素番号を1、…、n−1、n、n+1、…とし、コラム3等に最も近い要素番号をN−1とする)。このとき、各要素の熱の出入りは図6(b)〜(d)に示すようになる。各要素の幅をa,互いに接触している面の面積をA、ある要素nの温度をTn,要素nの図示左側の要素n−1の温度をTn−1,同右側の要素n+1をTn+1とする。時間Δt(以下、計算単位時間とする)の間に要素nに入る熱量Δqは熱伝導率をkとして、左側から入る熱量
【数1】


と右側から入る熱量
【数2】


の和であり、
【数3】


となる。
この熱量Δqを受けとることにより要素nの温度TはT+ΔTに変化し、この変化分ΔTは、熱伝導緩衝板22の比熱をcp、密度をρとして数4に示す熱容量C
【数4】


に反比例し、
【数5】


となるため数3乃至数5より
【数6】


となる。
【0034】
すなわち、冷却媒体温度制御装置50による冷却媒体の温度制御時間tでの要素nの温度を、あらたにTn,tと定義すると、Δt後の温度制御時間t+Δtでの温度Tn,t+Δtは、
【数7】


となる(図6(b))。
【0035】
また、管部材21の温度は例えば数8(冷却媒体の温度変動パターンの演算式)に示す冷却媒体温度Tp,t
【数8】


Tbase:冷却媒体の制御目標温度[K]
Trange:冷却媒体の温度変動幅の最大幅[K]
B:冷却媒体の温度変動周期の最長周期[s]
t:冷却媒体温度制御装置50による冷却媒体の温度制御時間[s]
とすると、Tp,tは要素番号―1の温度T−1,tに相当するから、管部材21に最も近い要素0の温度T0,t+Δt は、
【数9】


となる(図6(c))。また、最もコラム3等に近い要素N−1の温度TN−1,t+Δ は、安全側を考慮してコラム3等に逃げる熱がないとすると、数2においてΔqnr=0となるから、
【数10】


となる(図6(d))。
【0036】
なお、このシミュレーションの安定条件としては
【数11】


となるΔtを用いる必要がある。
【0037】
上記の数式より、各要素の温度を計算単位時間Δtで順次繰り返し演算することにより、最もコラム3等に近い要素N−1(熱伝導緩衝板22の裏面側22b)の制御目標温度Tbaseに対する温度変動幅(=TN−1,t+Δt−Tbase)を求め、この温度変動幅が目標規制幅以内となるように熱伝導緩衝板22の厚みを設定することができる。
【0038】
次にこのような計算手法に基づく計算例について表1、図5、図7に基づいて説明する。すなわち、図5に示す性能を有する本実施形態の冷却媒体温度制御装置50においては、冷却媒体の制御目標温度Tbaseを296.15K(23.0℃)に設定した場合、温度変動幅の最大幅Trangeは0.1K、温度変動周期の最長周期Bは1sとなり、数8に基づいて演算されるTp,t、すなわち冷却媒体の温度変動パターンは図7に示すように特定される。
【0039】
続いて、熱伝導緩衝板22の材質をポリ塩化ビニルとして、表1に示すように熱伝導緩衝板22の熱伝導率kを0.16[J/(m・s・K)]、比熱cpを0.95[J/(kg・K)]、密度ρを1400[kg/m]に設定し、更に、熱伝導緩衝板22の熱伝達方向の分割数Nを5、計算単位時間Δtを0.0005[s]に設定すると、図7に示すように、熱伝導緩衝板22の裏面側22bにおける制御目標温度Tbaseに対する温度変動幅(=TN−1,t+Δt−Tbase)を目標規制幅±0.01[K](熱伝導緩衝板裏面側温度296.15K(23.0℃)±0.01K)以内に緩衝させるには、熱伝導緩衝板22の厚みN×aを18mm程度に設定する必要があることがわかる。なお、上述の温度変動パターンは温度変動幅の最大幅および温度変動周期の最長周期に基づいて設定されるため、熱伝導緩衝板22の厚みを安全側で設定することができる。
【0040】
【表1】


【0041】
続いて、本発明の第2実施形態乃至第4実施形態について図8乃至図10に基づいて説明する。
本発明の第2実施形態は熱交換プレート20の装着箇所を拡張した構成を示している。具体的には、図8に示すように、熱交換プレート20をベース2およびコラム3の外周面に装着するとともに、更に加工ヘッド4の外周面にも装着することとし、加工ヘッド4を冷却する場合にも冷却媒体の温度変動が緩衝される構成となっている。
【0042】
本発明の第3実施形態は同じく熱交換プレート20の装着箇所を拡張した構成であって、放電加工装置の内部に加工ヘッド4の如く発熱体を有する場合において、この発熱体と対向する構造体の内面に更に熱交換プレートを装着した構成を示している。具体的には、図9に示すように、加工ヘッド4の内部に収納されたZ軸モータ10zに対向する加工ヘッド4の内面に本発明の熱交換プレート20を装着することにより、Z軸モータ10zが発熱する場合にあっても、この発熱が加工ヘッド4に伝達することを防止し、かつ、冷却媒体の温度変動をも緩衝させる構成となっている。
【0043】
本発明の第4実施形態は、熱交換プレート20の構成を一部変更した構成を示している。具体的には図10に示すように熱伝導緩衝板22の裏面側22bとコラム3等との間に隙間22dを形成し、この隙間22dに空気を介在させる構成としている。このような構成を採用することにより、隙間22dに介在した空気も熱伝導緩衝体として作用するので熱伝導緩衝板22の厚みを小さく設定することができる。
【0044】
なお、本発明は上述した第1乃至第4実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の応用実施または変形実施が可能であることは勿論である。例えば、本実施形態にあっては熱交換プレート20の熱伝導緩衝板22に単一の材料を採用することとしているが、複数の材料を組み合わせる構成としてもよく、また、管部材21および配管取付具22cについても塩化ビニル系の材料等、各種熱伝導緩衝体を採用することとしても良い。更に、熱伝導緩衝板22の厚みを計算により設定することとしているが、熱伝導緩衝板22の表面側22aおよび裏面側22bの温度を実測して設定することとしてもよい。更にまた、冷却媒体によりコラム3等を冷却することとしているが、必要に応じて加熱媒体を採用して加熱する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、工作機械に利用できる。具体的には、熱媒体により構造体に生ずる熱変位を低減する構成を備えた工作機械において、熱媒体の温度が制御目標温度に対し変動する場合に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態に係る放電加工装置の構成を示す図である。
【図2】同放電加工装置に装着される熱交換プレートの構成を示す平面図である。
【図3】同熱交換プレートの構成を示す断面図である。
【図4】冷却媒体温度制御装置の構成を示すブロック図である。
【図5】冷却媒体の温度制御における温度変動の状態を説明するための模式図である。
【図6】熱交換プレートの熱伝導緩衝板の厚み設定方法を説明するための模式図である。
【図7】冷却媒体の温度変動パターンおよび熱伝導緩衝板裏面側における温度変動の緩衝状態の一例を示すグラフである。
【図8】本発明の第2実施形態に係る放電加工装置の熱交換プレートの装着箇所を示す図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る放電加工装置の熱交換プレートの装着箇所を示す図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る放電加工装置の熱交換プレートの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
E:工具電極
W:ワーク
1:放電加工装置
2:ベース
3:コラム
3a:コラムの延出部
4:加工ヘッド
5:ワーク保持ユニット
6:加工槽
7:ワークテーブル
8:カバー
9:チャンバー
10:モータ
20:熱交換プレート
21:管部材
21a:直管部
21b:曲管部
21c:流路
22:熱伝導緩衝板
22a:熱伝導緩衝板の表面側
22b:熱伝導緩衝板の裏面側
22c:配管取付具
22d:隙間
30:空気温度制御装置
40:空気供給ユニット
50:冷却媒体温度制御装置
51:制御目標温度入力部
52:冷却媒体温度比較部
52a:温度検出器
53:冷却媒体温度指令出力部
60:冷却媒体供給ユニット
【出願人】 【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
【出願日】 平成18年7月21日(2006.7.21)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−23658(P2008−23658A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−199194(P2006−199194)