トップ :: B 処理操作 運輸 :: B23 工作機械;他に分類されない金属加工

【発明の名称】 位置決め装置
【発明者】 【氏名】高島 彰

【氏名】林 法義

【要約】 【課題】溶接時にワークを固定する位置決め装置において、位置決め精度を高めると共にワークを容易に離脱できるようにする。

【構成】本体ハウジング14に、偏心カムピニオン15をカム軸20によって回転可能に取付け、ラック軸16を挿通して、偏心カムピニオン15のピニオン部23とラック軸16のラック部24とを噛合わせる。ワークであるボディマウントホルダ2(以下、ホルダ2という)に本体ハウジング14を挿入した後、エアシリンダによってラック軸16を上方に移動させ、偏心カムピニオン15を回転させ、偏心カム部19を突出させてホルダ2の内周部に当接させることにより、ホルダ2を正確に位置決めする。溶接後、ラック軸16を下方へ移動させ、偏心カム部19を後退させることにより、熱歪によってホルダ2が縮径されても、ホルダ2を本体ハウジング14から容易に離脱することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークをその内周部を基準として位置決めする位置決め装置であって、前記内周部に対して隙間をもって挿入される本体ハウジングと、該本体ハウジングに設けられて前記内周部から離間する後退位置と前記前記内周部に当接する位置決め位置との間を進退動可能な複数の位置決め部材とを備えていることを特徴とする位置決め装置。
【請求項2】
前記位置決め部材は、前記本体ハウジングに回転可能に支持されて回転によって前記後退位置と前記位置決め位置との間を移動可能なカムであることを特徴とする請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記カムには歯形が形成され、前記本体ハウジングには前記カムの歯形に噛合う歯形を有するラック軸が移動可能に案内されており、該ラック軸の移動によって前記カムが回転することを特徴とする請求項2に記載の位置決め装置。
【請求項4】
前記位置決め部材は、周方向に沿って等間隔で3個配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の位置決め装置。
【請求項5】
前記ワークは溶接される部材であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の位置決め装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接工程等において、ワークを位置決めするための位置決め装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶接工程の一例として、図6及び図7を参照して、自動車のサスペンションメンバを構成するサイドレール1の端部に円筒状のボディマウントホルダ2(以下、ホルダ2という)を溶接する場合について説明する。図6(A)に示すように、サイドレール1は、パイプ状の部材であり、端部が潰されて扁平形状とされており、その先端部に半円形の切欠部3が形成されている。ホルダ2は、円筒状の部材であり、一端部に外側フランジ部4が形成され、他端部に内側フランジ5が形成されている。そして、サイドレール1の切欠部3にホルダ2の円筒部を嵌合して外側フランジ部4をサイドレール1に当接させた状態で切欠部3に沿ってサイドレール1とホルダ2とが溶接される(溶接部を図6(B)中に符号6で示す)。このとき、ホルダ2は、図7(A)に示すように、尖端を有する略矩形の位置決めピン7が円筒部に挿入されて位置決めされる。
【0003】
ホルダ2は、図6(B)に示すように、溶接時の熱によって熱歪を生じてサイドレール1の長手方向に拡径し、また、その直交方向に縮径することになる。このため、図7(A)に示すように、位置決めピン7は、ホルダ2の熱歪を考慮して、縮径方向の寸法が予め小さく設定されており、溶接前には、位置決めピン7とホルダ2との間に隙間C1が形成される。これにより、熱歪によってホルダ2が縮径して位置決めピン7から抜けなくなるのを防止している。なお、特許文献1には、熱歪によるワークの変形を矯正する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−177861号公報
【0004】
しかしながら、上記従来の位置決めピン7では、次のような問題がある。溶接前のホルダ2と位置決めピン7との間に形成される隙間C1を決定するためには、少なくとも5回程度の試作を行って寸法データを採取する必要がある。このため、試作用の治具、測定設備が必要となり、また、試作を行う手間もかかる。
【0005】
ホルダ2と位置決めピン7との隙間C1によってホルダ2が移動するので位置決め精度が低下する。隙間C1の大きさが不充分であると、熱歪によってホルダ2から位置決めピン7が抜けなくなる虞がある。また、図7(B)に示すように、溶接後には、熱歪によってホルダ2がサイドレール1の長手方向に拡径するため、ホルダ2と位置決めピン7との間に隙間C2が生じて位置決め精度が低下することになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、位置決め精度を高めることができ、かつ、ワークを容易に離脱させることができる位置決め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、ワークをその内周部を基準として位置決めする位置決め装置であって、前記内周部に対して隙間をもって挿入される本体ハウジングと、該本体ハウジングに設けられて前記内周部から離間する後退位置と前記前記内周部に当接する位置決め位置との間を進退動可能な複数の位置決め部材とを備えていることを特徴とする。
請求項2の発明に係る位置決め装置は、上記請求項1の構成において、前記位置決め部材は、前記本体ハウジングに回転可能に支持されて回転によって前記後退位置と前記位置決め位置との間を移動可能なカムであることを特徴とする。
請求項3の発明に係る位置決め装置は、上記請求項2の構成において、前記カムには歯形が形成され、前記本体ハウジングには前記カムの歯形に噛合う歯形を有するラック軸が移動可能に案内されており、該ラック軸の移動によって前記カムが回転することを特徴とする。
請求項4の発明に係る位置決め装置は、上記請求項1乃至3のいずれかの構成において、前記位置決め部材は、周方向に沿って等間隔で3個配置されていることを特徴とする。
請求項5の発明に係る位置決め装置は、上記請求項1乃至4のいずれかの構成において、前記ワークは溶接される部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る位置決め装置によれば、ワークの内周部に本体ハウジングを挿入した後、位置決め部材を後退位置から位置決め位置へ移動させることにより、ワークを正確に位置決めすることができ、また、位置決め部材を後退位置へ移動させることにより、ワークを容易に離脱させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、図6及び図7に示すものと同様の部材には同一の符号を付して説明する。
【0010】
本実施形態に係る位置決め装置は、図5(D)に示す自動車のリアサスペンションメンバアセンブリ8を溶接によって組立てる際に使用するものである。リアサスペンションメンバアセンブリ8は、車体に対して左右に配置されて前後方向に延びる一対のサイドレール1を前後に配置されて車幅方向に延びるフロントクロスメンバ9及びリアクロスメンバ10によって連結して略井桁状に形成したものであり、これらの部材は溶接によって互いに結合される。サイドレール1には、両端部にボディマウントホルダ2(以下、ホルダ2という)が溶接され、また、中間部に一対のサスペンションアームブラケット11、12(以下、ブラケット11、12という)が溶接されている。
【0011】
図6及び図7に示すものと同様、ホルダ2は、円筒状の部材であり、一端部に外側フランジ部4が形成され、他端部に内側フランジ部5が形成されている(図1参照)。また、サイドレール1は、パイプ状の部材であり、端部が潰されて扁平形状とされており、その先端部に半円形の切欠部3が形成されている。そして、サイドレール1の切欠部3にホルダ2の円筒部を嵌合させて外側フランジ部4をサイドレール1に当接させた状態でサイドレール1とホルダ2とが切欠部3に沿った溶接部6で溶接される。
【0012】
リアサスペンションメンバアセンブリ8は、左右のサイドレール1に取付けられた4つのホルダ2にブッシュが装着されて、これらに挿通させたボルトによって車体の後部に取付けられる。そして、ブラケット11、12にリアサスペンションアームが取付けられる。
【0013】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る位置決め装置13は、ワークであるホルダ2に挿入可能な本体ハウジング14に、3つの偏心カムピニオン15(位置決め部材)及びラック軸16を含む調芯機構が組込まれた構造となっている。
【0014】
本体ハウジング14は、ホルダ2に挿入可能な略円柱状で、一端部にテーパ状の尖端部14Aが形成されている。本体ハウジング14の外径は、ホルダ2の内径よりも小さく、本体ハウジング14の外周面とホルダ2の内周面との間に所定の隙間が形成されるように設定されている。本体ハウジング14には、その軸心に沿ってラック軸16が挿通される軸受穴17が貫通されている。また、本体ハウジング14の側面部には、偏心カムピニオン15が挿入される3つのカム溝18が形成されている。カム溝18は、本体ハウジング14の外周部から半径方向に沿って軸受穴17まで貫通されており、また、円周方向に沿って等間隔(120°間隔)で3つ配置されている。
【0015】
偏心カムピニオン15は、平歯車の外周の一部を膨出させて偏心カム部19を形成したものであり、カム溝18に挿入されて、カム溝18を横切るように本体ハウジング14に挿通されたカム軸20によって回転可能に支持されている。カム軸20の軸受部には無給油軸受が設けられている。
【0016】
ラック軸16は、本体ハウジング14の軸受穴17に挿通されて、軸受穴17の上端部及び下端部に設けられた無給油軸受21、22を介して摺動可能に案内されている。ラック軸16には、3つの偏心カムピニオン15の歯形が形成されたピニオン部23に噛合うラック部24が形成されており、ラック軸16を移動させることによって偏心カムピニオン15が回転するようになっている。そして、図1及び図2に示すように、ラック軸16が下方に移動したとき、3つの偏心カムピニオン15の偏心カム部19は、カム溝18内に格納される後退位置に移動し、図3及び図4に示すように、ラック軸16が上方に移動したとき、3つの偏心カムピニオン15は、後退位置から約90度回転して、偏心カム部19がカム溝18から突出してホルダ2の内周部に当接する位置決め位置へ移動する。
【0017】
ここで、偏心カムピニオン15の数は、位置決めするワークに応じて適宜増減することができる。すなわち、本実施形態のホルダ2のように円筒状のワークを2方向(X−Y方向)に対して位置決めする場合には、上述のように3つの偏心カムピニオン15を設けることが望ましく、これにより、3つの偏心カム部19をワークに確実に当接させることができる。また、位置決め方向が一方向である場合には、本体ハウジング14の直径方向に沿って(180°間隔で)2つの偏心カムピニオン15を配置するようにしてもよい。また、必要に応じて偏心カムピニオン15を4つ以上設けることもできる。
【0018】
位置決め装置13は、ホルダ2の位置決め用治具に固定され、ラック軸16にエアシリンダの作動ロッドが連結されて、エアシリンダの作動によってラック軸16が上下に移動できるようになっている。なお、エアシリンダの代りに他のアクチュエータによってラック軸16を駆動するようにしてもよい。
【0019】
以上のように構成した本実施形態の作用について次に説明する。
位置決め装置13を用いて溶接によってリアサスペンションメンバアセンブリ8を組立てる工程について説明する。
【0020】
図5(A)に示すように、サイドレール1を位置決め用治具にセットし、サイドレール1の両端部に溶接されるホルダ2に位置決め装置13を挿入する。このとき、図1及び図2に示すように、エアシリンダによってラック軸16を下方へ移動させ、偏心カムピニオン15を後退位置に移動して偏心カム部19をカム溝18内に格納しておくことにより、位置決め装置13をホルダ2に容易に挿入することができる。
【0021】
その後、図3及び図4に示すように、エアシリンダによってラック軸16を上方へ移動させ、偏心カムピニオン15を位置決め位置へ移動して偏心カム部19をカム溝18から突出させてホルダ2の内周部に当接させる。これにより、ホルダ2を位置決め装置13の同心上に固定して正確に位置決めすることができる。このとき、等間隔で3つ配置された偏心カムピニオン15がホルダ2の内周部に確実に当接するので、位置決め精度を高めることができる。また、偏心カム部19が下方へ回転しながらホルダ2の内周部に当接するので、ホルダ2を下方の治具へ押付けることがで、ホルダ2を確実に固定することができる。
【0022】
この状態で、サイドレール1とホルダ2とを溶接部6で溶接する。このとき、ホルダ2は、3つの偏心カム部19によって、内側から均等に押圧されているので、溶接時の熱歪によるホルダ2の変形を抑制することができる。溶接が完了した後、図1及び図2に示すように、エアシリンダによってラック軸16を下方へ移動させ、偏心カムピニオン15を後退位置に移動させて偏心カム部19をカム溝18内に格納する。これにより、ホルダ2が溶接による熱歪によって縮径された場合でも、ホルダ2を位置決め装置13から容易に離脱させることができる。
【0023】
次に、図5(B)に示すように、両端部にホルダ2が溶接されたサイドレール1を次工程の位置決め用治具にセットして、サイドレール1にブラケット11、12を溶接する。このとき、一方のホルダ2を主基準として3つの偏心カムピニオン15が設けられた位置決め装置13によって位置決めし、他方のホルダ2については、副基準として本体ハウジング14の直径方向に沿って2つの偏心カムピニオン15が設けられた位置決め装置13Aによって位置決めする。これにより、3つの偏心カムピニオン15を有する位置決め装置13によってサイドレール1の回転軸を固定することができ、更に、2つの偏心カムピニオン15が設けられた位置決め装置13Aによってサイドレール1の軸回りの回転を拘束することができる。その結果、位置決め時にサイドレール1に無用な応力が生じるのを防止することができる。
【0024】
この場合にも、位置決め装置13、13Aのラック軸16を下方へ移動させ、偏心カムピニオン15を後退位置へ移動させて偏心カム部19をカム溝18内に格納することにより、ホルダ2を位置決め装置13、13Aに容易に挿入、離脱することができ、また、ラック軸16を上方へ移動させ、偏心カムピニオン15を位置決め位置へ移動させて偏心カム部19をホルダ2の内周部に当接させることにより、ホルダ2を確実に固定して正確に位置決めすることができる。このようにして、ホルダ2及びブラケット11、12が溶接された左右一対のサイドレール1を製造する。
【0025】
次に、図5(C)に示すように、ホルダ2及びブラケット11、12が溶接された左右一対のサイドレール1と、フロントクロスメンバ9及びリアクロスメンバ10とを次工程の位置決め用治具にセットし、これらを互いに仮付溶接して略井桁状のリアサスペンションメンバアセンブリ8を組立てる。このとき、上記と同様、3つの偏心カムピニオン15を設けた位置決め装置13を主基準とし、2つの偏心カムピニオン15を設けた位置決め装置13Aを副基準として、それぞれのサイドレール1を位置決めすることにより、確実な位置決めを行うと共に無用な応力の発生を防止することができる。また、サイドレール1の治具へのセット及び仮付溶接されたリアサスペンションメンバアセンブリ8の治具からの離脱を容易に行うことができる。このようにして、リアサスペンションメンバアセンブリ8を仮付溶接する。
【0026】
次に、図5(D)に示すように、仮付溶接されたリアサスペンションメンバアセンブリ8を次工程の位置決め用治具にセットし、増アーク溶接を行ってリアサスペンションメンバアセンブリ8を完成させる。このとき、一側のサイドレール1の一方のホルダ2を主基準として3つの偏心カムピニオン15が設けられた位置決め装置13によって位置決めし、他側のサイドレールの一方のホルダ2を副基準として2つの偏心カムピニオン15が設けられた位置決め装置13Aによって位置決めする。これにより、上記と同様、2つの位置決め装置13、13Aによって、一体に仮付溶接されリアサスペンションメンバアセンブリ8を確実に位置決めすると共に無用な応力の発生を防止することができる。また、位置決め装置13、13Aによって、リアサスペンションメンバアセンブリ8の治具へのセット及び離脱を容易に行うことができる。このようにして、リアサスペンションメンバアセンブリ8を完成させる。
【0027】
なお、上記実施形態において、位置決め装置13、13Aの配置は、リアサスペンションメンバアセンブリ8の車体への搭載基準となるホルダ2の配置に応じて適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る位置決め装置において、偏心カム部が格納された状態を示す図2におけるA−A線による縦断面図である。
【図2】図1に示す位置決め装置において、偏心カム部が格納された状態を示す平面図である。
【図3】図1に示す位置決め装置において、偏心カム部が突出した状態を示す図3におけるB−B線による縦断面図である。
【図4】図1に示す位置決め装置において、偏心カム部が突出した状態を示す平面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る位置決め装置を用いて位置決めされるリアサスペンションメンバアセンブリの組立工程を示す図である。
【図6】サイドレールとボディマウントホルダとの結合部を示す平面図である。
【図7】サイドレールと位置決めピンによって位置決めされたボディマウントホルダとの結合部を示す平面図である。
【符号の説明】
【0029】
2 ボディマウントホルダ(ワーク)、13 位置決め装置、14 本体ハウジング、15 偏心カムピニオン(位置決め部材)、16 ラック軸
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成18年7月18日(2006.7.18)
【代理人】 【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫

【識別番号】100093193
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 壽夫

【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫

【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫

【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫

【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏


【公開番号】 特開2008−23618(P2008−23618A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−195984(P2006−195984)