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【発明の名称】 旋回式クランプ
【発明者】 【氏名】米澤 慶多朗

【氏名】横田 英明

【氏名】春名 陽介

【要約】 【課題】旋回式クランプをコンパクトに造れるようにする。

【構成】ハウジング3内に、クランプロッド5を、ほぼ90度の旋回角度で軸心回りに回転可能かつ上下方向へ移動可能に挿入する。そのクランプロッド5の外周部に、3つ又は4つのガイド溝26を周方向へほぼ等間隔に並べて設ける。上記のガイド溝26を、上向きに連ねて設けた旋回溝27及び直進溝28によって構成する。上記の旋回溝27を螺旋溝によって構成し、その螺旋溝の傾斜角度Aを10度から30度の範囲内に設定する。上記の隣り合うガイド溝26・26の隔壁の最小厚さTを、ガイド溝26の溝幅Wよりも小さい値に設定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(3)内にほぼ90度の旋回角度で軸心回りに回転可能に挿入されると共に軸心方向の一端から他端へクランプ移動されるクランプロッド(5)と、そのクランプロッド(5)の外周部に周方向へほぼ等間隔に並べて設けた3つ又は4つのガイド溝(26)と、これら3つ又は4つのガイド溝(26)にそれぞれ嵌合するように上記ハウジング(3)に支持した複数の係合ボール(29)とを備え、
上記3つ又は4つのガイド溝(26)は、それぞれ、上記の軸心方向の他端から一端へ連ねて設けた旋回溝(27)と直進溝(28)とを備え、上記の複数の旋回溝(27)を相互に平行状に配置すると共に上記の複数の直進溝(28)を相互に平行状に配置し、
上記クランプロッド(5)が上記3つ又は4つの旋回溝(27)に沿ってほぼ90度の旋回角度で軸心回りに回転されたときに同上クランプロッド(5)が軸心方向へ移動する長さは、上記の旋回溝(27)を螺旋溝からなる仮想旋回溝によって構成すると共にその仮想旋回溝の傾斜角度(A)を10度から30度の範囲内に設定した場合の上記の仮想旋回溝の上記軸心方向の長さ成分に相当する長さに設定し、
上記の隣り合うガイド溝(26)(26)の隔壁の最小厚さ(T)を、同上のガイド溝(26)の溝幅(W)又は上記の係合ボール(29)の直径(D)よりも小さい値に設定した、ことを特徴とする旋回式クランプ。
【請求項2】
請求項1の旋回式クランプにおいて、
前記ガイド溝(26)を3つ設けた、ことを特徴とする旋回式クランプ。
【請求項3】
請求項1または2の旋回式クランプにおいて、
前記クランプロッド(5)を軸心方向へ移動可能かつ軸心回りに回転可能に支持する前記ハウジング(3)の他端壁(3b)に、前記の係合ボール(29)を回転自在に支持する貫通孔(31)を、上記の軸心方向に対してほぼ直交するように設け、上記の複数の係合ボール(29)にわたってスリーブ(35)を回転自在に外嵌した、ことを特徴とする旋回式クランプ。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、クランプロッドを旋回させる形式のクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の旋回式クランプには、例えば、下記の特許文献1に記載されたものがある。
【特許文献1】米国特許5,820,118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来では、上記の旋回式クランプをコンパクトに造れるようにする等の点で改善が要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、例えば、図1から図4、又は図7から図10、若しくは、図11・図12・図13の各図に示すように、旋回式クランプを次のように構成した。
ハウジング3内にほぼ90度の旋回角度で軸心回りに回転可能に挿入されると共に軸心方向の一端から他端へクランプ移動されるクランプロッド5と、そのクランプロッド5の外周部に周方向へほぼ等間隔に並べて設けた3つ又は4つのガイド溝26と、これら3つ又は4つのガイド溝26にそれぞれ嵌合するように上記ハウジング3に支持した複数の係合ボール29とを備え、
上記3つ又は4つのガイド溝26は、それぞれ、上記の軸心方向の他端から一端へ連ねて設けた旋回溝27と直進溝28とを備え、上記の複数の旋回溝27を相互に平行状に配置すると共に上記の複数の直進溝28を相互に平行状に配置し、
上記クランプロッド5が上記3つ又は4つの旋回溝27に沿ってほぼ90度の旋回角度で軸心回りに回転されたときに同上クランプロッド5が軸心方向へ移動する長さは、上記の旋回溝27を螺旋溝からなる仮想旋回溝によって構成すると共にその仮想旋回溝の傾斜角度Aを10度から30度の範囲内に設定した場合の上記の仮想旋回溝の上記軸心方向の長さ成分に相当する長さに設定し、
上記の隣り合うガイド溝26・26の隔壁の最小厚さTを、同上のガイド溝26の溝幅W又は上記の係合ボール29の直径Dよりも小さい値に設定した。
【0005】
本発明は、次の作用効果を奏する。
ハウジング内にほぼ90度の旋回角度で軸心回りに回転可能に挿入されると共に軸心方向の一端から他端へクランプ移動されるクランプロッドと、そのクランプロッドの外周部に周方向へほぼ等間隔に並べて設けた3つ又は4つのガイド溝と、これら3つ又は4つのガイド溝にそれぞれ嵌合するように上記ハウジングに支持した複数の係合ボールとを備えたので、上記クランプロッドを、3つ又は4つの係合ボールを介して、周方向でほぼ均等に案内することが可能となる。
また、上記クランプロッドが上記3つ又は4つの旋回溝に沿ってほぼ90度の旋回角度で軸心回りに回転されたときに同上クランプロッドが軸心方向へ移動する長さを、上記の旋回溝を螺旋溝からなる仮想旋回溝によって構成すると共にその仮想旋回溝の傾斜角度を10度から30度の範囲内に設定した場合の上記の仮想旋回溝の上記軸心方向の長さ成分に相当する長さに設定し、上記の隣り合うガイド溝の隔壁の最小厚さを、同上のガイド溝の溝幅又は上記の係合ボールの直径よりも小さい値に設定したので、上記クランプロッドに、3つ又は4つの多くのガイド溝を設けることが可能になり、さらには、そのクランプロッドの旋回に必要なストロークが小さくなる。このため、上記ハウジングの高さを低くして、旋回式クランプをコンパクトに造れる。
【0006】
本発明では、例えば、図1・図2・図4に示すように、前記ガイド溝26を3つ設けることが好ましい。
【0007】
本発明では、例えば、図1〜図3、又は図7〜図9に示すように、前記クランプロッド5を軸心方向へ移動可能かつ軸心回りに回転可能に支持する前記ハウジング3の他端壁3bに、前記の係合ボール29を回転自在に支持する貫通孔31を、上記の軸心方向に対してほぼ直交するように設け、上記の複数の係合ボール29にわたってスリーブ35を回転自在に外嵌することが好ましい。
【0008】
この場合、前記クランプロッドの旋回時において、上記スリーブの内周面と上記の係合ボールとの間には、ほとんどコロガリ摩擦だけが作用してスベリ摩擦がほとんど作用しなくなるので、上記スリーブから上記の係合ボールに作用する抵抗が小さくなる。このため、上記の係合ボールから前記の旋回溝に作用する摩擦力が小さくなり、上記クランプロッドが軽い力で円滑に旋回する。
【発明の実施の形態】
【0009】
本発明の第1実施形態を図1から図4によって説明する。まず、図1によって旋回式クランプの全体構造を説明する。その図1は、上記クランプの立面視の部分断面図である。
【0010】
ワークパレット1にはクランプ2のハウジング3が複数のボルト(図示せず)によって固定される。そのハウジング3の筒孔4内にクランプロッド5が挿入される。そのクランプロッド5の上端部分にアーム6がナット7によって所望の旋回位置に固定され、そのアーム6の先端部分に押ボルト8が固定される。
上記のハウジング3の上端壁(一端壁)3aに、上記クランプロッド5のロッド本体5aに設けた上摺動部分11が摺動自在で保密状に支持される。さらに、上記のハウジング3の下端壁(他端壁)3bの一部を構成する支持筒13には、上記ロッド本体5aから下向きに突出させた下摺動部分12が摺動自在に支持される。上記の上摺動部分11と下摺動部分12とは、それぞれ、上記の上端壁3aと下端壁3bとに緊密に嵌合されている。
また、上記の下摺動部分12の外径寸法は、上記の上摺動部分11の外径寸法よりも小さい値に設定してある。
【0011】
上記クランプロッド5を駆動する手段は次のように構成されている。
前記の上摺動部分11と下摺動部分12との間で上記クランプロッド5にフランジ状の入力部14が設けられる。また、上記クランプロッド5に環状のピストン15が封止具16を介して上下移動自在で保密状に外嵌され、そのピストン15が上記の入力部14に上側から対面される。そして、上記のピストン15が別の封止具15aを介して前記の筒孔4内に保密状に挿入される。
【0012】
さらに、上記の入力部14と上記のピストン15との間にラジアルベアリング24が配置されると共に、そのピストン15が止め輪25によって抜け止めされている。なお、上記ラジアルベアリング24は、ここでは、多数の金属製ボールによって構成してあり、半径方向の力のみならず上下方向のスラストも受け止め可能になっている。
【0013】
上記ピストン15と前記の上端壁3aとの間にクランプ用の第1室21が設けられ、その第1室21に、圧縮コイルバネ製のクランプバネ20が装着される。また、上記のピストン15と前記の下端壁3bとの間にアンクランプ用の第2室22が設けられ、その第2室22には、アンクランプ用の圧油給排口19と絞り用の油路18とを介して圧油が給排される。
なお、上記の第2室22の周壁と上記ピストン15の外周面との間の嵌合隙間Gによって、上記の油路18から上記の第2室22への圧油の供給量を制限すると共に、同上の第2室22から上記の油路18への圧油の排出量を制限するようになっている。
【0014】
上記クランプロッド5の下摺動部分12と上記の支持筒13の内壁13aの上部とにわたって旋回機構が設けられる。その旋回機構は、上記の図1と、図2から図4に示すように、次のように構成されている。その図2は、上記の旋回機構の平面視の断面図である。また、図3は、上記の図1中の要部の拡大図であって、上記の図2中のIII−III線矢視断面図に相当する図である。図4は、上記の下摺動部分12の外周面の拡大展開図である。
【0015】
上記の下摺動部分12の外周面に3つのガイド溝26が周方向へほぼ等間隔に設けられる。上記の各ガイド溝26は、断面視で弓形の溝からなり、螺旋状の旋回溝27と直進溝28とを上向きに連ねて構成される。上記の複数の旋回溝27が相互に平行状に配置されると共に、上記の複数の直進溝28も相互に平行状に配置されている。上記の隣り合うガイド溝26・26のうちの図4中の右方の旋回溝27の下部と左方の旋回溝27の上部との間で隔壁の厚さが最小となっており、その隔壁の最小厚さMが、上記ガイド溝26の溝幅Wよりも小さい値に設定される。また、その旋回溝27の傾斜角度Aが約11度から約25度の範囲内の小さな値に設定されている。なお、例示したバネ力によるクランプにおいては、旋回ストロークを小さくするために、上記の傾斜角度Aを約11度から約20度の範囲内の値にすることが好ましい。
このように上記の螺旋状の旋回溝27の傾斜角度Aを小さくしたので、その旋回溝27のリードが大幅に短くなる。このため、上記クランプロッド5の旋回用ストロークが小さくなる。
【0016】
上記の各ガイド溝26に係合ボール29が嵌入される。図3および図4中の参照符号29aは、上記の係合ボール29の嵌合部分を示している。上記の係合ボール29の直径D(図3参照)は、前記の隣り合う旋回溝27・27の隔壁の前記の最小厚さMよりも大きい値になっている。各係合ボール29が、前記の支持筒13の内壁13aの上部に設けた3つの貫通孔31に回転自在に支持される。これら3つの係合ボール29にわたってスリーブ35が軸心回りに回転自在に外嵌される。より詳しくいえば、上記スリーブ35の内周面にV字状の溝36が形成され、そのV字状の溝36の上下の二点で係合ボール29が転動可能になっている。
上記の係合ボール29は、上記スリーブ35に設けたメネジ孔49を通して前記の貫通孔31へ挿入される。そのメネジ孔49に取りつけた蓋ボルト50の先端の突出部50aが上記の係合ボール29を受け止め可能になっている。
【0017】
また、前記の旋回溝27の下端部には、上記の係合ボール29の前記の嵌合部分29aを受け止めるストッパー壁45が設けられる。そのストッパー壁45の受け止め面45aが上記の係合ボール29に嵌合可能になっている。
さらに、上記ガイド溝26の開口縁部には、干渉防止用の切削面34が設けられている。これにより、上記の係合ボール29の面圧によって上記ガイド溝26の開口縁部が塑性変形して盛り上がったときでも、その盛り上がり部と前記の支持筒13の内壁13aとの干渉を防止できる。その結果、前記クランプロッド5が長期間にわたって円滑に回転する。
【0018】
なお、図1に示すように、上記の支持筒13の外壁13bが上下方向へ延びる位置決めピン38を介して前記ハウジング3の胴部3cに回り止めされている。これにより、上記ハウジング3に対する上記クランプロッド5の旋回位相を正確に決定できるようになっている。なお、上記の支持筒13は、止め輪からなるロック部材39によって上記ハウジング胴部3cに固定されている。
【0019】
上記の旋回式クランプ2は次のように作動する。
図1の状態では、前記アンクランプ用の第2室22へ圧油が供給されており、これにより、前記クランプロッド5は図示の旋回退避位置へ上昇している。
上記クランプ2をクランプ状態へ切換えるときには、上記の第2室22の圧油を排出して、前記クランプバネ20によって上記クランプロッド5の前記の入力部14を押し下げていく。すると、そのクランプロッド5は、前記の旋回溝27に沿って平面視で時計回りの方向へ旋回しながら下降し、引き続いて、前記の直進溝28に沿って真っすぐに下降する。これにより、そのクランプロッド5がクランプ位置(図示せず)へ切り換わる。
【0020】
図2中の矢印に示すように、上記クランプロッド5が平面視で時計回りの方向へ旋回するときには、前記の旋回溝27に嵌入された前記の各係合ボール29が平面視で反時計回りの方向へ転動し、これと同時に、上記の各係合ボール29に外嵌された前記スリーブ35が反時計回りの方向へ自由に回転する。このため、上記スリーブ35の内周面と上記の各係合ボール29との間には、ほとんどコロガリ摩擦だけが作用してスベリ摩擦がほとんど作用しなくなり、上記スリーブ35から上記の各係合ボール29に作用する抵抗が小さくなる。その結果、上記の各係合ボール29から前記の旋回溝27に作用する摩擦力が小さくなり、前記クランプロッド5が軽い力で円滑に旋回する。
なお、ここでは、上記のスリーブ35の内径寸法は、上記クランプロッド5の前記の下摺動部分12の外径寸法の約1.5倍の値に設定されている。このため、上記クランプロッド5を90度旋回させる場合には、上記スリーブ35が約60度回転することになる。
【0021】
上記クランプ2を上記クランプ状態から図1の旋回退避状態へ切換えるときには、前記アンクランプ用の第2室22へ圧油を供給する。すると、まず、前記ピストン15が、その環状断面積に作用する上向きの油圧力によって上昇し、これと同時に、前記のクランプロッド5が、前記の封止具16の内側断面積に作用する上向きの油圧力によって前記の直進溝28に沿って真っすぐに上昇していく。引き続いて、上記クランプロッド5が、前記の旋回溝27に沿って平面視で反時計回りの方向へ旋回しながら上昇して、上記クランプロッド5および前記アーム6が図1の旋回退避位置へ切り換わる。
【0022】
この場合、上述したように、上記の第2室22の圧油から上記ピストン15に作用する上向きの力が上記クランプロッド5に加わらないので、上記の旋回溝27や前記の係合ボール29に過大な力が作用しない。
なお、上記の旋回退避時には、上記クランプロッド5が平面視で反時計回りの方向へ旋回すると、前記の各係合ボール29と前記スリーブ35とが前記の図2中の矢印とは逆の方向へ回転する。
【0023】
また、上記の旋回退避時には、上記の図1および図4に示すように、前記ストッパー壁45の前記の受け止め面45aが上記の係合ボール29の前記の嵌合部分29aに嵌合して上記クランプロッド5の旋回を阻止する。このため、そのクランプロッド5の旋回停止精度が高い。また、上記ストッパー壁45を上記クランプロッド5に設けたので、そのストッパー壁45を前記ハウジング3の前記の胴部3cに設けた場合と比較すると、次の長所が得られる。即ち、そのハウジング3の前記の筒孔4は、上記ストッパー壁用の段付き部を無くしてストレートに造れる。このため、その筒孔4の機械加工が容易になり、そのうえ、前記のクランプバネ20を大形かつ強力にできる。
【0024】
上記の第1実施形態はさらに次の長所を奏する。
上記クランプロッド5に複数のガイド溝26を設けて、これらのガイド溝26にそれぞれ係合ボール29を嵌合させたので、前記の支持筒13に上記の複数の係合ボール29を介して上記クランプロッド5を周方向でほぼ均等に支持することが可能となる。このため、クランプおよびアンクランプ駆動時に上記クランプロッド5の傾きを防止できる。その結果、前記アーム6に設けた前記の押ボルト8のクランプ位置およびアンクランプ位置の位置決め精度が向上する。
【0025】
また、前記の隣り合うガイド溝26・26の隔壁の最小厚さTを、そのガイド溝26の溝幅Wよりも小さい値に設定したので、上記クランプロッド5に多くのガイド溝26を設けて同上クランプロッド5を周方向でほぼ均等に支持することと、前記の旋回溝27の傾斜角度Aを小さくすることとを両立できる。このため、上記クランプロッド5の旋回に必要なストロークを小さくして、旋回式クランプ2をコンパクトに造れる。
【0026】
前記ピストン15の両端方向の外側で前記クランプロッド5に上摺動部分11と下摺動部分12とを設けたので、上記ピストン15の嵌合隙間の存在にもかかわらず、軸心方向へ離れた二つの摺動部分11・12によって上記クランプロッド5が傾くのを防止できる。従って、上記クランプロッド5を上記ハウジング3によって確実かつ高精度にガイドできる。
また、前記の旋回溝27および係合ボール29からなる旋回機構を、上述したガイド用の強度を備えた前記の支持筒13と下摺動部分12との間に設けたので、その旋回機構が旋回トルクに十分に耐えることが可能となり、旋回機構の寿命が長くなる。そのうえ、上記の係合ボール29を上記の支持筒13に設けたので、その係合ボール29の設置箇所と下摺動部分12の支持箇所とを兼用できる。このため、上記ハウジング3の高さを低くして、旋回式クランプ2をコンパクトに造れる。
【0027】
さらに、上記の下摺動部分12の外径寸法を前記の上摺動部分11の外径寸法よりも小さい値に設定したので、その下摺動部分12に形成した旋回溝27のリードが短くなる。このため、前記クランプロッド5の旋回用ストロークがさらに短くなる。このため、旋回式クランプ2をさらにコンパクトに造れるうえ、前記ピストン15を駆動するための圧油の給排量も少なくなる。
【0028】
図5は、上記の第1実施形態の第1変形例を示し、前記の図4に類似する部分図である。この図5では、隣り合う旋回溝27・27の隔壁の最小厚さMが前記の図4よりも小さい値に設定され、その最小厚さMの部分で前記の隣り合う切削面34・34がオーバーラップされている。また、この図5では、上記の旋回溝27の傾斜角度Aを、上記の図4よりも小さい範囲内(約11度から約15度)の値に設定してある。
【0029】
図6は、同上の第1実施形態の比較例を示し、前記の図4に類似する図である。この場合、前記クランプロッド5の前記の下摺動部分12に4つのガイド溝26が設けられる。隣り合う一対のガイド溝26・26および対応する係合ボール29を、上記クランプロッド5の周方向だけでなく軸心方向へも変位させてある。そして、隣り合う一対の旋回溝27・27の隔壁の最小厚さMを前記の溝幅Wよりも小さい値に設定すると共に、隣り合う一対の直進溝28・28の隔壁の最小厚さNを同上の溝幅Wよりも小さい値に設定し、さらに、後者の最小厚さNを前者の最小厚さMよりも小さい値に設定してある。これにより、隣り合う一対のガイド溝26・26の隔壁の最小厚さTが、上記の溝幅Wおよび前記の係合ボール29の直径よりも小さい値に設定されている。
【0030】
上記の第1実施形態と変形例は次のように変更可能である。
前記の係合ボール29を回転自在に支持する前記の貫通孔31は、例示した支持筒13に設けることに代えて、前記のハウジング3の前記の胴部3cの下部に設けることも可能である。
前記スリーブ35の内周面は、例示したV字状の溝36を備えたもの代えて、U字状の溝または円弧状の溝を備えたものであってもよく、さらには、ストレート内周面であってもよい。なお、上記ストレート内周面の場合には、前記の係合ボール29に対して上記スリーブ35が上下移動するのを阻止するため、前記の支持筒13の内壁13aと上記スリーブ35との間に止め輪などのストッパーを設けることが考えられる。
【0031】
なお、前記の螺旋状に形成した旋回溝27の傾斜角度Aは、10度から30度の範囲内であることが好ましく、11度から20度の範囲内であることがさらに好ましい。
【0032】
図7から図10は本発明の第2実施形態を示し、図11から図13は本発明の第3実施形態を示している。これらの別の実施形態においては、上記の第1実施形態の構成部材と類似する部材には原則として同一の符号を付けてある。
【0033】
図7から図10の第2実施形態において、図7は、旋回式クランプ2の立面視の部分断面図であって、前記の図1に類似する図である。図8は、上記クランプ2に設けた旋回機構の平面視の断面図であって、前記の図2に類似する図である。図9は、上記の図7中の要部の拡大図であって、上記の図8中のIX−IX線矢視断面図に相当する図である。図10は、上記クランプ2のクランプロッド5に設けた下摺動部分12の拡大展開図である。
【0034】
この第2実施形態は、前記の第1実施形態とは次の点で異なる。
前記クランプロッド5の駆動手段が複動式に構成される。即ち、前記ピストン15の上側に設けた前記の第1室21には、クランプ用の圧油給排口17を介してクランプ用の圧油が給排される。また、上記ピストン15の下側に設けた前記の第2室22にも、アンクランプ用の圧油給排口(図示せず)と油路18とを介してアンクランプ用の圧油が給排される。
上記ピストン15の外周に嵌着した前記の別の封止具15aの上下の両外側では、そのピストン15の外周面と前記の筒孔4との間に比較的に大きな嵌合隙間が形成されている。これにより、上記のクランプロッド5は、前記の上摺動部分11と下摺動部分12との上下の2箇所で前記ハウジング3に円滑かつ精度良く支持される。
【0035】
上記の下摺動部分12の外周面に4つのガイド溝26が周方向へほぼ等間隔に設けられる。前述の第1実施形態と同様に、各ガイド溝26は、螺旋状の旋回溝27と直進溝28とを上向きに連ねて構成されているが、上記の旋回溝27の下部は上下方向へ延びる溝(参照数字なし)を介して上記クランプロッド5の下面に開口している。前記の係合ボール29は上記の開口部を通して上記ガイド溝26に挿入可能になっている。
なお、前記の第1実施形態と同様に、上記の隣り合うガイド溝26・26のうちの図10中の右方の旋回溝27の下部と左方の旋回溝27の上部との間で隔壁の厚さが最小となっており、その隔壁の最小厚さMが、上記ガイド溝26の溝幅Wおよび上記の係合ボール29の直径よりも小さい値に設定されている。
【0036】
上記の各ガイド溝26に嵌入した係合ボール29が、前記の支持筒13の内壁13aの上部に設けた4つの貫通孔31に回転自在に支持される。これら4つの係合ボール29にわたってスリーブ35が軸心回りに回転自在に外嵌される。前記の旋回溝27には円弧状の凹所37が形成されており、その凹所37の上下外側の二箇所で係合ボール29が旋回溝27に転動可能になっている。
【0037】
前記アンクランプ用の第2室22の周壁の下部と前記の支持筒13の上面との間には筒状のスペーサ32が装着されている。そのスペーサ32の上面に絞り用の溝33が形成され、その絞り用の溝33によって、前記の油路18から上記の第2室22への圧油の供給量を制御するようになっている。なお、その溝33に代えて貫通孔などを利用することも可能である。
上記の支持筒13は、雄ネジ筒からなるロック部材39によって上記ハウジング胴部3cに押圧固定されている。
なお、前記の第1実施形態と同様に、前記の上摺動部分11の外径寸法よりも前記の下摺動部分12の外径寸法を小さい値に設定している。このため、前記の螺旋状の旋回溝27のリードが短くなって、前記クランプロッド5の旋回用ストロークが小さくなる。
【0038】
図11は、本発明の第3実施形態を示している。その図11は、旋回式クランプの立面視の部分断面図であって、前記の図7に類似する図である。
この図11の第3実施形態は、上記の図7の構造とは次の点だけが異なる。
前記の図7中のスリーブ35を省略してある。そして、前記の支持筒13の前記の内壁13aに支持した前記の係合ボール29が前記のスペーサ32によって抜け止めされている。
【0039】
図12は、上記の第3実施形態の第1変形例を示し、上記の図11に類似する図である。
この図12の第1変形例は、上記の図11の構造とは次の点で異なる。
前記ピストン15は前記クランプロッド5と一体に形成される。そのピストン15と前記の下端壁3bとの間に、前記の第2室22と受圧排除用シリンダ孔41とが下方へ向けて順に設けられる。そのシリンダ孔41は、アダプター筒42の内周面によって構成されており、そのシリンダ孔41に上記クランプロッド5の封入部分5bが封止具43によって保密状に挿入される。
【0040】
上記の構成により、アンクランプ時に上記クランプロッド5に作用する上向きの力は、上記の第2室22の横断面積から上記の封入部分5bの横断面積を差し引いた環状断面積に作用する油圧力だけとなるので、前記の旋回溝27や前記の係合ボール29に過大な力が作用しない。
上記の封入部分5bの直径は、上記の第2室22の直径よりも小さい値であればよく、ここでは、上記クランプロッド5の上摺動部分11の直径とほぼ同じ値に設定してある。
なお、上記の封入部分5bの直径を上記の上摺動部分11の直径よりも大きい値に設定することが好ましい。この場合、アンクランプ時に上記クランプロッド5に作用する上向きの力をさらに小さくできるので、前記の旋回溝27や前記の係合ボール29の寿命が延びる。
【0041】
前記の図11と同様に、前記ピストン15の外周面と前記の筒孔4の上半部分との間に比較的に大きな嵌合隙間が形成されている。また、前記クランプロッド5の前記の封入部分5bと前記シリンダ孔41との間にも比較的に大きな嵌合隙間が形成されている。
前記の油路18の下端面に前記の絞り用の溝33が形成されている。
また、クランプ状態とアンクランプ状態とを検出するためのロッド46が前記の下摺動部分12から下向きに突出される。そのロッド46に形成したネジ孔47に被検出具(図示せず)がネジ止めされ、その被検出具にリミットスイッチ等のセンサ(図示せず)が対面される。
【0042】
さらに、前記の支持筒13の下部にプラグ51が保密状に嵌入され、そのプラグ51内に設けた呼吸路52によって前記のシリンダ孔41の内部空間が外部へ連通される。上記の呼吸路52には、模式図に示すように、バネ式逆止弁からなるトラップ弁53が設けられる。
そのトラップ弁53は次のように作用する。前記クランプロッド5が上昇して前記シリンダ孔41の内部空間が膨張したときには、そのトラップ弁53の逆止作用によって、外部の雰囲気中の切削油等が上記のシリンダ孔41へ侵入するのを防止する。また、そのトラップ弁53は、上記クランプロッド5が下降して上記シリンダ孔41の内部空間が収縮したときには、前記の第2室22から上記のシリンダ孔41の内部空間へ侵入した圧油を外部へ円滑に排出する。
【0043】
図13は、同上の第3実施形態の第2変形例を示し、前記の図11に類似する図である。この図13は、単動バネ復帰形の旋回式クランプ2を示し、上記の図11の構造とは次の点で異なる。
【0044】
前記ピストン15は前記クランプロッド5と一体に形成されている。また、前記の支持筒13と上記ピストン15との間に形成した第2室22内にアンクランプ用の戻しバネ56が装着され、その戻しバネ56によって前記クランプロッド5が上向きに付勢される。ここでは、上記の戻しバネ56は、圧縮コイルバネによって構成されている。そして、上記バネ56の下端が前記の支持筒13に接当され、そのバネ56の上端がスラストボールベアリング57を介して前記ピストン15よって受止められる。
また、前記の複数の係合ボール29にわたって前記スリーブ35が回転自在に外嵌されている。
なお、前記トラップ弁53は、上記の支持筒13の中央部にネジ止めしたボルト58に装着されている。
【0045】
上記の各実施形態や各変形例は、さらに次のように変更可能である。
前記クランプロッド5の前記ガイド溝26は、例示した螺旋状の旋回溝27を備えたものに代えて、カム状の溝を備えたものであってもよい。
隣り合うガイド溝26・26の隔壁の前記の最小厚さTは、前記の係合ボール29の直径よりも小さい値であればよい。従って、上記の最小厚さTを上記ガイド溝26の前記の溝幅Wよりも大きい値にすることも可能である。
【0046】
前記の第1室21または第2室22に給排される圧力流体は、例示した圧油に代えて、他の種類の液体や空気等の気体であってもよい。
前記クランプロッド5は、クランプ作動時に平面視で時計回りの方向へ旋回させるとしたが、これに代えて、そのクランプ作動時に平面視で反時計回りの方向へ旋回させてもよい。また、上記クランプロッド5の旋回角度は、例えば90度などの所望の角度に設定できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、旋回式クランプの立面視の部分断面図である。
【図2】上記クランプに設けた旋回機構の平面視の断面図である。
【図3】上記の図1中の要部の拡大図であって、上記の図2中のIII−III線矢視断面図に相当する図である。
【図4】上記クランプのクランプロッドに設けた下摺動部分の拡大展開図である。
【図5】上記の第1実施形態の第1変形例を示しており、上記の図4に類似する部分図である。
【図6】同上の第1実施形態の比較例を示しており、上記の図4に類似する図である。
【図7】本発明の第2実施形態のクランプの立面視の部分断面図であって、前記の図1に類似する図である。
【図8】上記の第2実施形態のクランプに設けた旋回機構の平面視の断面図であって、前記の図2に類似する図である。
【図9】上記の図7中の要部の拡大図であって、上記の図8中のIX−IX線矢視断面図に相当する図である。
【図10】上記の第2実施形態のクランプのクランプロッドに設けた下摺動部分の拡大展開図であって、前記の図4に類似する図である。
【図11】本発明の第3実施形態のクランプを示し、前記の図7に類似する図である。
【図12】上記の第3実施形態の第1変形例を示しており、上記の図11に類似する図である。
【図13】同上の第3実施形態の第2変形例を示しており、同上の図11に類似する図である。
【符号の説明】
【0048】
3…ハウジング、3b…他端壁(下端壁)、5…クランプロッド、26…ガイド溝、27…旋回溝、28…直進溝、29…係合ボール、31…貫通孔、35…スリーブ、A…仮想旋回溝の傾斜角度(旋回溝27の傾斜角度)、T…隣り合うガイド溝26・26の隔壁の最小厚さ、W…ガイド溝26の溝幅、D…係合ボール29の直径。
【出願人】 【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
【出願日】 平成19年10月4日(2007.10.4)
【代理人】 【識別番号】100089196
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 良之

【識別番号】100104226
【弁理士】
【氏名又は名称】須原 誠


【公開番号】 特開2008−18531(P2008−18531A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2007−260563(P2007−260563)