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【発明の名称】 フライス加工方法およびフライス工具装置
【発明者】 【氏名】富岡 三彦

【氏名】古郡 竜也

【要約】 【課題】フライス加工時の被加工物から周辺への切粉の飛散を抑制するフライス加工方法を提供する。

【構成】工具本体10をの一部を構成する第2部材22の外周側に、第3部材118を固定する。第3部材118に形成した環状通路140によって、第2部材22の噴流形成用通路110と噴流形成用通路150とを連通させる。噴流形成用通路150を、刃部54の各々に対応して複数設ける。噴流形成用通路150の先端に他の部分より横断面積が小さい円弧状の噴出口158を形成する。主軸から供給されるクーラントを刃部54側に供給するとともに、噴流形成用通路110,150を経て噴出口158からも噴出させる。噴出口158は、工具本体10が主軸と共に回転する際の刃部54の旋回軌跡より外周側に開口し、噴流形成用通路150を経たクーラントが噴出させられ、刃部54により切削された被加工物の切粉の飛散を抑制する噴流を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の主軸にフライス工具を取り付け、主軸の回転によりフライス工具を回転軸線まわりに回転させて、被加工物を切削加工する方法であって、
前記フライス工具の刃部の旋回軌跡より外周側に、前記主軸側から前記フライス工具側に向かう向きに液体の噴流を形成し、その噴流により、前記刃部によって切削された切粉の飛散を抑制することを特徴とするフライス加工方法。
【請求項2】
前記噴流を前記フライス工具と共に回転する回転部から噴出させる請求項1に記載のフライス加工方法。
【請求項3】
前記噴流を前記フライス工具と共には回転しない非回転部から噴出させる請求項1に記載のスライス加工方法。
【請求項4】
前記液体として、前記刃部を冷却するクーラントを使用する請求項1ないし3のいずれかに記載のフライス加工方法。
【請求項5】
主軸に取り付けられる被取付部と、
その被取付部の軸線から偏心した位置に少なくとも1つの刃部を有する切削部と、
それら被取付部および切削部が前記主軸と共に回転する際における前記刃部の旋回軌跡より外周側に前記被取付部側から前記切削部側に向かって噴出し、前記刃部により切削された切粉の飛散を抑制する噴流を形成する噴流形成部と
を含むフライス工具装置。
【請求項6】
少なくとも使用状態では前記被取付部と前記切削部とを一体的に有する状態となる工具本体を含み、その工具本体に前記刃部が周方向に間隔を隔てて複数設けられ、前記噴流形成部が前記工具本体と共に回転する部分に、周方向に間隔を隔ててかつ前記刃部の各々に対応して設けられた複数の噴出口を含む請求項5に記載のフライス工具装置。
【請求項7】
少なくとも使用状態においては前記被取付部と前記切削部とを一体的に有する状態となる工具本体を含み、その工具本体に前記刃部が周方向に間隔を隔てて複数設けられ、前記噴流形成部がその工具本体に対して前記被取付部の軸線まわりに相対回転可能な相対回転部材に、前記複数の刃部の各々に対応して複数設けられ、かつ、前記相対回転部材の前記工具本体に対する相対回転位置を調節することにより、前記噴流形成部と前記刃部との周方向の相対位置を調節する位置調節装置を含む請求項5に記載のフライス工具装置。
【請求項8】
少なくとも使用状態においては前記被取付部と前記切削部とを一体的に有する状態となる工具本体を含み、前記噴流形成部が、その工具本体に対して前記軸線まわりに相対回転可能な相対回転部材に、前記切削部を切れ目なく囲む噴流を形成可能な状態で形成された少なくとも1つの噴出口を含み、かつ、当該フライス工具装置が、前記相対回転部材に設けられ、前記主軸を回転可能に保持しているハウジングと一体的な第1係合部と係合して相対回転部材の回転を阻止する第2係合部を含む請求項5に記載のフライス工具装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明はフライス加工に関するものであり、特に、フライス加工に伴って生じる切粉の飛散防止に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フライス加工においては、フライス工具を回転させて切削が行われるため、切粉が加工スペースの周辺に飛散し、問題を発生させる。近年の工作機械は加工スペースの周辺がカバーにより覆われているため、遠くに飛散することはないが、クーラントにより加工治具やカバーの内面に付着し、加工の妨げとなる。例えば、加工治具やカバーの天井面に付着堆積した切粉がときどき落下するのであるが、それが丁度被加工物が取付面に取り付けられる際であると、被加工物と取付面との間に挟まれ、被加工物の位置決め不良による不良品発生の原因となる。
【0003】
そこで、被加工物の取付直前に取付面をクーラントにより洗い流すことが一般的に行われている。また、例えば下記特許文献1,2に記載されているように、フライス工具の外周をカバーで覆い、カバー内の空気を吸引し、あるいはカバーの一方の側から空気を吹き込みつつ他方の側から吸引して、空気と共に切粉を加工スペースの外部へ排出することが行われている。
【特許文献1】特開平6−143087号公報
【特許文献2】特開平10−43989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、取付面をいかに被加工物の取付直前に洗い流しても、その洗流しと被加工物の取付けとの間に切粉が落下する事態の発生を完全に回避することはできないし、カバーと吸引装置等とを設ければ、設備コストが高くなり、また、加工能率が低下することを避け得ない。
そこで、本発明は、加工能率の低下を回避しつつできる限り安価に切粉の飛散を抑制し得るようにすることを課題として為されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、工作機械の主軸にフライス工具を取り付け、主軸の回転によりフライス工具を回転軸線まわりに回転させて、被加工物を切削加工するに際し、フライス工具の刃部の旋回軌跡より外周側に、主軸側からフライス工具側に向かう向きに液体の噴流を形成し、その噴流により、刃部によって切削された切粉の飛散を抑制することにより解決される。
また、フライス工具装置を、(a)主軸に取り付けられる被取付部と、(b)その被取付部の軸線から偏心した位置に少なくとも1つの刃部を有する切削部と、(c)それら被取付部および切削部が前記主軸と共に回転する際における前記刃部の旋回軌跡より外周側に前記被取付部側から前記切削部側に向かって噴出し、前記刃部により切削された切粉の飛散を抑制する噴流を形成する噴流形成部とを含むものとすることにより解決される。
【0006】
前述のように、フライス工具を回転させつつそれの刃部により切削加工を行えば、切粉が周辺へ飛散する。特に、加工位置より上方へ飛散したものは、上方に存在する加工治具やカバーの天井面にクーラントにより付着し、堆積する。しかし、フライス工具の刃部の旋回軌跡より外周側に、主軸側からフライス工具側に向かう向きに液体の噴流を形成すれば、飛散しようとする切粉が液体の噴流と衝突して、飛散の方向を変えられる。噴流を形成している液体の量や速度が大きいほど、方向変更の効果が大きく、飛散抑制効果が大きいのであるが、少なくとも上方への飛散は効果的に抑制される。
【発明の効果】
【0007】
このように、液体の噴流を形成すれば切粉の飛散を抑制し得るのであり、噴流の形成は、フライス工具をカバーで覆い、カバー内の空気と共に切粉を吸引する装置に比較すれば、安価にかつ加工能率の低下を回避しつつ実現できる。
【発明の態様】
【0008】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0009】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(2)項が請求項2に、(3)項が請求項3に、(4)項が請求項4に、(5)項が請求項5に、(8)項が請求項6に、(14)項が請求項7に、(16)項が請求項8にそれぞれ相当する。
【0010】
(1)工作機械の主軸にフライス工具を取り付け、主軸の回転によりフライス工具を回転軸線まわりに回転させて、被加工物を切削加工する方法であって、
前記フライス工具の刃部の旋回軌跡より外周側に、前記主軸側から前記フライス工具側に向かう向きに液体の噴流を形成し、その噴流により、前記刃部によって切削された切粉の飛散を抑制することを特徴とするフライス加工方法。
(2)前記噴流を前記フライス工具と共に回転する回転部から噴出させる(1)項に記載のフライス加工方法。
噴流をフライス工具と共に回転する回転部から噴出させれば、フライス工具の回転にかかわらず、噴流と刃部との周方向の相対位置を不変にでき、刃部による切削により発生し、そのため刃部に対応する位置から周辺に飛散しようとする切粉の移動方向を、比較的少ない流量の液体により効率的に変更することができる。
(3)前記噴流を前記フライス工具と共には回転しない非回転部から噴出させる(1)項に記載のフライス加工方法。
噴流をフライス工具と共に回転する回転部から噴出させる場合には、遠心力により噴流が外周方向へ広がることを避け得ないが、フライス工具と共には回転しない非回転部から噴出させれば、噴流の外周方向への広がりが発生せず、所望の向きの噴流を形成することが容易となる。
(4)前記液体として、前記刃部を冷却するクーラントを使用する(1)項ないし(3)項のいずれかに記載のフライス加工方法。
液体としてクーラント以外のものを使用することも可能である。例えば、油がクーラントとして使用されている場合に、水を噴流形成用の液体として使用するのである。油と水とを使用すれば一旦は両者が混ざることになるが、水と油とは容易に分離できるため支障はない。
しかし、噴流形成用の液体としてクーラントを使用すれば、工作機械にもともと設けられているクーラント供給装置を、噴流の形成に利用することも可能となり、好都合である。ただし、液体としてクーラントを使用するからといって、工作機械にもともと設けられているクーラント供給装置を噴流の形成に利用することが不可欠なわけではない。例えば、噴流形成用のクーラントの圧力が、工作機械にもともと設けられているクーラント供給装置により得られる圧力より高い場合等には、別のクーラント供給装置を設けてもよいのである。
(5)主軸に取り付けられる被取付部と、
その被取付部の軸線から偏心した位置に少なくとも1つの刃部を有する切削部と、
それら被取付部および切削部が前記主軸と共に回転する際における前記刃部の旋回軌跡より外周側に前記被取付部側から前記切削部側に向かって噴出し、前記刃部により切削された切粉の飛散を抑制する噴流を形成する噴流形成部と
を含むフライス工具装置。
(1)項に記載のフライス加工方法の実施に好適なフライス工具装置が得られる。
(6)少なくとも使用状態においては前記被取付部と前記切削部とを一体的に有する状態となる工具本体を含み、前記噴流形成部がその工具本体と共に回転する部分に設けられた(5)項に記載のフライス工具装置。
(7)前記噴流形成部が前記工具本体と共に回転する部分に形成された少なくとも1つの噴出口を含む(6)項に記載のフライス工具装置。
工具本体と共に回転する部分に噴出口を設けることは容易であり、噴流形成部を安価に構成することができる。工具本体自体に噴出口を形成すれば特に安価に構成することができる。
(8)前記刃部が周方向に間隔を隔てて複数設けられ、前記噴出口が周方向に間隔を隔ててかつ前記刃部の各々に対応して複数設けられた(7)項に記載のフライス工具装置。
噴流形成部は、刃部から切粉が飛散する確率が高い位置に噴流を形成する位置に設けられる。液体を切粉の飛散抑制に有効な位置に集中的に噴出させることができ、比較的小さい流量の液体で十分な効果を上げることができる。
(9)前記被取付部に設けられ、その被取付部が前記主軸に取り付けられた状態で、一端において、前記主軸に形成された供給通路と連通する一方、他端において、前記少なくとも1つの噴出口と連通する接続通路を含む(7)項または(8)項に記載のフライス工具装置。
本項の特徴によれば、主軸の供給通路をから供給される液体を接続通路により噴出口に導き、容易に噴流を形成することができる。
(10)前記噴流形成部が、前記工具本体に対して前記軸線を中心とする円の周方向に相対移動可能とされた(5)項に記載のフライス工具装置。
噴流形成部を工具本体に対して周方向に相対移動可能とすれば、種々の利点が生じる。下記(14)項に記載の態様や、(15)項と(16)項とを合わせた態様を採用し得ることがその一例である。
(11)前記噴流形成部が、前記工具本体に対して前記軸線まわりに相対回転可能な相対回転部材に設けられた(10)項に記載のフライス工具装置。
(12)前記工具本体が、その工具本体が前記主軸に取り付けられた状態で、主軸に設けられた供給通路と第1端において連通する接続通路を含み、かつ、前記噴流形成部が、
前記相対回転部材に形成された少なくとも1つの噴出口と、
その少なくとも1つの噴出口と、前記接続通路の前記第1端とは反対側の第2端とを、前記相対回転部材と前記工具本体との相対回転位置のいかんを問わず連通状態に保つ継手部と
を含む(11)項に記載のフライス工具装置。
上記継手部を利用すれば、工具本体と相対回転部材との相対回転にかかわらず、液体を主軸の供給通路から相対回転部材の噴出口へ容易に導くことができる。
(13)前記刃部が周方向に間隔を隔てて複数設けられ、前記噴流形成部が前記相対回転部材に周方向に間隔を隔てかつ前記刃部の各々に対応して複数設けられた(11)項または(12)項に記載のフライス工具装置。
(14)前記相対回転部材の前記工具本体に対する相対回転位置を調節することにより、前記噴流形成部と前記刃部との周方向の相対位置を調節する位置調節装置を含む(11)項ないし(13)項のいずれかに記載のフライス工具装置。
刃部から周辺への切粉の飛散方向は、被加工物の被加工部位や、フライス工具の回転数の変化等により変化する。したがって、位置調節装置を設け、噴流形成位置を刃部との関係で最も効率的な位置に調節可能とすることは、少ない流量の液体で効率的に切粉の飛散を抑制する上で、非常に望ましいことである。
(15)前記相対回転部材に設けられ、前記主軸を回転可能に保持しているハウジングと一体的な第1係合部と係合して相対回転部材の回転を阻止する第2係合部を含む(11)項または(12)項に記載のフライス工具装置。
第1係合部を第2係合部に係合させれば、フライス工具の回転に伴う相対回転部材の回転を容易に阻止することができ、噴流の外周方向への広がりを回避することができる。
なお、本態様においては、工作機械の主軸を回転可能に保持するハウジングに液体を供給する供給通路を設ける一方、相対回転部材に接続通路を設け、フライス工具装置が工作機械に取り付けられるのに伴って接続通路が供給通路と連通する状態となるようにすることも可能であり、また、それら供給通路と接続通路との接続部に第1,第2係合部を兼ねさせることもできる。
(16)前記噴流形成部が、前記相対回転部材に、前記切削部を切れ目なく囲む噴流を形成可能な状態で形成された少なくとも1つの噴出口を含む(15)項に記載のフライス工具。
噴流形成部が回転しない場合は、フライス工具の回転に伴って刃部と噴流とが相対回転することとなる。したがって、噴流を切削部を切れ目なく囲む状態で形成し、切粉がいかなる方向へ飛んでも噴流に衝突するようにすることが望ましい。
(17)前記少なくとも1つの噴出口が、前記被取付部の軸線を中心とする円に沿って、噴出口が多数、それら噴出口から噴出した多数の噴流の互いに隣接するものが互いにつながり、一体的な円筒状の噴流と言い得るものとなる距離で互いに近接して形成されたものを含む(16)項に記載のフライス工具装置。
噴出口から噴出した液体は多かれ少なかれ広がる。したがって、多数の噴出口を互いに近接させて設ければ、噴出口自体は不連続であっても、広がった多数の噴流は互いにつながって一体的な円筒状の噴流を形成する。
(18)前記少なくとも1つの噴出口が、前記切削部を切れ目なく一周する状態で形成された環状噴出口を含む(16)項または(17)項に記載のフライス工具装置。
環状噴出口を内周側と外周側とから画定する2部分は互いに離間しており、一方が他方を保持するようにはできないこととなるが、噴出口の内方においてまで切削部を切れ目なく一周している必要はないため、その内方部において、上記2部分を接続すればよい。
環状噴出口は二重,三重に形成されてもよく、前項あるいは次項の噴出口と組み合わせて採用されてもよい。
(19)前記少なくとも1つの噴出口が、前記相対回転部材に形成された複数の円弧状噴出口であって、それら複数の円弧状噴出口の互いに隣接するものの端部同士が半径方向において互いに重なり合ったものを含む(16)項ないし(18)項のいずれかに記載のフライス工具装置。
複数の円弧状噴出口同士は互いに離間しているが、それら円弧状噴出口の端部が半径方向において互いに重なり合っているため、切削部側から外周側を見た場合に、噴流の切れ目はないことになり、(16)項の要件を満たし得る。
【実施例】
【0011】
以下、請求可能発明のいくつかの実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、上記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
【0012】
図1ないし図6に、一実施例としてのフライス工具装置を示す。本フライス工具装置は、工具本体10を備えている。工具本体10は、別部材とされた第1部材20および第2部材22を含むものであり、それら第1部材20と第2部材22とが互いに固定されることによって一体的な工具本体10として機能する。
【0013】
第1部材20は、図1および図2に示すように、工作機械の主軸(図示省略)に工具本体10を取り付けるための被取付部30を備え、また、第1部材20の中心軸線方向において被取付部30とは反対側の端部には、第2部材22を保持する保持部32を備えている。第1部材20の内部には、軸方向に延びる接続通路34が形成されている。接続通路34は、主軸に工具本体10が取り付けられた状態で、主軸に設けられたクーラント供給通路(図示省略)と第1端36側において連通する。上記クーラント供給通路は、図示しないクーラント供給装置に接続されている。接続通路34の第1端36側の部分は、第1部材20の中心軸線に沿って延びている。また、第1端36とは軸方向反対側の第2端38側の部分は、第1端36側の部分の直径方向に互いに隔たった位置から二股に分岐させられてそれぞれ半径方向に延び、さらに、途中から軸方向に延びて第1部材20の軸方向に直角な端面40に開口している。接続通路34は、本実施例では、第1端36側が第2端38側より大径の円形断面を成している。第1部材20にはまた、第1部材20の直径方向に隔たった2個所であって、接続通路34の第2端38の開口とは周方向の位相がそれぞれ異なる(本実施例では90度位相が異なる)2個所に、キー部材46が端面40から軸方向に突出する状態で固定され、第1部材20と一体的なキーとされている。
【0014】
第2部材22は、図3ないし図5に示すように、概して円筒状を成す部材であり、その中心軸線方向の一端部が第1部材20に保持される被保持部50とされるとともに、他端部が切削部52とされている。切削部52は、第2部材22の中心軸線から偏心した位置に複数(図示の例では8個)の刃部54を周方向に等角度間隔で備えている。
【0015】
刃部54は、本実施例においては、図3および図6に示すように、カートリッジ本体56に着脱可能に固定されたチップ58により構成されている。カートリッジ本体56およびチップ58がカートリッジ60を構成しており、このカートリッジ60が第2部材22の本体に着脱可能に固定されることにより、チップ58が第2部材22の刃部を構成しているのである。カートリッジ60は、チップ58の軸方向(長手方向)の位置が位置調整装置62によって適切に調整された後、固定装置たるクランプねじ64が締め付けられることによって第2部材22の本体に固定される。位置調整装置62は、カートリッジ本体56のチップ58とは反対側の長手方向の端面に形成された傾斜面(係合面)66と、その傾斜面66に対応して形成された傾斜面(係合面)68を有する調整部材70と、調整部材70の半径方向の位置を調整するための調整ねじ72とを備えるものである。チップ58はすくい面74と逃げ面76との交線として切刃78を形成している。
【0016】
第2部材22の内部には、第1部材20の保持部32が収容される段付状の収容穴80が軸方向に貫通して形成されている。第2部材22の被保持部50は、その外周面が他の部分より小径とされ、直径方向に隔たった2個所に、軸方向に直角な端面81と外周面とに開口するキー溝82が形成されている。
【0017】
第1部材20と第2部材22とは以下のようにして互いに固定される。第2部材22のキー溝82と第1部材20のキー部材46との位相が合わされた状態で、第2部材22の端面81と第1部材20の端面40とが当接するまで第1部材20の保持部32が第2部材22の収容穴80に挿入された後、第2部材22の収容穴80の刃部54側の開口から締付け用雄ねじ部材88(図1および図2参照)が挿入されて第1部材20の保持部32内に形成された雌ねじ穴86に螺合され、締付け用雄ねじ部材88の頭部89が、収容穴80の刃部54側の大径穴部とそれと隣接する小径穴部との間に形成された肩面90に当接して端面40と共同して第2部材22を締め付けることにより、第1,第2部材20,22がそれぞれ相対回転不能かつ軸方向に相対移動不能に固定される。
【0018】
上述のようにして第1,第2部材20,22が互いに固定された状態では、前記接続通路34の第2端38と、第2部材22に形成された接続通路94の第1端96とが連通させられるように、各部材の相対位置関係が設定されている。接続通路94は、第2部材22の収容穴80の内周面に直径方向に隔たった2個所に形成された半円形断面の溝92と第1部材20の外周面とにより画定される内部空間を含んでいる。詳細には、第1,第2部材20,22が互いに固定された状態における収容穴80(溝92を含む)の内周面と第1部材20の保持部32の外周面との間に形成された空間により接続通路94が構成される。接続通路94は、軸方向に延び、その第1端96とは反対側の第2端98は、クーラント供給用通路100の後端102と連通している。クーラント供給用通路100の後端102とは反対側の先端側は、軸方向において刃部54側に向かうにつれて外周側に延び、刃部54近傍に開口している。クーラント供給用通路100の先端部には、他の部分より小径の開口である噴出口106を有するノズル部108が一体的に設けられており、この噴出口106から噴出されるクーラントが、刃部54に向かって良好に噴射されるように、その角度および開口面積の大きさ等が設定されている。
【0019】
また、第1,第2部材20,22が互いに固定された状態で、接続通路34の第2端38は、接続通路94を経て、第2部材22内部に形成された噴流形成用通路110の第1端112と連通している。噴流形成用通路110は、軸方向において被保持部50側に向かうにつれて外周側に延び、第1端112とは反対側の第2端114において第2部材22の外周面に開口している。
【0020】
図3ないし図5に示すように、第2部材22の外周側には、第3部材118が固定されている。第3部材118は、概して円筒状を成し、その軸方向一端部が半径方向内向きに突出するフランジ状の被取付部120とされ、被取付部120の内側面122と第2部材22の被保持部50側の端面124とが当接する状態で第2部材22の外周面に第3部材118の内周面が嵌合され、複数のボルト126が第2部材22の周方向に隔たった複数個所に形成された雌ねじ穴128に螺合されることによって互いに固定される。第3部材118は第2部材22に対して相対回転可能な相対回転部材とされるとともに、第3部材118の被取付部120には、1つの雌ねじ穴128に対応して、ボルト穴130,131,132が周方向に隔たった複数個所(図示の例では3個所)に形成されており、ボルト穴130,131,132のいずれかを適宜選択することにより、第2部材22と第3部材118との相対回転位置、ひいては刃部54と後述する噴出口158との周方向の相対位置を状況に応じて調節することができる。なお、被取付部120に円弧状の長穴を形成し、その長穴内において連続的に第2部材22と第3部材118との相対回転位置を調節できるようにしてもよい。
【0021】
第3部材118の内周面には、周方向に円環状に延びる環状溝が形成され、この環状溝の内周側開口が第2部材22によって塞がれることによって、環状通路140が形成されている。環状通路140は、第3部材118が第2部材22に取り付けられた状態で、前述の噴流形成用通路110の第2端114と連通する。環状通路140は、第3部材118内部に形成された軸方向に延びる噴流形成用通路150の後端152と連通している。環状通路140によって、第3部材118と第2部材22との相対回転位置のいかんを問わず、噴流形成用通路110と噴流形成用通路150との連通状態が保たれる。第3部材118に環状通路140を挟んで軸方向に隔たって設けられた複数(2つ)のシール部材142,144によって環状通路140の液密が保持されている。
【0022】
噴流形成用通路150の先端部には、ノズル部156が一体的に設けられており、その開口が噴出口158とされている。噴出口158は、軸方向において刃部54よりやや後退した(被保持部50側の)位置に開口している。したがって、主軸から接続通路94を経て供給されるクーラントは、クーラント供給用通路100を経て刃部54側に供給されるとともに、噴流形成用通路110を経てノズル部156にも供給される。噴出口158を含む噴流形成用通路150は、周方向に間隔を隔ててかつ刃部54の各々に対応して複数設けられており、主軸に取り付けられた工具本体10が主軸と共に回転する際における刃部54の旋回軌跡より外周側に開口し、噴流形成用通路110,150を経たクーラントが被保持部50側から切削部52側に向かって噴出させられ、刃部54により切削された被加工物の切粉の飛散を抑制する噴流が形成される。
【0023】
ノズル部156は、噴出口158を内周側と外周側とから画定する2部分により構成され、本実施例では、第3部材118の内周側に別体の円環状部材160が固定されることにより、両部材118,160が一体のものとして機能する。第3部材118の内周面には円環状の環状溝162が形成され、その環状溝162から軸方向に延びる浅い軸方向溝が形成されており、これら環状溝162および軸方向溝の内周側開口が円環状部材160によって塞がれることにより、ノズル部156と、そのノズル部156を噴流形成用通路150に接続する接続通路とが形成されている。ノズル部156内の通路は、噴流形成用通路150のそれ以外の部分より横断面積が小さくされるとともに、周方向に延びる円弧状を成し、その先端開口が、他の部分より半径方向の寸法が小さい円弧状の噴出口158とされている。したがって、ノズル部156から周方向に広い部分円筒状の噴流が安定して噴出させられる。
【0024】
図3および図6に示すように、第3部材118には、軸方向において環状通路140と環状溝162との間であって、かつ、噴流形成通路150とは干渉しない位置に、前述したカートリッジ60を固定するためのクランプねじ64を締め付ける工具を挿入するための締付け用窓170が周方向に延びて形成されている。また、第3部材118の、締付け用窓170より軸方向において環状通路140側であって、かつ、噴流形成通路150とは干渉しない位置に、カートリッジ60の長手方向の位置を調整する調整ねじ72を操作する工具を挿入するための操作用窓174が周方向に延びる状態で形成されている。これら締付け用窓170および操作用窓174は、複数のカートリッジ60に対応してそれぞれ設けられている。
【0025】
本実施例においては、フライス工具装置による被加工物の加工時に、噴出口158から刃部54の旋回軌跡(厳密には切刃78の旋回軌跡)より外周側に噴流が形成されることにより、被加工物から周辺への切粉の飛散が良好に抑制される。また、噴流を形成する液体として刃部54を冷却するクーラントを利用するとともに、噴流形成用通路110,第3部材118,ノズル部156等、比較的簡単な構成の追加で切粉飛散防止用の噴流を形成させることとしたため、コスト削減効果も得られる。さらに、第2部材22の刃部54と第3部材118の噴出口158との周方向の相対位置を調節できることにより、刃部54に対して最適な位置に噴流を形成することができる。
【0026】
図1〜図6に示す実施例では、噴出口158を含む噴流形成部が、工具本体10(第1部材20および第2部材22)と共に回転する回転部たる第3部材118に形成されていたが、工具本体10と共には回転しない非回転部から噴流を噴出させるようにしてもよい。その一例を図7に示す。図7に示す実施例において、上記図1〜図6に示す実施例と同様の構成を有する部分には同じ符号を付して説明を省略する。図7に示すように、工具本体10の一部を成す第2部材22の外周側に、相対回転部材200が第2部材22に対して軸線まわりに相対回転可能に設けられている。相対回転部材200は、概して円筒状を成し、噴出口204を有するノズル部206側とは軸方向反対側の被取付部210において、第2部材22に相対回転可能かつ軸方向に相対移動不能に保持されている。被取付部210は、半径方向内向きに突出するフランジ状を有し、被取付部210の噴出口204側の端面212と第2部材22の被保持部50側の端面124との間には、スラスト軸受214が設けられるとともに、被取付部210の内周面216と第2部材22の被保持部50の外周面との間には、ラジアル軸受218が設けられている。220はシール部材である。
【0027】
被取付部210の端面212とは反対側の端面222には、軸方向において主軸側に突出する係合部材224が一体的に設けられている。係合部材224は、主軸を回転可能に保持するハウジング(図示省略)に一体的に設けられた係合溝(図示省略)と係合することにより、相対回転部材200が工具本体10と共に回転することを阻止する。本実施例においては、上記係合溝が第1係合部を構成し、係合部材224が第2係合部を構成しているのである。第1係合部を係合部材224と同様に、ハウジングから係合部材224とは逆向きに突出して、係合部材224と係合する突部とすることも可能である。
【0028】
相対回転部材200の噴出口204は、切削部52を切れ目なく一周する状態で形成された環状噴出口である。ノズル部206は、噴出口204を内周側と外周側とから画定する2部分により構成され、本実施例では、相対回転部材200の内周側に別体の円環状部材230が固定されて一体のものとして機能する。ノズル部206内の通路は一円周に沿って延びている。噴流形成用通路150は、周方向に等間隔の複数位置において軸方向に延びる状態で形成されているが、これら複数の噴流形成用通路150が環状通路232において合流させられた上で、さらにノズル部206に連通させられている。そして、ノズル部206内の通路は、噴流形成用通路150等、それ以外の部分より横断面積が小さくされているため、工具本体10が主軸と共に回転する際における刃部54の周方向の位置にかかわらず、切削部52を切れ目なく囲む状態で噴流を安定して形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】請求可能発明の一実施例であるフライス工具装置の工具本体の一部を示す正面図(一部断面)である。
【図2】図1に示す工具本体の一部の左側面図である。
【図3】上記フライス工具装置の工具本体の別の部分を示す正面図(一部断面)である。
【図4】図3に示す工具本体の別の部分の左側面図である。
【図5】図3に示す工具本体の別の部分の右側面図である。
【図6】図3に示す工具本体の別の部分のうちの刃部およびその近傍を示す正面図である。
【図7】別の実施例であるフライス工具装置の工具本体の一部を示す正面図(一部断面)である。
【符号の説明】
【0030】
10:工具本体 20:第1部材 22:第2部材 30:被取付部 34:接続通路 52:切削部 54:刃部 94:接続通路 110:噴流形成用通路 118:第3部材 150:噴流形成用通路 158:噴出口 200:相対回転部材 204:噴出口
【出願人】 【識別番号】000237499
【氏名又は名称】富士精工株式会社
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
【出願日】 平成18年7月12日(2006.7.12)
【代理人】 【識別番号】100079669
【弁理士】
【氏名又は名称】神戸 典和

【識別番号】100111394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 光俊


【公開番号】 特開2008−18486(P2008−18486A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−191270(P2006−191270)