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【発明の名称】 ワーク保持装置及びワーク加工方法
【発明者】 【氏名】松澤 正彦

【氏名】瀬崎 祐二

【要約】 【課題】円盤部の中央に筒状のボス部を備えたワークを高い生産能率で加工することができる、ワーク保持装置及びワーク加工方法を提供することを課題とする。

【構成】中間製品30を回転させながら、中ぐりバイト41を矢印(1)のように、穴33に挿入して、「ボス部の穴加工」を開始する。ボス部の穴加工の結果、想像線で示すように、穴33は仕上げられる。続いて、スローアウエイチップ42を備えるバイト43で、筒部34の外周及び円盤部31の前面を切削する。これで、「円盤部の外周加工」及び「円盤部の面加工」を実施することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤部の中央に筒状のボス部を備えたワークを加工するために、ワークを保持するワーク保持装置であって、
このワーク保持装置は、前記ボス部を径外方又は径内方から抑えるクランプ爪と、前記円盤部の一側面の外周部を、前記ボス部の軸方向へ弾性的に押圧する側面押圧機構と、を備えていることを特徴とするワーク保持装置。
【請求項2】
前記側面押圧機構は、前記クランプ爪を移動可能に支持する基盤に設けた固定リングと、この固定リングに前記ボス部の軸方向へ移動可能に嵌めた可動リングと、この可動リングを押出す弾発部材と、前記ワークに接触させるために、前記可動リングに嵌めた当接部材とからなることを特徴とする請求項1記載のワーク保持装置。
【請求項3】
前記当接部材は、樹脂製部材であることを特徴とする請求項2記載のワーク保持装置。
【請求項4】
前記ワークは、円盤部の外周から前記ボス部に平行に筒部が延びており、この筒部の先端が前記側面押圧機構に接触することを特徴とする請求項1記載のワーク保持装置。
【請求項5】
前記ワークは、無段変速機用のプーリ半体であることを特徴とする請求項4記載のワーク保持装置。
【請求項6】
円盤部の中央に筒状のボス部を備えたワークを加工するワーク加工方法であって、
前記ボス部を径外方から抑えるクランプ爪で拘束すると共に前記円盤部の一側面の外周部を側面押圧機構で前記ボス部の軸方向へ弾性的に押圧することでワークを保持する保持工程と、
前記ボス部の穴加工と、前記円盤部の面加工と、前記円盤部の外周加工とを順次実施する加工工程と、からなるワーク加工方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、無段変速機用のプーリ半体に代表される円盤部の中央に筒状のボス部を備えたワークを加工する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無段変速機用のプーリ半体に施す一連の加工方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平8−336729号公報(図4、図5、図8、図9)
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図6は従来の技術の基本原理を説明する図であり、(a)に示すように、クランプ部材101、101で、ワーク102のボス部103を保持する。そして、中ぐり砥石104で、ボス部103の穴105を研削する。この研削は「ボス部の穴加工」に相当する。
【0004】
次に、(b)に示すように、研削砥石106で、ワーク102の外周部107を研削する。この研削は「円盤部の外周加工」に相当する。
続いて、(c)において、(a)で仕上げた穴105に拡張クランプ108、109を挿入し、拡張させる。これで、ワーク102のセンターが決まる。次に、(b)で仕上げた外周部107に、受け部材111を当てる。この状態で、円盤部112の面を研削砥石113で研削する。この研削は「円盤部の面加工」に相当する。
【0005】
次に、受け部材111を中心側へ移動して、外周部107を完全に抑え、砥石114で穴105にキー溝を形成する。
【0006】
以上に述べた従来の技術では、(b)と(c)は、保持の仕方が全く相違するため、別々の研削盤で加工を行う。すなわち、(b)の「円盤部の外周加工」が完了したら、ワーク102を研削盤から外し、別の研削盤に移し、この別の研削盤で(c)の「円盤部の面加工」を実施する。
【0007】
ワークを外し、別の研削盤に取付けると、この間はアイドルタイム(研削が行えない無駄な時間)となる。アイドルタイムは生産能率の低下を招く。アイドルタイムの短縮化が望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、円盤部の中央に筒状のボス部を備えたワークを高い生産能率で加工することができる、ワーク保持装置及びワーク加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、円盤部の中央に筒状のボス部を備えたワークを加工するために、ワークを保持するワーク保持装置であって、このワーク保持装置は、前記ボス部を径外方又は径内方から抑えるクランプ爪と、前記円盤部の一側面の外周部を、前記ボス部の軸方向へ弾性的に押圧する側面押圧機構と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明では、側面押圧機構は、クランプ爪を移動可能に支持する基盤に設けた固定リングと、この固定リングにボス部の軸方向へ移動可能に嵌めた可動リングと、この可動リングを押出す弾発部材と、ワークに接触させるために、可動リングに嵌めた当接部材とからなることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明では、当接部材は、樹脂製部材であることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、ワークは、円盤部の外周からボス部に平行に筒部が延びており、この筒部の先端が側面押圧機構に接触することを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明では、ワークは、無段変速機用のプーリ半体であることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明は、円盤部の中央に筒状のボス部を備えたワークを加工するワーク加工方法であって、
前記ボス部を径外方から抑えるクランプ爪で拘束すると共に前記円盤部の一側面の外周部を側面押圧機構で前記ボス部の軸方向へ弾性的に押圧することでワークを保持する保持工程と、
前記ボス部の穴加工と、前記円盤部の面加工と、前記円盤部の外周加工とを順次実施する加工工程と、からなるワーク加工方法である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、ワーク保持装置は、ボス部を抑えるクランプ爪と、円盤部の一側面の外周部を、ボス部の軸方向へ弾性的に押圧する側面押圧機構と、を備えているので、「円盤部の外周加工」と「円盤部の面加工」とを、1台の旋盤で実施することができる。アイドルタイムは切削工具の交換時間だけになる。
この結果、アイドルタイムを微小にすることができ、生産能率を向上させることができる。
【0016】
請求項2に係る発明では、側面押圧機構は、固定リングと、可動リングと、弾発部材と、当接部材とで構成される。すなわち、単純な要素で構成したので、側面押圧機構の低コスト化やコンパクト化を容易に達成することができる。
【0017】
請求項3に係る発明では、当接部材は、樹脂製部材とした。樹脂はナイロンが好適である。樹脂であれば、ワークに疵を付ける心配がなく、ワークの仕上げ利品質を高めることができる。
【0018】
請求項4に係る発明は、ワークは、円盤部の外周からボス部に平行に筒部が延びており、この筒部の先端が側面押圧機構に接触することを特徴とする。筒部を側面押圧機構で押すことで、筒部の外周部の加工が可能となる。
【0019】
請求項5に係る発明では、ワークは、無段変速機用のプーリ半体であることを特徴とする。すなわち、本発明は無段変速機用のプーリ半体に好適であり、プーリ半体の加工コストを低減することができる。
【0020】
請求項6に係る発明によれば、「円盤部の外周加工」と「円盤部の面加工」とを、1台の旋盤で実施することができる。アイドルタイムは切削工具の交換時間だけになる。この結果、アイドルタイムを微小にすることができ、生産能率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は本発明に係るワーク保持装置の断面図であり、ワーク保持装置10は、旋盤の主軸11に設けた基盤12と、この基盤12の前面の中心に設けた受けブロック13と、基盤12の前面に移動可能に設けた複数(例えば3本)のクランプ爪14と、基盤12の前面外周部にスペーサリング15を介してボルト16で取付けた側面押圧機構20とからなる。
【0022】
図2は本発明に係る側面押圧機構の詳細図であり、側面押圧機構20は、(a)に示すように、基盤12にスペーサリング15を介して設けた固定リング21と、この固定リング21に図左右へ移動可能に嵌めた、T字断面の可動リング22と、この可動リング22を押出す弾発部材23と、可動リング22に嵌めた当接部材24とからなる。
【0023】
当接部材24はナイロンなどの樹脂リングが好適である。鋼より軟らかい樹脂であれば鋼製ワークに疵を付ける心配がない。
弾発部材23は、シリンダ25と、このシリンダ25に収めたスプリング26と、このスプリング26で付勢される移動子27とで構成する。このような構成の弾発部材23を、基盤12の前面に付設したサブプレート28に、4〜8個等ピッチで埋設する。
【0024】
(b)において、当接部材24に図左向きの外力Fが作用すると、当接部材24は、可動リング22と共に図左側へ移動する。スプリング26、26の反発力の和がFに釣り合ったときに、移動は停止する。すなわち、想像線で示した当接部材24は実線で示す位置まで後退する。
【0025】
以上に説明したワーク保持装置10が、対象とするワークについて次に説明する。
図3はワークの断面図であり、ワーク30は、無段階変速機用のプーリ半体を具体例とする。すなわち、ワークとしてのプーリ半体の中間製品30は、鍛造によるブランク加工で製造され、円盤部31の中央に筒状のボス部32を一体的に備え、このボス部32に穴33が開けられて、円盤部31の外周からボス部32に平行に延びる筒部34を一体的に備える。
【0026】
そして、ボス部32の後端面35及び筒部34の後端面36は、ブランク加工後に機械加工が施された平坦面である。ボス部32の外周基部37も予め機械加工が施されている。
【0027】
なお、ワーク30は、中央に筒状のボス部32を一体的に備える円盤部31だけであってもよい。すなわち、筒部34が無い。このときには、円盤部31の一側面の外周部が、図3に示す後端面36に相当する。
【0028】
以上に説明したプーリ半体の中間製品30を、本発明のワーク保持装置10にて、切削加工を施すワーク加工方法を次に説明する。
図4は本発明に係るワーク加工方法の説明図であり、先ず、プーリ半体の中間製品30を受けブロック13に当てる。このときに、筒部34の後端面36が当接部材24を図左へ押す。図2(b)で説明したように、当接部材24はスプリングの弾発作用で、筒部34の後端面36をFの力で図右へ弾性的に押す。
この状態で、クランプ爪14、14を閉じて、ボス部32の外周基部37を保持させる。
【0029】
次に、中間製品30を回転させながら、中ぐりバイト41を矢印(1)のように、穴33に挿入して、「ボス部の穴加工」を開始する。ボス部の穴加工の結果、想像線で示すように、穴33は仕上げられる。
続いて、スローアウエイチップ42を備えるバイト43で、筒部34の外周及び円盤部31の前面を切削する。これで、「円盤部の外周加工」及び「円盤部の面加工」を実施することができる。
【0030】
すなわち、円盤部31の中央に筒状のボス部32を備えたワーク30を加工するワーク加工方法は、前記ボス部32を径外方から抑えるクランプ爪14、14で拘束すると共に前記円盤部31の一側面の外周部36を側面押圧機構の当接部材24で前記ボス部32の軸方向へ弾性的に押圧することでワーク30を保持する保持工程と、前記ボス部32の穴加工と、前記円盤部31の面加工と、前記円盤部31の外周加工とを順次実施する加工工程と、からなる。
【0031】
ワーク保持装置10にセットしたままで、「ボス部の穴加工」と「円盤部の外周加工」と「円盤部の面加工」の3工程を実施することができることを特徴とする。
中ぐりバイト41をバイト43にごく短時間で交換することができ、殆ど連続して3工程を実施するため、加工時間は短くなり、生産性を向上させることができる。
【0032】
(実験例)
本発明に係る実験例を以下に述べる。なお、本発明は実験例に限定されるものではない。
図5は実験の形態を示す図であり、(a)ではボス部32だけを保持し、(b)ではボス部32を保持すると共に円筒部34の後端面36を弾性的に押圧し、(c)ではボス部32を保持すると共に円筒部34の後端面36を非弾性的に支える。これらの形態で実験を行った。
【0033】
主軸の回転速度(周速)は、150m/分、バイトの送りは0.08mm/回転、バイトの切込みは0.2mmとした。
【0034】
【表1】


【0035】
実験の結果、比較例1(図5(a)の形態で実験)では、筒部の先端にビビリが発生して、切削面が荒れた。そのため、評価は×となった。
比較例2(図5(c)の形態で実験)でも、筒部の先端にビビリが発生して、切削面が荒れた。図5(c)において、ボス部32をクランプ爪14、14で拘束すると共に非弾性ステー44で円筒部34の後端面36をハードに支えたが、非弾性ステー44が円筒部34と一体化して共振し、結果としてビビリを引き起こしたと推定される。
【0036】
実施例(図5(b)は、ビビリは発生しなかった。円筒部34の後端面36を男性的に支えるため、円筒部34の振れを減衰させることができた。そして、円筒部35に発生する振れはスプリング26、26で吸収するため、共振の発生を抑制することができたと推定される。
すなわち、円筒部34の後端面36を非弾性的に支えるよりの、弾性的に支える方が、ビビリ対策として有効であることが確認できた。
【0037】
尚、本発明が対象とするワークは、無段変速機用のプーリ半体の他、傘歯車やスプロケットであってもよく、要は円盤部の中央に筒状のボス部を備えたものであれば、種類は問わない。
また、当接部材は、樹脂の他、硬質ゴム、金属(銅合金、アルミニウム合金、鉛合金など炭素鋼より軟らかい金属)、布が適用可能であり、種類を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、無段変速機用のプーリ半体の加工に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係るワーク保持装置の断面図である。
【図2】本発明に係る側面押圧機構の詳細図である。
【図3】ワークの断面図である。
【図4】本発明に係るワーク加工方法の説明図である。
【図5】実験の形態を示す図である。
【図6】従来の技術の基本原理を説明する図である。
【符号の説明】
【0040】
10…ワーク保持装置、11…主軸、12…基盤、13…受けブロック、14…クランプ爪、20…側面押圧機構、21…固定リング、22…可動リング、23…弾性部材、24…当接部材、30…ワーク(プーリ半体の中間製品)、31…円盤部、32…ボス部、33…ボス部の穴、34…筒部、36…円盤部の一側面の外周部(筒部の後端面)。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成18年6月28日(2006.6.28)
【代理人】 【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎

【識別番号】100094020
【弁理士】
【氏名又は名称】田宮 寛祉


【公開番号】 特開2008−6528(P2008−6528A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−178677(P2006−178677)