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【発明の名称】 ねじ部材締結装置および組立て体の製造方法
【発明者】 【氏名】古矢 正明

【氏名】高橋 正彦

【氏名】柴 岳人

【要約】 【課題】本発明は、ねじ軸に対するナットの軸芯合せを確実に行い、かつ自動締結を可能とするねじ部材締結装置および、組立て体の製造方法を提供する。

【解決手段】ねじ部材締結装置Tは、駆動モータ4の駆動軸4aによって回転駆動されるドライバ軸部12および、ナットNを真空吸着するナット保持部Wを備え、ナットをねじ軸Gに螺合する締付け部2を備え、上記締付け部は、ドライバ軸部内に軸方向に沿って移動自在に挿通され先端部がねじ軸端部に接触してねじ軸軸芯に軸芯を合せるよう軸方向とは直交する方向に撓み変形するパイプ構造の倣い軸部Zと、ドライバ軸部に軸方向とは直交する方向に変形自在なカップリング20を介して連結され倣い軸部の撓み変形にともなってカップリングとともに傾斜する倣い回転軸21と、倣い回転軸の端部に倣い回転軸とは一体に回転駆動され、かつ倣い回転軸の軸方向に沿って移動自在に支持されるビット軸部25とを具備する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸を備えた駆動源と、
この駆動源の上記駆動軸によって回転駆動されるドライバ軸部を有するとともに、ナットを真空吸着するナット保持部を備え、保持するナットをねじ軸に螺合する締付け部とを備えたねじ部材締結装置であって、
上記締付け部は、
上記ドライバ軸部内に軸方向に沿って挿通され、先端部がねじ軸端部に接触して、ねじ軸軸芯に軸芯を合せるよう軸方向とは直交する方向に撓み変形するパイプ構造の倣い軸部と、
上記ドライバ軸部に、軸方向とは直交する方向に変形自在なカップリングを介して連結され、上記倣い軸部の撓み変形にともなって上記カップリングとともに傾斜する倣い回転軸と、
この倣い回転軸の端部に、倣い回転軸と一体に回転駆動され、かつ倣い回転軸の軸方向に沿って移動自在に支持されるビット軸部と
を具備することを特徴とするねじ部材締結装置。
【請求項2】
上記ナット保持部は、上記ビット軸部の端部と上記倣い軸部の端部との間に形成されることを特徴とする請求項1記載のねじ部材締結装置。
【請求項3】
上記締付け部は、
開口部を介してカバー体で覆われ、
このカバー体は、上記開口部から外部空気を吸引し、かつカバー体内および締付け部内を介して外部へ排気する掃気手段と連通することを特徴とする請求項1および請求項2のいずれかに記載のねじ部材締結装置。
【請求項4】
上記カバー体の開口部は、上記倣い回転軸の変形量を一定範囲内に制限するストッパ機能を有することを特徴とする請求項3記載のねじ部材締結装置。
【請求項5】
上記請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のねじ部材締結装置を用いて、ナットとねじ軸とを締結する工程を有することを特徴とする組立て体の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ軸(ボルト)の軸芯に対してナットの軸芯を自動的に合せるとともに、ナットを自動回転させて締結するねじ部材締結装置および、このねじ部材締結装置を用いた組立て体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばノート型のパーソナルコンピューター(以下、「ノートパソコン」と呼ぶ)である組立て体を製造するのに、各構成部品の組立ておよび組立てられた構成部品を筐体に締結(取付け)するにあたって、ねじ軸(ボルト)とナットからなるねじ部材が多数必要である。
対象とする組立て体が小型であるので、ねじ部材のねじ径が小さく、人手によるねじ締結作業では工数がかかってしまう。そこで、ナットとねじ軸とからなるねじ部材を自動締結するねじ部材締結装置である、いわゆるナットランナが多用されていて、生産性の向上および省力化によるコストの低減化が図られている。
【0003】
この種のナットランナにおいて、ナットを保持する六角孔を備えた締付け具の軸芯とねじ軸の軸芯とが一致し、互いの芯合せが正確であるときは問題がないが、実際には正確な芯合せが困難で、ズレが生じる場合が多い。このとき、ねじ軸に対してナットが斜め方向から嵌められ、締付け不良が発生する。
そこで、図7に示すように、締付け具Kの六角孔r形状をナットNの外形よりも大に形成しておくことで、締付け具Kを回転させれば、ナットNの頂角qが必然的に六角孔rの辺部に当接する。締付け具Kの六角孔rとナットNは互いに角度ズレがあるが、両者の中心は一致するので、ナットNは円滑に回転してねじ軸に螺着される。
【0004】
ただし、このような構成では、上述の寸法設定から予め、締付け具Kの六角孔rにナットNを保持することができない。まず、作業者がねじ軸にナットNを正しく芯合せしてナットNを保持し、そのうえでナットNが位置ズレしたり、傾かないようにして締付け具Kの六角孔rを掛合し、そのままの状態でナットNを回転させなければならない。
特に、締付け具Kの六角孔rをナットNに掛合すると、ナットNの保持ができなくなる。そして、締付け具Kを回転させると六角孔rのいずれかの辺部が先にナットNの頂角qに当たって、ナットNの姿勢が傾き易い。すなわち、ねじ軸の軸芯に対してナットNの軸芯がズレ易く、正しいねじ締めが困難となる。
【0005】
[特許文献1]には、ナットを真空吸引するナットランナと、このナットランナ内に軸方向移動可能に設けられナットのねじ孔から進入する雄ねじ部により移動させられる管体と、この管体内に軸方向移動可能に設けられナットのねじ孔を閉塞する栓体と、検知ロッドおよび接点部を備えたナット締付け装置が開示されている。
ところで、保持するナットの軸芯に対して、螺合すべき相手方の雄ねじ部の軸芯にズレが生じる場合がある。このときは、特に明細書中に記載はないが、ナット締付け装置が軸方向とは直交する方向にある程度移動できる余裕(ガタ)を持っていて、位置ズレを吸収する。
【0006】
しかしながら、軸方向全長が長く、かつ重量のある駆動源を含めた装置全体を、傾けることなく姿勢を保持したまま移動しなければならないので、円滑な動きを保証できない。また、雄ねじ部を有する可変抵抗器側で、ナットの軸芯に対して正しく位置合せするのは不可能ではないにしろ、かなり複雑な機構となってしまう。
また、[特許文献2]には、モータの出力軸に連結したソケットで、ボルト・ナットを締め付けるナットランナにおいて、モータの出力軸とソケットとを、ソケットを軸直交方向に揺動可能な、少なくとも2節のジョイント部材を介して連結する技術が開示されている。
【特許文献1】実公昭63−48355号公報
【特許文献2】特開平 7− 9356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の[特許文献2]のナットランナを用いれば、ボルト・ナットに対してソケットが偏心(オフセット)していても、ジョイントとソケットが揺動して、ソケットの嵌入穴をボルト・ナットに嵌入でき、正確に芯合せが可能である。そのあと、モータを駆動し、ソケットを回転させてボルト・ナットを締め付けるようになっている。
すなわち上記ナットランナは、ボルトとナットがある程度螺合している状態で、ソケットとボルト・ナットの軸芯がズレている場合に有利である。しかしながら、ノートパソコンの組立ての場合は締結すべきねじ部材が多数あり、しかもねじ部材の径が小さいので、予め、ボルトとナットを螺合させておくのは手間がかかり、使い勝手が悪い。
【0008】
本発明は上記事情にもとづきなされたものであり、その目的とするところは、ねじ部材を構成するナットを予め保持して、ねじ軸に対するナットの軸芯合せを確実に行い、かつ自動締結を可能とするねじ部材締結装置および、ねじ部材締結装置を用いて組立て体を製造する組立て体の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を満足するため本発明のねじ部材締結装置は、駆動源の駆動軸によって回転駆動されるドライバ軸部および、ナットを真空吸着するナット保持部を備え、保持するナットをねじ軸に螺合する締付け部を備え、上記締付け部は、ドライバ軸部内に軸方向に沿って挿通され、先端部がねじ軸端部に接触して、ねじ軸軸芯に軸芯を合せるよう軸方向とは直交する方向に撓み変形するパイプ構造の倣い軸部と、ドライバ軸部に軸方向とは直交する方向に変形自在なカップリングを介して連結され、上記倣い軸部の撓み変形にともなってカップリングとともに傾斜する倣い回転軸と、この倣い回転軸の端部に倣い回転軸と一体に回転駆動されかつ倣い回転軸の軸方向に沿って移動自在に支持されるビット軸部とを具備する。
さらに、上記目的を満足するため本発明の組立て体の製造方法は、上記ねじ部材締結装置を用いて、ナットとねじ軸とを締結する工程を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ねじ部材を構成するナットを予め保持して、ねじ軸に対するナットの軸芯合せを円滑に行い、かつ自動締結を可能とする効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面にもとづいて説明する。
図1は第1の実施の形態におけるねじ部材締結装置Tの縦断正面図である。
上記ねじ部材締結装置Tは、駆動部1と、締付け部2と、これら駆動部1と締付け部2との間に介在する中間駆動部3とから構成される。
はじめに、上記駆動部1から説明すると、駆動源である駆動モータ4が駆動軸4aを下方に向けた状態で、モータケースを兼用するベース体5に支持される。上記ベース体5は、筐体状をなしていて、駆動部1から中間駆動部3を介して締付け部2まで水平方向に延設される。
【0012】
上記駆動モータ4の駆動軸4aには駆動ギヤ6が嵌着固定される。駆動ギヤ6には、中間駆動部3を構成する第1のアイドラギヤ7Aが噛合され、さらに第1のアイドラギヤ7Aには第2のアイドラギヤ7Bが噛合される。第1、第2のアイドラギヤ7A,7Bは、上記ベース体5に設けられる支軸8a,8bに一対ずつの軸受け具9a,9bを介して枢支され、かつ上記ベース体5内に収容される。
上記締付け部2は、上記第2のアイドラギヤ7Bに噛合する従動ギヤ10を備えている。従動ギヤ10は、軸方向を垂直方向に向けた円筒状のドライバ軸部12の外周部に嵌着固定され、互いに一体に回転自在である。さらにドライバ軸部12の外周部で、上記従動ギヤ10の上下部には、一対の軸受け具13の内輪部が嵌着固定されている。
【0013】
軸受け具13の外輪部は円筒体からなる固定軸部14に取付けられていて、この固定軸部14は上記駆動部1から中間駆動部3を介して締付け部2に延設されるベース体5の端部に連結される。固定軸部14の周面一部には、上記第2のアイドラギヤ7Bが介挿する開口部aが設けられる。
上記固定軸部14の上端開口部は蓋板15によって閉塞されていて、上記ドライバ軸部12の上端開口部も蓋板15によって覆われる。蓋板15の中心部に孔部bが設けられるとともに、蓋板15上面にはホース接続部16が載設される。このホース接続部16は中心軸に沿って透孔17が設けられ、透孔17下部には倣い用パイプ18の上端部が取付けられる。すなわち、倣い用パイプ18はホース接続部16から吊持される。
【0014】
上記倣い用パイプ18は、極く薄肉のパイプ体(たとえば、肉厚0.2mmのSUSパイプ)が用いられている。剛体ではあるけれども、軸方向とは直交する方向に比較的小さな付勢力が作用した状態でも、容易に付勢力に沿って撓み変形する特性を有している。
上記ホース接続部16にはホース継手が設けられ、ここに真空ポンプ等の真空吸着源と連通するホースが接続される(いずれも図示しない)。したがって、ホース接続部16の透孔17および倣い用パイプ18の内径孔は、ホースを介して真空吸着源と連通する真空用孔17となっている。
【0015】
上記ドライバ軸部12の下端部は、上記固定軸部14の下端部からわずかに下方に突出していて、ここにカップリング20を介して倣い回転軸21が連結される。換言すれば、倣い回転軸21はドライバ軸部12にカップリング20を介して吊持される。
そして、上記カップリング20の存在により、上記倣い回転軸21に対して中心軸とは直交する方向(水平方向)に付勢力が作用した状態で、カップリング20より上部側のドライバ軸部12の軸芯位置に何らの変化も無いが、カップリング20およびカップリング20より下部側の倣い回転軸21は付勢力に沿って変位自在である。
【0016】
上記倣い回転軸21は、上下方向の略中間部までがドライバ軸部12と同一の内径および外径の小径部21aが形成される。この小径部21aの下部側は、小径部21aよりもわずかに拡径された拡径部21bが形成される。拡径部21bの下部側は、さらに拡径された回転アーム部21cが設けられてなる。
上記ホース接続部16に吊持される倣い用パイプ18は、ドライバ軸部12の内径部を介してカップリング20から倣い回転軸21の軸方向に沿って垂下される。倣い用パイプ18の下端部が上記倣い回転軸21の拡径部21bと対向する部位において、倣い用パイプ18の内径とは同一であるけれども、外径が大である連結パイプ22が連結される。
【0017】
上記倣い用パイプ18と連結パイプ22とで、倣い軸部Zが構成される。上記連結パイプ22の外径は、後述するように保持するナットNの内径よりもわずかに小さい寸法に形成される。そして連結パイプ22は、倣い用パイプ18よりも肉厚である分、倣い用パイプ18のように撓み変形しない。
上記連結パイプ22の下端部は、上記倣い回転軸21の下端部に形成される回転アーム部21c下端よりも下方に延設されている。連結パイプ22の内径部に形成される上記真空用孔17の下端には先端軸部23が密に嵌め込まれていて、真空用孔17下端は閉塞される。
【0018】
この先端軸部23は、連結パイプ22下端から下方へ突出する円錐状先端gを備えている。後述するように、ねじ部材を構成するねじ軸(ボルト)Gの端部に設けられる軸端テーパ部hと、先端軸部23の円錐状先端gは全く同一形状をなす。
上記回転アーム部21cには、周方向に所定間隔を存して複数のカムフォロア24が設けられていて、このカムフォロア24を介してビット軸部25が支持される。すなわち、ビット軸部25は、カムフォロア24により倣い回転軸21と一体に回転自在であり、かつビット軸部25に設けられるカムフォロア支持部dの範囲内で、倣い回転軸21に対して上下方向に移動自在である。
【0019】
上記ビット軸部25は、回転アーム部21c下端から下方へ突出し、かつ下端が上記連結パイプ22下端と略同一の高さに揃えられる略円筒体である。ビット軸部25の下端内径側には、ねじ部材を構成するナットNの外形形状および外径寸法と一致する六角孔が設けられている。
連結パイプ22下端部において、先端軸部23が嵌め込まれた部位の上部には、連結パイプ22の周面に沿い所定間隔を存して複数の連通孔26が設けられる。これら連通孔26の存在により、倣い軸部Zを構成する倣い用パイプ18から連結パイプ22の内径部に亘って形成される真空用孔17と、ビット軸部25下端内径部との間が連通される。
【0020】
後述するようにビット軸部25の六角孔にナットNの外形が掛合され、連結パイプ22の外周面にナットNの内径部が嵌め込まれ、さらに真空ポンプから接続ホースを介して倣い軸部Zである倣い用パイプ18と連結パイプ22の真空用孔17に真空圧が作用する。このことから、倣い回転軸21と一体のビット軸部25下端と倣い軸部Zとの間に、ナットNを真空吸着して保持する、ナット保持部Wが構成される。
上記倣い回転軸21の拡径部21b内周面と連結パイプ22外周面との間、およびビット軸部25内周面と連結パイプ22外周面との間には、それぞれロータリーブッシュ27が介在される。
【0021】
これらロータリーブッシュ27の存在により、倣い回転軸21とビット軸部25が回転駆動されても、倣い軸部Zはその影響を受けることがなく、いわゆる連れ回りや捩りの現象は生じない。さらに、ロータリーブッシュ27の存在により、ビット軸部25は倣い軸部Zに対して上下方向への移動が可能であり、互いに移動の影響を受けることがない。
つぎに、上記ねじ部材締結装置Tを用いて、組立て体である、たとえばノートパソコンのケースに対し、構成部品である被締結部材を取付けて組立て、製造する方法について説明する。
はじめに、真空ポンプが駆動され、倣い軸部Zに連通する真空用孔17と、連結パイプ22に設けられる連通孔26を介してビット軸部25の先端内径部に真空圧がかけられる。ナットNは外形をビット軸部25に設けられる六角孔に掛合し、内径部を連結パイプ22端部外周面に掛合した状態で真空圧を受け、ナット保持部Wに確実に保持される。
【0022】
つぎに、ねじ部材締結装置Tの直下部に、たとえばノートパソコンのケースが移動してきて上昇駆動される。逆に、ねじ部材締結装置Tを昇降機構に支持し、筐体に対して降下するようにしてもよい。
予め、上記ケースには構成部品等の被締結部材が載置され、この被締結部材にはねじ軸(ボルト)が挿通される。上記ねじ軸は、ナット保持部Wに保持されるナットNと螺合すべき相手方となるものであり、ねじ軸のねじ部が上方へ向けてセットされている。そして、先端軸部23がねじ軸に接近し、ついには接触する。
図3は先端軸部23がねじ軸Gと接触したときの部材位置関係図であり、図4は先端軸部23がねじ軸Gと接触したときの接触部に作用する力と成分の方向を示した図である。
【0023】
先端軸部23がねじ軸Gに接触した状態で、ねじ軸Gの軸芯Lbに対して先端軸部23の軸芯Laが必ずしも一致するとは限らず、ほとんどの場合、図3に示すように位置ズレしてしまう。このときの位置ズレ量δが、ねじ軸Gの軸芯Lbに対する先端軸部23の軸芯Laの偏心量であり、後述するように先端軸部23のねじ軸Gに対する補正量δとなる。
図4に示すように、先端軸部23の軸芯Laがねじ軸Gの軸芯Lbとは偏心した位置で当接すると、接触位置から先端軸部23に対して接触反力FWが発生する。この接触反力FWは斜め方向に作用するから、水平方向と垂直方向のそれぞれに、水平分力Fhと垂直分力Ftが発生する。
【0024】
図2は上記ねじ軸Gの軸芯Lbに対してナットNの軸芯Laが位置ズレしている場合の、倣い状態を説明する図である。
先端軸部23の軸芯Laがねじ軸Gの軸芯Lbとは偏心した位置で当接すると、このときに発生する接触反力FWの水平分力Fhと垂直分力Ftは、以下に述べるようにして吸収される。
すなわち、ねじ軸Gを支持する支持部の上昇移動もしくは、ねじ部材締結装置Tの下降移動が継続され、先端軸部23の円錐状先端gが接触反力FWを受けることで、先端軸部23を連結パイプ22とともに支持する倣い用パイプ18、すなわち倣い軸部Zが、図に示すように軸方向とは直交する方向である水平分力Fh方向へ撓み変形する。
【0025】
この倣い軸部Zの撓み変形にともなって、カップリング20が同方向へ変形し、カップリング20よりも下部側の倣い回転軸21とビット軸部25が同方向へ一体に傾く。すなわち、接触反力FWのうちの水平分力Fhは、倣い軸部Zと倣い回転軸21およびビット軸部25の傾斜により吸収される。
また、接触反力FWのうちの垂直分力Ftは、ねじ軸Gを支持する支持部の上昇移動もしくは、ねじ部材締結装置Tの下降移動の継続により吸収される。そのため、先端軸部23の円錐状先端gは、ねじ軸Gの軸端テーパ部hに接触しながら、軸端テーパ部h形状に倣って降下し、かつ水平方向に移動する。
【0026】
そして、ついには円錐状先端gが軸端テーパ部hに完全に嵌り込み、互いの軸芯La,Lbが一致する。同時に、ナットNのねじ部Naとねじ軸Gのねじ部Gaとが正しく一致することとなる。このとき、ビット軸部25はカムフォロア支持部dの範囲内で最大限上昇変位する。
上記状態が確認されたら、ねじ軸G支持部の上昇移動もしくは、ねじ部材締結装置Tの下降移動を停止したうえで、駆動モータ4に制御信号を送り、駆動軸4aの駆動を開始させる。駆動軸4aに取付けられる駆動ギヤ6が回転駆動され、この駆動ギヤ6に噛合する第1のアイドラギヤ7Aと第2のアイドラギヤ7Bが回転し、さらに従動ギヤ10が回転する。
【0027】
上記従動ギヤ10は、ドライバ軸部12とカップリング20および倣い回転軸21を介してビット軸部25を同時に回転させ、ナット保持部Wに保持されるナットNが回転駆動される。上述したように、ナットNは軸芯Naがねじ軸Gの軸芯Gaに正しく合された状態で回転駆動されるので、ねじ軸Gに対してナットNが傾くことがなく、円滑にナットがねじ込まれる。
所定量、カムフォロア24を介してビット軸部25が降下することで、ねじ軸Gに対してナットNが確実にねじ込まれ、ケースに被締結部材を締結することになる。ここでは図示しないセンサがビット軸部25の所定量移動を検知し、その検知信号を受けた制御部は駆動モータ4の駆動を停止する。
【0028】
そして、ねじ部材締結装置TはつぎのナットNを吸着保持し、対象とする被締結部材と対向するとともに、被締結部材に挿通するねじ軸Gに対してナットNを締結すべく上述の作用を繰り返す。
このようにして本発明のねじ部材締結装置Tは、締付け部2にナットNを保持し、倣い軸部Zを構成する倣い用パイプ18の撓み変形と、カップリング20を介して倣い回転軸21およびビット軸部25の傾斜により、ねじ軸Gの軸芯Gaに対してナットNの軸芯Naを倣わせ、速やかに一致させることができる。
しかも、互いの芯合せの間に、ねじ軸GおよびナットNに対する衝撃の発生が無く、したがってねじ軸GとナットNの姿勢が一定に保持され傾きが無いので、円滑なねじ込み作業を行うことができる。
【0029】
図5(A)はねじ部内径が4mmのナットNの傾斜状態を示す図。図5(B)は倣い用パイプ18として、たとえば外径が3mm、肉厚が0.2mm、長さが95mmのステンレスパイプを使用した場合の反力およびナット傾斜に対する位置ズレ補正量の特性図である。
図5(B)から、先端軸部23の軸芯Laがねじ軸Gの軸芯に対して0.2mm位置ズレしていて、補正量δが0.2mmである場合、位置ズレ補正に必要な力は15gf以下のわずかな反力ですむ。
位置ズレ吸収のために、倣い用パイプ18の撓み変形(弾性変形)を用いているために、力をゼロにすれば元の位置に戻る。ガイド機構を用いた場合のような摩擦等による位置ズレや移動開始するのに必要な力がないことも再現性に優れている。
【0030】
倣い用パイプ18の変位と力の関係は、パイプ径、肉厚、長さを変えることで自由に設定可能である。なお、倣い用パイプ18の撓み変形を用いることで、ナットNに対する水平の保持に傾斜の虞れがあるが、実際には、図5(B)から、0.2mmの位置ズレに対してナットNの傾斜量(浮き量)は、わずかに0.008mm(8μm)以下であり、ナットNのねじ部Naがねじ軸Gのねじ部Gaに螺合する際の保持水平度には影響しない値である。
図6は第2の実施の形態におけるねじ部材締結装置Taの縦断正面図である。
このねじ部材締結装置Taは、基本的には図1にもとづいて説明した第1の実施の形態でのねじ部材締結装置Tと同様、駆動部1と、締付け部2および中間駆動部3とから構成される。したがって、同一構成部材には同番号を付して新たな説明は省略する。
【0031】
なお、中間駆動部3については1個のアイドラギヤ7のみ示していて、第1の実施の形態での中間駆動部3のように、第1、第2のアイドラギヤ7A,7Bを備えていないが、いずれの構成であっても支障がない。
第2の実施の形態におけるねじ部材締結装置Taでは、後述するようにカバー体Nと掃気装置(掃気手段)Sを備えたことを特徴としている。
すなわち、締付け部2を構成する固定軸部14の下端に上カバー30の上端が一体に連結される。上カバー30はカップリング20と倣い回転軸21の小径部21aおよび拡径部21bをカバーし、この下端部には拡径部21bの外周面と若干の隙間を介して対向する開口部eを有する。
【0032】
倣い回転軸21の下端に形成される回転アーム部21cは、先端カバー31によって覆われる。先端カバー31は回転アーム部21cの外周面に密着しており、回転アーム部21cとともにカムフォロア24の支軸が貫通される。先端カバー31の下端は上記ビット軸部25の外周面と若干の隙間を介して対向する開口部fを有する。
これら上カバー30と先端カバー31とでカバー体Nが構成される。さらに、上記駆動ギヤ6等を収容するベース体5の側端面には掃気用配管32が接続されていて、図示しない真空ポンプ等の掃気源に連通される。これら掃気用配管32と掃気源で掃気装置Sが構成される。
上記掃気源を作動することで、掃気用配管32を介してベース体5内部に吸引圧が作用する。この吸引圧は固定軸部14の周面に設けられアイドラギヤ7が介挿する開口部aを介して固定軸部14内部に作用する。さらに、下部側の軸受け具13を介して倣い回転軸21と上カバー30との間の空間部に作用し、上カバー30の下端開口部eから外部空気を上カバー30内に吸引する。
【0033】
同時に、上部側の軸受け具13を介してドライバ軸部12の上端開口部iから、ドライバ軸部12内径部と倣い用パイプ18外径部との間、倣い回転軸21内径部と倣い用パイプ18外径部との間および、回転アーム部21c内径部とビット軸部25外径部との間に作用し、先端カバー31の下端開口部fから外部空気を先端カバー31内に吸引する。
ねじ部材締結作用時に、ねじ部材締結装置Ta周辺で粉塵やグリス粒子が飛散したとしても、これら飛散粒子は外部空気とともに先端カバー31の下端開口部fおよび上カバー30の下端開口部eから、各カバー30、31内部に吸引される。これら飛散粒子は吸引圧の作用にともない矢印方向に沿って導かれ、ついにはねじ部材締結装置Taから排気される。
【0034】
これにより、ワークとしてのねじ部材のダスト汚染を防止でき、かつ周辺部に配管等の部材を配置する必要がないため、メンテナンス時の配管外しが不要であり、清掃が容易に済むなどの利点がある。
さらに、先に説明したようにねじ軸Gの軸芯Gaに対してナットNの軸芯Naが偏心している場合には、倣い用パイプ18が撓み変形し、同時にカップリング20や倣い回転軸21等が傾斜して先端軸部23の円錐状先端gがねじ軸Gの軸端テーパ部hに接触しながら倣う。
【0035】
このとき上記ねじ部材締結装置Taにおいては、上カバー30の傾きがなく、したがって上カバー30の下端開口部e周縁と、傾いた倣い回転軸21の拡径部21bとの隙間量が変化する。そこで、上カバー30の開口部e寸法を、倣い回転軸21の変形量が一定範囲内に制限するように定めることで、倣い用パイプ18の移動範囲のメカストッパとして機能させることができる。
なお、第2の実施の形態における掃気装置Sは、上カバー30と先端カバー31との2つのカバーからなるカバー体Nを備えたがこれに限定されるものではなく、上カバー30と先端カバー31を一体化したカバー体であってもよい。
第1、第2の実施の形態において、駆動部1のモータ4の回転トルクを中間駆動部3を構成するアイドラギヤ7A,7B,7により、従動部である締付け部2に伝達するようにしたが、これに限定されるものではなく、歯付きベルトや、スチールベルト等のベルト類で代用してもよい。駆動部1のモータ4の代用として、中空軸モータを用いて駆動軸を直接回転駆動することも可能である。
【0036】
さらに、本発明は上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。そして、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明における第1の実施の形態に係る、ねじ部材締結装置の縦断面図。
【図2】同実施の形態に係る、締付け部の倣い状態を説明する図。
【図3】同実施の形態に係る、先端軸部がねじ軸と接触したときの部材位置関係図。
【図4】同実施の形態に係る、先端軸部がねじ軸と接触したときの接触部に作用する力と成分の方向を示した図。
【図5】同実施の形態に係る、ナット傾斜の定義を説明する図と、位置ズレ補正量に対する反力およびナット傾斜の計算によって求められた特性図。
【図6】本発明における第2の実施の形態に係る、ねじ部材締結装置の縦断面図。
【図7】従来のナット締付け作業を説明する図。
【符号の説明】
【0038】
4a…駆動軸、4…駆動モータ(駆動源)、12…ドライバ軸部、N…ナット、W…ナット保持部、G…ねじ軸、2…締付け部、Z…倣い軸部、20…カップリング、21…倣い回転軸、25…ビット軸部、e,f…開口部、30…上カバー、31…先端カバー、S…掃気装置(掃気手段)。
【出願人】 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【出願日】 平成18年9月25日(2006.9.25)
【代理人】 【識別番号】100058479
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦

【識別番号】100091351
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 哲

【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠

【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊

【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司

【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘

【識別番号】100084618
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 貞男

【識別番号】100092196
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 良郎


【公開番号】 特開2008−73831(P2008−73831A)
【公開日】 平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願番号】 特願2006−259315(P2006−259315)