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【発明の名称】 圧入方法およびその装置
【発明者】 【氏名】滝瀬 真一郎

【氏名】酒井 鐘太郎

【氏名】菊地 哲也

【氏名】渡部 剛

【要約】 【課題】回転主軸を有する装置を用いて、回転主軸に過大な圧入反力を受けずに母材内に嵌合部材を無理なく圧入できる圧入方法およびその装置を提供する。

【構成】主軸11には、ツールホルダ12を介し圧入装置21を設ける。この圧入装置21には、トルクリミッタ22と、スラスト吸収機構23と、圧入反力相殺機構24とを順次設ける。圧入反力相殺機構24は、ネジ部31に相反する方向の圧入反力を作用させて相殺させるものであり、ネジ部31に設けた正ネジ部分31aと、この正ネジ部分31aと同軸上に設けた逆ネジ部分31bと、正ネジ部分31aと螺合し一方の嵌合部材Bを保持する正ナット部分32aと、逆ネジ部分31bと螺合し他方の嵌合部材Cを保持する逆ナット部分32bとを具備している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転主軸を有する装置の回転主軸の回転トルクを圧入推進力に変換し、
この圧入推進力により母材内に嵌合部材を圧入する
ことを特徴とする圧入方法。
【請求項2】
回転トルクを螺合部により圧入推進力に変換する
ことを特徴とする請求項1記載の圧入方法。
【請求項3】
螺合部に相反する方向の圧入反力を作用させる
ことを特徴とする請求項2記載の圧入方法。
【請求項4】
回転主軸の回転速度と時間との積により、回転停止位置を設定する
ことを特徴とする請求項2または3記載の圧入方法。
【請求項5】
回転主軸の回転速度と時間との積を、必要な値より大きく設定し、
必要な値以上の回転トルク伝達は遮断する
ことを特徴とする請求項4記載の圧入方法。
【請求項6】
回転主軸を有する装置の回転主軸により回転されるネジ部と、
ネジ部に螺合されて母材内に嵌合部材を圧入する回転止めされたナット部と
を具備したことを特徴とする圧入装置。
【請求項7】
ネジ部に相反する方向の圧入反力を作用させて相殺させる圧入反力相殺機構
を具備したことを特徴とする請求項6記載の圧入装置。
【請求項8】
圧入反力相殺機構は、
ネジ部に設けられた正ネジ部分と、
正ネジ部分と同軸上に設けられた逆ネジ部分と、
正ネジ部分と螺合し一方の嵌合部材を保持する正ナット部分と、
逆ネジ部分と螺合し他方の嵌合部材を保持する逆ナット部分と
を具備したことを特徴とする請求項7記載の圧入装置。
【請求項9】
圧入反力相殺機構は、
ネジ部と螺合するナット部を有し母材の嵌合部材圧入側とは反対側を係止する治具
を具備したことを特徴とする請求項7記載の圧入装置。
【請求項10】
回転主軸と圧入反力相殺機構との間に設けられて、ネジ部から回転主軸に作用するスラストを吸収するスラスト吸収機構
を具備したことを特徴とする請求項8記載の圧入装置。
【請求項11】
スラスト吸収機構は、
一方の回転部材と、
一方の回転部材に対し回転方向一体にかつスラスト方向に一定の範囲内で移動自在に嵌合された他方の回転部材と、
一方の回転部材に対し他方の回転部材を伸長方向に付勢するスプリングと
を具備したことを特徴とする請求項10記載の圧入装置。
【請求項12】
回転主軸とネジ部との間に設けられて設定値を超える回転主軸の回転トルク伝達を遮断するトルクリミッタ
を具備したことを特徴とする請求項6乃至11のいずれか記載の圧入装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、母材内に嵌合部材を圧入する圧入方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークにブッシュを圧入する作業は、油圧シリンダで行なうことが一般的である。
【0003】
また、加工機の主軸に圧入用工具を装着し、主軸の軸方向運動機能を利用して、ワークにメタルを圧入するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、マシニングセンタのスピンドルにブッシュホルダ付の工具ホルダを挿着し、スピンドルとテーブルとの相対的な軸方向運動機能を利用して、ワークにブッシュを圧入するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−283150号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】実開昭63−107533号マイクロフィルム(第1頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記加工機の主軸およびマシニングセンタのスピンドルは、軸方向運動も可能であるが、回転運動を主とするものであり、回転主軸に大きな圧入反力を受ける仕事をするようには設計されていないので、そのままブッシュ圧入作業に用いることは、望ましくない。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、回転主軸を有する装置を用いて、回転主軸に過大な圧入反力を受けずに母材内に嵌合部材を無理なく圧入できる圧入方法およびその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された発明は、回転主軸を有する装置の回転主軸の回転トルクを圧入推進力に変換し、この圧入推進力により母材内に嵌合部材を圧入する圧入方法である。
【0008】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の圧入方法において、回転トルクを螺合部により圧入推進力に変換する方法である。
【0009】
請求項3に記載された発明は、請求項2記載の圧入方法において、螺合部に相反する方向の圧入反力を作用させる方法である。
【0010】
請求項4に記載された発明は、請求項2または3記載の圧入方法において、回転主軸の回転速度と時間との積により、回転停止位置を設定する方法である。
【0011】
請求項5に記載された発明は、請求項4記載の圧入方法において、回転主軸の回転速度と時間との積を、必要な値より大きく設定し、必要な値以上の回転トルク伝達は遮断する方法である。
【0012】
請求項6に記載された発明は、回転主軸を有する装置の回転主軸により回転されるネジ部と、ネジ部に螺合されて母材内に嵌合部材を圧入する回転止めされたナット部とを具備した圧入装置である。
【0013】
請求項7に記載された発明は、請求項6記載の圧入装置において、ネジ部に相反する方向の圧入反力を作用させて相殺させる圧入反力相殺機構を具備したものである。
【0014】
請求項8に記載された発明は、請求項7記載の圧入装置における圧入反力相殺機構が、ネジ部に設けられた正ネジ部分と、正ネジ部分と同軸上に設けられた逆ネジ部分と、正ネジ部分と螺合し一方の嵌合部材を保持する正ナット部分と、逆ネジ部分と螺合し他方の嵌合部材を保持する逆ナット部分とを具備したものである。
【0015】
請求項9に記載された発明は、請求項7記載の圧入装置における圧入反力相殺機構が、ネジ部と螺合するナット部を有し母材の嵌合部材圧入側とは反対側を係止する治具を具備したものである。
【0016】
請求項10に記載された発明は、請求項8記載の圧入装置において、回転主軸と圧入反力相殺機構との間に設けられて、ネジ部から回転主軸に作用するスラストを吸収するスラスト吸収機構を具備したものである。
【0017】
請求項11に記載された発明は、請求項10記載の圧入装置におけるスラスト吸収機構が、一方の回転部材と、一方の回転部材に対し回転方向一体にかつスラスト方向に一定の範囲内で移動自在に嵌合された他方の回転部材と、一方の回転部材に対し他方の回転部材を伸長方向に付勢するスプリングとを具備したものである。
【0018】
請求項12に記載された発明は、請求項6乃至11のいずれか記載の圧入装置において、回転主軸とネジ部との間に設けられて設定値を超える回転主軸の回転トルク伝達を遮断するトルクリミッタを具備したものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載された発明によれば、回転主軸を有する装置の回転主軸の回転トルクから変換された圧入推進力により、母材内に嵌合部材を圧入するので、回転主軸に過大な圧入反力を受けずに嵌合部材を無理なく圧入できる。
【0020】
請求項2に記載された発明によれば、螺合部により、回転主軸の小さな回転トルクから必要な圧入推進力が得られる。
【0021】
請求項3に記載された発明によれば、螺合部に相反する方向の圧入反力を作用させて相殺させることにより、回転主軸に作用するスラストを軽減できる。
【0022】
請求項4に記載された発明によれば、回転主軸の回転速度と時間との積により、位置センサを設置することなく母材内に嵌合された嵌合部材の回転停止位置を設定することができる。
【0023】
請求項5に記載された発明によれば、回転速度と時間との積を必要な値より大きく設定した上で、不必要な回転トルク伝達を遮断するので、母材の所定の位置まで確実に嵌合部材を圧入できるとともに、回転主軸に過大な負荷が作用することを防止できる。
【0024】
請求項6に記載された発明によれば、回転主軸を有する装置の回転主軸の回転トルクから、ネジ部およびナット部を介して変換された圧入推進力により、母材内に嵌合部材を圧入するので、回転主軸に過大な圧入反力を受けずに嵌合部材を無理なく圧入できる。
【0025】
請求項7に記載された発明によれば、圧入反力相殺機構によりネジ部に相反する方向の圧入反力を作用させて相殺させることで、回転主軸に作用するスラストを軽減できる。
【0026】
請求項8に記載された発明によれば、正ネジ部分および逆ネジ部分により、ネジ部に作用する圧入反力を相殺させて、回転主軸に作用するスラストを軽減できるとともに、2つの嵌合部材を同時に効率よく母材に圧入できる。
【0027】
請求項9に記載された発明によれば、ネジ部と螺合するナット部を有する治具が、母材の嵌合部材圧入側とは反対側を係止するので、ネジ部に作用する相反する方向の圧入反力を相殺させて、回転主軸に作用するスラストを軽減でき、母材の有底孔または貫通孔の片側にも嵌合部材を圧入できる。
【0028】
請求項10に記載された発明によれば、正ナット部分と逆ナット部分とが保持する一方の嵌合部材と他方の嵌合部材との圧入量に差が生じたり、一方の嵌合部材と他方の嵌合部材とに作用する摩擦力の相違で圧入反力が異なることにより、回転主軸に作用するおそれのあるスラストが圧入反力相殺機構にて発生しても、回転主軸と圧入反力相殺機構との間に設けられたスラスト吸収機構により回転主軸へのスラストを吸収し遮断できる。
【0029】
請求項11に記載された発明によれば、一方の回転部材と他方の回転部材とスプリングとにより、スラスト吸収機構を簡単に構成でき、また、一方の回転部材に対し他方の回転部材をスプリングにより伸長方向に付勢するので、ネジかみ合わせ開始時の押し付け力を得ることができる。
【0030】
請求項12に記載された発明によれば、トルクリミッタにより、ネジ部側に作用した過負荷が回転主軸に及ぶことを防止でき、圧入終了後の急激なトルク上昇による過負荷から回転主軸を保護できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を、図1乃至図9に示された一実施の形態、図10に示された他の実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
図1に示されるように、マシニングセンタなどの工作機械は、回転主軸(以下、「主軸11」という)を有する装置であり、この主軸11には、ツールホルダ12が嵌着されている。このツールホルダ12は、主軸11内に嵌着されるテーパシャンク部16の後端に、主軸内クランプ機構(図示せず)により挟持され引張られるプルスタッド部17が設けられ、テーパシャンク部16の前端にツールチェンジャ嵌着用のフランジ部18を介してツール取付部19が設けられている。
【0033】
このツール取付部19に、ツールに替えて圧入装置21が設けられている。この圧入装置21は、トルクリミッタ22と、スラスト吸収機構23と、圧入反力相殺機構24とが順次設けられたものである。
【0034】
圧入反力相殺機構24は、回転トルクを圧入推進力に変換する螺合部30を備え、主軸11により回転されるネジ部31と、このネジ部31に螺合されて母材A内に嵌合部材B,Cを圧入する回転止めされたナット部32とを具備している。
【0035】
母材Aは、例えばポンプ本体などであり、図示しない母材ホルダにより定位置に固定されている。嵌合部材B,Cは、例えば軸受に用いられるブッシュなどの円筒部材である。
【0036】
圧入反力相殺機構24は、ネジ部31に相反する方向の圧入反力を作用させて相殺させるものであり、ネジ部31に設けられた正ネジ部分31aと、この正ネジ部分31aと同軸上に設けられた逆ネジ部分31bと、正ネジ部分31aと螺合し一方の嵌合部材Bを保持する正ナット部分32aと、逆ネジ部分31bと螺合し他方の嵌合部材Cを保持する逆ナット部分32bとを具備した構造である。
【0037】
正ネジ部分31aと逆ネジ部分31b、正ナット部分32aと逆ナット部分32bには、それぞれ等しいピッチのネジ溝が逆方向に形成されている。
【0038】
正ナット部分32aには、取付板33を介して第1の回止体34が取付けられ、この回止体34は、第1の移動案内台35のレール36に移動自在にかつ嵌脱自在に嵌合されている。
【0039】
逆ナット部分32bには、取付板41を介して第2の回止体42が取付けられ、この回止体42は、第2の移動案内台43のレール44に移動自在に嵌合されている。この第2の移動案内台43には、レールの両端にストッパ45,46が設けられ、一方のストッパ46と回止体42との間に復帰用のスプリング47が設けられている。
【0040】
また、前記スラスト吸収機構23は、主軸11と圧入反力相殺機構24との間に設けられて、ネジ部31から主軸11に作用するスラストを吸収するもので、一方の回転部材51と、この一方の回転部材51に対し回転方向一体にかつスラスト方向に一定の範囲内で移動自在に嵌合された他方の回転部材52と、一方の回転部材51に対し他方の回転部材52を伸長方向に付勢するスプリング53とを具備した構造である。
【0041】
例えば、一方の回転部材51は、角形断面の長尺部材であり、他方の回転部材52は、この一方の回転部材51と嵌合する角形断面の穴をスラスト方向に穿設した部材であり、回転運動は伝達するが、スラスト方向の相対移動は可能にしてスラストを吸収する。
【0042】
さらに、一方の回転部材51にスラスト方向の長穴54を穿設し、この長穴54に他方の回転部材52を通してピン55を挿入することで、一方の回転部材51に対する他方の回転部材52の移動範囲を規制する。
【0043】
このスラスト吸収機構23は、スプライン嵌合またはキー溝嵌合などの構造を採用しても良い。
【0044】
また、前記トルクリミッタ22は、主軸11とネジ部31との間に設けられて設定値を超える主軸11の回転トルク伝達を遮断するもので、主軸11側の回転伝達部材(図示せず)とネジ部31側の回転伝達部材(図示せず)とを皿状スプリング56の反発力により圧接係合させて、一定の回転トルクを伝達するとともに、主軸11にかかる負荷トルクが設定値を超えるとトルクの伝達を遮断する。このトルクリミッタ22の設定値は、嵌合部材圧入終了時の回転トルクに設定する。
【0045】
次に、この実施の形態の作用を説明する。
【0046】
図2は、原理を示し、螺合部30により、主軸11の回転トルクTを圧入推進力Fp1,Fp2に変換し、この圧入推進力Fp1,Fp2により母材A内に嵌合部材B,Cを圧入する。
【0047】
このとき、螺合部30には、摩擦力f1,f2に基づく相反する方向の圧入反力F1,F2が作用するが、母材Aの両側から同時に嵌合部材B,Cを圧入することで、圧入反力F1,F2が相殺され、主軸11および母材Aに対するスラストftがゼロとなる。
【0048】
図3に示されるように、一方の正ネジ部分31aを主軸11により回転させて、一方の嵌合部材Bを保持した正ナット部分32aを、この一方の正ネジ部分31aに螺合セットする。
【0049】
図4に示されるように、第2の移動案内台43上の逆ナット部分32bに他方の嵌合部材Cを嵌合セットする。
【0050】
図5に示されるように、主軸11を移動して、正ナット部分32aを備えた第1の回止体34を第1の移動案内台35のレール36に位置合せするとともに、一方の嵌合部材Bと他方の嵌合部材Cとを対向させる。
【0051】
図6に示されるように、第1の回止体34を第1の移動案内台35のレール36に嵌合するとともに、逆ネジ部分31bを逆ナット部分32bと螺合開始させる。
【0052】
図7に示されるように、正ナット部分32aにより一方の嵌合部材Bを母材Aの一側から孔内に圧入開始すると同時に、逆ナット部分32bにより他方の嵌合部材Cを母材Aの他側から孔内に圧入開始する。
【0053】
図8に示されるように、一方の嵌合部材Bと他方の嵌合部材Cの圧入が完了した後も、主軸11の回転を短時間継続し、その間はトルクリミッタ22により主軸11からの回転伝達を遮断する。
【0054】
図9に示されるように、主軸11を逆回転させて、正ナット部分32aを一方の嵌合部材Bから解放するとともに、第1の回止体34を第1の移動案内台35のレール36から外し、同時に逆ナット部分32bを他方の嵌合部材Cから解放する。第2の回止体42は、スプリング47により原位置に復帰する。
【0055】
このように、ネジ部31に嵌合部材B,Cを同軸上に配置し、同様にネジ部31に回転止されたナット部32を螺合し、ネジ部31を回転することによりナット部32を移動させ、このナット部32の圧入推進力により、嵌合部材B,Cを母材Aの孔に嵌込む。
【0056】
このとき、正ネジ部31aと逆ネジ部31bにより、母材Aの両側から同時に嵌合部材B,Cを圧入することで、圧入反力F1,F2が相殺され、主軸11および母材Aに対するスラストftが0となる。
【0057】
そして、このように本来は、ネジ部31に作用する相反する方向の圧入反力F1,F2が相殺されて0になるはずであるが、正ナット部分32aと逆ナット部分32bとが保持する一方の嵌合部材Bと他方の嵌合部材Cとの圧入量に差が生じたり、一方の嵌合部材Bと他方の嵌合部材Cとに作用する摩擦力の相違で圧入反力F1,F2が異なることによりスラストftが発生するので、このスラストftを0にするため、スラスト吸収機構23の角形断面の一方の回転部材51を、角形断面の穴を有する他方の回転部材52内で相対的にスラスト方向に移動させて、スラストftを吸収する。
【0058】
また、主軸11の回転速度と時間との積により、回転停止位置を設定するが、このとき、主軸11の回転速度と時間との積が必要な値より大きくなるように時間を設定し、必要な値以上の回転トルク伝達はトルクリミッタ22により遮断する。
【0059】
次に、この実施の形態の効果を説明する。
【0060】
主軸11の回転トルクから変換された圧入推進力により、母材A内に嵌合部材B,Cを圧入するので、主軸11に過大な圧入反力を受けずに嵌合部材B,Cを無理なく圧入できる。特に、螺合部30により、主軸11の小さな回転トルクから必要な圧入推進力が得られる。
【0061】
螺合部30に相反する方向の圧入反力F1,F2を作用させて相殺させることにより、主軸11に作用するスラストを軽減できる。
【0062】
主軸11の回転速度と時間との積により、位置センサを設置することなく母材A内に嵌合された嵌合部材B,Cの回転停止位置を設定することができる。
【0063】
その際、回転速度と時間との積を必要な値より大きく設定した上で、不必要な回転トルク伝達をトルクリミッタ22により遮断するので、母材Aの所定の位置まで確実に嵌合部材B,Cを圧入できるとともに、主軸11に過大な負荷が作用することを防止できる。
【0064】
主軸11の回転トルクから、ネジ部31およびナット部32の螺合を介して変換された圧入推進力Fp1,Fp2により、母材A内に嵌合部材B,Cを圧入するので、主軸11に過大な圧入反力F1,F2を受けずに嵌合部材B,Cを無理なく圧入できる。
【0065】
圧入反力相殺機構24によりネジ部31に相反する方向の圧入反力F1,F2を作用させて相殺させることで、主軸11に作用するスラストを軽減できる。
【0066】
正ネジ部分31aおよび逆ネジ部分31bにより、ネジ部31に作用する圧入反力F1,F2を相殺させて、主軸11に作用するスラストを軽減できるとともに、2つの嵌合部材B,Cを同時に効率よく母材Aに圧入できる。
【0067】
正ナット部分32aと逆ナット部分32bとが保持する一方の嵌合部材Bと他方の嵌合部材Cとの圧入量に差が生じたり、一方の嵌合部材Bと他方の嵌合部材Cとに作用する摩擦力の相違で圧入反力が異なることにより、主軸11に作用するおそれのあるスラストが圧入反力相殺機構24にて発生しても、主軸11と圧入反力相殺機構24との間に設けられたスラスト吸収機構23により主軸11へのスラストを吸収し遮断できる。
【0068】
一方の回転部材51と他方の回転部材52とスプリング53とにより、スラスト吸収機構23を簡単に構成でき、また、一方の回転部材51に対し他方の回転部材52をスプリング53により伸長方向に付勢するので、ネジかみ合わせ開始時の押し付け力を得ることができる。
【0069】
トルクリミッタ22により、ネジ部31側に作用した過負荷が主軸11に及ぶことを防止でき、圧入終了後の急激なトルク上昇による過負荷から主軸11を保護できる。
【0070】
次に、図10を参照しながら、他の実施の形態を説明する。
【0071】
これは、母材Dの有底孔または貫通孔の片側に嵌合部材Eを圧入する実施の形態であり、この圧入反力相殺機構24aは治具61を具備し、この治具61は、主軸により回転されるネジ部31と螺合するナット部32と、母材Dの嵌合部材圧入側とは反対側を係止する係止部62とを備えている。ネジ部31の先端には、嵌合部材Eを押圧する押圧子63が設けられている。さらに、図1に示されたトルクリミッタ22およびスラスト吸収機構23も同様に備えているが、ここでは、説明を省略する。
【0072】
そして、ネジ部31と螺合するナット部32を有する治具61は、母材Dの嵌合部材圧入側とは反対側を係止部62により係止するので、ネジ部31に相反する方向の圧入反力を作用させて相殺させることで、主軸11に作用するスラストを軽減でき、母材Dの有底孔または貫通孔の片側にも嵌合部材Eを圧入できる。
【0073】
本発明は、ブッシュのみでなく、種々の部品の圧入に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る圧入装置の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】同上圧入装置の作動原理を示す説明図である。
【図3】同上圧入装置を用いた圧入方法の一方の嵌合部材セット状態を示す断面図である。
【図4】同上圧入方法の他方の嵌合部材セット状態を示す断面図である。
【図5】同上圧入方法の一方および他方の嵌合部材を対向させた状態を示す断面図である。
【図6】同上圧入方法の逆ネジ部分が逆ナット部分と螺合開始する状態を示す断面図である。
【図7】同上圧入方法による一方および他方の嵌合部材の同時圧入状態を示す断面図である。
【図8】同上圧入方法の圧入が終了した状態を示す断面図である。
【図9】同上圧入方法の圧入終了後のナット部解放状態を示す断面図である。
【図10】本発明に係る圧入装置の他の実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0075】
A 母材
B,C 嵌合部材
11 回転主軸(主軸)
22 トルクリミッタ
23 スラスト吸収機構
24 圧入反力相殺機構
24a 圧入反力相殺機構
30 螺合部
31 ネジ部
31a 正ネジ部分
31b 逆ネジ部分
32 ナット部
32a 正ナット部分
32b 逆ナット部分
51 一方の回転部材
52 他方の回転部材
53 スプリング
61 治具
【出願人】 【識別番号】000190297
【氏名又は名称】新キャタピラー三菱株式会社
【出願日】 平成18年8月23日(2006.8.23)
【代理人】 【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄

【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡

【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也


【公開番号】 特開2008−49423(P2008−49423A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−226326(P2006−226326)