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【発明の名称】 ローラタペットの組立装置及び組立方法
【発明者】 【氏名】天野 裕一

【要約】 【課題】油圧プレス機械上における一つの工程で且つローラピン組付け時のスカート端部の変形を防止しつつローラタペットの組立を可能としたローラタペットの組立装置及び組立方法を提供する。

【構成】基台上に固定されたVブロック1上に載置されたタペット本体101のピン穴中心とプレス機械200の圧入工具201の中心とを位置決めする位置決め機構と、タペット本体101のスカート端部に形成されローラ103の両側面に対向する2つの対向内面間に挿入、抜き出し可能なストッパー部材5と、ストッパー部材5を対向内面間に進退可能に支持する支持体7とをそなえて、ストッパー部材5を対向内面間に挿入することにより圧入工具201によるローラピン103のタペット本体101のピン穴への圧入時におけるスカート端部の変形を阻止する変形防止治具10を基台上に取り付けた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台上に固定可能にされたVブロックのV字状支持面上にローラタペットのタペット本体を載置し、該タペット本体のピン穴に、ローラが嵌装されたローラピンをプレス機械に装着された圧入工具により圧入して該ローラピンをタペット本体に固定するように構成されたローラタペットの組立装置において、前記基台を前記プレス機械のテーブル上に位置決めして前記Vブロック上に載置された前記タペット本体のピン穴の中心と前記圧入工具の中心とを位置決めする位置決め機構と、前記タペット本体のスカート端部に形成され前記ローラの両側面に対向する2つの対向内面間に挿入あるいは抜き出し可能なストッパー部材と、該ストッパー部材を前記対向内面間に進退可能に支持する支持体とをそなえて、前記ストッパー部材を前記対向内面間に挿入することによりタペット本体がVブロック上に正確に水平方向に載置されるようにすると共に、前記圧入工具による前記ローラピンの前記タペット本体のピン穴への圧入時における前記スカート端部の変形を阻止する変形防止治具を前記基台上に取り付けたことを特徴とするローラタペットの組立装置。
【請求項2】
前記位置決め機構は、前記プレス機械のテーブル上に該プレス機械の圧入工具と同心に立設されて、前記基台に穿孔された位置決めピン穴に嵌合される位置決めピンの軸心と、前記Vブロック上に載置された前記タペット本体のピン穴の中心と、前記圧入工具の軸心とが同心になるように前記タペット本体位置を調整するタペット位置調整手段とをそなえたことを特徴とする請求項1記載のローラタペットの組立装置。
【請求項3】
前記変形防止治具は、前記ストッパー部材の軸心を前記タペット本体のピン穴中心に対する開き角が略直角になるように前記基台上に2個設置し、前記タペット本体の対向内面間の2箇所に前記ストッパー部材を挿入可能に構成されたことを特徴とする請求項1記載のローラタペットの組立装置。
【請求項4】
前記変形防止治具は、前記基台上に立設されて前記支持体を上下移動可能に且つ相対回転不能に嵌合して支持する支柱をそなえるとともに、前記ストッパー部材と前記支持体とをねじ結合して該ねじにより前記タペット本体の対向内面間に挿入あるいは抜き出し可能とし、前記支持体を前記支柱との嵌合部に沿って上下動せしめることにより前記ストッパー部材と前記タペット本体の対向内面との高さを調整し、前記ストッパー部材の支持体へのねじ込み量により前記タペット本体の対向内面間への挿入量を調整するように構成されたことを特徴とする請求項1記載のローラタペットの組立装置。
【請求項5】
前記変形防止治具は、前記ストッパー部材の先端部を構成するストッパーピースの前記タペット本体の対向内面間への挿入部を該対向内面間に嵌合可能なテーパ状に形成してなることを特徴とする請求項1記載のローラタペットの組立装置。
【請求項6】
基台上に固定可能にされたVブロックのV字状支持面上にローラタペットのタペット本体を載置し、該タペット本体のピン穴に、ローラが嵌装されたローラピンをプレス機械に装着された圧入工具により圧入して該ローラピンをタペット本体に固定するローラタペットの組立方法であって、前記プレス機械のテーブル上に該プレス機械の圧入工具と同心に立設された位置決めピンに、前記基台に穿孔された位置決めピン穴を嵌合して前記基台を前記プレス機械のテーブル上に載置して固定し、前記基台に固定された前記VブロックのV字状支持面上に前記ローラタペットのタペット本体を載置し、タペット位置調整手段を用いて前記タペット本体のピン穴の中心と前記圧入工具の軸心とが同心になるようにタペット本体位置を調整し、前記タペット本体のスカート端部に形成され前記ローラの両側面に対向する2つの対向内面間にストッパー部材を挿入してタペット本体がVブロック上に、正確に水平方向に載置すると共に、該ストッパー部材の表面を2つの対向内面に当接させた状態で、前記プレス機械の圧入工具により前記ローラピンを押圧して前記タペット本体のピン穴に圧入することを特徴とするローラタペットの組立方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明はエンジン用ローラタペットの組立作業に適用され、基台上に固定可能にされたVブロックのV字状支持面上にローラタペットのタペット本体を載置し、該タペット本体のピン穴に、ローラが嵌装されたローラピンをプレス機械の圧入工具により圧入して該ローラピンをタペット本体に固定するように構成されたローラタペットの組立装置及び該ローラタペットの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図6はエンジン用ローラタペットの構造を示し、(A)はタペット本体の軸心線及びローラピンの軸心線に沿う一部断面図((B)におけるZ−Z線断面図)、(B)は(A)におけるY矢視図である。
図6において、100はローラタペットで、円筒状のタペット本体101、該タペット本体101のスカート部101dのピン穴101bに圧入されたローラピン104、該ローラピン104の中央部に軸受105を介して回転自在に支持されたローラ103等よりなる。100aはローラ103を収納する空間である。
【0003】
図7は前記ローラタペットにおけるタペット本体へのローラピン104の組付け手段の従来の一例を示すローラピン104の軸心104Xに沿う断面図である。
図7において、3はベースプレート(基台)、1は該ベースプレート3上に固定可能にされたVブロック、200は油圧プレス、201は該油圧プレス200の圧入工具、202はベースプレート3を載置する油圧プレス200のテーブルである。
前記ローラタペット100を組み立てるにあたっては、タペット本体101のローラ収納空間100aに、軸受105を介してローラ103を支持した状態で挿入し、さらにローラピン104を前記スカート部101dのピン穴101bに挿入することにより、ローラタペット100が仮組立状態となる。さらに前記タペット本体101の弦月状断面からなるスカート端部101aに形成されて前記ローラ103の両側面に対向する2つの対向内面101c,101c間に治具204(二点鎖線で示す)を挿入して前記スカート端部101aの変形予防処置を施して、前記治具付きのローラタペット100の仮組立品を製作し、この仮組立品を、該タペット本体101の長手方向の軸心101Zを前記Vブロック1のV字状支持面1aと平行にして該V字状支持面1a上に載置する。
【0004】
次いで、前記ローラピン104の軸心104Xが前記圧入工具201の軸心201Xに一致しているかを目視で確認し、一致したら、前記油圧プレス200を運転して、前記圧入工具201により前記ローラピン104を押圧して前記タペット本体101のピン穴101bに圧入する。この際において、図示しない圧力ゲージによって前記圧入工具201による押圧油圧を測定しながら、一定の目標油圧で前記ローラピン104を前記ピン穴101bに圧入する。
このとき、前記2つの対向内面101c,101c間に前記治具204を挿入しているので、前記圧入工具201によるローラピン104の圧入時に剛性の小さいスカート端部101aに圧入工具201が接触して、ローラ103の側面103aと前記対向内面101c,101cとが変形するのを防止する。
かかるローラピン104の圧入工程終了後、前記治具204を前記対向内面101c,101c間から引き抜くことでタペットの組立工程が終了する。
【0005】
尚、特許文献1(特開平9−131626号公報)には、ワーク53を可動治具1によって保持し、センタリング部材Cによって該可動治具1を介してワーク53のセンタリングを行ない、プレス機械の圧入部材55とワーク53の圧入孔53aとの長手軸心線Xを自動的に同心に配置することにより、偏心した場合の荷重による圧入部材55の変形を抑えるようにした、プレス圧入機によるワーク支持装置が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平9−131626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図7に示されるような、従来のローラタペット組立方法では、前記のように、
(1)いわゆる外段取り工程にてタペット本体101のローラ収納空間100aに、軸受105を介してローラ103を支持した状態で挿入し、さらにローラピン104を前記スカート部101dのピン穴101bに挿入することにより、ローラタペット100を仮組立状態とし、該ローラタペット100の仮組立状態のスカート端部101aの2つの対向内面101c、101c間に圧入時の変形を防止する治具を挿入して製作する外段取り工程と、
(2)この治具付きのローラタペットの仮組立品をVブロック1のV字状支持面1a上に載置し、ローラピン104の軸心104Xが油圧プレス200の圧入工具201の軸心201Xに一致しているかを目視で確認し、一致したら治具によりスカート端部101aの変形を防止しつつタペット本体101のピン穴101bに圧入し、かかるローラピン104の圧入工程終了後、治具を前記対向内面101c,101c間から引き抜く、というローラタペットの本組付け工程
の2つの工程によってローラタペットを組立てている。
【0008】
このため、かかる従来のローラタペット組立方法にあっては、油圧プレス200のベースプレート3及びVブロック1上において圧入工具201によりローラピン104をタペット本体101のピン穴101bに圧入する本組付け工程とは別にタペット本体に治具を挿入した仮組立品の外段取り工程を行ない、この仮組立品を油圧プレス200のベースプレート3及びVブロック1上に搬入して取付けるという、余分な工程を必要とするため、ローラタペット100の組立に多くの工数を必要とする。
【0009】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、ローラタペットを組立てるに際し、ローラピンをタペット本体に組付けるための外段取り工程を不要として、油圧プレス機械上におけるベースプレートとVブロックとタペット本体の夫々の軸心を一致させる位置決め機能を持たせ、且つローラピン組付け時のスカート端部の変形を防止しつつローラタペットの組立を可能としたローラタペットの組立装置及び組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はかかる目的を達成するもので、基台上に固定可能にされたVブロックのV字状支持面上にローラタペットのタペット本体を載置し、該タペット本体のピン穴に、ローラが嵌装されたローラピンをプレス機械に装着された圧入工具により圧入して該ローラピンをタペット本体に固定するように構成されたローラタペットの組立装置において、前記基台を前記プレス機械のテーブル上に位置決めして前記Vブロック上に載置された前記タペット本体のピン穴の中心と前記圧入工具の中心とを位置決めする位置決め機構と、前記タペット本体のスカート端部に形成され前記ローラの両側面に対向する2つの対向内面間に挿入あるいは抜き出し可能なストッパー部材と、該ストッパー部材を前記対向内面間に進退可能に支持する支持体とをそなえて、前記ストッパー部材を前記対向内面間に挿入することによりタペット本体がVブロック上に正確に水平方向に載置されるようにすると共に、前記圧入工具による前記ローラピンの前記タペット本体のピン穴への圧入時における前記スカート端部の変形を阻止する変形防止治具を前記基台上に取り付けたことを特徴とする(請求項1)。
【0011】
また、前記組立装置を用いてのローラタペットの組立方法に関する発明は、基台上に固定可能にされたVブロックのV字状支持面上にローラタペットのタペット本体を載置し、該タペット本体のピン穴に、ローラが嵌装されたローラピンをプレス機械に装着された圧入工具により圧入して該ローラピンをタペット本体に固定するローラタペットの組立方法であって、前記プレス機械のテーブル上に該プレス機械の圧入工具と同心に立設された位置決めピンに、前記基台に穿孔された位置決めピン穴を嵌合して前記基台を前記プレス機械のテーブル上に載置して固定し、前記基台に固定された前記VブロックのV字状支持面上に前記ローラタペットのタペット本体を載置し、タペット位置調整手段を用いて前記タペット本体のピン穴の中心と前記圧入工具の軸心とが同心になるようにタペット本体位置を調整し、前記タペット本体のスカート端部に形成され前記ローラの両側面に対向する2つの対向内面間にストッパー部材を挿入してタペット本体がVブロック上に、正確に水平方向に載置すると共に、該ストッパー部材の表面を2つの対向内面に当接させた状態で、前記プレス機械の圧入工具により前記ローラピンを押圧して前記タペット本体のピン穴に圧入することを特徴とする(請求項6)。
【0012】
かかる発明によれば、プレス機械のテーブル上に圧入工具と同心に位置決めピンを立設し、該位置決めピンを用いてタペット本体が載置されるVブロックが固定された基台をテーブル上に位置決めして固定し、タペット本体のピン穴中心と圧入工具の軸心とが同心になるようにタペット本体の位置を調整することによりVブロック上での位置決めを行ない、且つタペット本体の変形防止治具のストッパー部材をスカート端部の2つの対向内面間に挿入して該対向内面に当接させ、前記プレス機械の圧入工具によりローラピンをタペット本体のピン穴に圧入する、というプレス機械のテーブル上に載置される基台及びVブロック上での一つの工程でローラタペットを組立てることができる。
【0013】
これにより、従来技術のようなベースプレート及びVブロック上での圧入工具によるローラピンのタペット本体のピン穴への圧入工程(本組付け工程)の前における、油圧プレスの機外でのローラタペットのスカート部端部の2つの対向内面間に圧入時の変形を防止するための治具を挿入した仮組立品の仮組立てという外段取り工程が不要となり、ローラピンのタペット本体への組付け時のスカート端部の変形を防止しつつ、従来技術に比べてローラタペットの組立工数を大幅に低減できる。
また、ベースプレート上に設置した変形防止治具を用いてタペット本体の位置決めと、該変形防止治具によるスカート端部の変形を防止しつつ、圧入工具によるローラピンのタペット本体のピン穴への圧入作業を、ワーク及び作業治具及び工具を取外すことなく連続して実施できるので、ローラピンのタペット本体のピン穴への圧入作業を高精度でかつ迅速に行なうことができ、ローラタペットの組立作業効率が向上する。
【0014】
かかる発明において、好ましくは、前記位置決め機構は、前記プレス機械のテーブル上に該プレス機械の圧入工具と同心に立設されて、前記基台に穿孔された位置決めピン穴に嵌合される位置決めピンの軸心と、前記Vブロック上に載置された前記タペット本体のピン穴の中心と、前記圧入工具の軸心とが同心になるように前記タペット本体位置を調整するタペット位置調整手段とをそなえる(請求項2)。
このような構成にすれば、位置決めピンに基台を位置決めし、基台上に固定されたVブロック上に載置されたタペット本体の位置を位置決めすることにより、圧入工具の軸心とタペット本体のピン穴中心とを容易に、且つ精度良く一致させることができる。
【0015】
また、かかる発明において、前記変形防止治具を具体的にはつぎのように構成する。
(1)前記変形防止治具は、前記ストッパー部材の軸心を前記タペット本体のピン穴中心に対する開き角が略直角になるように前記基台上に2個設置し、前記タペット本体の対向内面間の2箇所に前記ストッパー部材を挿入可能に構成される(請求項3)。
このように構成すれば、2個の変形防止治具のストッパー部材を軸心の開き角が略直角になるように配置することにより、該ストッパー部材をスカート端部のローラの両側面への2つの対向内面間に挿入する際に、該ストッパー部材の先端部がローラの外周に接触することなく且つ前記対向内面とストッパー部材との接触面積を最も大きくとることができるため、圧入工具によるローラピンのタペット本体ピン穴への圧入時におけるスカート端部の変形防止効果を最も大きく得ることができる。
【0016】
(2)前記変形防止治具は、前記基台上に立設されて前記支持体を上下移動可能に且つ相対回転不能に嵌合して支持する支柱をそなえるとともに、前記ストッパー部材と前記支持体とをねじ結合して該ねじにより前記タペット本体の対向内面間に挿入あるいは抜き出し可能とし、前記支持体を前記支柱との嵌合部に沿って上下動せしめることにより前記ストッパー部材と前記タペット本体の対向内面との高さを調整し、前記ストッパー部材の支持体へのねじ込み量により前記タペット本体の対向内面間への挿入量を調整するように構成される(請求項4)。
このように構成すれば、基台上に立設され支柱に沿ってストッパー部材の支持体を自在に上下動できるとともに、ストッパー部材の該支持体へのねじ込み量を変化させることによりストッパー部材のタペット本体の対向内面間への挿入量を容易に調整でき、該ストッパー部材の先端部位置の前記対向内面間への挿入量調整を容易に且つ高精度で行なうことができる。
【0017】
(3)前記変形防止治具は、前記ストッパー部材の先端部を構成するストッパーピースの前記タペット本体の対向内面間への挿入部を該対向内面間に嵌合可能なテーパ状に形成してなる(請求項5)。
このように構成すれば、ストッパーピースのタペット本体の対向内面間への挿入時に、該対向内面間の距離に公差があっても、該公差に応じてストッパー部材のテーパ状先端部の押し込み代を調整することにより、ストッパー部材を前記対向内面間に確実に嵌合できる。
また、タペット本体の長手方向の軸心がVブロックのV字状支持面上に平行に載置されなかった場合、2個のストッパー部材のテーパ部が対向内面間に嵌挿され、スカート部の端部が略平行な位置に調整されることにより、油圧プレスの圧入工具がスカート部に接触しないため、変形を防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、プレス機械のテーブル上に圧入工具と同心に位置決めピンを立設し、該位置決めピンを用いてタペット本体が載置されるVブロックが固定された基台をテーブル上に位置決めして固定し、タペット本体のピン穴中心と圧入工具の軸心とが同心になるようにタペット本体の位置を調整することによりVブロック上での位置決めを行ない、且つタペット本体の変形防止治具のストッパー部材をスカート端部の2つの対向内面間に挿入して該対向内面に当接させ、前記プレス機械の圧入工具によりローラピンをタペット本体のピン穴に圧入する、というプレス機械のテーブル上に載置される基台及びVブロック上での一つの工程でローラタペットを組立てることができる。
これにより、従来技術のようなベースプレート及びVブロック上での圧入工具によるローラピンのタペット本体のピン穴への圧入工程(本組付け工程)の前における、油圧プレスの機外でのローラタペットのスカート部端部の2つの対向内面間に圧入時の変形を防止するための治具を挿入した仮組立品の仮組立てという外段取り工程が不要となり、ローラピンのタペット本体への組付け時のスカート端部の変形を防止しつつ、従来技術に比べてローラタペットの組立工数を大幅に低減できる。
また、ベースプレート上に設置した変形防止治具を用いてタペット本体の位置決めと、該変形防止治具によるスカート端部の変形を防止しつつ、圧入工具によるローラピンのタペット本体のピン穴への圧入作業を、ワーク及び作業治具及び工具を取外すことなく連続して実施できるので、ローラピンのタペット本体のピン穴への圧入作業を高精度でかつ迅速に行なうことができ、ローラタペットの組立作業効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0020】
図6は本発明に用いられるローラタペットの構造を示し、(A)はタペット本体の軸心線及びローラピンの軸心線に沿う一部断面図((B)におけるZ−Z線断面図)、(B)は(A)におけるY矢視図である。
図6において、100はローラタペットで、円筒状のタペット本体101、該タペット本体101のスカート部101dのピン穴101bに圧入されたローラピン104、該ローラピン104の中央部に軸受105を介して回転自在に支持されたローラ103等よりなる。100aはローラ103を収納する空間である。このローラタペット100は、主として車両用エンジンに用いられている周知のローラタペットである。
本発明は、以上のような構成をそなえたローラタペットの組立装置及び組立方法に係るものである。
【0021】
図1は本発明の実施例に係るエンジン用ローラタペットの組立装置の全体構成を示す斜視図、図2は前記ローラタペットの組立装置の一部断面を示す平面図である。図3は前記実施例における図2のA−A線断面図、図4は前記実施例における図2のB−B線断面図、図5は前記実施例におけるストッパー部材の側面図である。
図1〜5において、200は油圧プレス、201は該油圧プレス200の圧入工具、3は該油圧プレス200のテーブル202上に固定されるベースプレート(基台)である。該ベースプレート3上には、ローラタペット100の長手方向に2つのVブロック1,2が並設されている。
【0022】
前記2つのVブロック1,2は、図3のように、V字状支持面2aをそなえており、一方側のVブロック2には前記ローラタペット100のローラピン104の挿入部が載置され、他方側のVブロック1には前記ローラタペット100のタペット本体101の円筒部が載置されている。即ち前記ローラタペット100は、タペット本体101の長手方向の軸心101Zを前記Vブロック1,2のV字状支持面2aと平行にして該V字状支持面2a上に載置されている。
図3のように、前記油圧プレス200のテーブル202には、前記圧入工具201と同心上にベースプレート3に穿孔された位置決めピン穴3d及びVブロック2に穿孔された位置決めピン穴3cに位置決めピン11がタペットのローラピン104に当接するように嵌挿されている。これにより、圧入工具201の軸心201Xと、タペット本体101のピン穴101bの中心101Xと、Vブロック2の中心2Xと、位置決めピン11の軸心11Xの全てが同心上に配置されることになる。
【0023】
図2のように、4はタペットの長手方向の位置調整手段である背部位置決めブロックで、前記タペット本体101の背面が当接して、タペット本体101の長手方向の軸心101Z方向にC寸法移動させることにより、タペット本体101の長手方向の軸心101Z方向位置を設定、位置決めするようになっている。
【0024】
このようにタペット本体101の位置決め機構を、油圧プレス200のテーブル202上に該油圧プレス200の圧入工具201と同心に立設されて、ベースプレート3に穿孔された位置決めピン穴3d、およびVブロック2に穿孔された位置決めピン穴3cに嵌合される位置決めピン11と、Vブロック1,2上に載置されたタペット本体101のピン穴101bの中心101Xと圧入工具201の軸心201Xとが全て同心になるようにタペット本体101の位置を調整する背部位置決めブロック4とによって構成したので、位置決めピン11によってベースプレート3およびVブロック2を位置決めし、背部位置決めブロック4によってタペット本体101のピン穴101bの中心がVブロック2の中心に位置されるようにタペット本体101の位置を位置決めすることにより、圧入工具201の軸心201Xとタペット本体101のピン穴101bの中心101Xとを容易に、且つ精度良く一致させることができる。
【0025】
10,10は変形防止治具で、次のように構成されている。
該変形防止治具10は、前記ベースプレート3上に2個設置され、高さ位置を変化可能な支持ブロック7、該支持ブロック7にねじ結合されたストッパー部材5、前記ベースプレート3上に立設されて前記支持ブロック7を上下移動可能に且つ相対回転不能に嵌合して支持する角形断面の支柱6等からなる。
前記支持ブロック7は、図2のように、前記角形断面の支柱6に嵌合する角形断面の穴をそなえ、該支柱6に沿って相対回転不能で上下移動可能に構成されている。8は前記支柱6を覆うカバーである。
【0026】
前記ストッパー部材5は、図5に示すように、前記支持ブロック7のねじ穴に螺合されるねじ部5a,手動回転用のつまみ部5c、先端のストッパーピース5bからなる。該ストッパーピース5bは、前記対向内面101c,101c間の幅B(図4参照)と同一あるいは若干大きい外径Dの円柱部5b2、該円柱部5b2の外径Dと先端部の外径D1との間で縮径されたテーパ部5b1とにより形成されている(図5参照)。
そして、前記ストッパー部材5は、図2,4のように、前記つまみ部5cを回転することによって前記ねじ部5aを支持ブロック7のねじ穴に沿って移動させることにより、先端のストッパーピース5bが前記タペット本体101のスカート端部101aのローラ両側面への2つの対向内面101c,101c間の2箇所に挿入可能に構成されている。
前記ストッパー部材5をこのように構成したので、ストッパーピース5bのタペット本体101の対向内面101c,101c間への挿入時に、該対向内面101c,101c間の幅B(図4参照)に公差があっても、該公差に応じてストッパー部材5のテーパ部5b1の押し込み代を調整することができる。もしタペット本体101の長手方向の軸心101ZがVブロック1,2のV字状支持面2a上に平行に載置されなかった場合は、2個のストッパー部材5のテーパ部5b1が対向内面101c間に嵌挿され、スカート部101dの端部が略平行な位置に調整されることにより、タペット本体101の長手方向の軸心101ZがVブロック1,2のV字状支持面2a上に平行に載置され、油圧プレス200の圧入工具201がスカート部101dに接触しないため、変形を防止することができる。
【0027】
以上のように、前記変形防止治具10は、前記ベースプレート3上に立設されて前記支持ブロック7を上下移動可能に且つ相対回転不能に嵌合して支持する支柱6をそなえるとともに、前記ストッパー部材5と前記支持ブロック7とをねじ部5aにてねじ結合して該ねじ部5aにより前記タペット本体101の対向内面101c,101c間にテーパ部5b1を挿入あるいは抜き出し可能とし、前記支持ブロック7を前記支柱6との角形嵌合部に沿って上下動せしめることにより、前記ストッパー部材5と前記タペット本体101の対向内面101c,101cとの高さを調整し、前記ストッパー部材5の支持ブロック7へのねじ込み量により前記タペット本体101の対向内面101c,101c間への挿入量を調整するように構成したので、前記ベースプレート3上に立設された角形断面の支柱6に沿ってストッパー部材5の支持ブロック7を自在に上下動できるとともに、該ストッパー部材5の該支持ブロック7へのねじ込み量を変化させることにより、ストッパー部材5のタペット本体101の対向内面101c,101c間への挿入量を容易に調整でき、該ストッパー部材5の先端部位置の前記対向内面101c,101c間への挿入量調整を容易に且つ高精度で行なうことができる。
【0028】
また、前記2個の変形防止治具10は、図2のように、前記ストッパー部材5の軸心5Zを前記タペット本体101のピン穴101bの中心101Xに対する開き角αが略直角(90°)になるように設置されている。
前記2個の変形防止治具10をこのように構成したので、図2のように該2個の変形防止治具10のストッパー部材5,5を軸心の開き角αが略直角(90°)になるように配置することにより、該ストッパー部材5をスカート端部101aのローラ103の両側面103a,103aへそれぞれ対向する2つの対向内面101c,101c間に挿入する際に、該ストッパー部材5,5の先端のストッパーピース5b部がローラ103の外周に接触することなく且つ前記対向内面101c,101cとストッパー部材5との接触面積を最も大きくとることができる。
さらに、ストッパー部材5のテーパ部5b1が対向内面101c、101c間に嵌挿されることにより、スカート部101dの端部が略平行な位置に調整されることにより、油圧プレス200の圧入工具201がスカート部101dに接触せずに済み、変形を防止できる。
【0029】
前記のように構成されたローラタペットの組立装置を用いて前記ローラタペット100を組立てるにあたっては、油圧プレス200のテーブル202上に圧入工具201と同心に立設された位置決めピン11に、ベースプレート3に穿孔された位置決めピン穴3dおよびVブロック2に穿孔された位置決めピン穴3c、を嵌合してベースプレート3およびVブロック2を油圧プレス200のテーブル202上に載置して固定する。Vブロック2は、Vブロック2のV字形状部の中心2Xが、位置決めピン11の軸心11Xと一致するようにベースプレート3上に固定されるため、ベースプレート3およびVブロック2をテーブル202上に載置して固定することによって、Vブロック2のV字形状部の中心と圧入工具201と同心に配置されることとなる。
タペット本体101のローラ収納空間100aに軸受105を介してローラ103を支持した状態で挿入し、さらにローラピン104を前記スカート部101dのピン穴101bに挿入し、ローラタペット100を仮組立状態とし、Vブロック1,2の支持面2aに載置する。
【0030】
次いで、あるいは前記動作と同時に、前記タペット本体101の背面が当接する背部位置決めブロック4のタペットの長手方向の軸心101Z方向にC寸法を調整することにより、タペット本体101のピン穴101bの中心101X方向位置が前記圧入工具201と同位置に決まる。
以上の位置決め操作により、タペット本体101は、前記Vブロック1及びVブロック2上に、前記圧入工具201と同心に位置決めされ、前記Vブロック1及びVブロック2上に固定され、前記圧入工具201によって前記ピン穴101b内にローラピン104を圧入可能となる。
【0031】
以上の操作によって、タペット本体101のピン穴101bの中心101Xを圧入工具201の軸心201Xと同心に位置決めした後、前記タペット本体101のスカート端部101aに形成され前記ローラ103の両側面に対向する前記2つの対向内面101c,101c間に、前記変形防止治具10のストッパー部材5先端のストッパーピース5b部を手動回転用のつまみ部5cを回転することで挿入して、該ストッパーピース5bのテーパ部5b1を前記2つの対向内面101c,101c間に当接させた状態で、前記油圧プレス200の圧入工具201により前記ローラピン104を押圧して前記タペット本体101のピン穴101bに圧入する。
このとき、前記2つの対向内面101c,101c間に前記ストッパーピース5bのテーパ部5b1を挿入しているので、前記圧入工具201によるローラピン104の圧入時に剛性の小さいスカート端部101aが変形して、ローラ103の側面103aと前記対向内面101c,101cとが接触するのを防止できる。
【0032】
さらに、ストッパー部材5先端のストッパーピース5b部を、手動回転用のつまみ部5cを回転することで対向内面101c,101c間にねじ送りして挿入されるので、タペット本体101の背面を背部位置決めブロック4に押し付ける作用も行うため、タペット本体101の軸心101Z方向におけるピン穴101bの中心101Xの位置が圧入工具201の軸心201Xと同位置に保持され、圧入工具201によるローラピン104の押圧を確実に行なうことができる。
さらに、タペット本体101の軸心101Z方向位置が保持されるばかりでなく、ストッパーピース5bが対向内面101c,101c間に挿入されることで、タペット本体101の軸心101Z回りの回転に対しても位置決めされ保持されるので、一層、圧入工具201によるローラピン104の押圧を確実に行なうことができる。
【0033】
かかる実施例によれば、油圧プレス200のテーブル202上に圧入工具201の軸心201Xと同心に位置決めピン11を立設し、該位置決めピン11を用いてタペット本体101が載置されるVブロック2、およびVブロック2が固定されるベースプレート3をテーブル202上に位置決めして固定し、タペット本体101のピン穴101bの中心101Xと圧入工具201の軸心201Xとが同心になるようにタペット本体101の位置を調整することによりVブロック1,2上での位置決めを行ない、且つ変形防止治具10のストッパー部材5をタペット本体101のスカート端部101aの2つの対向内面101c,101c間に挿入して該対向内面101c,101cに当接させ、前記油圧プレス200の圧入工具201によりローラピン104をタペット本体101のピン穴101bに圧入する、という油圧プレス200のテーブル202上に載置されるベースプレート3及びVブロック1,2上での一つの工程でローラタペット100を組立てることができる。
【0034】
これにより、従来技術のようなベースプレート及びVブロック上での圧入工具によるローラピン104のタペット本体のピン穴101bへの圧入工程(本組付け工程)の前における、油圧プレスの機外でのローラタペット100のスカート端部101aの2つの対向内面101c間に圧入時の変形を防止するための治具を挿入した仮組立品の仮組立てという外段取り工程が不要となり、ローラピン104のタペット本体101への組付け時のスカート端部101aの変形を防止しつつ、従来技術に比べてローラタペット100の組立工数を大幅に低減できる。
【0035】
また、ベースプレート3上に設置した変形防止治具10を用いてタペット本体101の位置決めと、該変形防止治具10によるスカート端部101aの変形を防止しつつ、圧入工具201によるローラピン104のタペット本体のピン穴101bへの圧入作業を、ワーク及び作業治具及び工具を取外すことなく連続して実施できるので、ローラピン104のタペット本体のピン穴101bへの圧入作業を高精度でかつ迅速に行なうことができ、ローラタペット100の組立作業効率が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、ローラタペットを組立てるに際し、ローラピンをタペット本体に組付けるための外段取り工程を不要として、油圧プレス機械上における一つの工程で且つローラピン組付け時のスカート端部の変形を防止しつつローラタペットの組立を可能としたローラタペットの組立装置及び組立方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例に係るエンジン用ローラタペットの組立装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】前記ローラタペットの組立装置の一部断面を示す平面図である。
【図3】前記実施例における図2のA−A線断面図である。
【図4】前記実施例における図2のB−B線断面図である。
【図5】前記実施例におけるストッパー部材の側面図である。
【図6】本発明に用いられるローラタペットの構造を示し、(A)はタペット本体の軸心線及びローラピンの軸心線に沿う一部断面図((B)におけるZ−Z線断面図)、(B)は(A)におけるY矢視図である。
【図7】従来技術に係るタペット本体へのローラピンの組付け手段を示すローラピンの軸心線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1、2 Vブロック
2X Vブロック2の中心
2a V字状支持面
3 ベースプレート(基台)
4 背部位置決めブロック
5 ストッパー部材
5a ねじ部
5b ストッパーピース
5b1 テーパ部
5Z ストッパー部材の軸心
6 支柱
7 支持ブロック
10 変形防止治具
11 位置決めピン
11X 位置決めピンの軸心
100 ローラタペット
101 タペット本体
101a スカート端部
101b ピン穴
101c 対向内面
101d スカート部
101X ピン穴の中心
101Z タペット本体の軸心
103 ローラ
104 ローラピン
104X ローラピンの軸心
105 軸受
200 油圧プレス
201 圧入工具
201X 圧入工具の軸心
【出願人】 【識別番号】303002158
【氏名又は名称】三菱ふそうトラック・バス株式会社
【識別番号】304057449
【氏名又は名称】ふそうテクニカルサービス株式会社
【出願日】 平成18年8月4日(2006.8.4)
【代理人】 【識別番号】100083024
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌久

【識別番号】100137257
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 廣


【公開番号】 特開2008−36767(P2008−36767A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−213936(P2006−213936)