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【発明の名称】 複合金属板及びその製造方法
【発明者】 【氏名】織田 喜光

【氏名】石尾 雅昭

【氏名】藤田 敏明

【要約】 【課題】通常のロールで容易に圧接することができ、圧接部の接合強度に優れた複合金属板及びその製造方法を提供する。

【構成】第1金属板1と、第2金属板2とを備え、前記第1金属板と第2金属板の端部同士が接合された複合金属板の製造方法である。前記第1金属板1、第2金属板2の接合側端部には、凸状に形成された山部11,21と凹状に形成された谷部12,22を備える。前記第1金属板1の山部11を前記第2金属板2の谷部22に、また前記第2金属板2の山部21を前記第1金属板1の谷部12に係合させるように両金属板の端部を重ね合わせ、その重ね合わせ部を圧下することによって圧接し、拡散焼鈍する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属板と、第2金属板とを準備し、前記第1金属板と第2金属板の端部同士を接合する複合金属板の製造方法であって、
前記第1金属板は接合側端部に凸状に形成された山部と凹状に形成された谷部を備え、前記第2金属板は接合側端部に前記第1金属板の山部及び谷部にそれぞれ係合する谷部及び山部を備え、
前記第1金属板の山部を前記第2金属板の谷部に、前記第2金属板の山部を前記第1金属板の谷部にそれぞれ係合させて前記第1金属板の端部と第2金属板の端部とを重ね合わせ、その重ね合わせ部を圧下することによって圧接し、拡散焼鈍する、複合金属板の製造方法。
【請求項2】
前記第1金属板及び第2金属板の有する山部及び谷部はそれぞれ二つの傾斜面を備え、前記二つの傾斜面のなす角度がそれぞれ30〜120度である、請求項1に記載した複合金属板の製造方法。
【請求項3】
前記第1金属板の端部と第2金属板の端部とを重ね合わせた状態において、前記第1山部の頂部と第2山部の頂部との板厚方向の間隔が前記第1金属板及び第2金属板のそれぞれの板厚の20%以上である、請求項1又は2に記載した複合金属板の製造方法。
【請求項4】
前記第1金属板及び第2金属板の一方の金属板が、純AlあるいはAl合金によって形成された、請求項1から3のいずれか1項に記載した複合金属板の製造方法。
【請求項5】
前記第1金属板及び第2金属板の一方の金属板が純Alあるいは導電率が10%IACS以上のAl合金によって形成され、他方の金属板が導電率が10%IACS以上の導電性金属によって形成された、請求項1から4のいずれか1項に記載した複合金属板の製造方法。
【請求項6】
第1金属板と、第2金属板とを備え、前記第1金属板の端部と第2金属板の端部が接合された複合金属板であって、
前記第1金属板の端部に凸状に形成された山部と凹状に形成された谷部が設けられ、前記第2金属板の端部に前記第1金属板の山部及び谷部にそれぞれ係合する谷部と山部が設けられ、
前記第1金属板の山部が前記第2金属板の谷部に、前記第1金属板の谷部が前記第2金属板の山部にそれぞれ係合されて前記第1金属板の端部と第2金属板の端部とが圧接され、拡散接合された、複合金属板。
【請求項7】
前記第1金属板及び第2金属板の一方の金属板が、純AlあるいはAl合金によって形成された、請求項6に記載した複合金属板。
【請求項8】
前記第1金属板及び第2金属板の一方の金属板が純Alあるいは導電率が10%IACS以上のAl合金によって形成され 他方の金属板が導電率が10%IACS以上の導電性金属によって形成された、請求項6又は7に記載した複合金属板。
【請求項9】
一方の金属板が純Alによって形成され 他方の金属板が純Cuによって形成された、請求項8に記載した複合金属板。
【請求項10】
前記第2金属板の他方の端部にさらに第3金属板の端部が接合され、
前記第2金属板の他方の端部に凸状に形成された山部と凹状に形成された谷部が設けられ、前記第3金属板の端部に前記第2金属板の他方の端部に設けられた山部及び谷部にそれぞれ係合する谷部と山部が設けられ、
前記第2金属板の他方の端部に形成された山部及び谷部に前記第3金属板の谷部及び山部がそれぞれ係合されて前記第2金属板の他方の端部と第3金属板の端部とが圧接され、拡散接合された、請求項6に記載した複合金属板。
【請求項11】
前記第2金属板が純Cuあるいは熱伝導率がCuの60%以上のCu合金によって形成され、前記第1金属板および第3金属板がFeより熱膨張率の低いFe基合金によって形成された、請求項10に記載した複合金属板。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、二枚あるいはそれ以上の金属板の端部同士が接合された複合金属板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板幅方向に異種の金属板が接合された複合金属板の製造方法として、特開昭60−177981号公報(特許文献1)に記載されているように、側端部に適宜の傾斜面を設けた異種材料で形成された複数の金属板を準備し、これらの金属板をその側端部の傾斜面が係合するように平坦状に並べてロール圧下することにより、端部を接合する複合金属板の製造方法が知られている。この方法によると、銅材とアルミニウム材あるいは鉄材との組み合わせのように金属イオン結合して化合物を生成するような材料の組み合わせでも、端部同士を接合することができる。
【特許文献1】特開昭60−177981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、金属板の端部同士を接合する方法としてロール圧接は、金属板の材質に左右されることなく適用することができる利点がある。しかし、端部を傾斜面として突き合わせてロール圧接する場合、板厚方向に圧下すると、圧下に伴って板幅方向(ロールの軸方向)に材料が離反するため、上下一対のロールで板厚方向に圧下するだけでは接合することができない。このため、ロール圧接を実施するには、上下一対のロールのみならず、板幅方向の離反を規制する左右一対のロールが必要となり、特許文献1に記載されているように特殊な圧延機が必要となる。また、平板状に並設した金属板の端部同士の圧接の際に、接合部のずれ、せり上がりを防止する必要があるため、圧延作業性が悪く、また接合部の接合強度も十分とは言えない。
【0004】
ところで、複合金属板は、配線材(接続部材)などの導電材料、リードフレームなどの電子部品材料、機械構造用材料などに使用されるが、近年、車両や電動工具類などに搭載される電池の配線材や電子部品においては、特に振動に対して十分な耐久性、信頼性が要求される。例えば、ハイブリット車に搭載される電池パックは、リチウムイオン電池が直列に接続され、さらに直列接続された電池群が並列接続されるため、電池同士を接続する配線材が多数使用される。前記リチウムイオン電池は、周知のように、正極がAl材で、負極がCu、Ni、Feなどの非Al材で形成されるため、直列接続する配線材としては、一端がAl材、他端が非Al材で形成された複合金属材が好適である。しかし、このような複合金属材を上記製造方法で製造すると、上記のとおり、圧接の際に傾斜面に沿って金属板が板幅方向にずれやすいため、その端部同士が十分に圧接され難く、十分な接合強度が得られず、その接合部の耐久性、信頼性が十分でない、という問題がある。
【0005】
本発明はかかる問題に鑑みなされたもので、通常の上下一対のロールで容易に圧接することができ、圧接部の接合強度が高く、耐久性に優れた複合金属板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の複合金属板の製造方法は、第1金属板と、第2金属板とを準備し、前記第1金属板と第2金属板の端部同士を接合する複合金属板の製造方法であって、前記第1金属板は接合側端部に凸状に形成された山部と凹状に形成された谷部を備え、前記第2金属板は接合側端部に前記第1金属板の山部及び谷部にそれぞれ係合する谷部及び山部を備え、前記第1金属板の山部を前記第2金属板の谷部に、また前記第2金属板の山部を前記第1金属板の谷部にそれぞれ係合させて前記第1金属板の端部と第2金属板の端部とを重ね合わせ、その重ね合わせ部を圧下することによって圧接し、拡散焼鈍する。
【0007】
本発明の製造方法によると、第1金属板と第2金属板の端部同士は、前記第1金属板の山部を前記第2金属板の谷部に、また前記第2金属板の山部を第1金属板の谷部にそれぞれ係合させて重ね合わせ、その重ね合わせ部が圧下されるので、山部が谷部にくさび状に食い込みながら圧下される。このため、板厚方向の圧下を施すだけで、各金属板は端部が離反することなく圧接され、また上下一対のロールによって第1金属板と第2金属板の端部同士が簡単容易に強固に圧接される。さらに、圧接された複合金属板は、拡散焼鈍が施されるので、強固に圧接された圧接部が拡散接合され、優れた接合強度、耐久性が得られる。
【0008】
前記第1金属板及び第2金属板の有する山部及び谷部は、それぞれ二つの傾斜面を備え、前記二つの傾斜面のなす角度がそれぞれ30〜120度になるように形成するのがよい。これにより、板厚方向の圧下により、山部を谷部にくさび状に容易に食い込ませることができ、山部と谷部を形成する傾斜面同士を強固に圧接することができる。
【0009】
また、前記第1金属板の端部と第2金属板の端部とを重ね合わせた状態において、前記第1金属板の山部の頂部と第2金属板の山部の頂部との板厚方向の間隔(引っ掛かり代)を、前記第1金属板及び第2金属板のそれぞれの板厚の20%以上とするのがよい。このような引っ掛かり代を設定することにより、圧接の際に第1、第2金属板の板幅方向の離反を確実に防止して、各金属板の山部を重ね合わせた他の金属板の谷部にくさび状に食い込ませることができ、圧接を安定的に行うことができる。
【0010】
また、前記第1金属板あるいは第2金属板の一方の金属板を、純AlあるいはAl合金によって形成することができる。純AlあるいはAl合金は、自然酸化により表面に緻密な酸化膜が形成されるので、一般的にはこれらの金属板を他の金属板に圧接することは難しい。しかし、本発明によれば、板厚方向の圧下の際に、くさび効果によって山部と谷部を形成する傾斜面には強力な摩擦力が作用するため、純AlあるいはAl合金からなる金属板の表面に形成された酸化膜が除去されて新生面が露出し易い。このため、純AlあるいはAl合金からなる金属板と他の金属板とを容易に圧接することができる。
【0011】
また、前記第1金属板及び第2金属板の一方の金属板を、純Alあるいは導電率が10%IACS以上のAl合金によって形成し、他方の金属板を導電率が10%IACS以上の導電性金属によって形成することができる。このような材料の組み合わせにより、導電率が10%IACS以上の導電性複合金属板を容易に製造することができる。
【0012】
また、本発明の複合金属板は、第1金属板と、第2金属板とを備え、前記第1金属板の端部と第2金属板の端部が接合された複合金属板であって、前記第1金属板の端部に凸状に形成された山部と凹状に形成された谷部が設けられ、前記第2金属板の端部に前記第1金属板の山部及び谷部にそれぞれ係合する谷部及び山部が設けられ、前記第1金属板の山部が前記第2金属板の谷部に、前記第1金属板の谷部が前記第2金属板の山部にそれぞれ係合され、前記第1金属板の端部と第2金属板の端部とが圧接され、拡散接合されたものである。
【0013】
この複合金属板によれば、前記第1金属板の端部と第2金属板の端部とが接合された接合部は、凹凸状に係合されて圧接され、拡散焼鈍されたものであるから優れた接合強度を備え、優れた耐久性、信頼性を有する。また、上記製造方法によって簡単容易に製造される。
【0014】
この複合金属板において、前記第1金属板及び第2金属板の一方の金属板を純AlあるいはAl合金によって形成することができる。また、前記第1金属板及び第2金属板の一方の金属板を純Alあるいは導電率が10%IACS以上のAl合金によって形成し、他方の金属板を導電率を10%IACS以上の導電性金属によって形成することができる。このような金属板の組み合わせにより、導電率が10%IACS以上の導電性を有する複合材料とすることができる。この形態の複合金属板は、リチウムイオン電池の配線材あるいはその素材として好適に用いることができる。特に、一方の金属板を純Alで、他方の金属板を純Cuで形成した複合金属板は導電性に優れる。
【0015】
また、前記複合金属板において、前記第2金属板の他方の端部にさらに第3金属板の端部を接合することができる。この複合金属板では、前記第2金属板の他方の端部に凸状に形成された山部と凹状に形成された谷部が設けられ、前記第3金属板の端部に前記第2金属板の他方の端部に形成された山部及び谷部にそれぞれ係合する谷部と山部が設けられ、前記第2金属板の他方の端部に形成された山部及び谷部に前記第3金属板の谷部及び山部がそれぞれ係合されて前記第2金属板の他方の端部と第3金属板の端部とが圧接され、拡散接合される。
【0016】
この複合金属板は、3枚の金属板から構成され、前記第1金属板の端部と第2金属板の一方の端部とが接合された接合部のみならず、前記第2金属板の他方の端部と第3金属板の端部とが接合された接合部がそれぞれ優れた接合強度、耐久性を備える。
【0017】
前記3枚の金属板から構成された複合金属板において、前記第2金属板を純Cuあるいは熱伝導率がCuの60%以上のCu合金によって形成し、前記第1金属板および第3金属板をFeより熱膨張率の低いFe基合金によって形成することができる。これにより、中央の金属板が良好な熱伝導性を有し、左右の金属板が低熱膨張で良好な機械的強度を有する。このため、中央部に半導体素子が、左右の両端部に接続用の足(ピン)部が形成されるリードフレーム用素材として好適に利用することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の複合金属板の製造方法によれば、第1金属板及び第2金属板の端部に形成された山部がそれぞれ他方の金属板の端部に形成された谷部にくさび状に食い込みながら圧下されるため、上下一対のロールによって板厚方向の圧下を施すだけで、各金属板は端部が離反することなく強固に圧接され、さらにその圧接部が拡散焼鈍により拡散接合されるため、第1金属板及び第2金属の接合部は接合強度、耐久性に優れる。また、本発明の複合金属板は、第1金属板及び第2金属板の端部同士が凹凸状に係合されて強固に圧接され、拡散接合されるため、その接合部は優れた接合強度、耐久性を備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態にかかる複合金属板及びその製造方法について説明する。図3は、第1実施形態に係る、2枚の第1金属板1及び第2金属板2の端部同士が接合された複合金属板を示しており、この複合金属板は以下の要領で製造される。以下、製造方法を説明するが、説明の便宜上、前記複合金属板の第1金属板等の素材となる金属板についても第1金属板等と表示し、同符号を用いる。
【0020】
図1〜図3は、第1実施形態に係る複合金属板の製造工程における第1金属板1及び第2金属板2をその長さ方向から見た正面図及び全体斜視図を示しており、先ず、図1に示すように、純Cuあるいは冷間加工性を有するCu合金(以下、特に断らない限り、これらの金属材を総称して「Cu系金属」という。)で形成された第1金属板1と、純Alあるいは冷間加工性を有するAl合金(以下、特に断らない限り、これらの金属材を総称して「Al系金属」という。)で形成された第2金属板2を準備する。
【0021】
前記第1金属板1の接合側端部には、二つの傾斜面13,14によって凸状に形成された山部11と、二つの傾斜面14,15によって凹状に形成された谷部12が前記端部の先端から金属板の幅方向(紙面の横方向)に連続して形成されている。前記山部11及び谷部12は、金属板の長さ方向(紙面に垂直な方向)に沿って同じ断面形状に形成されている。また前記第2金属板2の接合側端部にも、前記第1金属板1の山部11及び谷部12に係合するように、二つの傾斜面24,25により凹状に形成された谷部22と、二つの傾斜面23,24により凸状に形成された山部21が金属板の幅方向に連続し、かつ金属板の長さ方向に同断面形状をなすように設けられている。前記第1金属板1の山部11及び第2金属板2の谷部22を形成する傾斜面のなす角度θ1、及び前記第2金属板2の山部21及び第1金属板1の谷部12を形成する傾斜面のなす角度θ2は、それぞれ30°〜120°程度に形成されている。
【0022】
この第1実施形態では、第1金属板1の端部と第2金属板2の端部は、紙面に垂直に立てた軸の周りに、一方の金属板を180度回転させれば、他方の金属板と同形になるように形成されている。所定端部を有する金属板は、プレス成形、押し出し成形により容易に成形することができる。また、金属板の端部は、機械加工により形成することができる。
【0023】
次に、前記第1金属板1と第2金属板2は、図2に示すように、第1金属板1の山部11と第2金属板2の谷部22、第1金属板1の谷部12と第2金属板2の山部21とを係合させて、端部同士を重ね合わせ、その重ね合わせ部を上下一対のロールに通して冷間(室温)あるいは温間で圧接する。
【0024】
前記第1金属板1の接合側端部と第2金属板2の接合側端部とを重ね合わせた状態において、第1金属板1の山部11の先端部と、第2金属板2の山部21の先端部との板厚方向の間隔hが、板幅方向(圧延方向に対して直角方向)の引っ掛かり代となる。この実施形態では、山部11,21の先端部が谷部12,22の底部に当接するように係合しているので、前記引っ掛かり代hは、各金属板1,2における山部11,21の先端部と谷部12,22の底部との板厚方向の間隔に等しくなっている。
【0025】
前記引っ掛かり代hは、第1金属板1の板厚t1及び第2金属板2の板厚t2の20%程度以上設けることが好ましい。また、Al系金属板からなる第2金属板2の谷部22の底部と底部側板表面との間隔d2は、第2金属板2の板厚t2の20%程度以上設けることが好ましい。d2がt2の20%程度を下回って薄くなると、重ね合わせ部をロール圧下する際、圧下率を低く設定しないと、Al系金属で形成した第2金属板2の谷部22の底部に亀裂が生じるおそれがある。一方、Cu系金属板からなる第1金属板1の谷部12の底部と底部側板表面との間隔d1は、Cu系金属がAl系金属よりも強度が2倍を超えて高いので、第1金属板1の板厚t1の10%程度以上あればよい。
【0026】
前記第1金属板1の接合側端部と第2金属板2の接合側端部とを圧接するには、その重ね合わせ部をロールにて圧下すればよい。もっとも、図3に示すように、複合金属板の板厚を全体的に一定にして平板状にするには、重ね合わせ部を含む、両金属板の全体に対してロール圧下を施せばよい。なお、図3において、矢印は圧延方向(金属板の長さ方向)を示しており、また圧接前の素材金属板と圧接後の金属板とは同一物ではないが、既述のとおり、同符号が付されている。
【0027】
圧接の際の重ね合わせ部における圧下率は、通常、60〜80%程度に設定される。前記第2金属板2の間隔d2がt2の20%を下回って薄い場合、先に説明したとおり、圧下率が高いと谷部22の底部が断裂するおそれがあるので、この場合は圧下率を下げて圧下すればよい。もっとも、ロール圧下の圧下率が40%程度を下回って低くなり過ぎると、重ね合わせ部の圧接が困難になる。
【0028】
端部が圧接された両金属板1,2は、拡散焼鈍が施され、圧接部が拡散接合される。これにより、十分な接合強度が得られる。拡散焼鈍は、工業的には焼鈍温度をAl系金属の融点より100〜200℃程度低い温度(通常、450〜550℃程度)で、保持時間を0.5〜3min 程度として実施される。低圧下率で圧接した場合、保持時間はそれよりも長く、5〜15min 程度に設定することが望ましい。また、焼鈍温度をより低い温度としても拡散接合することができるが、焼鈍温度が低い場合は、保持時間を十分取る必要がある。例えば焼鈍温度を200℃程度とする場合、保持時間を3hr程度とすることで、圧接部を拡散接合することができる。
【0029】
上記第1実施形態において、第1金属板1を形成するCu合金としては、Cu−Ni合金、Cu−Zn合金、Cu−Sn合金、Cu−Fe−P合金、Cu−Be合金、Cu−Cr合金などの各種の冷間加工性を有するCu合金を用いることができる。具体的には、例えば、JIS C1020、C1100、C1201、C1220、C1221、C2100、C2600、C2801、C2200、C6140、C1401、C2051、C14500、Z3234に含まれるCu−Be合金,Cu−Cr合金を挙げることができる。なお、Cu合金という場合、主成分であるCuが50mass%(以下、「mass%」は単に「%」と表示する。)以上のものを意味する。
【0030】
また前記第2金属板を形成するAl合金としては、耐食アルミニウム合金や高力アルミニウム合金などの各種の冷間加工性を有するAl合金を用いることができる。Al合金という場合、Cu合金と同様、主成分であるAlが50%以上含まれるものを意味する。前記耐食アルミニウム合金としては、Al−Mn合金、Al−Mg合金、Al−Mg−Mn合金、Al−Mg−Si合金などを挙げることができ、具体的には、JIS 1050、1060、1070、1080、1100、1200、3003、5005、6063、6101を例示することができる。
【0031】
また、前記高力アルミニウム合金としては時効硬化性合金であるAl−Cu合金、Al−Cu−Mg合金、Al−Cu−Mn−Mg合金、Al−Si−Mg合金などを挙げることができる。具体的には、JIS 2011、7003を例示することができる。
【0032】
第1、第2金属板を形成する金属材料としては、Cu系金属、Al系金属に限るものではなく、各種の冷間加工性を有する金属材から適宜の金属材を用いることができる。例えば、純NiやNi合金などのニッケル金属材、あるいは純Fe,Fe−(0.3%以下)C鋼(軟鋼),ステンレス鋼(例えば、SUS410,SUS304),Fe−Ni合金(例えば、Fe−36%Ni合金)、Fe−Ni−Co合金(例えば、Fe−30%Ni−16Co合金)などの各種鉄鋼材を挙げることができる。また、第1金属板と第2金属板とは同材質でもよく、例えばAl系金属板とAl系金属板とを組み合わせることができる。
【0033】
複合金属板を配線材等の導電性素材として用いる場合、Al系金属板を形成する金属材としては、純Alあるいは導電率が10%IACS以上、好ましくは20%以上の冷間加工性を有するAl合金を用いることが望ましい。以下、導電率の「%IACS(International Annealed Copper Standard)」は単に「%」と表示する。ある材料の導電率(%IACS)は下記式によって算出される。例えば、純Cuは100%、純Alは65%である。
導電率(%IACS)=標準軟銅(純銅)の体積抵抗率(1.7241μΩ・cm)/当該材料の体積抵抗率×100
【0034】
前記導電率が10%以上のAl合金としては、Al含有量が高いほど導電率も高くなり、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上のAl合金が望ましい。具体的には、JIS 1050、1060、1070、1080、1100、1200、3003、5005、6063、6101を例示することができる。例えば、前記5005合金は、Al−(0.5〜1.1%)Mnの固溶強化型合金であり、導電率は52%である。その他、適用可能なAl合金を以下に例示する。Al−(4〜5%)Mg合金(JISA5082、導電率約29%)、Al−(5〜6%)Cu合金(JISA2011、導電率約39%)、Al−(3.5〜4.5%)Cu−(0.4〜1.0%)Mn−(0.2〜0.8%)Mg(JISA2017、ジュラルミン、導電率約50%)、Al−(3.8〜4.9%)Cu−(0.3〜0.9%)Mn−(1.2〜1.8%)Mg(JISA2024、超ジュラルミン、導電率約30%)、Al−(11〜13.5%)Si−(0.8〜1.3%)Mg(JISA4032、導電率約40%)
【0035】
また、前記Al系金属板に接合される他方の金属板を形成する金属材としては、導電率が10%以上の各種冷間加工性を有する金属材を用いることが望ましい。例えば、純Cuや導電率が10%以上、好ましくは20%以上のCu合金を挙げることができる。前記Cu合金は、Cu含有量が高いほど導電率も高くなるため、Cu量が好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上のCu合金が望ましい。このようなCu合金としては、例えば、JIS C1020、C1100、C1201、C14500、Z3234に含まれるCu−Be合金,Cu−Cr合金を挙げることができる。その他、適用可能なCu合金を以下に例示する。Cu−2%Ni合金(導電率33%)、Cu−6%Ni合金(導電率17%)、Cu−9.5%Ni合金(導電率11%)、Cu−30%Zn合金(導電率27.4%)、Cu−34%Zn合金(導電率26.5%)、Cu−Fe−P(Fe+P:0.13%)合金(導電率93%)、Cu−Fe−P(Fe+P:2.48%)合金(導電率69%)、Cu−0.2%Zr合金(導電率93%)
【0036】
また、前記導電率が10%以上の金属材として、純Ni(導電率21%)やNi合金、その他、純Fe(導電率13%),Fe−(0.1%以下)C鋼(導電率10%以上)などの鉄鋼材を用いることができる。前記Ni合金は、Ni含有量が高いほど導電率も高くなる。このため、Ni量が好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上のNi合金が望ましい。適用可能なNi合金として、Ni−(2%以下)Cu合金(導電率16.7%以上)、Ni−(41%以下)Fe合金(導電率16.7%以上)を例示することができる。
【0037】
また、上記第1実施形態では、第1金属板1、第2金属板2の山部11,21、谷部12,22は、断面が三角形状をしているが、例えば図4に示すように、三角形状の山部11,21の先端部を平坦状とし、これを三角形状の谷部に係合させるようにしてもよい。このように山部の先端部を平坦状にすることで、谷部への係合が容易になる。山部、谷部の断面形状はこれらに限るものではなく、図5に示すように、山部11,21の頂部、谷部12,22の底部が平坦面からなる台形状としてもよい。このような形状にすることで、Al系金属で形成した第2金属板のd2を薄くしても、圧接の際に谷部の底部に亀裂が入り難くなる。同図において、θ1、θ2は、図2と同様、第1金属板1の山部11(第2金属板2の谷部22)、第1金属板1の谷部12(第2金属板2の山部21)を形成する傾斜面の成す角度、hは引っ掛かり代である。また、さらに、図6に示すように、山部11,21が金属板1,2の表面より突き出るように形成されてもよい。
【0038】
また、上記第1実施形態では、2枚の金属板からなる複合金属板及びその製造方法を示したが、本発明は金属板の枚数はこれに限らない。図7は、3枚の金属板で構成された第2実施形態に係る複合金属板を示している。この複合金属板は、第1金属板1と、第2金属板2及び第3金属板3を備え、前記第2金属板2の左方の端部に第1金属板1の端部が、前記第2金属板の右方の端部に第3金属板3の端部が接合されている。この複合金属板は以下の要領で製造される。なお、製造方法の説明において、説明の便宜上、第1実施形態と同様、前記複合金属板の第1金属板等の素材となる金属板についても第1金属板等と表示し、同符号を用いる。
【0039】
図8に示すように、前記複合金属板の各金属板の素材となる第1金属板1,第2金属板2,第3金属板3を準備する。前記第2金属板2の両端部には、それぞれ二つの傾斜面によって凸状に形成された山部21と二つの傾斜面によって凹状に形成された谷部22が設けられ、前記第1金属板1および第3金属板3のそれぞれの接合側端部に前記第2金属板2の一方および他方の端部に形成された山部21及び谷部22にそれぞれ係合する谷部12及び山部11が設けられている。
【0040】
次に、前記第2金属板2の一方の端部の谷部22及び山部21にそれぞれ前記第1金属板1の山部11及び谷部12を、前記第2金属板2の他方の谷部22及び山部21にそれぞれ前記第3金属板3の山部11及び谷部12を係合させて端部同士を重ね合わせ、重ね合わせた第2金属板2の両端部を冷間あるいは温間でロールによって圧下する。これにより、第1実施形態と同様、第2金属板2の両端部と第1金属板1及び第3金属板3の端部とが強固に圧接される。さらにこの圧接材に焼鈍を施すと、第2金属板2の両端の圧接部が拡散接合され、強固に接合された複合金属板が得られる。
【0041】
前記3枚構成の複合金属板の製造方法としては、上記方法に限らず、一つの金属板に他の金属板を順次接合するようにしてもよい。すなわち、図9に示すように、まず第1金属板1と第2金属板2とを接合し、この接合した2枚構成の複合金属板の端部に第3金属板3を接合するようにしてもよい。この方法は基本的に前記第1実施形態と同様であり、前記2枚構成の複合金属板が第1実施形態における第1金属板に、第3金属板が第1実施形態の第2金属板に相当する。
【0042】
前記第2実施形態の複合金属板において、前記第1金属板1、第2金属板2、第3金属板3の材料として、適宜の金属材を用いることができる。例えば、この複合金属板を半導体素子を搭載するリードフレーム用素材として用いる場合、半導体素子が搭載されることになる前記第2金属板を純Cuあるいは熱伝導率がCuの60%以上、好ましくは80%以上である冷間加工性を有するCu合金によって形成し、接続用ピンに加工されることになる前記第1金属板および第3金属板をFeより熱膨張率が低い冷間加工性を有するFe基合金、例えばFe−(36〜50%)Ni合金、Fe−(20〜30%)Ni−(1〜20%)Co合金によって形成することができる。前記Cu合金としては、例えばCu−0.15%Sn合金、Cu−2.4%Fe−0.1%Zn合金、Cu−0.1%Fe合金が用いられ、前記Fe−Ni合金としては、例えばFe−42%Ni合金が用いられる。
【0043】
以下、本発明に係る複合金属板及びその製造方法について、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はかかる実施例によって限定的に解釈されるものではない。
【実施例】
【0044】
厚さ3mm、方形平面の純Cu板(第1金属板)及び同厚、同形の純Al板(第2金属板)を準備し、その側端部に図1に示すように、三角形断面の山部11,21、谷部12,22を機械加工により形成した。各部の寸法は、θ1=θ2=90°、d2=d1とし、hは表1に示す値とした。
【0045】
上記純Cu板、純Al板の側端部を山部11,21と谷部22,12が係合するように重ね合わせ、その重ね合わせた両金属板を室温にて上下一対のロールに通して重ね合わせ部が50%あるいは60%の圧下率となるように圧下し、同部を冷間圧接した。この際、重ね合わせ部における亀裂発生状況を観察した。その結果を表1に併せて示す。表1に示すように、試料No. 2を除き、重ね合わせ部が圧接された金属板を得ることができた。一方、試料No. 2では、重ね合わせ部において、純Al板の谷部の底側表面に圧延方向に亀裂が入り、重ね合わせ部を圧接することができなかった。試料No. 2とNo. 1では、形状条件が同一であるが、No. 1では圧下率を50%と下げたので亀裂は発生しなかった。
【0046】
このようにして側端部が圧接された第1、第2金属板に対して、表1に示す条件で拡散焼鈍を施した。そして拡散焼鈍後の複合金属板から圧延方向に対して直角方向(幅方向)に沿って幅10mmの引張試験片TPを採取した(図3参照)。これを用いて試験片が破断するまで引張試験を行ったところ、引張試験に供した全ての試料について接合部での破断はなく、全て純Al板側で破断した。表1では、このような純Al板側で破断が生じたものを合格と表示した。これより、圧接後、拡散焼鈍した接合部は、優れた接合強度を有することが確認された。
【0047】
【表1】


【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる複合金属板の素材である第1金属板、第2金属板の要部正面図である。
【図2】第1、第2金属板の接合側端部を重ね合わせた状態を示す要部正面図である。
【図3】第1、第2金属板の端部が圧接され、さらに拡散焼鈍された第1実施形態に係る複合金属板の斜視図を示す。
【図4】先端部が平坦状とされた略三角形状の山部、三角形状の谷部を接合側端部に備えた第1、第2金属板を同部で重ね合わせた状態を示す要部正面図である。
【図5】断面形状が台形の山部及び谷部を接合側端部に備えた第1、第2金属板を同部で重ね合わせた状態を示す要部正面図である。
【図6】板表面より突出した山部及び板表面より凹んだ谷部を接合側端部に備えた第1、第2金属板を同部で重ね合わせた状態を示す要部正面図である。
【図7】第2実施形態に係る、3枚の金属板が接合された複合金属板の斜視図を示す。
【図8】第2実施形態に係る複合金属板の製造方法に用いる各素材の要部正面図である。
【図9】第2実施形態に係る複合金属板の他の製造方法に用いる各素材の要部正面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 第1金属板
2 第2金属板
3 第3金属板
11,21 山部
12,22 谷部
【出願人】 【識別番号】304051908
【氏名又は名称】株式会社NEOMAXマテリアル
【出願日】 平成18年9月25日(2006.9.25)
【代理人】 【識別番号】100101395
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 ▲龍▼雄


【公開番号】 特開2008−6496(P2008−6496A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−258443(P2006−258443)