トップ :: B 処理操作 運輸 :: B23 工作機械;他に分類されない金属加工

【発明の名称】 炭酸ガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤ
【発明者】 【氏名】辻 公博

【氏名】雨池 弘二

【氏名】石川 清康

【要約】 【課題】高電流で長時間溶接する場合においても、ワイヤ送給性が良好でスパッタ発生量が少なく、さらにチップの摩耗が少なくアークの安定性が良いなど溶接作業性に優れた高電流炭酸ガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤを提供する。

【構成】ワイヤ成分としてC:0.02〜0.12質量%、Si:0.45〜1.2質量%、Mn:1.2〜2.3質量%、Ti:0.10〜0.32質量%を含有し、ワイヤ表面にワイヤ10kg当たりの分量で、常温で液体の潤滑油を0.3〜1.5g有し、好ましくはさらに二硫化モリブデンを0.005〜0.25g、リン脂質を0.008〜0.10g有し、かつ金属粉の付着量が0.25g以下、金属粉以外の固形分の付着量が0.10g以下とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤにおいて、ワイヤ成分としてC:0.02〜0.12質量%、Si:0.45〜1.2質量%、Mn:1.2〜2.3質量%、Ti:0.10〜0.32質量%を含有し、前記めっきのCuの他は残部Feおよび不可避的不純物からなり、ワイヤ表面にワイヤ10kg当たりの分量で、常温で液体の潤滑油を0.3〜1.5g有し、かつ金属粉の付着量が0.25g以下、金属粉以外の固形分の付着量が0.10g以下であることを特徴とするガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤ。
【請求項2】
ワイヤ直径に対して5%までの深さのワイヤ表層部における酸素量が、0.010〜0.040質量%であることを特徴とする請求項1記載のガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤ。
【請求項3】
ワイヤ表面にワイヤ10kg当たりの分量で、さらに二硫化モリブデンを0.005〜0.25g、リン脂質を0.008〜0.10g有することを特徴とする請求項1または2に記載のガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤ。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、490N/mm級高張力鋼の溶接に用いられるガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤに関し、特に高電流で長時間溶接する場合においても、ワイヤ送給性が良好でスパッタ発生量が少なく、さらにコンタクトチップ(以下、チップという)の摩耗が少なくアークの安定性が良いなど溶接作業性に優れた炭酸ガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸ガスシールドアーク溶接方法は、高溶着速度で溶接母材への溶け込みが良好であり、また全姿勢溶接が可能で、信頼性の高い溶接継手が得られる。したがって、建築、橋梁を主体とする大型構造物や自動車等の輸送機器の鋼構造物製造に幅広く使用されている。
【0003】
炭酸ガスシールドアーク溶接用ワイヤを用いたアーク溶接作業は、ワイヤ供給装置の送給ローラによりコンジットケーブル内にワイヤを送り込み、コンジットケーブルに内包され螺旋状に形成されたコンジットチューブとそれにつながる溶接トーチのチップから連続的にワイヤを送り出しながら、炭酸ガスの雰囲気中でアーク溶解する方法で行なわれる。また、コンジットケーブルは溶接作業を容易にするために6m以上の長尺でかつ軟質の物が用いられ、ワイヤ送給装置から溶接部までの距離の調整や狭隘部の溶接をするために上下あるいは左右に曲げられたり、ループ状に巻きつけて長さを調整して使用されることが多い。
【0004】
このような状況で、かつ高電流の溶接条件で溶接された場合、ワイヤは螺旋状のコンジットチューブの内面との接触摩擦部が増えて送給抵抗が増し、ワイヤを円滑に送給することが困難となる。そのため、従来から溶接用ワイヤの送給性を改善するために種々の工夫がなされている。たとえば、ワイヤ送給性を改善する技術として特開平2−284792号公報(特許文献1)には、ワイヤ表面にカリ石鹸、ソーダ石鹸および油性潤滑剤を塗布したガスシールドアーク溶接用ワイヤの提案がある。また、特開2003−225794号公報(特許文献2)には、ワイヤ表面下層部にMoS、BN、ワックス、K化合物および銅粉からなる固形潤滑剤、ワイヤ表面上層部に潤滑油を塗布したガスシールドアーク溶接用ワイヤの提案がある。
【0005】
しかし、前述のワイヤを用いて長時間溶接した場合、ワイヤとコンジットチューブ内面との摩擦によってワイヤ表面の潤滑剤およびワイヤ製造時に付着した銅粉や鉄粉がコンジットチューブ内に蓄積され、送給抵抗が非常に大きくなりアークが不安定になってついにはアーク切れするという問題が生じて満足できるものではない。
【0006】
一方、高電流の溶接条件でスパッタ発生が少なくアークを安定にする技術として、例えば特開昭63−252692号公報(特許文献3)や特公平4−20720号公報(特許文献4)に適量のC、Si、Mn、Tiなどを含む技術の開示がある。しかし、これらの技術ではスパッタ発生量は低減してアークは安定するものの、屈曲したコンジットケーブルを使用して大電流の溶接条件で長時間溶接するとワイヤ製造時に付着した銅粉や鉄粉がコンジットチューブ内に蓄積され送給抵抗が非常に大きくなり、アークが不安定になってついにはアーク切れするという問題が生じて満足できるものではない。
【0007】
また、特開平11−47981号公報(特許文献5)には、銅めっき無しの溶接用ワイヤの開示がある。しかし、コンジットチューブに銅めっきの蓄積はないが高電流で長時間溶接しているとチップの摩耗が激しく、アークが不安定になるので頻繁にチップを交換する必要がある。
【特許文献1】特開平2−284792号公報
【特許文献2】特開2003−225794号公報
【特許文献3】特開昭63−252692号公報
【特許文献4】特公平4−20720号公報
【特許文献5】特開平11−47981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、490N/mm級高張力鋼の溶接に用いられるワイヤであって、特に高電流で長時間溶接する場合においても、ワイヤ送給性が良好でスパッタ発生量が少なく、さらにチップの摩耗が少なくアークの安定性が良いなど溶接作業性に優れた炭酸ガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は、炭酸ガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤにおいて、ワイヤ成分としてC:0.02〜0.12質量%、Si:0.45〜1.2質量%、Mn:1.2〜2.3質量%、Ti:0.10〜0.32質量%を含有し、前記めっきのCuの他は残部Feおよび不可避的不純物からなり、ワイヤ表面にワイヤ10kg当たりの分量で、常温で液体の潤滑油を0.3〜1.5g有し、かつ金属粉の付着量が0.25g以下、金属粉以外の固形分の付着量が0.10g以下であることを特徴とする。
また、ワイヤ直径に対して5%までの深さのワイヤ表層部における酸素量が、0.010〜0.040質量%であることを特徴とする。
また、ワイヤ表面にワイヤ10kg当たりの分量で、さらに二硫化モリブデンを0.005〜0.25g、リン脂質を0.008〜0.10g有することも特徴とするガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明の炭酸ガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤによれば、490N/mm級高張力鋼を高電流で長時間溶接する場合においても、ワイヤ送給性が良好でスパッタ発生量が少なく、さらにチップの摩耗が少なくアークの安定性が良いなど溶接作業性に優れた溶接が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するためにワイヤ成分、ワイヤ表面に塗布する送給潤滑剤およびワイヤ表面状態について種々検討した。その結果、ワイヤ成分中C、Si、MnおよびTiの含有量を限定することによって溶接金属の強度を確保し、アークを安定化し、スパッタの発生を抑制する。またワイヤ表面に銅めっきおよび常温で液体である潤滑油を有し、金属粉および金属粉以外の固形分の付着量を少なくすることによって、軟質で長尺のコンジットケーブルを使用して高電流の溶接条件で長時間溶接する場合においても、ワイヤ送給性が良好でチップ摩耗も極めて少なくなり安定したアークが得られる。さらに、ワイヤ表層部の酸素ならびにワイヤ表面の二硫化モリブデンおよびリン脂質を適量にすることによって、ワイヤ送給性が良好でスパッタ発生量も極めて少なくなり、安定したアークが得られることを見出した。
【0012】
ワイヤ成分中のCは、溶接金属の強度確保のために添加するが、スパッタ発生量の抑制のため添加量を制限する。Cが0.02質量%(以下、%という。)未満であるとスパッタ発生量は少ないものの溶接金属の強度が低くなる。0.12%を超えると大粒のスパッタ発生量が多くなる。
【0013】
Siは、アークの安定のために添加する。Siが0.45%未満であるとアークが不安定となる。1.2%を超えるとスパッタ発生量が多くなる。
MnもSiと同様にアークの安定のために添加する。Mnが1.2%未満であるとアークが不安定となる。2.3%を超えるとスパッタ発生量が多くなる。
【0014】
Tiは、特に高電流の溶接条件で溶滴を小さくしてスパッタ発生を抑制する。Tiが0.10%未満であるとその効果がなく大粒のスパッタが多発する。0.32%を超えると逆にスパッタ発生量が多くなる。
なお、溶接金属の強度調整としてNi、Mo、Cr、Al、Zr、VおよびNbを微量添加できる。
【0015】
ワイヤ表面の銅めっきは、コンジットチューブ内での摩擦抵抗を低減するとともにチップ先端での通電性を良好にしアークを安定させる。さらに、高電流の溶接条件で長時間溶接してもチップ摩耗が極めて少なく安定したアークを持続させることができる。銅めっきは通電性、潤滑性およびチップの耐摩耗性を向上させるとともに防錆力向上の効果も有する。めっき厚は0.3〜1.2μm程度が好ましい。
【0016】
次に、ワイヤ表面に塗布する潤滑剤は、常温で液体である潤滑油をワイヤ10kg当たり0.3〜1.5g(以下、g/10kgWという)とする。常温で液体である潤滑油はワイヤ表面に皮膜を有し、ワイヤ送給時にワイヤ送給性を向上させる。潤滑油が0.3g/10kgW未満であると、コンジットチューブ内で送給抵抗が大きくなりワイヤ送給性が不良となる。逆に、1.5g/10kgWを超えると、送給ローラ部でワイヤがスリップしてアークが不安定になる。
【0017】
潤滑油は、動植物油、鉱物油あるいは合成油の何れでもよい。動植物油としてはパーム油、菜種油、ひまし油、豚油、牛油、魚油等を、鉱物油としてはマシン油、タービン油、スピンドル油等を用いることができる。合成油としては炭化水素系、エステル系、ポリグリコール系、ポリフェノール系、シリコーン系、フロロカーボン系を用いることができる。
【0018】
ワイヤ表面の銅めっきは、前述のようにチップ先端での通電性を良好にし、チップ摩耗の減少、さらに防錆力向上という効果がある。しかし、ワイヤ表面への銅めっきはワイヤ素線径(2.5〜3.5mm程度)で施され、その後に仕上げ伸線で製品径まで縮径されるが、この過程で銅めっきが剥がれワイヤ表面に多量付着する。また、同時にワイヤ表層部の鉄も削られてワイヤ表面に付着する。これらワイヤ表面に付着した金属粉は、コンジットチューブ内に蓄積されて長時間溶接していると送給抵抗が非常に大きくなり、アークが不安定となってついにはアーク切れが生じるようになる。しかし、ワイヤ表面の金属粉付着量が0.25g/10kgW以下であると、コンジットチューブ内への蓄積量が少なく長時間溶接しても送給抵抗を大きくすることがない。
【0019】
銅粉や鉄粉などの金属粉以外に、ワイヤ表面には残留した固形伸線潤滑剤や湿式伸線潤滑剤中の汚れ、ほこり等が付着してコンジットチューブ内に蓄積され、長時間溶接していると送給抵抗が大きくなりアークが不安定となる。しかし、金属粉以外の固形分(以下、固形不純物という)の付着量が0.10g/10kgW以下であると、コンジットチューブ内への蓄積量が少なくなり、コンジットチューブが摩耗して交換するまで送給抵抗を大きくすることがない。
【0020】
次に、ワイヤ直径に対して5%の深さまでのワイヤ表層部、すなわちワイヤ直径に対して直径が10%減少するまでの表層部領域の酸素量が0.010〜0.040%であると、溶融金属の表面張力を小さくして母材へ移行する溶滴を小さくできる。これにより溶滴と母材との瞬間的な短絡が少なくなってアークが安定し、スパッタ発生量も少なくなる。
【0021】
ワイヤ直径に対して5%深さまでのワイヤ表層部の酸素量が0.010%未満であると、ワイヤ先端部の溶融金属の表面張力が大きく、溶滴が大きく不揃いになって溶滴と母材との瞬間的な短絡が多くなり、アークが不安定でスパッタ発生量も多くなる。逆にワイヤ直径に対して5%深さまでのワイヤ表層部の酸素量が0.040%を超えると、溶接金属にブローホールを発生させるおそれがある。また、酸素量の増大と共にワイヤ表層部の粒界の酸化深さが大きくなる。そのために粒界剥離が生じて、溶接時にコンジットチューブ内で送給抵抗が大きくなってアークが不安定となる場合もある。なお、ワイヤ表層部の酸素には、ワイヤ表面の付着物などの酸素は含まない。
【0022】
さらに、ワイヤ表面に二硫化モリブデンを0.005〜0.25g/10kgW有することによって、コンジットチューブ内で送給抵抗を抑制してワイヤ送給性をさらに良好にする。二硫化モリブデンが0.005g/10kgW未満であると、コンジットチューブ内で送給抵抗が大きくなりワイヤ送給性が不良となる。逆に、二硫化モリブデンが0.25g/10kgWを超えると、アークが不安定になってスパッタ発生量が多くなる。
【0023】
なお、二硫化モリブデンは長時間溶接しているとワイヤとコンジットチューブとの接触によりコンジットチューブ内に少量蓄積されるが、この蓄積された二硫化モリブデンは送給抵抗を小さくする働きをする。また、二硫化モリブデンの粒径は1.0μm以下であることが送給抵抗を低減してワイヤ送給性を良好にするので好ましい。
【0024】
また、リン脂質をワイヤ表面に0.008〜0.10g/10kgW有することによって、常温で液体である潤滑油と共存してワイヤ表面の二硫化モリブデンを均一に分散させる作用を有する。リン脂質が0.008g/10kgW未満であると、ワイヤ表面の二硫化モリブデンが均一に付着せず、コンジットチューブ内で送給抵抗が大きくなる部分がありワイヤ送給性が不良になる。逆に、リン脂質が0.10g/10kgWを超えると、スパッタ発生量が多くなる。
【0025】
本発明にいうリン脂質とは、レシチン(フォスファチジルコリン)、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファジルイノシトールなどのリン酸脂質を95%程度含有する粉末状のもの、リン酸脂質を約65%および大豆油などの植物油を35%程度含有するペースト状のものなどあり、いずれも使用することができ、中でも大豆油から得られるレシチンが好ましい。
【0026】
本発明のガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤの製造方法は、ワイヤ原線を一次伸線したワイヤ素線を焼鈍してワイヤ表面に銅めっきを施したのち、製品径まで仕上げ伸線して、ワイヤ表面を例えば洗浄や機械的に浄化し、常温で液体である潤滑油または潤滑油と二硫化モリブデンおよびリン脂質をワイヤ表面に塗布してスプール巻きまたはペールパック入りワイヤとする。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の効果を実施例により具体的に説明する。
ワイヤ径1.2mmの溶接用ワイヤの成分、ワイヤ表面状態および潤滑剤塗布量を変えたものを試作してスプール巻きワイヤとした。表1および表2にワイヤ成分、ワイヤ表面状態等の条件を示す。
【0028】
【表1】


【0029】
【表2】


【0030】
各試作ワイヤにつきワイヤ送給性、チップ摩耗量、アーク状態、スパッタ発生量および溶接金属の引張強度を調査した。ワイヤ送給性、チップ摩耗量およびアーク状態の評価は、図1に示す装置を用いて行った。図1において送給機1にセットされたスプール巻きワイヤ2は、送給ローラ3により引き出され、コンジットケーブル4に内包されたコンジットチューブを経てその先端のトーチ5からチップ6まで送給される。そしてチップ6と鋼板7との間でビードオンプレート溶接を行う。コンジットケーブル4は長さ6mで、送給抵抗を与えるために150mm径のループを2つ形成した屈曲8を設けた。送給機1には送給ローラの周速度Vr(設定ワイヤ速度)の検知器(図示せず)およびワイヤの実速度Vw検出器9を備えている。
【0031】
ワイヤ送給性評価指標のスリップ率SLは、SL=(Vr−Vw)×100/Vrで表される。また、送給ローラ部分に設けられたロードセル10によりワイヤ送給時にワイヤがコンジットチューブから受ける反力を送給抵抗Rとして検出した。溶接は試作ワイヤ毎に新しいコンジットチューブを用いて表3に示す溶接条件で100分溶接し、溶接開始後40分から溶接終了までの20分間スリップ率SLと送給抵抗Rを測定して平均値を求めた。スリップ率SLが10%以下で送給抵抗Rが6kgf以下の場合にワイヤ送給性良好と判定した。また、チップの摩耗量は、試作ワイヤ毎に新しいチップ(内径1.4mm)を用いて溶接終了後最も摩耗の大きい箇所の内径を測定した。チップ摩耗量の評価は、摩耗量が0.15mm以下を良好として評価した。
【0032】
【表3】


【0033】
スパッタ発生量は、上記ワイヤ送給性およびチップ摩耗性の試験終了後、コンジットチューブおよびチップを交換せずに、ビードオンプレート溶接により表3に示す溶接条件で銅製の捕集箱を用いて5回溶接(1回の溶接時間1.5min)し、捕集したスパッタを1分間の発生量に換算した。スパッタ発生量は2g/min以下でアークが安定して作業性が良好である。また、スパッタ発生量測定後、コンジットチューブのループ部を切断して、潤滑剤、金属粉および固形不純物の蓄積状態を観察した。
【0034】
溶接金属の引張強度は、JIS Z3111に準じ、板厚20mmのSM490B鋼を用いて溶着金属試験を行った。引張強度の評価は、引張強さが490N/mm以上を良好とした。それらの結果を表4にまとめて示す。
【0035】
【表4】


【0036】
表1、表2および表4中、ワイヤNo.1〜10が本発明例、ワイヤNo.11〜20は比較例である。
本発明例であるワイヤNo.1〜10は、ワイヤ成分範囲が適正で銅めっきを有し、ワイヤ表面の潤滑油量が適正で、金属粉量および固形不純物が少ないので、スリップ率SLおよび送給抵抗Rが低くワイヤ送給性が良好で、チップ摩耗量およびスパッタ発生量も少なくアークが安定して溶接作業性が良好で、コンジットチューブ内への蓄積量が少なく溶接金属の引張強さも490N/mm以上であるなど極めて満足な結果であった。なお、二硫化モリブデンおよびリン脂質を含まないワイヤNo.1とリン脂質を含まないワイヤNo.3は、送給抵抗Rがやや高くなった。
【0037】
比較例中ワイヤNo.11は、ワイヤ成分のCが高いので大粒のスパッタ発生量が多かった。また、ワイヤ表層部の酸素量が高いので部分的にワイヤ表層部の粒界剥離が生じて送給抵抗Rが高くなってアークが不安定となった。
ワイヤNo.12は、ワイヤ成分のCが低いので引張強さが低くなった。また、ワイヤ表面潤滑剤の二硫化モリブデン量が多いのでアークが不安定でスパッタ発生量も多くなった。
【0038】
ワイヤNo.13は、ワイヤ成分のSiが高いのでスパッタ発生量が多かった。また、ワイヤ表面の二硫化モリブデン量が少ないので送給抵抗Rも大きくワイヤ送給性が不良であった。
ワイヤNo.14は、ワイヤ成分のSiが低いのでアークが不安定であった。また、ワイヤ表面のリン脂質量が多いのでスパッタ発生量も多かった。
【0039】
ワイヤNo.15は、ワイヤ成分のMnが高いのでスパッタ発生量が多かった。また、ワイヤ表面のリン脂質量が少ないので送給抵抗Rも高くなった。
ワイヤNo.16は、ワイヤ成分のMnが低いのでアークが不安定であった。また、ワイヤ表面の潤滑油量が少ないので送給抵抗Rも高くなった。
【0040】
ワイヤNo.17は、ワイヤ成分のTiが高いのでスパッタ発生量が多くなった。また、ワイヤ表面の金属粉量(銅粉と鉄粉の合計量)が多いのでコンジットチューブ内に蓄積されて送給抵抗Rが高く、アークも不安定となった。
ワイヤNo..18は、ワイヤ成分のTiが低いので大粒のスパッタ発生量が多くなった。また、固形不純物量が多いので、コンジットチューブ内に蓄積されて送給抵抗Rが高く、アークも不安定となった。
【0041】
ワイヤNo.19は、ワイヤ表面に銅めっきが施されていないので送給抵抗Rが高くワイヤ送給性が不良でチップが摩耗してアークも不安定となった。
ワイヤNo.20は、ワイヤ表層部の酸素量が低いのでアークが不安定でスパッタ発生量が多くなった。また、ワイヤ表面の潤滑油量が多いのでスリップ率SLも高くなった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施例におけるワイヤ送給性試験の装置を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1 送給機
2 スプール巻きワイヤ
3 送給ローラ
4 コンジットケーブル
5 トーチ
6 チップ
7 鋼板
8 コンジットケーブルの屈曲部
9 ワイヤの実速度検出器
10 ロードセル
【出願人】 【識別番号】302040135
【氏名又は名称】日鐵住金溶接工業株式会社
【出願日】 平成18年6月29日(2006.6.29)
【代理人】 【識別番号】100094972
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康弘


【公開番号】 特開2008−6474(P2008−6474A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−180133(P2006−180133)