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【発明の名称】 異種金属の接合方法
【発明者】 【氏名】粕川 実

【氏名】桜井 寛

【氏名】中川 成幸

【要約】 【課題】例えば、軽合金製のルーフパネルを用いた自動車の車体構造の接合に適用した場合に、車体の外側からの高エネルギービーム照射によって、外観やデザインの自由度などを損なうことなくこれら異種金属材料を互いに接合することができる異種金属の接合方法を提供する。

【構成】高融点材料から成る第1の板材1と低融点材料から成る第2の板材2を重ね合わせ、第2の板材2の側からの高エネルギービーム照射によってこれら板材を重ね接合するに際し、第2の板材2に貫通孔2aをステッチ状に設け、この第2の板材2に第1の板材と同種の高融点材料から成る第3の板材3をさらに重ね、第3の板材3に照射した高エネルギービームBにより上記貫通孔2aを介して第1の板材1と第3の板材3を断続的に溶融接合したのち、溶融接合近傍部を加圧して、上記第1及び第3の板材1,3と第2の板材2とを上記溶融接合部の近傍において接合する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高融点材料から成る第1の板材と低融点材料から成る第2の板材を重ね合わせ、第2の板材の側から高エネルギービームを照射してこれら板材を重ね接合するに際し、第2の板材にさらに第1の板材と同種の高融点材料から成る第3の板材を重ね、当該第3の板材に照射した高エネルギービームにより第2の板材を貫通させて第1の板材と第3の板材を断続的に溶融接合することを特徴とする異種金属の接合方法。
【請求項2】
高融点材料から成る第1の板材と低融点材料から成る第2の板材を重ね合わせ、第2の板材の側から高エネルギービームを照射してこれら板材を重ね接合するに際し、第2の板材に貫通孔をステッチ状に設けると共に、当該第2の板材にさらに第1の板材と同種の高融点材料から成る第3の板材を重ね、第3の板材に照射した高エネルギービームにより上記貫通孔を介して第1の板材と第3の板材を断続的に溶融接合したのち、溶融接合近傍部を加圧することを特徴とする異種金属の接合方法。
【請求項3】
上記第1及び第3の板材の少なくとも一方に、第2の板材に設けた貫通孔に嵌合する突起を形成することを特徴とする請求項2に記載の異種金属の接合方法。
【請求項4】
上記第1及び第3の板材と第2の板材の間にこれら材料とは異なる第4の材料を介在させた状態で、高エネルギービームを照射し、上記第1、第3の板材及び第2の板材の少なくとも一方と第4の材料との間で共晶溶融を生じさせて接合することを特徴とする請求項2又は3に記載の異種金属の接合方法。
【請求項5】
上記第1、第3の板材及び第2の板材の少なくとも一方に、第4の材料によるめっきが施してあることを特徴とする請求項4に記載の異種金属の接合方法。
【請求項6】
上記第1及び第3の板材が亜鉛めっき鋼板であって、該亜鉛めっき鋼板にめっきされている亜鉛を第4の材料として利用することを特徴とする請求項5に記載の異種金属の接合方法。
【請求項7】
上記第2の板材がアルミニウム合金から成るものであることを特徴とする請求項6に記載の異種金属の接合方法。
【請求項8】
上記板材の溶融接合近傍部を加圧するに際して、加圧面が凸形状をなす2個のローラを用いて、溶融接合部の両側を加圧することを特徴とする請求項4〜7のいずれか1つの項に記載の異種金属の接合方法。
【請求項9】
上記板材の溶融接合近傍部を加圧するに際して、加圧面が凸形状をなす2個のローラを一体化してなるローラを用いて、溶融接合部の両側を加圧することを特徴とする請求項4〜7のいずれか1つの項に記載の異種金属の接合方法。
【請求項10】
上記第1及び第3の板材における第2の板材との接合面に、第2の板材側に突出する湾曲面を設けることを特徴とする請求項4〜9のいずれか1つの項に記載の異種金属の接合方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、異種金属、例えばスチール材のような高融点金属材料から成る板材の間に、これらよりも融点の低い金属材料、例えばアルミニウム合金などから成る板材を挟んだ継手を電子ビームやレーザビーム等のような高エネルギービームを用いて接合する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子ビームやレーザビーム等のような高エネルギービームを用いた異種材料の接合においては、脆い金属間化合物の生成を抑制するために、デフォーカスさせた高エネルギービームを高融点材料の側に照射し、高融点材料側からの伝熱によって接合界面の低融点材料側を溶融させて接合する方法がとられていた。
【0003】
このような場合、溶接条件をコントロールし、接合界面において、片側の材料(低融点材料)のみを溶融させ、材料の拡散を利用して接合することにより金属間化合物層の成長を抑制し、その厚さを薄くすることによって、両方の材料を共に溶融させて接合した場合に較べて、接合部の単位面積当りの強度を高くすることができると考えられており、例えば非特許文献1には、アルミニウム合金の上に鋼板を重ね、鋼板の上方からレーザビームを照射することによって、界面を固相/液相状態として異種材の接合を行なう方法が記載されている。
【0004】
また、非特許文献2には、機械的締結、すなわちアルミニウム合金側からリベットなどを打ち込むことによって、アルミニウム合金製パネルを鋼製の車体骨格構造に接合する方法が記載されている。
【非特許文献1】「溶接学会全国大会講演概要」、社団法人日本溶接学会、2003年4月、第72集、p.152
【非特許文献2】三菱自動車 テクニカルレビュー 2004、No.16、p.82
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記非特許文献1に記載の方法においては、鋼板からの伝熱により接合界面のアルミニウム合金を溶融させるため、必ず、アルミニウム合金の上に鋼板を重ねて、鋼板側の外側方向からレーザビームを照射しなければならないという接合継手の構造設計上の制約があった。
すなわち、車両の軽量化による燃費向上や運動性能向上を目的として、車体パネルにアルミニウム合金などの軽合金を用いた車体構造が求められているが、例えば低重心化による性能向上効果を高めるために、ルーフパネルにアルミニウム合金を用いた場合、車体骨格構造である鋼部材とアルミニウム合金部材との接合構造は、鋼部材の上から、アルミニウム合金から成るルーフパネルが重ねられ、レーザヘッドの近接性から、車体骨格構造の外側、つまりアルミニウム合金製のルーフパネルの側からレーザビームを照射しなければならない接合構造となる。また、ルーフパネルに限らず、他の車体外板パネルにアルミニウム合金を用いた場合も、鋼製の車体骨格構造の上にアルミニウム合金製の車体パネルを重ねる構造となるため、上記のように、鋼板側からレーザビームを照射するような方法は適用できないことになる。
【0006】
そこで、実用的には、上記非特許文献2に記載の機械的締結による方法の採用が考えられるが、この方法では、外観やデザインの自由度などに制約が生じる場合があるという問題点があった。
【0007】
本発明は、異種金属材料の接合技術における上記課題に鑑みてなされたものであって、例えば、軽合金製のルーフパネルを用いた自動車の車体構造の接合に適用した場合に、車体の外側からの高エネルギービーム照射によって、外観やデザインの自由度などを損なうことなくこれら異種金属材料を互いに接合することができる異種金属の接合方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意検討を重ねた結果、鋼製車体部材の上に重ねた軽合金製ルーフパネルの上に、さらに鋼製板材を重ねて接合するようになすことによって、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
すなわち、本発明は上記知見に基づくものであって、本発明の異種金属の接合方法においては、高融点材料から成る第1の板材と低融点材料から成る第2の板材を重ね合わせ、第2の板材の側からの高エネルギービーム照射によってこれら板材を重ね接合するに際し、第2の板材に第1の板材と同種の高融点材料から成る第3の板材をさらに重ね、第3の板材表面に照射した高エネルギービームにより第2の板材を貫通させて第1の板材と第2の板材を溶融接合することを特徴とし、同じく重ね合わせた第1の板材と第2の板材を第2の板材の側から高エネルギービームを照射して接合するに際し、第2の板材に貫通孔をステッチ状に設けると共に、この第2の板材に第1の板材と同種の高融点材料から成る第3の板材をさらに重ね、第3の板材に照射した高エネルギービームにより上記貫通孔を介して第1の板材と第3の板材を断続的に溶融接合したのち、溶融接合近傍部を加圧するようになすことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高融点材料から成る第1の板材と低融点材料から成る第2の板材を重ね合わせ、第2の板材の側からの高エネルギービーム照射によってこれら板材を重ね接合するに際し、第2の板材に第1の板材と同種の高融点材料から成る第3の板材をさらに重ねて接合するようにしたことから、例えば低重心化を図った上記のような骨格構造を備えた車体の組み立てにおいても、車体の外側からの高エネルギービーム照射によって異種材料の重ね接合が可能になるため、継手構造上の制約が解消され、自由度の高い構造設計が可能になり、外観やデザインの自由度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の異種金属の接合方法について、さらに詳細、かつ具体的に説明する。
【0012】
本発明の異種金属の接合方法においては、上記したように、高融点材料から成る第1の板材と第3の板材との間に低融点材料から成る第2の板材を挟んだ状態で高エネルギービームを照射するようにしているので、いずれの側からでも高エネルギービームが高融点材料の表面に照射されることになり、自動車車体の組み立てにおいては、車体の外側からのビーム照射によっても低重心骨格構造の車体における異材接合に対応することができるようになり、構造設計や溶接施工上の制約が解消される。
【0013】
すなわち、第3の板材の表面に照射した高エネルギービームによって、これよりも低融点の材料から成る第2の板材を貫通させて、第1と第3の板材を溶融接合することによって、これら3枚の板材を一度に接合することができる。このとき、第2の板材を貫通させ、第1の板材まで溶融するような溶接条件で接合を行う。
【0014】
また、第2の板材に貫通孔をあらかじめステッチ状に設けておき、貫通孔を設けた第2の板材にさらに第1の板材と同種の高融点材料から成る第3の板材を重ね、第3の板材表面に照射した高エネルギービームによって、この貫通孔を介して第1の板材と第3の板材を溶融接合すると共に、溶融接合近傍部を加圧することによって、この加圧と溶融接合部からの伝熱によって、第2の材料の両面を溶融接合近傍部において第1及び第3の材料にそれぞれ接合することができ、上記同様に継手構造上の制約が解消され、自由度の高い構造設計が可能になると共に、高融点材料同士の溶融接合に加えて、この溶融接合部の周囲では高融点材料と低融点材料との接合が行われるため、高い継手強度が得られることになる。
【0015】
なお、本発明において、第1の板材と第3の板材を同種の高融点材料から成るものとしているが、本発明において『同種』とは、金属組織や成分系が同じものを意味し、同一規格のものはもとより、例えば炭素鋼と合金鋼、軟鋼と高張力鋼などのように別規格であってもフェライト組織である限り、本発明では『同種』ということになる。
【0016】
図1及び図2は、本発明における異種金属の接合要領の説明図であって、図1は高エネルギービームBの移動方向、すなわち接合線と直交する方向から見た側面図、図2(a)〜(c)は、図1における切断線a、b、cにおけるそれぞれ断面図である。
【0017】
これら図に示すように、高融点材料(例えば、鋼材)から成る第1の板材1の上に、低融点材料(例えば、アルミニウム合金材)から成る第2の板材2が重ねられる。
このとき、第2の板材2には、接合進行方向を長手方向とした長孔2a(貫通孔)が断続的にステッチ状にあらかじめ形成されており、この第2の板材2の上には、高融点材料(例えば、鋼材)から成る第3の板材3が重ねられている。
【0018】
第2の板材2における長孔2aの直上位置に、高エネルギービームとして、第3の板材3の側からその表面上に焦点を合わせたレーザビームBを長孔2aに沿って移動させながら照射し、図2(b)に示すように、第3の板材3を溶け落ちさせ、第1の板材1と共に溶融させて、これら板材3と板材1を溶融接合すると共に、レーザ照射位置の直後を加圧ローラ10によって、第3の板材3を第1の板材1に押し付ける方向に加圧する。
レーザビームBの照射によって溶融接合された板材3と板材1の接合部からの伝熱によって第2の板材2が加熱され、当該加熱と加圧ローラ10による加圧によって、図2(c)に示すように、第1の板材1と第2の板材2の界面、第3の板材3と第2の板材2の界面が接合部4、5において接合される。
【0019】
このとき、図3(a)〜(c)に示すように、上記第1の板材1及び第3の板材3の一方、又は両方に、第2の部材2に形成された長孔2aの形状の大きさと間隔に合わせた突起1a、3aをあらかじめ設けておき、これら突起1a、3aを第2の部材2に形成された長孔2aに嵌合させることが望ましく、これによって第1の板材1と第3の板材3とがより一層接し易くなることから、より効率よくこれら板材1,3を溶融接合することができるようになる。
なお、上記図には、板材1,3の両方に突起1a、3aを形成し、これら突起先端部をあらかじめ接触させた例を示しているが、板材1,3の一方のみに突起1a又は3aを設けるようにしてもよい。また、必ずしも突起先端部を相手板材に接触させる必要はなく、突起形成によって、板材1,3同士がより接近することから、それなりの効果が得られることになる。
【0020】
また、このとき、上記第1の板材1と第2の板材2の間、及び第3の板材3と第2の板材2の間に、これらの材料とは異なる材料であって、上記第1、第3の板材1,3及び第2の板材2の少なくとも一方と共晶溶融を生じる第4の材料を介在させることが望ましく、こうすることによって、第1の板材1と第2の板材2との溶融接合部からの伝熱と加圧によって、上記溶融接合部の近傍における異種材料界面に比較的低温度で共晶溶融が生じることから、より低温状態で酸化皮膜を接合界面から除去することができ、接合界面温度の上昇を防止して金属間化合物の生成を抑制し、異種金属から成る板材の新生面同士が強固に接合されるようになることから、特にアルミニウム材やマグネシウム材のように表面に緻密な酸化皮膜が形成される材料を含む異種金属の接合に好適に用いることができる。
【0021】
このとき、第4の材料を上記板材の間に介在させるための具体的手段としては、接合しようとする板材の少なくとも一方の接合面に第4の材料をめっきすることが望ましく、これによって第4の材料をインサート材としてパネル間に挟み込む工程を省略することができ、加工工数の低減によって作業効率が向上するばかりでなく、共晶反応によって溶融されためっき層が表面の不純物と共に接合部の周囲に排出された後に、めっき層の下から極めて清浄な新生面が現れることになり、より強固な接合が可能となる。
【0022】
そして、例えば、アルミニウム合金材やマグネシウム合金材などの軽合金製パネルと鋼材から成る異種金属パネルの接合に際しては、鋼材として、アルミニウムやマグネシウムと低融点共晶を形成する第4の金属である亜鉛がその表面にあらかじめめっきされている、いわゆる亜鉛めっき鋼板を用いることができる。この場合には、新たにめっきを施したり、特別な準備を要したりすることもなく、防錆目的で亜鉛めっきを施した通常の市販鋼材をそのまま使用することができ、極めて簡便かつ安価に、異種金属パネルの強固な接合を行なうことができるようになる。
【0023】
ここで、共晶溶融について、Al−Zn系合金の例について説明する。
図4は、Al−Zn系2元状態図を示すものであって、図に示すようにAl−Zn系における共晶点(Te)は、655Kであり、Alの融点933Kよりもはるかに低い温度で共晶反応が生じる。
したがって、図に示した共晶点を利用してAlとZnの共晶溶融を作り出し、アルミニウム材の接合時における酸化皮膜除去や相互拡散などの接合作用に利用することによって、低温接合が実施でき、接合界面における金属間化合物の成長を極めて有効に抑制することができる。
【0024】
ここで、共晶溶融とは共晶反応を利用した溶融を意味し、2つの金属(又は合金)が相互拡散して生じた相互拡散域の組成が共晶組成となった場合に、保持温度が共晶温度以上であれば共晶反応により液相が形成される。例えばアルミニウムと亜鉛の場合、アルミニウムの融点は933K、亜鉛の融点は692.5Kであるのに対して、この共晶金属はそれぞれの融点より低い655Kにて溶融する。
したがって、両金属の清浄面を接触させ、655K以上に加熱保持すると反応が生じる。これを共晶溶融といい、Al−95%Znが共晶組成となるが、共晶反応自体は合金成分に無関係な一定の変化であり、合金組成は共晶反応の量を増減するに過ぎない。
【0025】
一方、アルミニウム材の表面には酸化皮膜が存在するが、これは高エネルギービームの照射による加熱と、その直後の所定温度での加圧によってアルミニウム材に塑性変形が生じることにより物理的に破壊されることになる。
すなわち、加圧によって材料表面の微視的な凸部同士が擦れ合うことから、一部の酸化皮膜の局所的な破壊によってアルミニウムと亜鉛が接触した部分から共晶溶融が生じ、この液相の生成によって近傍の酸化皮膜が破砕、分解されてさらに共晶溶融が全面に拡がる反応の拡大によって、酸化皮膜破壊の促進と液相を介した接合が達成される。
【0026】
共晶組成は相互拡散によって自発的達成されるため、組成のコントロールは必要ない。必須条件は2種の金属あるいは合金の間に、低融点の共晶反応が存在することであり、アルミニウムと亜鉛の共晶溶融の場合、亜鉛に代えてZn−Al合金を用いる場合には、少なくとも亜鉛が95%以上の組成でなければならない。
【0027】
図5(a)〜(e)は、本発明による異種金属パネルの接合プロセスとして、亜鉛めっき鋼板(高融点金属パネル)とアルミニウム合金板材(低融点金属パネル)との接合例を示す概略図である。
まず、図5(a)に示すように、少なくとも接合界面側の表面に、Alと共晶を形成する第3の金属材料として機能する亜鉛めっき層1pが施された亜鉛めっき鋼板1と、アルミニウム合金材2を用意し、図5(b)に示すように、これら亜鉛めっき鋼板1とアルミニウム合金材2を亜鉛めっき層1pが内側になるように重ねる。なお、アルミニウム合金材2の表面には酸化皮膜2cが生成している。
【0028】
次に、高エネルギービームを亜鉛めっき鋼板1に照射し、接合界面が所定の温度範囲となったところで、両パネルを加圧し、接合面を相対的に押圧すると、押圧による塑性変形や熱的衝撃などによって、図5(c)に示すように材料表面の微視的な接触部において、酸化皮膜2cが局部的に破壊される。
【0029】
これによって、亜鉛とアルミニウムの局部的な接触が生じ、そのときの温度状態に応じて、図5(d)に示すように、亜鉛とアルミニウムの共晶溶融が生じ、共晶溶融金属Meと共に酸化皮膜2cや接合界面の不純物などから成る排出物が接合部の外側(矢印方向)に排出されることにより、所定の接合面積が確保され、その結果、図5(e)に示すように、アルミニウム合金材と鋼材の新生面同士が極めて薄い反応層Lによって直接接合され、鋼板1とアルミニウム合金材2の強固な金属接合が得られることなる。なお、反応層Lと鋼材1の間には材料や接合条件によって鋼への亜鉛の薄い拡散層が生じる場合もあるが、接合強度への影響は少なく、実質的な問題はない。
【0030】
本発明の異種金属の接合方法における板材の具体的な組み合せとしては、例えば鋼材とアルミニウム合金材の組み合せを挙げることができ、このとき両材料の間に介在させる第4の材料としては、アルミニウム合金と低融点共晶を形成する材料でありさえすれば特に限定されることはなく、例えば、上記した亜鉛(Zn)の他に、銅(Cu)、錫(Sn)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)などを用いることができる。
すなわち、これら金属とAlとの共晶金属は、母材であるアルミニウム合金材の融点以下で溶融するため、脆弱な金属間化合物が生成し易い鋼材とアルミニウム合金材の接合においても、低温で酸化皮膜の除去ができ、接合過程での接合界面における金属間化合物の生成が抑制でき、強固な接合が可能になる。
【0031】
また、本発明の接合方法を自動車ボディの組み立てに適用することを考えた場合、被接合パネルの材料は鋼材とアルミニウムとの組み合せがほとんどであるが、将来的には鋼材とマグネシウム、あるいはアルミニウムとマグネシウムとの組み合せなども考えられる。
鋼材パネルとマグネシウムパネルとの接合に際しては、後述する実施例と同様に鋼材側にめっきした亜鉛とマグネシウムの間に共晶反応を生じさせて接合することが可能である。さらに、アルミニウムパネルとマグネシウムパネルを接合する場合においても、亜鉛や銀を第4の材料として利用することが可能である。
【0032】
なお、本発明においては、第4の材料として、上記したような純金属に限定される必要はなく、共晶金属は2元合金も3元合金も存在するため、これらの少なくとも1種の金属を含む合金であってもよい。
【0033】
したがって、図1〜3に示した説明図において、第1の板材1及び第3の板材3として、亜鉛めっき鋼板を使用することによって、共晶反応の利用による強固な異材接合をより容易に行なうことができる。
すなわち、第3の板材3の側からレーザビームBを長孔2aの直上位置に照射し、図2(b)に示すように、第3の板材3を溶け落ちさせて、亜鉛めっき鋼板から成る板材3と板材1を溶融接合すると共に、溶融接合部の周辺を加圧ローラ10によって、図2(c)に示すように加圧する。
【0034】
板材3と板材1の溶融接合部からの伝熱によって第2の板材2が加熱され、第1の板材1と第2の板材2の界面、第3の板材3と第2の板材2の界面が共晶反応の発現する所定の温度に保持されると共に、加圧ローラ10によって所定の圧力に保持されると、亜鉛とアルミニウムの共晶溶融が生じ、共晶溶融金属と共に酸化皮膜や不純物などが接合界面から円滑に排出されることによって、各板材の新生面同士が接合部4,5において直接接合され、第1及び第3の板材1,3と第2の板材2(アルミニウム合金材)の強固な金属接合が得られることなる。
なお、上記加圧ローラ10の加圧面10aには、適当な曲率を有する湾曲面を設けることが望ましく、このようにすることによって酸化皮膜や共晶反応物などの接合界面からの排出性を向上させることができる。
【0035】
例えば、図6(a)に示すように、加圧面、すなわち第3の板材3との接触面を凸形状とした2個の加圧ローラ11を用いて、板材3と板材1の溶融接合部の両側部分を加圧するようにしたり、図6(b)に示すように、上記加圧ローラ11を2個連結したような形状を備えた加圧ローラ12を用いて、同様に溶融接合部の両側部分を加圧するようにしたりすることが望ましく、このような断面形状のローラ11あるいは12を用いて、加圧する部位に中央部が高くなるような圧力分布を持たせることによって、高融点材料から成る板材1及び3と低融点材料から成る板材2との接合界面から共晶溶融金属などを効率よく排出させることができるようになり、健全で高強度な接合が可能となる。
【0036】
さらに、図7に示すように、高融点材料から成る第1及び第3の板材1,3に、第2の板材2の側に凸となるような突起1b、3bを形成することも望ましい。すなわち、板材にあらかじめこのような突起1b、3bを設けておき、加圧される部位に中央部が高くなるような圧力分布を持たせることによって、同様に接合界面からの共晶溶融金属などの排出性を高めることができる。
以上のような手順で接合を行うことで、3枚の板材を一度に、高能率に接合することが可能となる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本発明は、これら実施例のみに限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
図8は、本発明の異種金属の接合方法を自動車車体のルーフ構造に適用した例を示すものであって、その接合要領を示す断面図である。
図に示すように、鋼製のレールインナ11(板厚:1.4mm)と、レールアウタ12(板厚:0.8mm)と、サイドアウタ13(板厚:0.8mm)が溶接により組み立てられた車体部材の上方から、6000系アルミニウム合金から成るルーフパネル21(板厚:1.0mm)が重ねられる。
【0039】
車体部材のサイドアウタ13には接合面13aが設けてあり、ルーフパネル21の端部に形成された接合フランジ21aがこの部分に重ねられている。
さらに、ルーフパネル21(第2の部材)の接合フランジ21aの上には、鋼製のリテーナ31(板厚:0.8mm)が重ねられる。
【0040】
そして、リテーナ31の側から、当該リテーナ31の表面に焦点を合わせたレーザビームBをステッチ状に照射する。
【0041】
レーザビームBとしては、Nd:YAGレーザを用い、照射条件については、リテーナ31表面にレーザビームを照射して、リテーナ31とルーフパネル21の接合フランジ21a双方が貫通溶融し、さらに車体部材のサイドアウタ13の一部までが溶融するような溶融状態となるようにレーザのデフォーカス径、レーザ出力、送り速度を設定した。
具体的には、最大出力3kWのレーザ発振器と、焦点距離150mmのレンズを用い、リテーナ31の表面上においてジャストフォーカスとなるよう焦点を調整し、レーザ出力2.0kW、送り速度0.7〜1.0 m/minとして照射した。またレーザ照射中はアルゴンガスを25L/minの流量で流し接合部をシールドした。
【0042】
このとき、レーザビームBは、車体部材に対して、相対的に移動可能に構成されており、レーザビームBをルーフパネル21の接合フランジ21aに沿って移動させながら、リテーナ31の側から車体部材に向けて照射すると、溶融部がリテーナ31とルーフパネル21の接合フランジ21aを貫通し、さらに車体部材のサイドアウタ13の一部まで到達し、ルーフパネル21の接合フランジ21aを挟む形で、リテーナ31とサイドアウタ13とが溶融接合され、ルーフパネルがサイドアウタ13に固定される。
【0043】
(実施例2)
図9及び図10は、本発明の異種金属の接合方法を自動車車体のルーフ構造に適用した例を示すものであって、図9は、当該車体の接合構造を示す斜視図、図10はその接合要領を示す断面図である。
図に示すように、いずれも鋼製のレールインナ11(板厚:14mm)と、レールアウタ12(板厚:0.8mm)と、サイドアウタ13(板厚:0.8mm)が溶接により組み立てられた車体部材の上方から、6000系アルミニウム合金から成るルーフパネル22(板厚:1.0mm)が重ねられる。
車体部材のサイドアウタ13には接合面13aが設けてあり、ルーフパネル22の端部に形成された接合フランジ22aがこの部分に重ねられ、当該接合フランジ22aには、長孔22b(貫通孔)が断続的に開けてある。
【0044】
さらに、ルーフパネル22(第2の部材)の接合フランジ21aの上には、鋼製のリテーナ31(板厚:0.8mm)が重ねられる。
なお、上記サイドアウタ1(第1の板材)3及びリテーナ3(第3の板材)1には、表面に亜鉛めっきが施された市販の亜鉛めっき鋼板を用いている。
【0045】
そして、ルーフパネル22の接合フランジ22aに断続的に形成した長孔22bの位置に沿って、リテーナ31の側から、当該リテーナ31の表面に点を合わせたレーザビームBを照射しながら、その直後の位置を加圧ローラ10によって、リテーナ31とルーフパネル22の接合フランジ22aを車体部材のサイドアウタ13に押し付ける方向に加圧する。
【0046】
レーザビームBとしては、Nd:YAGレーザを用い、照射条件については、リテーナ31表面にレーザビームを照射して、リテーナ31と車体部材のサイドアウタ13を溶融接合した後、リテーナ31及びサイドアウタ13内の伝熱と加圧ローラ10による加圧に基づいて、アルミニウム合金製のルーフパネル22と亜鉛めっき鋼板製のサイドアウタ13及びリテーナ31が密着した接合界面に共晶溶融が生じる温度以上となるようにレーザのデフォーカス径、レーザ出力、送り速度を設定した。
具体的には、最大出力3kWのレーザ発振器と、焦点距離150mmのレンズを用い、リテーナ31の表面上においてジャストフォーカスとなるよう焦点を調整し、レーザ出力1.0kW、送り速度0.7〜1.0 m/minとして照射した。またレーザ照射中はアルゴンガスを25L/minの流量で流し接合部をシールドした。
【0047】
このとき、レーザビームBと加圧ローラ10は、車体部材に対して、相対的に移動可能に構成されており、まず、レーザビームBをルーフパネル22の接合フランジ22aに断続的に開けられた長孔22bに沿って移動させながら、リテーナ31の側から車体部材に向けて照射すると、接合フランジ22aの長孔22bを通してリテーナ31とサイドアウタ13とが溶融接合される(図2(b)参照)。
これに続いて、加圧ローラ10の加圧によってルーフパネル22の接合フランジ22aが加熱されたリテーナ31とサイドアウタ13の接合面13aに押し付けられて密着し、リテーナ31とサイドアウタ13の溶融接合部からの伝熱によって、接合フランジ22aに形成された長孔22bの周囲が加熱され、リテーナ31と接合フランジ22aの接合界面、及びサイドアウタ13と接合フランジ22aの接合界面が共晶反応の発現する温度に保持されると共に、加圧ローラ10によって加圧されることから、図5(a)〜(e)に示したように、接合界面に共晶溶融が生じ、共晶溶融金属が界面の酸化物や、その他の生成物と共に接合界面から円滑に排出される結果、金族間化合物が生成させるようなこともなく、ルーフパネル21とサイドアウタ13、ルーフパネル22とリテーナ31が溶融接合部の近傍部において接合される。
【0048】
ここで、リテーナ31とアルミニウム合金製のルーフパネル22の接合フランジ22aの剛性に比較し、鋼製の構造部材である車体部材の剛性が十分に高いため、加圧ローラ10の加圧に対して、図11に示すようなリベットRによる接合の場合に較べて、車室内側からの押えTが必要ないことから、ルーフパネル22と車体部材の接合位置や構造を比較的自由に設定できるので設計自由度が高く、しかも接合フランジ幅もリベット接合に比べて狭くできるため、車体としての外観品質も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明による異種金属の接合要領を説明する図であって、接合線と直交する方向から見た側面図である。
【図2】(a)〜(c)は図1における切断線a、b、cについてのそれぞれ断面図である。
【図3】(a)〜(c)は本発明の他の実施形態における切断線a、b、cについてのそれぞれ断面図である。
【図4】Al−Zn系2元状態図における共晶点を示すグラフである。
【図5】(a)〜(e)は第3の材料を介在させた異種金属パネルの接合過程を概略的に示す工程図である。
【図6】(a)及び(b)は加圧ローラの実施形態例を示す説明図である。
【図7】第1及び第3の板材に突起を形成した実施形態例を示す説明図である。
【図8】本発明の第1の実施例による鋼製車体部材とアルミニウム製ルーフパネルの接合要領を示す断面図である。
【図9】本発明の第2の実施例による鋼製車体部材とアルミニウム製ルーフパネルの接合構造を示す斜視図である。
【図10】図9に示した鋼製車体部材とアルミニウム製ルーフパネルの接合要領を示す断面図である。
【図11】鋼製車体部材とアルミニウム製ルーフパネルのリベットによる接合構造例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1、13 第1の板材(鋼板、亜鉛めっき鋼板:高融点材料)
1a 突起
1p 亜鉛めっき層(第4の材料)
2、21、22 第2の板材(アルミニウム合金材:低融点材料)
2a、22b 長孔(貫通孔)
3、31 第3の板材(鋼板、亜鉛めっき鋼板:高融点材料)
4a 突起
B レーザビーム(高エネルギービーム)
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成18年6月29日(2006.6.29)
【代理人】 【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲


【公開番号】 特開2008−6465(P2008−6465A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−179367(P2006−179367)