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【発明の名称】 溶接電源
【発明者】 【氏名】上山 智之

【要約】 【課題】多層溶接において、溶接パス間温度が設定値以下になってからしか溶接施工ができない溶接電源を提供する。

【構成】本発明は、外部からの起動信号Stに従ってアーク溶接に適した溶接電圧Vw及び溶接電流Iwを出力する出力制御回路PMと、溶接部の温度を計測して温度計測信号Tdを出力する温度センサTDと、多層溶接の溶接パス間温度を設定して溶接パス間温度設定信号Trを出力する溶接パス間温度設定回路TRと、温度判定を開始させるための判定開始スイッチSWと、溶接停止中に、前記判定開始スイッチSWがオンされたときの前記温度計測信号Tdの値が前記溶接パス間温度設定信号Trの値以下であり、かつ、それ以降に前記起動信号Stがオンされたときにのみ、前記出力制御回路PMからの出力を開始させて溶接を行えるようにする温度判定回路HCと、を備えた溶接電源PSである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの起動信号に従ってアーク溶接に適した溶接電圧及び溶接電流を出力する出力制御回路と、
溶接部の温度を計測して温度計測信号を出力する温度センサと、
多層溶接の溶接パス間温度を設定して溶接パス間温度設定信号を出力する溶接パス間温度設定回路と、
温度判定を開始させるための判定開始スイッチと、
溶接停止中に、前記判定開始スイッチがオンされたときの前記温度計測信号の値が前記溶接パス間温度設定信号の値以下であり、かつ、それ以降に前記起動信号がオンされたときにのみ、前記出力制御回路からの出力を開始させて溶接を行えるようにする温度判定回路と、
を備えたことを特徴とする溶接電源。
【請求項2】
前記温度センサを複数個備えた、ことを特徴とする請求項1記載の溶接電源。
【請求項3】
前記温度計測信号の値を表示する表示器を備えた、ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の溶接電源。
【請求項4】
前記判定開始スイッチを前記温度センサと一体化して設けた、ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の溶接電源。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、多層溶接における溶接パス間温度が設定値以下まで低下したことを判定する機能を有し、健全な溶接を行うための溶接電源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築鉄骨溶接施工においては、溶接部の健全性確保が強く求められる。例えば、日本建築学会制定の鉄骨工事技術指針では、入熱40kJ/cm以下、溶接パス間温度350℃以下であることが溶接時の熱管理の目安とされており、しばしばこの指針が溶接施工に義務づけられることがある。このうち、溶接入熱は、溶接電流、溶接電圧及び溶接速度を設定することである程度の管理が施工現場で容易に行える。しかし、溶接パス間温度は、溶接ビードの温度を計測する必要があり、溶接作業者が表面温度計等の計測機器を携帯しながら施工することになる。このために、施工現場では、温度計測工程のし忘れが発生したり、計測温度が基準値以下であることを溶接作業者が判定できない場合もあり、品質管理上問題であった。
【0003】
このような問題に対して、特許文献1に開示されている従来技術1では、赤外線温度センサが計測する鋼板温度が、溶接パス間温度設定値より低いと溶接可能を意味する青ランプが点灯し、高いと溶接不可を意味する赤ランプが点灯する。さらに、従来技術1では、鋼板温度が溶接パス間温度設定値より高いと開閉弁が開弁してノズルから吐出する冷却空気により溶接部を強制冷却し、鋼板温度が溶接パス間温度設定値以下になると開閉弁を閉弁して強制冷却を停止するようにした装置を提案している。
【0004】
また、特許文献2に開示されている従来技術2では、開先端から所定位置を越えた複数位置におけるパス溶接開始温度を、パス間温度検出手段によって順次計・記録するパス間温度管理方法が提案されている。これら従来技術1,2共に温度判定を容易にする効果がある。
【0005】
【特許文献1】特開2002−35937号公報
【特許文献2】特開2005−46848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術では、溶接パス間温度を管理する装置が溶接機器とは連動しない別の独立した装置であるために、温度計測値が溶接パス間温度設定値を越えていて管理装置から警告が出ていても溶接施行を行うことができ、品質管理上問題であった。さらに、管理装置を設置するのに時間がかかるために、煩雑な施行現場では管理装置の設置を徹底することは困難であった。
【0007】
そこで、本発明では、溶接部の温度計測値が溶接パス間温度設定値以下になるまでは溶接を禁止することができ、温度判定部の設置にも手間がかからない溶接電源を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、第1の発明は、外部からの起動信号に従ってアーク溶接に適した溶接電圧及び溶接電流を出力する出力制御回路と、
溶接部の温度を計測して温度計測信号を出力する温度センサと、
多層溶接の溶接パス間温度を設定して溶接パス間温度設定信号を出力する溶接パス間温度設定回路と、
温度判定を開始させるための判定開始スイッチと、
溶接停止中に、前記判定開始スイッチがオンされたときの前記温度計測信号の値が前記溶接パス間温度設定信号の値以下であり、かつ、それ以降に前記起動信号がオンされたときにのみ、前記出力制御回路からの出力を開始させて溶接を行えるようにする温度判定回路と、
を備えたことを特徴とする溶接電源である。
【0009】
第2の発明は、前記温度センサを複数個備えた、ことを特徴とする第1の発明記載の溶接電源である。
【0010】
第3の発明は、前記温度計測信号の値を表示する表示器を備えた、ことを特徴とする第1又は第2の発明記載の溶接電源である。
【0011】
第4の発明は、前記判定開始スイッチを前記温度センサと一体化して設けた、ことを特徴とする第1〜第3の発明のいずれか1項に記載の溶接電源である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、溶接停止中に溶接部の温度計測値が溶接パス間温度設定値以下になったことを温度判定によって確認しない限り、次の溶接を行うことができない。このために、溶接施工において、温度判定のし忘れ、判定ミスを防止することができるので、確実な品質管理を行うことができる。さらに、温度判定処理部が溶接電源に内臓されているので、追加の設置を行う必要がなく、施工効率を低下させることがない。さらに、判定操作は温度計測センサを溶接部に配置して判定開始スイッチをオンするだけであり、溶接作業者にとってとても使い勝手がよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る溶接電源のブロック図である。以下、同図を参照して各ブロックについて説明する。
【0015】
出力制御回路PMは、3相200V等の商用電源を入力として、後述する起動制御信号Stcに従ってインバータ、サイリスタ位相制御等の出力制御を行い、溶接電圧Vw及び溶接電流Iwを出力する。溶接ワイヤ1は、送給モータWMに結合された送給ロール5の回転によって、溶接トーチ4内を送給されて、母材2との間でアーク3が発生して溶接が行われる。
【0016】
温度計測プローブTDは、温度センサが装着されており、溶接部の温度を計測して、温度計測信号Tdを出力する。溶接パス間温度設定回路TRは、溶接パス間温度の上限ととなる基準値を設定して、溶接パス間温度設定信号Trを出力する。判定開始スイッチSWは、温度判定を開始させるためのスイッチであり、オンすると判定開始信号Swが出力(Highレベル)される。温度比較回路CMは、上記の判定開始信号SwがHighレベルに変化した時点での、上記の温度計測信号Tdの値と上記の溶接パス間温度設定信号Trの値とを比較して、Td≦TrのときはHighレベルに変化する温度比較信号Cmを出力すると共に、温度表示信号Dpを出力する。この温度比較信号Cmは、溶接が停止するとリセット(Lowレベル)される。表示器DPは、この温度表示信号Dpを入力として、上記の判定時点での温度計測信号Td及び溶接パス間温度設定信号Trの値を表示する。
【0017】
温度判定回路HCは、外部からの起動信号StがLowレベルからHighレベルに変化した時点において、上記の温度比較信号CmがHighレベルであるときはHighレベルに変化し、温度比較信号CmがLowレベルのときはLowレベルを継続する起動制御信号Stcを出力する。すなわち、溶接停止中に温度比較信号CmがHighレベル(Td≦Tr)のときのみ、起動信号Stが許可されて、溶接を開始することができる。
【0018】
図2は、上述した溶接電源PSにおける各信号のタイミングチャートである。同図(A)は起動信号Stの時間変化を示し、同図(B)は判定開始信号Swの時間変化を示し、同図(C)は温度比較信号Cmの時間変化を示し、同図(D)は起動制御信号Stcの時間変化を示す。以下、同図を参照して説明する。
【0019】
時刻t1において、同図(A)に示すように、起動信号StがLowレベルに変化し、同図(D)に示すように、起動制御信号StcがLowレベルに変化すると、出力制御回路PMは出力制御を停止するので溶接が停止する。溶接停止中の時刻t2において、同図(A)に示すように、起動信号StがHighレベルに変化するが、同図(C)に示すように、温度比較信号CmがLowレベルであるので、同図(D)に示すように、起動制御信号StcはLowレベルのままであり、溶接は停止のままである。
【0020】
時刻t3において、温度計測プローブTDを溶接部の所定位置に配置して判定開始スイッチSWをオンすると、同図(B)に示すように、判定開始信号SwがHighレベルになり、溶接部の温度計測値Tdと溶接パス間温度設定値Trとの比較を行う。この時点ではTd>Trであるので、同図(C)に示すように、温度比較信号CmはLowレベルのままである。時刻t4において、同図(A)に示すように、起動信号StがHighレベルに変化するが、時刻t2のときと同様に、同図(C)に示す温度比較信号CmがLowレベルであるので、同図(D)に示すように、起動制御信号StcはLowレベルのままであり、溶接は停止したままである。
【0021】
時刻t5において、溶接部に温度計測プローブTDを配置して判定開始スイッチSWをオンすると、同図(B)に示すように、判定開始信号SwがHighレベルになり、温度計測値Tdと溶接パス間温度設定値Trとを比較する。この時点で、Td≦Trとなるので、同図(C)に示すように、温度比較信号CmはHighレベルになる。時刻t6において、同図(A)に示すように、起動信号StがHighレベルに変化すると、同図(C)に示すように、温度比較信号CmがHighレベルであるので、同図(D)に示すように、起動制御信号StcはHighレベルに変化し、溶接が開始する。時刻t7において、同図(A)に示すように、起動信号StがLowレベルに変化すると、同図(C)に示すように、温度比較信号CmはLowレベルにリセットされ、同図(D)に示すように、起動制御信号StcはLowレベルに変化し、溶接が終了する。
【0022】
上述した実施の形態によれば、溶接停止中に溶接部の温度計測値Tdが溶接パス間温度設定値Tr以下になったことを温度判定によって確認しない限り次の溶接を行うことができない。このために、溶接施工において温度判定のし忘れ、判定ミスを防止することができるので、確実な品質管理を行うことができる。さらに、温度判定部が溶接電源に内臓されているので、追加の設置を行う必要がなく、施工効率を低下させることがない。さらに、操作は温度計測プローブTDを溶接部に配置して判定開始スイッチをオンするだけであり、溶接作業者にとってとても使いやすい。さらに、判定結果が表示されるので、溶接部の温度計測値Tdの確認及び溶接パス間温度設定値Trの確認を行うことができる。
【0023】
上記の実施の形態においては、温度計測プローブTDが1つの場合を例示したが、複数個設けてももよい。この場合には、溶接部の複数箇所の温度計測値Tdを一度に収集して、溶接パス間温度設定値Trと比較して判定することで、より正確に溶接パス間温度を管理することができる。また、上記の判定開始スイッチSWは、溶接電源のフロントパネル部、温度計測プローブ又は溶接トーチに設けることができる・また、温度センサをを溶接トーチに装着して、温度計測プローブTDを溶接トーチと一体としてもよい。上記の表示器DPから音声によって判定結果を通告するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係る溶接電源のブロック図である。
【図2】図1の溶接電源における各信号のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0025】
1 溶接ワイヤ
2 母材
3 アーク
4 溶接トーチ
5 送給ロール
CM 温度比較回路
Cm 温度比較信号
DP 表示器
Dp 温度表示信号
HC 温度判定回路
Iw 溶接電流
PM 出力制御回路
PS 溶接電源
St 起動信号
Stc 起動制御信号
SW 判定開始スイッチ
Sw 判定開始信号
TD 温度計測プローブ
Td 温度計測信号
TR 溶接パス間温度設定回路
Tr 溶接パス間温度設定信号
Vw 溶接電圧
WM 送給モータ

【出願人】 【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
【出願日】 平成18年6月28日(2006.6.28)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−6454(P2008−6454A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−178064(P2006−178064)