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【発明の名称】 レーザ溶接方法、装置および設備
【発明者】 【氏名】坂本 剛

【氏名】森川 靖

【氏名】長谷川 隆久

【要約】 【課題】重ね合わせた板材を、その間の隙間の大小を考慮して、良好に溶接するレーザ溶接方法、装置および設備を提供することにある。

【構成】重ね合わせた金属製の二枚の板材2、3間の隙間4が小さい方から大きい方に向けてレーザビーム1を移動させて、前記二枚の板材2、3をレーザ溶接する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わせた金属製の板材間の隙間が小さい方から大きい方に向けてレーザビームを移動させて、前記板材をレーザ溶接することを特徴とするレーザ溶接方法。
【請求項2】
前記板材を、一方の板材が他方の板材に対して接触した接触箇所から両板材間の隙間が次第に大きくなるように重ね合わせ、その隙間が発生している部分に前記レーザビームを照射し、隙間の小さい方から大きい方に前記レーザビームを移動させてレーザ溶接することを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接方法。
【請求項3】
前記板材として段差の付いた屈曲部を有する板材を隙間ができるように重ね合わせてクランプし、
このクランプされた板材同士の隙間が発生している部分における前記クランプした箇所に近い方から離れる方向に前記レーザビームを移動させてレーザ溶接することを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接方法。
【請求項4】
前記レーザ溶接は、溶接開始点から溶接終了点に至るループ状でかつ溶接開始点と溶接終了点とが重ならない溶接軌跡に沿ってレーザビームを照射する溶接により行い、
その溶接軌跡の溶接開始点が常に前記板材間の隙間の小さい方から始まるように、前記レーザビームを誘導することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のレーザ溶接方法。
【請求項5】
前記ループ状でかつ溶接開始点と溶接終了点とが重ならない溶接軌跡が、C字状、S字状、丸型などの溶接軌跡であることを特徴とする請求項4に記載のレーザ溶接方法。
【請求項6】
前記レーザ溶接は、長焦点のレーザビームを光偏向光学系により偏向して前記溶接軌跡に沿って誘導するリモートレーザ溶接であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のレーザ溶接方法。
【請求項7】
金属製の板材を隙間ができるように重ね合わせてクランプするクランプ手段と、
重ね合わされ且つ前記クランプ手段によりクランプされた前記板材を溶接すべく、そのクランプ箇所に近い方から離れる方向にレーザビームを照射するレーザ装置と、
を有することを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項8】
金属製の板材同士を隙間ができるように重ね合わせてクランプするクランプ手段と、
重ね合わされ且つ前記クランプ手段によりクランプされた前記板材を溶接すべく、そのクランプ箇所に近い方から離れる方向にレーザビームを照射するレーザ装置と、を備え、
前記レーザ装置が、レーザ発振器と、該レーザ発振器に光ファイバにて接続され、レーザビームの出射方向を偏向する光偏向光学系が内蔵された光学ヘッドと、該光学ヘッドを装着したロボットハンドと、
を有することを特徴とするレーザ溶接設備。
【請求項9】
重ね合わせた金属製の板材間に隙間を形成して連続的にレーザ溶接された溶接軌跡を有する金属板であって、少なくとも溶接開始点はそれ以降溶接終了点に向かう溶接軌跡よりも隙間が小さくなっていることを特徴とする金属板。
【請求項10】
前記連続的にレーザ溶接された溶接軌跡は、溶接開始点から溶接終了点に至るループ状でかつ溶接開始点と溶接修了点とが重ならない形状である請求項9に記載の金属板。
【請求項11】
前記ループ状でかつ溶接開始点と溶接修了点とが重ならない溶接軌跡がC字状、S字状、丸型などの溶接奇跡であることを特徴とする請求項10に記載の金属板。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、重ね合わせた板材を、その間の隙間の大小を考慮して、良好に溶接するレーザ溶接方法、装置および設備に関し、特にリモートレーザ溶接法で溶接するのに適した技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
量産工程で使用されるレーザ溶接設備は、例えば溶接母機として多自由度の溶接ロボットを用い、その溶接ロボットの先端にレーザ加工ヘッド(溶接トーチ)を持たせる一方、光ファイバーケーブルで伝達可能なYAGレーザ等を用いて加工ヘッドから溶接部位に対しレーザ光を照射するようにしたものが主流を占めている。しかし、例えば溶接ポイントが広範囲に点在する場合には加工ヘッドの移動に時間がかかるほか、狭い溝等のように加工ヘッドが干渉するような部位の溶接には対応できないことになる。
【0003】
そこで、近年に至り、比較的長焦点のレーザ光(レーザビーム)を複数のミラーから成る光偏向光学系により反射させ、その光偏向光学系のミラーの角度を可変制御することにより、レーザ光を瞬時に次の溶接点まで移動させて次なる溶接を施すとともに、溶接点ごとに焦点距離の調整をも可能にしたリモートレーザ(スキャナーレーザ)溶接法と称される技術が注目されている(下記特許文献1、2参照)。
【0004】
また、一般に、自動車車体(ボディ)のワークとしての亜鉛めっき鋼板に対してレーザ溶接を行う際には、ワーク間の亜鉛層がレーザビームの熱によって蒸発・飛散して溶接欠陥が生じることから、これを防ぐために、鋼板間に適正な隙間を設けて蒸発ガスを排出する手法が用いられる。
【0005】
この隙間は、エンボスの形で設置することが一般的であるが、エンボスの高さを常に一定に加工して、必要な隙間(例えば0.2mm)を求めることは、非常に困難である。従って、加工の仕方によっては、エンボスにより間隙を作り出せないことがある。また隙間が広すぎる場合があるが、そのような広すぎる間隙があるときでも、従来は溶接方向を考慮せずに溶接位置のみを調整して溶接していたため、間隙の広すぎるところで鋼板間の溶接が未溶着となるという問題があった。
【特許文献1】特開平10−216980号公報
【特許文献2】特開2003−145285号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、重ね合わせた板材を、その間の隙間の大小を考慮して、良好に溶接するレーザ溶接方法、装置および設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明のレーザ溶接方法は、重ね合わせた金属製の板材間の隙間が小さい方から大きい方に向けてレーザビームを移動させて、前記板材をレーザ溶接することを特徴とする。
【0008】
本発明のレーザ溶接装置は、板材を隙間ができるように重ね合わせてクランプするクランプ手段と、重ね合わされ且つ前記クランプ手段によりクランプされた板材を溶接すべく、そのクランプ箇所に近い方から離れる方向にレーザビームを照射するレーザ装置とを有することを特徴とする。
【0009】
さらに本発明のレーザ溶接設備は、板材を隙間ができるように重ね合わせてクランプするクランプ手段と、重ね合わされ且つ前記クランプ手段によりクランプされた板材を溶接すべく、そのクランプ箇所に近い方から離れる方向にレーザビームを照射するレーザ装置と、を備え、前記レーザ装置が、レーザ発振器と、該レーザ発振器に光ファイバにて接続され、レーザビームの出射方向を偏向する光偏向光学系が内蔵された光学ヘッドと、該光学ヘッドを装着したロボットハンドと、を有することを特徴とする。
【0010】
かかる目的を達成するための金属板は、重ね合わせた金属製の板材間に隙間を形成して連続的にレーザ溶接された溶接軌跡を有する金属板であって、少なくとも溶接開始点はそれ以降溶接終了点に向かう溶接軌跡よりも隙間が小さくなっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のレーザ溶接方法、装置および設備では、重ね合わせた板材間の隙間が小さい方から大きい方に向けてレーザビームを移動させて、前記板材をレーザ溶接する。これにより、隙間が大から小の方向に向けて溶接がされた場合には溶接ができないような隙間の大きい箇所であっても、良好な溶接が行われる。従って、本発明によれば、隙間が大きいことによって発生する未溶着を減少させることが出来る。
【0012】
また、本発明では、隙間の大きい箇所であっても良好な溶接が行われるので、板材間の隙間の管理を厳密にする必要がない。
【0013】
更に本発明では、板材間の隙間が存在するので、亜鉛めっき等の表面処理された金属製板材をレーザ溶接で接合する際にも、溶接部にブローホールが発生しない。
【0014】
本発明では、溶接開始点はそれ以降溶接終了点に向かう溶接軌跡よりも隙間が小さくなっている金属板を用いているので、隙間が大きいことによって発生する未溶着を減少させることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態に係るレーザ溶接方法を図1、図2に示す。
【0016】
図1に示すように、レーザ溶接設備として、6軸のモータにより駆動されるロボットハンド11と、その先端に装着された光学ヘッド12と、YAGレーザのレーザ発振器10とを備えており、光学ヘッド12が光ファイバーケーブルにてレーザ発振器10と接続され、光学ヘッド12から長焦点のレーザビーム1を出射させる構造となっている。また、光学ヘッド12の内部には、レーザビーム1の出射方向を偏向する光偏向光学系13(スキャナ)が設けられており、これによりレーザビーム1が所定の溶接軌跡に沿って走査されて溶接パターンが描かれる構成になっている。またレーザ溶接設備は、ワークとしての金属製の二枚の鋼板を隙間ができるように重ね合わせてクランプするクランプ手段14を備えている。
【0017】
なおレーザの種類は、ここではYAGレーザを用いているが、炭酸ガスレーザであってもよい。また、アシストガスとして、ArあるいはHeなどの不活性ガスを用いることもできる。また、基本となる溶接法として、ここではレーザビーム1を瞬時に移動することができるリモートレーザ溶接法を前提に以下説明するが、必ずしもリモートレーザ溶接法に限定されない。
【0018】
図2は、二枚の金属製の板材として亜鉛めっきが施された鋼板2、3を、重ね合わせ且つ上記クランプ手段14でクランプしたワークに対して、上記レーザビーム1を照射して、レーザ溶接を行っている様子を示している。
【0019】
また図2は、溶接しようとする二枚の鋼板2と鋼板3を重ね合わせてクランプした際に、一方の鋼板2が他方の鋼板3に対して接触し、その接触箇所5から次第に大きくなる隙間4が両鋼板2、3間に生じた状態を示している。レーザビーム1は、このように重ね合わせた二枚の鋼板2、3に対し、その隙間4が発生している部分を、隙間4の小さい方から大きい方へ向かって移動(走査)させ、これにより鋼板2、3がレーザ溶接される。図2では、レーザビーム1を常に隙間4の小さい方から大きい方へ向かって走査させ、直線的な溶接軌跡6を持つ溶接ビードを作成している。
【0020】
ここで、二枚の鋼板2、3間の隙間4の小さい方から大きい方へ向かってレーザビーム1を移動させるとの条件は、レーザ溶接を開始する時点での溶接方向(溶接開始点6aでの方向性)において大きな意味を持ち、レーザ溶接が開始された後については、全体的に大まかに見て隙間4が小から大の方向に向けて溶接がなされて行けばよい。レーザ溶接は、その溶接開始点6aにおいてはまだ溶融部が存在しないためにクラックが入り易く、また溶接終了点6bにおいても溶融部が存在しなくなるので窪みや欠陥が生じ易い。しかし、溶接開始点6aから溶接終了点6bに至るまでの経過途中においては、レーザ照射位置の周囲に溶融部が存在し、これが流れ出しながら隣接部が溶融するのを助長するので、良品質の溶接が行われる。従って、レーザ溶接が開始された後については、レーザビーム1が、溶接軌跡6の途中で、例えば局部的に隙間4の大小関係が逆なるような路程(隙間4が大から小)を経由したとしても、良品質の溶接が確保される。
【0021】
そこで、レーザ溶接すべき部位における鋼板間の隙間4に大小関係がある場合には、鋼板間の隙間4の小さい方に溶接開始点を定め、全体的に大まかに見て、隙間4が小から大の方に向けてレーザビーム1を走査して溶接を行う。図1では、隙間4が小から大の方に向けてレーザビーム1を直線的に走査して、レーザ溶接を行う。これにより、例えば、隙間4が大から小の方に向けてレーザビーム1を走査した場合には溶接ができないような大きな隙間4の箇所においても、良好な溶接が行われる。
【0022】
具体的に述べると、鋼板の場合、通常、隙間4が0.3mm以下と小さい範囲では良好にレーザ溶接ができるが、隙間4が0.3mmを超えるとレーザビーム1を照射しても未溶着となり、レーザ溶接ができなくなる。しかし、本発明に従い、隙間4が小の方から大の方に向けてレーザビーム1を走査すると、隙間4が0.3mm超から1mmという大きな隙間4が存在する部位であっても溶着が生じるようになり、良好なレーザ溶接が行われることが確認された。
【0023】
上記隙間4が形成される仕方として、図2では、二枚の鋼板2、3を重ね合わせてクランプした結果、意図せずに隙間4が形成されてしまう場合として説明したが、意図的に鋼板間に隙間4が生じるように二枚の鋼板2、3を重ね合わせてクランプする場合であっても良い。すなわち、二枚の鋼板2、3のレーザ溶接すべき重ね合わせ部位に、干渉する部分(接触部)と隙間4が同時に発生する構造をつくり、その隙間4が発生している部分を、隙間4の小さい方から大きい方へレーザ溶接するようにしても、上記と同じ作用効果が得られる。
<第2の実施形態>
図3に、本発明の第2の実施形態に係るレーザ溶接方法を示す。これは、溶接開始点から溶接終了点に至るループ状でかつ溶接開始点と溶接終了点とが重ならない溶接軌跡に沿ってレーザビーム1を照射することにより、レーザ溶接を行う場合である。ループ状でかつ溶接開始点と溶接終了点とが重ならない溶接軌跡の例は、C字状、S字状、丸型などの溶接軌跡であり、これによりC型、S型、丸型などの溶接ビードを形成する。溶接開始点と溶接終了点とを重ねないのは、重ねると溶融して孔が開く場合があるからである。そして、このような溶接ビードを形成するに際し、溶接軌跡の溶接面内での向きを、当該溶接軌跡の溶接開始点が常に前記鋼板間の隙間4の小さい方から始まるように設定する。
【0024】
具体的に説明する。図3(a)は、C字状の溶接軌跡7の溶接ビードを形成する例を示している。この図3(a)では、C字状の溶接軌跡7の溶接開始点7aが二枚の鋼板2、3間の隙間4の小さい方から始まるように、C字の開口部7Aが隙間4の小さい方(図3(a)の左側)を向くように、C字状の溶接軌跡7の溶接面内での向きを設定する。C字状の溶接軌跡7の後半部分は隙間4の大きい方から小さい方に向い、溶接終了点7bはほぼ溶接開始点7aと同じレベルに位置するが、この後半部分においては、レーザ照射位置の周囲に溶融部が存在するので、良品質の溶接ビードの形成が行われる。従って、C字のクラウン部7Bが隙間4の大きい所に位置する場合であっても、良好に溶接が行われる。
【0025】
図3(b)はS字状の溶接軌跡8の溶接ビードを形成する例を示している。この図3(b)では、S字状の溶接軌跡8の溶接開始点8aが隙間4の小さい方から始まるように、S字状の溶接軌跡8の一方の丸味部8Aが隙間4の小さい方(図3(b)の左側)に位置し、他方の丸味部8Bが隙間4の大きい方(図3(b)の右側)に位置するように、S字状の溶接軌跡8の溶接面内での向きを設定する。この場合、S字状の溶接軌跡8の溶接開始点8aは微視的には隙間4の小さい方に向かうが、S字の全体から見ると、隙間4の小さい方から大きい方に向かってS字状の溶接軌跡8が変化していることが理解されよう。なお、S字状の溶接軌跡8の溶接終了点8bは隙間4の大きい方に位置する。
【0026】
この実施形態によれば、光学ヘッド12と部品の形状関係によって、溶接位置を移動し難い場合でも、より最適な鋼板隙間を持った部位を溶接することができる。
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態として、図4に具体的な例を示す。まず0.5mm〜0.1mmの高さの段差が付いた屈曲部20を有する二枚の鋼板2、3を、図4(a)または図4(b)のように隙間4aまたは隙間4bができるように重ね合わせる。なお、図4(a)と図4(b)では、二枚の鋼板2と鋼板3の屈曲部20の段差が異なっており、図4(a)では屈曲部20の下段側に隙間4aが生じ、図4(b)では屈曲部20の上段側に隙間4bが生じる。その後、溶接すべき部位の両端を、クランプ手段14であるゲージ21とクランプ部材22とで上下からクランプすると、図4(c)の状態となる。この図4(c)の一部を拡大して示したのが図5であり、主ゲージ21aおよびサブゲージ21bとエアシリンダ23で駆動されるクランプ部材22とで上下からクランプすることで、二枚の鋼板2、3間には、クランプ箇所の付近から屈曲部20による空間部24まで続く隙間4が存在する。
【0027】
このクランプされた二枚の鋼板2、3の隙間4が発生している部分にレーザビーム1を照射し、前記クランプした箇所に近い方から離れる方向にレーザビーム1を移動させてレーザ溶接する。これにより、隙間4が大きいことによって発生する未溶着を減少させることが出来る。
【0028】
従って、次のような利点が得られる。(1)ラフな部品管理で小さい量の隙を比較的安定させて作ることが出来る。(2)部品管理がラフでよいため管理コストの低減が出来る。(3)上板と下板の高低差が、どちらが大きくなっても同じように隙を作ることが出来る。
【0029】
また、鋼板パネルには必ず寸法精度のバラツキがあるが、そのバラツキを利用して、屈曲部20の高さがばらついている部位をクランプすることによって適度な隙を常に確保できる。またバラツキの要素が高い屈曲部20を設けることにより、常に、重ね分の一部のみが干渉して、面全体の干渉を避けることができる。更に、隙間4を作る方法として、従来の溶接打点近傍に片側のみにエンボスを設ける方法では、うまく高さを出せず隙間4ができないことがあるが、本実施形態によれば、かかる困難なしに隙間4を作ることができる。
<第4の実施形態>
本発明の具体的な第4の実施形態を図6に示す。ここでは、
まず立ちフランジ26の付いた二枚の鋼板2、3を、図6(a)のように隙間4ができるように重ね合わせる。その前提として、隙間4を作るための部品形状を予め得るため、部品単品状態で、平坦部27から立ちフランジ26への角部に、2度〜5度程度の角度で曲面28を形成する。そして、図6(a)のように重ね合わせて位置決めした状態で、鋼板2、3の弾性により立ちフランジ26の先端同士が互いに接触してなじむように構成する。この例では、二枚の鋼板2と鋼板3で曲面28の曲率が異なっており、曲面28と曲面28に挟まれて形成される隙間4は、その最大空間部25から、立ちフランジ26の端部および平坦部27へ向けて徐々に小さくなる形で形成される。
【0030】
その後、クランプ手段14であるゲージ21とクランプ部材22とで外側と内側から立ちフランジ26をクランプすると、図6(b)の状態となる。
【0031】
このクランプされた二枚の鋼板2、3の隙間4が発生している部分にレーザビーム1を照射し、図3で述べたように、クランプした箇所に近い方から離れる方向にレーザビーム1を移動させて、C字状、S字状、丸型などの溶接軌跡による溶接ビードを形成する。図6(a)には、C字状の溶接軌跡7による溶接ビードを形成した状態を示す。
【0032】
このレーザ溶接方法によれば、隙間4が大きいことによって発生する未溶着を減少させることが出来る。また、溶接に必要な安定した隙間4を断面上で少なくとも一箇所以上、容易につくることが出来る。
<第5の実施形態>
図7に、本発明の第5の実施形態を示す。これは、下側のゲージ30と、エアシリンダ31で駆動される上側のクランプ部材32とで、ワークとしての二枚の鋼板2、3を上下方向からクランプし、このクランプされた二枚の鋼板2、3の隙間4が発生している部分にレーザビーム1を照射し、且つクランプした箇所に近い方から離れる方向にこのレーザビーム1を移動させてレーザ溶接する例を示したものである。
【0033】
リモートレーザ溶接に用いられるレーザビーム1は、例えば焦点距離が600〜1000mmと長い。このためレーザ光が漏れた場合、治具のゲージ21、ポストや周辺機器を照射して損傷を与える。
【0034】
そこで、この実施形態では、レーザビーム1の照射方向に見て、ワークとしての二枚の鋼板2、3の背面側に、すなわち溶接部位の裏側に、漏れたレーザ光を遮断するための遮光板33が設けられている。このように遮光板33を設けることにより、溶接部位の裏側から漏れたレーザ光が、治具のゲージ、ポストや周辺機器に照射して損傷させる、という不都合を回避することができる。
【0035】
以上の実施の形態では二枚の鋼板をレーザ溶接する場合について説明したが、三枚以上の複数の鋼板をレーザ溶接する場合についても本発明の適用は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明はレーザ溶接に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明におけるレーザ溶接設備とワークとしての重ね合わせた二枚の鋼板との関係を示した概略図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るレーザ溶接方法を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るレーザ溶接方法を示したもので、(a)はC字状の溶接軌跡を示す図、(b)はS字状の溶接軌跡を示す図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係るレーザ溶接方法を示したもので、(a)は屈曲部を有する二つの鋼板を一側で、(b)は他側で、重ね合わせた状態を示す図、そして(c)はクランプ後の状態を示した図である。
【図5】図4(c)の一部を拡大して示した図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係るレーザ溶接方法を示したもので、(a)は重ね合わせ状態を示す図、(b)はクランプ状態を示す図である。
【図7】本発明の第5の実施形態に係るレーザ溶接方法を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1 レーザビーム、
2、3 鋼板、
4、4a、4b 隙間、
5 接触箇所、
6 直線的な溶接軌跡、
6a 溶接開始点、
6b 溶接終了点、
7 C字状の溶接軌跡、
7A 開口部、
7B クラウン部、
7a 溶接開始点、
7b 溶接終了点、
8 S字状の溶接軌跡、
8A 一方の丸味部、
8B 他方の丸味部、
8a 溶接開始点、
10 レーザ発振器、
11 ロボットハンド、
12 光学ヘッド、
13 光偏向光学系、
14 クランプ手段、
20 屈曲部、
21 ゲージ、
21a 主ゲージ、
21b サブゲージ、
22 クランプ部材、
23 エアシリンダ、
24 空間部、
25 最大空間部、
26 立ちフランジ、
27 平坦部、
28 曲面、
30 ゲージ、
31 エアシリンダ、
32 クランプ部材、
33 遮光板。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成18年6月20日(2006.6.20)
【代理人】 【識別番号】100072349
【弁理士】
【氏名又は名称】八田 幹雄

【識別番号】100110995
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 泰男

【識別番号】100114649
【弁理士】
【氏名又は名称】宇谷 勝幸


【公開番号】 特開2008−764(P2008−764A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−170306(P2006−170306)