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【発明の名称】 硬化肉盛層形成方法
【発明者】 【氏名】天野 昌春

【要約】 【課題】硬化肉盛層における亀裂の発生を抑えることができる硬化肉盛層形成方法を提供する。

【構成】硬化肉盛層形成方法は、溶加材として溶接ワイヤ7を溶融させて母材4上に溶融池8を生成する工程と、溶加材より比重の小さい材料からなる第1粒子を含む硬質粒子2を溶融池8に供給する工程と、溶融池8が凝固することにより母材4上に形成され硬質粒子2を未溶融状態で含有する硬化肉盛層3を得る工程とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶加材を溶融させて母材上に溶融池を生成する工程と、
前記溶加材より比重の小さい材料からなる第1粒子を含む硬質粒子を前記溶融池に供給する工程と、
前記溶融池が凝固することにより、前記母材上に形成され前記硬質粒子を未溶融状態で含有する硬化肉盛層を得る工程と、
を備える硬化肉盛層形成方法。
【請求項2】
前記硬質粒子は、前記溶加材の比重以上の比重を有する材料からなる第2粒子をさらに含む、
請求項1に記載の硬化肉盛層形成方法。
【請求項3】
溶加材を溶融させて母材上に溶融池を生成する工程と、
半凝固状態の前記溶融池に硬質粒子を供給する工程と、
前記溶融池が凝固することにより、前記母材上に形成され前記硬質粒子を未溶融状態で含有する硬化肉盛層を得る工程と、
を備える硬化肉盛層形成方法。
【請求項4】
前記硬質粒子は、前記溶加材の比重以上の比重を有する材料からなる粒子を含む、
請求項3に記載の硬化肉盛層形成方法。
【請求項5】
前記硬質粒子は、前記溶加材よりも熱膨張係数の小さい材料からなる、
請求項1から4のいずれかに記載の硬化肉盛層形成方法。
【請求項6】
前記溶加材は、軟鋼、Ni系、またはCu系の金属を主成分とする、
請求項1から5のいずれかに記載の硬化肉盛層形成方法。
【請求項7】
前記硬質粒子は、炭化物または炭窒化物を含む、
請求項1から6のいずれかに記載の硬化肉盛層形成方法。
【請求項8】
前記硬質粒子は、炭化物、炭窒化物、または、これらの1種類以上をFe系、Co系、Ni系の金属で結合した粒子からなる、
請求項1から7のいずれかに記載の硬化肉盛層形成方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化肉盛層形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐摩耗性を必要とする部材(母材)上に肉盛溶接を行うことにより硬化肉盛層を形成して、母材の耐摩耗性を向上させることが行われている。この硬化肉盛層の形成においては、溶接によって溶加材を溶融させて母材上に溶融池を生成すると共に、溶融池に硬質粒子を散布する(特許文献1参照)。これにより、硬質粒子が未溶融状態で混入された硬化肉盛層を得ることができ、耐摩耗性を向上させることができる。
【特許文献1】特開平8−47774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように硬化肉盛層が形成される場合、冷却過程では、母材の収縮量に対して硬化肉盛層の収縮量が大きいため、この収縮量の差によって硬化肉盛層に応力が作用する。そして、硬化肉盛層は伸びや靱性が低いため、このような応力を受けると硬化肉盛層の表面に亀裂が発生する恐れがある。このような亀裂の発生を防止するために、予熱や後熱が行われることも多いが、生産性を低下させる一因となっている。
【0004】
本発明の課題は、硬化肉盛層における亀裂の発生を抑えることができる硬化肉盛層形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明の硬化肉盛層形成方法は、溶加材を溶融させて母材上に溶融池を生成する工程と、溶加材より比重の小さい材料からなる第1粒子を含む硬質粒子を溶融池に供給する工程と、溶融池が凝固することにより母材上に形成され硬質粒子を未溶融状態で含有する硬化肉盛層を得る工程とを備える。
【0006】
この硬化肉盛層形成方法では、溶融池に供給される硬質粒子に含まれる第1粒子は、溶融池を構成する溶加材より比重が小さい材料からなる。このため、溶融池が凝固して得られた硬化肉盛層の表面近傍に未溶融状態の第1粒子を多く分布させることができる。亀裂は硬化肉盛層の表面から発生することが多いため、多数の第1粒子を硬化肉盛層の表面近傍に分布させることにより、硬化肉盛層の表面からの亀裂の発生を抑えることができる。これにより、この硬化肉盛層形成方法では、硬化肉盛層における亀裂の発生を抑えることができる。
【0007】
第2発明の硬化肉盛層形成方法は、第1発明の硬化肉盛層形成方法であって、硬質粒子は、溶加材の比重以上の比重を有する材料からなる第2粒子をさらに含む。
【0008】
この硬化肉盛層形成方法では、溶加材の比重以上の比重を有する材料からなる第2粒子が溶融池に供給される。このため、多数の第1粒子を硬化肉盛層の表面近傍に分布させると共に、第1粒子が分布している層よりも低い部分に多数の第2粒子を分布させることができる。
【0009】
第3発明の硬化肉盛層形成方法は、溶加材を溶融させて母材上に溶融池を生成する工程と、半凝固状態の溶融池に硬質粒子を供給する工程と、溶融池を凝固させることにより母材上に形成され硬質粒子を未溶融状態で含有する硬化肉盛層を得る行程とを備える。
【0010】
この硬化肉盛層形成方法では、硬質粒子が半凝固状態の溶融池に供給される。このため、硬質粒子が溶融池において沈降し難くなり、硬化肉盛層の表面近傍に多数の硬質粒子を分布させることができる。これにより、この硬化肉盛層形成方法では、未溶融状態の多数の硬質粒子を硬化肉盛層の表面近傍に分布させることができる。
【0011】
第4発明の硬化肉盛層形成方法は、第3発明の硬化肉盛層形成方法であって、硬質粒子は、溶加材の比重以上の比重を有する材料からなる粒子を含む。
【0012】
この硬化肉盛層形成方法では、硬質粒子が半凝固状態の溶融池に供給されるため、硬質粒子の比重に関わらず、硬化肉盛層の表面近傍に多数の硬質粒子を分布させることができる。このため、溶加材の比重以上の比重を有する材料からなる粒子であっても、硬化肉盛層の表面近傍に多数の硬質粒子を容易に分布させることができる。
【0013】
第5発明の硬化肉盛層形成方法は、第1発明から第4発明のいずれかの硬化肉盛層形成方法であって、硬質粒子は、溶加材よりも熱膨張係数の小さい材料からなる。
【0014】
この硬化肉盛層形成方法では、硬質粒子は、溶加材よりも熱膨張係数の小さい材料からなるため、熱膨張係数の複合側により硬化肉盛層全体としての熱膨張係数を低減させることができる。このため、硬化肉盛層の冷却時の収縮量を低減させることができ、亀裂の発生をより抑えることができる。
【0015】
第6発明の硬化肉盛層形成方法は、第1発明から第5発明のいずれかの硬化肉盛層形成方法であって、溶加材は、軟鋼、Ni系、またはCu系の金属を主成分とする。
【0016】
この硬化肉盛層形成方法では、溶加材は、軟鋼、Ni系、またはCu系の金属を主成分とするため延性が高い。このため、硬化肉盛層での亀裂の発生をより抑えることができる。
【0017】
第7発明の硬化肉盛層形成方法は、第1発明から第6発明のいずれかの硬化肉盛層形成方法であって、硬質粒子は、炭化物または炭窒化物を含む。
【0018】
炭化物や炭窒化物は、溶融した溶加材との濡れ性が良好であるため、この硬化肉盛層形成方法では、硬質粒子と溶加材とが強固に結合した硬化肉盛層を形成することができる。
【0019】
第8発明の硬化肉盛層形成方法は、第1発明から第7発明のいずれかの硬化肉盛層形成方法であって、硬質粒子は、炭化物、炭窒化物、または、これらの1種類以上をFe系、Co系、Ni系の金属で結合した粒子からなる。
【0020】
炭化物や炭窒化物は、溶融した溶加材との濡れ性が良好であるため、この硬化肉盛層形成方法では、硬質粒子と溶加材とが強固に結合した硬化肉盛層を形成することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る硬化肉盛層形成方法では、溶融池に供給される硬質粒子に含まれる第1粒子は、溶融池を構成する溶加材より比重が小さい材料からなる。このため、溶融池が凝固して得られた硬化肉盛層の表面近傍に未溶融状態の多数の第1粒子を分布させることができる。亀裂は硬化肉盛層の表面から発生することが多いため、第1粒子を硬化肉盛層の表面近傍に多く分布させることにより、硬化肉盛層の表面からの亀裂の発生を抑えることができる。これにより、この硬化肉盛層形成方法では、硬化肉盛層における亀裂の発生を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<第1実施形態>
本発明に係る硬化肉盛層形成方法において用いられる溶接システム1を図1に示す。溶接システム1は、硬質粒子2を未溶融状態で含有する硬化肉盛層3をアーク溶接によって母材4上に形成するものである。母材4は、例えば、耐摩耗性が必要とされるバケットツースなどの建設機械の構成部品であり、炭素鋼、NiCrMo鋼やCrMo鋼などの低合金鋼、高マンガン鋳鋼などの金属からなるものである。また、インコネルやハステロイなどのNi基合金、黄銅や青銅などのCu基合金などからなるもの母材4として利用可能である。この溶接システム1は、トーチ5と、硬質粒子供給ノズル6とを備えている。
【0023】
トーチ5には、溶加材として溶接ワイヤ7が供給される。この溶接ワイヤ7は、軟鋼、Ni系、またはCu系の金属を主成分とするものである。溶接ワイヤ7は、図示しないコイルから繰り出されてトーチ5へ供給され、トーチ5の先端から所定の長さL1(突出長さ)だけ突出している。この溶接ワイヤ7がアークによって溶融して溶加材として供給されることによって、母材4上に溶融池8が生成される。トーチ5は、母材4の表面に対して角度θ(トーチ角)で傾斜しており、母材4の表面に沿って所定速度で移動する(図1の矢印A1参照)。
【0024】
硬質粒子供給ノズル6は、トーチ5の外部においてトーチ5に近接して配置されており、溶接ワイヤ7が溶融して形成される溶融池8の上方に配置される。硬質粒子供給ノズル6は、トーチ5の進行方向(図1の矢印A1参照)に沿って前後に所定幅でウィービングしながらトーチ5と共に移動する(図1の矢印A2,A3参照)。硬質粒子2は、移動する硬質粒子供給ノズル6から重力落下することにより溶融池8のアーク直下に供給される。なお、硬質粒子供給ノズル6と溶融池8のアーク発生部分までの距離はL2である。また、硬質粒子供給ノズル6の外周には水冷パイプ9が配設されており、硬質粒子供給ノズル6を冷却している。
【0025】
硬質粒子供給ノズル6から供給される硬質粒子2は、溶接ワイヤ7を構成する溶加材より比重が小さく且つ溶加材よりも熱膨張係数が小さい材料からなる第1粒子から構成されている。この第1粒子は、例えば、溶加材として鋼を用いる場合には、TiC、TiCN、ZrC、Cr3C2などの炭化物、炭窒化物、または、これらの1種類以上をFe系、Co系、Ni系の金属で結合した粒子からなるものである。第1粒子は、硬化肉盛層3の添加成分として必要な硬度、例えば、500〜2000Hv、好ましくは1000〜1800Hvの硬度を有する。また、第1粒子の粒径は、0.5〜5mm、好ましくは0.5〜2.5mmであり、第1粒子の添加量は、硬化肉盛層3に対して5〜55容量%、好ましくは15〜45容量%である。
【0026】
次に、この溶接システム1を用いた硬化肉盛層形成方法のフローを図2に示す。
【0027】
まず、第1工程S1では、アーク溶接が行われる。ここでは、アークを発生させることによって溶接ワイヤ7が溶融して溶加材として供給され、母材4上に溶融池8が生成される。なお、本発明に係る硬化肉盛層形成方法では、硬化肉盛層の形成前に軟鋼等による下盛層を形成する下盛溶接は行われない。
【0028】
次に、第2工程S2では、硬質粒子2が硬質粒子供給ノズル6から落下して溶融池8に供給される。第2工程S2は第1工程S1と並行して行われ、凝固する前の液体状態の溶融池8に硬質粒子2が供給される。
【0029】
第3工程S3では、溶融池8が凝固することにより、母材4上に形成され硬質粒子2を未溶融状態で含有する硬化肉盛層3が得られる。ここでは、トーチ5と硬質粒子供給ノズル6とが移動した後の部分において、溶融池8が自然に凝固して硬化肉盛層3が形成される。第2工程において溶融池8に供給された硬質粒子2は溶加材よりも比重が小さいため、形成された硬化肉盛層3では、硬質粒子2が表面近傍に集中して分布している。
【0030】
トーチ5と硬質粒子供給ノズル6とが移動しながら、これらの第1工程から第3工程が繰り返し行われることにより、母材4の所定領域を覆うように硬化肉盛層3が形成される。
【0031】
このような硬化肉盛層形成方法によって硬化肉盛層3が形成されると、溶加材よりも比重の小さい硬質粒子2が溶融池8の上部に集中した状態で溶融池8が凝固する。これにより、表面近傍に硬質粒子2が多く分布した硬化肉盛層3を得ることができ、冷却時において硬化肉盛層3の表面に亀裂が生じることを抑えることができる。また、溶加材として上述したような延性のある材料が用いられることによっても、硬化肉盛層3の表面に亀裂が生じることを抑えることができる。
【0032】
以下、第1実施形態に係る硬化肉盛層形成方法の具体的実施例について説明する。なお、各実施例における条件を比較した表を図3に示す。
【実施例1】
【0033】
上述した溶接システム1および硬化肉盛層形成方法において、以下の条件で硬化肉盛層3を形成する。
〔母材4および溶接ワイヤ7の種類〕
母材4:SH30製(NiCrMo鋼)
溶接ワイヤ7:JFE溶接棒株式会社製(50kg級軟鋼、比重7.8)、φ1.2mm
なお、溶接ワイヤ7の突出長さL1は25mmであり、トーチ角θは60°である。
〔溶接条件〕
溶接電流:350A
溶接電圧:33V
溶接入熱:15.4kJ/cm
溶接速度(トーチ5の移動速度):45cm/min
なお、シールドガスとして、CO2を毎分30リットル供給する。
〔硬質粒子2の種類〕
硬質粒子2:TiC−Ni(比重7.5g/cm3)
硬質粒子2の粒径:0.71〜2.36mm
硬質粒子2の供給量:158.5g/min
粒子供給総体積:21.1cm3/min
硬質粒子2の含有率:38.5%
なお、硬質粒子2の含有率は、硬化肉盛層3の総断面積における硬質粒子2の断面積の割合を示すものであり、硬質粒子2の硬化肉盛層3への溶け混みを考慮しない見かけの含有率である。
〔硬質粒子供給ノズル6の移動条件〕
ウィービング波形:sin波
ウィービング周波数:3.0Hz
ウィービング幅:9.4mm
硬質粒子供給ノズル6とアーク発生部分までの距離L2:25mm
上記のような条件で硬化肉盛層3が形成されることにより、表面近傍に硬質粒子2が多く分布した硬化肉盛層3を得ることができ、冷却時において硬化肉盛層3の表面に亀裂が生じることを抑えることができる。
【実施例2】
【0034】
母材4として、SCMnH11(高Mn鋼)製のものを用い、他の条件については実施例1と同様にして硬化肉盛層3を形成する。この場合も実施例1と同様に、表面近傍に硬質粒子2が多く分布した硬化肉盛層3を得ることができる。
【0035】
<第2実施形態>
上記の第1実施形態における第2工程において、硬質粒子2を供給するタイミングを溶融池8が半凝固状態となったときとしてもよい。この場合、硬質粒子2は、溶加材の比重以上の比重を有する材料からなる粒子を含むものであってもよい。例えば、鋼を溶加材として用いる場合、概ね同じ比重を有するものとしては、NbCがある。また、大きな比重を有するものとしては、Mo2C、TaC、WC、W2C、または、これらの1種類以上をFe系、Co系、Ni系の金属で結合した粒子からなるものがある。
【0036】
溶接システム1の構成や他の工程については第1実施形態と同様である。
【0037】
以下、第2実施形態に係る硬化肉盛層形成方法の具体的実施例について説明する。
【実施例3】
【0038】
硬質粒子2:WC−Co(比重14.5g/cm3)
硬質粒子2の粒径:0.71〜2.36mm
硬質粒子2の供給量:306.5g/min
粒子供給総体積:21.1cm3/min
硬質粒子2の含有率:38.5%
なお、硬質粒子供給ノズル6の移動条件は実施例1と概ね同じであるが、ウィービング幅は9.8mmである。また、他の条件については実施例1と同様であるが、溶融池8が半凝固状態となったときに硬質粒子2が硬質粒子供給ノズル6から供給される。
【0039】
この場合、半凝固状態の溶融池8に硬質粒子2が供給されるため、溶加材よりも比重の大きい硬質粒子2であっても沈降し難い。このため、硬質粒子2が溶融池8の上部に集中した状態で溶融池8が凝固する。これにより、表面近傍に硬質粒子2が多く分布した硬化肉盛層3を得ることができ、冷却時において硬化肉盛層3の表面に亀裂が生じることを抑えることができる。
【実施例4】
【0040】
母材4としてSCMnH11(高Mn鋼)製のものを用いる。他の条件については実施例3と同様である。
【0041】
この場合も、実施例3と同様に、表面近傍に硬質粒子2が多く分布した硬化肉盛層3を得ることができ、冷却時において硬化肉盛層3の表面に亀裂が生じることを抑えることができる。
【0042】
<第3実施形態>
上記の第1実施形態における第2工程において、溶加材の比重より小さい第1粒子だけではなく、溶加材の比重以上の比重を有する材料からなる第2粒子をさらに含む硬質粒子2を硬質粒子供給ノズル6から供給してもよい。ここでいう第2粒子とは、第2実施形態において硬質粒子として例示したものと同様のものである。第2粒子は第1粒子とは別体の粉体として第1粒子と混合された状態で供給されるが、第1粒子として例示した材料と第2粒子として例示した材料とがFe系、Co系、Ni系の金属で結合された粒子が硬質粒子として供給されてもよい。
【0043】
溶接システム1の構成や他の工程については第1実施形態と同様である。
【0044】
以下、第3実施形態に係る硬化肉盛層形成方法の具体的実施例について説明する。
【実施例5】
【0045】
硬質粒子2:TiC−NiとWC−Coとの混合(TiC:38容積%(24重量%)、WC−Co:62容積%(76重量%))
硬質粒子2の粒径:0.71〜2.36mm
第1粒子(TiC−Ni)の供給量:49.5g/min
第2粒子(WC−Co)の供給量:163.0g/min
粒子供給総体積:17.8cm3/min
硬質粒子2の含有率:37.1%
なお、溶接条件および硬質粒子供給ノズル6の移動条件は実施例1と概ね同じであるが、溶接速度は42cm/min、溶接入熱は15.6kJ/cm、ウィービング幅は8.0mmである。他の条件については実施例1と同様であり、第1粒子と第2粒子とのどちらも液体状態の溶融池8に供給される。
【0046】
上記のような条件で硬化肉盛層3が形成されると、溶加材よりも比重の小さい第1粒子が溶融池8の上部に集中し、且つ、溶加材よりも比重の大きい第2粒子が溶融池8の下部に集中した状態で溶融池8が凝固する。これにより、表面近傍に第1粒子が多く分布した硬化肉盛層3を得ることができ、冷却時において硬化肉盛層3の表面に亀裂が生じることを抑えることができる。また、第2粒子によって、硬化肉盛層3の表面だけではなく下部にも硬質粒子2を分布させることができるため、硬質粒子2を硬化肉盛層3中に分散させることができ、安定した耐摩耗性を得ることができる。
【実施例6】
【0047】
母材4としてSCMnH11(高Mn鋼)製のものを用いる。他の条件については実施例5と同様である。
【0048】
この場合も、実施例5と同様に、表面近傍に第1粒子が多く分布し、下部に第2粒子が多く分布した硬化肉盛層3を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、硬化肉盛層における亀裂の発生を抑えることができる効果を有し、硬化肉盛層形成方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る硬化肉盛層形成方法で用いられる溶接システムの構成を示す図。
【図2】本発明に係る硬化肉盛層形成方法のフローを示す図。
【図3】各実施例の条件を比較した表を示す図。
【出願人】 【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
【出願日】 平成18年6月20日(2006.6.20)
【代理人】 【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人


【公開番号】 特開2008−762(P2008−762A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−170227(P2006−170227)