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【発明の名称】 ワイヤの走行経路設定方法
【発明者】 【氏名】辻 一夫

【氏名】井上 裕章

【要約】 【課題】超硬物質等の素材からワイヤ放電加工で微小かつ高精度の製品を切取る際に、製品の辺に異常突起が生じたり、全周を切断されても素材に拘束されたりしない走行経路を設定する。

【解決手段】素材から直線若しくは曲線からなるN個の辺を有するN辺形の製品をワイヤ放電加工により切取るための走行経路設定方法であって、製品の少なくとも1の辺が、指定辺として入力される指定辺入力ステップと、製品の各辺の切断順序を制御して、指定辺が最終の切断辺とならない様にする切断順序制御ステップを有する方法。保持部に保持されている素材から、直線若しくは曲線からなるN個の辺を有するN辺形の製品のN個の辺の箇所をワイヤ放電加工により切断して当該製品を素材から切取る走行経路設定方法であって、製品のN個目の辺を素材から切断した状態では、当該製品の(N−2)個の辺が開放されている様に制御する落下形状制御ステップを有する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持部に保持されている素材から直線若しくは曲線からなるN個の辺を有するN辺形の製品をワイヤ放電加工により切取るための走行経路を設定する方法であって、
前記製品の少なくとも1の辺が、指定辺として入力される指定辺入力ステップと、
前記製品の各辺の切断方法を制御して、指定辺に異常突起が生じない様にする切断方法制御ステップを有していることを特徴とするワイヤの走行経路設定方法。
【請求項2】
前記切断方法制御ステップは、製品を素材から切取る際に、指定辺が当該製品を素材から切断する最終辺にならないように切断順序を制御することを特徴とする請求項1に記載のワイヤの走行経路設定方法。
【請求項3】
保持部に保持されている素材から、直線若しくは曲線からなるN個の辺を有するN辺形の製品のN個の辺をワイヤ放電加工により切断して当該製品を素材から切取るための走行経路を設定する方法であって、
前記製品のN個目の辺を素材から切断する状態では、当該製品の(N−2)個の辺が開放されている様に制御する落下形状制御ステップを有していることを特徴とするワイヤの走行経路設定方法。
【請求項4】
前記製品のN個目の辺を素材から切断する状態では、当該製品の(N−2)個の辺が開放されている様に制御する落下形状制御ステップを有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワイヤの走行経路設定方法。
【請求項5】
前記素材の形状は円であり、
前記製品の形状は1種類であり、かつ保持部に保持されている素材に直交するXY座標を設定したときに、前記製品はY座標の値が大きい反保持部側から優先してX軸方向に形成された列内に配置されており、
前記落下形状制御ステップは、
Y座標値が大きい方から、Y座標値が同じであればX軸方向に沿って、製品の切取りが行われる様に制御する連続切取り制御手順と、
外周となる円と前記X軸方向に形成された製品の列の左右端で形成される箇所を、第1列から少なくとも第2列までに亘って前もって切徐しておく外周先行切取手順を有していることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のワイヤの走行経路設定方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤの走行経路設定方法に関し、特に超硬物質の素材から製品をワイヤ放電加工により切取る際のワイヤの走行経路設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械系の製造工場においては、板材等の素材から機械の部分や部品あるいはそれらの一部となる所定の形状の材料部品(以下、「製品」と記す)を指定された個数だけ最適に、あるいは一定の素材から最大個数切出して(いわゆる板取を行なって)、コストダウンを図るために、ネスティングがなされている。
【0003】
ネスティングの基本的な方針は、素材から可能な限り多数の製品を切取れる様にすること、素材から指定された個数を切取る場合には残材が可能な限り有効利用できる様にすることである。
またこのため、製品と製品の間隔は出来るだけ詰められ、その結果、1つの経路の切断が(1本の切断線が)、その両側にある複数の製品を切出す際の境界となっている様に製品の配置がなされるのが原則である。但し、製品を切取るための切断に必要な幅は考慮される。例えばワイヤ放電加工であれば、製品の間隔として、ワイヤの直径である150μm〜200μmが設けられる。
【0004】
前記ネスティングの基本的な方針を達成するための具体的な手段であるが、鉄板、ゴムシート等の通常の板状の物質を対象とするものでは、製品の形状と素材と製品の寸法比に応じて、最適と思われるパターンやそれに近いパターンはおおよそ決まっている(単なる幾何学上の問題である)ため、円形や四角形や三角形等の頻度の多い幾つかの形状については、解析計算や経験を反映して候補のパターンを幾ケースか作成しておき、そのパターンを基にある程度の試行錯誤を行って好ましい配置を見出す等のことがなされているだけでなく、円形の素材から複数の形状の製品を出来るだけ多数、効率よく切出すことが可能となるプログラム等が市販されたりしている。但し、これらは周知技術であるため、その説明は省略する。
【0005】
また、人造ダイヤモンド等の超硬物質から切削工具の刃先の様な微小かつ高精度の製品を切取る際には、現在の技術では素材に製品を切取るのに好ましくない領域(不良領域)が生じることを完全に防止するのは困難であるため、不良領域がある素材や先行する板取の残材を使用する場合には、熟練技術者が経験を基にネスティングを行なっている。
【0006】
これらの結果、製品が長方形であれば素材に正方行列状に配置されたり、製品が円形であればいわゆる蜂の巣上に配置されたり(六方配置)する。
また、三角形や台形であれば2つ組合せて平行四辺形とし、さらに素材に直交するXY座標系を設定したときに、X軸方向に並んだ多数の平行四辺形の1組の平行な辺が上下2本のX軸に平行な直線となり、この多数の平行四辺形の列がY軸方向に多数配置されるようになされたりしている。
【0007】
次に、ネスティングがなされた後の素材から製品を効率よく切取ることについても、様々な技術が開発されている。例えば、素材をレーザで切断して製品の切取を行なうのであれば、切断の開始点を素材の外側部としたり、1の経路の切断で相互に辺を共有する隣接して配置された製品を切離したりして切断の効率化を図る発明、切断時の加熱による熱膨張が製品に悪影響を及ぼさない様に走行経路を設定する発明等が開示されている(特許文献1)。
【0008】
同じく、ワイヤ放電加工における切取りでは、アプローチ(加工)開始孔からアプローチ点までワイヤ電極を送るためのアプローチ動作、加工形状の輪郭加工を行うための輪郭加工動作、加工形状上の逃げ開始点から逃げ点までのワイヤ電極を退避させるための逃げ動作等の基本的な動作について必要なデータを予め準備しておき、設定された加工パターン、加工形状、加工条件に応じて適切な基本動作の実行がなされる発明が開示されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平9−285886号公報
【特許文献2】特開平9−155645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上の技術、特に切取り経路に関する発明は、樹脂や鋼板や一般的なセラミック等の素材からシート、押出し加工用の金属板等の通常用いられる製品を切取る場合を対象としたものであり、超高圧を用いて製造された人造ダイヤモンド、立方晶窒化硼素(cBN)等のような超硬物質の素材から切削工具(バイト)の刃先等のように微小かつ高精度を必要とされる製品を切取る場合には、適用することが困難である。
【0010】
即ち、これらの素材の場合には、製品の切取りにワイヤ放電加工が用いられるが、製品の周囲を構成する辺の切取りの順序や条件が、さらに多数の製品を切取る場合には、ワイヤの走行経路(直接素材を切断する経路+戻り等の付属的経路)の設定が問題となる。以下、その内容を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、ワイヤ放電加工を用いて製品である多角形(図では台形)の刃先を切出す際に、各辺の切取り順序の如何が不都合をもたらす様子を概念的に示す図である。
【0011】
図1において、10は素材であり、11は素材の端面であり、21から24は素材上に左から右に順に配列され、この順に切取られる製品であり、22は異常突起が生じた製品であり、29は製品22の異常突起であり、30は製品22の指定辺であり、80は工具であり、90はワイヤであり、91切取り開始位置であり、92は切取り途中のワイヤであり、93は製品22の切取り終了位置であり、99はワイヤの軌跡である。
【0012】
図1の(1)に示す様に、ネスティングの結果、素材10の上端部に、左から順にワイヤ放電加工で素材から切取られる製品21、22、23、24が配置されている。そして、先ず製品21を切取り、次いで製品22を切取るために、切取り開始位置91から図に示す軌跡99に沿って走行(移動)し、最終的に製品22の切取り終了位置93に来る。この時点で、製品22は素材10から完全に切離されて下方に落下する。しかるに、ワイヤ90の水平断面は円形である。このため、図1の(2)に示す様に、製品22の左下はワイヤ放電加工で取去られず、その結果製品22の指定辺30に凸出部、即ち異常突起29が生じることとなる。
【0013】
図1の(3)に示す様に、この製品22を太い矢印で示す様に、工具80の先端に刃先として取付けようとする際、工具の取付け用基準面に直面する辺、あるいは工具とロー付けを行う辺(即ち、指定辺30)に異常突起29があるので、ロー隙と言われる隙間が生じたり、刃先がずれて刃先部に研削されない部分が残ったりして、正常な工具とならない。
特に、人造ダイヤモンドやcBNの様な超硬物質であると、後工程で異常突起29を除去することは困難であり、また人造ダイヤモンドやcBNほどではないが、これまた硬い工具80の先端を、小さな異常突起29に合わせて正確に加工することも困難である。
そしてこの場合、この製品22は不良品となるが、材料が極めて高価であるだけに、大きなコストアップに繋がる。
【0014】
次に、製品が小さいだけに、通常の板取と異なる問題がある。即ち、図1の(1)における製品21のように、製品の3辺が開放されていない場合には、即ち辺に対向する位置に素材がある場合には、たとえ製品の全周が素材から切離されていても、製品22が素材10に引っ掛って拘束され、そのままの位置に留まり、下方に落下しない場合がある。その理由であるが、素材から全周を切取られた時にワイヤとの干渉等によって製品に傾きが生じることがあり、実際の製品には厚みがあるので、生じた傾きのために製品の外周、辺とそれに対向した位置にある素材の端面との間に引っ掛かりによる拘束が生じることがあるからである。
【0015】
そして、製品が下方に落下しなければ、ショートやワイヤの切断、ひいてはプログラムの停止、切取り作業の中断等の原因となりかねず、万が一その様な事故が生じれば、大幅な作業の遅延、さらにはコストアップに繋がる。
本発明者の経験によると、切削工具の刃先のような小さな製品が、素材から全周を切離されたときに確実に下方に落下するためには、N辺形の製品を素材から切取る際には、当該製品の全ての辺を切断する時に、その内(N−2)個の辺は素材から拘束を受けない様に開放されていること(対向する位置にある箇所の素材は、製品の全辺を切断する時までに切徐され、下方に落下していること)が必要である。このため、ワイヤの走行経路は、N角形の製品を切取ったときに、その製品のN個の辺の内(N−2)個の辺は素材から拘束を受けない様に開放されている様に設定されていることも必要である。
【0016】
なお、図1の(1)の一番左にある製品21は、その左に素材があるため、全周が切取られる時には上側に向いた1個の辺しか開放されていない。また、図1の(2)に示す製品22は、その左方の製品21が切取られており、さらにこの製品21が落下しておれば、全周が切取られたときには上と左の2個の辺が開放されていることとなる。
【0017】
このため、人造ダイヤモンド、cBN等のような超硬物質の素材にネスティングにより配置された多数の微小かつ高精度の製品をワイヤ放電加工で切取るに際して、指定辺に異常突起がなく、外周を切断された製品は確実に落下するワイヤの走行経路を設定するためには、高度の熟練技術者が多大な時間をかけて慎重に検討を行なっているのが実情である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としてなされたものであり、超硬物質の素材にネスティングにより配置された多数の微小かつ高精度の製品をワイヤ放電加工で切取る際のワイヤの走行経路設定を、素材に設定された直交XY座標系に沿って配置された製品を、Y座標とX座標に沿って順次切取り、また予め素材の外周部を切徐しておき、さらに製品を素材から切取る際の最終辺が指定辺とならないようにしたものである。以下、各請求項の発明を説明する。
【0019】
請求項1に記載の発明は、
保持部に保持されている素材から直線若しくは曲線からなるN個の辺を有するN辺形の製品をワイヤ放電加工により切取るための走行経路を設定する方法であって、
前記製品の少なくとも1の辺が、指定辺として入力される指定辺入力ステップと、
前記製品の各辺の切断方法を制御して、指定辺に異常突起が生じない様にする切断方法制御ステップを有していることを特徴とするワイヤの走行経路設定方法である。
【0020】
本請求項の発明においては、製品の各辺の切断方法を制御し、当該製品が素材から切取られるまでに、指定辺の全長に亘ってワイヤ放電加工による素材との切断が行なわれている走行経路としているため、指定辺に異常突起が生じない。
また、高度の熟練技術者が多大な時間をかけて慎重に検討を行うことなしに、かかるワイヤの走行経路設定がなされる。
【0021】
ここに、「製品の各辺の切断方法を制御」とは、単に個々の製品についてその辺の切断順序を決めたりするだけでなく、ネスティング結果に従って配置されている多数の製品をワイヤの無駄な動き等なく効率よく切取るために設定されたワイヤの走行経路に沿って切断するため、結果的に個々の製品についてその各辺の切断順序が制御される様な場合を含む。
また、「直線若しくは曲線からなるN個の辺を有するN辺形」とは、角によっては多少丸みが付けられている等の加工が施されている場合(形状)も含む。
【0022】
請求項2に記載の発明は、前記のワイヤの走行経路設定方法であって、
前記切断方法制御ステップは、製品を素材から切取る際に、指定辺が当該製品を素材から切断する最終辺にならないように切断順序を制御することを特徴とするワイヤの走行経路設定方法である。
【0023】
本請求項の発明においては、製品を素材から切取る際に、指定辺が当該製品を素材から切断する最終辺にならないため、指定辺の全長に亘ってワイヤ放電加工による切断を行なうことが可能となり、ひいては指定辺に異常突起が生じない。
【0024】
請求項3に記載の発明は、
保持部に保持されている素材から、直線若しくは曲線からなるN個の辺を有するN辺形の製品のN個の辺をワイヤ放電加工により切断して当該製品を素材から切取るための走行経路設定方法であって、
前記製品のN個目の辺を素材から切断する状態では、当該製品の(N−2)個の辺が開放されている様に制御する落下形状制御ステップを有していることを特徴とするワイヤの走行経路設定方法である。
【0025】
本請求項の発明においては、製品を素材から切取る状態では、当該製品の(N−2)個の辺が開放されている、即ちその時点で保持部に保持されている箇所の素材に直面している該製品の辺は多くとも2つである形状にされているため、製品は確実に下方に落下する。このため、素材に引っ掛った製品のために、ショートやワイヤの破断が生じることがない。
また、高度の熟練技術者が多大な時間をかけて慎重に検討を行うことなしに、かかるワイヤの走行経路設定がなされる。
【0026】
なお、落下形状制御ステップにて行う具体的な制御の内容は、製品を切取るのが不適当な領域が素材にあれば、当該領域を製品に先行して切取っておく、また相互に隣接する複数の製品を切取る際に極力素材の外周側あるいは反保持部側に位置する製品から、それも一定の方向に沿って順に切取ることにより、その方向に沿って隣接する次に切取る製品の隣接に関わる箇所の辺を開放された状態としておく、あるいは形状や指定辺の位置によっては予め定めたパターンに沿ってワイヤをジグザグに走行させる等である。
【0027】
請求項4に記載の発明は、前記のワイヤの走行経路設定方法であって、
前記製品のN個目の辺を素材から切断する状態では、当該製品の(N−2)個の辺が開放されている様に制御する落下形状制御ステップを有していることを特徴とするワイヤの走行経路設定方法である。
【0028】
本請求項の発明においては、製品のN個目の辺を素材から切断する状態では、当該製品の(N−2)個の辺が開放されている、即ち多くとも2つの辺しか保持部に保持されている素材に直面していないため、外周を切取られた製品は素材に引っ掛り、拘束されることなく下方に落下し、また各辺の切断順序も制御されているため、指定辺に異常突起が生じない。
【0029】
請求項5に記載の発明は、前記のワイヤの走行経路設定方法であって、
前記素材の形状は円であり、
前記製品の形状は1種類であり、かつ保持部に保持されている素材に直交するXY座標を設定したときに、前記製品はY座標の値が大きい反保持部側から優先してX軸方向に形成された列内に配置されており、
前記落下形状制御ステップは、
Y座標値が大きい方から、Y座標値が同じであればX軸方向に沿って、製品の切取りが行われる様に制御する連続切取り制御手順と、
外周となる円と前記X軸方向に形成された製品の列の左右端で形成される箇所を、第1列から少なくとも第2列までに亘って前もって切徐しておく外周先行切取手順を有していることを特徴とするワイヤの走行経路設定方法である。
【0030】
本請求項の発明においては、原則として素材に保持されていない方から、製品の配置に即したワイヤの走行経路が設定されるため、素材の外周部等の不必要な箇所を予め切徐したり実際に製品を切取ったりするための走行、製品やその各辺が適切な順序で切断される様にするための移動(戻り等)を含めてのワイヤの全走行経路が短くなるだけでなく、製品が配置されていない素材の外周を予め切取っておく(切徐しておく)ため、素材外周近くに配置された製品の素材外周側の辺は、最大2つの辺を除いて当該製品の切取り終了時には開放されている様にすることが容易となる。
また、Y座標値が大きい方から、Y座標値が同じであればX軸方向に沿って、製品の切取りが行われるため、ある製品が落下すれば、切断される辺を介して当該製品に隣接している製品も当該辺は開放されていることとなり、ひいては列に沿って製品を順に切取る際に、製品の辺が開放されていることとなるワイヤの走行経路の設定が容易となる。
【0031】
また、「素材に直交するXY座標を設定したときに」の「設定」とは、パソコンやCPUがネスティングを行ない、さらに配置された製品の切取経路を設定する手段として、それらのプログラム上で仮想的に形成することを指し、現実の素材表面に書込みを行なうわけではない。
また、「直交するXY座標」とは、最適なネスティングの結果としての有効領域内での多数の製品の配列が、製品の列がY座標値の大きい方から優先して配列され、同じY座標値であればX座標値の小さい方から順に配列されるようになっておれば良い。
【0032】
また、「第1列から少なくとも第2列までに亘って前もって切徐しておく」とは、第1列の製品を切取るためのワイヤの走行が開始された後であっても、最初に製品が切取られるまでに外周部分等が切徐されておれば、当該製品の落下の阻害とならないため、前もって切徐しておくに該当する(本発明に含まれる)。
【0033】
なお、XY座標を基準にして設定された経路に沿ってワイヤ放電加工で製品を切取るため、現実の素材においてY座標値が大きくなる方向は必ず反素材保持部側であり、製品の切取りも原則としてY座標値の大きい方からなされるが、X軸方向については、製品は2次元的な物であるため裏返せば左右は問題とならない場合があること、経路も後に説明するがジグザグに設定される場合があること等のため、左右の何れから先に切取っても良い場合がある。
【0034】
なお、本請求項の発明は、素材が円であれば必然的に外周近くに製品を配置できない箇所が生じるため、外周となる円と前記X軸方向に形成された製品の列の左右端で形成される箇所を、第1列から少なくとも第2列までに亘って前もって切徐しておくと、周囲を切取られた製品が確実に落下する様になる効果が最も発揮されることを考慮したものであるが、端材(先行する切取の残材)から製品を切取る場合や、さらには素材状の第1列に限定されず、目下製品の切取を行なう列よりY座標値が1列小さい列の外周部分を製品の切取に先立って切取っておく様にしていてもよい。
また、以上はX軸方向に配置された製品の列がY座標方向に複数ある場合であり、1列しかない場合には、当該列のみの外周部が先に切取られておくこととなる。
【0035】
前記落下形状制御ステップを効果的に発揮させるためには、後の実施の形態で説明する様な切取経路のパターン、その他切取の対象がY座標値の大きい製品の列からY座標値の小さい製品の列に移行する場合に、当該2つの製品の列全体がなす形状が、台形、上下が逆の台形(Y座標値の大きい方の辺が、小さい方の辺より長い)、平行四辺形の各場合における列を移行するための移動経路、製品列に抜けがある場合の移動方法(例えば、既に切取られた箇所があれば、そこでは切取りは行なわない)、素材外周部の切徐のための移動経路等を予め記憶しておき、それを基に必要な修正を施したりする。
また、修正内容としては、実際の素材の1製品列中の製品の個数と記憶しているパターンでの製品の個数の差に応じて、記憶しているパターンの繰返し操作の数を増減する等である。
【発明の効果】
【0036】
本発明においては、人造ダイヤモンド、cBN等のような超硬物質の素材にネスティングにより配置された多数の微小かつ高精度の製品をワイヤ放電加工で切取るに際して、高度の熟練技術者が多大な時間をかけて慎重に検討を行なうことなしに、指定辺に異常突起がなく、外周を切断された製品は確実に落下するワイヤの走行経路を設定することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明をその最良の実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0038】
(第1の実施の形態)
本実施の形態は、製品の形状が正方形、かつその2つの辺がX軸と平行とされ、さらにX軸方向に沿って隣接する製品とY軸方向の辺(便宜上、以下「斜辺」と記す)を共通する(前記のごとく、実際にはワイヤの幅だけ間隔があるが、自明かつ煩雑となるため、以降の実施の形態をも含めて言及、説明、図示等は省略する)様に配置されており、X座標値が大きくなる右側の製品から順にその右の斜辺、上辺(Y座標値が大きい方のX軸に平行な辺)、左の斜辺を切断し、最後に左側の製品から順にその下辺(Y座標値が大きい方のX軸に平行な辺)を切断する場合、従って製品を上側から切り取る上切りの場合である。
【0039】
以下、図2を参照しつつ、本第1の実施の形態のワイヤの走行経路設定方法における設定の内容を説明する。図2は、上の図が製品21〜23の配置を示す。下の図が走行経路を示す。下の図において、0は切取りの開始点であり、1〜8は走行経路の順序を示す。但し、破線は戻りであり、切断はなされない。なお、素材外周から切断の開始点0に至るまでのワイヤの経路は、煩雑となるため図示していない。
【0040】
図2に示す様に、ワイヤの走行経路の開始点0は、X座標値が最も大きい製品のX座標値が大きく、Y座標値が大きい頂点、即ち一番右側の製品の右上端である。
一番右側の製品23に対して、第1番目に、図2の1で示す様に(以下、「図2の」は、省略する)、前記開始点0から対向する下方の頂点までワイヤ(図示せず)が走行し、これにより製品23の右側の斜辺(X軸に直交するため厳密には斜辺ではないが、前記の理由で斜辺と記す)が素材10から(以下、「素材から」は、原則として省略する)切断される。
第2番目に、2で示す様に、ワイヤは一旦開始点まで戻る。
第3番目に、3で示す様に、ワイヤは開始点から製品23の上辺を開始点0に対向する頂点まで走行し、さらにその頂点から下方の頂点まで走行し、これにより製品23は上辺と左の斜辺が切断される。
【0041】
なお、前記第3番目の走行による左の斜辺の切断に伴って、その左側の製品22の右側の斜辺も切断されることとなる。即ち、その左側の製品22に対して、前記第1番目の切断が同時になされることとなる。
以下、前記第2番目と第3番目と同じ走行(動作)が製品22に対して繰り返され、さらに前記第2番目と同じ動作が製品21に対してなされ、これによりワイヤは一番左側の製品21の右上の頂点に位置する。
次いで、4で示す様に、ワイヤは製品21の右上の頂点から製品21の上辺を左方に走行し、さらにそのまま素材10の左方の外周11まで走行し、素材10の上部側を切取ってしまう。
【0042】
次いで、5で示す様に、ワイヤは製品21の左上の頂点まで一旦戻る。
次いで、ワイヤは製品21の左方の斜辺を下の頂点まで走行し、さらにそこからX軸に沿って素材10の左方の外周11まで走行し、製品21の左方の斜辺を素材10から切断するのみならず、素材10の左側の外周部を切除する。
この状態では、3個の製品21〜23は、何れも上辺に対向する部分の素材は無く、また一番左側の製品21の左側の斜辺に対向する部分にも素材は無い。
【0043】
次いで、7に示す様に、ワイヤは一旦製品21の左下の頂点まで戻り、最後に8に示す様に一番右の製品23の右下の頂点まで走行しつつ素材10を切断する。
以上の走行により、3個の製品21〜23は、左から順に切取られ、しかも切取られた段階では全て上辺と左の斜辺は対向する素材が無く開放されているため、下方(紙面の裏側)に落下することとなる。
【0044】
なお、最後に切取られるのは、各製品とも下辺の右の頂点であるため、ここに異常突起が生じることとなる。従って、指定辺が上辺や斜辺になる特殊台形の製品の場合に最適となる。もし、指定辺がこの辺であれば、他の切取経路を選択することとなる。
なお、本実施の形態では、製品の形状は正方形としているが、これは長方形、菱形を含む平行四辺形、台形等他の四角形であっても良い。さらに、「斜辺」は、正方形、長方形であればY軸方向となるが、通常の平行四辺形や台形であればX軸方向に傾いて(直角でなく)交差する2つの辺となり、直角台形であれば一方の斜辺のみがY軸方向となる。
また、図2に示す4と5と6の走行に換えて、製品21の上辺を切断後その左の斜辺を切断し、その後X軸方向に沿って左に走行し、製品21、22、23の上側の素材と製品21の左側の外周11部分の素材10を同時に切徐しても良い。
【0045】
(第2の実施の形態)
本実施の形態は、第1の実施の形態のX軸方向の製品の列がY軸方向に複数形成されている場合であり、上の列と下の列では、製品が切取られる順序が左右逆(X軸方向が逆)となる。
以下、図3を参照しつつ、本第2の実施の形態の走行経路設定方法の内容を説明する。なお、本実施の形態では、素材の外周部分の切徐については説明を省略する。またこのため、図3ではそのための経路は図示していない。さらに、製品は、重要なものについてのみ符号を付してある。そしてこのことは、以下の各実施の形態でも同じである。
【0046】
第1列の、即ち上側の3つの製品の上辺と左右の斜辺の素材(図示せず)からの切断は、先の第1の実施の形態と同じである。
第1列の一番左の製品の左下の頂点まで走行してきたワイヤは、ここから4に示す様に第1列より左方にある第2列の2個の製品24、25の上辺を右から左に切断し、さらに一番左にある製品24の左の斜辺を切断する。なお、第2列において製品が第1列より左方にまで配置されるのは、例えば円形の素材の上側近く(Y座標値の大きい箇所)で生じる。
次いで、5に示す様に一旦製品24の斜辺と上辺を戻り、左にある製品24の右の斜辺を切断する。その後、6に示す様に同様の動作が製品25についてなされる。
これにより、ワイヤは、製品25の右下の頂点に位置する。
【0047】
次いで、第1列の製品の下側に位置する製品26に対しても、7に示す様に同様の走行(動作)を行うが、この際X軸方向の走行は戻りではなく、素材を切断する、ひいては第1列の製品をその下辺を切断することにより切取るのが製品24、25の場合と相違する。
以下、第1列の製品を切取りつつ第2列の製品の上辺と右側の斜辺を順に切断していく。
第2列の一番右側の製品27に対しては、8に示す様に右側の斜辺を切断後そのまま第3列の製品28の右側の斜辺を素材から切断することとなる。なお、第1列と第2列の左右の端部が1直線となったり、ほぼ同じ位置(X座標値)であったりするのは、例えば円形の素材の中央部分(素材の中心近くにある列)で生じる。
【0048】
なお、第1列の一番左側の製品21の左方の斜辺を切断後、もしその下側の頂点の左下側に第2列の製品24、25が無ければ、8に示す走行経路と同様にワイヤはそのまま下方に走行し、製品26の左側の斜線を切断することとなる。
また、第2列においてさらに製品26もなければ、ワイヤは右方に走行して製品21の下辺を切断し、製品22の下にある第2列の製品から順にその左方の斜辺と上辺を切断していくこととなる。
【0049】
第3列目以降の列においても、同様のワイヤの走行がなされるが、この際上の列と下の列の左右両端において列に配置されている製品の個数が相違する等のために段が付いていたり、逆に凹みが生じていたりする場合も同様に処理される。そしてこのことは、後の実施の形態においても同様である。
【0050】
(第3の実施の形態)
本実施の形態は、製品の配置は第1の実施の形態とほぼ同じであるが、形状が等脚台形であり、また異常突起は斜辺に生じる場合である。
本実施の形態においては、最初に製品列の上辺が、一番右側の製品23の右上の頂点から一番左側の製品21の左上の頂点に渡って切断され、しかる後左側の製品から順に下側から切取られていく、即ち下切りの場合である。
即ち、最初に各製品の上辺が右から左に切断された後、一番左の製品21の左側の斜辺、下辺(台形の底辺)、右側の斜辺が素材から切断される。これにより、この製品21は下方(紙面の裏側)に落下する。
【0051】
次いで、右側にある2つの製品22、23も同様にして切取られ、下方に落下することとなる。なおこの場合、左側の斜辺はその左にある製品の切取時に切断されているため、ワイヤはこの部分を単に戻ることとなる。
【0052】
本実施の形態は、指定辺が上辺や底辺であることが多い形状が台形の製品の場合に最適となる。
【0053】
(第4の実施の形態)
本実施の形態は、第2の実施の形態のX軸方向の製品の列がY軸方向に複数形成されている場合である。
以下、図5を参照しつつ、本第2の実施の形態の走行経路設定方法の内容を説明する。
第1列の、即ち上側の3つの製品の上辺と左右の斜辺の切断は、基本的には先の第1の実施の形態と同じである。
【0054】
但し、第2の実施の形態と同様に、一番左側の製品の左下の頂点まで走行してきたワイヤは、ここから1に示す様に左方にある第2列の2個の製品24、25の上辺を切断する。
次いで、2に示す様に、ワイヤは第1列の一番左側にある製品21の左下の頂点に戻る。さらに、3に示す様にこの頂点から製品21の周囲を反時計方向に回りながら走行し、この製品21の下辺、右側の斜辺を順に切断し、製品21を素材から切取る。
【0055】
次いで、ワイヤは、4に示す様にその右側の製品22の斜辺に沿って一旦その製品の左下の頂点まで戻り、その後製品21と同様に製品22を切取る。
その後、同様の走行(動作)が製品23についてなされ、製品23が切取られる。そしてこの状態では、ワイヤは開始点0に戻っていることとなる。
【0056】
5に示す様に、ワイヤは一旦製品23の右側の斜辺に沿って下の頂点まで戻り(製品23は既に切取られているため、厳密にはあったところである)、しかる後、第2列の一番右側の製品26の周囲を時計方向にほぼ1回転して、製品26を素材から切取る。
以下、方向は右から左と逆ではあるが、即ちX座標値の大きい方から小さい方に向かって、第1列とほぼ同様に第2列の製品を切取る。
第2列の一番左側の製品を切取った後、6に示す様に、第2列目と同様に動いて第3列目の製品を左側から切取っていく。
【0057】
(第5の実施の形態)
本実施の形態は、先の4つの実施の形態が何れもX軸方向に配置された製品が右あるいは左から順に切取られたのに対して、交互に切取られる、即ちジグザグ切りであるのが大きく相違する。なお、製品の形状は台形であり、列数は1つである。
図6を参照しつつ本実施の形態を説明する。
【0058】
ワイヤは、一番右側の製品23の右上の頂点を開始点0として、1に示す様に第3の実施の形態、第4の実施の形態と同じく一列に並んだ3個の製品21〜23の上辺を右方から左方に走行して各製品の上辺を切断し、さらに一番左側の製品21の左下の頂点まで走行して、左側の斜辺を切断する。
次いで、2に示す様に一番左側の製品21の左の斜辺、さらに上辺を経てその右上の頂点まで一旦戻り、さらに3に示す様にその右側の製品22の周囲を反時計方向にその右上の頂点まで走行する。これにより、この製品は素材から切取られることとなる。従って、異常突起は斜辺、製品22であれば右側の斜辺に生じることとなる。
【0059】
次いで、4に示す様にワイヤは一番右側の製品23の上辺を経て開始点0まで一旦戻り、この製品23の右下の頂点まで移動して右の斜辺を切断する。
最後に、5に示す様にその頂点から一番左側の製品21の左下の頂点まで左方に走行し、これにより製品23と21を右から順に素材から切取る。なおこの場合、真中の製品22の下辺の箇所は単に通過するだけである。
従って、製品21、23では、異常突起は下辺、即ち台形の底辺に生じることとなる。このため、奇数番目の製品は斜辺に異常突起が生じ、偶数番目の製品は下辺(Y座標値が小さい側のX軸方向に沿った辺)に生じることとなる。
【0060】
このため、本実施の形態においては、製品に指定辺がない場合には問題なく適用可能であるが、製品の列の形状によっては指定辺があっても適用可能である。即ち、台形の製品の指定辺が底辺(長い方の辺)でなく上辺(短い方の辺)の場合に適用可能である。
【0061】
(第6の実施の形態)
本実施の形態は、第5の実施の形態のX軸方向の製品の列がY軸方向に複数形成されている場合である。
以下、図7を参照しつつ、本第6の実施の形態の走行経路設定方法の内容を説明する。
第1列の製品21〜23の走行経路は、先の第5の実施の形態と同じである。
【0062】
但し、ワイヤは、1に示す様に第1列の製品の下辺を切断しつつ走行した後、さらに5に示す様に第2列の一番左側の製品24の左上の頂点まで素材を切断しつつ走行し、さらにその製品24の左側の斜辺を切断する。しかる後、2’と3’と4’に示す様に、第1列と同様の走行(動作)が右端の製品26まで繰返されることとなる。
さらに、右端の製品26を切取った後、ワイヤは6に示す様に第2列の製品の下辺を右から左に走行し、第2列の製品を交互に切取っていく。
第3列以降の列を処理するための移動等は、第2の実施の形態、第4の実施の形態と同様である。
【0063】
本実施の形態も先の第5の実施の形態と同じく、製品に指定辺がない場合には問題なく適用可能であり、製品の列の形状によっては指定辺があっても適用可能である。即ち、台形の製品の指定辺が底辺(長い方の辺)でなく上辺(短い方の辺)の場合に適用可能である。
【0064】
(第7の実施の形態)
本実施の形態は、形状が二等辺三角形の製品がX軸方向に1列に並んで配置されている場合である。本実施の形態の走行経路の設定方法は、基本的には第5の実施の形態と同じであり、製品が交互に切取られるジグザグ切りである。但し、形状が三角形であるため、四角形の製品の既に切断されている上辺あるいは下辺のところをワイヤが切断せずに戻ることはない。
【0065】
本実施の形態は基本的には第5の実施の形態と同じであるため、個々の製品を切取るための経路の説明は省略して、製品全体がなす形状に応じて走行経路がどの様に変化するかを中心に説明する。
【0066】
図8の(1)は、個々の製品ではなく、製品の列が、全体として上辺が底辺より短い台形をなす場合であり、図8の(2)は平行四辺形をなす場合であり、図8の(3)は切取経路が図8の(2)と左右が逆、即ちY軸に対称の場合であり、図8の(4)は図8の(1)と上下が逆の場合である。
図8の(1)は、例えば円形の素材の上半分、即ちY座標値が大きい下広がりの箇所で生じることが多い。
【0067】
図8の(2)と図8の(3)は、主に円形の素材の中央の箇所で生じることが多い。図8の(2)と図8の(3)から、開始点0は製品列の左右何れにあっても良い、あるいはY座標値と異なりX座標値は左右の何れが大きくなっても良いのが判る。
図8の(4)は、例えば円形の素材の下半分、即ちY座標値が小さい下窄まりの箇所で生じることが多い。
結局、図8に示す何れの配置であっても、各製品は交互に切取りがなされ、さらに各製品とも最後に切断される辺は2つの等辺の何れか一方であり、このため指定辺とされることが多い底辺には異常突起が生じないのが分かる。なおこれについても、後で説明する。
【0068】
(第8の実施の形態)
本実施の形態は、第7の実施の形態のX軸方向の製品の列がY軸方向に複数形成されている場合である。
図9に、ワイヤの走行経路を示すが、基本的なワイヤの動きは図7に示す第6の実施の形態と同じである。このため、ワイヤの走行経路中の個々の作用の説明は省略する。本実施の形態においても、第2列も交互に製品が切取られている。
【0069】
(第9の実施の形態)
本発明に関わるワイヤの走行経路設定方法において、ネスティング結果に応じて、特に製品の形状と指定辺の如何に応じて、走行経路が設定される際の基本的な考え方、あるいは手法を説明する。
工具の刃先の形状は、三角形または四角形が主であり、しかも多くの場合三角形は二等辺三角形であり、四角形は直角台形、等脚台形、長方形や菱形を含む平行四辺形であり、それら以外の形状は少ない。また、これらの製品の場合、指定辺の位置も定まっている。
【0070】
次に、素材は円形あるいは残材を使用する場合でも当初は円形であることがほとんどであり、製品はX軸方向に列をなして配置され、さらに列がY軸方向に複数列形成されている。このため、Y軸方向に連続する2つのX軸方向の製品列の全体の形状は、図5や図7に示すような上辺が底辺より短い台形、図8の(4)に示す様な上下逆の台形、図8の(2)や(3)に示す様な平行四辺形の4種類と決まっている。
【0071】
このため、前記の製品の形状、指定辺の位置、製品の配列毎に幾つかのワイヤの走行経路のパターンを予め作成しておけば、具体的には前記第1から第8の実施の形態のパターン等を作成しておけば、後は製品の形状と製品と素材の寸法さえ決まれば、あるいはX軸方向の製品の個数、Y軸方向の列の個数や寸法等が入力されれば、後は最適なパターンの候補は自然と定まり、またワイヤの走行経路は定まる。
具体的には、例えば各製品列で繰返し行なわれるワイヤの動きの回数は、各製品列の製品の個数、組合せさえ決まれば、自動的に定まる。
また、上の列の製品の切取りが終了し、下の列の製品の切取りのためになされる走行経路やその際の処理の内容も、当該端にある上下の製品列が、上下方向の直線となっているか、上広がりのため段が付いているか、下窄みになっているか等が定まっている。
【0072】
また、製品の形状によって、指定辺の位置も定まっている。
そこで、予め作成された製品の形状、製品の配列毎に幾つかのワイヤの走行経路のパターンを装置のメモリに記憶させておく。
次いで、ネスティング結果、具体的には素材の形状や素材における製品の配置の様子等、素材の寸法や製品の形状、製品の指定辺、その他必要に応じて素材の製品を切取るのに向かない領域等についての情報を入手する。
前記入手した情報を基に、後で説明する手順、判断基準に従って、前記記憶しているワイヤの走行経路のパターンから適切なものを選択する。
【0073】
さらに、選択したパターンを基に、入手したネスティング結果等に基づいて必要な修正を施し、実際にワイヤを動かす走行経路を作成し、併せて電流、電圧等の制御を行なう。
従って、例えば図5に示す様な台形の製品の配列であれば、素材の上方から下方に向かって同じ様なワイヤの走行(動き)が繰返されることとなる。なおこの場合、X軸方向の製品の列の数、各製品列における製品の個数はネスティング装置側から入力されるため、それに基づいて自動的に繰返してなされる切取り回数の修正等が行なわれる。
各製品列の両端における上の製品列から下の製品列への移行処理も、予め入力されているパターンに応じてなされることとなる。
【0074】
次に、製品の形状毎に、指定辺が何れの辺であるか等に応じて何れのパターンを選択するかについて説明する。
(平行四辺形の場合)
図10を参照しつつ、平行四辺形において、指定辺の位置に応じて何れのパターンが選択されるかを説明する。
平行四辺形は、ネスティングにおいて、図10の(1)の配置(横配置という)、或いは図10の(3)の配置(縦配置という)のどちらの配置で切取りを行なうかは、既に決定されている。
なお、以下の説明は、平行四辺形の向きが左右逆でも同様である。
【0075】
図10の(1)は上切りの場合における製品1個を切取るためのワイヤの走行経路と異常突起の形成される位置を、図10の(2)は下切りの場合における製品1個を切取るためのワイヤの走行経路と異常突起の形成される位置を概念的に示す。上切りの場合には異常突起29が長辺に形成され、下切りの場合には短辺に形成されることになる。このため、指定辺が長辺であれば、図10の(2)に示す下切りが、即ち前記第3と第4の実施の形態で説明したパターンが採用される。
逆に、指定辺が短辺であれば、図10の(1)に示す上切りが、即ち前記第1と第2の実施の形態で説明したパターンが採用される。
【0076】
なお、第5と第6の実施の形態で説明したジグザグコースのパターンは、指定辺の関係で選択の対象外となる。
【0077】
(台形の場合)
図11を参照しつつ、台形において、指定辺の位置に応じて何れのパターンが選択されるかを説明する。
【0078】
図11の(1)は上切りの場合における製品1個を切取るためのワイヤの走行経路と異常突起29の形成される位置を、図11の(2)は下切りの場合における製品1個を切取るためのワイヤの走行経路と異常突起29の形成される位置を、図11の(3)はジグザグ切りの場合における製品1個を切取るためのワイヤの走行経路と異常突起29の形成される位置を、概念的に示す。
異常突起29は、上切りの場合には底辺又は上辺に形成され、下切りの場合には左右のどちらかの斜辺に形成され、ジグザグ切りの場合には、開始点が右上であれば左斜辺と底辺に、開始点が左上であれば右斜辺と底辺に形成される。
【0079】
このため、指定辺が底辺であれば、図11の(2)に示す下切りのパターンが採用される。
また、指定辺が上辺であれば、図11の(2)に示す下切りと(3)に示すジグザグ切りのパターンが採用される。
また、指定辺が両斜辺であれば、図11の(1)に示す上切りと(3)に示すジグザグ切りのパターンが採用されるが、一般的にはc<(b+d)/2であるため、ジグザグ切りが好ましい。
【0080】
また、指定辺がなければ、cとdの大小に応じて、下切りかジグザグ切りとされる。
なお、直角台形の場合の配置を、図11の(4)と(5)に参考として示す。この場合には、直角を挟む何れかの辺か斜辺が指定辺とされることが多い。
【0081】
(二等辺三角形の場合)
図12を参照しつつ、二等辺三角形において、指定辺の位置に応じて何れのパターンが選択されるかを説明する。
二等辺三角形の場合、ジグザグ切りが採用されるが、二等辺三角形では底辺(長さa)が指定辺とされることが殆どであるため、原則として図12の(1)に示す様な底辺がX軸に平行になる様にしてネスティングされることはない。即ち、図12の(2)と(3)に示す様に、二等辺三角形の底辺は製品を2個1組とする平行四辺形の斜辺または対角線となる様に配置してネスティングされる。
【0082】
従って、何れの配置とするかがネスティングの際に決まり、同時に切取り経路も決まることとなる。
【0083】
また、図12の(2)と(3)は、平行四辺形の向きが左右逆であっても良い。なおこの場合には、ワイヤの走行経路は、図示しているのと左右が逆になる。
【0084】
以上の他、製品の走行経路を正確に決定するだけでなく、確実な切取を行なうために、以下の処理をも行なう。
各X軸方向の製品列毎に、製品に識別番号を付す。
各Y軸方向に並んだ製品列毎に、識別番号を付す。このため、各製品はX軸方向とY軸方向の番号が付されることとなる。
各製品は、形状に応じて識別符号が付される。例えば、二等辺三角形ならばA1、直角三角形ならばA2、菱形ならばB1等である。
各製品の辺は、個々に番号を付けて管理され、さらに指定辺にはフラグが付される。
【0085】
(切取の開始)
なお、製品の切取りに際しては、素材の外周となる円と製品の列の左右端で形成される個所を、第1列から少なくとも第2列までに亘って前もって切除しておくことが好ましい。その様子を図13により説明する。
素材に設定されたXY座標に即して配置されている製品が、素材から切取られる直前の様子を図13に示す。
図13において、破線で示す15は素材10の切徐された箇所の外周線であり、85は保持具であり、86はその固定部である。図13に示す様に、素材10には、保持部85側(図面で下側)をY座標値が小さくなる様にして直交するXY座標系が設定されており、そのX座標軸に沿って平行四辺形の製品20が列を成して配置されており、さらにその製品20の列がY座標軸の方向に3つ並んでいる。そして、その第2列目までの素材10の外周部は、製品20の切取りに先立って切徐されている。以上の下で製品20の切取を開始することにより、切取りに際して製品の最大2つの辺を除いて開放させることが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】ワイヤ放電加工を用いて多角形の刃先を切出す際に、その辺の切取り順序の如何が不都合をもたらす様子を概念的に示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における製品の配置とその切取りのためのワイヤの走行経路を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態における製品の配置とその切取りのためのワイヤの走行経路を示す図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態における製品の配置とその切取りのためのワイヤの走行経路を示す図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態における製品の配置とその切取りのためのワイヤの走行経路を示す図である。
【図6】本発明の第5の実施の形態における製品の配置とその切取りのためのワイヤの走行経路を示す図である。
【図7】本発明の第6の実施の形態における製品の配置とその切取りのためのワイヤの走行経路を示す図である。
【図8】本発明の第7の実施の形態における製品の配置とその切取りのためのワイヤの走行経路を示す図である。
【図9】本発明の第8の実施の形態における製品の配置とその切取りのためのワイヤの走行経路を示す図である。
【図10】本発明の第9の実施の形態において、平行四辺形の指定辺の位置に応じて何れのパターンが選択されるかを説明するための図である。
【図11】本発明の第9の実施の形態において、台形の指定辺の位置に応じて何れのパターンが選択されるかを説明するための図である。
【図12】本発明の第9の実施の形態において、二等辺三角形の指定辺の位置に応じて何れのパターンが選択されるかを説明するための図である。
【図13】素材に設定されたXY座標に即して配置されている製品が、素材から切取られる直前の様子を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
0 開始点
1 第1番目に設定されたワイヤの走行経路
2 第2番目に設定されたワイヤの走行経路
3 第3番目に設定されたワイヤの走行経路
4 第4番目に設定されたワイヤの走行経路
5 第5番目に設定されたワイヤの走行経路
6 第6番目に設定されたワイヤの走行経路
7 第7番目に設定されたワイヤの走行経路
8 第8番目に設定されたワイヤの走行経路
10 素材
11 素材の端面
15 素材の切徐された箇所の外周線
19 マーキング
20、21、22、23、24、25、26、27、28 製品
29 異常突起
30 指定辺
80 工具
85 保持具
86 固定部
90 ワイヤ
91 切取り開始位置
92 切取り途中のワイヤ
93 切取り終了位置
99 ワイヤの軌跡
【出願人】 【識別番号】503212652
【氏名又は名称】住友電工ハードメタル株式会社
【出願日】 平成18年12月25日(2006.12.25)
【代理人】 【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司

【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美


【公開番号】 特開2008−155325(P2008−155325A)
【公開日】 平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願番号】 特願2006−347603(P2006−347603)