トップ :: B 処理操作 運輸 :: B23 工作機械;他に分類されない金属加工

【発明の名称】 多孔板の製造方法
【発明者】 【氏名】田尻 昌志

【氏名】宇田川 賢司

【氏名】中村 潤二

【要約】 【課題】垂直形状の孔を密な間隔で多数、容易に製造することができる多孔板の製造方法を提供する。

【解決手段】金属多孔板と金属ブロックを放電加工機に設置し、金属多孔板が加工電極となり、金属ブロック2が加工される側になるよう金属多孔板にプラスの電位をかける。これにより、チタン製の金属ブロック2の表面に円柱状突起3が得られる。この円柱状突起3が表面に形成された金属ブロック2を加工電極とし、新たなチタン製の金属薄板5を加工される側として放電加工機に設置し、加工すると、チタン製の金属薄板5に、金属ブロック2の表面に形成された円柱状突起3の配列を鏡像転写して孔6が形成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
元となる多孔板を第1の加工電極として放電加工又は電解加工を行い、複数の柱状突起を持つ構造体を製造し、その後、この構造体を第2の加工電極として放電加工又は電解加工を行って薄板に孔を形成することを特徴とする多孔板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の多孔板の製造方法であって、前記薄板に孔を形成する放電加工又は電解加工を2回以上実施し、2回目以降の放電加工又は電解加工においては、孔を形成する位置を、以前に孔が形成された位置と異ならせることを特徴とする多孔板の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の多孔板の製造方法を用いて前記薄板の一部にのみ孔を形成する工程を、放電加工又は電解加工の回数を変えて前記薄板の異なる部分に実施することにより、前記薄板の部分に応じて異なるピッチの孔を形成することを特徴とする多孔板の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療用のメンブレンフィルタ等に用いる多孔板には、強度や化学汚染が少ないことから、金属薄板が適している。金属薄板に密に微細な孔をあける手段として電子ビーム、レーザなどの高エネルギ束加工によるもの、フォトリソエッチングによるもの、ドリルやパンチのような機械的加工のようなものがある。
【0003】
例えば、特開平7−266142号公報(特許文献1)には、放電電極の少なくとも一方が、一定間隔で並んだ多数の針状電極が配置された電極板を用いて、放電加工により、小径の穴の加工を行う技術が開示されている。
【特許文献1】特開平7−266142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高エネルギ束加工では、1つの孔をあけるのにかかる時間は短いが、加工時に発生する蒸発物質や熱の影響で孔形状が非常悪くなり、間隔を密にすることができない。フォトリソエッチングでは、多数の孔を同時にあけることができるが、エッチング時に基本的に金属は等方性にエッチングされるために板厚より小さな間隔で孔をあけることはできない。ドリルやパンチなどの機械的加工方法では、孔形状は垂直で孔間隔を密にすることができるが、同時に多数孔をあけることが困難で、大きな面積の密な多孔板を得るのにコストと時間が膨大なものになる。
【0005】
さらに高エネルギ束加工では、エネルギの入射面の開口が、出射面の開口よりも広がるラッパ状の孔形状になる。また、除去された物質が孔周辺に飛び散って、孔の形状を非常に悪くする。フォトリソエッチングでは、先にも記したように等方性エッチングされるために孔はテーパ状になる。上記に示した製作方法では、円筒状の孔をあけることはできなかった。
【0006】
このため、このような多孔板を製造するのには、放電加工により、プレートに孔あけを行うのが最も適当な方法であると考えられている。しかしながら、放電加工により、このような多孔板を製造するためには、微細な大きさの突起を多数有する放電電極を製造する必要がある。このような電極を、フライス盤や研削等の機械加工により製造することは困難である。すなわち、微細なエンドミルや砥石自体を作ることが困難であり、又、機械加工では加工抵抗が大きいため、微細な突起部が加工時に折れやすい。よって、高さの高い突起部を機械加工に製造することは、事実上不可能であると考えられていた。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、垂直形状の孔を細かな間隔で多数、容易に製造することができる多孔板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための第1の手段は、元となる多孔板を第1の加工電極として放電加工又は電解加工を行い、複数の柱状突起を持つ構造体を製造し、その後、この構造体を第2の加工電極として放電加工又は電解加工を行って薄板に孔を形成することを特徴とする多孔板の製造方法である。
【0009】
前記課題を解決するための第2の手段は、前記第1の手段であって、前記薄板に孔を形成する放電加工又は電解加工を2回以上実施し、2回目以降の放電加工又は電解加工においては、孔を形成する位置を、以前に孔が形成された位置と異ならせることを特徴とするものである。
【0010】
前記課題を解決するための第3の手段は、前記第2の手段を用いて前記薄板の一部にのみ孔を形成する工程を、放電加工又は電解加工の回数を変えて前記薄板の異なる部分に実施することにより、前記薄板の部分に応じて異なるピッチの孔を形成することを特徴とする多孔板の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本手段によれば、垂直形状の孔を細かな間隔で多数、容易に製造することができる多孔板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態の例を、図を用いて説明する。図1は、多孔板を第1の放電電極として金属ブロックに放電加工を行い、複数の柱状突起を持つ構造体を製造する様子を示す図である。
【0013】
元となる金属多孔板1としては、例えば0.3mm厚の金属薄板(チタン)に電子ビーム加工で直径0.1mmの孔を0.3mmピッチで等間隔に開けたものを用いる。これは、例えば、約108W/cmの強度の電子ビームを照射することによって得られる。電子ビーム加工では、0.3mmピッチが加工できる最小の間隔である。
【0014】
この金属多孔板1とチタンの金属ブロック2を放電加工機に設置し、金属多孔板1が加工電極となり、金属ブロック2が加工される側になるよう金属多孔板1にプラスの電位をかける。例えば、コンデンサ放電回路を用いて印可電圧220V、コンデンサ容量9000pFの条件で約16時間加工すると、チタン製の金属ブロック2の表面に円柱状突起3が得られる。この円柱状突起3は、直径約0.08mm、高さ0.4mmで、用いた金属多孔板1の孔4の配列を鏡像転写して金属ブロック2の表面に形成される。例えば、円柱状突起3の形成された金属ブロックの表面積が約200mmで、金属多孔板1の孔4の配列が60°の千鳥格子になっている場合、円柱状突起3の数は約2500本である。
【0015】
図2に、この円柱状突起3が表面に形成された金属ブロック2を第2の加工電極とし、新たなチタン製の金属薄板5を加工される側として放電加工機に設置し、加工する様子を示す。例えば、コンデンサ放電回路を用いて印可電圧150V、コンデンサ容量4000pFの条件で約5時間放電加工すると、チタン製の金属薄板5に、金属ブロック2の表面に形成された円柱状突起3の配列を鏡像転写して孔6が形成される。この孔6は、直径約0.1mmで、金属薄板5の厚みは約0.1mmである。これによって、金属薄板5は0.3mmピッチで直径0.1mmの孔が200mmにわたって約2500個開いた多孔板に加工される。これを最終目的製品として使用することもできる。
【0016】
さらに加工を続ける場合には、続けて、表面に円柱状突起3の形成された第2の加工電極である金属ブロック2を水平に0.15mm移動させて金属薄板5に同様の条件で孔あけ加工する。こうすることによって加工電極の円柱状突起3のピッチよりも小さなピッチで孔を形成することができる。
【0017】
図3に示すように、60°千鳥格子状の孔を形成する場合、最初の孔あけ加工に対して位置をずらしながら、3回孔あけ加工を繰り返すと、加工電極の円柱状突起3のピッチの半分になる0.15mmピッチの孔が形成された多孔板を得ることができる。
【0018】
なお、元となる金属多孔板1の製造方法は、電子ビーム加工によるものとしたが、レーザによる加工でもよい。また、円柱状突起3の形成された金属ブロック2の製作や、金属薄板5に孔あけする工程で用いられる放電加工は、電解加工で実施しても同じ効果が得られる。また、60°千鳥格子の配列の例を示したが、角千鳥格子やその他の配列でも、第2の加工電極を適当に移動させることにより対応することができる。
【0019】
さらに、金属ブロック2の表面に形成する柱状突起は断面を円形とする円柱として説明したが、四角柱や三角柱でも構わない。この場合、金属表面を切り込みによって、製作することも可能である。例えば切削によって、0.1mmの幅で表面から0.1mmの深さで切り込みを入れる。この溝を0.3mmステップで10本、さらにこの溝に垂直に10本切り込みを入れると100本の角柱が立つ。このように切削によっても柱状突起表面に作製することは可能である。
【0020】
また、図4に示すように小さな加工電極を用いて孔あけ回数を領域によって変化させて孔数の粗密を分布させることも可能である。
【0021】
なお、本発明の方法により製造される多孔板は、液浸露光装置に使用されるばかりでなく、医療用メンブレンフィルタ等として使用されるばかりでなく、塗料製造、食品製造時の濾過フィルタ等にも使用され、その用途は限定されない。又、本発明の方法により製造される複数の突起を有する構造体は、放電電極以外の用途にも使用することができ、その用途は限定されない。食品製造装置に使用される多孔板は、液体に溶けないものであることが望ましく、例えばチタンにより製造することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】多孔板を第1の放電電極として金属ブロックに放電加工を行い、複数の柱状突起を持つ構造体を製造する様子を示す図である。
【図2】複数の円柱状突起を持つ構造体を加工電極とし、新たな金属薄板を放電加工する様子を示す図である。
【図3】60°千鳥格子状の孔を形成する方法を説明するための図である。
【図4】小さな加工電極を用いて孔あけ回数を領域によって変化させて孔数の粗密を分布させる様子を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1…金属多孔板、2…金属ブロック、3…円柱状突起、4…孔、5…金属薄板、6…孔
【出願人】 【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
【出願日】 平成18年12月12日(2006.12.12)
【代理人】 【識別番号】110000246
【氏名又は名称】特許業務法人オカダ・フシミ・ヒラノ


【公開番号】 特開2008−142850(P2008−142850A)
【公開日】 平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願番号】 特願2006−334220(P2006−334220)