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【発明の名称】 複数の突起を有する構造体の製造方法、及び多孔板の製造方法
【発明者】 【氏名】田尻 昌志

【氏名】宇田川 賢司

【氏名】中村 潤二

【要約】 【課題】複数の突起を有する構造体を容易に製造する方法を提供する。

【解決手段】平行なスリット1aを複数有するプレート1と、平行なスリット2aを複数有するプレート2)を重ね合わせて固定し、放電電極とする。プレート1aとプレート2aを、90°回転させて重ね合わせ、固定することにより、図1に示すように、正方形の貫通孔が規則正しく配列された重ね合わせプレートが形成される。これを放電電極として使用し、被加工材である板材を放電加工すれば、先端部(例えば高さ0.5〜1mm)が直方体となった(放電の影響により角が丸くなったもの)複数の柱状体(突起部)が形成された構造体が形成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の平行なスリットを有するプレートを複数枚、それぞれある角度回転させて、全ての前記プレートを貫通する複数の孔が形成されるように重ね合わせて固定した放電電極を形成し、この放電電極を使用して放電加工を行う工程を有することを特徴とする、複数の突起を有する構造体の製造方法。
【請求項2】
複数の平行なプレートを、間隔を開けて固定することにより、複数の平行なスリットを有するプレートと等価な部材を形成し、この部材をそれぞれある角度回転させて、全ての前記部材を貫通する複数の孔が形成されるように重ね合わせて固定した放電電極を形成し、この放電電極を使用して放電加工を行う工程を有することを特徴とする、複数の突起を有する構造体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の複数の突起を有する構造体の製造方法を使用して製造された複数の突起を有する構造体を、放電加工用の電極として使用して、平板に対して放電加工を行う工程を有することを特徴とする多孔板の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の突起を有する構造体の製造方法、及び多孔板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療用のメンブレンフィルタ等に用いる多孔板には、強度や化学汚染が少ないことから、金属薄板が適している。金属薄板に密に微細な孔を開ける手段として電子ビーム、レーザなどの高エネルギ束加工によるもの、フォトリソエッチングによるもの、ドリルやパンチのような機械的加工のようなものがある。
【0003】
例えば、特開平8−47819号公報には、多数の貫通孔を、放電加工により一度に形成するための技術が記載されている。
【特許文献1】特開平8−47819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高エネルギ束加工では、1つの孔をあけるのにかかる時間は短いが、加工時に発生する蒸発物質や熱の影響で孔形状が非常悪くなり、間隔を密に詰めることができない。フォトリソエッチングでは、多数の孔を同時にあけることができるが、エッチング時に基本的に金属は等方性にエッチングされるために板厚より小さな間隔で孔をあけることはできない。ドリルやパンチなどの機械的加工方法では、孔形状は垂直で孔間隔を小さくすることができるが、同時に多数孔をあけることが困難で、大きな面積の密な多孔板を得るのにコストと時間が膨大なものになる。
【0005】
さらに高エネルギ束加工では、エネルギの入射面の開口が、出射面の開口よりも広がるラッパ状の孔形状になる。また、除去された物質が孔周辺に飛び散って、孔の形状を非常に悪くする。フォトリソエッチングでは、先にも記したように等方性エッチングされるために孔はテーパ状になる。上記に示した製作方法では、円筒状の孔をあけることはできなかった。
【0006】
このため、このような多孔板を製造するのには、放電加工により、プレートに孔あけを行うのが最も適当な方法であると考えられている。しかしながら、放電加工により、このような多孔板を製造するためには、微細な大きさの突起を多数有する放電電極を製造する必要がある。このような電極を、フライス盤や研削等の機械加工により製造することは困難である。すなわち、微細なエンドミルや砥石自体を作ることが困難であり、又、機械加工では加工抵抗が大きいため、微細な突起部が加工時に折れやすい。よって、高さの高い突起部を機械加工に製造することは、事実上不可能であると考えられていた。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、複数の突起を有する構造体を容易に製造する方法、及びこの構造体を用いた多孔板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための第1の手段は、複数の平行なスリットを有するプレートを複数枚、それぞれある角度回転させて、全ての前記プレートを貫通する複数の孔が形成されるように重ね合わせて固定した放電電極を形成し、この放電電極を使用して放電加工を行う工程を有することを特徴とする、複数の突起を有する構造体の製造方法である。
【0009】
前記課題を解決するための第2の手段は、複数の平行なプレートを、間隔を開けて固定することにより、複数の平行なスリットを有するプレートと等価な部材を形成し、この部材をそれぞれある角度回転させて、全ての前記部材を貫通する複数の孔が形成されるように重ね合わせて固定した放電電極を形成し、この放電電極を使用して放電加工を行う工程を有することを特徴とする、複数の突起を有する構造体の製造方法である。
【0010】
前記課題を解決するための第3の手段は、前記第1の手段又は第2の手段の複数の突起を有する構造体の製造方法を使用して製造された複数の突起を有する構造体を、放電加工用の電極として使用して、平板に対して放電加工を行う工程を有することを特徴とする多孔板の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の突起を有する構造体を容易に製造する方法、及びこの構造体を用いた多孔板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態の例を、図を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態の第1の例である複数の突起を有する構造体の製造方法に使用するための第1の放電電極を、放電加工により製造する際に使用する第2の放電電極の概要を示す図である。平行なスリット1aを複数有するプレート1(例えば厚さ50μm)と、平行なスリット2aを複数有するプレート2(例えば厚さ50μm)を重ね合わせて固定し、第2の放電電極とする。図1の例の場合は、各スリット1aの幅(例えば80μm)は同一であり、各スリット2aの幅も同一であって、かつスリット1aの幅とスリット2aの幅も同一である。又、スリット1aの間隔は、スリット1aの幅と同一であり、スリット2aの間隔はスリット2aの幅と同一である。
【0013】
プレート1aとプレート2aを、90°回転させて重ね合わせ、固定することにより、図1に示すように、正方形の貫通孔が規則正しく配列された重ね合わせプレートが形成される。
【0014】
これを第2の放電電極として使用し、被加工材である板材を放電加工すれば、先端部(例えば高さ0.5〜1mm)が直方体となった(放電の影響により角が丸くなったもの)複数の柱状体(突起部)が形成された構造体が形成される。なお、図1の場合、前述のスリットの寸法の条件により、先端部の直方体の断面形状は、角の丸くなった部分を除けば略正方形(例えば50μm×50μm)であり、かつ、左右に等間隔(例えば50μm間隔)で配列されたものとなる。しかし、スリット1aの幅と、スリット2aの幅を変えたり、スリット1a、2aの間隔を変えたりすることにより、突起部の先端部の断面形状を略長方形としたり、配列の間隔を変えたりすることができる。又、プレート1aとプレート2bとの角度を変えれば、突起部の先端部の断面形状を略菱形や略平行四辺形とすることができる。
【0015】
図2は、本発明の実施の形態の第2の例である複数の突起を有する構造体の製造方法に使用するための第1の放電電極を、放電加工により製造する際に使用する第2の放電電極の概要を示す図である。平行なスリット1aを複数有するプレート1と、平行なスリット2aを複数有するプレート2と、平行なスリット3aを複数有するプレート3とを重ね合わせて固定し、第2の放電電極とする。図2の例の場合は、各スリット1aの幅は同一であり、各スリット2aの幅も、各スリット3aの幅も同一であって、かつスリット1aの幅とスリット2aの幅とスリット3aも同一である。又、スリット1aの間隔は、スリット1aの幅と同一であり、スリット2aの間隔はスリット2aの幅と同一であり、スリット3aの間隔はスリット3aの幅と同一である。
【0016】
プレート1と、プレート2、プレート3を、60°回転させて重ね合わせ、固定することにより、図2に示すように、正三角形の貫通孔が規則正しく配列された重ね合わせプレートが形成されるようにする。
【0017】
これを第2の放電電極として使用し、被加工材である板材を放電加工すれば、先端部が正三角形となった(放電の影響により角が丸くなったもの)複数の柱状体(突起部)が形成された構造体が形成される。
【0018】
図3は、本発明の実施の形態の第3の例である複数の突起を有する構造体の製造方法に使用するための第1の放電電極を、放電加工により製造する際に使用する第2の放電電極の概要を示す図である。平行なスリット1aを複数有するプレート1と、平行なスリット2aを複数有するプレート2と、平行なスリット3aを複数有するプレート3とを重ね合わせて固定し、第2の放電電極とする。図3の例の場合は、各スリット1aの幅は同一であり、各スリット2aの幅も、各スリット3aの幅も同一であって、かつスリット1aの幅とスリット2aの幅とスリット3aも同一である。又、スリット1aの間隔は、スリット1aの幅と同一であり、スリット2aの間隔はスリット2aの幅と同一であり、スリット3aの間隔はスリット3aの幅と同一である。
【0019】
プレート1と、プレート2、プレート3を、60°回転させて重ね合わせ、固定することにより、図3に示すように、正六角形の貫通孔が規則正しく配列された重ね合わせプレートが形成されるようにする。
【0020】
これを第2の放電電極として使用し、被加工材である板材を放電加工すれば、先端部が正六角形となった(放電の影響により角が丸くなったもの)複数の柱状対(突起部)が形成された構造体が形成される。
【0021】
図4は、本発明の実施の形態の第4の例である複数の突起を有する構造体の製造方法に使用するための第1の放電電極を、放電加工により製造する際に使用する第2の放電電極の概要を示す図である。
【0022】
この例においては、平行なプレート4a〜4eを、平行に固定部材6によって固定し、図1におけるプレート1と同等の部材を作成する。同様、平行なプレート5a〜5eを、平行に固定部材6によって固定し、図1におけるプレート2と同等の部材を作成する。そして、これらの部材を、それぞれ、図1におけるプレート1、プレート2と同様に使用して第2の放電電極を構成する。この放電電極の作用効果は、図1に示したものと全く同じである。同様、これらの部材の個数と重ね合わせ方法を変えれば、図2に示す放電電極、図3に示す放電電極と全く同じ作用効果を奏する放電電極が形成できる。
【0023】
図1〜図4に示すような第2の放電電極を使用して形成された、複数の突起部(柱状体)を有する構造体を第1の放電電極として使用して、多孔板を形成する方法は、従来から公知のものであるので、その図示と説明を省略する。
【0024】
なお、本発明の方法により製造される多孔板は、医療用メンブレンフィルタ等として使用されるばかりでなく、塗料製造、食品製造時の濾過フィルタ等にも使用され、その用途は限定されない。又、本発明の方法により製造される複数の突起を有する構造体は、放電電極以外の用途にも使用することができ、その用途は限定されない。食品製造に使用される多孔板は、液体に溶けないものであることが望ましく、例えばチタンにより製造することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態の第1の例である複数の突起を有する構造体の製造方法に使用するための第1の放電電極を、放電加工により製造する際に使用する第2の放電電極の概要を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態の第2の例である複数の突起を有する構造体の製造方法に使用するための第1の放電電極を、放電加工により製造する際に使用する第2の放電電極の概要を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態の第3の例である複数の突起を有する構造体の製造方法に使用するための第1の放電電極を、放電加工により製造する際に使用する第2の放電電極の概要を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態の第3の例である複数の突起を有する構造体の製造方法に使用するための第1の放電電極を、放電加工により製造する際に使用する第2の放電電極の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1…プレート、1a…スリット、2…プレート、2a…スリット、3…プレート、3a…スリット、4a〜4e…プレート、5a〜5e…プレート、6…固定部材
【出願人】 【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
【出願日】 平成18年12月12日(2006.12.12)
【代理人】 【識別番号】110000246
【氏名又は名称】特許業務法人オカダ・フシミ・ヒラノ


【公開番号】 特開2008−142849(P2008−142849A)
【公開日】 平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願番号】 特願2006−334215(P2006−334215)