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【発明の名称】 放電加工のための方法及び装置
【発明者】 【氏名】マルコ ボッカドーロ

【氏名】ステファーノ ボニーニ

【要約】 【課題】一連の加工パルスによってワークピースを加工する放電加工(EDM)におけるプロセスの悪化をより確実に検出する。

【解決手段】加工時間の間、加工パルスはワークピースと電極との間の加工ギャップに適用され、加工ギャップに適用された電流加工パルスの電気パラメータが感知されて、これから少なくとも1つの固有値が得られる。これは基準値と比較され、比較の結果に応じて措置が開始される。基準値は少なくとも1つ先の加工パルスに基づいて得られる。加工時間は、適用された加工パルスから基準値が得られる感知区間と、適用された加工パルスからいかなる基準値も得られない加工区間とに時間的に分割される。感知区間は、前記加工ギャップでの電極のジャンプ動作の実行後の第1の加工区間および/または伸びた休止時間を有する加工パルスの適用後の第2の加工区間を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一連の加工パルスによってワークピースを放電加工し、加工時間中前記加工パルスは前記ワークピースと電極との間の加工ギャップに適用され、加工ギャップに適用された電流加工パルスの電気パラメータが感知され、該電気パラメータから少なくとも1つの固有値が得られ、基準値と比較され、比較結果に応じて措置が開始され、前記基準値が少なくとも1つ先の加工パルスに基づいて得られる放電加工方法において、
前記加工時間は、適用された加工パルスから基準値が得られる感知区間と、適用された加工パルスからいかなる基準値も得られない加工区間とに時間的に分割され、前記感知区間は、前記加工ギャップでの前記電極のジャンプ動作の実行後の第1の感知区間および/または伸びた休止時間を有する加工パルスの適用後の第2の感知区間を含むことを特徴とする放電加工方法。
【請求項2】
前記第1の感知区間は、予め決められた第1の待ち時間(T1)および/または第1の時間間隔(T2)のためのジャンプ動作の実行後の加工パルスの最初の放電後に、開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
予め決められた前記第1の待ち時間(T1)および/または前記第1の時間間隔(T2)中に前記加工パルス間の前記休止時間が伸ばされる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第2の時間間隔(T2)のための伸びた休止時間を有する加工パルスの適用後の予め決められた第2の時間間隔(T2)後に、第2の感知区間が開始される、先の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記感知区間の間に各加工パルスの特性パラメータが得られて保存され、保存された関連する当該特性パラメータ特性から得られた基準値は、引き続く前記加工区間の間に実質的に変化しない状態で使用される、先の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記加工パルスの固有値は、燃焼電圧(Ue)、該燃焼電圧(Ue)の高周波成分、待機電圧から前記燃焼電圧(Ue)への下降時間(tbd)、休止電圧(U)および/または予め決められた時間間隔中に実際に生じる放電の数および継続時間を含む、先の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記感知区間の間に、プロセスの悪化を監視する安全措置が減少または無効にされる、先の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記感知区間の間に、前記固有値が得られて保存され、前記感知区間で最も頻繁に生じる値が引き続く前記加工区間のための基準値として使用される、先の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記基準値は、加工要件の狭い範囲で適応される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの固有値がその対応する基準値を逸脱すると、電流加工パルス電流は、直ちに無効にされる、先の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記休止電圧(U)、実際のパルス周波数または放電の数および継続時間が固有値として得られ、前記関連した基準値からの逸脱が感知されると、ジャンプ動作が実行される、先の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記休止電圧(U)、実際のパルス周波数または放電の数および継続時間が固有値として得られ、前記関連した基準値からの逸脱が感知されると、予め決められた第3の時間間隔中の加工パルス間の前記休止時間は伸びる、先の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
一連の加工パルスによってワークピースを放電加工(EDM)するため装置であって、加工パする発生器は、
加工時間中、加工パルスをワークピースと電極との間の加工ギャップに適用し、
前記加工ギャップに適用された電流加工パルスの電気パラメータを感知し、
少なくとも1つの固有値を得て、
該固有値を基準値に比較し、
比較結果に応じた措置を開始し、
前記基準値は少なくとも1つ先の加工パルスに基づいて得られるように形成されており、
さらに前記パルス発生器は、
加工時間を、適用された加工パルスから基準値が得られる感知区間と、適用された加工パルスから如何なる基準値も得られない加工区間とに分割し、前記感知区間は、前記加工ギャップでの電極のジャンプ動作の実行後の第1の加工区間および/または伸びた休止時間を有する加工パルスの適用後の第2の加工区間を含むことを特徴とする、放電加工機。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、放電加工(EDM)のための方法および装置に関し、より詳細には、そのようなEDMがEDMシステムの生産性を高めるような加工パルスを生成する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
EDMでは、一連の加工パルスがワークピースと電極との間の加工ギャップに適用される。プロセスを監視するために、前記加工ギャップを横切る電圧および電流のプロファイルが時間の経過に伴って感知される。前記加工ギャップに適用された加工パルスのその時のパルス電圧プロファイルから、イグニション電圧、燃焼(burning)電圧、イグニション遅延時間、燃焼電圧へのイグニション電圧の下降時間、燃焼電圧の高周波成分等のような固有値が得られる。これらの値は、プロセスにおける如何なる悪化をも露呈させるために、対応する基準値と比較される。その結果に応じて、そのようなプロセスの悪化を抑制すべく、前記電流加工パルスの中断、ジャンプ動作、前記加工パルス間の休止時間の増大のような措置がとられる。
【0003】
黒鉛電極の利用の拡大は、特に、加工費の削減とプロセスの迅速化を可能とするが、その反面、加工速度および電極消耗のいずれをも犠牲にすることなくプロセスの悪化が生じない絶対の保証を得るために、プロセスの監視にアークすなわち放電に対するより高い感受性を必要とする。
【0004】
上に説明したような手順での問題は、基準値を定めることにある。適用の豊富さと、用途に応じた加工パルスの電流および電圧の範囲とが広いことから、感知誤差に応じて基準値を変える必要があるので、一般的なしきい値を決めることは不可能である。すなわち、加工ギャップのパルス電圧を正確に感知することは不可能であり、感知されたパルス電圧に誤差が加算されるので、結果として感知電圧は偽造されてしまう。したがって、例えば、確実に少なくとも1Vの分解能を必要としているパルス電圧を感知する40Aの放電電流のための40mm長さのリブ付き電極のインピーダンスによる電圧降下は、約3から4Vである。前記基準値は、加工優先度、材料の組合せ、発生器の設定パラメータなどの機能である。さらに、加工の経過における加工条件の変化は、微視的および巨視的な幾何的変化と洗浄状態の変化とにより、基準値に変更を求める。これが、加工の全期間にわたって適用可能な予め決められた一定の基準値で良好な結果を達成することが難しい理由である。
【0005】
一般的なSI 20253Aから、加工時間全体にわたって各加工パルスに基準値を適応させることが知られている。しかし、ここでの欠点は、加工ギャップでの加工条件の悪化に伴い、また、基準値がプロセス端で悪化する傾向があり、その結果、端でのプロセスの悪化を確実に検出できないことである。
【0006】
【特許文献1】独国特許第36 40 987号明細書
【特許文献2】独国特許第36 44 952号明細書
【特許文献3】欧州特許第 0 252 239号明細書
【特許文献4】スイス特許第650 433号明細書
【非特許文献1】BEHRENS、「放電加工のアーク検出(Arc detection in Electro-Discharge Machining)」第13回ISEM会報、第1巻、第125〜140頁
【非特許文献2】D.Dauw、「放電加工のオンライン同定と最適化(On-line identification and optimization of electro-discharge machining)」、KUL Leuven、1985年、第3−48頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、EDMにおけるプロセスの悪化をより確実に検出することを目的とする。
【0008】
本発明は独立の請求項1および13の主題によってこの目的を達成する。好適な実施例は、各従属の請求項に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このように、基準値が実際の「理想的な」加工パルスだけから得られるのは、一般的な方法および一般的な装置に有利である。そのようなパルスは、浸食、摩耗およびプロセスの安全性について最も良好な結果を表す。そのような理想的な加工パルスは、加工ギャップの最適な導電率がプロセスに有利に作用するので、おそらくジャンプ動作の後に生じ、また2つの加工パルス間のより長い休止時間の後にも生じる。すなわち、本発明は、ジャンプ動作および/または伸びた休止時間の後など、そのような「理想的な」加工パルスがよりしばしば生じる感知区間の間でのみ、基準値を感知することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の好適な実施例がここに添付の図面に関して詳述されるであろう。
【0011】
図1を参照するに、本発明に係る形彫り放電加工機の配置を示す構成図が示されている。形彫り放電加工機は、1つ以上のドライブモジュール(Drive)と、数値制御装置(HW IPO)と、加工パルス発生器とを含み、該加工パルス発生器は発生器モジュール(Gen)、コントローラ(Contr.)、発生器制御モジュール(Gen control)、ギャップ制御モジュール(Gap control)およびギャップ感知モジュール(Gap acq)を含む。機械的構成要素や誘電組立体等のような、前記形彫り放電加工機の残りの要素は、ブロック(Mach)として集められている。
【0012】
前記コントローラ(Contr.)は、工業用PCおよび/またはマイクロコントローラとすることができる。前記3つのモジュールは、再構築可能のゲートアレイ(FPGA)で実現することができ、また単一または複合FPGAで置換することができる。前記数値制御装置は、極めて動的な補間回路であり、その具体的な構成は、独国特許第36 40 987号および独国特許第36 44 952号の各明細書中に詳細に記載されており、そこでの開示事項は、引用によって本明細書に含められている。補間回路の設定値は、通常、X、Y、ZおよびCの各軸(可能なさらなる軸)を制御するために前記ドライブモジュールに供給される。
【0013】
前記発生器制御モジュール(Gen control)はパルス列を生成し、該パルス列は前記発生器(Gen)によって電流パルスに変換される。図7に、より詳細が示された前記ギャップ制御モジュール(Gap Control)は、プロセスの悪化を除去しあるいは回避するために、安全の監視を実行する。より詳細が図6に示された前記ギャップ感知モジュール(Gap Acq)は、ギャップ電圧とギャップ電流とを感知する。マイクロコントローラ50は、前記ギャップ感知モジュール、前記ギャップ制御モジュール、前記発生器制御モジュールおよびハードウエハ補間回路のいくつかの機能を処理する。本発明のより良い理解のために、前記モジュールに関連する回路のみが図面に示されており、すなわち、パルス電圧の計数回路のような関連が低い回路は省略されている。
【0014】
本発明による方法および装置は、図1中の破線によって示された領域と関連している。
【0015】
次に、図2aを参照するに、そこで、理想的な浸食パルスの電圧プロファイルが、陽極に分極された加工電極を備える形彫り放電加工機における時間関数として図示されており、以下の点で特徴付けられる。
− 前記パルスの始まりで、待機電圧Uiが達成され、最小の時間(イグニション遅延時間t)、維持され(10)、
− イグニション後、待機電圧Uiは緩やかに燃焼電圧Ueに低下し(11)、
− 燃焼電圧Ue(12)は、あまり低くなく、高周波成分から成り、
− 燃焼電圧の下降時間tbdは、急勾配ではなく(すなわち、燃焼電圧はあまりに迅速に低下してはならない)、
− 休止時間で電圧U(13)はあまり低くない。
【0016】
そのような理想的なパルスを逸脱している加工パルスは、いわゆる悪化したパルスであり、従って、プロセスの悪化を示す。そのような逸脱した加工パルスを検出するために、加工パルスの固有値(尺度)が調査される。プロセスの悪化から効果的に形彫り放電加工を保護するために、さまざまなそのような尺度が知られている。第13回ISEMの会報の第1巻、第125頁から140頁の「放電加工のアーク検出」で、ベーレンス(BEHRENS)は、図2b−2fに示されているように最も多く使用されるような尺度を説明する。
− イグニション遅延時間があまりにも短い(特に、その放電列に関して)(図2b)、
− 放電でのパルス電圧の傾斜が急勾配にすぎ、すなわち待機電圧Uiから燃焼電圧Ueまでの下降時間tbdが短すぎる(図2c)、
− 待機電圧Uiは達成されず(図2d)、
− 燃焼電圧Ueの高周波成分が欠けており(図2e)、また
− 燃焼電圧Ueは低すぎる(図2f)。
【0017】
この尺度からそのような悪化したパルスが検出されたとき、望ましくは以下の是正措置の少なくとも1つが実施される。
− 関連するパルスは中断される(図3参照)、
− ジャンプ動作が引き起こされる(例えば、欧州特許第 0 252 239号参照、その開示事項は引用によって本願に含められる)、
− 加工パルス間の休止時間は増大する(例えば、欧州特許第 0 252 239号参照)。
【0018】
上記のリストは完全でなく、例えば従来技術として知られる是正措置は、サーボ設定値を適応させるか、他のパラメータ適応を作ることであり、現下に説明するように、本発明の範囲に同様に含めることができる。
【0019】
したがって、感知された値が、基準値を達成しなければ、是正措置が実施される。前記パルスの1つ以上の特徴が、理想的なパルスのそれらと一致しないならば、プロセス生産性を高く維持するために複数の措置がとられる。
【0020】
そのような措置は、図3に例示するように、パルスを遮蔽すなわちマスキングすることを含むことができる。前記例は、その燃焼電圧Ueが低すぎる加工パルスを示し、そのために、加工電流Ieができる限り早期に停止される。
【0021】
加工の間、浸食した破砕物を加工ギャップから取り除くために、加工電極を周期的にジャンプ動作させることは有利であり、加工電極には、設定された距離だけワークピースから迅速に移動し、それから直ちに前記加工ギャップに戻ることが要求される。図4は、ジャンプ動作後の加工のための時間の関数として前記加工電極の送り込みV(x、z、y、c)を示す。ジャンプ動作は、前記送り込み動作の急勾配な線分時間の間に図4に示されるような送り込みプロファイルの始まりで生じる。図4は、その下部に放電パルス列を示し、ジャンプ動作の間には放電が生じないことを示す。この後、送り込みV(x、y、z、c)は放電加工の過程でまさにゆっくり変化する。ジャンプ動作後、予め決められた時間T1の間に放電プロセスは安定し、それから時間T2の間(好ましくは100から2000放電パルス長さ、特に好ましくは時間T1より長い間)に、多数の加工パルスの固有値は、伸びた休止時間と同様に、その時に感知される。したがって、火花ギャップの安定状態を達成するために、時間T1は過渡サイクルとして作用する。ジャンプ動作後、火花ギャップは非常にクリーンであり、2、3の放電(過渡サイクル)後に、プロセスの最適な効率のための理想的な条件が存在する。これは、多数の加工パルスの固有値を感知するための時間での理想点である。少しの「悪い」加工パルスは破棄され、良好な前記パルスの感知された固有値が基準値として保存される。その後の、そのような検出がなされない時間区間で、これらの基準値は実質的に不変に維持される(変化しても、放電要求事項の変化に適用して僅かに過ぎない)。
【0022】
感知フェーズすなわち感知区間は、ジャンプ動作(T1)の好ましくは50から200ミリ秒後および/またはジャンプ運動に続く最初の放電と共に始まり、好ましくは50から100ミリ秒(T2)、継続する。それは、ジャンプ動作の頻度および関連する加工のタイプに応じて、ジャンプ動作毎またはそれより少ない頻度で、ジャンプ動作後に実施することができる。
【0023】
図5に示されているように、加工でジャンプ動作が許されない場合、感知前および感知中の前記パルスは、より長い休止時間で隔てられている。図5は、ジャンプ動作なしで加工するための時間関数として、同様な加工電極の送り込みV(x、z、y、c)を示し、また図5は、その下部に、前記した加工電極の送り込みV(x、z、y、c)で生じる放電パルス列を示す。前記ギャップに理想的な導電率を達成するため、より長い間かかるので、この場合の時間T1およびT2は、より長くなり、加工電極のデザインによって、T1は数秒続くかもしれない。T2は、100から2000パルスを感知するに十分な長さを有する。時間T1は、前記ギャップの導電率が予め決められたしきい値よりも小さくなるまで待つことによって、最適化することができた。導電率は、休止時間Uでの電圧を感知することにより得られる(例えばスイス特許第650 433号、ワシリエフ、オットー、レビット、1981年、参照)。
【0024】
感知の間、安全の監視が使用不可にされるか、または感知に影響を及ぼさないように低減される。
【0025】
次に、図6を参照するに、ギャップ感知モジュールの実施例が示されており、該感知モジュールは、以下の4つの固有値を感知するように、個々の加工パルスのための加工ギャップを横切るパルス電圧を求め、それらをマイクロコントローラ(Contr.)に保存する。
− 燃焼電圧Ue
− 前記燃焼電圧Ueの高周波成分
− 下降時間tbd、および
− 休止電圧U
【0026】
本装置は、また、ある時間間隔内の理論上可能な放電数、実際の放電の数および継続時間を合計する。
【0027】
この目的のために、前記ギャップ感知モジュールが前記加工ギャップで感知され計測されたパルス電圧20を3つの比較器21、22、23でしきい値電圧L1、L2、L3とそれぞれ比較する。パルス電圧20がL1およびL2より下がると、比較器21および22は、それぞれパルス37および38を生じる。これらのパルス37および38は、RSフリップフロップ24を動作させ、該RSフリップフロップは下降時間tbdを表す信号26を生成する。この信号26は、マイクロコントローラ50(図1のContr.)に供給され、この目的のために例えばInfineon社製のXC167マイクロコントローラが使われている。このXC167の特徴は、種々の「比較」入力にあり、該入力のパルス幅が、前記コントローラ50内で前記信号26の継続時間を保存(または除去)するように合計される。比較器23は、しきい値L3との比較から、加工パルスの間に起こった放電を表す信号を供給する。この信号は、信号OCPと共に、論理積ゲート25に供給される。信号OCPは、加工パルス中は高く、休止時間中は低い。論理積ゲート25の出力信号32のハイレベルは、燃焼電圧Ueの時間中アナログスイッチ27を閉じ、これによりローパスフィルタ29を計測された前記パルス電圧に接続する。ローパスフィルタ29は、パルスの燃焼電圧Ueを表す信号33の値を滑らかにし、マイクロコントローラ50で捕獲されるまでこの値を安定して維持する。
【0028】
ハイレベルの出力信号32は、同様にアナログスイッチ28を閉じ、これにより燃焼電圧Ueの高周波成分を通過させるために、ハイパスフィルタ30を計測された前記パルス電圧に接続する。ハイパスフィルタ30には、ローパスフィルタ37が直列に接続されており、該ローパスフィルタは前記燃焼電圧の高周波成分の値を維持する作用をなし、すなわち信号34はその捕獲まで安定する。
【0029】
信号OCPに相補的な信号OCPNは、前記休止時間の間、アナログスイッチ35を閉じ、したがって、この時間区間に前記加工ギャップで感知された前記電圧、すなわち前記加工ギャップの前記導電率についての情報が前記コントローラ50に供給される。ローパスフィルタ31は、同様に、信号36の捕獲の間、該信号を安定させる作用をなす。前記休止時間の間に、抵抗を含む低い(例えば20Vの)低電圧源が加工ギャップに切り換えられ、その電圧はギャップの導電率を表す機能に変わる。この方法は従来技術であるから、それはここでは詳述しない。
【0030】
コントローラ50に含まれる各アナログ/デジタル変換器(例えば、XC167は、10ビットの分解能および2.85マイクロ秒の変換時間を有する16個のアナログ/デジタル変換器を特徴とする)は、安定して維持された対応する出力信号33、34および36をさらなる処理のためにデジタル信号に変換する。
【0031】
感知フェーズの間、マイクロコントローラ50は、各加工パルスの関連した特徴を保存する。前記信号OCPおよび信号32が、マイクロコントローラ50により、リアルタイムで捕獲され、一方で、ある時間内(信号OCP)で理論的に放電可能な数を合計し、この時間内に実際に存在していた放電(信号32)の数および継続時間を合計するために、使用される。これらの信号OCPおよび32は、コントローラ50に含まれている対応するカウンタによってカウントされる。
【0032】
コントローラ50に同様に含まれているタイミングセンサGPT1は、信号32から放電時間すなわち前記パルス電流の継続時間を計算し、その間に前記電圧Ueおよび電流Ieが同時に前記火花ギャップに適用され、すなわちワークピース材料の除去に比例するエネルギーue * ie * teと等しい時間で電力ue * ie が合計されるように、適用される。Ie(電流源)および燃焼電圧Ue(材料の組合せで決まる)が一定なので、放電時間を感知することにより、ワークピース材料の除去の推定が可能となる。
【0033】
加工パルス数が統合された各パルスの放電時間に、加工パラメータに起因する係数を乗じると、材料の総除去量が得られる。(感知フェーズの間の)理想的な状態にある間の時間の単位あたりのパルスの数は、さらに加工の品質のための尺度である。この時間間隔すなわち時間区間において実際に生じている放電数が少なすぎると、これは非常に難しい加工状態であることの指標であり、ギャップ間隔制御がプロセスの良好な効率を保証することができない。これは回路の開閉に関係する。この場合には、マイクロコントローラ50は、例えばHW IPOモジュールによって、ジャンプ動作を引き起こすであろう。
【0034】
これらの値を比較することにより、プロセスがどの程度効率的であるかについて重要な情報を得ることができる。マイクロマシーニングにおいて通常のように負電極および非常に短いパルス(1マイクロ秒以下)での加工時、時間間隔における実際の放電数はプロセス効率の尺度である。非常に短いパルス持続時間の感知では、普通であれば、高い信頼性は得られない。実際のパルス周波数は、またジャンプ動作の引き起こしに優先させて用いられる。実際のパルス周波数は単位時間あたりに起こる実際の放電の数と等しいので、実際のパルス周波数が感知フェーズの間で低下すると、安全値が低下し、フラッシュ(洗浄)動作が同様に始まる。
【0035】
上述したように、例えば、摩耗と下降時間tbdとの相互関係は線形ではなく、平均化することは重要な情報をフィルタリングで除去してしまうであろう。(D.Dauwによる「放電加工のオンライン同定と最適化」、論文KUL Leuven、1985年、3−48頁、参照)。また、燃焼電圧Ueとアーク放電のリスクとの相互関係は非線形であり、30Vから29Vへの燃焼電圧の降下は24Vから23Vへの電圧の変化と同じ意味を有さず、後者の場合に、アーク放電のリスクは非常に高いが、前者では、そうではない。
【0036】
非線形な相関をフィルタリングで取り除かないために、感知フェーズの終端で保存された値は、できれば統計的分布の方法によって分類するか、別の方法で表現され、マイクロコントローラ50は、主として生じる値を基準値と認定する。例として、以下の表は、100の加工パルスが適用され、83個の放電が生じた場合を示し、感知された燃焼電圧Ueの値はその表のとおり分布する。


【0037】
この場合に、マイクロコントローラ50は、燃焼電圧のための基準値として21Vを選ぶであろう。他の統計的手法は、この場合、一方では、パルスの関連した特性を有するグループと、他方では、その外れ値とに識別するのに用いることができる。感知されたすべての値が非線形特性を有することから、単に平均するよりも、この方法が優先される。
【0038】
イグニション遅延時間t、前記パルス電圧およびパルス電流などのさらなる特徴を同様に抽出し、保存することができる。
【0039】
このようにして計算された基準値を適合させることができ、例えば、機械加工の優先度で電極の摩耗を最小にしているとき、統計的分布の上記の方法によって定められるような燃焼電圧Ueの基準値は、後でわずかに減少し、下降時間tbdの基準値は、わずかに増大する。さらに、この特別な場合のプロセスは低効率を有しまた最適条件よりも少ない加工パルスの可能性が高まるので、放電加工の始まりで、それほど最適でない加工パルスを考慮して前記基準値を適合させることができる。加工が落ち着くと、前記基準値はそのときの最適な加工パルスに向けてより強く適応させることができる。
【0040】
次に図7を参照するに、実際の値を前記設定値(基準値)に比較し、悪化したパルスを遮蔽(マスキング)する比較器の実施例を示す。コントローラ50は、燃焼電圧および高周波成分のための各基準値40、41を2つのデジタル/アナログ変換器(DAC)を経て2つの比較器へ出力する。前記比較器は、これらの設定値を実際の値33(燃焼電圧Ue、図6参照)および34(高周波成分、図6参照)と比較し、出力信号42および43を供給する。パルスの下降時間tbdを比較するために、マイクロコントローラ50は、感知フェーズから計算されるような下降時間設定値51をコントローラ50から2進カウンタ44にロードする。設定値が得られると、2進カウンタ44は、Dフリップフロップ47をトリガする転送信号49を供給し、該信号の入力は実際の下降時間値26を提供し、その結果、その出力信号45(およびその後の論理積ゲートの出力信号48)は、その電流の下降時間が基準下降時間を逸脱するので前記パルスを使用不可にする必要があるか否かを示す。論理和ゲート49は、入力信号42、43および48と、図1に示したように、発生器制御モジュール(Gen Control)に供給される出力信号46とから構成されている。この出力信号46は、悪化したものとして分類された加工パルスの直接的な適用を不能にし、したがって、放電プロセスが効率的なパルスによってだけ実行されることが保証される。
【0041】
上に説明したような回路は、限定しない例として理解されるべきである。すべてのデジタル回路は、好ましくは1つのFPGAモジュールに統合することができし、例えばVHDLなどの適当なプログラミング言語で記述することができる。
【0042】
ジャンプ動作が可能である加工の場合、ジャンプ動作は、マイクロコントローラ50によって、一定のサイクルおよび/または加工条件が際だって悪化するときのいずれか、とりわけ低い休止電圧Uで引き起こされる。その場合、マイクロコントローラ50は、信号31を使用して、それを導電率のための基準値と比較する。信号31が小さすぎると、ジャンプ動作が引き起こされ、また、実際のパルス周波数が感知フェーズに保存された対応する基準値より非常に低いとき、または実際の放電の数と継続時間とが感知フェーズに保存された対応する基準値より非常に低いとき(例えば、遮蔽されたパルスによる)も、である。
【0043】
加工でジャンプ動作が許されない場合、マイクロコントローラ50は、長めの休止によって感知フェーズの間、パルスを使用不可にする。通常、関係した電極材料、材料の組み合わせ、加工条件などに依存して、休止はパルス時間の10から200%に達する。挙げられた例では、休止は「通常」の休止に比べて2から4倍だけ拡張されている。休止を引き伸ばすことにより、100から2000の加工パルスを十分に感知することができる。100マイクロ秒のパルス時間および50マイクロ秒の休止時間を有するパルスについて、感知フェーズは従って、100(または2000)×(100+50マイクロ秒)=15(または300)ミリ秒となる。普通では、上に説明したような方法を全く同一に使うことができる。
【0044】
感知フェーズは、特に以下のような場合に、マイクロコントローラ50によって繰り返される。
− 等間隔で、
− 休止電圧Uが低すぎる、
− 実際のパルス周波数は感知フェーズ(引き起こされているジャンプ動作について同様である)に保存された対応する基準値よりも非常に低い、
− 実際の放電の数とその時間は、感知フェーズに保存された対応する基準値よりずっと低い。
【0045】
本発明の方法の利点は、要約するに、所定の状況では、基準値がいつも、そのような値に近づくことをすべてのパルスに要求する最良の加工条件(ジャンプ動作後のような)に一致していることである。例えば、リブ付き電極によって加工するとき、ほとんどの場合に、放電が電極の正面でだけ起こるので、ジャンプ動作の後で基準値を捕獲できることは、特定の利点をもっている。電極が長さのすべてに亘って電圧降下を促すので、これらのパルスは特に高い燃焼電圧Ueを特徴とする。電極の側面で放電するパルスは、それらの電圧降下がより小さいので、より少ない燃焼電圧Ueを有する。したがって、正面を横切って放電しているパルスが、その後の加工のために模範とされるとき、側面のギャップが非常に小さくなるように、側面のスパークを大きく低減することができる。このように、ジャンプ動作のポンプ効果は、最大化する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】従来の形彫り放電加工機の構成図である。
【図2a】典型的な加工パルスの図面であって悪化した加工パルスの少しの例を示す図面(その1)である。
【図2b】典型的な加工パルスの図面であって悪化した加工パルスの少しの例を示す図面(その2)である。
【図2c】典型的な加工パルスの図面であって悪化した加工パルスの少しの例を示す図面(その3)である。
【図2d】典型的な加工パルスの図面であって悪化した加工パルスの少しの例を示す図面(その4)である。
【図2e】典型的な加工パルスの図面であって悪化した加工パルスの少しの例を示す図面(その5)である。
【図2f】典型的な加工パルスの図面であって悪化した加工パルスの少しの例を示す図面(その6)である。
【図3】パルスを遮蔽(マスキング)する図面である。
【図4】ジャンプ動作後の最初の感知区間T2の図面である。
【図5】加工パルスの適用に続く伸びた休止時間を有する第2の感知区間T2の図面である。
【図6】加工パルスから固有値を得て保存するのに好適なパルス弁別回路の構成図である。
【図7】好適な比較/マスキング回路である。
【符号の説明】
【0047】
T1 待ち時間
T2 時間間隔
Ue 燃焼電圧
bd 下降時間
休止電圧
【出願人】 【識別番号】592078450
【氏名又は名称】アギー エスアー
【出願日】 平成19年8月22日(2007.8.22)
【代理人】 【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行


【公開番号】 特開2008−114362(P2008−114362A)
【公開日】 平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願番号】 特願2007−215995(P2007−215995)