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【発明の名称】 放電加工装置および放電加工方法
【発明者】 【氏名】榎本 耕二

【氏名】黒川 聡昭

【氏名】千代 知子

【氏名】塩澤 貴弘

【要約】 【課題】加工経路上に特徴がある形状を有するワークをワイヤ放電加工する際に、ワイヤ断線を防ぐことができる放電加工装置を得ること。

【解決手段】数値制御プログラムで規定された加工経路上の前記ワークの板厚が変化する形状変化位置と、その形状の種類を抽出し、形状変化位置を中心とした所定の範囲の条件変更領域を加工経路上に設定した加工経路情報を作成する加工経路情報作成部14と、放電加工処理中にワークでの現在の加工進行位置を取得する加工進行位置取得部16と、ワークに形成された形状の種類ごとに条件変更領域での加工条件を格納する加工条件格納部17と、加工進行位置取得部16で取得した現在の加工進行位置が、加工経路情報中の条件変更領域に到達した場合に、その形状の種類に対応した加工条件を加工条件格納部17から取得し、新たな加工条件として設定する加工条件変更部19と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象のワークを所定の形状に放電加工するワイヤと、
前記ワイヤの延在方向から、前記ワイヤと前記ワークとの加工部分に向けて加工液を供給するノズルと、
数値制御プログラムに基づいて前記ワイヤを用いて前記ワークの加工処理を行う数値制御手段と、
を備える放電加工装置において、
前記数値制御プログラムで規定された加工経路上の前記ワークの板厚が変化する形状変化位置と、その形状の種類を抽出し、前記形状変化位置を中心とした所定の範囲の条件変更領域を前記加工経路上に設定した加工経路情報を作成する加工経路情報作成手段と、
放電加工処理中に前記ワークでの現在の加工進行位置を取得する加工進行位置取得手段と、
前記ワークに形成された形状の種類ごとに前記条件変更領域での加工条件を格納する加工条件格納手段と、
前記加工進行位置取得手段で取得した現在の加工進行位置が、前記加工経路情報中の前記条件変更領域に到達した場合に、その形状の種類に対応した加工条件を前記加工条件格納手段から取得し、新たな加工条件として設定する加工条件設定手段と、
を備え、
前記数値制御手段は、前記加工条件設定手段によって設定された加工条件に基づいて放電加工処理を実行することを特徴とする放電加工装置。
【請求項2】
前記ワークの輪郭から、この輪郭に垂直な方向に所定の範囲のワーク形状影響範囲を作成するワーク形状影響範囲作成手段と、
前記ワイヤの延在方向に垂直に所定の範囲の加工液影響範囲を作成する加工液影響範囲作成手段と、
をさらに備え、
前記加工経路情報作成手段は、前記条件変更領域として、前記ワーク形状影響範囲と前記ワイヤとの交差部分である加工経路上ワーク形状影響範囲と、前記ワークの輪郭と前記加工液影響範囲との交差部分である加工経路上加工液影響範囲と、前記ワーク形状影響範囲と前記加工液影響範囲との交差部分である加工経路上ワーク形状・加工液影響範囲とを求め、前記加工経路上に設定した加工経路情報を作成し、
前記加工条件格納手段は、前記ワークに形成された形状の種類ごとに、前記加工経路上における形状変化位置、ワーク形状影響範囲、加工液影響範囲およびワーク形状・加工液影響範囲の重なり度合いを示す形状状態ごとに加工条件を格納し、
前記加工条件設定手段は、前記加工進行位置取得手段で取得した現在の加工進行位置における形状状態に対応した加工条件を前記加工条件格納手段から取得し、新たな加工条件として設定することを特徴とする請求項1に記載の放電加工装置。
【請求項3】
前記加工条件は、前記加工経路上における形状変化位置、ワーク形状影響範囲、加工液影響範囲およびワーク形状・加工液影響範囲の重なり度合いが大きいほど、抑えられた加工条件となることを特徴とする請求項2に記載の放電加工装置。
【請求項4】
前記ワークに形成された形状の種類は、穴形状、立壁、または段差のいずれかにであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の放電加工装置。
【請求項5】
前記加工条件格納手段に格納される加工条件は、加工速度または加工液量を含む機械条件と、加工エネルギを含む電気条件のいずれかであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の放電加工装置。
【請求項6】
前記加工条件格納手段に加工条件を入力する入力手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の放電加工装置。
【請求項7】
形状種類を抽出するワークは3次元モデルであり、該3次元モデルの情報と各形状の特徴部分の形状名称を保持する3次元形状情報格納手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の放電加工装置。
【請求項8】
加工対象のワークを所定の形状に放電加工するワイヤと、
前記ワイヤの延在方向から、前記ワイヤの前記ワークとの加工部分に向けて加工液を供給するノズルと、
前記ワークの加工経路上に形成された形状の種類ごとの加工条件を格納する加工条件格納手段と、
数値制御プログラムに基づいて前記ワイヤを用いて前記ワークの加工処理を行う数値制御手段と、
を備える放電加工装置での放電加工方法であって、
前記数値制御プログラムの加工経路上の前記ワークの板厚が変化する形状変化位置とその形状の種類を抽出し、前記形状変化位置を中心とした所定の範囲の条件変更領域を前記加工経路上に設定し、加工経路情報を作成する加工経路情報作成工程と、
放電加工処理中に前記ワークでの現在の加工進行位置を取得する加工進行位置取得工程と、
前記加工進行位置取得工程で取得した現在の加工進行位置が、前記加工経路情報中の前記条件変更領域に到達した場合に、その形状の種類に対応した加工条件を前記加工条件格納手段から取得し、新たな加工条件として設定する加工条件設定工程と、
前記数値制御手段は、前記加工条件設定手段によって設定された加工条件に基づいて放電加工処理を実行する加工処理工程と、
を含むことを特徴とする放電加工方法。
【請求項9】
前記ワークの輪郭から、この輪郭に垂直な方向に所定の範囲のワーク形状影響範囲を作成するワーク形状影響範囲作成工程と、
前記ワイヤの延在方向に垂直に所定の範囲の加工液影響範囲を作成する加工液影響範囲作成工程と、
をさらに含み、
前記加工条件変更位置設定工程では、前記条件変更領域として、前記ワーク形状影響範囲と前記ワイヤとの交差部分である加工経路上ワーク形状影響範囲と、前記ワークの輪郭と前記加工液影響範囲との交差部分である加工経路上加工液影響範囲と、前記ワーク形状影響範囲と前記加工液影響範囲との交差部分である加工経路上ワーク形状・加工液影響範囲とを求め、前記加工経路上に設定した加工経路情報を作成し、
前記加工条件設定工程では、前記加工進行位置取得手段で取得した現在の加工進行位置における、前記加工経路上における形状変化位置、ワーク形状影響範囲、加工液影響範囲およびワーク形状・加工液影響範囲の重なり度合いを示す形状状態に対応した加工条件を前記加工条件格納手段から取得し、新たな加工条件として設定することを特徴とする請求項8に記載の放電加工方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、放電加工装置および放電加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の放電加工装置におけるワークの加工においては、加工液を吐出するノズル径による水柱とワーク板厚変化部との干渉によって、ワイヤが断線する可能性がある。そのため、ワイヤ放電加工中におけるワイヤの断線を防止する技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この特許文献1の放電加工装置は、ノズルがワークに密着しているときの加工条件を記憶する加工条件記憶手段と、板厚とノズル高さと液流量との関係を記憶する液流量データベースと、この関係に基づいて荒加工における液流量を決定する液流量決定手段と、決定された液流量に基づいて放電加工を行うコントローラと、を備えており、ワークの板厚、上ノズル高さ、下ノズル高さが入力されると、この板厚、上ノズル高さ、下ノズル高さに応じた液流量を、液流量データベースから抽出して決定するようにしている。
【0003】
【特許文献1】国際公開第02/034445号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の技術におけるワークを加工する際の加工条件の決定は、ワークを平板とみなして、すなわち、ワークの板厚変化がないことを前提として、加工条件の決定を行っている。そして、この決定された加工条件でワーク全体の加工処理を行っている。しかし、実際の放電加工装置で加工されるワークが平板で無い場合も多々あり、ワイヤ加工する経路上に段差や穴を有し、加工範囲においてワークの厚さが変化することがある。
【0005】
従来の技術における加工液流量制御は、ワーク全体の板厚に応じた加工液流量制御しか行っておらず、特徴がある形状の近傍を加工することによって加工液の乱れが生じたり、加工サーボが取りにくくなったりする場合の処理については考慮されておらず、加工液流量の変化に伴い、ワイヤ断線が生じてしまうといった問題点があった。
【0006】
この発明は、上記に鑑みてなされたもので、加工経路上に断線が生じやすい形状を有するワークをワイヤ放電加工する際に、ワイヤ断線が生じずかつ加工速度低下を最小限に抑えた適切な加工が行われる放電加工装置と放電加工方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、この発明にかかる放電加工装置は、加工対象のワークを所定の形状に放電加工するワイヤと、前記ワイヤの延在方向から、前記ワイヤと前記ワークとの加工部分に向けて加工液を供給するノズルと、数値制御プログラムに基づいて前記ワイヤを用いて前記ワークの加工処理を行う数値制御手段と、を備える放電加工装置において、前記数値制御プログラムで規定された加工経路上の前記ワークの板厚が変化する形状変化位置と、その形状の種類を抽出し、前記形状変化位置を中心とした所定の範囲の条件変更領域を前記加工経路上に設定した加工経路情報を作成する加工経路情報作成手段と、放電加工処理中に前記ワークでの現在の加工進行位置を取得する加工進行位置取得手段と、前記ワークに形成された形状の種類ごとに前記条件変更領域での加工条件を格納する加工条件格納手段と、前記加工進行位置取得手段で取得した現在の加工進行位置が、前記加工経路情報中の前記条件変更領域に到達した場合に、その形状の種類に対応した加工条件を前記加工条件格納手段から取得し、新たな加工条件として設定する加工条件設定手段と、を備え、前記数値制御手段は、前記加工条件設定手段によって設定された加工条件に基づいて放電加工処理を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、放電加工時にワークの有する形状特徴に応じた制御が行われるので、加工経路上または加工経路近傍に存在する加工形状変化位置による加工液の流れの乱れが生じる場合でも、ワイヤ断線を防ぐことができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる放電加工装置および放電加工方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、これらの実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明にかかる放電加工装置の実施の形態1の機能構成を模式的に示すブロック図である。この放電加工装置10は、3次元形状情報格納部11、NCプログラム格納部12、加工経路上板厚情報取得部13、加工経路情報作成部14、加工経路情報格納部15、加工進行位置取得部16、加工条件格納部17、加工条件決定部18、加工条件変更部19、出力・表示部20、数値制御部21およびこれらの各処理部を制御する制御部22を備える。
【0011】
3次元形状情報格納部11は、加工対象であるワークの3次元形状情報を格納する。3次元形状情報は、加工対象であるワークの形状が座標とその座標位置での厚さなどのデータの集合によって構成されているものである。この3元形状情報として、CAD(Computer-Aided Design)で作成されたデータを用いることができる。また、この3次元形状情報には、データ中の各形状の特徴部分について、その形状が何であるかを示す形状名称(穴、段差など)も含まれる。このデータ中の各形状の特徴部分について形状を識別して設定する技術は公知である(たとえば、特開2006−142396号公報や国際公開第01/081035号パンフレットを参照)ので、その詳しい説明を省略する。この3次元形状データは、放電加工装置10のユーザによって、作成または入力される。
【0012】
NCプログラム格納部12は、ワークを加工する際のNCプログラムを格納する。このNCプログラムには、ワークを加工する際の加工経路とその加工経路上の所定の位置での加工条件が含まれる。
【0013】
加工経路上板厚情報取得部13は、3次元形状情報格納部11中のワークの3次元形状情報とNCプログラムの加工経路を重ね、加工経路上板厚情報を取得する。この加工経路上板厚情報は加工経路情報格納部へ格納され、NCプログラムの加工経路を一方向に展開して、この加工経路上の各点における板厚を示すものである。すなわち加工距離に対応する板厚を表すことになる。なお、3次元形状情報における座標系とNCプログラムにおける座標系は一致しているものとする。
【0014】
加工経路情報作成部14は、加工経路上での形状変化位置を抽出し、その形状変化位置から所定の範囲を条件変更領域として設定する。具体的には、ワイヤをワークの上面図(平面図)上で見たときに点とみなし、この点をNCプログラムの加工経路上に沿って動かしたときに、ワークの厚さが変化する位置との交点を形状変化位置として抽出する。
【0015】
その後、形状変化位置を中心として加工経路上の所定の範囲加工液噴出ノズル半径を条件変更領域として設定する。ノズル半径は通常1mm程度である。この条件変更領域は、ワークの形状が変化して放電加工処理に影響を与える領域であり、他の通常位置とは異なる加工条件を設定するための領域として設定されるものである。後述する図7−2に示す通り、これらの形状変化位置と条件変更領域は板厚情報に付加され、加工経路情報として加工経路情報格納部15に格納される。なお、この明細書では、ワークの厚さが変化する部分を、形状特徴という。また、加工経路情報作成部14は、加工経路上板厚情報取得部13で取得した加工経路上板厚情報から、板厚が変化する部分を形状変化位置として抽出するようにしてもよい。この加工経路情報作成部14は、特許請求の範囲における加工経路情報作成手段に相当する。
【0016】
加工経路情報格納部15は、加工経路上板厚情報取得部13によって取得された加工経路上板厚情報と、加工経路情報作成部14によって抽出された形状変化位置と条件変更領域とを含む加工経路情報を格納する。
【0017】
加工進行位置取得部16は、ワイヤ放電加工中に実際にワイヤがワーク上のどの位置に現在存在するのかを示す加工進行位置を取得する。この加工進行位置取得部16は、特許請求の範囲における加工進行位置取得手段に相当する。
【0018】
加工条件格納部17は、加工中のワークに存在する形状の種類ごとに、ワイヤ断線が生じないように予め求められた加工条件を格納する。なお、加工条件には、ワイヤの移動速度などの機械条件や、放電加工における加工エネルギなどの電気条件が含まれる。図2は、加工条件の一例を示す図である。加工条件は、ワークの形状(形状名称)と、その形状の場合の加工条件とを含む情報からなる。この例では、加工条件は、通常位置(NCプログラムに規定された)における加工条件に比して、何%の値で加工を行うかを示す場合を示しているが、加工速度や加工エネルギなどの機械条件や電気条件をより具体的に定めるようにしてもよい。この加工条件格納部17は、特許請求の範囲における加工条件格納手段に相当する。
【0019】
加工条件決定部18は、加工進行位置取得部16で取得された、現在の加工進行位置が条件変更領域にあるか否かを判定し、現在の加工進行位置が条件変更領域にある場合には、加工条件格納部17内の加工条件に基づいて、加工経路上のつぎの位置で行う加工条件を決定する処理を行う。なお、この際、条件変更領域の形状については、3次元形状情報に含まれる形状名称が使用される。
【0020】
加工条件変更部19は、NCプログラムに基づいて行われる加工条件について、加工条件決定部18によって決定された加工条件に変更して設定する。なお、加工条件決定部18と加工条件変更部19は、特許請求の範囲における加工条件設定手段に相当する。
【0021】
出力・表示部20は、3次元形状情報やNCプログラム、条件変更領域などを、所定の表示プログラムに基づいて視覚的に表示する機能を有する。一般的には、液晶表示装置などのような表示装置によって構成される。
【0022】
数値制御部21は、NCプログラムに基づいてワイヤやワークを載置するステージなどの実際の放電加工処理を行う図示しない放電加工機を制御する。なお、加工条件変更部19によって加工条件が変更された場合には、数値制御部21は、その変更された加工条件に基づいて、放電加工処理器の制御を行う。この制御としては、ワイヤの送り速度や加工液の流量などの機械条件や、放電エネルギなどの電気条件の制御を例示することができる。この数値制御部21は、特許請求の範囲における数値制御手段に相当する。
【0023】
通常の制御では加工不安定を検出して特別な処理を行うが、このような構成の放電加工装置10では、条件変更領域を有する加工経路情報を用いて、加工不安定になる前に加工不安定にならないように放電加工処理の加工条件が制御されることになる。
【0024】
つぎに、このような放電加工装置10における放電加工の処理手順について説明する。
【0025】
まず、加工経路上の形状特徴の抽出処理について、具体例を挙げながら説明する。図3は、加工経路上の形状情報の抽出処理の手順の一例を示すフローチャートであり、図4は、放電加工の対象となるワークの形状の一例を示す斜視図であり、図5は、図4のワークの上面図であり、図6は、図4のワークの加工経路を示す図である。なお、図6には、加工経路がワーク上のどの位置を通るのかをわかり易くするために、点線でワークの形状を示している。
【0026】
図4に示されるように、このワーク101は、厚さがT1の直方体状のワークに1箇所の穴111と段差112が設けられた構造となっている。穴111の部分のワーク101の厚さはT2であり、段差112の部分のワーク101の厚さはT3である。このようなワーク101の形状と、ワーク101上に設けられた形状の種類が3次元形状情報として3次元形状情報格納部11に格納されている。また、図6に示される加工経路を表すNCプログラム120は、NCプログラム格納部12に格納される。
【0027】
まず、加工経路上板厚情報取得部13は、3次元形状情報格納部11から図4に示されるワーク101の3次元形状情報と、NCプログラム格納部12から図6に示される加工経路120と、を取得する(ステップS11)。
【0028】
ついで、加工経路上板厚情報取得部13は、加工経路120をワーク101に重ね合わせる(ステップS12)。その後、加工経路上板厚情報取得部13は、3次元形状情報から加工経路120上における各点の厚さを取得し、加工経路120に対する板厚情報を作成する(ステップS13)。図7−1は、図6に示される加工経路上の板厚情報を示す図である。この図7−1において、横軸は板厚を示し、縦軸は加工経路上の各点を示している。この図7−1では、厚さがT1の部分、穴111がある厚さがT2の部分、段差112がある厚さがT3の部分が示されている。なお、この板厚情報では、図6で2次元で示される加工経路120を一方向に展開して示している。
【0029】
ついで、加工経路情報作成部14は、取得した板厚情報を用いて、ワーク101の形状特徴を抽出する。具体的には、板厚が変化している形状変化位置を抽出する(ステップS14)。さらに、加工経路情報作成部14は、加工経路120上の形状変化位置の前後の所定の範囲を条件変更領域として設定し(ステップS15)、加工経路情報を作成する。図7−2は、図7−1の板厚情報に形状変化位置を付加した図であり、図7−3は、図7−2に条件変更領域をさらに付加した図である。図7−2に示されるように、形状変化位置は、板厚情報において、加工経路120上で形状(板厚)が変化している部分を点として示すものである。また、図7−3に示されるように、条件変更領域は、図7−2の形状変化位置を中心に、その前後の所定の領域として示される。そして、図7−3に示される加工経路情報は、加工経路情報格納部に格納され、形状特徴抽出処理が終了する。
【0030】
つぎに、実際の放電加工処理について図8のフローチャートを参照しながら説明する。まず、放電加工装置10において、加工処理がスタートされ、NCプログラムに基づいて、処理が進行しているものとする。このとき、数値制御部21は、NCプログラム格納部12に格納されたNCプログラムに規定された所定の加工条件に基づいて、ワークに対する放電加工処理を実行する(ステップS31)。
【0031】
加工進行位置取得部16は、NCプログラムの加工速度に基づいて、現在の加工進行位置を取得する(ステップS32)。そして、加工進行位置取得部16は、図3の形状特徴抽出処理で取得した加工経路情報を参照して、現在の加工進行位置が、条件変更領域に達したか否かを判定する(ステップS33)。条件変更領域に達していない場合(ステップS33でNoの場合)には、それまでの条件で加工を継続する(ステップS34)。
【0032】
一方、条件変更領域に達した場合(ステップS33でYesの場合)には、加工条件決定部18は、その形状名称を加工経路情報(3次元形状情報)から取得し、その形状名称に応じた加工条件を加工条件格納部17から抽出する(ステップS35)。たとえば、現在の加工進行位置が図5または図6の穴111の位置の条件変更領域に達した場合には、加工経路情報(3次元形状情報)にその位置が穴である旨の情報が含まれているので、加工条件決定部18は、図2の加工条件から形状名称が「穴」に対応する加工条件を抽出する。図2を参照すると形状名称が「穴」の加工条件は通常のエネルギの50%の条件で加工を行うものであるので、それまでのエネルギを50%にする加工条件を決定する。
【0033】
その後、加工条件決定部18は、抽出した加工条件を新たな加工条件として決定する(ステップS36)。この加工条件は、形状特徴に応じてワイヤ断線が生じないように求められた加工条件である。ついで、加工条件変更部19は、今まで設定されていたNCプログラム中の加工条件を、加工条件決定部18で決定された加工条件に変更し(ステップS37)、数値制御部21は、変更された新たな加工条件でワークの放電加工処理を実行する(ステップS38)。
【0034】
その後、加工進行位置取得部16は、新たな加工条件を考慮した現在の加工進行位置を取得する(ステップS39)。そして、加工進行位置取得部16は、形状特徴抽出処理で取得した加工経路情報を参照して、現在の加工進行位置が、条件変更領域外に達したか否かを判定する(ステップS40)。条件変更領域外に達していない場合(ステップS40でNoの場合)には、ステップS38に戻り、変更された加工条件で加工処理を進める。
【0035】
また、条件変更領域外に達した場合(ステップS40でYesの場合)には、加工条件決定部18は、NCプログラムに規定されている通常の加工条件を取得し(ステップS41)、加工条件変更部19は、それまでに設定されていた加工条件を取得した加工条件に変更する(ステップS42)。そして、数値制御部21は、変更された加工条件(すなわち、NCプログラムに規定されている加工条件)でワークの放電加工処理を実行する(ステップS43)。
【0036】
その後またはステップS34の後、加工進行位置取得部16は、現在の加工進行位置を取得し(ステップS44)、NCプログラムを参照して、加工が終了したか否かを判定する(ステップS45)。加工が終了していない場合には、ステップS32に戻り、加工経路が終了点に達するまで上述した処理が繰り返し実行される。また、加工処理が終了した場合には、放電加工処理が終了する。
【0037】
この実施の形態1によれば、加工対象であるワークの3次元形状情報に基づいて、加工経路上におけるワークの形状特徴の変化を予め抽出し、このワークの形状特徴に基づいて加工条件を変化させるようにしたので、加工進行時にワークの形状特徴が変化する場合でも、ワイヤ断線が生じずかつ加工速度低下を最小限に抑えた適切な加工が行われるという効果を有する。
【0038】
実施の形態2.
実施の形態1では、加工経路上での形状特徴が変化する点を取得し、この形状特徴の変化点から加工経路上の所定の範囲を条件変更領域として設定し、条件変更領域に現在の加工進行位置が達した場合に、放電加工の加工条件を変更させるようにした。
【0039】
しかし、実施の形態1の方法では、加工経路上に存在する形状特徴の変化には加工条件を変化させることができるが、加工経路の近傍に形状特徴の変化する領域がある場合については、加工条件を変化させることができない。
【0040】
そのため、そのような領域を加工する際に、ワイヤ断線が生じてしまう可能性があった。そこで、この実施の形態2では、加工経路の近傍に形状特徴の変化する領域がある場合にも、それを考慮して加工条件を制御することができる放電加工装置および放電加工方法について説明する。
【0041】
図9は、この発明にかかる放電加工装置の実施の形態2の機能構成を模式的に示すブロック図である。この放電加工装置10は、図1の放電加工装置10において、ワーク形状影響範囲作成部23と加工液影響範囲作成部24をさらに備える構成を有する。
【0042】
ワーク形状影響範囲作成部23は、ワークに存在する形状変化部分が放電加工時においてワイヤに及ぼす影響の範囲であるワーク形状影響範囲を求めるものである。ワーク形状影響範囲は例えば段差加工の場合1mm程度であることが実験により明らかになっている。
【0043】
具体的には、ワークの輪郭上の各点からその輪郭に対して垂直な方向の所定の範囲を、ワーク形状影響範囲として捉え、ワークの3次元形状情報に重ね合わせる。図10−1〜図10−3は、ワーク形状影響範囲の取得方法の一例を示す図であり、図10−1は、ワークの形状の一例を示す斜視図であり、図10−2は、図10−1のワーク形状の上面図であり、図10−3は、図10−2にワーク形状にワーク形状影響範囲を付加したものである。ここでは、説明の便宜上、ワーク101の上面図においてワーク形状影響範囲A’を付加した図を示している。この図10−3に示されるように、ワークの輪郭Aから外側と内側の所定の範囲にワーク形状影響範囲A’が作成される。このワーク形状影響範囲作成部23は、特許請求の範囲におけるワーク形状影響範囲作成手段に相当する。
【0044】
加工液影響範囲作成部24は、放電加工時において、ノズルからワイヤに供給される加工液がワイヤに及ぼす影響の範囲を求めるものである。図11は、加工液影響範囲を模式的に示す図である。この図に示されるように、加工経路を求める際に点とみなされるワイヤWに、加工液の影響が及ぶワイヤWから所定の範囲を加工液影響範囲W’としている。この加工液影響範囲W’は、実際の放電加工時におけるワイヤの水柱の範囲を示している。ワイヤのノズル半径2mmの場合水柱も2mmなので加工液影響範囲も2mm程度となることが実験により明らかになっている。この加工液影響範囲作成部24は、特許請求の範囲における加工液影響範囲作成手段に相当する。
【0045】
また、加工経路情報作成部14は、実施の形態1で説明した条件変更領域AWの設定に加えて、加工経路上におけるワーク形状影響範囲(特許請求の範囲における加工経路上ワーク形状影響範囲に対応する)A’W、加工液影響範囲(特許請求の範囲における加工経路上加工液影響範囲に対応する)AW’およびワーク形状・加工液影響範囲(特許請求の範囲における加工経路上ワーク形状・加工液影響範囲に対応する)A’W’を求める処理を行う。具体的には、ワーク形状影響範囲A’とワイヤWとの交差部分であるワーク形状影響範囲A’Wと、ワークの輪郭Aと加工液影響範囲W’との交差部分である加工液影響範囲AW’と、ワーク形状影響範囲A’と加工液影響範囲W’との交差部分であるワーク得形状・加工液影響範囲A’W’とを、3次元形状情報、加工経路、ワーク形状影響範囲、加工液影響範囲を用いて求め、その結果を加工経路情報として加工経路情報格納部15に格納する機能を有する。なお、加工経路情報作成部14による形状変化位置の抽出処理は、ワークの輪郭AとワイヤWとの交差部分を求めることと同じである。なお、図9の放電加工装置10におけるその他の構成要素は、実施の形態1と同一であるので、その詳細な説明を省略する。
【0046】
つぎに、この実施の形態2における放電加工装置の形状特徴抽出処理について図12のフローチャートを参照しながら説明する。また、ここでは、図10−1〜図10−2に示した形状を有するワーク101を、図10−2に点線で示した加工経路で放電加工処理を行う場合を例に挙げて説明するものとする。
【0047】
ワークについて説明すると、図10−1〜図10−2に示されるように、厚さがT1の直方体状のワークに、加工方向の途中から厚さがT1よりも小さいT2となる段差112が設けられている。また、この段差112の部分には1箇所の穴111が設けられた構造となっている。穴111の部分のワークの厚さはT3である。このようなワーク101の形状が3次元形状情報として3次元形状情報格納部11に格納される。また、図10−2で点線に示される加工経路を表すNCプログラムは、NCプログラム格納部12に格納される。
【0048】
つぎに、形状特徴抽出処理について説明すると、まず、加工経路上板厚情報取得部13は、3次元形状情報格納部11から図10−1に示される3次元形状情報と、NCプログラム格納部12から図10−2に示される加工経路とを取得する(ステップS61)。
【0049】
ついで、加工経路上板厚情報取得部13は、図10−2に示されるように加工経路をワークに重ね合わせる(ステップS62)。その後、加工経路上板厚情報取得部13は、3次元形状情報から加工経路上における各点の厚さを取得し、加工経路に対する板厚情報を作成する(ステップS63)。図13は、図10−2に示される加工経路上の板厚変化を示す板厚情報である。この図13において、縦軸は板厚を示し、横軸は加工経路上の各点を示している。この図13では、何の加工も施されていない厚さがT1の部分、段差112のある厚さがT2の部分、穴111の形成された厚さがT3の部分が示されている。
【0050】
ついで、ワーク形状影響範囲作成部23は、図10−1〜図10−2のワークに対して、その輪郭から所定距離だけ離れた位置を範囲とするワーク形状影響範囲を作成する(ステップS64)。図10−3に示されるように、ワーク101の輪郭Aから外側と内側に所定の距離sだけ離れた位置に輪郭Aと平行した線が引かれ、この2本の線に挟まれた領域がワーク形状影響範囲A’となる。
【0051】
また、加工液影響範囲作成部24は、ワイヤの長手方向に垂直な断面形状に、点で表されるワイヤWから所定距離tだけ離れた位置を範囲とする加工液影響範囲W’を作成する(ステップS65)。この様子が図11に示されている。なお、ここでは、ステップS64のワーク形状影響範囲の作成の後に、ステップS65の加工液影響範囲の作成を行っているが、順番は逆でもよい。
【0052】
その後、加工経路情報作成部14は、ステップS63で取得した板厚情報を用いて、ワークの板厚が変化している形状変化位置を抽出する(ステップS66)。この形状変化位置は、上述したようにワーク101の輪郭AとワイヤWとの交差部分と同じであるので、板厚情報を用いずに、ワークの輪郭AとワイヤWとの交差部分として求めてもよい。
【0053】
ついで、加工経路情報作成部14は、ステップS64で取得したワーク形状影響範囲A’が付加された3次元形状情報とワイヤWとの交差部分であるワーク形状影響範囲A’Wを抽出する処理を行う(ステップS67)。また、加工経路情報作成部14は、ワークの3次元形状情報(ワークの輪郭A)とステップS65で取得した加工液影響範囲W’が付加されたワイヤ形状との交差部分である加工液影響範囲AW’を抽出する処理を行う(ステップS68)。さらに、ステップS64で取得したワーク形状影響範囲A’が付加された3次元形状情報とステップS65で取得した加工液影響範囲W’が付加されたワイヤ形状との交差部分であるワーク形状・加工液影響範囲A’ W’を抽出する処理を行う(ステップS69)。なお、これらのステップS66〜S69の処理の順番も、入れ替えることができる。
【0054】
図14は、板厚情報に、形状変化位置、ワーク形状影響範囲、加工液影響範囲、ワーク形状・加工液影響範囲を付加した加工経路情報の一例を示す図である。形状変化位置抽出処理では、形状が変化する部分は、ワークの3次元形状情報の輪郭AとワイヤWとの交差部分とみなされる。そのため、図中では、形状変化位置は、AWと示されている。
【0055】
また、ワーク形状影響範囲抽出処理では、ワーク形状影響範囲A’とワイヤWの交差部分がワーク形状影響範囲とみなされる。そのため、図中では、ワーク形状影響範囲は、A’Wと示されている。
【0056】
さらに、加工液影響範囲抽出処理では、ワーク形状の輪郭Aと加工液影響範囲W’が付加されたワイヤとの交差部分が加工液影響範囲とみなされる。そのため、図中では、加工液影響範囲は、AW’と示されている。
【0057】
さらにまた、ワーク形状・加工液影響範囲抽出処理では、ワーク形状影響範囲A’と加工液影響範囲W’が付加されたワイヤの交差部分がワーク形状・加工液影響範囲とみなされる。そのため、図中では、ワーク形状・加工液影響範囲は、A’W’と示されている。以上のようにして、形状特徴抽出処理が終了する。
【0058】
つぎに、実際の放電加工処理について図15のフローチャートを参照しながら説明する。まず、放電加工装置10において、加工処理がスタートされ、NCプログラムに基づいて、処理が進行しているものとする。このとき、数値制御部21は、NCプログラムに規定されている加工条件にしたがって、ワークに対する放電加工処理を実行する(ステップS91)。
【0059】
加工進行位置取得部16は、NCプログラムの加工速度に基づいて、現在の加工進行位置を取得する(ステップS92)。そして、加工進行位置取得部16は、形状特徴抽出処理で取得した形状特徴情報を参照して、現在の加工進行位置が、条件変更領域に達したか否かを判定する(ステップS93)。条件変更領域に達していない場合(ステップS93でNoの場合)には、それまでの条件で放電加工を進める(ステップS94)。
【0060】
一方、条件変更領域に達した場合(ステップS93でYesの場合)には、加工条件決定部18は、形状状態に応じた加工条件を加工条件格納部17から抽出する(ステップS95)。ここで、形状状態とは、上記の形状変化位置AW、ワーク形状影響範囲A’W、加工液影響範囲AW’、ワーク形状・加工液影範囲A’W’の重なり状態を意味する。一般的に、A’W’>[AW’,A’W]>AWの順に範囲は小さくなり、またこの順でワイヤ断線が発生しやすくなる。そこで、これらの領域の重なり具合に応じて、加工条件を変化させるように予め用意しておいた加工条件に基づいて、加工条件を選択する。
【0061】
図16は、加工条件の一例を示す図である。この加工条件には、ワーク上に存在する形状特徴である形状(形状名称)、形状変化位置AW、ワーク形状影響範囲A’W、加工液影響範囲AW’、ワーク形状・加工液影範囲A’W’、加工条件を含む項目からなる。ここで、加工条件は、電気条件や機械条件を含む条件であり、この図の例では、通常の処理に比べてどの程度割合で加工条件を抑制するかを示している。ここでは、抑制する割合を下向きの三角マークで示している。1つの下向きの三角マークを所定の割合とすると、2つの下向きの三角マークはその2倍量で抑制し、3つの下向きの三角マークはその3倍量で抑制することを示している。また、この図に示されるように、形状変化位置AW、すなわち、形状変化位置AW、ワーク形状影響範囲A’W、加工液影響範囲AW’、ワーク形状・加工液影範囲A’W’がすべて重なる領域では、加工条件を最も抑制し、形状変化位置AWから離れるにしたがって、すなわち、形状状態の重なり具合が低くなるにしたがって、抑制する割合が小さくなる。
【0062】
その後、加工条件決定部18は、抽出した加工条件を新たな加工条件として決定する(ステップS96)。ついで、加工条件変更部19は、今まで設定されていた加工条件を、加工条件決定部18で決定された加工条件に変更し(ステップS97)、数値制御部21は、変更された加工条件でワークの加工を実行する(ステップS98)。
【0063】
その後、加工進行位置取得部16は、新たな加工条件を考慮した現在の加工進行位置を取得する(ステップS99)。そして、加工進行位置取得部16は、図12の形状特徴抽出処理で取得した加工経路情報を参照して、現在の加工進行位置が、条件変更領域外に達したか否かを判定する(ステップS100)。条件変更領域外に達していない場合(ステップS100でNoの場合)には、さらに異なる条件変更領域に達したか否かを判定する(ステップS101)。異なる条件変更領域に達していない場合(ステップS101でNoの場合)には、ステップS98に戻り、変更された加工条件で加工処理を進める。また、異なる条件変更領域に達した場合(ステップS101でYesの場合)には、ステップS95に戻り、上述した処理が繰り返し実行される。
【0064】
また、条件変更領域外に達した場合(ステップS100でYesの場合)には、加工条件決定部18は、NCプログラムに規定されている通常の加工条件を取得し(ステップS102)、加工条件変更部19は、それまでに設定されていた加工条件を取得した加工条件に変更する(ステップS103)。そして、数値制御部21は、変更された新たな加工条件(すなわち、NCプログラムに規定されている加工条件)でワークの放電加工処理を実行する(ステップS104)。
【0065】
図17は、図10−2のワークを加工する際の加工経路情報の一例を示す図である。なお、この図では板厚情報を省略している。この図に示されるように、加工経路上では、形状変化位置AW、ワーク形状影響範囲A’W、加工液影響範囲AW’およびワーク形状・加工液影範囲A’W’が重なる領域、ワーク形状影響範囲A’W、加工液影響範囲AW’およびワーク形状・加工液影範囲A’W’が重なる領域、加工液影響範囲AW’およびワーク形状・加工液影範囲A’W’が重なる領域、並びにワーク形状・加工液影範囲A’W’のみの領域に大別することができる。これらのそれぞれの領域に、図16の加工条件を適用したものが、図中に「電気条件、機械条件」と示されている部分である。なお、ワークの位置との対応付けを明確にするために、この図にはワーク形状影響範囲を付加したワークの上面図も示している。
【0066】
ここで、領域Aで表される部分は、ワーク101の端部であり、形状名称としては「縁」に相当する。そのため、この部分の加工条件としては、図16の形状が「縁」の中から、形状状態に応じて選択される。なお、「縁」では、どの領域でも加工条件を抑制する割合は同じであるので、この領域Aでは、すべて同じ条件での加工処理となる。これは、領域Bで表される部分と領域Cで表される部分も同じである。
【0067】
また、領域C,Dで表される部分は、穴111であり、形状名称としては「穴」に相当する。そのため、この部分の加工条件としては、図16の形状が「穴」の中から、形状状態に応じて選択される。図16に示されるように、形状変化位置AW、ワーク形状影響範囲A’W、加工液影響範囲AW’およびワーク形状・加工液影範囲A’W’のすべてが重なる領域で加工条件を抑制する割合が最大であり、ワーク形状影響範囲A’W、加工液影響範囲AW’およびワーク形状・加工液影範囲A’W’が重なる領域と、加工液影響範囲AW’およびワーク形状・加工液影範囲A’W’が重なる領域とは、加工条件を抑制する割合がつぎに大きく、ワーク形状・加工液影範囲A’W’のみの領域では、加工条件を抑制する割合が最も小さい。これらの加工条件が図の加工経路上の各位置に示されている。つまり、形状変化位置では最も加工条件を抑制して加工処理を行い、形状変化位置から離れるにしたがって徐々に加工条件を抑制する割合が少なくなる。上述したステップS95〜ステップS101の処理では、図17に示されるように加工条件が制御されて、放電加工処理が実行される。
【0068】
その後またはステップS94の後、加工進行位置取得部16は、現在の加工進行位置を取得し(ステップS105)、NCプログラムを参照して、加工が終了したか否かを判定する(ステップS106)。加工が終了していない場合には、ステップS92に戻り、加工経路が終了点に達するまで上述した処理が繰り返し実行される。また、加工処理が終了した場合には、放電加工処理が終了する。
【0069】
この実施の形態2では、加工状態として、形状特徴情報AW、ワーク形状影響範囲A’W、加工液影響範囲AW’、ワーク形状・加工液影響範囲A’W’の加工経路上における重なり具合に応じて加工条件の変更を行なうようにしているが、いずれか1つの範囲を選択して、実施の形態1のように処理することも可能である。
【0070】
この実施の形態2によれば、加工対象であるワークの3次元形状情報とワイヤとの交差部分を、それぞれ加工形状影響範囲と加工液影響範囲を考慮して、形状特徴情報AW、ワーク形状影響範囲A’W、加工液影響範囲AW’、ワーク形状・加工液影響範囲A’W’を求め、これらの範囲の重なり方に応じて加工条件を変化させるようにしたので、加工進行時にワークの形状特徴が変化する場合でも、ワイヤ断線が生じない条件で放電加工を実行することができるという効果を有する。また、厚さの変化する領域付近で、段階的に加工条件を変化させることができるという効果も有する。
【0071】
図18〜図19は、実施の形態2の特徴を説明するための図であり、図18は、ワーク中の形状特徴と加工経路の位置関係の一例を示す図であり、図19は、ワーク中の立壁と加工経路の位置関係の一例を示す図である。図18に示されるように、ワーク101に形成された2つの穴111の中心付近を通る加工経路A、2つの穴111の端部付近を通る加工経路Bのような場合には、実施の形態1でもワイヤ断線を生じさせずに加工処理を行うことが可能である。しかし、2つの穴111の端部の近傍を通る加工経路Cのように、穴111の端部近傍を加工する場合には、穴の存在により加工液の流れが変化し、実施の形態1の方法では、形状特徴による加工制御を行えないので、加工処理中にワイヤ断線が生じる可能性がある。また、加工経路A,B,Cでは、加工経路上の形状やそれに伴う加工液の流れの変化が異なるために、それぞれで加工条件の制御方法が異なる。一方、上述したこの実施の形態2によれば、加工経路上の形状状態に基づいて、加工条件を変化させるようにしたので、加工経路A〜Cのような場合でも、それぞれに適した加工条件で加工処理を実行することができるので、ワイヤ断線が生じずかつ加工速度低下を最小限に抑えた適切な加工が行われるという効果を有する。
【0072】
また、図19に示されるように、加工経路がワーク101に形成された立壁113に沿う場合にも、立壁113の存在によって加工液の流れが変化する。この実施の形態2では、このような場合でも、立壁113の存在が影響を与える加工形状影響範囲と、ワイヤ形状が影響を与えるワイヤ形状影響範囲とを考慮して加工条件が設定されるので、ワイヤ断線が生じずかつ加工速度低下を最小限に抑えた適切な加工が行われるという効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上のように、この発明にかかる放電加工装置は、形状変化を有するワークの放電加工処理に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】この発明による放電加工装置の実施の形態1の機能構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】加工条件の一例を示す図である。
【図3】加工経路上の形状情報の抽出処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】放電加工の対象となるワークの形状の一例を示す斜視図である。
【図5】図4のワークの上面図である。
【図6】図4のワークの加工経路を示す図である。
【図7−1】図6に示される加工経路上の板厚情報を示す図である。
【図7−2】図7−1の板厚情報に形状変化位置を付加した図である。
【図7−3】図7−2に条件変更領域をさらに付加した図である。
【図8】放電加工処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】この発明による放電加工装置の実施の形態2の機能構成を模式的に示すブロック図である。
【図10−1】ワークの形状の一例を示す斜視図である。
【図10−2】図10−1のワーク形状の上面図である。
【図10−3】図10−2にワーク形状にワーク形状影響範囲を付加した図である。
【図11】加工液影響範囲を模式的に示す図である。
【図12】形状特徴抽出処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図13】図10−2に示される加工経路上の板厚変化を示す板厚情報を示す図である。
【図14】板厚情報に、形状変化位置、ワーク形状影響範囲、加工液影響範囲、ワーク形状・加工液影響範囲を付加した加工経路情報の一例を示す図である。
【図15】放電加工処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図16】加工条件の一例を示す図である。
【図17】図10−2のワークを加工する際の加工経路情報の一例を示す図である。
【図18】ワーク中の形状と加工経路の位置関係の一例を示す図である。
【図19】ワーク中の立壁と加工経路の位置関係の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
10 放電加工装置
11 3次元形状情報格納部
12 NCプログラム格納部
13 加工経路上板厚情報取得部
14 形状特徴抽出部
15 加工経路情報作成部
16 加工経路情報格納部
17 加工進行位置取得部
18 加工条件格納部
19 加工条件決定部
20 加工条件変更部
21 出力・表示部
22 数値制御部
23 制御部
24 ワーク形状影響範囲作成部
25 加工液影響範囲作成部
101 ワーク
111 穴
112 段差
113 立壁
【出願人】 【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【出願日】 平成18年10月20日(2006.10.20)
【代理人】 【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明


【公開番号】 特開2008−100337(P2008−100337A)
【公開日】 平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願番号】 特願2006−286829(P2006−286829)