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【発明の名称】 放電加工装置
【発明者】 【氏名】岡崎 秀二

【要約】 【課題】急送タンクに噴出する加工液の噴出圧力を緩和させて該急送タンクにおける泡の発生を抑制し安定した放電加工を実現する。

【解決手段】ワークWを加工液に浸漬して加工する加工槽8と、加工槽8の加工液を回収して貯留する貯留タンク10と、貯留タンク10から供給ポンプAを介して噴出する加工液を貯留するとともに、貯留した加工液を加工槽8に急送する急送タンク20と、を備える放電加工装置1において、急送タンク20は、貯留タンク10から噴出する加工液の噴出口23を有するとともに、噴出口23を覆うチャンバー30を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加工液に浸漬して加工する加工槽と、
前記加工槽の加工液を回収して貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンクから供給ポンプを介して噴出する加工液を貯留するとともに、前記貯留した加工液を前記加工槽に急送する急送タンクと、
を備える放電加工装置において、
前記急送タンクは、前記貯留タンクから噴出する加工液の圧力を緩和する圧力緩和構造を備えることを特徴とする放電加工装置。
【請求項2】
ワークを加工液に浸漬して加工する加工槽と、
前記加工槽の加工液を回収して貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンクから供給ポンプを介して噴出する加工液を貯留するとともに、前記貯留した加工液を前記加工槽に急送する急送タンクと、
を備える放電加工装置において、
前記急送タンクは、前記貯留タンクから噴出する加工液の噴出口を有するとともに、前記噴出口を覆うチャンバーを備えることを特徴とする放電加工装置。
【請求項3】
前記チャンバーの内部に、前記噴出口から噴出する加工液が前記噴出口と対向する前記チャンバーの内面に衝突し、更に前記衝突した加工液が前記内面以外の他のチャンバーの内面にも衝突するように案内板を設けることを特徴とする請求項2に記載の放電加工装置。
【請求項4】
前記噴出口は、前記急送タンクの底部に設けることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の放電加工装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、加工槽に加工液を急送する急送タンクを備える放電加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放電加工装置は、一般に、所定の放電加工間隙(以下、極間と称する。)をおいて対向配置されるワークと工具電極との間に所要の加工電圧を印加して連続的に放電を発生させつつ、ワークと工具電極とを相対移動させてワークを所望の形状に加工する構成を採用しており、加工中に極間に発生する加工屑やタール化した加工液による放電エネルギーの低下(放電の発生遅れ)等を回避すべく、加工液を満たした加工槽にワークを浸漬して、加工液により極間に発生する加工屑等を連続的に除去しながら放電加工を行う。
この放電加工装置においては、特許文献1乃至特許文献3に開示されるように加工槽の上方位置に急送タンク(特許文献1においては補助槽、特許文献2においてはフィルタンク、特許文献3においてはサブタンク)を備えることが多くなっており、加工の開始に際しては加工槽に短時間で加工液を急送すべく、急送タンクと加工槽とを結ぶ急送管路(急送流路)を開放しヘッド差を利用して加工液を加工槽に急送する構成としていた。
【0003】
【特許文献1】国際公開番号WO01/036139号公報
【特許文献2】特開平5−4117号公報
【特許文献3】特開平5−42424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近年は、コストダウンの観点から必要な急送量に対し急送タンクの容量を小さく設定し、加工槽に急送しながら急送タンクにも加工液を噴出させる運用がなされており、このため、より大きな噴出圧力で急送タンクに加工液を噴出せざるを得ず、急送タンクに所定の加工液が満たされて液面の下方から加工液が噴出するような場合にも加工液の大きな噴出圧力が作用して急送タンク内で液面が大きく跳ね上がり空気を巻き込むことがあった。
昨今は顧客からの高い加工精度の要求を満たすべく、油系加工液が採用されることも多くなっており、油系加工液の加工においては加工液が空気を巻き込むと、該加工液の相対的に大きな粘性が作用して急送タンク内で大量の泡が発生することがある。そして、この泡が加工槽に侵入すると、加工槽内を視認し辛くしたり、加工中にアーク放電を発生させる等安定した放電加工を阻害する恐れがあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、急送タンクに噴出する加工液の噴出圧力を緩和させて該急送タンクにおける泡の発生を抑制し安定した放電加工を実現することができる放電加工装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、ワークを加工液に浸漬して加工する加工槽と、加工槽の加工液を回収して貯留する貯留タンクと、貯留タンクから供給ポンプを介して噴出する加工液を貯留するとともに、貯留した加工液を加工槽に急送する急送タンクと、を備える放電加工装置において、急送タンクは、貯留タンクから噴出する加工液の圧力を緩和する圧力緩和構造を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、急送タンクは、貯留タンクから噴出する加工液の圧力を緩和する圧力緩和構造を備えることとしたので、急送タンクにおいて加工液の噴出圧力が緩和されて液面が跳ね上がることによる泡の発生を抑制することができる。なお、「貯留タンクから噴出する加工液の圧力」には貯留タンクから噴出する加工液が急送タンクの底面等に衝突して生ずる上昇流の圧力を含むものとする。また、「圧力緩和構造」とはチャンバー、邪魔板、弾性部材等の貯留タンクから噴出する加工液の圧力を緩和する各種構造を含むものとする。
【0008】
請求項2の発明は、ワークを加工液に浸漬して加工する加工槽と、加工槽の加工液を回収して貯留する貯留タンクと、貯留タンクから供給ポンプを介して噴出する加工液を貯留するとともに、貯留した加工液を前記加工槽に急送する急送タンクと、を備える放電加工装置において、急送タンクは、貯留タンクから噴出する加工液の噴出口を有するとともに、噴出口を覆うチャンバーを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、急送タンクは、貯留タンクから噴出する加工液の噴出口を有するとともに、噴出口を覆うチャンバーを備えることとしたので、貯留タンクから噴出する加工液がチャンバーの内面に衝突し、加工液の噴出圧力を確実に緩和させることができる。
【0010】
チャンバーの内部に、噴出口から噴出する加工液が噴出口と対向するチャンバーの内面に衝突し、更に衝突した加工液が該内面以外の他のチャンバーの内面にも衝突するように案内板を設けることとすれば、噴出する加工液のチャンバー内面への衝突効率を増加させることができ、加工液の噴出圧力を更に確実に緩和させることができる(請求項3)。
【0011】
噴出口は、急送タンクの底部に設けることとすれば、該噴出口から噴出する加工液が液面に達するまでの流路をより長くすることができるので、噴出する加工液が液面に達するまでに噴出圧力がより一層緩和される(請求項4)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、急送タンクにおける泡の発生を抑制し安定した放電加工を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る放電加工装置1の概略を示す右側面図である。
図1を参照して放電加工装置1の概要を説明すると、放電加工装置1は、該装置1の基部をなすベット2と、ベット2の上面後部に立設するコラム3と、コラム3の上面に装着され前方に延出するラム4と、ラム4の前面に装着され工具電極5を備える加工ヘッド6と、ベット2の前部側に備えられワークWを配置する定盤7と、定盤7を収容しつつワークWを加工液に浸漬する加工槽8と、加工槽8を載置するワークテーブル9と、加工槽8の汚液を回収しかつ清澄化して貯留し、該貯留した加工液を加工槽8に供給する貯留タンク10を有しており、図示せぬ電源装置により極間に放電を発生させつつ放電加工を行うとともに、加工槽8と貯留タンク10との間で加工液を循環させ清澄な加工液が加工槽8に満たされるように構成されている。
【0014】
加工槽8の上方位置には、架台11を介して急送タンク20が設けられており、この急送タンク20は、図2に示すように、貯留タンク10から供給ポンプAを介して噴出する加工液を貯留し、貯留した加工液をヘッド差を利用しつつ急送流路Bを介して加工槽8に急送する構成となっている。
急送タンク20は、図3に示すように、直方体形状のタンク本体21を有しており、このタンク本体21の底部22の後部側には加工液の噴出口23が設けられている。
【0015】
この加工液の噴出口23はチャンバー30に覆われている。図4および図4のイ−イ断面図を図5に示すように、チャンバー30は略箱型に形成されている。このチャンバー30の前部および後部にはそれぞれ前方側および後方側に突出する突出部31が設けられており、この突出部31の下端には加工液の流出口32が形成されている。
【0016】
そして、チャンバー30の底部33の中央部分には開口34が形成されており、更にチャンバー30の内部には案内板35が設けられている。この案内板35は底部33の開口端部から上方に起立するように設けられるとともに、開口34を含むチャンバー30の内部空間と流出口32を含む内部空間とを区分けするように、かつ、案内板35の上端とチャンバー30の上部との間に隙間36が形成されるように設けられている。
【0017】
すなわち、案内板35をチャンバー30の内部に設けることにより開口34、隙間36、および流出口32を結ぶ流路38が形成され、開口34が加工液の噴出口23を含むようにチャンバー30を急送タンク20の底部22に設けた状態においては、噴出口23から噴出する加工液は流路38に沿ってチャンバー30の外部に流出する。
【0018】
この流出過程において加工液は、噴出口23と対向するチャンバー30の上部内面に衝突し、更に水平方向に流路を転じてチャンバー30の前部内面または後部内面に衝突し、そして更に下方に流路を転じてチャンバー30の底部内面にも衝突するので、案内板35を設けることにより噴出する加工液のチャンバー30内面への衝突効率を増加させることができ、加工液の噴出圧力が確実に緩和されて急送タンク20の内部で液面が跳ね上がることによる泡の発生を抑制することができる。
【0019】
チャンバー30の底部33の他端部には堰37が設けられており、流出口32から流出する加工液は堰37にも衝突するので、加工液の噴出圧力は更に緩和される。加工液は堰37に衝突した後上昇流をなして液面に到達するが、本実施形態にあっては、噴出口23が急送タンク20の底部22に設けられており、加工液が液面に達するまでの流路がより長く設定されているので、該加工液が液面に達するまでに噴出圧力がより一層緩和される。
【0020】
次に上述した急送タンク20による加工液の急送方法について図2および図3に戻り説明する。
まず、前工程の加工時や加工の開始段取り時等に供給ポンプAを起動して貯留タンク10から急送タンク20に加工液を噴出させて急送タンク20内に予め所定の水位まで加工液を満たしておく。
【0021】
そして、加工の開始段取りが終了すると、急送流路Bを開放してヘッド差を利用しつつ一気に加工液を空の加工槽8に急送する。この加工液の急送は、必要な急送量に対し急送タンク20の容量が小さく設定されているので、急送量に不足のないように、急送と同時に供給ポンプAを起動して貯留タンク10から急送タンク20に加工液を噴出させながら行う。これら急送タンク20への加工液の噴出に際しては急送タンク20内に設けられたチャンバー30が作用するので急送タンク20の内部で液面が跳ね上がることによる泡の発生を抑制することができる。
続いて、加工槽8に必要量の加工液が満たされると、供給ポンプAを停止するとともに急送流路Bを閉塞して、加工槽8への加工液の急送を終了させる。
【0022】
次いで、本発明の第2実施形態乃至第3実施形態について図6乃至図8に基づいて説明する。
本発明の第2実施形態は、第1実施形態の急送タンク20に設けられたチャンバー30に代えて弾性部材40を設けた構成を採用している。具体的には図6(a)に示すように、急送タンク20の噴出口23から噴出する加工液と対向するように支持体41を介して弾性部材40が設けられている。
【0023】
この弾性部材40は、スポンジ状の部材等、弾性や吸水性・通水性を有する部材で構成されており、図7に示すように底部に開口を有し、かつ、上部が平板により閉塞された収納箱40aに収納されて設けられている。したがって、急送タンク20に噴出する加工液は収納箱40aの開口を介して弾性部材40に衝突するので、該弾性部材40の弾性力の作用により加工液の噴出圧力を確実に緩和させることができる。
なお、加工液の噴出圧力が相対的に小さい場合には、図6(b)に示すように弾性部材40に代えて邪魔板50を設けることとしてもよい。
【0024】
本発明の第3実施形態は、第1実施形態の急送タンク20において、加工液が上位置から下方に噴出する場合に採用される圧力緩和構造を示している。具体的には、図8(a)に示すように、加工液の噴出口23´が急送タンク20の底部22の近傍位置に設けられている。これにより、噴出口23´から噴出する加工液が液面に達するまでの流路がより長く設定されるので、該加工液の噴出圧力を緩和させて液面に到達させることができる。また、空の急送タンク20に加工液が噴出する場合にも、貯留タンク10から噴出した加工液が急送タンク20の底面と衝突する際の衝撃を緩和させることができる。
【0025】
そして、更に噴出口23´から噴出する加工液が急送タンク20の底面に衝突して生ずる上昇流と対向するように、スポンジ状の部材で構成される弾性部材41が噴出口23´の近傍に設けられている。これにより、上昇流と弾性部材41とを確実に衝突させて該上昇流の圧力を緩和させることができる。なお、上昇流の圧力が相対的に小さい場合には図8(b)に示すように弾性部材41に代えて邪魔板60を設けてもよい。また、図8(c)に示すように邪魔板60を設け、更に噴出口23´と対向する急送タンク20の底面に弾性部材41を設けることとしてもよい。更にまた図示しないが噴出口23´を覆うようにチャンバーを設け、加工液の噴出圧力を緩和させることとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、放電加工装置に利用できる。具体的には急送タンクを備える場合において急送タンクにおける泡の発生を抑制する場合に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係る放電加工装置の全体構成を示す右側面図である。
【図2】同放電加工装置の加工液の供給、急送の各流路を示す系統図である。
【図3】急送タンクの内部構造を示す断面図である。
【図4】急送タンクに設けたチャンバーの構造を示す斜視図である。
【図5】同チャンバーの内部構造を示す断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態を説明するための図である。
【図7】弾性部材の構造を説明するための斜視図である。
【図8】本発明の第3実施形態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0028】
A:供給ポンプ
B:急送流路
W:ワーク
1:放電加工装置
2:ベット
3:コラム
4:ラム
5:工具電極
6:加工ヘッド
7:定盤
8:加工槽
9:ワークテーブル
10:貯留タンク
20:急送タンク
21:タンク本体
22:底部
23:噴出口
23´:噴出口
30:チャンバー
31:突出部
32:流出口
33:底部
34:開口
35:案内板
36:隙間
37:堰
38:流路
40:弾性部材
40a:収納箱
41:弾性部材
50:邪魔板
60:邪魔板
【出願人】 【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
【出願日】 平成18年9月26日(2006.9.26)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−80417(P2008−80417A)
【公開日】 平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願番号】 特願2006−260198(P2006−260198)