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【発明の名称】 ワーク取付具及びワークの加工方法
【発明者】 【氏名】上永 修士

【氏名】橋本 正仁

【氏名】新開 弘一

【要約】 【課題】ワーク取付具において、複数のワークを高精度、かつ容易に取り付けることができ、ワークを高精度かつ高能率に加工することができるようにする。

【解決手段】ワーク取付具2は、下部ベース部22と上部ベース部25とを備える。下部ベース部22は水平面21を有し、上部ベース部25は水平面21に垂直な前面23と、水平面21と前面23とに垂直な側面24を有する。また、上部ベース部25は、前面23に対向する押圧面27を有する可動口金部28を保持する。可動口金部28は、水平面21と側面24とに沿って移動自在であり、押圧面27によって、上部ベース部25の前面23と共に、ワーク4を挟持する。複数のワークを水平面、前面、及び側面の3つの基準面に沿って取り付けることができるので、ワークをワーク取付具に高精度、かつ容易に取り付けることができ、ワークを高精度かつ高能率に加工することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
型彫り放電加工機により加工されるワークを同加工機にセットするためのワーク取付具において、
水平面を有する下部ベース部と、
前記水平面に垂直な前面と、前記水平面と前面とに垂直な側面とを有する上部ベース部と、
前記前面に対向する押圧面を有し、前記上部ベース部に保持されて、前記水平面と側面とに沿って移動自在な可動口金部と、を備え、
前記水平面、前面、及び側面をワーク取付の基準面とし、
前記前面と押圧面との間にワークを挟み、ワークを前記上部ベース部と可動口金部とによって挟持することを特徴とするワーク取付具。
【請求項2】
前記可動口金部を前記前面と側面の両面に向けて押圧する押さえ部材を備え、
前記可動口金部が、前記押さえ部材により押圧されることにより、ワークを挟持するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のワーク取付具。
【請求項3】
前記下部ベース部は、内部に磁石を有し、
前記磁石は、ワークを前記水平面に吸着することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のワーク取付具。
【請求項4】
前記上部ベース部を、前記下部ベース部から分離することができることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のワーク取付具。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のワーク取付具にワークを取り付けるワーク取付工程と、
前記ワーク取付工程によりワークを取り付けたワーク取付具を、型彫り放電加工機の加工テーブルにセットするセッティング工程と、
前記セッティング工程によりセットしたワーク取付具の位置を測定し、型彫り放電加工機に測定データを入力する位置測定工程と、
前記位置測定工程により入力したデータに基いて型彫り放電加工機によってワークを加工する加工工程と、
前記加工工程により加工したワークの寸法をワーク取付具に取り付けられた状態において測定する寸法測定工程と、を含むことを特徴とする型彫り放電加工機によるワークの加工方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、型彫り放電加工機により加工されるワークを同加工機にセットするためのワーク取付具及びワークの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、型彫り放電加工機に複数のワークを取り付けるには、工具電極が隣のワークを干渉しないように、図5(a)(b)に示すように、マグネットテーブル103上にワーク101を1個毎に間隔Lをあけて取り付けている。ここに、ワーク101は1個づつ基準枠102に合わせてセットされるが、マグネットテーブル103の磁力が弱いために、加工中に加工圧でワーク101が動く可能性がある。そこで、ワーク101を接着剤104によって固定することがあるが、その場合は、加工後に接着剤104を除去する手間がかかる。また、ワーク101毎に機械座標を設定するために、マグネットテーブル103上でワーク101の位置を測定する必要があり、手間がかかる。また、ワーク101を1個毎に取り付けて加工すると、1個毎に加工屑の排出のために工具電極の上下動作を行なわなければならず作業時間が長くなる。
【0003】
また、ワークの寸法形状によっては、図6(a)(b)に示すような精密バイス105を用いる。精密バイス105は、複数個のワーク101をまとめて取り付けるもので、ベース部108と可動部110とを備え、ベース部108は、水平面106と、前面107とを有し、可動部110は押圧面109を有し、水平面106に沿って移動自在であると共に、水平面106上に置かれたワーク101をベース部108の前面107と押圧面109との間に挟み込む位置において固定される。可動部110を固定するための手段として、ベース部108のフック部111、押さえネジ112及びメネジ部113を備える。ベース部108の水平面106には、押さえネジ112を通すために溝114が設けられている。
【0004】
この種の精密バイス105を用いてワーク101を固定するとき、微小なワークの場合、溝114にワークが埋没しないように、水平面106の上にワークの厚みと個数に応じたスペーサ115を設置する必要がある。また、複数のワーク101をスペーサ115上に揃えるときに、ワーク101の側面に対する基準面が無いために、上下方向の精度は確保できても、側面側を揃えるには技能を要していた。また、ワーク101が、前面107の中央付近から外れて取り付けられると、可動部110の直角精度が悪くなる。
【0005】
また、小さいワークが取り付けられる型彫り放電加工機用のワーク取付具として、例えば特許文献1に示されるワーク取付具が知られている。このワーク取付具は、馬蹄形の枠の形状をしており、枠の内側に断面が半円形状の棒材と、矩形の板材を有し、この棒材と板材の間に小さいワークを挟持する。
【0006】
しかしながら、特許文献1に示されるワーク取付具においては、複数のワークをセットすることができず、ワーク1個毎をワーク取付具に取り付けなければならないので、ワークを型彫り放電加工機にセットするのに手間がかかる。
【特許文献1】特開2001−113430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであり、複数のワークを高精度、かつ容易に取り付けることができるワーク取付具及びワークの加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、型彫り放電加工機により加工されるワークを同加工機にセットするためのワーク取付具において、水平面を有する下部ベース部と、前記水平面に垂直な前面と、前記水平面と前面とに垂直な側面とを有する上部ベース部と、前記前面に対向する押圧面を有し、前記上部ベース部に保持されて、前記水平面と側面とに沿って移動自在な可動口金部と、を備え、前記水平面、前面、及び側面をワーク取付の基準面とし、前記前面と押圧面との間にワークを挟み、ワークを前記上部ベース部と可動口金部とによって挟持するようにしたものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のワーク取付具において、前記可動口金部を前記前面と側面の両面に向けて押圧する押さえ部材を備え、前記可動口金部が、前記押さえ部材により押圧されることにより、ワークを挟持するように構成されているものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のワーク取付具において、前記下部ベース部は、内部に磁石を有し、前記磁石は、ワークを前記水平面に吸着するようにしたものである。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のワーク取付具において、前記上部ベース部を、前記下部ベース部から分離することができるようにしたものである。
【0012】
請求項5の発明は、型彫り放電加工機によるワークの加工方法において、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のワーク取付具にワークを取り付けるワーク取付工程と、前記ワーク取付工程によりワークを取り付けたワーク取付具を、型彫り放電加工機の加工テーブルにセットするセッティング工程と、前記セッティング工程によりセットしたワーク取付具の位置を測定し、型彫り放電加工機に測定データを入力する位置測定工程と、前記位置測定工程により入力したデータに基いて型彫り放電加工機によってワークを加工する加工工程と、前記加工工程により加工したワークの寸法をワーク取付具に取り付けられた状態において測定する寸法測定工程と、を含むようにしたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、複数のワークを水平面、前面、及び側面の3つの基準面に沿って取り付けることができるので、ワークをワーク取付具に高精度に取り付けることができる。また、複数のワークをまとめて取り付けることができるので、複数のワークに対応した工具電極により、複数のワークを同時に加工することができると共に、複数のワークの加工寸法を迅速に測定することができ、また、ワークのセッティング作業の大部分を型彫り放電加工機を用いずに行うことが可能となる。
【0014】
請求項2の発明によれば、可動口金部が前面と側面の両面に向けて押圧されて、複数のワークが側面から放れ難くなるので、ワークをワーク取付具に高精度に取り付けることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、ワークの取り付け時に、ワークが磁石によって下部ベース部の水平面に吸着されて、ワーク取付具から落下せず、ワークをワーク取付具に簡単にセットすることができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、ワークが上部ベース部に取り付けられた状態で下部ベース部から上部ベース部を分離することができるので、その状態で下部ベース部に損傷を与えることなくワークの加工を行なうことができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、ワークがワーク取付具の3つの基準面に沿って取り付けられた状態で、ワーク取付具が型彫り放電加工機にセットされるので、ワークの位置測定を簡単に行うことができ、高精度かつ高効率にワークを加工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施形態に係るワーク取付具について図1及び図2を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るワーク取付具がセットされる型彫り放電加工機の外観を示す。型彫り放電加工機1は、テーブル部11とヘッド部12を備えており、テーブル部11に不図示のワークを挟持したワーク取付具がセットされる。ヘッド部12は、工具電極13を有しており、工具電極13は、上下左右に動いてワークを加工する。
【0019】
図2(a)は、ワーク取付具2の構成を示し、図2(b)は、ワーク取付具2に複数個のワーク4がセットされている状態を示す。ワーク取付具2は、水平面21を有する下部ベース部22を備え、また、水平面21に垂直な前面23と、水平面21と前面23とに垂直な側面24を有する上部ベース部25を備える。上部ベース部25は、下部ベース部22にベース固定ネジ26によって接合されている。上部ベース部25は、前面23に対向する押圧面27を有する可動口金部28を保持しており、可動口金部28は水平面21と側面24とに沿って可動自在である。上部ベース部25には、可動口金部28をワーク4に押圧する可動口金押さえ部29が配されている。可動口金押さえ部29は、一方の端を上部ベース部25に設けられた複数の押さえ部調整穴32のいずれかに挟持巾調整ピン34によって回動自在に係止されている。可動口金押さえ部29の他方の端には、貫通するネジ穴30が設けられており、押さえネジ31がネジ穴30を貫通して、その先端が可動口金部28の背面に当接している。また、下部ベース部22は、内部に磁石33を備えている。可動口金押さえ部29、押さえネジ31、押さえ部調整穴32及び挟持巾調整ピン34は、可動口金部28を前面23と側面24の両面に向けて押圧する押さえ部材を構成している。
【0020】
上記のように構成された本実施形態に係るワーク取付具2の動作について説明する。ワーク4は、下部ベース部22上に水平面21と前面23と側面24を基準面として置かれ、複数のワーク4をまとめて取り付けることができる。下部ベース部22は、内部に磁石33を備えているので、ワーク4は磁力により下部ベース部22に吸着され、落下させることなく簡単に取り付けられる。可動口金部28を水平面21と側面24に沿って前面23の方へ移動させ、押圧面27をワーク4に押し当て、前面23と押圧面27とによってワーク4を挟持する。可動口金押さえ部29の一方の端を挟持巾調整ピン34によって、押さえ部調整穴32に回動自在に係止する。押さえネジ31を締めて可動口金部28を前面23と側面24の両面に向けて押圧し、ワーク4をワーク取付具2に固定する。複数のワークが側面24から放れ難くなるので、ワーク4をワーク取付具2に高精度に取り付けることができる。また、可動口金押さえ部29を可動口金部28の位置に応じた押さえ部調整穴32に係止することができるので、迅速にワーク4をワーク取付具2に固定することができる。
【0021】
下部ベース部22の水平面21に溝がないので、ワーク4が小さくても溝の中に埋没することなく、簡単にワーク4をワーク取付具2に取り付けることができる。また、ワーク4をワーク取付具2に取り付けてテーブル部11にセットするが、ワーク取付具2の質量が大きいので磁石の吸引力を強く受け、テーブル部11のマグネットテーブルに強く吸着され、接着剤によって固定する必要がなくなる。接着剤を用いないので、接着剤が硬化するのを待つ時間が不要になり、また、加工後に接着剤をはがす手間が無くなるので加工時間を短縮することができる。
【0022】
複数のワーク4をワーク取付具2に取り付けることができるので、ワーク4の型彫り放電加工機へのセッティング作業の大部分を型彫り放電加工機を用いずに行うことが可能となり、型彫り放電加工機の自動加工を行ない易くなる。複数のワーク4を取り付けているときも、水平面21、前面23、側面24を基準面とするので、正確にワーク4をセットすることができ、また、ワーク4のワーク取付具2中での位置が決まるので、ワーク4の位置の3次元データを測定し易くなり、CAD/CAMにおける型彫り放電加工機1の加工データの誤りが少なくなる。また、複数のワーク4がまとめて取り付けられるので、複数のワーク4を一度に加工する形状の工具電極を用いることにより、加工時間を短縮することができる。また、加工後に、ワーク取付具2をテーブル部11から外して測定するが、複数のワーク4がワーク取付具2に取り付けられた状態でまとめて測定できるので、測定を迅速に行なうことができる。
【0023】
次に、上部ベース部25を下部ベース部22から分離することについて図3を参照して説明する。図3(a)は、ワーク4を挟持した状態で、下部ベース部22より分離した上部ベース部25の構成を、図3(b)は、下部ベース部22の構成を示す。ベース固定ネジ26(図2参照)を外すことにより、下部ベース部22と上部ベース部25とを分離することができる。そして、ワーク4を挟持した状態で上部ベース部25を下部ベース部22から分離し、その状態でワーク4を加工することができる。例えば、矢印A方向にワーク4に貫通穴を加工すると、上部ベース部25と下部ベース部22とが接合されている状態では下部ベース部22を損傷するが、上部ベース部25を下部ベース部22から分離すれば、下部ベース部22を損傷することなく、ワーク4に貫通穴を加工することができる。
【0024】
次に、ワーク取付具2の型彫り放電加工機1における使用方法について図4を参照して説明する。図4は、ワーク取付具2の使用方法のフローを示す。最初に、上述したように複数のワーク4をワーク取付具2にセットする(S1)。このステップS1は、ワーク取付工程を構成する。次に、ワーク取付具2を型彫り放電加工機1のテーブル部11にセットする。テーブル部11に位置の基準となる基準枠等が有れば、その基準枠等に基いてセットする(S2)。このステップS2は、セッティング工程を構成する。
【0025】
続いて、ワークのテーブル部11上での位置を測定し、データを型彫り放電加工機1に入力する(S3)。このステップS3は、位置測定工程を構成する。ワーク4をワーク取付具2を用いずにテーブル部11にセットしている場合は、ワーク4毎に位置を測定しなければならないが、ワーク取付具2にセットしている場合には、ワーク4のワーク取付具2上での位置が決まっているので、ワーク取付具2の位置のみを入力して型彫り放電加工機1内でデータを変換すればよい。そして、ワーク取付具2がテーブル部11上の基準枠に基いてセットされているのであれば、基準枠に応じたデータを入力すればよい。ワーク4の位置の3次元データの入力が簡単にできるのでデータの誤りが少なくなる。
【0026】
続いて、入力した位置データを基に型彫り放電加工機1によって加工を行なう(S4)。このステップS4は、加工工程を構成する。複数のワーク4に対応した工具電極13により複数のワーク4を一度に加工することができる。続いて、加工後のワーク4の寸法を測定する(S5)。このステップS5は、寸法測定工程を構成する。ワーク取付具2をテーブル部11から外して測定するが、複数のワーク4がワーク取付具2に取り付けられた状態でまとめて測定できるので、測定を迅速に行なうことができる。このように、上述の加工方法によって、高精度かつ高能率にワークを加工することができる。
【0027】
なお、本発明は、上記各種実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば上部ベース部25と下部ベース部22とが分離できない一体物であってもよい。また、押さえ部材としては、上記実施形態の構成に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係るワーク取付具をセットする型彫り放電加工機の外観図。
【図2】(a)は本発明の実施形態に係るワーク取付具の斜視図、(b)はワークを取り付けたワーク取付具の斜視図。
【図3】(a)は同実施形態に係る上部ベース部の斜視図、(b)は下部ベース部の斜視図。
【図4】本発明の実施形態に係るワーク取付具の使用のフロー図。
【図5】(a)は従来のマグネットテーブルにセットされたワークの平面図、(b)は同ワークの右側面図。
【図6】(a)は従来の精密バイスの平面図、(b)は同精密バイスの正面図。
【符号の説明】
【0029】
1 型彫り放電加工機
11 テーブル部
2 ワーク取付具
21 水平面
22 下部ベース部
23 前面
24 側面
25 上部ベース部
27 押圧面
28 可動口金部
29 可動口金押さえ部(押さえ部材)
31 押さえネジ(押さえ部材)
32 押さえ部調整穴(押さえ部材)
33 磁石
34 挟持巾調整ピン(押さえ部材)
4 ワーク
【出願人】 【識別番号】000005832
【氏名又は名称】松下電工株式会社
【出願日】 平成18年9月26日(2006.9.26)
【代理人】 【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫

【識別番号】100121692
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 勝美

【識別番号】100125221
【弁理士】
【氏名又は名称】水田 愼一


【公開番号】 特開2008−80413(P2008−80413A)
【公開日】 平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願番号】 特願2006−259960(P2006−259960)