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【発明の名称】 ワイヤカット放電加工機のワイヤ電極供給装置
【発明者】 【氏名】喜多 祐樹

【氏名】高山 雄司

【氏名】牧野 良則

【要約】 【課題】簡単な構成で、ワイヤ電極が走行経路から外れることがないようにする。

【構成】トルクモータ3でワイヤ引き出し方向とは逆方向にワイヤボビン2を駆動しワイヤ電極1に張力を付与する。ワイヤボビン2の回転速度を検出する速度検出器4を設ける。ワイヤ電極1をガイドローラ14,ブレーキローラ5、上下ガイド8,9、ワイヤ巻き取りローラ10a、10bのワイヤ走行経路に張設する。この張設の際に、ワイヤ電極1がワイヤボビン2から引き出されたとき、速度検出器4で検出される速度が所定速度以上になると、トルクモータ3の出力トルクを増大させて、ワイヤボビン2の慣性等でワイヤ電極1が弛みワイヤ走行経路から外れないようにする。速度検出器4を設けるだけで、簡単にワイヤ電極1の走行経路からの外れを防止できる。ワイヤ電極1の張設作業が容易となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤボビンを指令一定トルクで駆動するトルクモータを備え、ワイヤボビンからワイヤ電極をワイヤ走行経路に供給するワイヤカット放電加工機のワイヤ電極供給装置において、
前記トルクモータまたは前記ワイヤボビンにその回転速度を検出する速度検出器を設け、
該速度検出器によって検出された速度が所定速度に達したとき、前記トルクモータのトルクを上昇させる制御手段を有することを特徴とするワイヤカット放電加工機のワイヤ電極供給装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検出した速度が前記所定速度を越え前記トルクモータのトルクを上昇させ、所定時間経過したとき又は前記速度検出器で検出される速度が前記所定速度以下となったとき、前記トルクモータのトルクを上昇前の値に戻すことを特徴とする請求項1記載のワイヤカット放電加工機のワイヤ電極供給装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤカット放電加工機のワイヤ電極供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤカット放電加工機におけるワイヤ電極供給装置は、ワイヤ電極を供給するワイヤボビン、ブレーキ手段、ワイヤ巻き取り手段等で構成され、ワイヤボビンから供給されたワイヤ電極を、ブレーキ手段のブレーキローラでブレーキをかけ、被加工物を加工する加工領域を通過させ、その後巻き取りローラ等によるワイヤ巻き取り手段でワイヤ電極を巻き取り、ワイヤ電極に張力を与えながら走行させるものである。そして、ワイヤカット放電加工機は、ワイヤ電極と被加工物間に電圧を印加して、放電を生じせしめて加工を行うものである。
【0003】
高重量のワイヤ電極の場合、ワイヤ電極供給装置のワイヤボビンは、その重量が大きくなることから、ワイヤボビンを駆動するモータとして、速度制御が可能なDCモータが用いられ、ワイヤボビンの回転速度を制御することでワイヤ電極の張力を一定に保持するように制御されている。例えば、ワイヤ電極の送り速度を速い状態から遅い状態へ変化させた場合、高速回転中の高重量ワイヤボビンは、慣性により直ちに低速回転に切り換わらない。そのため、ワイヤ電極が弛み、張力が変化し、定められたワイヤ走行経路から外れる可能性がある。これを防止するために、DCモータにワイヤ電極を巻き戻す方向に回転指令を与え、ワイヤ電極の弛みを防いでいる。一方、ワイヤ電極の送り速度を遅い状態から速い状態へ変化させた場合、高重量ワイヤボビンは慣性が大きいために回転速度の変化に追従できず遅れが生じ、ワイヤ巻き取り手段による巻き取り速度とワイヤボビンからの供給速度に差がでて、ワイヤ電極に過大な負荷がかかり断線する可能性がある。これを防止するために、DCモータにワイヤ電極を送り出す方向に指令を与え、ワイヤボビンの回転速度を増大させて、ワイヤ張力が過大になることを防止する制御がなされている。
【0004】
この制御のために、ワイヤ電極に張力を付与する張力付与装置を設けて、該張力付与装置による張力が一定となるように、この張力付与装置の状態を検出してワイヤボビンを駆動するモータの速度を制御している。
例えば、ワイヤ供給リールからワイヤ電極が繰り出される位置にワイヤ電極の張力の変化によって変位する張力吸収ローラを設け、該張力吸収ローラの変位を検出するローラ検出器からの信号によって、張力吸収ローラが所定の位置になるようにワイヤ供給リールを駆動する速度可変型モータの回転速度を制御するようにしたものや(特許文献1参照)、ワイヤボビンから引き出されたワイヤ電極を動滑車を介して、加工部に供給し、該動滑車の位置を検出する位置検出部からの信号によって、ワイヤボビンを駆動するモータの速度を制御して、ワイヤ電極の張力を一定に保持するようにしたものが知られている(特許文献2参照)。
【0005】
また、ワイヤ電極の張力を一定に保持すれば、ワイヤ電極の弛みを防止しワイヤ走行経路からずれることもないものであるから、ワイヤボビンを回転させる駆動モータとしてトルクモータが用いられる場合がある。トルクモータによってワイヤボビンにその回転方向とは逆方向に一定のトルクをかけることによって、ワイヤ電極に一定の張力をかけるようにするものである。例えば、ワイヤボビンの軸にプリテンションモータを連結してワイヤ電極に張力を付与するものが特許文献3に記載されている。この特許文献3に記載された発明は、ワイヤボビンから引き出されたワイヤ電極はブレーキローラを通り、複数のプーリでガイドされ、送り出しローラで引き出されて走行するものであり、ブレーキローラの回転速度を検出し、送り出しローラのワイヤ送り速度との差に基づいてブレーキ力を調整してワイヤ電極の張力を制御するものである。
又、ワイヤボビンにプレ張力を与えるヒステリシスモータを連結し、該ワイヤボビンからブレーキプーリ、ガイドプーリを介し、回収ローラで引き出されるよう構成し、回収ローラの速度検出器からの信号とブレーキに取り付けた速度検出器の信号との差によって、張力変動信号を生成し、該信号をブレーキ駆動回路に出力してワイヤ電極の張力を制御するものも知られている(特許文献4参照)。
【0006】
【特許文献1】実開昭61−54420号公報
【特許文献2】特開平6−335826号公報
【特許文献3】特許第2616110号公報
【特許文献4】特開平2−185321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
DCモータ等による速度可変型モータの回転速度を制御する方法により、ワイヤ張力を制御する方法では、ワイヤ電極の弛みを検出する検出装置やこの検出装置の状態を検出してモータの速度を制御する手段を必要とする。
一方、ワイヤボビンを回転させる駆動モータとしてトルクモータを用いる場合、トルクモータによってワイヤボビンに一定のトルクをかけることによって、ワイヤ電極に一定の張力をかけるものであるが、ワイヤボビンを交換し、ワイヤ電極をワイヤ走行経路に沿って張設するとき、ワイヤ電極をボビンより引き出し、ブレーキローラ、複数のガイドローラ、ワイヤ電極をガイドする上ガイド、さらに、被加工物の加工開始穴を通し、下ガイド、ガイドローラ、ワイヤ巻き取りローラへと導くワイヤ走行経路に、ワイヤ電極を張設する必要があるが、この際、ワイヤ電極をワイヤ走行経路に沿って張設するために、ワイヤボビンよりワイヤ電極を引き出したとき、その引き出し速度が大きいと、ワイヤボビンの慣性力によりワイヤボビンが廻り続けるため、ワイヤ電極がワイヤボビンよりほどけて外れ、また、それまでに張設したワイヤ走行経路からワイヤ電極が外れる場合がある。ワイヤ電極がワイヤ走行経路から外れる現象はワイヤ電極を引き出す速度が速い場合やボビンの重量が重い場合に顕著である。
ワイヤ電極が外れないようにするためには、ワイヤ電極の反供給方向に一定の張力をかけることが一般的であり、張力が高い程ワイヤ電極は外れにくい。ただし、ワイヤ電極が引き出された場合、トルクモータにより付与される張力が高すぎると、ワイヤ電極を引き出す力がより強く必要である。
【0008】
そこで、本発明の目的は、ワイヤボビンをトルクモータで駆動し該ワイヤボビンから引き出されるワイヤ電極に張力を付与するワイヤ電極供給装置において、ワイヤ電極を引き出す速度が速い場合でもワイヤ電極が走行経路から外れることがないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ワイヤボビンを指令一定トルクで駆動するトルクモータを備え、ワイヤボビンからワイヤ電極をワイヤ走行経路に供給するワイヤカット放電加工機のワイヤ電極供給装置において、前記トルクモータまたは前記ワイヤボビンにその回転速度を検出する速度検出器を設け、該速度検出器によって検出された速度が所定速度に達したとき、前記トルクモータのトルクを上昇させる制御手段を有することを特徴とするワイヤカット放電加工機のワイヤ電極供給装置である。そして、前記制御手段は、前記検出した速度が前記所定速度を越え前記トルクモータのトルクを上昇させ、所定時間経過したとき又は前記速度検出器で検出される速度が前記所定速度以下となったとき、前記トルクモータのトルクを上昇前の値に戻すようにする。
【発明の効果】
【0010】
ワイヤボビンを駆動するトルクモータ又はワイヤボビンの速度を検出する速度検出器を備えただけの簡単な構成で、ワイヤ電極がワイヤ走行経路から外れるのを防止することができる。また、ワイヤ電極がワイヤ走行経路から外れないからワイヤ張設作業が簡単で容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明の一実施形態の概要図である。
ワイヤ電極1が巻かれたワイヤボビン2は、トルクモータ3で駆動され、ワイヤ電極の引き出し方向とは逆方向に指令された所定トルクが付与される。又、ワイヤボビン2又はトルクモータ3の回転軸には速度検出器4が取り付けられている(図1ではワイヤボビン2に速度検出器4が取り付けられている例を示している)。該ワイヤボビン2から取り出されたワイヤ電極1は、複数のガイドローラ14を経由し、ブレーキローラ5と押圧ローラ6で挟まれ、さらに、上ガイド8、被加工物13を加工する加工領域(最初は加工開始穴)を通り、下ガイド9、ガイドローラ14を経由して、ワイヤ巻き取りモータ11で駆動されるワイヤ巻き取りローラ10a,10bで挟まれ、ワイヤ回収箱12に回収されるワイヤ走行経路に配設される。図中、符号7は、ブレーキローラ5を駆動するブレーキ装置のブレーキモータである。又、符号15は、このワイヤカット放電加工機を制御する制御装置であり、従来と同様に、該制御装置15は、プロセッサ、ROM、RAM等のメモリ、ワイヤカット放電加工機の可動部を駆動するモータの制御回路、入出力インタフェース等を備えており、該制御装置15にトルクモータ3、ブレーキモータ7、ワイヤ巻き取りモータ11が接続され、これらモータは制御装置15で制御されるように構成されている。さらに、制御装置15には速度検出器4が接続され、該速度検出器4で検出したワイヤボビン2の回転速度が入力されている。
【0012】
図1においては、ワイヤ電極1をワイヤ走行経路の途中(上ガイド8に挿入する直前)まで、配設した状態を示し、さらに、ワイヤ電極を配設するワイヤ走行経路は破線で示している。
例えば、図1に示す状態までワイヤ電極1を配設し、さらに、ワイヤ走行経路に沿って配設するために、ワイヤ電極1を引っ張り出したとき、その引っ張り速度が大きいとき、ワイヤボビン2の慣性力によりワイヤボビン2が廻り続けワイヤ電極1がワイヤボビン2よりほどけて外れ、さらに、それまでに張設した複数のガイドローラ14,14…からも外れ、ワイヤ走行経路から外れるという現象が生じる。このワイヤ走行経路からワイヤ電極が外れると、再度、最初からワイヤ電極をワイヤ走行経路に沿って張設する作業を行う必要があり、ワイヤ電極の張設作業に時間がかかり、困難な作業となる。
【0013】
そこで、本実施形態では、速度検出器4でトルクモータ3あるいはワイヤボビン2の速度を検出し、ワイヤ引き出しによる速度が所定速度に達した場合、トルクをある一定時間上昇させ、ワイヤ電極のたるみを防止し、その後、ワイヤボビン2の回転速度が問題ないレベルに達したら、トルクモータ3のトルクを通常の値に引き下げ、その後の引き出し動作を行うように制御する。
【0014】
図2は、このワイヤ電極1を引き出す際の、引き出し速度が大きいときのワイヤ電極1の弛み防止動作の説明図である。図2において、Vmaxは速度検出器4で検出される速度で、ワイヤ電極1がワイヤ走行経路から外れる速度、Vsは速度検出器4で検出される速度で、該速度Vs以上になるとトルクモータ3の出力トルクを所定量上昇させるものである。又、Taはトルクモータ3が通常出力している指令トルクであり、Tbはトルクを増大させるときの指令トルクである。
【0015】
この図2に示されるように、ワイヤ電極1の引き出し速度が、所定速度Vs以下であれば、制御装置15は、トルクモータ3の出力トルクを通常時のトルクTaを指令して該トルクTaに保持させている。しかし、引き出し速度が速く、速度検出器4で検出される速度が、設定されている所定速度Vsを越えると、制御装置15は、指令トルクを所定の値のTbに上昇させ、トルクモータ3の出力トルクを増大させてワイヤ電極1をその引き出し方向とは逆方向に引っ張る力を増大させ、ワイヤ電極1の弛み発生を防止し、ワイヤ電極1がそれまでに張設されていたワイヤ走行経路から離脱して外れることを防止する。その後、ワイヤボビン2(又はトルクモータ3)の速度が所定速度Vs以下まで低下するのに十分な所定時間経過した後、制御装置15は、トルクモータ3に通常時のトルクTaを指令する。
【0016】
トルクモータ3の出力トルクを増大させる所定速度Vsは、ワイヤ電極1がワイヤ走行経路から外れる速度よりは低い値であるが、この所定速度Vsをあまり低い値に設定すると、ワイヤ電極を引き出すことができる速度が遅くなる。そのため、この所定速度Vsは、ワイヤ電極がワイヤ走行経路から外れる速度に近い方が、一般に使い勝手がよくなる。この所定速度Vsの決め方として、例えば、トルクモータ3の出力トルクを通常のトルクTaに設定し、ワイヤ電極1を引き出し、ワイヤ電極1がワイヤボビン2からほどけてワイヤ走行経路から外れるときの最小速度を速度検出器4からの信号によって求め、この最小速度をワイヤ電極1がワイヤ走行経路から外れる速度Vmaxとする。そして、制御装置15からトルクモータ3へのトルク増大指令が出され、実際にトルクモータ3の出力トルクが増大するまでの遅れ時間等を考慮して、求めた、ワイヤ電極1がワイヤ走行経路から外れる速度Vmaxより遅い速度を仮の所定速度Vs’として設定し、ワイヤ電極1を引き出し、該仮の所定速度Vs’を速度検出器4で検出したときトルクモータ3のトルクを通常時のトルクTaから上昇時のトルクTbに切り換え、速度検出器4で検出される速度が、ワイヤ電極1がワイヤ走行経路から外れる速度Vmaxを越えないかを、通常一般的に行うワイヤ引き出し速度で実験する。この実験を行い普通に行う引き出し速度で速度検出器4で検出される速度が前記Vmaxを越えるようであれば(ワイヤボビン2のワイヤ電極1がほどける)、仮の所定速度Vs’をさらに低下させる。こうして、通常の動作で行うワイヤ電極1を引っ張り出す速度で、ワイヤボビン2のワイヤ電極1がほどけず、速度検出器4で検出される速度が、ワイヤ電極1がワイヤ走行経路から外れる速度Vmaxを越えない仮の所定速度Vs’が求まると、この仮の所定速度Vs’をトルクモータ3の出力トルクを上昇させる基準となる所定速度Vsとして設定する。
又、この所定速度Vsをワイヤ電極1がワイヤ走行経路から外れる速度Vmaxより所定量小さい速度とし、トルクモータ3で上昇させるトルクTbを調整して、ワイヤ電極1がワイヤボビン2からほどけたりワイヤ走行経路から外れないようにしてもよいものである。
【0017】
又、トルクモータ3の出力トルクを上昇させたトルクTbに保持する期間は、ワイヤボビン2の速度が所定速度Vsまで低下するのに十分な時間とする。この上昇させたトルクTbに保持する期間を設定する代わりに、トルクモータ3の出力トルクを大きなトルクTbに上昇させた後、速度検出器4で検出される速度が所定速度Vs以下となるまで、増大させたトルクTbを保持させるようにしてもよい。トルクモータの出力トルクを通常のトルクに復帰させるには、所定速度Vs以下の速度であればよく、例えば、速度検出器4で検出される速度0になるまで、このトルクTbを保持するように制御してもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態の概要説明図である。
【図2】同実施形態におけるトルクモータの出力トルクを増大させるタイミングと期間の説明図である。
【符号の説明】
【0019】
1 ワイヤ電極
2 ワイヤボビン
3 トルクモータ
4 速度検出器
5 ブレーキローラ
6 押圧ローラ
7 ブレーキモータ
8 上ガイド
9 下ガイド
10a,10b ワイヤ巻き取りローラ
11 ワイヤ巻き取りモータ
12 ワイヤ回収箱
13 被加工物
14 ガイドローラ
15 制御装置
【出願人】 【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
【出願日】 平成18年8月30日(2006.8.30)
【代理人】 【識別番号】100082304
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 松司

【識別番号】100088351
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 秀雄

【識別番号】100093425
【弁理士】
【氏名又は名称】湯田 浩一

【識別番号】100102495
【弁理士】
【氏名又は名称】魚住 高博


【公開番号】 特開2008−55539(P2008−55539A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2006−234031(P2006−234031)