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【発明の名称】 複合加工方法
【発明者】 【氏名】藤田 幸三

【氏名】中野 太郎

【要約】 【課題】硬質被加工物に好適な加工方法を提供する。

【構成】導電性の焼結立方晶窒化硼素、焼結ダイヤ、導電性気相合成ダイヤの何れ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の硬質材料である焼結立方晶窒化硼素、焼結ダイヤ、導電性気相合成ダイヤのいずれかからなる略軸対称形状である工具と、
前記工具と同等以下の硬度を有する導電性の硬質材料からなる被加工物と、
前記工具を対称軸回りに回転させる回転手段と、
前記被加工物と前記工具との相対位置を変化させる駆動手段と、
前記被加工物と前記工具間に電圧を印加する電気供給手段を備え、電気供給手段によって被加工物と工具間に電圧を印加するとともに、回転手段によって回転させた工具と被加工物を駆動手段によって近接させつつ相対運動させることにより、被加工物を放電加工しつつ、前記工具の放電面をドレッシングした後、電気供給手段による電圧印加を停止し、回転手段によって回転させた工具の放電面を被加工物の放電加工面とを駆動手段によって接触させつつ相対運動させることにより、被加工物の放電加工面を研削加工することを特徴とする複合加工方法。
【請求項2】
前記工具が略円板形状であり、主として工具の円板外周面で放電加工および研削加工することを特徴とする請求項1記載の複合加工方法。
【請求項3】
前記工具を構成する結晶粒子の粒子径は、前記被加工物が多結晶体である場合その多結晶を構成する粒子径より大きいことを特徴とする請求項1又は2記載の複合加工方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性硬質材料の加工方法に係り、硬質材料であっても寸法精度および面粗度を良好に、かつ効率よく加工するのに好適な加工方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、高硬度な材料を寸法精度および面粗度を良好に仕上げるには研削加工を適用するのが一般的であった。つまり硬い材料からなる多数の砥粒を結合材で固めた砥石を使用して、この砥石を回転させながら被加工物に接触させることにより被加工物を除去する方法である。
砥粒には被加工物より硬い材料を選択するわけであるが、被加工物が硬いほど砥粒との硬度差が小さくなってしまう。その結果、少しづつしか材料を除去できなくなるために加工能率が低くなる問題があった。更には砥粒磨耗の進行が早くなるために頻繁にドレッシングする必要があり、加工に寄与しない無駄な時間が増加するという問題も有った。また、被加工物の寸法精度および面粗度を良好に研削加工するには粒径の小さい砥粒を用いるのが一般的であるが、粒径が小さくなると砥石の目詰まりが発生しやすくなるのでドレッシングがより頻繁に必要となるので無駄時間が増加してしまう。
【0003】
被加工物が導電性である場合は放電加工を適用することが可能である。放電加工は放電発生時の熱で被加工物を除去する方法なので、被加工物が高硬度であっても比較的効率良く加工することが出来る。例えば、放電加工による切削工具の製造方法が特許文献1に開示されている。しかし放電加工によって形成される面には、放電によって溶融した材料が再凝固して付着したり、放電によって微細なクラックが表面に残留したり、いわゆる加工変質層が残るという問題が有った。また放電加工は局所的な放電を繰返して材料を除去するので放電ごとに発生する窪み、いわゆる放電痕によって表面に凹凸が発生するという問題も有った。あるいはエッジ部に放電が集中するためにシャープなエッジやコーナーが得られないという問題も有った。
【0004】
放電加工機で粗加工後、研削盤で仕上げ加工する方法も有る。しかし電極および砥石の準備や被加工物の付け替えによって工数が増加するだけでなく、研削盤に被加工物を取り付ける際に位置ずれを生じてしまう。この位置ずれによって取り残しが発生しないように研削加工の取り代を増やす必要が有るので仕上げ加工の工数が増大してしまう問題があった。被加工物の硬度が高いほど仕上げ加工の工数増大は顕著な問題となる。
電極と砥石を同一機械上に備え、被加工物を着脱することなく放電による粗加工と研削による仕上げ加工をおこなう加工機が特許文献2に開示されている。本加工機によれば被加工物の着脱がないので前述の位置ずれは発生しないが、電極と砥石が別体なので放電加工後に研削加工を開始する位置、すなわち被加工面と砥石が接触する位置を検出する機構が必要となる問題が有った。
【0005】
放電加工の電極と研削加工の砥石を兼用する加工方法が特許文献3に開示されている。本加工方法は導電性結合材により焼結された高強度の焼結材料からなる工具を加工するものであり、放電加工によって被加工物の結合材相を選択的に除去ないし脆弱化させる工程と、研削加工によって高強度の焼結材料を除去する工程を順次おこなうことを特徴としている。前述の電極兼砥石として、金属結合材中に高強度の非導電性材料(例えばダイヤモンド等)を埋設したメタルボンド型工具(特に、研削工具)を用いると好適であるとされている。
しかし本加工方法によれば、被加工面に導電性結合材が多い時は放電加工をおこない、ダイヤモンド等の硬質材料粒子が露出されると研削加工を順次おこなうので、最終的な被加工面には放電加工された部分と研削加工された部分が混在してしまう。従って前述の放電変質層や放電痕を完全に除去することができないだけでなく、シャープなエッジやコーナーが得られないという問題も有った。 またメタルボンド型研削工具を電極として使用しているので、放電加工時にはメタルボンドも脆弱化されてしまう問題も有った。
【特許文献1】特許第3259350号公報
【特許文献2】特開2003−311535号公報
【特許文献3】特公平5−20209
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、硬質材料であっても寸法精度および面粗度を良好に、かつ効率よく加工する方法を提供することにある。更には、硬質材料であってもシャープなエッジやコーナーを成形できる加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明によれば、導電性の硬質材料である焼結立方晶窒化硼素、焼結ダイヤ、導電性気相合成ダイヤのいずれかからなる略軸対称形状である工具と、前記工具と同等以下の硬度を有する導電性の硬質材料からなる被加工物と、前記工具を対称軸回りに回転させる回転手段と、前記被加工物と前記工具との相対位置を変化させる駆動手段と、前記被加工物と前記工具間に電圧を印加する電気供給手段を備え、電気供給手段によって被加工物と工具間に電圧を印加するとともに、回転手段によって回転させた工具と被加工物を駆動手段によって近接させつつ相対運動させることにより、被加工物を放電加工しつつ、前記工具の放電面をドレッシングした後、電気供給手段による電圧印加を停止し、回転手段によって回転させた工具の放電面を被加工物の放電加工面とを駆動手段によって接触させつつ相対運動させることにより、被加工物の放電加工面を研削加工することすることを特徴とする。
【0008】
本発明によると、工具として、焼結立方晶窒化硼素、焼結ダイヤ、導電性気相合成ダイヤは、硬質粒子が強固に結合しており、従来のメタルボンド型研削工具のように粒界にメタルボンドのような領域を殆ど有しないので、放電加工時にメタルボンドの領域などに応じて溶融することにより生じる粒子の突出状態の偏りや、粒子のメタルボンドによる保持力の低下による脱離(粒子保持の脆弱化)を回避でき、そのため、放電加工によって工具表面は、結晶の粒界のみを溶融するのではなく、表面全体に砥石の目として効果的な放電痕が形成される(ドレッシング)。被加工物の被加工面は放電加工でニアネットに加工された後に連続的に、同時に効果的にドレッシングされた工具によって研削仕上げされるので高硬度の材料であっても効率よく加工できるとともに、放電変質層や放電痕の無い良好な面粗度の加工面を得ることが可能になる。また、放電加工で丸くなったエッジやコーナーをシャープに仕上げることが可能になる。
また、本発明によると、放電加工から研削加工に移行するにあたり被加工物の脱着や工具の変更が無いので被加工物と工具の位置関係が変わらない。従って研削加工の取り代を最小限にできるともに、研削加工に移行する際に被加工面と工具の接触位置を検出する必要が無い。
【0009】
また請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明において、工具が略円板形状であり、主として工具の円板外周面で放電加工および研削加工をする。
これによって、放電加工による工具の形状崩れの影響を低減することができる。即ち、放電加工では被加工物が除去されるだけでなく電極も消耗してしまうので、電極の形状変化が被加工物に転写される結果、被加工物に所望の形状が得られない問題がある。従って、被加工物に所望する形状に対して厚さの薄い略円板形状工具(電極)を用いることにより、工具の形状変化を厚さの範囲に留めることができる。従って工具のツルーイングをおこなう必要が無く、効率良く加工を続けることが可能となる。
【0010】
また、請求項3記載の発明によれば、前記工具を構成する結晶粒子の粒子径は、前記被加工物が多結晶体である場合その多結晶を構成する粒子径より大きくすることで、研削加工によって被加工物の放電変質層および放電痕を除去するまでに研削加工部位となる工具外周の凹凸が摩滅しないようにすることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、硬質材料であっても寸法精度および面粗度を良好に、かつ効率よく加工するできるという効果がある。更には、高硬度の材料であってもシャープなエッジやコーナーを成形できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明では、工具の材質として硬質粒子を強固に結合させた焼結立方晶窒化硼素、焼結ダイヤ、導電性気相合成ダイヤのいずれかを利用して、放電加工用の電極とし、被加工物を放電加工しながら、工具自身も砥石として必要な表面性状を確保できるように工具表面がドレッシングされる。これらの材料は硬質粒子が強固に結合しているので、メタルボンド砥石と比較して放電加工による粒子保持の脆弱化を低減することが可能になる。焼結立方晶窒化硼素および焼結ダイヤは、立方晶窒化硼素およびダイヤの微細粒子を焼成助剤となる金属とともに超高温高圧下で焼成したものであり導電性が有る。気相合成ダイヤは例えばCVDによって合成され、硼素をドープすることにより導電性を有するものが市販されている。
【0013】
また、本発明は、被加工物をしても、上記工具と同じ高硬度な材料を用いて、砥石、エンドミル、バイト、リーマ等の工具、あるいは型部材を製造する際に、従来のメタルボンド型工具の脆弱化による加工不具合を改善できるので、効果的に利用できるものある。更に、前記工具あるいは型部材が、剛性の低い小径、微細な形状をしている場合には、加工時に被加工物に負荷される力を最小限にできる本発明はより効果的となる。すなわち、被加工物にほとんど力が負荷されない放電加工でニアネットシェイプに粗加工し、放電加工時に切れ味良くドレッシングされた工具で最小限の研削仕上げをおこなうので、剛性の低い被加工物の変形による悪影響を大幅に低減できる。
【0014】
以下、発明を実施するための最良の形態を図面により詳細に説明する。
【0015】
第一の実施形態について、図1について、説明する。
まず、本発明によって丸棒端部を半球形状に加工する場合の構成について、正面図である図1を用いて説明する。被加工物1は超硬合金101の一端に焼結ダイヤ102をロー付けしたものを略丸棒形状に成形してあり、焼結ダイヤ102側が半球形状に加工される。被加工物1は超硬合金側の端部を被加工物回転モーター2に把持されており、被加工物1の丸棒軸であるA軸回りに回転可能となっている。被加工物回転モーター2は揺動ステージ3に固定されており、被加工物1を円弧W方向に揺動可能となっている。揺動ステージ3はZステージ4に固定されておりZ軸方向に移動可能であるとともに、Zステージ4はXステージ5に固定されておりX軸方向に移動可能となっている。焼結ダイヤ製で円板形状の工具6は工具回転モーター7に締結されており、工具6の円板軸であるB軸回りに回転可能となっている。工具6の下部には放電油あるいは研削液8を満たした容器9が設置されており、工具6の下端は放電油あるいは研削液8に浸漬されている。被加工物1および工具6間には図示されない電気供給手段によって電圧を印加することが可能となっている。なお本実施例での電気供給手段は直流電源、コンデンサと抵抗からなるCR回路、回転する被加工物1および工具6に電気を供給するブラシ、各々を接続する電線で構成されている。また、各構成要素は図示されないNC制御装置によって任意に制御される。
【0016】
次に上記構成によって、被加工物1の焼結ダイヤからなる端部を半球状に成形する手順を説明する。
まず被加工物1と工具6が干渉しないようにZステージ4によって揺動ステージ3をZ軸上方へ移動させた後、被加工物1を被加工物回転モーター2に把持する。この時、成形されるべき被加工物半球形状の中心(C点)が揺動ステージ3の揺動中心軸上に位置するように被加工物回転モーター2と揺動ステージ3の位置を微調整する。次に成形されるべき被加工物半球形状の中心(C点)が工具6の円板面上に位置するようにXステージを移動させる。以上の位置決めが完了したら被加工物1および工具6を回転させるとともに電気供給手段によって両者間に電圧を印加する。この状態で揺動ステージ3を揺動させながら徐々にZステージ4を下方に移動させることにより、被加工物1と工具6の間隔が狭くなって放電加工が開始される。放電加工の進行に応じてZステージ4を下方に移動させることにより、被加工物1の焼結ダイヤ102側がほぼ半球形状になると放電加工が完了する。なお、加工するにあたって被加工物1と工具6がXおよびZ方向に接触する位置を予め知っておくと、接触する直前まで両者を高速で接近させることにより速やかに加工へ移行することができるので好適である。本発明の構成では被加工物1と工具6が両方とも導電性なので、電気的導通によって容易に両者の接触位置を検出することができる。
【0017】
本実施例では工具6の下端が放電油に浸漬されているので、その回転によって放電油が放電加工点に供給されて油中放電加工となる。放電加工点に放電油を直接かけ流しても構わないし、工具6の外周の任意位置に放電加工で発生するスラッジを除去する機構を設けても良い。また油の代わりに水を使用して水中放電加工にしても良く、油や水を使わずに気中放電加工にしても良い。
放電加工の進行に応じてZステージ4を下方に移動させるにあたっては、放電の状態を検出してその放電の状態が略一定となるようにZステージ4の移動を制御することが好ましい。これによって被加工物1と工具6の距離すなわち放電ギャップを均一にできるので放電加工による被加工面の仕上りを均一にできる。放電状態の検出方法としては、被加工物1と工具6間の電圧、電流の変化を測定することにより放電加工に投入されたエネルギーや放電の発生頻度を知ることができる。
【0018】
揺動ステージ3によって被加工物1を揺動させる速度は一定であっても構わないが、前述のように放電の状態を検出して揺動速度を制御することが好ましい。これによって取り代の少ない時、例えば半球頂点付近の加工時には送り速度が速くなるので加工時間を短くすることができる。また加工初期は略円柱形状である被加工物1の角部のみを加工することになるので、それに合わせて揺動角度徐々に大きくすることによって加工時間を短くすることができる。
電気供給手段によって被加工物1および工具6間に電圧を印加する際の極性は、両者の材質に応じて被加工物1の除去量が工具6の除去量より多くなるように決めると良い。その時に、被加工物1の面粗さが工具6の面粗さより大きくなる場合には、放電加工終盤に両者の極性を入替えると好適である。これによって放電加工完了時に被加工物1の面粗さを小さく、次の研削加工で砥石として使用する工具6の面粗さを大きくすることができる。なお、被加工物1と工具6がともに焼結ダイヤの場合、および被加工物1が焼結ダイヤで工具6が導電性気相合成ダイヤの場合には、被加工物1をプラス、工具6をマイナスとすることにより、被加工物1の除去量が工具6の除去量より多く、かつ被加工物1の面粗さが工具6の面粗さより小さくなり好適であった。
【0019】
放電加工が完了すると電気供給手段による電圧印加を停止して、容器9の放電加工油を研削液に変更した後、Zステージ4を下方に移動させることにより被加工物1と工具6が接触して研削加工が開始される。研削加工の進行に応じてZステージ4を徐々に下方に移動させることにより、被加工物1の半球形状加工面から放電変質層および放電痕が除去されると研削加工が完了する。研削による加工量を最小限にするには放電加工時の放電変質層および放電痕の凹凸を小さくすることが望ましい。そのために放電加工のエネルギー(電圧、コンデンサ容量等)を小さくすると加工時間が長くなってしまうので、エネルギーを大きくした粗放電で加工した後、エネルギーを小さくした仕上げ放電加工をすると効率的である。
放電加工から研削加工に移行するにあたって被加工物回転モーター2と工具回転モーター7の回転および揺動ステージ3の揺動は維持されるが、必要に応じてその回転速度、揺動速度を変更して構わない。また放電加工時と同様に研削液8を研削加工点に直接かけ流しても構わない。なお被加工物1の被加工面積に対して工具6の円板外周面積を広くしておくことが好ましい。これは研削加工によって被加工物1の放電変質層および放電痕を除去するまでに工具6外周の凹凸が摩滅しないようにするためである。
本実施例では被加工物1と工具6の材質が共に同じ材質(焼結ダイヤ)なので、工具6のダイヤ粒径を被加工物1のダイヤ粒径と同等以上にすることが好ましい。これも研削加工によって被加工物1の放電変質層および放電痕を除去するまでに工具6外周の凹凸が摩滅しないようにするためである。
被加工物1が超硬合金で工具6が焼結ダイヤの場合、放電加工から研削加工に移行する前に、工具6を自らと同等以上の硬度を有する材料、例えば焼結ダイヤに擦り合せた後に研削加工をおこなうと、より面粗度の低い良好な加工面得られた。これは擦り合わせによって工具6の凸凹が均一化された効果であり、被加工物1と工具6の硬度差が有る場合に有効な手段となる。
【0020】
次に、第二の実施形態について、図2について、説明する。
本発明によって丸棒円筒面に螺旋溝を加工する場合の構成について、天面図である図2を用いて説明する。超硬合金製の丸棒形状である被加工物1はその一端を被加工物回転モーター2に把持されており、被加工物1の丸棒軸であるA軸回りに回転可能となっている。焼結ダイヤ製で円板形状の工具6は工具回転モーター7に締結されており、工具6の円板軸であるB軸回りに回転可能となっている。工具回転モーター7はYステージ10に固定されており、工具6をY方向に移動可能となっている。Yステージ10は回転ステージ11に固定されており、円弧V方向に回転可能となっている。図示されないが、実施例1の構成と同じように工具6の下部には放電油あるいは研削液8を満たした容器9が設置されており、工具6の下端は放電油あるいは研削液8に浸漬されている。被加工物1および工具6間には図示されない電気供給手段によって電圧を印加することが可能となっている。なお本実施例での電気供給手段は直流電源、コンデンサと抵抗からなるCR回路、回転する被加工物1および工具6に電気を供給するブラシ、各々をつなぐ電線で構成されている。
【0021】
次に上記構成によって、超硬合金からなる被加工物の円筒面に螺旋溝を加工する手順を説明する。まず被加工物1と工具6が干渉しないようにXステージ5、Yステージ10、回転ステージ11を移動させた後、被加工物1を被加工物回転モーター2に把持する。工具6の方向が加工すべき螺旋溝の方向と一致するように回転ステージ11を回転させるとともに、工具6の位置が加工すべき螺旋溝の深さと一致するようにYステージ10を移動させる。この時、被加工物1と工具6が干渉しないようにXステージ5によって被加工物1を図面左方向に移動させておく。以上の位置決めが完了したら工具6を回転させるとともに電気供給手段によって両者間に電圧を印加する。この状態で被加工物回転モーター2によって被加工物1を回転させつつXステージ5によって被加工物1を図面右方向に移動させることにより、被加工物1と工具6の間隔が狭くなって放電加工が開始される。この時、被加工物1のA軸回りの回転とX軸方向の移動を連動させる、すなわち回転量と移動量を所望する螺旋角度に合わせて比例させる。放電加工の進行に応じて被加工物1を回転させつつX軸右方向に移動させることにより、被加工物1の所定位置まで溝が形成されたら放電加工を完了する。
【0022】
放電加工が完了すると電気供給手段による電圧印加を停止して、容器9の放電加工油を研削液に変更した後、Yステージ10およびXステージ5を移動させることにより被加工物1と工具6が接触して研削加工が開始される。前述のように被加工物1のA軸回りの回転とX軸方向の移動を連動させることによって工具6を被加工物1に形成された螺旋溝にトレースさせて、螺旋溝面の放電変質層および放電痕が除去されると研削加工が完了する。なお、成形する螺旋溝形状と工具6の円板形状を略一致させておくと、被加工物1への溝成形が容易となるので好適である。
【0023】
次に、第三の実施形態について説明する。本実施形態では、第一の実施形態で被加工物1に成形した半球形状に、図3に示すようなすくい面と逃げ面を加工することにより、切削工具としての切刃を形成する。まず、すくい面の加工方法を図4に基いて説明する。設備の構成は第一の実施形態(図1)と同じなのでその説明は省略する。
【0024】
被加工物1に半球形状が成形されたら、被加工物1と工具6が干渉しないようにZステージ4およびXステージ5を移動させる。その後、被加工物1のA軸が水平となるように揺動ステージ3を回転させて、必要な範囲にすくい面が形成されるようにXステージ5を位置決めする。位置決めが完了したら、被加工物1および工具6間に電気供給手段によって電圧を印加するとともに工具6を回転させる。(被加工物1は回転させない)この状態で徐々にZステージ4を下方に移動させることにより、被加工物1と工具6の外周面の間隔が狭くなって放電加工が開始される。放電加工の進行に応じてZステージ4を下方に移動させることにより、被加工物1の所定の位置にすくい面が形成されたら放電加工を終了する。なお、すくい面を形成したい範囲に対して工具6の幅が狭い場合は、Zステージ4の上昇/Xステージ5の移動/Zステージ4の下降による放電加工、を繰返して所望の範囲全体にすくい面を形成する、あるいはZステージを所定の高さまで放電加工を終了した後、徐々にXステージ5を移動させて放電加工を続けることによって所望の範囲全体にすくい面を形成してもよい。また、円板状工具6の外周面を利用して加工しているので厳密にはすくい面が円弧面となってしまうが、被加工物1の被加工サイズに対して円板状工具6の半径を十分に大きくとることにより被加工面を平面と見なすことができる。
【0025】
放電加工が完了すると電気供給手段による電圧印加を停止して、容器9の放電加工油を研削液に変更した後、Zステージ4を下方に移動させることにより被加工物1と工具6が接触して研削加工が開始される。研削加工の進行に応じてZステージ4を徐々に下方に移動させることにより、被加工物1のすくい面から放電変質層および放電痕が除去されると研削加工が完了する。放電加工から研削加工に移行するにあたり、工具6の回転数を高くすると研削加工により好適である。なお、被加工物1の寸法が小さく剛性が低い場合は研削加工時の変形が大きくなる為、研削加工量を追い込み量(被加工物1と工具6を干渉させる量)で管理することが困難となる。この場合は研削量を研削時間で管理すれば良く、その研削時間は追い込み量/被加工物1の形状/被加工物1および工具6の材質/被加工物1および工具6の接触面積/工具6の回転数などを加味して決めると良い。
【0026】
次に、逃げ面の加工方法を図5(正面図)、図6(側面図)に基いて説明する。設備の構成は第一の実施形態(図1)と同じなのでその説明は省略する。被加工物1にすくい面が形成されたら、被加工物1と工具6が干渉しないようにZステージ4およびXステージ5を移動させる。その後、必要な逃げ角に合わせて工具6を図6の矢印方向に移動させる。すなわち円をなす工具6の外周面を利用し、回転中心であるB点上方から加工点をずらすことにより、被加工物1を傾けることなく容易に逃げ角を形成することができる。工具6を移動させる方向/量は必要な逃げ角と円板状工具6の外径から算出できる。この加工方法は逃げ面加工だけでなく、任意の角度を持つ面を形成する場合に有効である。なお、すくい面加工と同様に逃げ面加工においても円板状工具6の外周面を利用して加工しているので、厳密には逃げ面が円弧面となってしまうが、被加工物1の被加工サイズに対して円板状工具6の半径を十分に大きくとることにより被加工面をほぼ平面と見なすことができる。工具6の移動が完了したら被加工物1および工具6間に電気供給手段によって電圧を印加するとともに、揺動ステージ3によって被加工物1を半球面の中心であるC点回りに揺動させ、さらに工具6を回転させる。この状態で徐々にZステージ4を下方に移動させることにより、被加工物1と工具6の外周面の間隔が狭くなって放電加工が開始される。放電加工の進行に応じてZステージ4を下方に移動させることにより、被加工物1の所定の位置に逃げ面が形成されたら放電加工を終了する。なお、被加工物1は半球面の半径/逃げ角/工具6の移動量が既知なので、すくい面と逃げ面によって切刃を形成するために必要なZ方向の放電加工量を算出することができる。(図3参照)
【0027】
放電加工が完了すると電気供給手段による電圧印加を停止して、容器9の放電加工油を研削液に変更した後、Zステージ4を下方に移動させることにより被加工物1と工具6が接触して研削加工が開始される。研削加工の進行に応じてZステージ4を徐々に下方に移動させることにより、被加工物1の逃げ面から放電変質層および放電痕が除去されると研削加工が完了する。このとき重要なのが工具6の回転方向を図6に示す方向にすることである。逆の方向にすると研削によってすくい面方向に力が作用する為、被加工物1の切刃にカケが発生し易くなる。なお、これは逃げ面加工の場合だけでなくシャープなエッジを形成したい場合に有効である。これまでに記載したすくい面と逃げ面の加工以外に各種逃げ加工を付すことにより、被加工物1が切削工具として完成となる。各種逃げ加工とは、回転する切削工具の切刃を被加工物に干渉させて切削加工するにあたり、切削工具の切刃以外の部分が被加工物に干渉しないように除去したり、加工に寄与できない回転中心の切刃を除去することである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の加工方法により、例えば超硬合金、焼結立方晶窒化硼素、焼結ダイヤ、気相合成ダイヤ、炭化珪素、炭化硼素などで導電性を持たせた硬質材料からなる工具刃先や型部材を、寸法精度および面粗度を良好に、かつ効率よく加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による第一の実施形態を示す正面図である。
【図2】本発明による第二の実施形態を示す天面図である。
【図3】本発明による第三の実施形態によって成形された加工物の図である。
【図4】本発明による第三の実施形態(すくい面加工)を示す正面図である。
【図5】本発明による第三の実施形態(逃げ面加工)を示す正面図である。
【図6】本発明による第三の実施形態(逃げ面加工)を示す側面図である。
【符号の説明】
【0030】
1…被加工物
2…被加工物回転モーター
3…揺動ステージ
4…Zステージ
5…Xステージ
6…工具
7…工具回転モーター7
8…放電油あるいは研削液
9…容器
10…Yステージ
11…回転ステージ
101…超硬合金
102…焼結ダイヤ
【出願人】 【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
【出願日】 平成19年6月27日(2007.6.27)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−30187(P2008−30187A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2007−168393(P2007−168393)