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【発明の名称】 型彫り・細穴複合放電加工方法および装置
【発明者】 【氏名】石綿 紘

【氏名】横道 茂治

【氏名】村上 渉

【氏名】石綿 朋茂

【要約】 【課題】加工面積が極端に変化する形状の加工時間を大幅短縮が可能な型彫り・細穴複合放電加工方法の提供。

【構成】1.細穴部の加工面積に対して加工面積が極端に大きく変化する部分を有する加工穴形状の型彫り・細穴複合放電加工方法にして、加工面積が小さい細穴部の加工を棒状電極で加工後、加工面積が大きい部分を総型型彫り加工電極により加工することを特徴とする型彫り・細穴複合放電加工方法。2.Z軸スピンドルユニット41に棒状電極37aを着脱自在に設け、電極ガイド81を備えた電極ガイドユニット73を設け、棒状電極をZ軸スピンドルユニットに装着した時には、電極ガイドユニットをW軸スライド35に装着して細穴加工を行い、総型型彫り加工電極をZ軸スピンドルユニットに装着した時には、電極ガイドユニットをW軸スライド下端部のクランプ手段から取外して型彫り加工を行うことを特徴とする型彫り・細穴複合放電加工装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細穴部の加工面積に対して加工面積が極端に大きく変化する部分を有する加工穴形状の型彫り・細穴複合放電加工方法にして、加工面積が小さい細穴部の加工を棒状電極で加工後、加工面積が大きい部分を総型型彫り加工電極により加工することを特徴とする型彫り・細穴複合放電加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の型彫り・細穴複合放電加工方法において、前記加工穴形状が前記細穴の上部に上方向に開放する漏斗状部分を有する加工穴形状であることを特徴とする型彫り・細穴複合放電加工方法。
【請求項3】
W軸スライドにZ軸スピンドルユニットを昇降自在に設け、該Z軸スピンドルユニットに棒状電極または総型型彫り加工電極を着脱自在に設け、前記棒状電極の下端部をガイドする電極ガイドを備えた電極ガイドユニットを前記W軸スライド下端部に着脱交換自在に設け、前記棒状電極使用時には電極ガイドユニットを前記W軸スライド下端部に装着し、前記Z軸スピンドルユニットを昇降させて細穴加工を行い、前記総型型彫り加工電極使用時には電極ガイドユニットを取り外し、前記Z軸スピンドルユニットを下限位置に移動した状態で、前記W軸スライドを昇降させて型彫り加工を行うことを特徴とする型彫り・細穴複合放電加工装置。
【請求項4】
請求項3に記載の型彫り・細穴複合放電加工装置において、前記電極ガイドユニットに前記W軸スライドの下端部に設けたクランプ手段に着脱可能に係合する係合部を設けたことを特徴とする型彫り・細穴複合放電加工装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は型彫り・細穴複合放電加工方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、細穴の上部に上方向に開放する漏斗状部分を有する形状の細穴の放電加工においては、棒状電極の下部をガイドする電極ガイドの下部に、棒状電極を貫通自在の貫通孔を備えた型彫り用の型彫り電極を装着可能に設け、この型彫り電極によりワークに型彫り加工を行った後、前記型彫り電極を貫通自在の細穴加工用の棒状電極で前記ワークに細穴加工を行う方式もある(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、特許文献1による方式においては、型彫り加工部分の形状が同一でも、細穴部の直径またはその位置が異なる場合には、その都度、型彫り電極を製作しなくてはなず、型彫り電極の製作コストが大きくなるという問題もある。
【0004】
また、逆に型彫り電極の細穴部分の穴径が比較的に大きい場合には、型彫り加工時にその穴形状がワークに転写されるので、細穴加工時に転写された形状を除去するために棒状電極の消耗が多くなるなどの問題もある。
【0005】
また、図13に示すようなワークWの細穴201の上部に上方向に開放する漏斗状部分203を有し、この漏斗状部分203の加工面積が前記細穴部の加工面積に対して極端に大きく変化する形状の細穴の加工を行う場合、従来、総型型彫り加工電極205により加工しているが、電極先端部の加工面積の少ない放電加工条件で加工を行うため、加工時間が長くなり加工コストも大きくなるという問題がある。
【0006】
さらに、その加工過程は、図14a〜図14cに示すように、総型型彫り加工電極205の先端部の加工面積が少ない部分での加工が多くなり、電極先端部の消耗が大きくなり、総型型彫り加工電極を1穴の加工毎に交換する必要があった。また、総型型彫り加工電極の先端部の直径は、細い場合には0.3mm程度であるため先端部が非常に破損しやしく取り扱いにくいという問題もある。
【特許文献1】特開2005−7497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の如き問題を解決するためになされたものであり、本発明の課題は、加工面積が細穴部の加工面積に対して極端に大きく変化する形状の加工における加工時間を大幅に短縮が可能な型彫り・細穴複合放電加工方法と装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決する手段として請求項1に記載の型彫り・細穴複合放電加工方法は、細穴部の加工面積に対して加工面積が極端に大きく変化する部分を有する加工穴形状の型彫り・細穴複合放電加工方法にして、加工面積が小さい細穴部の加工を棒状電極で加工後、加工面積が大きい部分を総型型彫り加工電極により加工することを要旨とするものである。
【0009】
請求項2に記載の型彫り・細穴複合放電加工方法は、請求項1に記載の型彫り・細穴複合放電加工方法において、前記加工穴形状が前記細穴の上部に上方向に開放する漏斗状部分を有する加工穴形状であることを要旨とするものである。
【0010】
請求項3に記載の型彫り・細穴複合放電加工装置は、W軸スライドにZ軸スピンドルユニットを昇降自在に設け、該Z軸スピンドルユニットに棒状電極または総型型彫り加工電極を着脱自在に設け、前記棒状電極の下端部をガイドする電極ガイドを備えた電極ガイドユニットを前記W軸スライド下端部に着脱交換自在に設け、前記棒状電極使用時には電極ガイドユニットを前記W軸スライド下端部に装着し、前記Z軸スピンドルユニットを昇降させて細穴加工を行い、前記総型型彫り加工電極使用時には電極ガイドユニットを取り外し、前記Z軸スピンドルユニットを下限位置に移動した状態で、前記W軸スライドを昇降させて型彫り加工を行うことを要旨とするものである。
【0011】
請求項4に記載の型彫り・細穴複合放電加工装置は、請求項3に記載の型彫り・細穴複合放電加工装置において、前記電極ガイドユニットに前記W軸スライドの下端部に設けたクランプ手段に着脱可能に係合する係合部を設けたことを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜4の発明によれば、極端に加工面積が小さい部分を棒状またはパイプ電極で加工ができ、加工時間が従来の約3分の一程度に短縮できる。また、型彫り電極の消耗が少なくなり、その結果、多数の穴を有する製品の総型型彫り電極による加工が可能となる。
【0013】
また、極端に加工面積が変化する加工において、加工面積の少ない部分を棒状電極またはパイプ電極により加工し、加工面積の大きい部分の加工を総型型彫り電極により加工する2工程の加工に分けることにより、電極破損も少なくなり電極の取り扱いが容易となった。
【0014】
また、細穴部の直径またはその位置が異なる場合でも、型彫り加工部分の形状が同一の場合には、共通の型彫り電極を使用することが可能となる。
【0015】
また、総型型彫り電極を使用する加工時には、Z軸スピンドルユニットを下限まで下降させた後、W軸スライドの昇降を制御して加工を行うので、総型型彫り電極の電極保持軸を長くする必要がない。これにより、加工時にW軸スライドの下端部とワークとが干渉するのを回避することができる。また、総型型彫り電極の電極保持軸を短くできるので、加工精度の高い加工を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面によって説明する。
【0017】
図1は本発明に係る6軸制御(X,Y,W,Z,A,B)の型彫り・細穴複合放電加工装置の一実施の形態を示したものである。さて、図1を参照するに、総括的に示す型彫り・細穴放電加工装置1の基台3上には、図示省略の駆動手段及びY軸駆動モータMによりY軸方向に移動位置決め可能なY軸テーブル5が設けてある。
【0018】
前記Y軸テーブル5には受け皿7を一体的に固定して設け、この受け皿7上に絶縁体である石定盤9を設けると共に、この石定盤9上にL字形のブラケット部材11が一体的に設けてある。
【0019】
上述のブラケット部材11上には、電気伝導度の小さい純水などの加工液13を入れるための加工槽15が取り付てあり、この加工槽15内にワークWを固定するためのチルト可能な公知のターンテーブル装置17が設けてある(例えば、特開2002−307248号公報)。
【0020】
上述のターンテーブル装置17は、Z軸(図1の上下方向)に平行な軸心を回転中心とするA軸と、A軸に直交(Y軸に平行)する軸心を回転中心とするB軸(チルト軸)とを備えている。
【0021】
上述のB軸駆動部としてのB軸回転軸19は、前記L字形ブラケット部材11の水平底部11aから前記加工槽15の後側(図1において右側)の壁面に沿って上方に延伸するB軸取付部11bに回転自在に軸支してある。このB軸回転軸19は前記加工槽15の後側壁面を貫通して加工槽15内部のほぼ中央部まで延伸させて設けてある。
【0022】
前記B軸回転軸19の左端の上部には、減速機(図示省略)を介してターンテーブル21が回転可能に取付けてある。B軸回転軸19の回転駆動は前記加工槽15の外部に設けたB軸駆動モータ(図示省略)で行われ、またターンテーブル21の回転駆動は、B軸回転軸19の軸心に沿って設けた外部に開口した「めくら穴」(図示省略)を介してA軸駆動モータ(図示省略)により回転駆動ができるように設けてある。
【0023】
前記ターンテーブル21の裏面には、環状の通電リング(図示省略)が設けてあり、ターンテーブル21はこの通電リングを介して放電電源(図示省略)に接続してある。
【0024】
上記構成において、制御装置(図示省略)の制御の下にA軸駆動モータ(図示省略)を適宜に回転駆動させれば、ターンテーブル21をA軸中心に適宜な角度回転させることができる。
【0025】
また、同様にB軸駆動モータ(図示省略)を適宜に正転または逆転駆動させれば、ターンテーブル21をB軸を中心に時計方向または反時計方向へチルト(Tilt;傾斜)させることができる。さらに、前記Y軸駆動モータMを適宜に回転駆動することにより、ターンテーブル21をY軸方向の任意の位置に位置決めすることができる。
【0026】
前記加工槽15の後方(図1において右方)の前記基台3上には、図1を前側(図1において左側)から見て左右に立設した一対の支柱25(a,b)と、この一対の支柱25(a,b)の上部に水平に懸架した梁部材27からなる門型フレームが設けてある。
【0027】
門型フレームの梁部材27には、蛇腹31に保護されたX軸ガイドレール(図示省略)が設けてあり、このX軸ガイドレールにX軸駆動モータM(図示省略)に駆動されるX軸キャリッジ33が前記Y軸に直交するX軸方向に移動位置決め自在に設けてある。
【0028】
また、前記X軸キャリッジ33には、上下に延伸した円筒状のW軸スライド35に一体的に設けた係合部35eが前記Z軸に平行なW軸に沿って昇降自在に係合してある。そして、このW軸スライド35は、このW軸スライド35の上端部に設けたW軸駆動モータMにより回転駆動されるW軸送りねじ36に螺合するナット部材38を介してW軸の任意の位置に位置決め可能に設けてある。
【0029】
上述のW軸スライド35には、棒状電極37aまたは総型型彫り加工電極37bを装着した電極ホルダ39aまたは後述の電極ホルダ39bを着脱自在のチャック113(図6参照)を備えたZ軸スピンドルユニット41がガイド部材43を介してZ軸方向に昇降自在に係合してある(図7,8参照)。
【0030】
なお、前記棒状電極37aなる用語は、中空のパイプ電極および中実の棒状電極の両方を意味するものとして使用している。
【0031】
前記Z軸スピンドルユニット41は、前記W軸スライド35の上端部に設けたZ軸駆動モータMにより回転駆動されるZ軸送りねじ44に螺合するナット部材46を介して、前記W軸スライド35に対して相対的にZ軸方向の任意の位置へ移動位置決め可能に設けてある。また、Z軸スピンドルユニット41の上部に設けたスピンドルモータMにより、Z軸スピンドルユニット41のスピンドル111(後述)が回転駆動自在に設けてある。また、前記W軸スライド35の下端部には、後述する電極ガイドユニット73を着脱可能なクランプ手段49が設けてある。
【0032】
図2に詳細に示すように、クランプ手段49は、下方にフランジ51fを備えた中空円筒状の外部シリンダ51と、上部フランジ部53fを備えた中空円筒からなる内部シリンダ53と環状のピストン55等からなっている。
【0033】
前記内部シリンダ53の上部フランジ部53fは、前記外部シリンダ51の内径側上部に固定してある。また、また、内部シリンダ53と外部シリンダ51の間に形成される環状の空間には、環状のピストン55を挿入して環状の空圧シリンダが形成してある。
【0034】
内部シリンダ53の外径は、前記フランジ51fの内径より小さく、内部シリンダ53の外径部とフランジ51fとの間に形成される環状の間隙から内部シリンダ53の下部と、前記環状のピストン55の環状のピストンロッド部55pとが少し突出した態様になるように設けてある。
【0035】
前記上部フランジ部53fとピストン55との間には、圧縮コイルばね57が弾装してあり、前記環状のピストン55は常時は前記フランジ51fに当接するように設けてある。また、環状のピストン55の下部の内径は、前記内部シリンダ53の外径より少し大きく設けてあり、内部シリンダ53の外径との間に環状の間隙Sが形成してある。また、前記ピストンロッド部55pと前記外部シリンダ51の間、および環状のピストン55と外部シリンダ51の間にはリング状のシール部材59a、59bが設けてある。
【0036】
前記内部シリンダ53と外部シリンダ51との間に形成される環状の空間は前記環状のピストン55により上室61と下室63とに区分され、下室63には図示しない空圧源からの空圧を供給するための空圧供給孔65が設けてあり、上室61には排気孔67が設けてある。
【0037】
上述の中空円筒からなる内部シリンダ53の下部円筒部には、径方向の複数の穴が円周方向に適宜な間隔で設けてあり、この穴にボール69が径方向に少しだけ移動可能に保持されている。この穴に保持されたボール69の直径は、内部シリンダ53の円筒部の肉厚より若干大きく設けてあり、中空円筒の内外部に若干突出した状態で保持されている。
【0038】
上記構成のクランプ手段49において、前記環状のピストン55が圧縮コイルばね57により押し下げられた状態にあるときには、環状のピストン55の内径に形成した下方向に拡大するテーパ部71が前記ボール69に当接して、ボール69を軸心方向へ押圧付勢した状態にある。
【0039】
上記構成のクランプ手段49の内部シリンダ53の中空円筒部には、電極ガイドユニット73の係合部75が挿入され、この係合部75に形成した環状溝77に前記ボール69が係合することにより、電極ガイドユニット73が保持されている。
【0040】
上述の電極ガイドユニット73は、電極ガイドベース79の一端部に前記棒状電極37aが摺動自在に挿通係合する下方向(Z軸方向)へ延伸させて設けた電極ガイド81と、他端部に上方向(Z軸方向)へ突出するように設けられ、前記クランプ手段49の中空円筒部に係合する環状溝77を備えた係合部75とからなっている。
【0041】
また、前記電極ガイドベース79には、この電極ガイドベース79を前記クランプ手段49に装着するときに、前記外部シリンダ51の下部に形成したキー溝に係合して電極ガイドベース79の取付方向を規制する係合凸部52が設けてある。さらに、前記電極ガイドベース79には、前記電極ガイド81の直上位置において、前記棒状電極37aをガイドすると共に、棒状電極37aを挿入するためのテーパを有する水流を受ける漏斗部材83が設けてある。
【0042】
再度図1を参照するに、加工槽15の前方位置に立設したポスト85の上端部に電極交換装置87が設けてある。電極交換装置87には、前記電極ホルダ39aに装着された複数の棒状電極37aおよび後述する電極ホルダ39bに装着された複数の総型型彫り加工電極37bが電極マガジンに86に保持されている。
【0043】
なお、上述の電極交換装置87には、本願出願人の出願である特開平8−290332号公報に記載の如き電極交換装置を使用することができるのでその構成については詳細の説明は省略する。
【0044】
また、前記加工槽15の後方上部には、複数種類の電極ガイドベース79を載置した電極ガイドベースマガジン88が設けてある。
【0045】
上記構成のクランプ手段49において、電極ガイド81を使用する必要のない総型型彫り加工電極を使用するために電極ガイドベース79を取り外す場合には、空圧供給孔65に高圧の空圧源を接続することにより、環状のピストン55を圧縮コイルばね57の付勢力に抗して上昇させれば、電極ガイドベース79の係合部75の環状溝77とボール69との係合が解除されて、電極ガイドユニット73を取り外すことができる。
【0046】
なお、電極ガイドユニット73を取り外した場合、クランプ手段49の係合部に係合するめくら蓋74が装着してある。
【0047】
上記構成において、前記制御装置(図示省略)の制御の下に前記W軸駆動モータMを適宜に回転駆動すれば、前記W軸スライド35をZ軸上の適宜な位置へ位置決めすることができる。すなわち、中実または中空の棒状電極37aをZ軸方向にガイドする電極ガイド81をZ軸上の適宜な位置へ位置決めすることができる。
【0048】
また、Z軸駆動モータMにより電極ホルダ39に保持された中実または中空の棒状電極37aをZ軸の任意の位置へ移動位置決めできる。
【0049】
また、前記X軸キャリッジ33はX軸駆動モータM(図示省略)によりX軸の任意の位置へ位置決めできるので、棒状電極37aをワークWのX、Y座標上の任意の位置へ移動位置決めすることが可能であり、また、ワークWをA、B軸に回転できるので、ワークWの上面の他に底面以外の任意の位置へも位置決めすることが可能である。
【0050】
なお、電極ガイド81を必要としない後述の総型型彫り電極37bを使用する場合には、総型型彫り電極37bをワークWのX、Y、Z座標上の任意の位置へ位置決めすることができる。また、ワークWをA、B軸に回転できるので、ワークWの上面の他に底面以外の任意の位置へも位置決めすることが可能である。
【0051】
図3〜図6は、前記電極ホルダ39(a、b)とチャック113の構成を示した図であり、図3(a、b)に示す電極ホルダ39aは、筒状の外筒89を有し、この外筒89の軸心には、加工液が流通可能な貫通孔89hがが設けてあると共に、貫通孔89hより大径のコレット嵌入孔89cが貫通孔89hの下側に設けてある。
【0052】
前記外筒89の外周には、ボール係合用の周溝89gが形成してある。さらに周溝89gの下には、位置決め用のキー溝89kを形成したフランジ89fが形成してあり、下端部にはコレット91を締め付け固定するための袋ナット93が着脱可能に螺着してある。
【0053】
上記コレット91の軸心には、前記棒状電極37aが挿通可能な挿通孔91hを備えており、コレット91の体部には複数のスリット(図示省略)が軸方向に設けてあると共に、下端外周面には、前記の袋ナット93の貫通穴91tのテーパ部に係合するテーパ面93tが形成してある。
【0054】
上記構成の電極ホルダ39aにおいて、棒状電極37aを外筒89の貫通孔89hよりコレット91の挿通孔91hに挿通し、袋ナット93を締めることにより、棒状電極37aを電極ホルダ39aに装着固定することができる。
【0055】
図4および図5(a、b)は、総型型彫り電極37b用の電極ホルダ39bを示したものである。なお、前記電極ホルダ39aと同一の構成部分には同一の符号を付しその説明は省略してある。
【0056】
電極ホルダ39bは、電極保持軸95の下端部に総型型彫り電極37bを固定する電極装着部96が設けてある。また、電極保持軸95の上部の外形形状は、前記電極ホルダ39aと同一に設けてあるがコレットチャックを備えていない。
【0057】
なお、電極保持軸95において、前記電極ホルダ39aにおける袋ナット93の装着部位には、袋ナット93に代えて電極ホルダ保持用のフランジ97が一体的に形成してある。
【0058】
前記電極保持軸95の下端部には、総型型彫り電極37bを当接係合するための電極係合用段部95dと、この電極係合用段部95dに当接係合された総型型彫り電極37bを電極保持軸95に押圧固定する固定爪99を装着する固定爪装着用段部95nが形成してある。
【0059】
固定爪装着用段部95nは、電極保持軸95の外周面からほぼ軸中心にいたる段差を有しており、電極係合用段部95dは前記固定爪装着用段部95nからさらに総型型彫り電極37bの厚みtの半分(1/2)の段差を設けてある。
【0060】
前記電極係合用段部95dには、位置決めピン101が水平方向に打ち込まれており、その頭部がこの段部95dから前記総型型彫り電極37bの板厚tより若干短く突出させてある。一方、総型型彫り電極37bの上部には上方に開口したU字状の位置決め溝103が設けてあり、この位置決め溝103に位置決めピン101を当接係合させることにより、総型型彫り電極37bの軸方向(Z軸方向)の位置決めがなされるようになっている。
【0061】
また、前記固定爪99は、固定爪99に設けた座ぐり穴を有する貫通孔を介して前記電極係合用段部95dに螺合する固定ねじ105が設けてあり、この固定ねじ105を締め付け、または緩めることにより総型型彫り電極37bを前記電極装着部96に着脱することができる。
【0062】
図6に示すように、前記Z軸スピンドルユニット41のスピンドル111の下端部にはチャック113が設けてある。スピンドル111はパイプ状であって、このスピンドル111内には環状のピストン部材115が上下動可能に嵌入してある。そして、このピストン部材は115はスピンドル111に内装した圧縮コイルばね117により常に下方向へ付勢されており、このピストン部材115の外周面にはシールリング119が設けてある。
【0063】
さらに前記ピストン部材115の下面には、前記電極ホルダ39(a、b)の上端面に当接可能なシールリング121が設けてある。
【0064】
前記スピンドル111の下端部外周には、円筒形のボール保持体123が螺着固定してあり、このボール保持体123の下部付近には、軸中心から放射状に配置した複数のボール保持孔125が設けてある。そして、このボール保持孔125内には、前記電極ホルダ39(a、b)のボール係合用の周溝89gに係脱自在のボール127が径方向に若干量だけ移動可能に保持されている。
【0065】
前記ボール保持体123の外周には、前記ボール127を軸中心方向へ押圧した状態と、押圧を解除した状態とに切り換え自在のスライドリング129が上下動可能に嵌合してある。またボール保持体123の下部外周には、スライドリング129がボール保持体123から落下するのを阻止するためのストッパー部材131aと、スライドリング129が上方向へ移動したときの上限位置を規制するためのストッパー部材131bが設けてある。
【0066】
また、前記スライドリング129の下部には、スライドリング129が上限位置に移動したときに、前記ボール127がボール保持体123から外周方向へ移動可能にすると共に、ボール保持体123から離脱しないようにボールに係合するボール係合穴133が設けてある。
【0067】
さらに、前記ボール保持体123の下面には、前記電極ホルダ39(a、b)に形成した位置決め用のキー溝89kに係脱自在の一対の係合凸部135が設けてある。
【0068】
なお、ストッパー部材131(a、b)には、金属製のスナップリングまたはゴム製のシールリング等を使用することができる。
上記構成のチャック113に前記電極ホルダ39(a、b)を装着する場合には、図示しないスライドリング昇降手段により、スライドリング129を上限位置へ移動させた状態において、電極ホルダ39(a、b)の頭部をボール保持体123内部に挿入すれば、電極ホルダ39(a、b)の頭部に係合したボール127は、ボール係合穴133の方へ移動するので、電極ホルダ39(a、b)の頭部が前記ピストン部材115に当接する位置まで挿入することができる。
【0069】
ピストン部材115に当接した後、さらに電極ホルダ39(a、b)のボール係合用の周溝89gがボール127に係合する位置まで押し上げた状態において、電極ホルダ39(a、b)の頭部がスピンドル111の下端部に当接して停止する。この状態において、前記スライドリング129を前記スライドリング昇降手段により下限位置に下げることにより、ボール127がボール係合用の周溝89gに押圧付勢されて、ボール係合用の周溝89gとボール127との係合がロック状態となる。
【0070】
前記電極ホルダ39(a、b)を外す場合には、前記スライドリング129を上限位置へ移動させれば、ボール係合用の周溝89gとボール127との係合が解除され、電極ホルダ39(a、b)を下方へ引き抜くことができる。
【0071】
なお、前記中空の棒状電極(すなわちパイプ電極)37aに対しては、加工液(純水等)を供給する加工液供給手段(図示省略)が設けてある。
【0072】
上述の構成の型彫り・細穴複合放電加工装置1により、細穴の上部に上方向に開放する漏斗状部分を有し、該漏斗状部分の加工面積が前記細穴部の加工面積に対して極端に大きく変化する形状の放電加工について説明する。
【0073】
例えば、図11に示すようなタービンブレードTには、本願発明の型彫り・細穴複合放電加工装置を用いて上述の如き細穴の加工が行われている。すなわち、図12に示すように、タービンブレードTの上面側に断面が楕円状の漏斗部Fを有する冷却ガスC用の多数の細穴Hを設け、タービンブレードTの内部の空間に供給された冷却ガスCを上面に噴出させることにより冷却するものである。なお、この細穴Hの中心は、冷却ガスCの流れがスムーズになるようにタービンブレードTの上面を流れる気体Gの流れる方向に傾斜して設けてある。
【0074】
図7に示すように、前記W軸スライド35とZ軸スピンドルユニット41を上限位置に戻した状態において、電極ガイドベースマガジン88から使用する電極ガイドベース79を選択して、W軸スライド35の下部のクランプ手段49に装着する。
【0075】
次いで、電極交換装置87から細穴加工用の棒状電極37aを選択して、Z軸スピンドルユニット41のチャック113に装着し、加工槽15内のターンテーブル装置17に固定されらワークWに対して、電極ガイドベース79の電極ガイド81の先端位置が適宜な間隙になるようにW軸スライド35を下降させ、前記Z軸スピンドルユニット41のZ軸送りを図示しない制御装置の制御の下に細穴Hの加工を行う(図9参照)。
【0076】
細穴が貫通して細穴加工が完了したら、電極ガイド81から棒状電極37aが抜ける位置までZ軸スピンドルユニット41を上昇させると共に、W軸スライド35を当初の位置まで上昇させ、Z軸スピンドルユニット41から使用済みの棒状電極37aを電極マガジン86に戻す。
【0077】
次いで、図8に示すように、W軸スライド35の下部のクランプ手段49から電極ガイドベース79取り外して、電極ガイドベースマガジン88に戻すと共に、クランプ手段49にはめくら蓋74を装着する。
【0078】
次いで、前記電極マガジン86から総型型彫り加工電極37bを装着した電極ホルダ39bを取り出して、Z軸スピンドルユニット41に装着し、Z軸スピンドルユニット41を下限まで下降させた後、W軸スライド35を制御して漏斗部Fの型彫り加工を行う(図10参照)。
【0079】
上述のように、加工面積の少ない細穴部の加工は、細穴加工用の棒状電極またはパイプ電極により加工し、加工面積の大きい細穴上部の漏斗部の加工には、加工面積に適合した放電条件で総型型彫り電極により加工することにより、すなわち、漏斗部の加工面積に比例した、細穴部より充分に大きい放電電流を使用した加工ができるので加工時間が従来の約3分の一程度に短縮できる。
【0080】
また、総型型彫り電極の先端部に破損しやすい細穴用の電極部がないので電極破損も少なくなり電極の取り扱いが容易となる。
【0081】
さらに、総型型彫り電極を使用する加工時には、電極下部をガイドする電極ガイドを使用しないけれども、Z軸スピンドルユニットを下限まで下降させた後、W軸スライドの昇降を制御して加工を行うので、総型型彫り電極の電極保持軸を長くする必要がない。これにより、加工時にW軸スライドの下端部とワークとが干渉するのを回避することができる。また、総型型彫り電極の電極保持軸を短くできるので、加工精度の高い加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に係る型彫り・細穴放電加工装置の一例の説明図(正面図)。
【図2】図1における電極ガイドユニット73部の拡大説明図。
【図3】棒状電極またはパイプ電極37aを装着する電極ホルダ39aの説明図で、図3aは電極ホルダ39aの上面図、図3bは図3aにおけるA−A断面図。
【図4】総型型彫り加工電極37bを装着した電極ホルダ39bの説明図。
【図5】図5aは図4の上面図、図5bは図4におけるB−B断面図。
【図6】電極ホルダ39(a、b)を装着するチャック113の説明図。
【図7】細穴上部に漏斗状部分を有し、漏斗状部分の加工面積が細穴部の加工面積に対して極端に大きく変化する形状の放電加工において、棒状電極による細穴加工時の説明図。
【図8】細穴加工後の細穴上部の漏斗状部分を総型型彫り加工電極により加工している状態の説明図。
【図9】図7における、細穴加工状態の拡大説明図。
【図10】図8における細穴上部の漏斗状部の加工状態の拡大説明図。
【図11】細穴上部に漏斗状部分を有する多数の穴を備えたタービンブレードTの説明図。
【図12】図11におけるC−C断面図。
【図13】従来の総型型彫り加工電極205により、細穴上部に上方向に開放する漏斗状部分を有する形状の細穴の加工の説明図。
【図14】従来の総型型彫り加工電極205による、細穴上部に上方向に開放する漏斗状部分を有する形状の細穴加工の加工進行状態を説明する図。
【符号の説明】
【0083】
1 型彫り・細穴放電加工装置
3 基台
5 Y軸テーブル
7 受け皿
9 石定盤
11 ブラケット部材
13 加工液
15 加工槽
17 ターンテーブル装置
19 B軸回転軸
21 ターンテーブル
25(a、b) 支柱
27 梁部材
31 蛇腹
33 X軸キャリッジ
35 W軸スライド
37a 棒状電極
37b 総型型彫り加工電極
39(a、b) 電極ホルダ
41 Z軸スピンドルユニット
43 ガイド部材
49 クランプ手段
51 外部シリンダ
51f フランジ
53 内部シリンダ
53f 上部フランジ部
55 環状のピストン
55p ピストンロッド部
57 圧縮コイルばね
59a、59b シール部材
61 上室
63 下室
65 空圧供給孔
67 排気孔
69 ボール
71 テーパ部
73 電極ガイドユニット
74 めくら蓋
75 係合部
77 環状溝
79 電極ガイドベース
81 電極ガイド
83 漏斗部材
85 ポスト
86 電極マガジン
88 電極ガイドベースマガジン
89 外筒
89h 貫通孔
89c コレット嵌入孔
89g 周溝
89k キー溝
91 コレット
91h 挿通孔
91t 貫通穴
93 袋ナット
93t テーパ面
95 電極保持軸
95d 電極係合用段部
95n 固定爪装着用段部
96 電極装着部
97 フランジ
99 固定爪
101 位置決めピン
103 位置決め溝
105 固定ねじ
111 スピンドル
113 チャック
115 ピストン部材
117 圧縮コイルばね
119、121 シールリング
123 ボール保持体
125 ボール保持孔
127 ボール
129 スライドリング
131a、131b ストッパー部材
133 ボール係合穴
135 係合凸部
201 細穴
203 漏斗状部分
205 総型型彫り加工電極
冷却ガス
F 漏斗部
H 細穴
Y軸駆動モータ
W軸駆動モータ
Z軸駆動モータ
タービンブレード
S 間隙
W ワーク
【出願人】 【識別番号】000128429
【氏名又は名称】株式会社エレニックス
【出願日】 平成18年7月13日(2006.7.13)
【代理人】 【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和

【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦

【識別番号】100100929
【弁理士】
【氏名又は名称】川又 澄雄

【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和

【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一

【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄


【公開番号】 特開2008−18499(P2008−18499A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−192716(P2006−192716)