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【発明の名称】 微細加工装置及び微細加工方法
【発明者】 【氏名】執行 和浩

【要約】 【課題】金型等に対しても、より微細な加工を行える技術を提供すること。

【構成】容器体内に電解液及び被加工物2を入れる。光ファイバー22と、光ファイバー22の先端部に設けられた光触媒物質を含有する光触媒部材24とを有する加工針部材20を用い、光ファイバー22を通じて光触媒部材24に光を照射してその光触媒部材24を活性化した状態で、加工針部材20を光触媒部材24の表面に接触させることで、被加工物2の表面のうち加工針部材20の接触部分の構成原子である鉄(Fe)原子を電解液中に解離させて微細加工する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液と被加工物とを入れる容器体と、
前記容器体内の被加工物表面に接触可能に設けられ、前記被加工物の構成原子又は構成分子が前記電解液中に解離するのを促進する解離促進部材と、
を備えた微細加工装置。
【請求項2】
請求項1記載の微細加工装置であって、
前記解離促進部材は、
棒状の導光部材と、光触媒物質を含有し前記導光部材の先端部に設けられた光触媒部材とを有し、
前記導光部材を通じて前記光触媒物質を活性化する光を照射する光源をさらに備えた微細加工装置。
【請求項3】
請求項2記載の微細加工装置であって、
前記光触媒部材は、前記活性化する光が透過する厚みで形成されている、微細加工装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載の微細加工装置であって、
前記解離促進部材は、
前記導光部材の外周囲に被覆された透明電極部材をさらに備え、
前記光触媒部材は前記透明電極部材の外面に設けられており、
前記透明電極部材が陽極となるように電圧を印加する電源をさらに備えた微細加工装置。
【請求項5】
請求項2〜請求項4のいずれかに記載の微細加工装置であって、
前記解離促進部材は、
前記光触媒部材の外周に周辺電極をさらに有し、
前記周辺電極に電圧を印加する電源をさらに備えた、微細加工装置。
【請求項6】
請求項1記載の微細加工装置であって、
前記解離促進部材は、
棒状の電極本体部と、前記電極本体部の表面に形成された絶縁膜とを有し、
前記電極本体部が陰極又は陽極となるように電圧を印加する電源をさらに備えた微細加工装置。
【請求項7】
請求項6記載の微細加工装置であって、
前記被加工物に電気的に接触するように設けられ、前記電源によって陽極又は陰極となるように電圧が印加される接触電極をさらに備えた微細加工装置。
【請求項8】
被加工物を電解液中に浸漬する工程と、
前記被加工物の構成原子又は構成分子が前記電解液中に解離するのを促進する解離促進部材を、前記被加工物の表面に接触させることで、前記被加工物の表面のうち前記解離促進部材の接触部分の構成原子又は構成分子を前記電解液中に解離させる工程と、
を備えた微細加工方法。
【請求項9】
請求項8記載の微細加工方法であって、
前記構成原子又は構成分子を前記電解液中に解離させる工程は、
前記解離促進部材として光触媒物質を有するものを用い、
前記光触媒物質に光を照射して前記光触媒物質を活性化しつつ、前記光触媒物質を被加工物の表面に接触させることで、前記被加工物の表面のうち前記解離促進部材の接触部分の構成原子又は構成分子を前記電解液中に解離させる工程である、微細加工方法。
【請求項10】
請求項8記載の微細加工方法であって、
前記構成原子又は構成分子を前記電解液中に解離させる工程は、
前記解離促進部材として、電極本体部と、前記電極本体部の表面に形成された絶縁膜とを有するものを用い、
前記電極本体部が陰極又は陽極となるように電圧を印加しつつ、解離促進部材を被加工物の表面に接触させることで、前記被加工物の表面のうち前記解離促進部材の接触部分の構成原子又は構成分子を前記電解液中に解離させる工程である、微細加工方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、射出成形やプレス成形に用いる金型等を微細加工する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高密度化、小型化により、微細加工に対する要求が大きくなっている。特に、センサー、アクチュエータの集積化、超小型化が重要になっており、それらの構成部品に対する微細化の要求が大きくなっている。例えば、光磁気ヘッド用のマイクロレンズを製造する場合には、数μmから数百μm、主に十数μmから数十μm程度の3次元的な微細形状を形作る必要がある。このような微細な形状を持つ部品を作るためには、金型の製造に対する微細加工技術が必要とされている。
【0003】
従来、金型の加工技術として、切削や研削、研磨などの機械加工、その他、放電加工や電解研磨加工が知られている。中でも、金型の微細加工方法としては、加工可能な最小寸法、加工精度に優れている放電加工による方法が広く用いられている。放電加工のなかでも、型彫り加工の放電加工は、数μmから十数μm離した電極と被加工物との間でパルス性アーク放電を生じさせ、その放電による絶縁破壊の際に生じる電気火花(スパーク)によって被加工物から導電性物質を除去するものである。この型彫り加工の放電加工は、一般的な機械加工が困難な材質や複雑な形状の加工に使用されている。
【0004】
ところで、微細加工の分野で最も進んでいるのは半導体素子に対する微細加工である。半導体素子の加工分野では、100nmサイズの加工精度が達成され、さらに、光リソグラフィー(ArFエキシマレーザー等)を利用した場合、65nm程度の微細加工精度が得られている。しかしながら、光リソグラフィーによる加工は、金属金型のように複雑な3次元形状の加工には不向きである。そこで、金属金型のように複雑な3次元形状を有し、また、長尺形状等のアスペクト比の高い加工を実施する場合には、放射X線を光源としたリソグラフィーを用いた微細加工が検討されている。このように、放射X線を光源としたリソグラフィー加工技術は、非特許文献1に開示されている。
【0005】
【非特許文献1】出口公吉、芳賀恒之、「X線によるナノ加工技術」、応用物理、応用物理学会、2004年、vol.73、No.4(2004)、p.455−p.461
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の放電加工を用いた微細加工方法においては、微細度は、加工電極の寸法や、加工電極と被加工物との間の距離とその制御の精度に依存する。従来の微細放電加工では、一般的には、加工電極の大きさがせいぜい50μm径であり、理想的には65μm程度の穴あけ加工が可能である。しかしながら、被加工物の表面の平坦性の問題等から、電極と被加工物との間の距離制御は困難であった。このような問題を含む諸問題により、実際上は、1mm程度の大きさの加工が限界であった。
【0007】
また、半導体素子加工技術において考えられているX線リソグラフィーに関しても次の問題があった。すなわち、X線リソグラフィーを実現するためのマスク材料としては、SiC(シリコンカーバイド)やTa(タンタル)等が候補材料として考えられている。しかしながら、これらはプロセス上露光後の除去が困難な材料であり、鉄や鉄合金等で構成される金型加工への適用が困難であるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、金型等に対しても、より微細な加工を行える技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この発明に係る微細加工装置は、電解液と被加工物とを入れる容器体と、前記容器体内の被加工物表面に接触可能に設けられ、前記被加工物の構成原子又は構成分子が前記電解液中に解離するのを促進する解離促進部材と、を備えたものである。
【0010】
また、上記課題を解決するため、この発明に係る微細加工方法は、被加工物を電解液中に浸漬する工程と、前記被加工物の構成原子又は構成分子が前記電解液中に解離するのを促進する解離促進部材を、前記被加工物の表面に接触させることで、前記被加工物の表面のうち前記解離促進部材の接触部分の構成原子又は構成分子を前記電解液中に解離させる工程と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明の微細加工装置によると、電解液と被加工物とを入れる容器体と、前記容器体内の被加工物表面に接触可能に設けられ、前記被加工物の構成原子又は構成分子が前記電解液中に解離するのを促進する解離促進部材とを備えているため、解離促進部材を、前記被加工物の表面に接触させることで、前記被加工物の表面のうち前記解離促進部材の接触部分の構成原子又は構成分子を前記電解液中に解離させ加工を行うことができる。このため、解離促進部材と被加工物との精密な距離制御は不要となり、より微細な加工を行える。
【0012】
また、被加工物としては、その構成原子又は構成分子が前記電解液中に解離可能なものであればよいため、鉄や鉄合金等で形成される金型等に対しても、より微細な加工を行える。
【0013】
また、この発明の微細加工方法によると、被加工物を電解液中に浸漬する工程と、前記被加工物の構成原子又は構成分子が前記電解液中に解離するのを促進する解離促進部材を、前記被加工物の表面に接触させることで、前記被加工物の表面のうち前記解離促進部材の接触部分の構成原子又は構成分子を前記電解液中に解離させる工程とを備えているため、解離促進部材と被加工物との精密な距離制御は不要となり、より微細な加工を行える。
【0014】
また、被加工物としては、その構成原子又は構成分子が前記電解液中に解離可能なものであればよいため、鉄や鉄合金等で形成される金型等に対しても、より微細な加工を行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明は、容器体等に貯留された電解液中に被加工物を浸漬し、解離促進部材を被加工物表面に接触させることで、被加工物の表面のうち解離促進部材の接触部分の構成原子又は構成分子を選択的に電解液中に解離させることで、微細加工を行う。
【0016】
解離促進部材は、被加工物の構成原子又は構成分子が電解液中に解離するのを促進する部材である。このような解離促進部材としては、次の2つの例が考えられる。
【0017】
第1の例は、解離促進部材として、光触媒物質を有するものを用いる場合である。この場合、光触媒物質に光を照射すると光触媒物質が活性化し、光触媒の電極電位(電子のエネルギー状態に対応)が上昇する。その表面に正孔が形成される。そして、その活性化させた光触媒物質を被加工物に接触させることで、被加工物表面のうち解離促進部材が接触した部分の電極電位も上昇する。その結果、その接触部分の構成原子又は構成分子がイオン化して、電解液中に解離する。
【0018】
第2の例は、前記解離促進部材として、−(マイナス)極性又は+(プラス)極性を持たせた電極本体部と、前記電極本体部の表面に形成された絶縁膜とを有するものを用いる場合である。この場合、解離促進部材を被加工物に接触させると、被加工物表面のうち解離促進部材を接触させた部分が+(プラス)又は−(マイナス)に分極する。これにより、被加工物表面のうち解離促進部材が接触した部分で電極電位が上昇し、原子間又は分子間の結合が弱くなり、構成原子又は構成分子が電解液中に解離する。
【0019】
以下、各実施の形態別により具体的に説明する。
【0020】
実施の形態1.
実施の形態1に係る微細加工装置及び微細加工方法について説明する。図1は実施の形態1に係る微細加工装置を示す図であり、図2は加工針部材近傍での微細加工反応を説明する図である。なお、説明の便宜上、水平方向をXY方向、鉛直方向をZ方向として説明する。
【0021】
この微細加工装置は、容器体10と、解離促進部材としての加工針部材20と、光源30と、電源40と、制御装置50と、加工針部材20と被加工物2とをX方向、Y方向、Z方向に沿って相対移動させる移動機構としての被加工物移動機構60及び加工針移動機構65とを備えている。
【0022】
容器体10は、電解液12及び被加工物2を入れるための容器である。ここでは、容器体10は、上方が開口する略直方体筺状のケース形状に形成されている。この容器体10内に、被加工物2を浸漬可能な程度の深さまで電解液12が満たされている。
【0023】
電解液12は、電解質を水等の溶媒中に溶かして陽イオンと陰イオンとに解離さえた電解質溶液である。
【0024】
例えば、被加工物2がFe(鉄)である場合の電解液12としては、塩化水素水溶液(塩酸)や、リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)とリン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)との水溶液等を用いることができ、より具体的には、1L(リットル)の水に塩酸(HCl)を1.8g溶かした、pH1の塩化水素水溶液(塩酸)を用いることができる。また、1L(リットル)の水に、リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)を7.1g、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)を6.0g溶かした、pH7の水溶液を用いることもできる。これらの電解液12は、被加工物2が純粋なFe(鉄)である場合だけでなく、鉄系の合金、例えば、Fe−Cr系、Fe−Cr−Mo系、Fe−Cr−Ni系の合金等のステンレスに対してもFeイオンを水和して本微細加工を行う電解液として好適なものとして用いられる。
【0025】
勿論、上記電解液12は例示であり、被加工物2の構成原子又は構成分子を、後述する加工針部材20との相互作用により解離可能な種々の電解液12を用いることができる。
【0026】
また、容器体10は、上記被加工物移動機構60のステージ上に載置状に固定されている。被加工物移動機構60は、可能な限り細かい移動幅でかつ高精度な移動制御が可能な機構で構成されることが好ましい。このような機構としては、例えば、圧電素子を用いた駆動機構が挙げられ、圧電素子を用いた駆動機構では、0.1nm程度の移動幅(ステップ)で移動を制御できる。また、被加工物移動機構60は、上記圧電素子等を利用した駆動機構により傾き制御可能に構成されている。この被加工物移動機構60により、容器体10がX方向及びY方向に沿って移動自在で、かつ、傾き自在に支持される。
【0027】
なお、被加工物2は、図示省略の固定部材により、容器体10内で一定位置に固定される。ここでは、被加工物2がFe(鉄)である場合について説明する。
【0028】
また、容器体10内には、対向電極14が電解液12内に浸漬された状態で固定されている。ここでは、容器体10の側壁内面に対向電極14が固定されている。この対向電極14は、導電線を通じて電源40の−(マイナス)側端子に接続されている。
【0029】
加工針部材20は、容器体10内の被加工物2表面に接触可能に設けられ、被加工物2の構成原子又は構成分子が電解液12中に解離するのを促進する部材である。
【0030】
より具体的には、加工針部材20は、棒状の導光部材として光ファイバー22と、光触媒物質を含有する光触媒部材24と、透明電極部材26とを備えている。
【0031】
光ファイバー22は、本加工針部材20の芯となる部材であり、好ましくは、ガラス光ファイバーであり、その先端部は基部よりも細く加工されている。この先端部は先端になるほど細くなるように先鋭化されていればさらに好ましい。例えば、通常の光ファイバー22の基部のクラッド径は125μm、コア径は10μm程度であり、エッチング等によってその先端部は1μm程度にまで先鋭化される。この光ファイバー22の基端部には、中継用光ファイバー23が光学的に連結されている。
【0032】
上記透明電極部材26は、光ファイバー22の表面を被覆するように形成されている。この透明電極部材26は、光ファイバー22の表面全体に形成されている必要はないが、少なくとも、光触媒部材24が設けられることとなる光ファイバー22の先端部に形成されていることが好ましい。この透明電極部材26は、ITO電極(Indium tin oxide)等により形成されている。この透明電極部材26は、導電線を介して電源40の+(プラス)側端子に接続されている。
【0033】
また、光触媒部材24は、光ファイバー22の先端部にある先鋭状のコア先端部であって上記透明電極部材26の表面に形成されている。光触媒物質は、光のエネルギーを吸収することにより活性化して光触媒作用を呈する物質であり、ここでは、TIO2(酸化チタン)等である。
【0034】
また、この加工針部材20は、その先端部を残して絶縁被覆28で被覆されている。つまり、加工針部材20の先端部には光触媒部材24が露出している。
【0035】
また、加工針部材20は、加工針移動機構65によりZ方向に沿って移動自在に支持されている。加工針移動機構65は、可能な限り細かい移動幅でかつ高精度な移動制御が可能な機構で構成されることが好ましく、例えば、圧電素子を用いた駆動機構により構成される。圧電素子を用いた駆動機構では、0.1nm程度のステップで移動を制御できる。
【0036】
そして、被加工物移動機構60によって被加工物2がXY方向に沿って移動自在に支持されると共に、加工針部材20が加工針移動機構65によってZ方向に沿って移動自在に支持されることで、加工針部材20と被加工物2とがX方向、Y方向、Z方向に沿って相対移動される構成となっている。
【0037】
光源30は、上記光触媒部材24を活性化させる光を射出可能に構成されている。ここでは、光源30は、光触媒部材24としてのTIO2のバンドキャップエネルギー以上のエネルギーを有する紫外領域の光を出射するように構成されている。なお、光触媒部材24を活性化させることが可能であれば必ずしも光触媒物質のバンドギャップエネルギー以上のエネルギーを有する光でなくてもよい。そして、この光源30からの光が、上記中継用光ファイバー23を通じて光ファイバー22内に導入され、該光ファイバー22の先端部から出射して透明電極部材26を通過して光触媒部材24に照射される。これにより、光触媒物質が活性化して光触媒作用を呈するようになっている。なお、光源30から出射される光の強度は、光触媒部材24の種類や、光触媒部材及び電解液による加工形状等に応じて適宜調整される。
【0038】
また、光ファイバー22から照射される光が被加工物側である光触媒部材24の表面に到達するように、光触媒部材24の厚みは活性化する光が透過できる厚みとしている。例えば、光は波長と同程度の距離で吸収されるため、光触媒部材24の厚みを光の波長以下とすれば、その表面を活性化するのに効果的である。
【0039】
電源40の+(プラス)端子は、透明電極部材26に接続されており、そのマイナス(−)端子は、対向電極14に接続されており、それら対向電極14及び透明電極部材26間に電圧E(V)を印加するように構成されている。印加電圧E(V)は、例えば、3Vであり、光触媒部材24や電解液12の種類、光触媒部材24及び電解液12による加工形状等に応じて適宜調整される。
【0040】
制御装置50は、上記被加工物移動機構60及び加工針移動機構65に信号線を通じて接続されており、それら被加工物移動機構60及び加工針移動機構65の駆動を制御することで、加工針部材20と被加工物2との相対的な位置関係を調整制御する。また、制御装置50は、電源40及び光源30にも信号線を通じて適宜接続されており、光触媒部材の種類や、光触媒部材24及び電解液による加工形状等に応じて電源40による印加電圧、光源30による光の強度等を適宜調整制御する。
【0041】
本微細加工装置は上記のように構成されており、次に、この微細加工装置を用いた微細加工方法について説明する。
【0042】
まず、上記容器体10内に電解液12を入れる。電解液12は、例えば、1L(リットル)の水に塩酸(HCl)を1.8g溶かした、pH1の塩化水素水溶液(塩酸)である。そして、容器体10内に、被加工物2、ここではFe(鉄)で形成された被加工物2を入れて、電解液12中に浸漬する。
【0043】
この状態で、電源40により透明電極部材26と対向電極14間に、電圧(例えば3V)を印加する。この際、透明電極部材26が+(プラス)、対向電極14が−(マイナス)となるように印加する。また、光源30から紫外線光を出射させて、その紫外線光を光ファイバー22内に導入する。この紫外線光は、光ファイバー22の先端部から出射して透明電極部材26を通過して光触媒部材24に照射される。これにより、光触媒物質24は紫外線を吸収して活性化し、光触媒部材24内で電子と正孔が生じる。この際、透明電極部材26は+(プラス)極性となっているので、正孔は透明電極部材26から反発し、光触媒部材24の表面、つまり、加工針部材20の先端部表面に正孔が移動する。
【0044】
この状態で、加工針部材20の先端部を被加工物2の表面に接触させる。すると、加工針部材20先端部の光触媒部材24は、被加工物2の表面のうち加工針部材20が接触した部分においてその構成原子であるFe原子から電子を奪う。その結果、被加工物2の当該表面のFe原子は、イオン化され、電解液12と反応して周囲の水分子と容易に親和して電解液12中に解離して溶け出す。これにより、被加工物2の表面に微細な凹部が形成される(図2参照)。
【0045】
この際、光源30による紫外線光の強度を大きくし、或は、電源40による印加電圧を大きくすれば、上記反応が促進されて比較的大きな凹部が形成される。一方、光源30による紫外線光の強度を小さくし、或は、電源40による印加電圧を小さくすれば、上記反応が抑制されてより小さな凹部が形成される。そこで、光源30による紫外線光の強度及び電源40による印加電圧を制御することで、被加工物2の表面に形成される凹部の大きさ、つまり、加工する孔の大きさや深さ、溝の幅や深さ、加工速度等をコントロールすることができる。
【0046】
そして、被加工物移動機構60及び加工針移動機構65により、加工針部材20と被加工物2とをX方向、Y方向、Z方向に沿って相対移動させつつ、上記反応を行わせることにより、被加工物2に、溝やリッジ(稜)形状を形成したり、さらに、より複雑な3次元形状加工することができる。
【0047】
このように構成された微細加工装置及び微細加工方法によると、加工針部材20を被加工物2の表面に接触させることで、被加工物2の表面のうち加工針部材20の接触部分の構成原子である鉄(Fe)原子を電解液12中に解離させて微細加工することができる。このため、加工針部材20と被加工物2の表面との精密な距離制御が不要となり、より微細な加工を行える。
【0048】
ところで、上記被加工物2としては、その構成原子又は構成分子が電解液12中に解離可能なもの対象とすることができる。つまり、光触媒による酸化作用によって、電解液12中での被加工物2の酸化反応が促進し、その構成原子又は構成分子がイオン化して電解液中に溶解するものであれば、被加工物2として採用し得る。例えば、鉄だけでなく、上述した鉄系の合金にも適用可能である。このため、鉄や鉄合金等で形成される射出成形金型やプレス金型等に対しても、好適な微細加工装置或は微細加工方法として利用できる。
【0049】
特に、本実施形態では、前記解離促進部材として、棒状の導光部材としての光ファイバー22と、該光ファイバー22の先端部に設けられた光触媒部材24とを有する加工針部材20を用いている。そして、光源30から光ファイバー22を通じて光触媒部材24に光を照射して、光触媒部材24を活性化させている。これにより、内部で正孔が形成された光触媒部材24を被加工物2の表面に接触させて、被加工物2表面のうち加工針部材20が接触した部分の構成原子又は構成分子をイオン化させて電解液中に解離させている。これにより、光触媒反応を利用して被加工物2に対してより微細な加工を行える。
【0050】
さらに、加工針部材20は、光ファイバー22の外周囲に被覆された透明電極部材26を備え、光触媒部材24は該透明電極部材26の外面に設けられている。そして、透明電極部材26が陽極となるように電圧を印加している。このため、光触媒部材24内で形成された正孔は、光触媒部材24の表面に移動する。従って、加工針部材20が被加工物2の表面に接触した状態で、被加工物2表面のうち加工針部材20が接触した部分の構成原子又は構成分子がよりイオン化し易くなる。これにより、より効果的に被加工物2に対する微細な加工が可能となる。
【0051】
ところで、放電加工においては加工の際に生じる加工屑(スラッジ)が被加工物の加工精度に対して悪影響を起してしまうという問題があった。すなわち、加工中に発生する加工屑が絶縁性の加工液中に浮遊して電極と被加工物との間に介在してしまうことがある。すると、その加工屑と電極の間に二次放電が生じて、放電が一部に偏在してしまい、所望の形状に加工できないことがあった。また、この現象がさらに進むと異常放電が発生してしまうことがあった。これらの事情により、被加工物の加工面粗度が劣化したり、加工速度が低下してしまうことがあった。
【0052】
これに対して、本微細加工装置及び微細加工方法では、構成原子又は構成分子は電解液12中に溶け出すため、放電加工におけるスラッジのような問題は生じ難く、従って、この点からもより微細な加工を行えると共に、加工精度を向上させつことができ、また、加工速度の向上にも貢献し得る。
【0053】
また、X線リソグラフィーによる加工では、その光源である放射光設備の構成が複雑で、その構築に多額の費用がかかるという問題があった。
【0054】
しかしながら、本微細加工装置及び微細加工方法では、そのような放射光設備は不要であり、比較的簡易な構成とすることができるという利点もある。
【0055】
実施の形態2.
図3は本実施の形態2の構成を示す模式図である。本実施の形態2は実施の形態1の加工針部材20の光触媒部材24の外周に周辺電極29を設けて、その周辺電極に電圧を印加する電源を備えた構成である。図3において、加工針部材20と被加工物2とは断面図で示してある。
【0056】
加工針部材20の光ファイバー22の先鋭化された先端部に形成された光触媒部材24の外周を囲むように外周電極29が形成されている。この外周電極29に対しては、外周電極29に電気的に接続された配線膜128を通じて電源41から電圧(例えば+(プラス)極性)を印加することができる。電源41の一方の電極(例えば、−(マイナス)電極)は電解液中に配設された対向電極14と接続されている。外周電極29および配線膜128と透明電極部材26との間には絶縁膜125が形成され、外周電極29と透明電極部材26とに対しては独立に電圧を印加することができる。光触媒部材24は光ファイバー22の先鋭化された先端部のみに形成されている。外周電極29のうち光触媒部材24の外周側にある部分は電解液面に露出している。また、外周電極29のうち光ファイバー22の基部部分及び配線膜128は絶縁皮膜28によって被覆されている。
【0057】
この実施形態では、光触媒部材24が光ファイバー22の先鋭化された先端部のみに形成されることで、先端部以外の部分で光触媒反応が起こらないので、被加工物を酸化するOHラジカルの発生が抑えられ、加工精度反応が向上する効果がある。また光触媒物質に活性化する光32を光ファイバー22を通じて照射すると電解液中にOHラジカルが発生するが、電源41により外周電極29の電位を、電解液中のOHラジカルの還元電位に設定することで、電解液中にOHラジカルが拡散することを抑制できるので、先端部が接触する部分以外の被加工物2の表面が加工されることを防ぐことができ、加工精度を向上させることができる。
【0058】
なお、外周電極29は透明である必要は無く、例えば、OHラジカルで酸化されにくい金属、例えば白金や金等を用いることができる。
【0059】
また、本実施の形態2では、光ファイバー22に透明電極部材26を形成した例で説明したが、活性化する光32が照射されると酸化反応が生じて加工が可能なので、透明電極部材26及び絶縁膜125を省いた構成としてもよい。その場合でも外周電極29により加工精度を向上することができる。
【0060】
実施の形態3.
以下、この発明の実施の形態3に係る微細加工装置及び微細加工方法について説明する。なお、本実施の形態3に係る説明において、実施の形態1で説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。図4は実施の形態3に係る微細加工装置を示す図であり、図5は加工針部材近傍での微細加工反応を説明する図である。なお、説明の便宜上、水平方向をXY方向、鉛直方向をZ方向として説明する。
【0061】
この微細加工装置は、実施の形態1と同様に、容器体10と、電源40と、制御装置50と、移動機構としての被加工物移動機構60及び加工針移動機構65とを備えている。本微細加工装置が、実施の形態1における微細加工装置と異なる点は、解離促進部材として、加工針部材20に代えて加工針部材120を用いる点、光源30を省略する点、対向電極14に代えて接触電極114を用いる点、加工針部材20及び接触電極114の極性等である。
【0062】
すなわち、本実施の形態3に係る加工針部材120は、棒状の電極本体部122と、その電極本体部122の表面に形成された絶縁膜124とを有している。
【0063】
電極本体部122は、導電性材料、例えば、金属微細線等により形成されており、線状形状を含む棒状形状に形成されている。また、電極本体部122の先端部は先鋭化されていることが好ましい。この電極本体部122は、導電性を介して電源40の−(マイナス)側端子に接続されている。
【0064】
絶縁膜124は、絶縁材料で電極本体部122の表面、少なくとも、その先端部を覆うように形成された部材である。
【0065】
このような加工針部材120は、例えば、電極本体部122として直径20μmの白金線を用い、この表面に絶縁膜124として厚さ20nmのSiO2膜をスパッタリング等で成膜することにより形成される。なお、電極本体部122として、カーボンナノチューブを利用することにより、径が20nm〜100nmの加工針部材120を形成することも可能であり、その場合、例えば、線幅が50nmの微細加工を実現できることが予測される。
【0066】
かかる加工針部材120は、加工針移動機構65により少なくともZ方向に移動自在に支持されており、容器体10内の被加工物2に接触可能とされている。
【0067】
また、容器体10内には、上記対向電極14に代えて接触電極114が配設されている。この接触電極114は、導電線を通じて電源40の+(プラス)側端子に接続されており、電解液12内で被加工物2に接触可能に配設される。好ましくは、接触電極114は、被加工物2のうち加工対象となる表面とは反対の位置で被加工物2に接触していることが好ましい。
【0068】
つまり、電源40の+(プラス)端子は接触電極114に接続されており、そのマイナス(−)端子は電極本体部122に接続されており、それら接触電極114及び電極本体部122間に電圧E(V)を印加する。この印加電圧E(V)は、絶縁膜124や電解液12の種類や、絶縁膜124及び電解液12による加工形状等に応じて適宜調整される。
【0069】
制御装置50は、上記実施の形態1と同様に、被加工物移動機構60及び加工針移動機構65の駆動を制御することで、加工針部材20と被加工物2との相対的な位置関係を調整制御する。また、制御装置50は、光触媒物質24及び電解液による加工形状等に応じて電源40による印加電圧を適宜調整制御する。
【0070】
本微細加工装置を用いた微細加工方法について説明する。
【0071】
まず、容器体10内に電解液12及び被加工物2を入れる。ここでの電解液12及び被加工物2は、上記実施の形態1で述べたのと同様に、塩化水素水溶液(塩酸)及びFe(鉄)で形成された被加工物2である。
【0072】
この状態で、電源40により電極本体部122と接触電極114間に、電圧(例えば3V)を印加する。この際、接触電極114が+(プラス)、電極本体部122が−(マイナス)となるように印加する。すると、加工針部材120は−(マイナス)極性を帯びる。
【0073】
この状態で、加工針部材120の先端部を被加工物2の表面に接触させる。すると、−(マイナス)極性を帯びる加工針部材120により、被加工物2の表面のうち加工針部材120が接触した部分は+(プラス)に分極される。その結果、被加工物2の当該表面では、鉄(Fe)原子間の結合が弱くなり、電解液12と反応して該電解液12中に溶け出して解離する。この際、加工針部材20の表面には絶縁膜124があるため、加工針部材20と被加工物2間では電流は流れず、従って、上記反応は、被加工物2のうち電界の集中する加工針部材20の接触領域に限定的に生じる。これにより、被加工物2の表面に微細な凹部が形成される。
【0074】
この際、電源40による印加電圧を大きくすれば、上記反応が促進されて比較的大きな凹部が形成される。一方、電源40による印加電圧を小さくすれば、上記反応が抑制されてより小さな凹部が形成される。そこで、電源40による印加電圧を制御することで、被加工物2の表面に形成される凹部の大きさ、つまり、加工する孔の大きさや深さ、溝の幅や深さ、加工速度等をコントロールすることができる。
【0075】
そして、被加工物移動機構60及び加工針移動機構65により、加工針部材20と被加工物2とをX方向、Y方向、Z方向に沿って相対移動させつつ、上記反応を行わせることにより、被加工物2に、溝やリッジ(稜)形状を形成したり、さらに、より複雑な3次元形状加工することができる。
【0076】
このように構成された微細加工装置及び微細加工方法によると、上記実施の形態1と同様に、加工針部材120を被加工物2の表面に接触させることで、被加工物2の表面のうち加工針部材120の接触部分の構成原子である鉄(Fe)原子を電解液12中に解離させて微細加工することができる。このため、加工針部材120と被加工物2の表面との精密な距離制御が不要となり、より微細な加工を行える。
【0077】
また、上記被加工物2としては、加工針部材120によって被加工物2の表面を分極することにより、その構成原子又は構成分子が電解液12中に溶解するものであれば、適用し得る。例えば、鉄だけでなく、実施の形態1で述べたような鉄系の合金にも適用可能である。このため、鉄や鉄合金等で形成される射出成形金型やプレス金型等に対しても、好適な微細加工装置或は微細加工方法として利用できる。
【0078】
また、電解液12としても、上記加工針部材120との相互作用により、被加工物2の構成原子又は構成分子を解離可能な種々の電解液12を用いることができる。
【0079】
特に、本実施形態では、前記解離促進部材として、電極本体部122と、電極本体部122の表面に形成された絶縁膜124とを有する加工針部材120を用いている。そして、電極本体部122が−(マイナス)極(陰極)となるように電圧を印加し、これにより、被加工物表面のうち解離促進部材を接触させた部分を+(プラス)分極している。これにより、被加工物2表面のうち加工針部材120が接触した部分で、原子間又は分子間の結合を弱めて、構成原子又は構成分子が電解液12中に解離するようにしている。これにより、被加工物2に対してより微細な加工を行える。つまり、被加工物2の表面のうち加工針部材120が接触する部分で上記反応が生じるため、例えば、従来の加工技術では困難であった、数μm〜数百μm、主として十数μm〜数十μm幅のリッジ(稜)状の細線加工も可能となる。
【0080】
しかも、被加工物2に電気的に接触するように設けられ、上記加工針部材120とは反対極性を持つように電圧が印加される接触電極114をさらに備えているため、被加工物2表面のうち加工針部材が接触した部分をより効果的に分極することができ、より効果的に上記加工を行うことができる。
【0081】
なお、本実施形態では、加工針部材120を−(マイナス)極性に、接触電極114を+(プラス)極性にする例で説明したが、被加工物2の構成原子又は構成分子がマイナスイオンとして電解液12中に溶け出すものであれば、それらの極性を反対にして適用するようにしてもよい。
【0082】
その他、上記実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0083】
{変形例}
本実施形態では、加工針部材20,120が加工針移動機構65の駆動によりZ方向に移動し、被加工物2が被加工物移動機構60の駆動によりXY方向に移動する例で説明したが、必ずしもその必要はない。例えば、加工針部材20,120及び被加工物2の双方が、又は、いずれか一方がXYZ方向に移動可能に構成されていてもよい。加工針部材20,120及び被加工物2の双方がXYZ方向に移動可能である場合には、被加工物2は粗い位置制御に、加工針部材20,120については精密な位置制御を行うようにしてもよい。要するに、加工針部材20,120と被加工物2とが相対的に移動可能であればよい。また、2次元的な加工を行う場合には、加工針部材20,120と被加工物2とが2次元方向で相対的に移動可能であればよい。
【0084】
また、本微細加工装置及び微細加工方法は、被加工物2が上記鉄及び鉄系の合金以外の金属、合金、さらに、無機化合物、半導体にも適用可能である。つまり、上記加工針部材20,120により反応が促進されて、当該被加工物2の構成原子又は構成分子が電解液12中に溶解するものであれば、被加工物2として適用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】実施の形態1に係る微細加工装置を示す図である。
【図2】加工針部材近傍での微細加工反応を説明する図である。
【図3】実施の形態2に係る微細加工装置を示す図である。
【図4】実施の形態3に係る微細加工装置を示す図である。
【図5】加工針部材近傍での微細加工反応を説明する図である。
【符号の説明】
【0086】
2 被加工物、10 容器体、12 電解液、14 対向電極、20,120 加工針部材、22 光ファイバー、24 光触媒部材、26 透明電極部材、28 絶縁皮膜、29 外周電極、30 光源、32 光、40,41 電源、114 接触電極、122 電極本体部、124,125 絶縁膜、128 配線膜。
【出願人】 【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【出願日】 平成18年6月20日(2006.6.20)
【代理人】 【識別番号】100089233
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 茂明

【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊

【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘


【公開番号】 特開2008−820(P2008−820A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−169502(P2006−169502)