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【発明の名称】 加工装置
【発明者】 【氏名】原田 徹

【要約】 【課題】設備コストを抑え、製造時の手間を省くことができる加工装置を提供する。

【解決手段】インサートチップ3Bにより、軸部材Wにねじ軸Sの外周Sbの切削加工を行うと共に、インサートチップ3Aにより、軸部材Wにねじ溝Saの切削加工を行うので、従来技術のように前加工でフランジ等を加工したり、外径を仕上げ加工する必要がなく、設備コストを抑えることができ、ねじ軸Sの製造の手間を省くことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材を切削加工することによりボールねじ機構のねじ軸を形成する加工装置において、
前記軸部材に対して軸線方向及び回転方向に相対的に移動する回転体と、
前記回転体に取り付けられた切削加工用の複数のバイトとを有し、
前記バイトの一つにより、前記軸部材にねじ溝以外の部位の切削加工を行うと共に、前記バイトの残りにより、前記軸部材にねじ溝の切削加工を行うことを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記ねじ溝以外の部位とは、前記ねじ軸の外周であることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記ねじ溝以外の部位とは、前記ねじ軸の段部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の加工装置。
【請求項4】
フレームに対して前記軸部材を保持し、前記回転体と共に移動するガイドブッシュを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじ機構のねじ溝の加工を行える加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ボールねじ機構のねじ軸を切削する方法には、溝形状に成形された総形バイトを使用し旋盤を用いてねじ溝を切削する方法と、特許文献1に示すようにワーリング(マッハ)装置を用いてねじ軸を切削する方法と、特許文献2に示すようにNC旋盤を使用して微小分割点群に沿ってねじ軸を倣い加工する切削方法とがある。
【特許文献1】特開平10−58233号公報
【特許文献2】特開平02−180523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ボールねじ機構のねじ軸は、単にねじ溝を外周に形成するだけでは足らず、ねじ軸の外径(ランド部の高さ)を精度良く加工すること、及び他の部材に取り付けるためのフランジ部等を精度良く加工する必要がある場合が多い。しかしながら、上述した加工方法では、いずれもねじ溝の加工を行うに当たり、前加工にて予め素材にフランジ部等を形成し、また外径を仕上げ加工する必要があり、前加工用の加工機と外径仕上用の加工設備とを別に設備する必要があり、これにより設備コストの増大を招き、製造時の手間もかかっていた。また、2以上の加工工程を含むことから、加工途中の半製品を管理する必要が生じると共に、小ロット品に対応するための工程集約を行うことが困難であった。
【0004】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、設備コストを抑え、製造時の手間を省くことができる加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の加工装置は、軸部材を切削加工することによりボールねじ機構のねじ軸を形成する加工装置において、
前記軸部材に対して軸線方向及び回転方向に相対的に移動する回転体と、
前記回転体に取り付けられた切削加工用の複数のバイトとを有し、
前記バイトの一つにより、前記軸部材にねじ溝以外の部位の切削加工を行うと共に、前記バイトの残りにより、前記軸部材にねじ溝の切削加工を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、前記バイトの一つにより、前記軸部材にねじ溝以外の部位の切削加工を行うと共に、前記バイトの残りにより、前記軸部材にねじ溝の切削加工を行うので、従来技術のように前加工でフランジ等を加工したり、外径を仕上げ加工する必要がなく、設備コストを抑えることができ、ねじ軸の製造の手間を省くことができる。
【0007】
前記ねじ溝以外の部位とは、前記ねじ軸の外周であると好ましく、更に前記ねじ軸の切削された外周に、前記ねじ溝が切削されると好ましい。
【0008】
前記ねじ溝以外の部位とは、前記ねじ軸の段部であると好ましい。
【0009】
フレームに対して前記軸部材を保持し、前記回転体と共に移動するガイドブッシュを有すると、切削加工時のビビリを抑制できるので好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態である加工装置の要部斜視図であり、図2は、図1の構成を矢印II方向に見た図であり、図3は、図2の構成をIII-III線で切断して矢印方向に見た図であり、図4は、工具ホルダの正面図であり、図5は、図4の構成をV-V線で切断して矢印方向に見た図であり、図6は、図4の構成をVI-VI線で切断して矢印方向に見た図である。
【0011】
図4において、回転体である略環状の工具ホルダ1は、中央に開口1aを有すると共に、浅い溝状に切り取られた一対の凹部1b、1bを点対称な位置に有する。凹
【0012】
2つの矩形板状のバイト2は、それぞれ長孔2aを有している。一方のバイト2の端部には、インサートチップ3Aが取り付けられ、他方のバイト2の端部には、インサートチップ3Bが取り付けられ、それぞれ結合されて一体となっている。尚、バイトとインサートチップとは任意の組み合わせが可能であり、これにより加工時間削減の効果がある。
【0013】
図5,6を比較して理解されるように、インサートチップ3Aとインサートチップ3Bの刃先形状が異なっている。より具体的には、インサートチップ3Aのすくい面3aの刃先は、ボールねじ機構のねじ軸のねじ溝を形成できるように円弧状を呈し、インサートチップ3Bのすくい面3bの刃先は、当該ねじ軸の外周を形成できるように平先形状を呈している。尚、インサートチップ3Bの位置に対して、インサートチップ3Aの中心は、距離Δだけ奥側にシフトされている。距離Δは、ねじ軸のねじ溝のリードの1.5倍であると好ましい。
【0014】
図4に示すように、2つのバイト2は、工具ホルダ1の凹部1bにそれぞれ配置され、ボルト4,4により工具ホルダ1に固定される。尚、ボルト4,4により固定される前においては、凹部1bの平行な側面にガイドされて、バイト2は、図4で左右方向に独立して相対移動可能となっている。又、本実施の形態では、インサートチップ3A,3Bの傾きを変更する傾斜機構は、工具ホルダ1に設けられていない。
【0015】
図1,3に示すように、ねじ軸の素材となる軸部材Wの外周は、超鋼をDLC(ダイヤモンドライクカーボン)でコーティング処理されてなる中空のガイドブッシュ5により支持されている。ガイドブッシュ5は、フレーム6に嵌合している。尚、ガイドブッシュ5と軸部材Wとは、常に適正なすきまに保持されることが重要であるが、油圧(空圧)等を利用して適正圧力で軸部材Wを保持するようにしても良い。
【0016】
次に、ボールねじ機構のねじ軸の加工について説明する。工具ホルダ1と、円筒状の軸部材Wとを、軸線が互いにシフトした状態で、旋盤の別々の主軸に取り付ける。このとき、インサートチップ3Aのすくい面3aの延長面が、軸部材Wの軸線に対して直交するようになっている。従って、ねじ溝の切削は干渉切削であり、専用の形状を有している。但し、工具ホルダ1にリード角分の傾斜を与える傾斜機構を設けても良い。インサートチップ3Aの刃先は、軸部材Wの表面を切削する位置にあり、インサートチップ3Bの刃先は、ねじ軸のねじ溝を切削する位置にあるものとする。
【0017】
かかる状態で、図1に示すように、工具ホルダ1と、フレーム6に支持された軸部材Wとを同方向に回転させながら相対的に接近させるが、工具ホルダ1の回転速度は、軸部材Wの回転速度より速くなっている。又、切削開始後において工具ホルダ1を、ガイドブッシュ5に同期して軸線方向に移動する。このとき、インサートチップ3Bが、先行してねじ軸の外周の切削加工を開始し、それに距離Δだけ遅れて、インサートチップ3Aが、切削された外周に対してねじ溝を切削加工することとなる。軸部材Wは、工具ホルダ1と同期して移動するガイドブッシュ5により保持されているので、ねじ溝加工点より一定距離離れた位置が常に支持されるため、ねじ軸の外周を切削加工することで細くなった軸部材Wの剛性不足に起因して発生するビビリ現象(インサートチップ3A切削時における軸部材Wの振動)を抑制できる。
【0018】
所定の軸線方向位置まで、工具ホルダ1を軸部材Wに対して相対移動させた後、加工を終了させると、図7に示すような形状を形成できる。ここで、図7において、ねじ軸Sには、インサートチップ3Aにより切削されたねじ溝Saが形成されると同時に、インサートチップ3Bの平先で切削されたねじ溝Saの外周(ランド部)Sb及びインサートチップ3Bの側縁で切削されたねじ溝Saの段部Scが形成される。図6に示すように、段部Scは、ねじ溝Saの端部から距離Δ(例えば1.5リード)だけ隔置している。従って、段部Scをねじ軸Sの取り付け用として利用することができる。段部Scの代わりにフランジ部を形成しても良い。その後、ねじ軸Sは熱処理されて、図8に示すような製品とされ、不図示のボールねじ機構に組み込むことができる。
【0019】
本実施の形態によれば、インサートチップ3Bにより、軸部材Wにねじ軸Sの外周Sbの切削加工を行うと共に、インサートチップ3Aにより、軸部材Wにねじ溝Saの切削加工を行うので、従来技術のように前加工でフランジ等を加工したり、外径を仕上げ加工する必要がなく、設備コストを抑えることができ、ねじ軸Sの製造の手間を省くことができる。
【0020】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば軸部材Wは、中実でも中空(チューブ状)であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施の形態である加工装置の要部斜視図である。
【図2】図1の構成を矢印II方向に見た図である。
【図3】図2の構成をIII-III線で切断して矢印方向に見た図である。
【図4】工具ホルダの正面図である。
【図5】図4の構成をV-V線で切断して矢印方向に見た図である。
【図6】図4の構成をVI-VI線で切断して矢印方向に見た図である。
【図7】ボールねじ機構のねじ軸を軸線方向に切断して一部を拡大した図である。
【図8】ボールねじ機構のねじ軸の加工途中の状態を示す図である。
【図9】ボールねじ機構の完成されたねじ軸の側面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 工具ホルダ
1a 開口
1b 凹部
2 バイト
2a 長孔
3A インサートチップ
3B インサートチップ
3a すくい面
3b すくい面
4 ボルト
5 ガイドブッシュ
6 フレーム
S ねじ軸
Sa ねじ溝
Sb 外周
Sc 段部
W 軸部材
【出願人】 【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
【出願日】 平成19年5月31日(2007.5.31)
【代理人】 【識別番号】100107272
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 敬二郎

【識別番号】100109140
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 研一


【公開番号】 特開2008−296331(P2008−296331A)
【公開日】 平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願番号】 特願2007−145403(P2007−145403)