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【発明の名称】 ねじ切り工具
【発明者】 【氏名】松島 信之

【要約】 【課題】小型化を図り、ボルトを補修できる適用範囲を広くすることができるねじ切り工具を提供すること。

【解決手段】本願発明のねじ切り工具1によれば、本体部2とダイス部3とが一体に構成されているので、ダイス部が本体部に外嵌されるタイプのねじ切り工具と比較して、径方向におけるねじ切り工具1の小型化を図ることができる。その結果、例えば、ボルト100周辺に他の部材が配設される場合のように、他の部材がねじ切り工具1に干渉する狭い作業箇所においても、ボルト100の補修作業を行うことができる、即ち、ボルト100を補修できる適用範囲を広くすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトに螺刻されたおねじを補修するためのねじ切り工具において、
軸心回りに回転される本体部と、
前記本体部の軸心方向先端側に連設され前記ボルトのおねじを補修するダイス部と、
前記本体部の軸心方向後端側に連設され断面六角形の六角ナットとして形成される係合部とを備え、
少なくとも前記本体部と前記ダイス部とが同じ金属材料から一体に構成されていることを特徴とするねじ切り工具。
【請求項2】
前記本体部と前記係合部とは、互いに別体に成形されると共に、前記本体部又は前記係合部の合わせ面の一方に突設される係合おねじ部を前記合わせ面の他方に凹設される係合めねじ部に螺合することで一体化されていることを特徴とする請求項1記載のねじ切り工具。
【請求項3】
前記本体部は、略中空状に形成される中空部を備え、
前記係合おねじ部は、前記中空部に連通する収納孔を備え、
前記中空部及び前記収納孔の内径寸法は、前記ボルトの外径寸法よりも大径に設定され、前記ボルトの先端が前記中空部を介して前記収納孔に収納可能に構成されていることを特徴とする請求項2記載のねじ切り工具。
【請求項4】
前記本体部は、略中空状に形成される中空部と、前記中空部と外部とを連通する少なくとも1つの連通孔とを備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のねじ切り工具。
【請求項5】
前記係合部は、前記ダイス部と同じ呼び径及びピッチを有する六角ナットと同じ二面幅で形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のねじ切り工具。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ切り工具に関し、特に、小型化を図り、ボルトを補修できる適用範囲を広くすることができるねじ切り工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボルトのおねじを補修するためのねじ切り工具としては、例えば、特開2003−205425号公報に開示される技術がある。この技術によれば、ねじ切り工具は、ダイスピース(ダイス部)と、そのダイスピースを外嵌するホルダ本体とを備えて構成されている。そして、回転装置がホルダ本体を回転させることで、そのホルダ本体に外嵌されたダイスピースがボルトのおねじを補修する。
【特許文献1】特開2003−205425号公報(段落[0017]、図1など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したねじ切り工具では、ホルダ本体がダイスピースを外嵌する構成であるため、ねじ切り工具の径方向寸法が増大してしまう。その結果、例えば、ボルト周辺に他の部材が配設される場合のように、他の部材がねじ切り工具に干渉する狭い補修箇所では、他の部材の干渉によりボルトを補修できず、適用範囲が限られるという問題点があった。
【0004】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、小型化を図り、ボルトを補修できる適用範囲を広くすることができるねじ切り工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、請求項1記載のねじ切り工具は、ボルトに螺刻されたおねじを補修するためのものであり、軸心回りに回転される本体部と、前記本体部の軸心方向先端側に連設され前記ボルトのおねじを補修するダイス部と、前記本体部の軸心方向後端側に連設され断面六角形の六角ナットとして形成される係合部とを備え、少なくとも前記本体部と前記ダイス部とが同じ金属材料から一体に構成されている。
【0006】
請求項2記載のねじ切り工具は、請求項1記載のねじ切り工具において、前記本体部と前記係合部とは、互いに別体に成形されると共に、前記本体部又は前記係合部の合わせ面の一方に突設される係合おねじ部を前記合わせ面の他方に凹設される係合めねじ部に螺合することで一体化されている。
【0007】
請求項3記載のねじ切り工具は、請求項2記載のねじ切り工具において、前記本体部は、略中空状に形成される中空部を備え、前記係合おねじ部は、前記中空部に連通する収納孔を備え、前記中空部及び前記収納孔の内径寸法は、前記ボルトの外径寸法よりも大径に設定され、前記ボルトの先端が前記中空部を介して前記収納孔に収納可能に構成されている。
【0008】
請求項4記載のねじ切り工具は、請求項1から3のいずれかに記載のねじ切り工具において、前記本体部は、略中空状に形成される中空部と、前記中空部と外部とを連通する少なくとも1つの連通孔とを備えている。
【0009】
請求項5記載のねじ切り工具は、請求項1から4のいずれかに記載のねじ切り工具において、前記係合部は、前記ダイス部と同じ呼び径及びピッチを有する六角ナットと同じ二面幅で形成されている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載のねじ切り工具によれば、軸心回りに回転される本体部と、その本体部の軸心方向先端側に連設されボルトのおねじを補修するダイス部とを備え、少なくともそれら本体部とダイス部とが同じ金属材料から一体に構成されているので、ダイス部が本体部に外嵌されるタイプのねじ切り工具と比較して、径方向におけるねじ切り工具の小型化を図ることができる。
【0011】
その結果、例えば、ボルト周辺に他の部材が配設される場合のように、他の部材がねじ切り工具に干渉する狭い作業箇所においても、ボルトの補修作業を行うことができる、即ち、ボルトを補修できる適用範囲を広くすることができるという効果がある。
【0012】
また、本体部とダイス部とが同じ金属材料から一体に構成されているので、本体部にダイス部を保持するための保持機構を設けることを不要として、その分、加工コストの低減を図ることができるという効果がある。
【0013】
また、本体部の軸心方向後端側に連設され断面六角形の六角ナットとして形成される係合部を備えているので、レンチ等の一般的なナット締め付け工具で係合部を回転させることができる。その結果、本体部を回転させる、即ち、ボルトのおねじを補修するための特殊な工具が不要となるという効果がある。
【0014】
請求項2記載のねじ切り工具によれば、請求項1記載のねじ切り工具の奏する効果に加え、本体部と係合部とは、互いに別体に成形されると共に、本体部又は係合部の合わせ面の一方に突設される係合おねじ部を合わせ面の他方に凹設される係合めねじ部に螺合することで一体化される、即ち、本体部と係合部とが着脱自在に構成されているので、本体部又は係合部のどちらか一方が消耗した場合には、本体部又は係合部のどちらか一方のみを交換することができる。その結果、ねじ切り工具全体の交換を不要として、その分、コストの低減を図ることができるという効果がある。
【0015】
請求項3記載のねじ切り工具によれば、請求項2記載のねじ切り工具の奏する効果に加え、本体部は、略中空状に形成される中空部を備え、係合おねじ部は、中空部に連通する収納孔を備え、それら中空部及び収納孔の内径寸法がボルトの外径寸法よりも大径に設定されているので、中空部を介してボルトの先端を収納孔に収納させることができる。
【0016】
その結果、ねじ部長さが長いボルトを補修する場合に、本体部の軸方向長さを長くすることを不要として、ねじ切り工具の軸方向長さが長くなることを抑制しつつ、ねじ部長さの長いボルトを補修することができるという効果がある。
【0017】
請求項4記載のねじ切り工具によれば、請求項1から3のいずれかに記載のねじ切り工具の奏する効果に加え、本体部は、略中空状に形成される中空部と、その中空部と外部とを連通する少なくとも1つの連通孔とを備えているので、連通孔又はダイス部のどちらか一方から中空部内に空気を注入し、その注入した空気で中空部内に蓄積される切り屑を連通孔又はダイス部のどちらか他方から排出することができるという効果がある。
【0018】
請求項5記載のねじ切り工具によれば、請求項1から4のいずれかに記載のねじ切り工具の奏する効果に加え、係合部は、ダイス部と同じ呼び径及びピッチを有する六角ナットと同じ二面幅で形成されている、即ち、補修すべきボルトに取り付けられるナットと同一形状に形成されているので、ボルトに取り付けられるナットの締め付けに用いる工具とボルトを補修するために用いる工具とを共通化して、作業能率の向上を図ることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態におけるねじ切り工具1の正面図である。図2(a)は、図1中の矢印IIa方向視におけるねじ切り工具1の側面図であり、図2(b)は、図1中の矢印IIb方向視におけるねじ切り工具1の側面図である。なお、図2(b)では、理解を容易とするために、係合めねじ部21(図3(b)参照)の図示が省略されている。
【0020】
まず、図1及び図2を参照して、ねじ切り工具1の全体構成について説明する。ねじ切り工具1は、ボルト100(図4参照)に螺刻されるおねじ101(図4参照)を補修するための工具であり、本体部2と、ダイス部3と、係合部4とを備えて構成されている。
【0021】
本体部2は、図1に示すように、超硬合金から構成される略円筒状部材であり、その外径寸法が後述するダイス部3及び受け部41の外径寸法と略同等に設定されている。また、本体部2の軸心O方向後端側(図1左側)に形成される合わせ面2aは、後述する合わせ面41aと当接するように構成されている。なお、図2(b)に示す中空部22及び本体部2内部の詳細構成については後述する(図3(b)参照)。
【0022】
ダイス部3は、ボルト100のおねじ101を補修するための部位であり、図1及び図2(b)に示すように、溝部31と、ねじ切り刃32とを備えている。また、ダイス部3は、本体部2と同心となるように、本体部2の軸心O方向先端側(図1右側)に連設されている。なお、ダイス部3は、本体部2と同じ材料、即ち、超硬合金から本体部2と一体に構成されている。
【0023】
溝部31は、切り屑を排出するための溝であり、図2(b)に示すように、軸心Oから径方向外方に向けて凹設されると共に、周方向略等間隔(略90°間隔)に4カ所配置されている。ねじ切り刃32は、食付き部、完全ねじ部及び逃げ部を有すると共に、それら食い付き部及び完全ねじ部でボルト100のおねじ101を補修するものであり、図2(b)に示すように、各溝部31同士の間に連設されている。
【0024】
係合部4は、図1及び図2(a)に示すように、本体部2と同心となるように本体部2の軸心O方向後端側に配設される部材であり、受け部41と、ナット部42と、後述する係合おねじ部43(図3(a)参照)とを備えて構成されている。なお、係合部4は、本体部2と異なる材料である高速度工具鋼から本体部2と別体に成形され、本体部2と着脱可能に構成されるものであり、詳細については後述する(図3参照)。
【0025】
受け部41は、図1及び図2(a)に示すように、その外径寸法が本体部2の外径寸法と略同等に設定される断面略円形状の部材であり、軸心O方向先端側に形成される合わせ面41aが本体部2の合わせ面2aと当接するように構成されている。
【0026】
ナット部42は、図1及び図2(a)に示すように、受け部41の合わせ面41aに対して反対側(図1左側及び図2(a)紙面垂直方向手前側)の面から突設される部材であり、断面六角形の六角ナットとして形成されている。
【0027】
また、ナット部42の二面幅sは、ダイス部3のねじ切り刃32(図3(b)参照)と同じ呼び径及びピッチを有する六角ナット、即ち、ボルト100に取り付けられる六角ナット(図示せず)の二面幅と同等に設定されている。
【0028】
なお、請求項5記載の「二面幅」とは、JIS−B−1181の付属書付表1−1に準ずるものであり、例えば、ボルト100がM10×1.5(並目)又はM10×1.25(細目)の場合では、ナット部42の二面幅sは、17mmに設定される。
【0029】
ただし、ナット部42の二面幅sを他の技術的思想により構成してもよい。例えば、ボルト100がM10×1.5(並目)又はM10×1.25(細目)の場合でも、ナット部42の二面幅sに17mm以外の数値を適用してもよい。
【0030】
なお、この場合には、ナット部42の二面幅sを、上述した付属書付表1−1に記載された基準寸法、具体的には、6、7、8、10、11、13、19、22、24mm等に設定することが望ましい。これにより、一般に普及している六角レンチ、スパナ等のナット締め付け工具でナット部42を締め付けることができる。
【0031】
また、本発明のねじ切り工具1が車載工具として用いられる場合には、ナット部42の二面幅sは、一般的なホイールナットの二面幅と同等、即ち、19mm又は21mmに設定することが望ましい。これにより、車載工具内のホイールナットを締め付ける工具と同一の工具で、ナット部42を締め付ける(ねじ切り工具1を回転させる動作に対応する)ことができる。
【0032】
次に、図3を参照して、係合部4、本体部2及びダイス部3の詳細について説明する。図3は、ねじ切り工具1の分解図であり、図3(a)は、係合部4の正面図であり、図3(b)は、図2(b)のIIIb−IIIb線における本体部2及びダイス部3の断面図である。なお、図3(b)では、理解を容易とするために、ねじ切り刃32のねじ山の図示が省略されると共に、ねじ切り刃32の食付き部、完全ねじ部及び逃げ部の図示が省略されている。
【0033】
まず、図3(a)を参照して、係合部4の詳細について説明する。図3(a)に示すように、係合部4は、合わせ面41aから突設される係合おねじ部43を備えている。
【0034】
係合おねじ部43は、その外周面におねじが螺刻されるボルトとして形成され、後述する係合めねじ部21(図3(b)参照)と螺合可能に構成されている。なお、係合おねじ部43は、その外径寸法がボルト100(図4参照)の外径寸法d2(図4参照)と略同等に設定されている。
【0035】
次に、図3(b)を参照して、本体部2及びダイス部3の詳細について説明する。図3(b)に示すように、本体部2は、係合めねじ部21と、中空部22と、連通孔23とを備えて構成されている。
【0036】
係合めねじ部21は、本体部2の軸心O方向後端側(図3(b)左側)に形成されるめねじであり、上述した係合部4(図3(a)参照)の係合おねじ部43(図3(a)参照)と螺合可能に構成されている。
【0037】
即ち、係合部4は、係合おねじ部43及び係合めねじ部21により本体部2と着脱可能に構成されているので、本体部2又は係合部4のどちらか一方が消耗した場合には、本体部2又は係合部4のどちらか一方のみを交換することができる。その結果、ねじ切り工具1全体の交換を不要として、その分、コストの低減を図ることができる。
【0038】
なお、本発明のねじ切り工具1では、ねじ切り刃32の硬度を確保するために、本体部2及びダイス部3は超硬合金から構成されている。ここで、上述したように、係合部4は、本体部2及びダイス部3と別体に成形されているので、係合部4を本体部2及びダイス部3と異なる材料である高速度工具鋼から構成することができる。これにより、ねじ切り工具1全体を超硬合金から構成する場合と比較して、材料コストの低減、及び加工コストの低減を図ることができる。
【0039】
中空部22は、係合めねじ部21の軸心O方向先端側(図3(b)右側)から本体部2の軸心O方向先端側にかけて形成される空間であり、その内径寸法d1がねじ切り刃32の谷の径寸法、即ち、ボルト100(図4参照)の外径寸法d2(図4参照)よりも大径に設定されている。これにより、中空部22は、その内部にボルト100の先端を収納可能となり、ねじ部長さの長いボルト100を補修することができる。
【0040】
連通孔23は、本体部2の中空部22と対応する位置に2カ所穿設される断面略円形状の孔であり、中空部22と外部とを連通させている。
【0041】
これにより、エアガン等で一の連通孔23から中空部22内に空気を注入し、中空部22内に蓄積される切り屑を他の連通孔23又は溝部31から排出させることができる。同様に、溝部31から空気を注入した場合には、中空部内22に蓄積される切り屑を各連通孔23から排出させることができる。
【0042】
また、各連通孔23は、互いに対向する位置に配置されている。これにより、かかる各連通孔23にドライバ等の棒状工具又は棒状部材を各連通孔23に挿通させ、その挿通された棒状工具又は棒状部材で本体部2を保持することができる。その結果、本体部2及び係合部4を一体化させる場合に、本体部2を棒状工具又は棒状部材で保持することで、本体部2を手などで保持する場合と比較して、本体部2及び係合部4の一体化を容易に行うことができる。
【0043】
ダイス部3には、上述したように、溝部31及びねじ切り刃32が形成され、それら溝部31及びねじ切り刃32は、中空部22の軸心O方向先端側に連設されている。このように、本発明のねじ切り工具1は、本体部2の軸心O方向先端側にダイス部3が連設されているので、ダイス部が本体部に外嵌されるタイプのねじ切り工具と比較して、径方向(図3(b)上下方向)におけるねじ切り工具1の小型化を図ることができる。
【0044】
その結果、例えば、ボルト100周辺に他の部材が配設される場合のように、他の部材がねじ切り工具1に干渉する狭い作業箇所においても、ボルト100の補修作業を行うことができる、即ち、ボルト100を補修できる適用範囲を広くすることができる。
【0045】
また、本体部2とダイス部3とが一体に構成されているので、本体部2にダイス部3を保持させるための保持機構を設けることを不要として、その分、加工コストの低減を図ることができる。
【0046】
次に、図4を参照して、ねじ切り工具1の使用方法について説明する。図4は、ねじ切り工具1の断面図である。なお、図4では、ボルト100の軸方向長さの図示が省略されている。
【0047】
ねじ切り工具1を用いてボルト100のおねじ101を補修する際には、始めに、手でねじ切り工具1を回転させ、ねじ切り刃32(図3(b)参照)の食い付き部とボルト100の先端とを螺合させる。
【0048】
次に、ボルト100の損傷が少なく、ねじ切り工具1を手で回転させることができる場合には、そのまま手でねじ切り工具1を回転させ、ボルト100のおねじ101の補修を行う。
【0049】
一方、ボルト100の損傷が激しく、ねじ切り工具1を手で回転させることができない場合には、六角レンチやスパナ等のナット締め付け工具を用いてナット部42を回転させ、ボルト100のおねじ101の補修を行う。
【0050】
このように、六角レンチやスパナ等の一般的なナット締め付け工具でボルト100のおねじ101を補修することができるので、ボルト100のおねじ101を補修する、即ち、ねじ切り工具1を回転させるために特殊な工具を用いることが不要となる。
【0051】
また、上述したように、ナット部42の二面幅s(図2(a)参照)は、ボルト100に取り付けられる六角ナット(図示せず)の二面幅と略同等に設定されている、即ち、ナット部42の形状は、ボルト100に取り付けられる六角ナットと同一形状に形成されている。これにより、ボルト100に取り付けられる六角ナットの締め付けに用いる工具とボルト100の補修に用いる工具とを共通化して、作業能率の向上を図ることができる。
【0052】
ここで、係合部4は、上述したように、係合おねじ部43と係合めねじ部21との螺合により本体部2と一体化されるように構成されている、即ち、ナット部42を回転させて係合部4及び本体部2を一体化させることができるので、ボルト100の補修に用いる工具と係合部4及び本体部2を一体化させる工具とを共通化して、作業能率の向上を図ることができる。
【0053】
なお、ねじ切り刃32の内径寸法は、係合めねじ部21の内径寸法よりも大きく設定されている。そして、上述したように、係合おねじ部43の外径寸法は、ボルト100の外径寸法d2と略同等に設定されているので、ねじ切り刃32とボルト100との隙間寸法は、係合おねじ部43と係合めねじ部21との隙間寸法よりも大きくなる。
【0054】
その結果、ねじ切り刃32とボルト100との締結力は、係合おねじ部43と係合めねじ部21との締結力よりも小さくなるので、ナット部42を回転させてねじ切り工具1を補修後のボルト100から引き抜く際に、係合部4が本体部2から外れることを防止できる。
【0055】
また、本実施の形態におけるボルト100は、右ねじで構成されており、ねじ切り刃32は、軸心O方向視において、時計回り(右回り)にたどれば遠ざかるねじ山が螺刻されている。同様に、係合おねじ部43は、右ねじで構成されており、係合めねじ部21は、軸心O方向視において、時計回りにたどれば遠ざかるねじ山が螺刻されている。
【0056】
即ち、ねじ切り刃3のねじ山の向きと係合めねじ部21のねじ山の向きとは、同一方向に設定されている。その結果、ナット部42を時計回りに回転させてボルト100を補修する場合に、係合おねじ部43を係合めねじ部21に引き込ませることができ、ボルト100の補修時に係合部4が本体部2から外れることを防止できる。
【0057】
次に、図5を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、係合おねじ部43が中実軸で構成される場合を説明したが、第2実施の形態では、係合おねじ部243が中空軸で構成されている。なお、上記した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0058】
図5は、第2実施の形態におけるねじ切り工具201の断面図である。なお、図5では、ボルト100の軸方向長さの図示が省略されている。
【0059】
本体部202は、図4に示すように、中空部22の軸心O方向後端側(図5左側)に連設される係合めねじ部221を備えており、その係合めねじ部221の内径寸法は、中空部22の内径寸法d1よりもわずかに大きく設定されている。
【0060】
即ち、係合めねじ部221は、本体部202に中空部22を形成するための孔を穿設し、その孔の内壁にタップ等のおねじ型工具で螺刻することで形成される。その結果、別途、係合めねじ部221を螺刻するための孔を本体部2に穿設することを不要として、加工コストの低減を図っている。
【0061】
係合部204は、合わせ面2aから突設される係合おねじ部243を備えており、その係合おねじ部243の外周面には、係合めねじ部221と螺合するためのおねじが螺刻されている。
【0062】
また、係合おねじ部243には、その先端面に穿設される収納孔244を備えており、その収納孔244の内径寸法d3は、ボルト100の外径寸法d2よりも大径に設定されている。
【0063】
これにより、収納孔244は、中空部22を介してボルト100の先端を収納することができる。その結果、ねじ部長さが長いボルト100を補修する場合に、中空部22の軸方向長さ(図5左右方向長さ)を長くする、即ち、ねじ切り工具201の軸方向長さを長くすることなく、ねじ部長さが長いボルト100を補修することができる。
【0064】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0065】
例えば、本実施の形態では、本体部2,202及び係合部4,204は、係合おねじ部43,243と係合めねじ部21,221との螺合により一体化される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、ラチェットハンドル及びソケットの接続機構により本体部2,202及び係合部4,204を一体化させてもよい。
【0066】
即ち、本体部2,202には、その軸心O方向後端側に断面四角形の孔を穿設し、その孔を形成する一の内壁面に略円形状の凹部を凹設する。一方、係合部4,204には、その合わせ面41aに断面四角形の凸部を突設し、その凸部の一側面に出し入れ可能な略球状のボール部材を配設する。そして、孔及び凸部を嵌合する際に、ボール部材と凹部とを係合させることで、本体部2,202及び係合部4,204を一体化させることができる。
【0067】
このように、ラチェットハンドル及びソケットの接続機構により本体部2,202及び係合部4,204を一体化させる、即ち、ボール部材と凹部との係合により本体部2,202及び係合部4,204を一体化させることで、おねじとめねじとの螺合により本体部2,202及び係合部4,204を一体化させる場合と比較して、本体部2,202及び係合部4,204の着脱を容易に行うことができる。
【0068】
また、本実施の形態におけるナット部42は、断面六角形の六角ナットで形成されているが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、断面四角形の四角ナットや環の付いたアイナット等で構成してもよい。
【0069】
また、本実施の形態における本体部2,202及びダイス部3は、超硬合金から構成されているが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、高速度工具鋼から構成してもよい。
【0070】
同様に、本実施の形態における係合部4,204は、高速度工具鋼から構成されているが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、超硬合金や合金工具鋼から構成してもよい。
【0071】
また、本実施の形態におけるねじ切り工具1,201は、ボルト100に螺刻されるおねじ101を補修するために用いられるものであるが、おねじを螺刻する用途に用いてもよい。
【0072】
また、本実施の形態における連通孔23は2つで構成されているが、1つでもよく、あるいは、3つ以上で構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1実施の形態におけるねじ切り工具の正面図である。
【図2】(a)は、図1中の矢印IIa方向視におけるねじ切り工具の側面図であり、(b)は、図1中の矢印IIb方向視におけるねじ切り工具の側面図である。
【図3】ねじ切り工具の分解図であり、(a)は、係合部の正面図であり、(b)は、図2(b)のIIIb−IIIb線における本体部及びダイス部の断面図である。
【図4】ねじ切り工具の断面図である。
【図5】第2実施の形態におけるねじ切り工具の断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1,201 ねじ切り工具
2,202 本体部
2a 合わせ面
3 ダイス部
4,204 係合部
21,221 係合めねじ部
22 中空部
23 連通孔
41a 合わせ面
42 ナット部(係合部の一部)
43,243 係合おねじ部
100 ボルト
101 おねじ
244 収納孔
O 軸心
s 二面幅
d1 中空部の内径寸法
d2 ボルトの外径寸法
d3 収納孔の内径寸法
【出願人】 【識別番号】000103367
【氏名又は名称】オーエスジー株式会社
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【識別番号】595120840
【氏名又は名称】大高精工株式会社
【出願日】 平成18年11月20日(2006.11.20)
【代理人】 【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー


【公開番号】 特開2008−126357(P2008−126357A)
【公開日】 平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願番号】 特願2006−313392(P2006−313392)