トップ :: B 処理操作 運輸 :: B23 工作機械;他に分類されない金属加工

【発明の名称】 内径ネジ加工方法
【発明者】 【氏名】石橋 光治

【氏名】高垣 忠史

【氏名】原田 彰夫

【要約】 【課題】高い精度のもとに内径ネジを加工することのできる内径ネジ加工方法を提供する。

【解決手段】切削チップ20のすくい面20aとチップホルダ10の軸方向との挟角θnがナット40の内径ネジのリード角θlと一致するように切削チップ20をチップホルダ10に固定する。チップホルダ10を回転させるとともにチップホルダ10の軸方向に沿ってナット40側に移動させることにより、切削チップ20におけるすくい面20aの刃先によりナット40の内径ネジを切削する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状をなす被削材の内周面に内径ネジを形成する内径ネジ加工方法であって、
切削チップのすくい面とチップホルダの軸方向との挟角が前記内径ネジのリード角と一致するように前記切削チップを前記チップホルダに固定し、前記被削材と前記チップホルダとを相対回転させるとともにそれらを前記チップホルダの軸方向に沿って相対移動させることにより、前記切削チップにおけるすくい面の刃先により前記内径ネジを切削する
ことを特徴とする内径ネジ加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の内径ネジ加工方法において、
前記切削チップを前記チップホルダに対し敷板を介して固定し、前記敷板として前記切削チップのすくい面と前記チップホルダの軸方向との挟角が前記内径ネジのリード角と一致するように、前記切削チップに当接する面と前記チップホルダに当接する面との挟角が設定されたものを用いる
ことを特徴とする内径ネジ加工方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の内径ネジ加工方法において、
前記切削チップとして、その刃が荒加工に対応する荒刃と仕上げ加工に対応する仕上げ刃を含むものを用いる
ことを特徴とする内径ネジ加工方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、内径ネジの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関の燃費や出力の向上を図るため、機関運転状態に基づき機関バルブの最大リフト量を変更する内燃機関の動弁装置が広く採用されている。こうした動弁装置としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。具体的には、図3に示されるように、機関バルブ101とカム102との間に、仲介駆動機構110が設けられており、この仲介駆動機構110は、上記カム102に当接しその回転に基づいて揺動する入力部111と、同入力部111とともに揺動することにより機関バルブ101を往復駆動する出力部112と、これら入力部111及び出力部112に駆動連結されるコントロールシャフト113とを備えている。そして、このコントロールシャフト113がその軸方向に移動させることにより、上記入力部111と出力部112との相対位相差が変更されて機関バルブ101の最大リフト量が変更されるようになる。
【0003】
また、コントロールシャフト113の基端部113aには、同コントロールシャフト113を駆動するためのモータ120が設けられている。コントロールシャフト113においてその基端部113aの外周面には外径ネジ113bが形成されている。また、モータ120の出力軸に固定されたナット120aの内周面にはコントロールシャフト113の外径ネジ113bに螺合される内径ネジ120bが形成されている。そしてこれらネジ113b,120bの螺合により、ナット120aが回転すると、そのナット120aの回転運動がコントロールシャフト113の軸方向への直線運動に変換される。そしてこのようにコントロールシャフト113をその軸方向に沿って移動させることにより、機関バルブ101の最大リフト量を変更することができるようになる。なお、機関運転状態に応じて制御精度を維持しつつも速やかに機関バルブ101の最大リフト量を変化させるためには、上記基端部113a及びナット120aにそれぞれ形成されるネジとして多条ネジを採用することが望ましい。
【0004】
ここで、上述のような内径ネジ120bの加工方法としては従来、例えば特許文献2に記載されるように、切削タッブを用いて内径ネジを切削加工する方法が周知である。すなわち、切削タッブを回転させるとともにその軸方向に沿って母材に送ることにより、母材の内周にネジを切削するようにしている。
【特許文献1】特開2006−063846号公報
【特許文献2】特開2002−292521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このように切削タッブを用いて内径ネジを加工するときに、切削タッブと母材との間には相対的に大きな抵抗トルクが生じることがあり、またその切削速度が比較的低速であるため、母材の加工面がむしられるようになる結果、内径ネジの加工精度が低下するおそれがある。特に、上述したように、多条ネジを加工する場合には、一条ネジの加工と比較して切削タッブの送りが大きくなるため、切削タッブと母材との間に生じる抵抗トルクが更に大きくなり、上記不都合が一層深刻なものとなる。
【0006】
なお、機関動弁装置のナット120aの内径ネジ加工について説明したが、こうした不都合は同構成に限らず、他の内径ネジ加工において概ね共通して発生し得る。
本発明は、高い精度のもとに内径ネジを加工することのできる内径ネジ加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、円筒状をなす被削材の内周面に内径ネジを形成する内径ネジ加工方法であって、切削チップのすくい面とチップホルダの軸方向との挟角が前記内径ネジのリード角と一致するように前記切削チップを前記チップホルダに固定し、前記被削材と前記チップホルダとを相対回転させるとともにそれらを前記チップホルダの軸方向に沿って相対移動させることにより、前記切削チップにおけるすくい面の刃先により前記内径ネジを切削することをその要旨とする。
【0008】
同構成によれば、切削チップをチップホルダに固定して切削チップの刃により内径ネジ加工を行うため、切削タッブを用いて内径ネジ加工を行う場合と比較して、比較的高速で被削材を切削することができ、その加工面がむしられて内径ネジの加工面精度が低下することを抑制することができる。また、切削チップのすくい面と同チップホルダの軸方向、換言すればチップホルダと被削材との相対送り方向との挟角が内径ネジのリード角と一致するように、同切削チップをチップホルダに固定しているため、切削チップの刃の厚みによる被削材との干渉を抑制することができるため、切削チップとしてネガチップ等、逃げ角の比較的小さいチップを用いることができるようになる。そのため、刃の剛性が相対的に高い切削チップを用いることができるようにより、例えば多条ネジを加工する場合であっても、その送り速度が大きくなることに起因する切削チップの欠損などを抑制することができる。その結果、上記構成によれば、高い精度のもとに内径ネジを加工することができるようになる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内径ネジ加工方法において、前記切削チップを前記チップホルダに対し敷板を介して固定し、前記敷板として前記切削チップのすくい面と前記チップホルダの軸方向との挟角が前記内径ネジのリード角と一致するように、前記切削チップに当接する面と前記チップホルダに当接する面との挟角が設定されたものを用いることをその要旨とする。
【0010】
同構成によれば、切削チップが敷板を介してチップホルダに固定されるため、敷板のみを交換することにより、切削チップとチップホルダの軸方向との挟角を変更することができるようになる。換言すれば、同一のチップ及びチップホルダを用いて異なるリード角の内径ネジを加工することができ、加工費用の増大を抑えつつ種々のリード角を有する内径ネジの加工に対応することができるようになる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の内径ネジ加工方法において、前記切削チップとして、その刃が荒加工に対応する荒刃と仕上げ加工に対応する仕上げ刃を含むものを用いることをその要旨とする。
【0012】
同構成によれば、切削チップの刃が荒刃と仕上げ刃とによって構成されるため、内径ネジの荒加工と仕上げ加工とを同時に行うことができるようになる。その結果、内径ネジの加工時間の短縮を図ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明にかかる内径ネジ加工方法の一実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。この実施形態の内径ネジ加工方法も、前述した機関動弁装置のナットの多条内径ネジを加工する方法であり、図1に、本実施形態にかかる切削チップがチップホルダに取り付けられる態様を、図2は、チップホルダが図1に示される状態からその軸を中心に90度回転した態様を示している。
【0014】
図1に示されるように、略棒状のチップホルダ10の端部には、切削チップ20が敷板30を介して脱着可能に固定されている。この切削チップ20は、超硬母材からなるネガチップである。また、敷板30において切削チップ20に当接する表面30aとチップホルダ10に当接する表面30bとの挟角θnが、その切削チップ20のすくい面20aとチップホルダ10の軸方向との挟角θnがナット40の内径ネジのリード角θlと一致するように設定されている。
【0015】
また、図2に示されるように、切削チップ20のすくい面20aの外周には、荒刃21,23,25が120度毎に形成されるとともに、これら荒刃21,23,25に対応して仕上げ刃22,24,26がそれぞれの荒刃の近傍に形成されている。ここで、荒刃21,23,25の刃先とそれらに対応する仕上げ刃22,24,26の刃先との距離は、ナット40の内径ネジのリードδと一致するように設定される。
【0016】
このような切削チップ20及びチップホルダ10を用いてナット40の内径ネジを加工する際には、これらチップホルダ10及びナット40の軸線が同一の直線に位置するように、ナット40を加工装置に固定するとともにチップホルダ10をその軸を中心に回転可能にその加工装置に取り付ける。そして、チップホルダ10を回転させるとともにその軸方向に沿ってナット40側に送り移動させることにより、刃21,22によりナット40の内径ネジを一条ずつ切削する。そして同作業を所定回数行うことにより多条ネジが形成されることとなる。
【0017】
以上説明した実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)切削チップ20をチップホルダ10に固定して切削チップ20の刃によりナット40の内径ネジ加工を行うこととした。そのため、切削タッブを用いて内径ネジ加工を行う場合と比較して、比較的高速でナット40を切削することができ、その加工面が引き裂かれて内径ネジの加工精度が低下することを抑制することができる。また、切削チップ20のすくい面20aとチップホルダ10の軸方向、換言すればチップホルダ10の送り方向との挟角θnが内径ネジのリード角θlと一致するように、同切削チップ20をチップホルダ10に固定しているため、切削チップ20の刃の厚みによるナット40の内周面との干渉を抑制することができる。したがって、切削チップとしてネガチップ等、逃げ角の比較的小さいチップを用いることができるようになる。そのため、刃の剛性が相対的に高い切削チップ20を用いることにより、多条ネジを加工するときであっても、送りが大きくなることに起因する切削チップの欠損などを抑制することができる。その結果、上記構成によれば、高い精度のもとに内径ネジを加工することができるようになる。
【0018】
(2)切削チップ20が敷板30を介してチップホルダ10に固定されることとした。そのため、敷板30のみを交換することにより、切削チップ20とチップホルダ10の軸方向との挟角θnを変更することができるようになる。換言すれば、同一の切削チップ及びチップホルダを用いて異なるリード角θlの内径ネジを加工することができ、加工費用の増大を抑えつつ種々のリード角θlを有する内径ネジの加工に対応することができるようになる。
【0019】
(3)切削チップ20の刃が荒刃21,23,25と仕上げ刃22,24,26とによって構成されることとした。そのため、一条の内径ネジの荒加工と仕上げ加工とを1つの工程で行うことができ、その加工時間の短縮を図ることができるようになる。
【0020】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態では、荒刃と仕上げ刃とを有する切削チップ20を用いて内径ネジを加工するようにしている。これに対して、例えば内径ネジのリードが相対的に小さいものである場合には、荒刃のみを有する切削チップにより荒加工が完了した後、仕上げ刃を有する別の切削チップにより仕上げ加工を行う加工方法を採用することもできる。
【0021】
・上記実施形態では、敷板30を介して切削チップ20をチップホルダ10に脱着可能に固定し、敷板30を交換することにより、切削チップ20とチップホルダ10の軸方向との挟角θnを変更するようにしている。これに対して、例えば一種の内径ネジのみを加工する場合には、切削チップ20とチップホルダ10の軸方向との挟角を変更する必要がないため、切削チップをチップホルダに直接固定する構成を採用することもできる。
【0022】
・上記実施形態では、多条ネジを加工する内径ネジ加工方法に本発明を適用する場合について説明したが、例えば内径ネジのリードが相対的に大きいものであれば、一条ネジを加工する場合であっても、本発明を適用することにより、上記実施形態に準じた作用効果を奏することができる。
【0023】
・上記実施形態では、機関動弁機構に用いられるナット40の内径ネジを加工する内径ネジ加工方法に本発明を適用する場合について説明したが、こうした機関動弁機構に用いられるナットに限らず、他の内径ネジ、特にネジの面精度が要求されるものを加工する際に本発明にかかる加工方法を適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態にかかる切削チップがチップホルダに取り付けられる状態を示す平面図。
【図2】本実施形態にかかるチップホルダが図1に示される状態からその軸を中心に90度回転した状態を示す平面図。
【図3】一般の機関動弁装置についてその構造を示す説明図。
【符号の説明】
【0025】
10…チップホルダ、20…切削チップ、20a…すくい面、21,23,25…荒刃、22,24,26…仕上げ刃、30…敷板、30a,30b…表面、40…ナット、101…機関バルブ、102…カム、110…仲介駆動機構、111…入力部、112…出力部、113…コントロールシャフト、113a…基端部、113b…外径ネジ、120…モータ、120a…ナット、120b…内径ネジ。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成18年10月26日(2006.10.26)
【代理人】 【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣

【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠


【公開番号】 特開2008−105144(P2008−105144A)
【公開日】 平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願番号】 特願2006−291160(P2006−291160)