トップ :: B 処理操作 運輸 :: B23 工作機械;他に分類されない金属加工

【発明の名称】 ブレード
【発明者】 【氏名】武内 康夫

【要約】 【課題】加工精度及び耐久性を向上させることができ、さらに、加工時間を短縮することができるブレードを提供する。

【解決手段】歯切り用カッター10は、例えば、まがりば傘歯車13等、曲線の歯すじを有する歯車の歯切り加工に用いられる加工工具である。該歯切り用カッター10は、ブレード14と、各ブレード14をそれぞれ保持する複数のブレードホルダーが周方向に等間隔に設けられたカッター本体28とを備え、該ブレード14は、加工される歯溝44を挟んで対向する両歯面46a及び46bを同時に切削する刃部42を先端に有し、該刃部42に連続するすくい面のすくい角rが2〜11°に設定されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲線の歯すじを有する歯車の歯切り加工に用いられるブレードであって、
当該ブレードは、加工される歯車の歯溝を挟んで対向する両歯面を同時に切削する第1及び第2の切れ刃が形成された刃部を先端に有し、該刃部に連続するすくい面のすくい角が2〜11°に設定されていることを特徴とするブレード。
【請求項2】
請求項1記載のブレードにおいて、
前記刃部は、前記両歯面を切削する前記第1及び第2の切れ刃の一端側に連続形成され、前記両歯面と同時に歯底面を切削する第3の切れ刃を有することを特徴とするブレード。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、曲線の歯すじを有する歯車の歯切り加工に用いられるブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車や自動二輪車等では、曲線の歯すじを有する歯車、例えば、はすば歯車、まがりば傘歯車及びハイポイドギヤ等からなるピニオンギヤやリングギヤ等が広範に用いられている。
【0003】
この種の歯車は、通常、歯切り用のブレードを備える歯切り用カッターを搭載した工作機械、いわゆる歯切り盤により歯切り加工されるものであり、歯車素材(ワーク)をワーク軸で保持する一方、前記歯切り用カッターを工具軸に保持した状態で、これらを相対的に回転させ当接させることにより歯切り加工が行われる。
【0004】
特許文献1には、まがりば傘歯車の内周側歯面を切削する内側ブレードと、外周側歯面を切削する外側ブレードとを備えた歯切り用カッターが開示されている。また、特許文献2には、前記内側ブレード及び外側ブレードに加えて、さらに、歯底面を切削する底刃ブレードを備えた歯切り用カッターが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−58232号公報
【特許文献2】特開平7−40142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来技術に係る歯切り用カッターでは、例えば、内側ブレードは、歯溝の内周側歯面のみ又は該内周側歯面とこれに連続する歯底面の一部のみを切削するように形成され、外側ブレードは、歯溝の外周側歯面のみ又は該外周側歯面とこれに連続する歯底面の一部のみを切削するように形成されている。このため、各ブレードは歯溝の一方の歯面からのみ、すなわち一方の側面からのみ切削抵抗を受けることになる。従って、ブレードの切削面(歯面)に対する位置決めが難しく、その加工精度が低下すると共に、その工具寿命も短い傾向にある。また、各ブレードは、歯溝の一方の歯面のみを切削するため、実質的な工程数が多く、加工時間の短縮が困難であった。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を考慮してなされたものであり、加工精度及び耐久性を向上させることができ、さらに、加工時間を短縮することができるブレードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るブレードは、曲線の歯すじを有する歯車の歯切り加工に用いられるブレードであって、当該ブレードは、加工される歯車の歯溝を挟んで対向する両歯面を同時に切削する第1及び第2の切れ刃が形成された刃部を先端に有し、該刃部に連続するすくい面のすくい角が2〜11°に設定されていることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、加工される歯車の歯溝の左右両歯面を同時に切削する刃部を有することによる両歯面の同時切削と、すくい角を2〜11°としたことによる歯切り時の切削抵抗の低減とにより、さらなる高速切削とそれによる加工時間の短縮が可能となる。また、加工負荷が低減されることから当該ブレードの耐久性を大幅に向上させることができる。しかも、左右両歯面の同時切削により、歯切り時に当該左右両歯面から受ける負荷が均等化されるため、歯溝の幅方向での刃部の中心位置決めを刃部自体で行うことができ、歯車の加工精度を一層向上させることができる。
【0010】
この場合、前記刃部が、前記両歯面を切削する前記第1及び第2の切れ刃の一端側に連続形成され、前記両歯面と同時に歯底面を切削する第3の切れ刃を有すると、歯溝を挟んで対向する両歯面と歯底面とを同時に切削することができるため、加工時間を一層短縮することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加工される歯車の歯溝の左右両歯面を同時に切削する刃部を有することによる両歯面の同時切削と、すくい角を2〜11°としたことによる歯切り時の切削抵抗の低減とにより、さらなる高速切削とそれによる加工時間の短縮が可能となり、加工精度も向上させることができる。しかも、加工負荷が低減されるため、ブレードの耐久性を大幅に向上させることができる。また、前記刃部が、両歯面と同時に歯底面を切削する切れ刃をさらに有していると、歯溝を挟んで対向する両歯面と歯底面とを同時に切削することができるため、加工時間を一層短縮することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係るブレードについて、このブレードが装着される歯切り用カッターとの関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るブレードを装着した歯切り用カッター10を備える歯切り盤(歯切り用工作機械)12の概略斜視図である。歯切り用カッター10は、曲線の歯すじを有する歯車の一例として、図2に示すような曲線状にねじれた歯すじ15を有するまがりば傘歯車13の歯切り工程で用いられるものであり、複数のブレード14によりワークである被加工物(歯車素材)に歯溝を連続的に形成することができる。なお、この歯切り用カッター10で好適に加工がなされる歯車の種類としては、前記のまがりば傘歯車13以外にも、例えば、はすば歯車やハイポイドギヤ等が挙げられる。
【0014】
歯切り盤12は、歯車が形成(創成)される歯車素材であるワークWを回転させる回転駆動モータ16及びワーク回転軸(ワーク軸)18を備えるワーク回転機構部20と、ワークWの歯切り用工具である歯切り用カッター10を回転させる回転駆動モータ22及びカッター回転軸(工具軸)24を備えるカッター回転機構部26とから構成される。前記ワーク回転機構部20は、矢印Z及びθ方向に移動可能とされ、前記カッター回転機構部26は、矢印X及びY方向に移動可能とされる。
【0015】
従って、歯切り盤12では、ワーク回転機構部20及びカッター回転機構部26が所定の数値制御により同期して回転及び移動制御され、歯切り用カッター10のカッター本体28に周方向に沿って保持されたブレード14がカッター回転軸24を中心として公転駆動されることにより、ワークWの歯切りを行うことができる。
【0016】
図3に示すように、歯切り用カッター10は、円盤形状のカッター本体28の表面側において、その外周縁近傍部に周方向に沿って形成されたブレード取付孔30を有し、各ブレード取付孔30には本実施形態に係るブレード14が、位置決め用スペーサであるシム32と共に挿入保持されている。この場合、ブレード取付孔30は、カッター本体28の厚さ方向に延在しており、該ブレード取付孔30に嵌め込まれたブレード14は、カッター本体28の外周側面に等間隔に2段に設けられたボルト取付孔34から挿入される固定ボルト36により抜け止め固定される。すなわち、歯切り用カッター10では、ブレード取付孔30、ボルト取付孔34及び固定ボルト36等がブレード14をカッター本体28に保持するためのブレードホルダーとして機能する。
【0017】
さらに、カッター本体28の中央には、段付き孔部38が軸方向に貫通している。該段付き孔部38は、歯切り用カッター10を前記カッター回転機構部26に対して固定する際に用いられる。
【0018】
図4は、本発明の一実施形態に係るブレード14の一部省略斜視図である。図5Aは、図4に示すブレード14の一部省略平面図であり、図5Bは、図5AのVB−VB線に沿う一部省略断面図である。
【0019】
図4、図5A及び図5Bに示すように、ブレード14は、前記カッター本体28に保持されるブレード本体40の先端側にR形状の刃部(切れ刃稜)42が形成されており、図2に示す歯溝44を構成する両側面、すなわち内周側歯面46a及び外周側歯面46bと、歯底面46cとを同時に切削することができる。従って、ブレード14の刃部42には、内周側歯面46aを形成する切れ刃(第1の切れ刃)42aと、外周側歯面46bを形成する切れ刃(第2の切れ刃)42bと、歯底面46cを形成する切れ刃(第3の切れ刃)42cとが設けられる。本実施形態の場合、形成すべき歯溝(歯面)の形状に対応するため、切れ刃42cは切れ刃42b側よりも切れ刃42a側が先端方向にやや延びた形状であり、該切れ刃42cの両隅角部は比較的小径のR形状とされている。また、ブレード14において、切れ刃42a〜42cから連続形成されたすくい面48の角度、いわゆるすくい角rは2〜11°に設定されており、すくい面48とは反対側には逃げ面50が形成されている。
【0020】
このようなブレード14は、歯切り用カッター10に複数(本実施形態の場合26個)設けられたブレード取付孔30に対してそれぞれ固定されると共に、各ブレード14は、そのすくい面48の向き(切削方向)が、周方向からやや内側を指向した状態で連続して並べられている(図6参照)。
【0021】
次に、基本的には以上のように構成される歯切り用カッター10を備える歯切り盤12によりワークWへの歯切りを行う動作について説明する。
【0022】
先ず、ブレード14を各ブレード取付孔30に装着した歯切り用カッター10を歯切り盤12を構成するカッター回転機構部26に取り付けると共に、ワークWをワーク回転機構部20に取り付ける。
【0023】
次いで、図6に示すように、歯切り用カッター10を中心軸Oc(カッター回転軸24)を中心として矢印B方向に所定の回転数で回転駆動すると共に、ワークWを中心軸Ow(ワーク回転軸18)を中心として矢印A方向に所定の回転数で回転駆動する(図6参照)。すなわち、所定の数値制御により、歯切り用カッター10とワークWとを高精度に同期させながら所定の回転数で互いに回転させると共に、これら歯切り用カッター10とワークWとを次第に近接させることにより、歯溝44を連続的に加工して、例えば、図2に示すまがりば傘歯車13を形成する。
【0024】
ここで、図7Aに、図4に示すブレード14によるワークWへの歯切り加工中の図6のVIIA−VIIA線に沿う一部省略断面図を示し、図7Bに、図7AのVIIB−VIIB線に沿う一部省略断面図を示す。
【0025】
図7A及び図7Bに示すように、本実施形態では、上記した歯切り用カッター10とワークWとの同期駆動による歯切り加工において、ブレード14の刃部42を構成する切れ刃42a〜42cにより、内周側歯面46a、外周側歯面46b及び歯底面46cを同時に切削することができる。しかも、ブレード14では、すくい面48の角度であるすくい角rを2〜11°に設定していることにより、前記のような内周側歯面46a、外周側歯面46b及び歯底面46cの同時切削における加工負荷(ブレード14への負荷)を有効に低減することができる。
【0026】
ところで、前記すくい角rの値について、該すくい角rを、(a)0°、(b)5°、(c)7°、(d)9°に設定し、それぞれを用いて歯切り試験を行い、最適なすくい角rを求めた。
【0027】
先ず、歯切りの品質精度においては、(a)0°に比べて(b)5°〜(d)9°の品質精度が高く、特に(c)7°が最も高い品質精度であった。また、工具寿命に関しては、(a)0°では約230個の歯車加工を行うことができた一方、(b)5°及び(d)9°では約500個の歯車加工が可能であり、(c)7°では約1500個の歯車加工が可能であった。なお、上記した従来構成の内側ブレード及び外側ブレードを併用する歯切り用カッターにおいて、本実施形態に係るブレード14と同条件でその工具寿命を調査したところ、各ブレードとも100〜150個程度の歯車加工しか行うことができなかった。さらに、歯切り加工時の歯切り用カッター10での負荷電流値は、(a)0°よりも(b)5°〜(d)9°が低く、特に(c)7°が最も低く、すなわち低負荷であった。
【0028】
従って、すくい角rが11°を超えた場合には円滑な切削が困難であったことも考慮すると、ブレード14のすくい角rとしては2〜11°、特に5〜9°が好ましく、7°が最も好ましいとの結果が得られた。
【0029】
以上のように、本実施形態によれば、歯切り用カッター10に装着される各ブレードを全て共通のブレード14により構成することができる。このため、従来の歯切り用カッターのように、内周側歯面46a用や外周側歯面46b用のブレードをそれぞれ別途準備する必要がなく、コスト低減が可能となると共に、交換部品の準備も容易となる。
【0030】
また、歯切り用カッター10では、上記のようなブレード14を備えたことから、内周側歯面46a、外周側歯面46b及び歯底面46cを同時に切削することができ、このため、カッター本体28には、例えば、従来のように2種類のブレードを備えたものに比べて実質的に2倍のブレード数を装着できる。しかも、ブレード14のすくい面48の角度であるすくい角rは、2〜11°、好ましくは5〜9°と設定されるため、歯切り時の切削抵抗、すなわち歯切り加工時のブレード14での加工負荷を一層低減することができる。従って、すくい角rの最適化と各歯面の同時切削との相乗効果により、さらなる高速切削とそれによる加工時間の短縮が可能となる。また、加工負荷が低減することから、ブレード14の耐久性を大幅に向上させることができ、工具寿命を有効に延ばすことができる。しかも、ブレード14は、加工面側の各稜線を切れ刃42a〜42cとして機能させるため、歯車1歯当たりの仕事量を削減することができ、一層効率的な歯切りが可能となる。
【0031】
さらに、ブレード14では、内周側歯面46a及び外周側歯面46bを切れ刃42a及び42bで同時に切削することにより、歯切り時の内外(左右)両歯面46a及び46bから受ける負荷が均等化されるため、歯溝の幅方向での刃部42の中心位置決めを刃部42自体で行うことができ、いわゆるセルフセンタリングが可能となることにより、歯車の加工精度を向上させることができる。また、前記セルフセンタリングの作用により、図7Bに示すように、切削屑(切粉)52a及び52bの大きさを均等且つ微小なものとすることができ、その排出性も向上させることができるため、歯車の加工精度を一層向上させることができる。
【0032】
なお、ワークWへの歯切り加工に先立ち、ワークWを模したテストワークを用いて歯切り加工を行い、その切削屑52a及び52bの大きさが均等となるようにブレード14とワークWとの座標位置を設定すると、ワークWへの加工を一層高精度且つ低負荷で行うことができる。さらに、ブレード14にコーティング剤によるコーティング処理を施すと、工具寿命を一層長くすることができる。
【0033】
以上、上記実施の形態により本発明を説明したが、これに限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは当然可能である。
【0034】
例えば、ブレード14のカッター本体28への装着本数は、加工する歯車の歯数やピッチ等により変更可能であることは言うまでもない。
【0035】
また、歯切り加工時における歯切り用カッター10とワークWの回転方向は加工する歯車の種類や形状等によって適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係るブレードを装着した歯切り用カッターを備える歯切り盤の概略斜視図である。
【図2】図1に示す歯切り盤により歯切り加工がなされる歯車の一例であるまがりば傘歯車の斜視図である。
【図3】図1に示す歯切り用カッターの斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るブレードの一部省略斜視図である。
【図5】図5Aは、図4に示すブレードの一部省略平面図であり、図5Bは、図5AのVB−VB線に沿う一部省略断面図である。
【図6】歯切り用カッターでワークに歯車を形成している状態を説明するための模式説明図である。
【図7】図7Aは、図4に示すブレードによるワークへの歯切り加工中の図6のVIIA−VIIA線に沿う一部省略断面図であり、図7Bは、図7AのVIIB−VIIB線に沿う一部省略断面図である。
【符号の説明】
【0037】
10…歯切り用カッター 12…歯切り盤
14…ブレード 15…歯すじ
20…ワーク回転機構部 26…カッター回転機構部
28…カッター本体 30…ブレード取付孔
34…ボルト取付孔 40…ブレード本体
42…刃部 42a〜42c…切れ刃
44…歯溝 46a…内周側歯面
46b…外周側歯面 46c…歯底面
48…すくい面 52a、52b…切削屑
r…すくい角
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成19年5月14日(2007.5.14)
【代理人】 【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏

【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸

【識別番号】100142066
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 直樹

【識別番号】100126468
【弁理士】
【氏名又は名称】田久保 泰夫


【公開番号】 特開2008−279574(P2008−279574A)
【公開日】 平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願番号】 特願2007−127767(P2007−127767)