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【発明の名称】 部品一体型歯車の製造方法
【発明者】 【氏名】米澤 良

【要約】 【課題】部品と歯車とが一体化された部品一体型歯車をワンチャックで製造できる部品一体型歯車の製造方法を提供する。

【解決手段】本発明では、ラックカッター(5)を有するNC旋盤を用いて部品と歯車とが一体化された部品一体型歯車を製造する。初めに、パラメータ入力工程において、歯車のパラメータとしてモジュールと歯数を入力する。切削パラメータとして、ラックカッターの始点位置と終点位置、及び1つの歯を形成するためのラックカッターの往復移動回数(k回)を入力する。切削工程中に、ラックカッターを1回往復移動させるごとにラックカッターをY軸方向に1/kモジュールピッチだけ移動させると共にY軸をC軸のまわりで1/kモジュールピッチに相当角度だけ回転させる。この動作をk回繰り返して1つの歯を形成する。続いて、上記切削を歯車の歯数だけ繰り返して1つの全周歯車が形成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持するチャックと、チャックに保持されたワークをC軸のまわりで回転させるワーク回転駆動機構と、ラックカッターを、カッタ刃がC軸と平行になるように保持する刃物台と、刃物台を、C軸と平行な軸線であるZ軸、Z軸と直交しC軸とZ軸とを結ぶ方向であるX軸、並びにZ軸及びX軸と直交するY軸の各方向に移動させる刃物台駆動機構と、ワークを旋削するバイトをC軸と平行な軸線方向及び当該軸線とC軸とを結ぶ方向に移動させるバイト駆動機構と、前記ワーク回転駆動機構、刃物台駆動機構及びバイト駆動機構をプログラム制御するコンピュータとを具えるNC旋盤を用い、形成すべき歯車の形状を規定するパラメータを入力し、ラックカッターによる切削とバイトによる旋削により、単一のワークから部品と歯車とが一体化された部品一体型歯車を製造することを特徴とする部品一体型歯車の製造。
【請求項2】
請求項1に記載の部品一体型歯車の製造方法において、当該部品一体型歯車の製造方法は、前記ワーク回転駆動機構、刃物台駆動機構及びバイト駆動機構を制御するパラメータをコンピュータに入力するパラメータ入力工程と、ラックカッターを始点位置と終点位置との間で往復移動させてワークを切削する工程と、バイトによりワークを旋削する工程とを含み、
前記パラメータ入力工程は、形成すべき歯車のモジュール及び歯数を入力する工程と、切削条件を規定するパラメータを入力する工程と、旋削条件を規定するパラメータを入力する工程とを含み、
前記切削条件を規定するパラメータを入力する工程において、ラックカッターの切削工程における始点位置と終点位置を規定する座標パラメータと、歯車の1つの歯を形成するためのラックカッターの往復移動回数kと、ラックカッターの1回の往復移動当たりのラックカッターのY軸方向の移動量1/kモジュールと、ラックカッターの1回の往復移動当たりのワークの1/kモジュールに相当する回転角度とを入力し、
切削工程中に、ラックカッターを始点位置と終点位置との間で1回往復移動させるごとに、ラックカッターをY軸方向に1/kモジュールだけ移動させると共に、ワークをC軸のまわりに1/kモジュールに相当する角度だけ回転させ、ラックカッターの始点と終点との間の往復移動、ラックカッターのY軸方向の移動、及びワークのC軸周りの回転をk回繰り返して歯車の1個の歯を形成することを特徴とする部品一体型歯車の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の部品一体型歯車の製造方法において、歯車の1つの歯又は複数の歯を形成した後、刃物台をY軸方向にラックカッターの始点位置まで戻し、始点位置から再びラックカッターによる切削を開始することを特徴とする部品一体型歯車の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の部品一体型歯車の製造方法において、前記歯車のパラメータを入力する工程において、形成すべき歯車のモジュールm及び歯数nが入力され、
歯車の1つの歯を形成した後、刃物台をY軸方向にラックカッターの始点位置まで戻し、この一連の切削工程をn回繰り返して、歯数nの全周歯が形成された歯車を有する部品一体型歯車を製造することを特徴とする部品一体型歯車の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の部品一体型歯車の製造方法において、前記ラックカッターの終点位置を始点位置に対してX軸方向に変位させると共にラックカッターの始点と終点との間の移動中にワークを所定の角度にわたって連続的に回転させて、ヘリカルギャ付きの部品一体型歯車を形成することを特徴とする部品一体型歯車の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の部品一体型歯車の製造方法において、ラックカッターの切削処理により歯車を形成した後、所望の外径形状の部品を同一軸線上において軸線方向に隣接するように形成することを特徴とする部品一体型歯車の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、NC旋盤とラックカッターを用いて部品一体型歯車を製造する部品一体型歯車の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡や光学式検査装置においては、倍率の異なる複数の対物レンズを切換可能に装着した電動レボルバが用いられている。この電動レボルバでは、使用する対物レンズの切換及び位置決めを行うため、フランジと歯車とが一体化されたフランジ付きの歯車が用いられている。このフランジ付きの歯車は、フランジの直径と歯車の刃先円の直径とが同一となるように設定され、歯車の回転により対物レンズの切り換えが行われ、フランジに形成した溝又は切欠部により対物レンズの位置決めが行われている。このフランジ付きの歯車は、フランジと歯車とが同一の軸線上に一体的に形成されているため、従来のホブ切りによる切削加工では単一のワークから一体部品として製造することができなかった。このため、従来のフランジ付き歯車は、フランジと歯車とを別々に製造し、ネジ止め又は半田付けにより一体化されていた。しかし、歯車とフランジとを別々に製造して一体化したのでは、半田付け工程において結合誤差が生じ易く、製造精度に難点があった。また、時計のムーブメントに用いられる各種の部品やセクタギャ等のように、部品と歯車とが一体化された製品は多数存在する。これらの部品と歯車とが一体化された製品或いは部品の一部が部分歯車を構成する部品一体型歯車が単一の製造工程(ワンチャック)で製造されれば、一層精密な製品を製造することが可能になる。
【0003】
部品と歯車とが一体化された部品を製造する方法として、ホブを用いた切削加工により製造する方法が既知である(例えば、特許文献1参照)。この歯車の製造方法では、断面がラック状の回転砥石を用い、ワークのC軸周りの回転と、ホブのY軸方向の移動により歯面の創成研削が行われている。
【特許文献1】特開平9−168923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したセクタギヤの製造方法では、同一の軸線上にセクタギャと直接隣接する他の部品が存在しないため、ホブを用いて歯車を形成することが可能である。しかしながら、フランジ付き歯車のように、歯車とフランジとが同一軸線上に一体的に形成される製品又は歯先円の直径が異なる2個の歯車が同一軸線上に隣接して形成されている製品の場合、ホブにより歯車を研削しようとすると、ホブの歯先がフランジを構成する部分まで進入するため、ホブを用いて歯車を研削することは技術的に不可能であった。また、部品と歯車とが一体的に形成されている製品を複数の切削工程を介して製造する場合、一つの切削工程が終了した後、ワークをチャックから取り外し、別の加工装置に装着するため、芯ずれが生じる不具合があった。
【0005】
本発明の目的は、NC旋盤を用いて、部品と歯車とが一体化された部品一体型歯車を単一の製造工程(ワンチャック)で製造することができる部品一体型歯車の製造方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による部品一体型歯車の製造方法は、ワークを保持するチャックと、チャックに保持されたワークをC軸のまわりで回転させるワーク回転駆動機構と、ラックカッターを、カッタ刃がC軸と平行になるように保持する刃物台と、刃物台を、C軸と平行な軸線であるZ軸、Z軸と直交しC軸とZ軸とを結ぶ方向であるX軸、並びにZ軸及びX軸と直交するY軸の各方向に移動させる刃物台駆動機構と、ワークを旋削するバイトをC軸と平行な軸線方向及び当該軸線とC軸とを結ぶ方向に移動させるバイト駆動機構と、前記ワーク回転駆動機構、刃物台駆動機構及びバイト駆動機構をプログラム制御するコンピュータとを具えるNC旋盤を用い、形成すべき歯車の形状を規定するパラメータを入力し、ラックカッターによる切削とバイトによる旋削により、単一のワークから部品と歯車とが一体化された部品一体型歯車を製造することを特徴とする。
【0007】
本発明では、NC旋盤の特性とラックカッターの特性を利用して部品と歯車とが一体的に形成された部品一体型歯車を製造する。すなわち、NC旋盤は、X軸、Y軸、及びZ軸の3軸方向について同期制御が可能であり、座標パラメータを入力することにより加工工具の移動経路並びに始点位置及び終点位置を規定することができる。よって、刃物台に装着されたラックカッターは、Z軸方向、X軸方向及びY軸方向の3方向に同期して移動制御され、始点位置と終点位置とを規定するパラメータを入力することにより、始点位置と終点位置との間で往復移動することができる。また、歯車のパラメータとしてモジュールと歯数を入力することにより、コンピュータの演算処理により歯車の歯先円の直径(歯車の外径)と根元円直径とが算出される。従って、コンピュータにより算出された歯車の外径と根元円直径とを用いて始点位置と終点位置を規定するパラメータを入力することにより、ラックカッターの始点と終点との間の往復移動により歯車を形成することが可能である。
【0008】
本発明による部品一体型歯車の製造方法の好適実施例は、前記ワーク回転駆動機構、刃物台駆動機構及びバイト駆動機構を制御するパラメータをコンピュータに入力するパラメータ入力工程と、ラックカッターを始点位置と終点位置との間で往復移動させてワークを切削する工程と、バイトによりワークを旋削する工程とを含み、
前記パラメータ入力工程は、形成すべき歯車のモジュール及び歯数を入力する工程と、切削条件を規定するパラメータを入力する工程と、旋削条件を規定するパラメータを入力する工程とを含み、
前記切削条件を規定するパラメータを入力する工程において、ラックカッターの切削工程における始点位置と終点位置を規定する座標パラメータと、歯車の1つの歯を形成するためのラックカッターの往復移動回数kと、ラックカッターの1回の往復移動当たりのラックカッターのY軸方向の移動量1/kモジュールと、ラックカッターの1回の往復移動当たりのワークの1/kモジュールに相当する回転角度とを入力し、
切削工程中に、ラックカッターを始点位置と終点位置との間で1回往復移動させるごとに、ラックカッターをY軸方向に1/kモジュールだけ移動させると共に、ワークをC軸のまわりに1/kモジュールに相当する角度だけ回転させ、ラックカッターの始点と終点との間の往復移動、ラックカッターのY軸方向の移動、及びワークのC軸周りの回転をk回繰り返して歯車の1個の歯を形成することを特徴とする。
【0009】
本発明では、歯車の1つの歯をラックカッターの複数回(k回)の往復移動により形成する。この場合、始点位置と終点位置との間でラックカッターを1回往復移動させるごとに、ラックカッターをY軸方向に1/kモジュールだけ間欠的に移動させると共に、ワークをC軸のまわりに1/kモジュールに相当する角度だけ回転させる。これにより、ラックカッターを始点位置と終点位置との間でk回往復移動させると、歯車の1つの歯が形成され、k回の往復移動を歯数だけ繰り返すことにより歯数nの全周歯が形成される。
【0010】
ラックカッターによる切削工程の特徴として、ラックカッターの往復移動の終点位置において、ラックカッターのカッタ刃は、ワークの歯車が形成される領域を超えて隣接する領域に進入しないことである。従って、ワークの歯車が形成される領域と直接隣接する領域に、バイトによる旋削やラックカッターの切削を利用してフランジや別の歯車等の各種の部品を形成することが可能である。これにより、ワークをチャックから取り外すことなく、1つの工程で歯車と他の部品とを一体的に形成することが可能となる。この結果、歯車と他の部品とを芯ずれが生ずることなく、同一軸線上に形成することが可能になる。
【0011】
切削工程中のラックカッターの往復移動の始点位置及び終点位置は、歯車の種類に応じて設定され、例えば平歯車を形成する場合、始点位置と終点位置は、Z軸に平行な軸線上の位置に設定する。また、終点位置を始点位置に対してX軸方向に変位させると共に、ラックカッターの往復移動中にワークをC軸のまわりで所定の角度にわたって回転させることにより、ヘリカルギヤ付きの部品一体型歯車が形成される。このように、本発明では、NC旋盤の制御プログラムのパラメータをわずかに変更するだけで各種の歯車を形成することが可能である。
【発明の効果】
【0012】
NC旋盤にラックカッターを取り付けた加工装置においては、ラックカッターの切削工程中にカッタ刃は歯車が形成される領域を超えてワークのZ軸方向に隣接する領域に進入しないため、歯車に直接Z軸方向に隣接して他の部品を形成することが可能になる。
また、ラックカッターの始点位置と終点位置とを規定するパラメータをわずかに変更するだけで各種の歯車を形成することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明による部品一体型歯車の製造に用いられるNC旋盤の主要な構成要素を示す線図であり、図1Aは線図的平面図、図1BはC軸方向からからワークを見た状態を示す線図的側面図である。ワーク1はチャック2により保持され、チャック2は回転駆動機構3に連結する。ワーク1は、回転駆動機構の回転軸線であるC軸にまわりで自在に回転し、その回転角度及び回転速度は、回転駆動機構3を制御するコンピュータ(図示せず)によりNC制御される。従って、コンピュータにパラメータを入力することにより、ワーク1の回転ピッチ及び回転角度を規定することができる。ワーク1を加工する工具を保持する刃物台4にラックカッター5を装着する。ラックカッターは、そのカッタ刃がZ軸と平行になるように装着する。刃物台4は、刃物台駆動機構(図示せず)に連結され、C軸と平行なZ軸方向、Z軸と直交しZ軸とC軸とを結ぶX軸方向、並びにZ軸及びX軸と直交するY軸方向(紙面と直交する方向)に移動可能に設定する。刃物台駆動機構の駆動制御もコンピュータによりNC制御される。従って、ラックカッター5の移動を制御するプログラムをコンピュータに入力すると共に移動経路を規定する座標パラメータを入力することにより、ラックカッターは、入力されたプログラム及び座標パラメータにしたがってZ軸方向、X軸方向及びY軸方向に移動する。従って、切削処理を開始する始点位置及び終点位置を規定する座標パラメータを入力することにより、始点位置と終点位置との間で往復移動させることも可能である。さらに、始点と終点との間の往復に加えて、所定の周期でY軸方向に移動させることも可能である。
【0014】
ワーク1を旋削するバイト6をC軸と平行な軸線方向(Z軸方向)及びこの軸線とC軸とを結ぶ方向(X軸方向)に移動可能に配置する。バイト6も駆動機構に連結され、当該駆動機構もコンピュータによりプログラム制御する。
【0015】
図2は、ラックカッター5の一例を示すものであり、図2Aは斜視図及び図2Bは側面図である。ラックカッターは、カッタ本体10を有し、カッタ本体10には4個の取り付け用の貫通穴11a〜11dを形成する。これら4本の貫通穴にボルトを装着して刃物台6に取り付ける。カッタ本体10の側面には、焼き入れ処理された8個のカッタ歯12a〜12hを等間隔で形成する。カッタ歯間のピッチは、π×m(mはモジュール)に設定し、圧力角は20°とする。尚、すくい角及び逃げ角は、例えば2°に設定する。
【0016】
バイトによる旋削処理及びラックカッターによる切削処理について説明する。ワーク2をC軸の周りで回転させながら、バイト6をX軸方向に移動させることにより、ワークの端面が形成され、またワークに溝を形成することができる。ワーク1を回転させながら、バイトをZ軸方向に移動させることにより、ワークの外周面が形成される。この際、Z軸方向に移動させると共にX軸方向にも連続的に変位させることにより、ワークの外周面は円錐形に形成される。従って、バイトの旋削開始の始点位置及び終点位置並びにZ軸方向及びX軸方向の移動をプログラム制御することにより、所望の外径形状の部品を形成することができる。
【0017】
ラックカッターをZ軸方向に移動させて歯車の厚さまで切り込むことにより、切削処理が行われ、歯車が形成される。本発明では、切削処理を行う始点位置と終点位置との間でラックカッターを複数回(k回)往復移動させて歯車の1つの歯を形成する。この際、ラックカッターをZ軸方向に1回往復移動させるごとに、ラックカッターをY軸方向に1/kモジュールだけ移動させると共に、ワークをC軸のまわりに1/kモジュールに相当する角度だけ回転させる。そして、1つ又は複数の歯を形成した後、ラックカッターをY軸方向に始点位置まで戻し、再びk回の切削を繰り返す。この動作を歯数nに相当する回数だけ繰り返すことにより、全周歯が形成される。尚、セクタギヤを形成する場合、必要な歯数だけ切削処理を繰り返すだけでよい。
【0018】
歯車を形成する際、形成すべき歯車のモジュールmと歯数nをパラメータとして入力すれば、コンピュータが演算処理し、歯車の歯先円(歯車の外径)及び根元円の直径が自動的に算出される。例えば、インボリュート歯車を形成する場合、歯数をnとし、モジュールをmとした場合、歯車外径は、式、
歯車外径=n×m+2×m
に基づいて算出される。従って、歯車のパラメータ(モジュールと歯数)を入力し、コンピュータにより算出された歯車外径と根元円直径を用いて切削工程の始点位置と終点位置を規定すると共に、算出された歯車外径に等しい直径となるようにバイトによる旋削処理を行うことにより、所望の歯車が形成される。
【0019】
ラックカッターの切削工程において、ラックカッターは始点位置と終点位置との間の往復移動によりワークを切削する。この切削工程中に、ラックカッターは、Z軸方向において始点と終点との間を往復移動するだけであり、軸線方向の部品が形成される予定の隣接する領域まで進入しない。従って、ラックカッターの切削により歯車を形成した後、ワークのZ軸方向の隣接する領域に部品(フランジ、他の歯車等)を形成することが可能となり、ワンチャックで歯車と部品とを一体的に形成することができる。
【0020】
図3は、NC旋盤とラックカッターとを用いて製造される部品一体型歯車の一例を示す。本例の部品一体型歯車は、フランジ20と歯車21とを有し、フランジと歯車とが同一軸線上に隣接するように形成された製品である。フランジと歯車との間には溝22が形成され、フランジ20の外径と歯車21の刃先円の直径とが同一に設定されている。このような製品を、円柱状のワークからホブ切りにより歯車を形成しようとすると、ワークのフランジが形成される領域内にホブが進入してしまい、ワンチャックでは製造できない。一方、NC旋盤とラックカッターとを用いれば、ラックカッターは、歯車が形成される領域内にしか進入しないため、フランジ20と当接することなく、歯車21を形成することが可能である。
【0021】
図4A及びBは別の部品一体型歯車の例を示す。図4Aに示す部品一体型歯車は、刃先円の直径及び歯数の異なる2個の歯車30及び31が同一軸線上に形成された部品一体型歯車である。2個の歯車が同一軸線上に形成された製品をホブ切りにより製造する場合、小径の歯車30を形成する際にホブの歯が大径の歯車31が形成される領域の内部まで進入するため、ホブを用いてワンチャックで製造することは不可能である。これに対して、本発明では、ラックカッターは、ワークの小径の歯車30が形成される領域の境界までしか移動しないため、小径の歯車30を形成した後、大径の歯車31を形成することができる。すなわち、ワークのC軸に沿って歯車と他の複数の部品を順次形成することが可能である。
【0022】
図4Bは、フランジ32とセクターギヤ33とが一体的に形成された部品一体型歯車である。
【0023】
次に、本発明による部品一体型歯車の製造方法を実施するための一連の工程について説明する。本例では、円柱状のワークから図3に示すフランジと標準平歯車とが一体的に形成された部品一体型歯車を製造する方法を例にして説明する。図5及び図6は一連の製造工程を示すフローチャートである。初めに、ワーク、バイト及びラックカッターを駆動する各駆動装置をプログラム制御するためのパラメータを入力する。
【0024】
ステップ1において、歯車のパラメータを入力する。歯車のパラメータとして、モジュールと歯数nを入力する。モジュールと歯数を入力することにより、コンピュータが演算処理を実行し、形成される歯車の歯先円及び根元円の直径が自動的に規定される。よって、歯車の外径も自動的に算出される。
【0025】
ステップ2において、旋削パラメータを入力する。旋削パラメータとして、歯車20及びフランジ21の外径寸法、及び歯車とフランジとの間に形成される溝の深さ、並びに歯車及びフランジのZ軸方向の厚さに対応した座標パラメータを入力する。
【0026】
ステップ3において、切削パラメータを入力する。切削パラメータとして、歯車の1つの歯を形成するためのラックカッターの往復移動回数k、ラックカッターの1回の往復移動当たりのY軸方向の間欠移動量(1/kモジュール)、1回の往復移動当たりのワークのC軸周りの1/kモジュールに相当する角度、及び、1回の往復移動毎のラックカッターの始点位置及び終点位置を規定する座標パラメータを入力する。ラックカッターの始点位置の座標パラメータは、歯車パラメータを入力した際、コンピュータの演算処理により歯車外径及び根元円直径が算出されるので、算出された歯車外径及び根元円直径に基づいてX,Y及びZ軸方向の座標パラメータを入力する。また、終点位置の座標パラメータについては、本例では、標準の平歯車を形成するため、X軸方向の座標パラメータは始点位置と同一であり、Z軸方向については刃物台のストローク長を考慮した座標パラメータが入力される。
【0027】
ステップ4において旋削モードが選択され、バイトによる旋削処理が実行される。この旋削工程において、バイトは、X軸方向に移動し、パラメータ入力されたスタート位置に移動する。続いてZ軸方向に歯車の厚さに相当する距離だけ移動し、歯先にでた「かえり」を削り取り、歯車が形成される領域の外周面を形成する。外周面を形成した後、X軸方向にラックカッター1回分のX軸切り込み量だけ移動して、切削による切り屑を除去すると共にさらに移動して歯車20とフランジ21との間に溝22が形成される。
【0028】
ステップ5において、ミーリングモードが選択され、ラックカッターによる切削処理(歯切り工程)を行う。この歯切り工程が歯数nに等しい回数だけ行われたか否かが計数され(形成された歯数gが所定の歯数nに等しいか否かが計数される)、歯数nに等しい回数だけ歯切り工程が実行された場合、旋削モードが選択される(ステップS6)。
【0029】
旋削工程において(ステップS6)、溝が旋削され、切子が削り取られると共に、同一軸線上に隣接するようにフランジ部分をバイトにより形成する。フランジ部分を形成する際、バイトを始点位置に位置させ、所定の距離だけZ軸方向に移動させてフランジ部分の外周面を形成する。その後、フランジ部分をワークから切り落とし終了する。この一連の工程により、平歯車とフランジとが同一軸線上に形成された部品一体型歯車の製造が完了する。
【0030】
次に、ラックカッターによる歯切り工程について説明する。初めに、ステップS10において、ラックカッターを始点位置まで移動させる。次に、ステップステップS11において、ラックカッターをZ軸方向に終点位置までだけ移動させ、歯車の厚さまで切り込む。次に、ステップS12において、ラックカッターをZ軸方向の反対方向に移動させて始点位置に戻す。
【0031】
次に、ステップS13 において、ラックカッターをY軸方向に1/kモジュールピッチだけ移動させる。また、ワークをC軸のまわりに1/kモジュールピッチに相当する角度だけ回転させる。
【0032】
上記ラックカッターのZ軸方向の往復移動、ラックカッターのY軸方向の変位、及びワークのC軸まわりの回転が計数され、実行された歯切り回数Pがkに等しいか否か計数され、k回繰り返すことにより1個の歯が形成される。そして、1つの歯が形成された後、ラックカッターをY軸方向の反対方向に移動して始点位置に戻す。
【0033】
上記ラックカッター及びワークの動作を歯車の歯数であるn回繰り返すことにより、全周歯車が形成される。
【0034】
本発明は上述した実施例だけに限定されず種々の変形や変更が可能である。例えば、上述した実施例では、平歯車が形成された部品一体型歯車を製造する例について説明したが、ヘリカルギヤ付きの部品一体型歯車を形成することも可能である。この場合、終点位置を始点位置に対してX軸方向に変位させると共に、ラックカッターの往復移動中にワークを所定の角度だけ回転変位させることにより、ヘリカルギヤが形成された部品一体型歯車を製造することができる。
【0035】
さらに、上述した実施例では、平歯車付きの部品一体型歯車の製造方法について説明したが、複数のギヤやフランジが同一軸線方向に沿って2個以上形成された部品一体型歯車を製造することも可能である。すなわち、最初に直径の一番小さい部品や歯車を形成し、その後C軸方向に沿って直径の大きい歯車やフランジを順次形成することにより、2個以上の複数の部品を同一軸線上に形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ラックカッターが装着されたNC旋盤の主要な構成要素を示す線図的平面図及び側面図である。
【図2】ラックカッターの構成を示す斜視図及び側面図である。
【図3】部品一体型歯車の一例を示す側面図及び斜視図である。
【図4】別の部品一体型歯車を示す斜視図である。
【図5】図3に示す部品一体型歯車を製造する工程を示すフローチャートである。
【図6】ラックカッターによる歯切り工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0037】
1 ワーク
2 チャック
3 回転駆動機構
4 刃物台
5 ラックカッター
6 バイト
10 カッタ本体
11a〜11d 貫通穴
12a〜12h カッタ刃
20 フランジ
21 歯車
22 溝
30,31 歯車
32 セクタギヤ

【出願人】 【識別番号】000115902
【氏名又は名称】レーザーテック株式会社
【出願日】 平成19年5月7日(2007.5.7)
【代理人】 【識別番号】100124280
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 健次郎

【識別番号】100085257
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 有


【公開番号】 特開2008−272906(P2008−272906A)
【公開日】 平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願番号】 特願2007−122016(P2007−122016)