トップ :: B 処理操作 運輸 :: B23 工作機械;他に分類されない金属加工

【発明の名称】 幅広外歯車用プランジカットシェービングカッタ
【発明者】 【氏名】そうけ谷 興一

【要約】 【課題】歯幅30mm以上の幅広外歯車にも、歯幅30mm未満の外歯車と同様に、プランジカット工法を具現化し生産性向上に寄与できる、幅広外歯車用プランジカットシェービングカッタを提供。

【解決手段】シェービングカッタ切刃のセレーション切刃ピッチ (6)を2.4mm を超えて大きくし、かつセレーション切刃ピッチ(6) に対するセレーション切刃幅 (7)の比であるセレーション切刃幅比(7/6) を0.25以下と小さくして、小さい押込み荷重で大きいシェービング加工量を得るようにすることにより、歯幅30mm以上の幅広外歯車をプランジカットシェービング加工できるようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェービングカッタ切刃のセレーション切刃ピッチを2.4mm を超えて大きくし、かつ前記セレーション切刃ピッチに対するセレーション切刃幅比を0.25以下と小さくして、小さい押込み荷重で大きいシェービング加工量を得るようにすることにより、歯幅30mm以上の幅広外歯車をプランジカットシェービング加工できるようにしたことを特徴とする幅広外歯車用プランジカットシェービングカッタ。
【請求項2】
前記セレーション切刃ピッチを 2.4mm〜3.0mm とし、前記セレーション切刃ピッチに対するセレーション切刃幅比を0.25以下としたことを特徴とする請求項1記載の幅広外歯車用プランジカットシェービングカッタ。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、主として乗用車における動力伝達用の歯幅30mm以上の幅広の外歯車の熱処理前歯面仕上げのシェービングカッタに関する。
【背景技術】
【0002】
外歯車歯面をわずか0.02〜0.04mmを能率良く削り取って仕上げるプランジカットシェービング加工は、業界で幅広く普及している。特許文献1に示すように、歯車を高能率でかつ高精度に仕上げるにはプランジカット方式が最適であることは、業界では常識となっており広く普及している。それ故に、外歯車諸元の如何に関わらず、とにかくプランジカット方式というケースが多い。
【特許文献1】特開平04−347838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図2(b)に示すように、プランジカット方式はシェービングカッタ (2)の半径方向送りであるインフイードの切り込みで、外歯車全歯幅 (8)(図1(a))の歯面を同時に削り取って仕上げる。このことは、外歯車の歯幅 (8)が広くても加工時間にほとんど影響を及ぼさないという長所をもつことになるが、反面苦手という欠点をも持ち合わせている。つまり外歯車の歯幅が広くなるにしたがって、歯車とシェービングカッタの歯面間の接触領域が広くなるため、セレーション切刃の歯車歯面への食い込みが浅くならざるをえず、切味低下、加工精度低下といった基本的な問題点が発生してくる。
【0004】
しかしながら、現実には上記長所から乗用車における動力伝達用の歯幅30mm以上の幅広の歯幅 (8)(図1(a))が 40mm や50mmの外歯車にも適用されている。結果としてカッタの再研削当たり加工数が少ない、加工精度(歯面粗度)が劣る、および設定インフィードスピードを落とさざるをえないことから加工時間が長くなるなどの課題が発生し、プランジカット方式の長所を生かし切れていない結果となっている。即ち、図1(a)、図2(b)に示すように、プランジカット方式は、コンベンショナル方式又はダイアゴナル方式といったトラバース方式(図2(a))と違って、シェービングカッタ(2) 及び被削歯車(1) の噛合い回転とともに歯車の全歯幅 (8)の歯面を一挙に削り取って仕上げる工法である。したがって被削物である外歯車 (1)の歯幅 (8)が広くなるほどシェービングカッタ(2) 歯面と外歯車歯面の接触領域は拡大してくる。その結果、セレーション切刃 (5)を外歯車 (1)の外歯車歯面(13)に食い込ませるためのシェービングカッタ (2)の全押し込み荷重(10)(図1(a))は、両歯面の接触領域 (8)が大きくなるほど大きく要求されてくる。しかし全押し込み荷重(10)を上げていってもある限度を超えると機械のシェービングカッタや歯車の支持軸系、歯車そのものなどの撓みに吸収され、通常よりも切刃食い付きの少ない状態で加工せざるをえず、結果として切れ味不足、加工面不良を招く。これを補うためにインフィード(3) の速さを落とさざるをえず、期待はずれの加工時間になってしまう結果となっていた。
【0005】
本発明の課題は、かかる課題を解決した、歯幅30mm以上の幅広外歯車にも、歯幅30mm未満の外歯車と同様に、プランジカット工法を具現化し生産性向上に寄与できる、幅広外歯車用プランジカットシェービングカッタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため本発明は、シェービングカッタ切刃のセレーション切刃ピッチを2.4mm を超えて大きくし、かつ前記セレーション切刃ピッチに対するセレーション切刃幅比を0.25以下と小さくして、小さい押込み荷重で大きいシェービング加工量を得るようにすることにより、歯幅30mm以上の幅広外歯車をプランジカットシェービング加工できるようにしたことを特徴とする幅広外歯車用プランジカットシェービングカッタを提供することによって上記した従来製品の課題を解決した。
【発明の効果】
【0007】
本発明ではかかる構成により、シェービングカッタ切刃のセレーション切刃ピッチを
2.4mm を超えて大きくし、かつ前記セレーション切刃ピッチに対するセレーション切刃幅比を0.25以下と小さくして、小さい押込み荷重で大きいシェービング加工量を得るようにすることにより、歯幅30mm以上の幅広外歯車をプランジカットシェービング加工できるようにしたので、歯幅30mm未満の外歯車と同様のプランジカット工法を具現化し生産性向上に寄与できる歯幅30mm以上の幅広外歯車用プランジカットシェービングカッタを提供するものとなった。
【0008】
好ましくは、前記セレーション切刃ピッチを 2.4mm〜3.0mm とし、かつ前記セレーション切刃ピッチに対するセレーション切刃幅比を0.25以下が適正である。セレーション切刃ピッチを大きくするほど接触面積は少なくできるが、セレーション切刃ピッチが3.0mm を超えると外歯車の歯面の仕上がりが悪いという別の問題が発生することがわかった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1(a)は被削外歯車(1) に対するシェービングカッタ(2) の送り方法を示す要部断面図、(b)は(a)の概略右側面図、図2(a)は被削外歯車(1) に対するシェービングカッタ(2) のトラバース方式の送り方法を示す要部断面図で、シェービングカッタ(2) は矢印 (4)で示す被削外歯車(1) に平行な方向に (4)の方向に往復移動され、(b)は外歯車用プランジカットシェービングカッタ (2)の被削外歯車 (1)に対するプランジカット方式の送り方法を示す要部断面図で、シェービングカッタ(2) は矢印 (8)で示す被削外歯車(1) 全幅にわたり半径方向に移動され、図3は被削外歯車 (1)の歯面(13)のシェービング加工量の実測方法を示す側面図で、オーバーボール径(Over Ball Distance )0BD(19)が測定される。図4(a)は本発明の実施形態の幅広外歯車加工用プランジカットシェービングカッタ (2)の1歯分のセレーション切刃の斜視図、(b)は(a)の幅広外歯車加工用プランジカットシェービングカッタ (2)の各歯列のセレーション切刃(21)の歯先面の平面展開図で、その歯面上の配置にはねじれ角(12)が付けられている。(c)は(b)の1歯分のセレーション切刃(21)の歯先面の拡大図である。
【0010】
図4に示すように、本発明の実施形態の幅広外歯車加工用プランジカットシェービングカッタ (2)では、シェービングカッタ切刃のセレーション切刃ピッチ (6)を2.4mm を超えて大きくし、かつセレーション切刃ピッチ (6)に対するセレーション切刃幅 (7)の比であるセレーション切刃幅比(7/6) を0.25以下と小さくして、小さい押込み荷重(10)(図1(a))で大きいシェービング加工量0BD(19)(図3)を得るようにすることにより、歯幅30mm以上の幅広外歯車をプランジカットシェービング加工できるようにしたものである。
【0011】
プランジカット用シェービングカッタのセレーション切刃ピッチ (6)は、メーカ間の違いこそあれ、その殆どは1.75mm〜2.0mm に集約されている。これはセレーション切刃溝を加工する際に使用される櫛バイトの寸法が標準化されていることを意味し、被削外歯車の歯幅から定まる、接触範囲長さの大小に対応しているものではなかった。つまり従来品は、外歯車歯幅(8) が20mmでも50mmでも殆ど同じセレーション切刃ピッチ設定となっていた。このような観点から発明者は、噛み合い回転するシェービングカッタ (2)と被削外歯車(1) との噛み合い点で、より小さな押し込み荷重(10)でより高い歯面間接触面圧を得るために、歯面間接触面積を小さくするべきと考えた。つまり歯幅がおよそ30mm以上の外歯車用プランジカット用シェービングカッタではセレーション切刃ピッチ (6)を大きくしかつセレーション切刃幅 (7)をより狭くしての比であるセレーション切刃幅比(7/6) を0.25以下とという手段をとった。このような考えからいろいろと試作と試加工を重ねた結果、本発明の実施形態の幅広外歯車加工用プランジカットシェービングカッタ (2)のセレーション切刃ピッチ (6)は2.4mm を超えて大きくし、かつセレーション切刃幅 (7)を小さくし、セレーション切刃ピッチ (6)に対するセレーション切刃幅 (7)の比であるセレーション切刃幅比 (7/6)を0.25以下と小さくすることが好適であることがわかった。なお切刃ピッチを大きくするほど接触面積は少なくできるが、不用意にセレーション切刃ピッチ (6)が
3.0mm を超えるときは、被削外歯車の歯面にうねりが発生することもわかった。
【実施例1】
【0012】
【表1】



【0013】
表1の〔その1〕の従来品1の被削外歯車歯幅が18mmの事例に示すように、被削外歯車の主要歯車諸元を、モジュール:2.25、圧力角:17.5゜、歯数:28、ねじれ角:30゜RHとし、シェービングカッタ主要諸元を、歯数:97、ねじれ角:15゜LHとし、Gを正面噛み合い率、Wをシェービングカッタ押込み全荷重として(以下表1の〔その2〕、〔その3〕についても同じ)、従来品1についてプランジカットシェービング加工を行い、図3に示す被削外歯車 (1)の歯面(13)のシェービング加工量の実測方法を示す側面図で、オーバーボール径(Over Ball Distance )0BD(19)を測定し、シェービング実測加工量 (OBD)として測定した。
表1の〔その1〕の従来品1の被削外歯車歯幅が18mmの事例では、切刃寸法(セレーション切刃ピッチ、セレーション切刃幅比)は従来品通りの設定値であるが、シェービングカッタ切り込みの機械指令値0.09mmに対して、実際の加工量(加工前後の OBD(19)減少量)は0.12mmであり、機械指令値に対して66% であった。
【0014】
表1の〔その2〕の被削外歯車歯幅が35mmの事例に示すように、被削外歯車歯幅が35mmの従来品2の全接触長(12.25・ G ・2) は、〔その1〕の被削外歯車歯幅が18mmの従来品1の全接触長(6.3・ G ・2) の1.94倍である。これに対し、被削外歯車歯幅が35mmの発明品1の全接触長(8.4・ G ・2) は、〔その1〕の被削外歯車歯幅が18mmの従来品1の全接触長(6.3・ G ・2) の1.33倍まで縮減でき、実際の加工量(加工前後の OBD(19)減少量)は従来品2に比べて0.06mm多く得られた。
【0015】
表1の〔その3〕の被削外歯車歯幅が45mmの事例に示すように、被削外歯車歯幅が45mmの従来品3の全接触長(15.75・ G ・2) は、〔その1〕の被削外歯車歯幅が18mmの従来品1の全接触長(6.3・ G ・2) の 2.5倍である。これに対し、被削外歯車歯幅が45mmの発明品2の全接触長(9.64・ G ・2)は、〔その1〕の被削外歯車歯幅が18mmの従来品1の全接触長(6.3・ G ・2) の1.53倍まで縮減でき、実際の加工量(加工前後の OBD(19)減少量)は従来品2に比べて0.05mm多く得られた。
【0016】
以上表1の〔その1〕、表1の〔その2〕及び表1の〔その3〕から、いずれも事例においても同一切り込み量(機械指令値)に対して、発明品1、発明品2の実加工量が増している。逆に同一加工量を基準としてみたとき、発明品1、発明品2の方がより少ない荷重で加工できるということになる。本発明によって、特に30mm以上の歯幅(8) の広い外歯車であっても、従来よりも少ないプランジカットシェービングカッタの押し込み荷重(10)で加工できるようになった。
【0017】
本発明の実施形態の幅広外歯車加工用プランジカットシェービングカッタ (2)ではかかる構成により、シェービングカッタ切刃のセレーション切刃ピッチ (6)を2.4mm を超えて大きくし、かつセレーション切刃ピッチ(6) に対するセレーション切刃幅 (7)の比であるセレーション切刃幅比(7/6) を0.25以下と小さくして、小さい押込み荷重で大きいシェービング加工量を得るようにすることにより、歯幅30mm以上の幅広外歯車をプランジカットシェービング加工できるようにしたので、歯幅30mm未満の外歯車と同様のプランジカット工法を具現化し生産性向上に寄与できる歯幅30mm以上の幅広外歯車用プランジカットシェービングカッタを提供するものとなった。このことはシェービング機械への負担、シェービングカッタへの負担が軽減されたことを意味し、かつ加工精度の安定性も高まったと同時に加工時間も短縮でき、本来のプランジカットシェービングの長所を引き出すことができた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は被削外歯車(1) に対するシェービングカッタ(2) の送り方法を示す要部断面図、(b)は(a)の概略右側面図。
【図2】(a)は被削外歯車(1) に対するシェービングカッタ(2) のトラバース方式の送り方法を示す要部断面図で、シェービングカッタ(2) は矢印 (4)で示す被削外歯車(1) に平行な方向に (4)の方向に往復移動され、(b)は外歯車用プランジカットシェービングカッタ (2)の被削外歯車 (1)に対するプランジカット方式の送り方法を示す要部断面図で、シェービングカッタ(2) は矢印 (8)で示す被削外歯車(1) 全幅にわたり半径方向に移動される。
【図3】被削外歯車 (1)の歯面(13)のシェービング加工量の実測方法を示す側面図で、オーバーボール径(Over Ball Distance )0BD(19)が測定される。
【図4】(a)は本発明の実施形態の幅広外歯車加工用プランジカットシェービングカッタ (2)の1歯分のセレーション切刃の斜視図、(b)は(a)の幅広外歯車加工用プランジカットシェービングカッタ (2)の各歯列のセレーション切刃(21)の歯先面の平面展開図で、その歯面上の配置にはねじれ角(12)が付けられている。(c)は(b)の1歯分のセレーション切刃(21)の歯先面の拡大図である。
【符号の説明】
【0019】
2 :幅広外歯車加工用プランジカットシェービングカッタ
6 :セレーション切刃ピッチ、7 :セレーション切刃幅、10:押込み荷重
19:オーバーボール径(Over Ball Distance )0BD
G:正面噛み合い率、W:シェービングカッタ押込み荷重
【出願人】 【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
【出願日】 平成19年3月28日(2007.3.28)
【代理人】 【識別番号】100077997
【弁理士】
【氏名又は名称】河内 潤二


【公開番号】 特開2008−238352(P2008−238352A)
【公開日】 平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願番号】 特願2007−83993(P2007−83993)