トップ :: B 処理操作 運輸 :: B23 工作機械;他に分類されない金属加工

【発明の名称】 内歯車用プランジカットシェービングカッタ
【発明者】 【氏名】そうけ谷 興一

【要約】 【課題】外歯車用と同様、プランジカット工法を具現化し生産性向上に寄与できる内歯車用プランジカットシェービングカッタを提供。

【解決手段】カッタ切刃のセレーション切刃ピッチ(16)を2.4mm を超えて大きくし、かつセレーション切刃ピッチ(16)に対するセレーション切刃幅(17)の比であるセレーション切刃幅比 (17/16)を0.25以下と小さくして、小さい押込み荷重で大きいシェービング加工量を得るようにすることにより、内歯車をプランジカットシェービング加工できるようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェービングカッタ切刃のセレーション切刃ピッチを2.4mm を超えて大きくし、かつ前記セレーション切刃ピッチに対するセレーション切刃幅比を0.25以下と小さくして、小さい押込み荷重で大きいシェービング加工量を得るようにすることにより、内歯車をプランジカットシェービング加工できるようにしたことを特徴とする内歯車用プランジカットシェービングカッタ。
【請求項2】
前記セレーション切刃ピッチを2.45mm〜3.5mm とし、前記セレーション切刃ピッチに対するセレーション切刃幅比を0.25以下としたことを特徴とする請求項1記載の内歯車用プランジカットシェービングカッタ。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、主として乗用車における動力伝達用内歯車の熱処理前歯面仕上げのシェービングカッタに関する。
【背景技術】
【0002】
外歯車歯面を低コスト高能率で仕上げるにはシェービング加工が最適であり、業界で幅広く普及している。図1に示すようにその工法にはシェービングカッタ(2) の送りが被削歯車(1) の軸に平行な方向の相対的な横移動運動 (4)を繰り返して加工するコンベンショナル方式と、シェービングカッタ (2)の送りが被削歯車 (1)の半径方向の移動運動であるインフィード (3)のみ(相対横送り無し)で加工するプランジカット方式とがあり、高能率、高精度面でプランジカット方式が幅広く使用されている。特許文献1に示すように従来外歯車の歯面仕上げには生産性の高いプランジカット工法が常識的に定着している。
【特許文献1】特開平04−347838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、歯車装置の動力伝達機構上、内歯車は外歯車に比べて適用頻度が少ないため歯面仕上げ工法そのものにはそれほど注力されていなかった。したがってプランジカット方式は内歯車のシェービング加工には適用事例がなく、内歯車のシェービング加工としては、従来からコンベンショナル方式のみであった。その理由はカッタの設計製作技術も当然として、さらには内歯車なるが故にカッタは小径サイズとならざるをえず、内歯車の全歯幅を同時に加工するプランジカット工法では剛性不足となり、刃物にとって重要な食い付き性が極端に低下し、加工代が発生しない点にあった。しかし主に乗用車のあくなきノイズ低減の一環策として遊星歯車機構の内歯車精度に関心が高まるようになり、外歯車と同様にシェービング仕上げのニーズが高まってきた。このような背景から、高能率、高精度、低コスト面に応えるため内歯車加工用の専用機械、あるいは特徴的な小径カッタ製作用の専用設備(セレーション加工機、歯形研削盤)などが開発されてきた。
【0004】
一方内歯車シェービングはわずかではあるが、35〜40年前からすでに実用化されていたが、全てはコンベンショナル法であった。現代では外歯車のプランジカット法の優位性が確立されていることから、そのノウハウをもって内歯車のプランジカットシェービング加工を試みたが、カッタが食い込みにくく容易に加工できないという結果になった。一方のコンベンショナル加工では、機械指令値に近い切削量を得ることができ、内歯車シェービングにはコンベンショナルという従来の定説を立証してしまった。しかし乗用車用遊星内歯車(5) は歯数が多く、幅も広い部品であるためコンベンショナル加工では 100〜180 秒の長い加工時間を要することとなり、ライン導入を拒む大きなネックになった。
【0005】
本発明の課題は、かかる課題を解決し、外歯車用と同様、プランジカット工法を具現化し生産性向上に寄与できる内歯車用プランジカットシェービングカッタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため本発明は、カッタ切刃のセレーション切刃ピッチを2.4mm を超えて大きくし、かつ前記セレーション切刃ピッチに対するセレーション切刃幅比を0.25以下と小さくして、小さい押込み荷重で大きいシェービング加工量を得るようにすることにより、内歯車をプランジカットシェービング加工できるようにしたことを特徴とする内歯車用プランジカットシェービングカッタを提供することによって上記した従来製品の課題を解決した。
【発明の効果】
【0007】
本発明ではかかる構成により、カッタ切刃のセレーション切刃ピッチを2.4mm を超えて大きくし、かつ前記セレーション切刃ピッチに対するセレーション切刃幅比を0.25以下と小さくして、小さい押込み荷重で大きいシェービング加工量を得るようにすることにより、内歯車をプランジカットシェービング加工できるようにしたので、外歯車用と同様、プランジカット工法を具現化し生産性向上に寄与できる内歯車用プランジカットシェービングカッタを提供するものとなった。
【0008】
好ましくは、前記セレーション切刃ピッチを切刃ピッチは2.45〜3.5mm 、かつセレーション切刃ピッチに対するセレーション切刃幅比を0.25以下が適正である。セレーション切刃ピッチを大きくするほど接触面積は少なくできるが、セレーション切刃ピッチが3.5mm を超えると歯面の仕上がりが悪いという別の問題が発生するため適用すべきでない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1(a)は被削歯車(1) に対するシェービングカッタ(2) の送り方法を示す要部断面図、(b)は(a)の概略右側面図、図2(a)は被削歯車(1) に対するシェービングカッタ(2) のコンベンショナル方式の送り方法を示す要部断面図、(b)は本発明の実施形態のシェービングカッタ切刃(18)の被削歯車 (5)に対するプランジカット方式の送り方法を示す要部断面図、図3(a)は本発明の実施形態の被削歯車である内歯車 (5)の斜視図、(b)は本発明の実施形態の内歯車加工用プランジカットシェービングカッタ(19)の斜視図、図4(a)は本発明の実施形態の被削歯車である内歯車 (5)のシェービング加工量の実測方法を示す側面図で、ビトウィーンボール径(Between Ball Distance )BBD(28)が測定される。(b)は(a)のボール(22)部分の部分拡大図である。(c)は図3(b)の内歯車加工用プランジカットシェービングカッタ(19)の1歯分のセレーション切刃の斜視図、(d)は図3(b)の内歯車加工用プランジカットシェービングカッタ(19)の各歯列のセレーション切刃(21)の歯先面の平面展開図、(e)は(d)の1歯分のセレーション切刃(21)歯先面の拡大図、(f)は図1(b)の被削外歯車の1歯(24)に対するシェービングカッタの1セレーション切刃(21)のプランジカットシェービング加工時の歯形形状の組み合わせを示す要部拡大断面図、(g)は被削内歯車の1歯溝 (6)に切込み量(23)をもったときのシェービングカッタの1セレーション切刃(21)の接触領域(14)を示す要部拡大断面図、(i)は被削内歯車の1歯溝 (6)に対するシェービングカッタの1セレーション切刃(21)のプランジカットシェービング加工時の歯形形状の組み合わせを示す要部拡大断面図である。
【0010】
図2(b)に示すように、本発明の実施形態の内歯車用プランジカットシェービングカッタは、カッタ切刃のセレーション切刃ピッチ(16)を2.4mm を超えて大きくし、かつセレーション切刃ピッチ(16)に対するセレーション切刃幅(17)の比であるセレーション切刃幅比 (17/16)を0.25以下と小さくして、小さい押込み荷重で大きいシェービング加工量を得るようにすることにより、内歯車をプランジカットシェービング加工できるようにしたものである。
【0011】
発明者は、被削歯車である内歯車歯面 (6)(図3(a))をプランジカット方式で充分にシェービング加工できない理由を外歯車と内歯車のコンベンショナル加工でみた相違点を考察した。
第1に、コンベンショナル方式ではシェービングカッタと被削歯車である内歯車との歯幅間接触範囲は、図2(a)に示すように、両軸の交点を中心とした周辺 6〜12mm (8)であるのに対して、図2(b)に示すように、プランジカット方式ではカッタ歯すじを修整することで両者の接触範囲は内歯車全歯幅間 (4)になる。そのためプランジカット方式では歯車歯幅が広くなるにつれ歯幅単位長さ当たりの面圧低下を招き、セレーション切刃(10)が内歯車歯面に食い付きにくくなって切れ味低下や加工性低下を招く。
第2に、このことは外歯車にも共通しているが、外歯車用カッタは被削歯車サイズに関係なく、また内歯車用カッタに比較して大径サイズであるため、カッタ剛性面、機械の支持系剛性面(カッタ穴径)などでプランジカットといえども有利な条件をもっている。
ここで外歯車用と内歯車用のシェービングカッタサイズを比較する。
内歯車用 外歯車用
カッタ外径 φ70〜φ120 φ175 〜φ325
カッタ穴径 φ30〜φ50 φ63.5〜φ100
第3に、図4(f)に示すように、外歯車加工では被削歯車とシェービングカッタとの歯面形状組み合わせは凸(11)と凸(12)であるが、図4(i)に示すように、内歯車加工では凹(13)と凸(12)の組み合わせとなるため、図4(g)に示すように、食い込みがかかったとき歯形方向の接触長さ(14)が急激に伸びる。これはカッタ1山と内歯車1溝の噛み合いについてである。
第4に、外歯車との噛み合いに比べ、内歯車との噛み合いでは噛み合い法線長つまり噛み合い率が高まることから、同時接触点数も多くなってくる。これは全噛み合い範囲に関する特徴点を述べたものである。
【0012】
これらの考察から内歯車プランジカット方式ではプランジカット特性および内歯車加工特性のいずれも加工性を低下せしめる両特性をもつことになる。つまり、外歯車のコンベンショナル、プランジカット、さらには内歯車のコンベンショナル、プランジカットの4つの工法の中で最も接触面積が広くならざるをえない工法である。したがって切屑を排出させるには内歯車に大きな押込み荷重を掛け、単位面積当たりの面圧を高めねばならない。その結果、加工精度の低下や不安定さあるいはカッタの短寿命という工法敬遠の決定的な理由が出揃つてくる。
【0013】
発明者は、順次連続回転する内歯車(5)とカッタ(19)との噛み合い点で、より小さな押し込み荷重で歯面間接触面圧をより高め、外歯車と同様の作業要領で加工できるようにするためには、内歯車とカッタとの歯面間接触面積を少なくできたらよい考え、その手段として、図2(b)に示すように、カッタ切刃のセレーション切刃ピッチ(16)を大きくし、かつセレーション切刃幅(17)を従来よりも薄くするという手段を発明した。
従来のセレーション切刃ピッチは1.75〜2.0mm 、切刃幅は0.7 〜0.8mm であり、これはセレーション切刃溝を加工する際に使用される櫛バイトの寸法であり、歯幅が20mmでも50mmでも殆ど同じセレーション切刃ピッチ設定となっていたが、本発明による実施結果からセレーション切刃ピッチ(16)は2.45〜3.5mm 、かつセレーション切刃ピッチ(16)に対するセレーション切刃幅(17)の比であるセレーション切刃幅比 (17/16)が0.25以下が適正であることが確認された。なお切刃ピッチを大きくするほど接触面積は少なくできるが、切刃ピッチが 3.5mmを超えると歯面の仕上がりが悪いという別の問題が発生するため適用すべきでない。
【実施例1】
【0014】
【表1】



【0015】
表1に示すように、被削内歯車の主要内歯車諸元を、モジュール:2.1 、圧力角:20゜、歯数:58、ねじれ角:20゜RH、幅:30mmとし、主要シェービングカッタ諸元を、歯数:43、ねじれ角:12゜RH、歯幅:36mmとし、Gを正面噛み合い率、Wをシェービングカッタ押込み全荷重として、従来品と発明品についてプランジカットシェービング加工を行い、図4(a)に示す被削歯車である内歯車 (6)のシェービング加工量を実測方法を示す側面図で、ビトウィーンボール径(Between Ball Distance )BBD(28)を測定し、シェービング実測加工量(20)として測定した。
表1に示すように、実施例1では、本発明品は、カッタ切刃のセレーション切刃ピッチを、従来品の2.0mm を超えて2.45mmと大きくし、かつセレーション切刃幅を従来品が0.7mm 、セレーション切刃幅比(t/P)=0.35に対して、本発明品はセレーション切刃幅を0.5mm 、セレーション切刃幅比(t/P)=0.20と小さい設定にした。その結果、本発明品では接触長さ単位長さ当たりのシェービングカッタ押込み全荷重は従来品の約2倍まで高まり、効果として加工前後のビトィーンボール径BBD(28)の測定値の変化(20) であるシェービング実測加工量(20)が従来品の0.02から0.1mm に大きくなり、外歯車並の歯面加工代(19)をうることができた。
【0016】
本発明での実施形態の内歯車用プランジカットシェービングカッタは、かかる構成により、カッタ切刃のセレーション切刃ピッチを2.4mm を超えて大きくし、かつ前記セレーション切刃ピッチに対するセレーション切刃幅比を0.25以下と小さくして、小さい押込み荷重で大きいシェービング加工量を得られるようにすることにより、内歯車をプランジカットシェービング加工できるようにしたので、内歯車のプランジカットシェービング加工が外歯車並の作業要領で可能になり、生産性、加工精度などの面で大きく貢献するものとなり、外歯車用と同様、プランジカット工法を具現化し生産性向上に寄与できる内歯車用プランジカットシェービングカッタを提供するものとなった。
【0017】
好ましくは、セレーション切刃ピッチを切刃ピッチは2.45〜3.5mm 、かつセレーション切刃ピッチに対するセレーション切刃幅比を0.25以下が適正である。セレーション切刃ピッチを大きくするほど接触面積は少なくできるが、セレーション切刃ピッチが3.5mm を超えると歯面の仕上がりが悪いという別の問題が発生するため適用すべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は被削歯車(1) に対するシェービングカッタ(2) の送り方法を示す要部断面図、(b)は(a)の概略右側面図。
【図2】(a)は被削歯車(1) に対するシェービングカッタ(2) のコンベンショナル方式の送り方法を示す要部断面図、(b)は本発明の実施形態のシェービングカッタ切刃(18)の被削歯車 (5)に対するプランジカット方式の送り方法を示す要部断面図。
【図3】(a)は本発明の実施形態の被削歯車である内歯車 (5)の斜視図、(b)は本発明の実施形態の内歯車加工用プランジカットシェービングカッタ(19)の斜視図。
【図4】(a)は本発明の実施形態の被削歯車である内歯車 (5)のシェービング加工量の実測方法を示す側面図で、ビトウィーンボール径(Between Ball Distance )BBD(28)が測定される。(b)は(a)のボール(22)部分の部分拡大図である。(c)は図3(b)の内歯車加工用プランジカットシェービングカッタ(19)の1歯分のセレーション切刃の斜視図、(d)は図3(b)の内歯車加工用プランジカットシェービングカッタ(19)の各歯列のセレーション切刃(21)の歯先面の平面展開図、(e)は(d)の1歯分のセレーション切刃(21)歯先面の拡大図、(f)は図1(b)の被削外歯車の1歯(24)に対するシェービングカッタの1セレーション切刃(21)のプランジカットシェービング加工時の歯形形状の組み合わせを示す要部拡大断面図、(g)は被削内歯車の1歯溝 (6)に切込み量(23)をもったときのシェービングカッタの1セレーション切刃(21)の接触領域(14)を示す要部拡大断面図、(i)は被削内歯車の1歯溝 (6)に対するシェービングカッタの1セレーション切刃(21)のプランジカットシェービング加工時の歯形形状の組み合わせを示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0019】
5 :被削内歯車、6 :被削内歯車の1歯溝、16:セレーション切刃ピッチ
17:セレーション切刃幅、19:シェービングカッタ、21:セレーション切刃
G:正面噛み合い率、W:シェービングカッタ押込み荷重
BBD:ビトウィーンボール径(Between Ball Distance )
【出願人】 【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
【出願日】 平成19年3月28日(2007.3.28)
【代理人】 【識別番号】100077997
【弁理士】
【氏名又は名称】河内 潤二


【公開番号】 特開2008−238351(P2008−238351A)
【公開日】 平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願番号】 特願2007−83992(P2007−83992)